説明

冷房システム

【課題】室内に配置される熱交換ユニットの結露を抑制できる自然循環型(沸騰循環型)の冷房システムを提供する。
【解決手段】室外に設置される室外熱交換ユニット51を含む室外ユニット50に、室外熱交換ユニット51に対し直列または並列に接続された少なくとも1つのリザーバ71を含む冷媒回収ユニット70を設ける。冷媒回収ユニット70は、運転中に配管システム60を流通する冷媒を液体状態で回収する容量を少なくとも備えている。したがって、室外熱交換ユニット51から室内熱交換ユニット41への液冷媒65の供給をバルブ群80で遮断することにより、冷房システム30を循環する液冷媒65を全て室外ユニット50に回収でき、室内熱交換ユニット41をドライアウトできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内に設置される室内熱交換ユニットと、室外に設置される室外熱交換ユニットとの間で冷媒を自然循環させて室内を冷房する自然循環型(沸騰循環型)の冷房システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、発熱体にて加熱された空気および発熱体から発せられる熱を吸熱する室内熱交換器が記載されている。この室内熱交換器は、上下方向に延びる複数本のチューブと、チューブの間に配されるフィンと、チューブの両端を接続する上部ヘッダおよび下部ヘッダを有する。上部ヘッダはヘッダ部とヘッダ増設部とを有しており、上部ヘッダの断面積はチューブの全流路断面積よりも大きい。その結果、冷媒蒸発時の圧損の増大を抑制し、冷却性能の低下を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−025884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
室内(屋内)に設置される室内熱交換ユニットと、主に室外、特に屋外に設置される室外熱交換ユニットとの間で冷媒を自然循環させて室内を冷房する、圧縮機を含まない自然循環型(沸騰循環型)の冷房システムが知られている。この自然循環型の冷房システムは、室内より室外が低温のときに省電力で室内を冷却することができるというメリットがある。その際、室内ユニットでの吸熱の時に、低温の冷媒によって熱交換器や配管に結露を発生することがある。この結露が過度に発生すると、室内ユニットの通風抵抗の増大によって排熱性能が低下したり、室内空気が乾燥して、静電気を発生したりする問題がある。そのため、この自然循環型の冷房システムにおいて、室内に設置される熱交換ユニットの結露を抑制することは重要である。
【0005】
大気温度が低下したときに、室外熱交換ユニットから室内熱交換ユニットへの液冷媒の供給を遮断することにより、室内熱交換ユニットにおいて結露水が発生するのを抑制できる。しかしながら、室内熱交換ユニット内に液冷媒が存在すると、配管システムの一部がヒートパイプとして動作することにより排熱動作が継続し、結露水の発生が続くという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、室外に設置される室外熱交換ユニットであって、室内に設置される室内熱交換ユニットとの間で配管システムを介して冷媒が自然循環される室外熱交換ユニットを有する室外ユニットである。この室外ユニットは、さらに、室外熱交換ユニットに対し直列または並列に接続された少なくとも1つのリザーバを含む冷媒回収機能を持った冷媒回収ユニットであって、運転中に配管システムを流通する冷媒を液体状態で回収することができる容量を少なくとも備えた冷媒回収ユニットと、室外熱交換ユニットから室内熱交換ユニットへの液冷媒の供給を遮断する少なくとも1つのバルブを含むバルブ群とを有する。
【0007】
上記の室外ユニットにおいては、運転中に配管システムを流通する冷媒を液体状態で回収できる冷媒回収ユニットを設け、外気が低温になると、液状の冷媒を室外熱交換ユニットおよび冷媒回収ユニットで回収して保持し、室内熱交換ユニットに液冷媒が残らないようにする。これにより配管システムを介した室内から室外への熱移動をほぼ完全に停止でき、室内熱交換ユニットが結露することをさらに確実に抑制できる。
【0008】
また、自然循環型(沸騰循環型)の冷房システムにおいては、室外ユニットを室内ユニットに対して上方に配置する必要があり、さらに、この冷房システムを施工する際は、室外熱交換ユニットから室内熱交換ユニットへ液冷媒を供給する配管は液冷媒で充填する。したがって、施工現場において多量の冷媒を充填する必要がある。上記の室外ユニットにおいては、冷媒回収ユニットが室内熱交換ユニットおよび配管システムを充填する冷媒を液体状態で回収する容量を備えている。したがって、出荷する際に、室外ユニットの冷媒回収ユニットに液冷媒を充填しておくことにより、配管システムに十分な液冷媒を供給することが可能となる。このため、施工現場において多量の冷媒を追加充填する装置や作業を省くことができる。
【0009】
冷媒回収ユニットの少なくとも1つのリザーバは、室外熱交換ユニットの側方に並列に接続された第1のリザーバを含むことが望ましい。運転中、搬送中などに、第1のリザーバには液冷媒が貯蔵される機会があるが、第1のリザーバを室外熱交換ユニットの側方に配置することにより室外ユニットの重心が高くなるのを抑制でき、転倒しにくい構造となる。したがって、施工が容易となり、また、安定して搬送できる。
【0010】
バルブ群は、室外熱交換ユニットに並列に接続された第1のリザーバの縦方向の異なる位置に取り付けられた複数のバルブを含むことが有効である。複数のバルブを切り替えることにより、室外熱交換ユニット内の液面の高さを制御でき、室外熱交換ユニットの熱交換能力(有効な熱交換面積)を制御できる。したがって、冷房システムを循環する冷媒の量を制御でき、室内熱交換ユニットが結露しないようにしながら、外気温がより低い温度のときまで外気の熱を使って室内を冷房できる。
【0011】
冷媒回収ユニットの少なくとも1つのリザーバは、室外熱交換ユニットの上側に直列に接続された第2のリザーバを含むことも有効である。冷房システムが通常に稼働している間、室外熱交換ユニットの上方に位置する第2のリザーバ内は気化冷媒に完全に置き換えられる。したがって、第2のリザーバ内のスペースを搬送中などにおいて液冷媒を格納するスペースとして有効に利用できる。
【0012】
本発明の他の態様は、上記の室外ユニットと、室内熱交換ユニットを含む室内ユニットと、室外熱交換ユニットおよび室内熱交換ユニットの間を冷媒が自然循環するように接続する配管システムとを有する冷房システムである。冷房システムは、室内熱交換ユニットに結露が発生する条件を監視するセンサーと、室内熱交換ユニットが結露する状態になると室外ユニットのバルブ群に含まれるバルブを閉じて室内熱交換ユニットへの液冷媒の供給を制御する制御ユニットとをさらに有することが望ましい。センサーの典型的なものは温度センサーおよび湿度センサーである。制御ユニットは、プログラマブルであることが望ましく、典型的にはCPUおよびメモリを含む。
【0013】
さらに、室内熱交換ユニットの下部ヘッダを加熱するヒーターを設けることも有効である。室内熱交換ユニットの液冷媒を強制的に蒸発して室外ユニットに供給し、冷媒回収ユニットに回収させることにより、室内熱交換ユニットにおいて結露水が発生するのを未然に防止できる。
【0014】
本発明の他の態様の1つは、上記の冷房システムと、冷房システムの室内熱交換ユニットにより冷却された空気をさらに冷却させて供給する主空調システムとを有するハイブリッド空調システムである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態にかかる冷房システムを含むハイブリッド空調システムの概要を示す図。
【図2】冷房システムの冷媒の循環を模式的に示す図。
【図3】室外ユニットの概略構成を示す図。
【図4】冷房システムの制御方法の一例を説明するためのフローチャート。
【図5】室外ユニットの異なる例を示す図。
【図6】室外ユニットのさらに異なる例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態を説明する。図1は、データセンターにおける空調システムの一例を示している。この空調システム(ハイブリッド空調システム)10は、床上2aと床下2bとの二重構造を持つフリーアクセス床2の床下2bの空間を用い、冷風(冷気)9を床上2aに配置された複数のサーバー5に供給し、サーバー5および室内(屋内)1を冷房する。ハイブリッド空調システム10は、床置形の主空調システム20と、室内1の天井3の近傍に室内ユニット40が配置された冷房システム(補助空調システム)30とを有する。
【0017】
主空調システム20は、床置形の屋内(室内)ユニット21と、屋外ユニット26とを含む。屋内ユニット21は、冷却用のチューブを含むエバポレータ22と、ヒーター23と、室内ファン(屋内ファン)24とを含む。屋外ユニット26は、コンプレッサ(圧縮機)27と、屋外ファン28と、凝縮用のチューブを含むコンデンサ29とを含む。主空調システム20においては、コンプレッサ27で圧縮した冷媒をコンデンサ29で外気温度を利用して冷やし、屋内ユニット21のエバポレータ22において冷媒を減圧および蒸発させることにより冷風9を生成する。
【0018】
この空調システム10において冷房システム30は補助的に動作する。冷房システム30が動作しているときは、まず、冷房システム30の室内ユニット40が室内1の空気7を冷却する。冷房システム30により冷却された空気8は、主空調システム20の屋内ユニット21によりさらに冷却され、生成された冷気9が床下2bを介して室内1のサーバー5を冷却する。外気の温度が低く、冷房システム30の冷房能力が室内1の熱負荷に対して十分な場合は、冷房システム30が主な冷房システムとなることも可能である。
【0019】
図2に、冷房システム30を抜き出して示している。また、図3に、冷房システム30の室外ユニット50を抜き出して示している。冷房システム30は、室内(屋内)に設置される室内ユニット(屋内ユニット、室内機)40と、室外(屋外)に設置される室外ユニット(屋外ユニット、室外機)50と、室内ユニット40および室外ユニット50を接続する配管システム60と、室内ユニット40および室外ユニット50を制御する制御ユニット90とを有する。
【0020】
室内ユニット40は、室内1に垂直(鉛直)に、または斜めに設置される室内熱交換ユニット41を含む。室内熱交換ユニット41は、複数の室内チューブ42(図1および2では1本のみ図示)と、液化した冷媒が供給される供給ヘッダ43と、気化した冷媒が集められる排出ヘッダ44とを含む。なお、本例の室内ユニット40は、ファン(室内ファン)は含まないが、室内ファンを含んでいてもよい。
【0021】
室内ユニット40においては、複数の室内チューブ42が供給ヘッダ(下部ヘッダ)43と排出ヘッダ(上部ヘッダ)44とを接続している。排出ヘッダ44は供給ヘッダ43よりも上方の天井3に近くなるように配置されている。したがって、室内チューブ42において気化した冷媒は、比重差により供給ヘッダ43から排出ヘッダ44に集められ、室外ユニット50に向けて供給される。さらに、室内ユニット40は、供給ヘッダ43を加熱するヒーター45を含む。
【0022】
室外ユニット50は、室外(典型的には屋外)100の、室内ユニット40よりも高い位置に設置される。室外ユニット50は、室内ユニット40の室内熱交換ユニット41よりも高い位置に設置される室外熱交換ユニット51を含む。室外熱交換ユニット51は、複数の室外チューブ52と、気化冷媒が供給される供給ヘッダ(上部ヘッダ)53と、液冷媒を排出する排出ヘッダ(下部ヘッダ)54とを含む。供給ヘッダ53は排出ヘッダ54よりも上に位置するように配置され、室外チューブ52が供給ヘッダ53と排出ヘッダ54とを繋ぐ(連通する)ように、鉛直方向に、または斜めに配置される。したがって、室外チューブ52で液化した冷媒は自重(比重差)により排出ヘッダ54に集められ室内熱交換ユニット41に供給される。
【0023】
室外ユニット50は、さらに、室外チューブ52に対して外気110を強制的に供給する室外ファン55と、室外ファン55を駆動するファンモーター56と、リザーバ71を備えた冷媒回収ユニット70と、室外熱交換ユニット51から室内熱交換ユニット41への液冷媒の供給を制御するバルブ群80とを含む。冷媒回収ユニット70およびバルブ群80については、以下でさらに説明する。
【0024】
室内チューブ42および室外チューブ52の典型的なものは、アルミニウム管または銅管であり、フィン付きであってもフィンがなくてもよい。フィンを用いる場合には、例えば、コルゲートタイプ、プレートタイプ、スパインタイプなどのものを用いることができる。冷媒は、作動条件とする室温で気化し、外気温で液化するものであればよい。冷媒としては、たとえば、HFC134a(化学式CHFCF)を挙げることができる。
【0025】
冷房システム30は、さらに、室内熱交換ユニット41と室外熱交換ユニット51との間で冷媒を自然循環させる配管システム60を有する。自然循環型(沸騰循環型)の冷房システム30の配管システム60は、室内熱交換ユニット41と室外熱交換ユニット51とをコンプレッサ(圧縮機)を介さずに連通させるものである。配管システム60は、液冷媒65を室外熱交換ユニット51から室内熱交換ユニット41に供給する第1の供給管61と、気化冷媒66を室内熱交換ユニット41から室外熱交換ユニット51に供給する第2の供給管62とを含む。第1の供給管61は、室外熱交換ユニット51の排出ヘッダ54と室内熱交換ユニット41の供給ヘッダ43とを連通する配管であり、第2の供給管62は、室内熱交換ユニット41の排出ヘッダ44と室外熱交換ユニット51の供給ヘッダ53とを連通する配管である。冷房システム30の運転中は、第1の供給管61は液冷媒65で満たされ、第2の供給管62は気化冷媒66で満たされる。
【0026】
室外ユニット50に含まれる冷媒回収ユニット70は、室外熱交換ユニット51の側方の室外チューブ52に対する外気110の流路を確保できる位置に配置されたリザーバ(レシーバ)71を含む。リザーバ71は垂直方向(鉛直方向)に延びたタンクであり、室外チューブ52に匹敵する長さを備えている。リザーバ71は、上端72が室外熱交換ユニット51の供給ヘッダ53に達し、下端73が排出ヘッダ54に達する長さであってもよく、さらに、上端72が供給ヘッダ53よりも上方に突き出ており、下端73が排出ヘッダ54より下側に突き出ていてもよい。冷媒回収ユニット70は、さらに、リザーバ71の上端72と室外熱交換ユニット51の供給ヘッダ53とを連通する第1の配管75と、リザーバ71の下端73と排出ヘッダ54とを連通する第2の配管76とを含む。
【0027】
室外熱交換ユニット51から室内熱交換ユニット41に対する液冷媒65の供給を制御するバルブ群80は、リザーバ71の下端73および排出ヘッダ54と第1の供給管61との接続を制御(オンオフ)する第1のバルブ81と、リザーバ71の上端72および供給ヘッダ53と第1の供給管61との接続を制御(オンオフ)する第2のバルブ82と、リザーバ71の縦方向の異なる位置に取り付けられたレベル制御用の複数のバルブ85a〜85dとを含む。第1のバルブ81を開にすることにより、室外熱交換ユニット51およびリザーバ71と、第1の供給管61とは液冷媒65の液面が強制的には制御されない状態で接続される。したがって、室外熱交換ユニット51の内部の液面は熱交換ユニット51の器内圧により制御される。
【0028】
レベル制御用の複数のバルブ85a〜85dはリザーバ71と第1の供給管61との接続をそれぞれオンオフするバルブであり、複数のバルブ85a〜85dが取り付けられたリザーバ71のそれぞれの位置(高さ)に液冷媒のレベル(液面)79a〜79dを形成できるようになっている。すなわち、第1のバルブ81を閉じ、レベル制御用の複数のバルブ85a〜85dを下側から順番に閉じていくとリザーバ71内の液面を制御でき、リザーバ71と室外熱交換ユニット51とは連通しているので室外熱交換ユニット51内の液面もリザーバ71内の液面により制御される。したがって、室外熱交換ユニット51においてバルブ群80により、外気110と気化冷媒66との熱交換に有効な面積を制御でき、室外熱交換ユニット51の熱交換能力を制御できる。
【0029】
バルブ群80の全てのバルブ81、82、85a〜85dを閉じると、室外熱交換ユニット51および冷媒回収ユニット70(リザーバ71)と第1の供給管61との接続は遮断され、室外熱交換ユニット51から室内熱交換ユニット41に液冷媒65は供給されない。また、冷媒回収ユニット70のリザーバ71は、運転中に配管システム60を流通する冷媒を液体状態で回収する容量を備えている。具体的には、液冷媒を供給する第1の供給管61を満たす液冷媒65を回収できる容量を備えている。リザーバ71の典型的な容量は0.5〜5リットルであるが、冷房システムに充填する冷媒量を鑑みて、容量を決定するべきである。
【0030】
また、室外熱交換ユニット51は、運転中に室外熱交換ユニット51および室内熱交換ユニット41に存在する冷媒を液体状態で回収するのに十分な容積を備えている。したがって、バルブ群80の全てのバルブ81、82、85a〜85dを閉じると、冷房システム30において流通する全冷媒を、気化状態で配管システム60および室内熱交換ユニット41に残る微量な冷媒を除き、液体状態で室外熱交換ユニット51および冷媒回収ユニット70に回収することができる。すなわち、外気温が低下して室外熱交換ユニット51および室内熱交換ユニット41の器内圧が低下したとき、気化冷媒66は温度の低い室外熱交換ユニット51の側で液化され、室外ユニット50は室外熱交換ユニット51および冷媒回収ユニット70で、液化された冷媒を保持するのに十分な容量を備えている。したがって、外気温が低下したときに、液化された冷媒65は全て室外ユニット50(室外熱交換ユニット51および冷媒回収ユニット70)で保持され、室内熱交換ユニット41には戻されない。このため、室内熱交換ユニット41においては熱交換が行われず、室内熱交換ユニット41の温度が低下するのを防止できる。
【0031】
たとえば、室外ユニット側の容量が十分でない場合、液冷媒側の供給管61を遮断したとしても、室外熱交換ユニットで液化した冷媒は、気化冷媒の供給管62を通って室内熱交換ユニットに逆流する可能性があり、室内熱交換ユニットに液冷媒が存在してしまう可能性がある。室内熱交換ユニットに液面があると、液冷媒は室内熱交換ユニット内で蒸発し、室内熱交換ユニットの温度がさらに低下して制限温度以下、たとえば、露点以下になる可能性がある。すなわち、室内熱交換ユニットに液面があると、液冷媒側の供給管61を遮断して、冷媒サイクルを遮断したとしても、気化冷媒側の供給管62がヒートパイプとして機能し、室内熱交換ユニットの温度が低下する可能性がある。
【0032】
本例の冷房システム30においては、液冷媒65は全て室外ユニット50に回収できる。したがって、気化冷媒側の供給管62がヒートパイプとして機能するのを防止できる。このため、バルブ群80により液冷媒側の供給管61を遮断して、冷媒サイクルを遮断すれば、室内熱交換ユニット41が規定の温度以下、たとえば露点以下に低下するのを確実に防止できる。
【0033】
また、この冷房システム30においては、施工する際に、室外ユニット50を、バルブ群80の全てのバルブ81、82、85a〜85dを閉じた状態で液冷媒を充填して施工現場に供給(搬送)できる。そして、室外ユニット50および室内ユニット40とを配管システム60で接続した後、第1のバルブ81を開にすることにより、配管システム60を含む冷房システム30を稼働させるために十分な冷媒を冷房システムに供給できる。すなわち、冷房システム30の稼働中は、液冷媒65を供給する第1の供給管61の内部は液冷媒65で満たされるため、冷房システム30を施工後、稼働させる前に、少なくとも第1の供給管61を液体状態で満たすのに十分な冷媒を充填する必要がある。本例の冷房システム30においては、室外ユニット50の冷媒回収ユニット70は、配管システム60を充填するために十分な量の液冷媒を保持する容量を備えている。したがって、冷媒回収ユニット70の第1のバルブ81を開くだけで冷房システム30を稼働させるのに十分な冷媒をシステム30に供給できる。
【0034】
自然循環タイプの冷房システムにおいては、室内ユニット40と室外ユニット50との高低差が2m以上になり、室内ユニット40と室外ユニット50との距離が10m以上になる場合も多い。従来、室内外のユニットの間に、この程度の高度差および距離があると、配管を充填する冷媒が不足し、充填用の冷媒タンクと冷媒充填用の装置を施工現場に持ち込む必要があった。本例の冷房システム30においては、冷媒充填用の機器の持ち込みと、冷媒充填に要する手間とを省くことができ、冷房システム30の施工に要するコストを低減できる。
【0035】
図4に、冷房システム30の制御ユニット90による制御の一例を示している。制御ユニット90は、CPUおよびメモリを含み、適当なプログラムをロードすることにより幾つかの機能を実現できるものである。この制御ユニット90は、図2に示すように、室外ユニット50のファンモーター56の回転数制御を行うことにより室外熱交換ユニット51を通過する風量を制御する風量制御機能91と、バルブ群80を制御することによりリザーバ71のレベル制御を行うレベル制御機能92と、室内ユニット40のヒーター45を制御するヒーター制御機能93とを含む。
【0036】
また、冷房システム30は、温度センサーTH1〜TH4をさらに含む。第1の温度センサーTH1は、室内ユニット40の供給口の近傍に配置されており、室内エアー7の温度、すなわち、サーバー室1の室内温度を検出できる。第2の温度センサーTH2は、室内ユニット40の排出口の近傍に配置されており、室内ユニット40から出力される冷風8の温度を検出できる。第3の温度センサーTH3は、室外熱交換ユニット51の出口の第1の供給管61に設置されており、液冷媒65の温度を検出できる。第4の温度センサーTH4は、室外熱交換ユニット51の吸気側に配置されており、室外(外気)110の温度(外気温)を検出できる。
【0037】
図4に示したフローチャートでは、まず、ステップ201において、温度センサーTH4で検出される外気温が−20℃以下でなく、次にステップ202において、室外熱交換ユニット51から供給される液冷媒65の温度(温度センサーTH3で検出された温度)が露点TD以下でなければ、ステップ203において、風量制御機能91による風量の制限およびレベル制御機能92による液冷媒の流量制限を行わず冷房システム30の冷却能力をフルに発揮させる。冷房システム30においては、外気温が室温よりも低ければ、冷媒が自然循環し、電力を基本的には使わずに、あるいは、外気ファン55を駆動する程度の電力で、外気110の熱により室内を冷房できる。さらに、この冷房システム30においては、窓を開けたり、ファンで換気したりせずに室内を外気により冷房できる。このため、冷房システム30により、サーバールームやクリーンルームなどの外気の導入が難しい領域を、極めて少ないエネルギーで冷房できる。なお、外気温が室温よりも高く、室外熱交換ユニット51で冷媒が凝縮されないような条件では冷媒は循環せず、冷房システム30により室内1は冷房されない。
【0038】
ステップ202において、温度センサーTH3で検出された液冷媒65の温度が露点TD以下になると、室内熱交換ユニット41において結露が発生しないようにシステム30を制御する。まず、ステップ204において、風量制御が可能であるか確認する。風量制御が可能であれば、ステップ205において、風量制御機能91がファンモーター56の回転数を制御して室外熱交換ユニット51に供給される外気量を制限する。ファンモーター56の回転数制御とともに、あるいは代わりに、室外ユニット50に風量コントロール用のダンパを設けて風量を制御してもよい。
【0039】
ステップ204において風量制御が不可能な場合、たとえば、既にファン55が停止していたり、ダンバが全閉である場合は、ステップ206においてレベル制御が可能であれば、ステップ207において、レベル制御機能92がバルブ群80のバルブ81、82、85a〜85dを制御することによりリザーバ71の液冷媒のレベルを制御する。まず、バルブ81を閉にしてリザーバ71の液レベルをバルブ85aの位置79aに設定し、室外熱交換ユニット51の熱交換能力を制限する。液冷媒65の温度が上昇せず、露点TD以下になる場合は、順番に、バルブ85b、85cおよび85dと閉じて、リザーバ71の液レベルを位置79b、79cおよび79dと上昇させ、室外熱交換ユニット51の熱交換能力を制限する。なお、この液冷媒レベル制御は、先の送風量制御204に前もって行ってもよく、または同時に行ってもよい。
【0040】
なお、ステップ204および205を省き、ステップ202において室外熱交換ユニット40から供給される液冷媒の温度(温度センサTH3)が露点TD以下になると、ステップ207において、レベル制御機能92により弁切り替えを行ってもよい。また、室内1の露点は室内1の湿度により変動するので、室内1に湿度センサーを設けて露点TDを確認するようにしてもよい。
【0041】
ステップ201において、温度センサーTH4で検出された外気温度が−20℃以下になったとき、また、ステップ206においてレベル制御が不可能であれば、ステップ208において、レベル制御機能92によりバルブ群80の全バルブ81、82、85a〜85dを閉じて、具体的にはリザーバ71の上端72を供給管61に接続する第2のバルブ82を閉じて、室外熱交換ユニット51から第1の供給管61への液冷媒65の供給を完全に停止する。さらに、ヒーター制御機能93は、室内熱交換ユニット41の供給ヘッダ(下部ヘッダ)43をヒーター45で加熱する。これにより、室内熱交換ユニット41に液冷媒が残っているような場合であっても冷媒を気化して室外ユニット50に送り込み、室内熱交換ユニット41の温度が低下するのを防止できる。
【0042】
バルブ群80の全バルブ81、82、85a〜85dを全閉し、室外熱交換ユニット51から第1の供給管61を介した室内熱交換ユニット41への液冷媒65の供給を完全に停止すると、冷房システム30の冷媒の殆ど、すなわち液冷媒は全て室外ユニット50の室外熱交換ユニット51および冷媒回収ユニット70に回収される。このため、室内熱交換ユニット41の内部に液冷媒が存在することを防止でき、室内熱交換ユニット41が露点以下になって結露するような事態を未然に防止できる。
【0043】
図5に、室外ユニットの異なる例を示している。この室外ユニット50aは、室外熱交換ユニット51と、冷媒回収ユニット70と、室外熱交換ユニット51からの冷媒の供給を遮断するバルブ群80とを備えている。バルブ群80は、冷媒の供給を遮断する第1のバルブ81により構成されている。この室外ユニット50aにおいても、冷媒回収ユニット70は、室外熱交換ユニット51と並列に接続されたリザーバ71を含み、リザーバ71は室外熱交換ユニット51の側方に配置され、リザーバ71の上端72が室外熱交換ユニット51の供給ヘッダ(上部ヘッダ)53と連通し、リザーバ71の下端73が室外熱交換ユニット51の排出ヘッダ(下部ヘッダ)54と連通している。
【0044】
このリザーバ71も、冷房システム30の運転中(稼働中)に配管システム60を流通する冷媒を液体状態で回収する容量を少なくとも備えている。したがって、外気温が低下したときに、冷房システム30を流通する液冷媒65を室外ユニット50aに回収できる。このため、室内熱交換ユニット41をドライアウトさせることが可能となり、室内熱交換ユニット41の温度低下を防止できる。
【0045】
リザーバ71は、室外熱交換ユニット51の側方で、供給ヘッダ43の側に片寄った状態、すなわち、室外ユニット50の上方にシフトした状態で配置されており、冷房システム30の通常運転中にはリザーバ71の内部に液面ができないようにしている。したがって、リザーバ71の内部は、通常運転中は気化冷媒により満たされており、基本的にはリザーバ71の全容量を冷媒回収のために利用できる。通常運転中にリザーバ71に液面が形成されていてもよく、この場合は、リザーバ71の全容量のうち、通常運転中に気化冷媒が占めている容量が液冷媒の回収のために利用できる。
【0046】
また、室外ユニット50および50aにおいては、リザーバ71が室外熱交換ユニット51の側方に、並列になるように配置されている。したがって、搬送中や、外気が低いときにシステム30が停止しているときは、リザーバ71および室外熱交換ユニット51に液冷媒が満たされているが、室外ユニット50の重心位置は比較的低く、転倒モーメントが小さい。このため、搬送しやすく、また、設置したときの基礎にかかる負荷も小さい。
【0047】
図6に、室外ユニットの異なる例を示している。この室外ユニット50bも、室外熱交換ユニット51と、冷媒回収ユニット70と、室外熱交換ユニット51からの冷媒の供給を遮断するバルブ群80とを備えている。バルブ群80は、冷媒の供給を遮断する第1のバルブ81により構成されている。この室外ユニット50bの冷媒回収ユニット70は、室外熱交換ユニット51と直列に接続されたリザーバ71を含み、リザーバ71は室外熱交換ユニット51の上方に、室外熱交換ユニット51の上流に位置するように配置され、リザーバ71には気化冷媒を供給する第2の供給管62が接続され、リザーバ71は室外熱交換ユニット51の供給ヘッダ(上部ヘッダ)53と連通している。したがって、気化冷媒は、リザーバ71を介して室外熱交換ユニット51に供給される。
【0048】
このリザーバ71も、冷房システム30の運転中(稼働中)に配管システム60を流通する冷媒を液体状態で回収する容量を少なくとも備えている。したがって、外気温が低下したときにバルブ81を全閉して冷媒循環を止めれば、冷房システム30を流通する液冷媒65を室外ユニット50bに回収でき、室内熱交換ユニット41をドライアウトできる。その際、冷媒回収動作をより速やかに終了するため、一定期間送風量を増やす制御を追加したり、室内ユニット内の加熱ヒータを通電して冷媒回収を促進する制御を付加してもよい。
【0049】
リザーバ71は、室外熱交換ユニット51の上方に配置されているので、冷房システム30の通常運転中は、リザーバ71の内部は気化冷媒により満たされており、リザーバ71の全容量を冷媒回収のために利用できる。したがって、リザーバ71を液冷媒のためにもっとも効率よく使用できる。一方、リザーバ71は室外熱交換ユニット51の上方に、直列になるように配置されている。このため、搬送中や、外気が低いときにシステム30が停止しているときは、リザーバ71に液冷媒が満たされるので室外ユニット50bの重心位置は比較的高くなり、上記の室外ユニット50および50aと比較すると転倒モーメントが大きくなり易い。しかしながら、リザーバ71および室外熱交換ユニット51を接続する配管は短く、最もシンプルな構成であり、コンパクトな室外ユニット50bを提供できる。
【0050】
以上では、リザーバ71の配置位置などが異なる幾つかの室外ユニットを例示しているが、本発明に含まれる室外ユニットはこれらに限定されない。冷媒回収ユニット70は、複数のリザーバ71を含んでいてもよく、上述した幾つかの位置に配置されたリザーバ71を適当に組み合わせて配置してもよい。また、冷房システム30の再稼働時に、リザーバ71に回収された液冷媒が急激に配管システム60に流入しないように、リザーバ71の出口側にオリフィスやキャピラリーチューブのような圧力損失の高い配管部材を取り付けてもよい。
【0051】
また、上記においては、データセンターに設置される冷房システムを例に説明しているが、冷房の対象となる負荷はサーバーなどの情報機器に限定されない。例えば、クリーンルームの冷房など、窓を開けて風を取り込むことが難しいケースの冷房にも、本発明の冷房システムおよびハイブリッド空調システムを好適に用いることができる。
【0052】
さらに、上記では、床置形の冷房システムとの組み合わせを例に、本発明の冷房システムを説明しているが、異なるタイプの冷房システムと組み合わせたり、単独で使用したりしてもよい。本発明の冷房システムは、単独のほか、既存の冷房システムを組み合わせて利用するなど、上記以外の様々な方法で冷房する条件または環境に合わせて使用できる。
【符号の説明】
【0053】
30 冷房システム(補助空調システム)
40 室内ユニット、 41 室内熱交換ユニット(屋内熱交換ユニット)
50 室外ユニット、 51 室外熱交換ユニット(屋外熱交換ユニット)
60 配管システム
70 冷媒回収ユニット、 71 リザーバ
80 バルブ群、 81 遮断弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室外に設置される室外熱交換ユニットであって、室内に設置される室内熱交換ユニットとの間で配管システムを介して冷媒が自然循環される室外熱交換ユニットと、
前記室外熱交換ユニットに対し直列または並列に接続された少なくとも1つのリザーバを含む冷媒回収ユニットであって、運転中に前記配管システムを流通する冷媒を液体状態で回収する容量を少なくとも備えた冷媒回収ユニットと、
前記室外熱交換ユニットから前記室内熱交換ユニットへの液冷媒の供給を遮断する少なくとも1つのバルブを含むバルブ群とを有する室外ユニット。
【請求項2】
請求項1において、前記少なくとも1つのリザーバは、前記室外熱交換ユニットの側方に並列に接続された第1のリザーバを含む、室外ユニット。
【請求項3】
請求項2において、前記バルブ群は、前記第1のリザーバの縦方向の異なる位置に取り付けられた複数のバルブを含む、室外ユニット。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、前記少なくとも1つのリザーバは、前記室外熱交換ユニットの上側に直列に接続された第2のリザーバを含む、室外ユニット。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の室外ユニットと、
前記室内熱交換ユニットを含む室内ユニットと、
前記室外熱交換ユニットおよび前記室内熱交換ユニットの間を冷媒が自然循環するように接続する前記配管システムとを有する冷房システム。
【請求項6】
請求項5において、前記室内熱交換ユニットに結露が発生する条件を監視するセンサーと、
前記室内熱交換ユニットが結露する状態になると前記室外ユニットの前記バルブ群に含まれるバルブを閉じて前記室内熱交換ユニットへの液冷媒の供給を制御する制御ユニットとを、さらに有する冷房システム。
【請求項7】
請求項5または6において、前記室内熱交換ユニットの下部ヘッダを加熱するヒーターを有する、冷房システム。
【請求項8】
請求項5ないし7のいずれかに記載の冷房システムと、
前記冷房システムの前記室内熱交換ユニットにより冷却された空気をさらに冷却させて供給する主空調システムとを有するハイブリッド空調システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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