説明

冷暗所付き住宅

【課題】温度が高い空気や光に晒されることなく、食品や物品を収納保管できる冷暗所を備えた住宅を提供する。
【解決手段】天井高さが0.8m〜1.4mで、かつ、窓のない壁で画成されてなる冷暗所12が設けられているので、この冷暗所12に、手の届く範囲でかつ温度が高い空気や光に晒されることなく、食品や物品を収納保管できる。また、冷暗所12を画成する壁を、住宅内の内壁によって構成することによって、外部の温度の影響を受け難くなり、収納保管に適したものとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品等の物品を収納する冷暗所がある冷暗所付き住宅に関する。
【背景技術】
【0002】
貯蔵適性の異なる食品や物品の貯蔵管理については、貯蔵条件として冷却が必要な食品や物品については冷蔵庫を利用し、それ以外の食品、物品については台所近辺に設置した収納場所に保管することが行われている。このような収納場所の一つとして、特許文献1に記載されているように、キッチンの近傍にパントリーを設けることがある。
この特許文献1に記載の技術では、間仕切り壁に囲まれた一つの部屋の空間内にキッチンとパントリーとが設けられ、これらのキッチンとパントリーとが、その境界部分に沿って設けられた家具により区画されている。
このように、家具が間仕切り壁の役割を果たすので、間仕切り壁が不要となる。従って、間仕切り壁により室内空間が狭められることがなくなり、また、境界部分に沿った家具を利用できるので、有効活用できる空間が広くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−61572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記パントリーは、通常の居室と同程度の天井高さを有しているので、空間を有効に利用するためには食品や物品を上下方向に収納していく必要がある。このため、上側に収納された食品や物品は、手が届き難いため取り出し難くなるとともに、上方の比較的温度が高い空気に晒されて、劣化し易くなる。
また、パントリーに収納された食品や物品は、光に晒されることが多いため、それに向かない食品や物品を収納することは好ましくない。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、手の届く範囲に収納できるとともに、温度が高い空気や光に晒されることなく、食品や物品を収納保管できる冷暗所を備えた住宅を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、例えば図1〜図4に示すように、住宅内に冷暗所が設けられてなる冷暗所付き住宅であって、
天井高さが0.8m〜1.4mで、かつ、窓のない壁で画成されてなる冷暗所12が設けられていることを特徴とする。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、天井高さが0.8m〜1.4mで、かつ、窓のない壁で画成されてなる冷暗所12が設けられているので、この冷暗所12に、手の届く範囲でかつ温度が高い空気や光に晒されることなく、食品や物品を収納保管できる。
また、冷暗所12を画成する壁を、住宅内の内壁によって構成することによって、外部の温度の影響を受け難くなり、収納保管に適したものとなる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の冷暗所付き住宅において、
前記壁の表面の壁材が調湿建材で形成されていることを特徴とする。
【0009】
調湿建材とは、微細な空気層を無数にもった構造の建材(壁材)であり、室内の湿度が高くなると、余分な湿気を吸って結露やカビの発生を抑制し、また、冬場などの過乾燥の際に、溜め込んだ湿気を放出して、快適湿度にコントロールするものである。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、壁の表面の壁材が調湿建材で形成されているので、冷暗所を適切な湿度に保持することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の冷暗所付き住宅において、
前記冷暗所12に冷房手段(例えば冷輻射パネル15)が設けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、冷暗所12に冷房手段(例えば冷輻射パネル15)が設けられているので、夏季においても、冷暗所12の温度を20℃以下に保持できる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の冷暗所付き住宅において、
前記冷暗所12が平面視矩形状に形成されており、
前記冷暗所12の平面視における短辺を構成する壁に沿って前記冷房手段としての冷輻射パネル15が設けられ、長辺を構成する壁に出入口13が設けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、冷暗所12の短辺を構成する壁に沿って冷房手段としての冷輻射パネル15が設けられているので、冷房手段を薄型にできるとともに、長辺を構成する壁に沿って設ける場合に比して、冷輻射パネル15をコンパクトに納めることができる。
また、冷輻射パネル15からの放熱(冷熱の放熱)によって、冷暗所12の平面視長辺方向において、温度の勾配が生じるので、収納すべき物の種類によって、温度に合わせて適宜収納位置を選択できる。
さらに、冷暗所12の長辺を構成する壁に出入口13が設けられているので、出入口13を大きくとることができるとともに、出入口13からの奥行きが浅くなるので、食品や物品の収納、取り出しが行い易くなる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の冷暗所付き住宅において、
前記冷暗所12の出入口13が設けられた壁を境にして、天井高さが0.8m〜1.4mの収納室10が前記冷暗所12に隣接して設けられ、この収納室10の出入口11は、前記冷暗所12の出入口13が設けられた壁以外の壁に設けられていることを特徴とする。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、天井高さが0.8m〜1.4mの収納室10が冷暗所12に隣接して設けられ、この収納室10から出入口13を通って冷暗所12に出入りできるので、収納室10に収納されている物品を冷暗所12に直ぐに収納できる。
また、収納室10の出入口11が、冷暗所12の出入口13が設けられた壁以外の壁に設けられているので、住宅内の他の場所から冷暗所12に行く場合、必ず収納室10を経由することになる。したがって、収納物の種類が複数ある場合に、適宜選択しながら、収納室10と冷暗所12にそれぞれ収納でき、便利である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、天井高さが0.8m〜1.4mで、かつ、窓のない壁で画成されてなる冷暗所が設けられているので、この冷暗所に、手の届く範囲でかつ温度が高い空気や光に晒されることなく、食品や物品を収納保管できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る冷暗所付き住宅の一例を示すもので、1階の平面図である。
【図2】同、冷暗所と収納室を示す平面図である。
【図3】同、冷輻射パネルを冷暗所に設置した状態を示す斜視図である。
【図4】同、収納棚を冷暗所に設置した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明に係る冷暗所付き住宅の一例を示すもので、住宅の1階の平面図である。図1に示すように、平面視において右角部に、玄関ポーチ1が配置されており、このポーチに隣接して玄関土間2が配置されている。この玄関土間2の左側に玄関ホール3が配置されており、この玄関ホール3に面して上階へ至る階段4が配置されている。
また、平面視において左角部に、ダイニング5が配置されており、このダイニング5に隣接してリビング6とキッチン7とが配置されている。リビング6には玄関ホール3から出入りできるようになっている。
【0020】
前記玄関土間2に隣接して、収納室10が配置されている。この収納室10は天井高さが0.8m〜1.4mの低天井室であり、その床は土間床となっている。この土間床は玄関土間2の床と同じ高さである。収納室10と玄関土間2とを仕切る壁に、収納室10の出入口11が設けられている。したがって、利用者は、玄関土間2から直ぐに収納室10に入りことができ、例えば、自転車、外部で使用する道具等を収納するのに便利である。なお、収納室10を形成する壁の一部は外壁となっており、この外壁に明り採り用の窓10aが設けられている。
【0021】
図1および図2に示すように、前記収納室10に隣接して冷暗所12が配置されている。冷暗所12とは、温度が20℃以下でかつ日が当らず暗い場所のことをいう。
この冷暗所12は、天井高さが0.8m〜1.4mで、かつ、窓のない壁で画成された平面視矩形状の室である。冷暗所12を形成(画成)する壁は全て住宅内部の内壁で構成されており、これによって、冷暗所12は外部の気温による影響を受け難くなっている。
冷暗所12と収納室10とを仕切る壁には、出入口13が形成されている。この出入口13が形成された壁は、冷暗所12の平面視における一方の長辺を構成する壁であり、この壁の幅全体に亙って出入口13が形成されている。この出入口13には、引違い式の引戸13aが設けられている。この引戸13aは密閉性があり、かつ、遮光性を備えた戸である。
このように、冷暗所12の出入口13が設けられた壁を境にして、天井高さが0.8m〜1.4mの収納室10が冷暗所12に隣接して設けられ、この収納室10の出入口11は、冷暗所12の出入口13が設けられた壁と直角に配置された壁に設けられている。
【0022】
前記冷暗所12を構成する壁の表面および天井材は調湿建材で形成されている。この調湿建材は、微細な空気層を無数にもった構造の建材(壁材)であり、冷暗所12の湿度が高くなると、余分な湿気を吸って結露やカビの発生を抑制し、また、冬場などの過乾燥の際に、溜め込んだ湿気を放出して、冷暗所12の湿度を適切にコントロールするようになっている。また、冷暗所12の床は収納室10の土間床と等しい高さの土間床となっておいる。
また、冷暗所12の平面視における一方の短辺を構成する壁に沿って冷房装置としての冷輻射パネル15が設けられている。冷輻射パネル15は、図3に示すように、複数の管部材15a…を有している。これら管部材15a…は、冷暗所の床面から天井面までに亘って鉛直方向に沿って延び、所定間隔をおいて並列して設けられている。
【0023】
一方、図2に示すように、冷暗所12の外側、例えば、冷暗所12に隣接配置されたスペース14に、図示しないヒートポンプが設けられている。また、前記管部材15a…のそれぞれの上端部おび下端部には、図示しない配管の一端部と他端部とがそれぞれが接続されて、図示しない閉経路を形成しており、これら閉経路内を水等の流体が流れるようになっている。そして、前記ヒートパイプは閉経路に設けられ、閉経路内を循環ポンプによって流れる流体をヒートポンプにて冷却するようになっている。冷却された流体は冷輻射パネル15の管部材15a…を上端から下端に向けて流れて、当該冷輻射パネル15の放熱(冷熱の放熱)によって、冷暗所12の空気が冷却されるようになっている。
なお、冷暗所12には、図示しない温度センサが設置されており、この温度センサによって冷暗所12の温度が20℃以下となるように、前記ヒートポンプおよび循環ポンプが制御されるようになっている。
【0024】
前記冷暗所12には、図2〜図4に示すように、二つの収納棚16,17が設置されている。収納棚16は冷暗所12の平面視長辺を構成する壁に沿って設けられており、収納棚17は短辺を構成する壁に沿って設けられている。これら収納棚16,17の棚板はすのこ状に形成されており、棚板の上下方向に空気が抜けるようになっている。
収納棚16,17に収納される食品等は、野菜や果物の場合、外側から内部を目視可能なバスケット20に入れられたうえで収納されたり、直接乗せることで収納される。したがって、このバスケット20を通して野菜や果物を外側から目視したり、直接目視することによって、野菜や果物の状態を観察できるようになっている。
また、収納棚16の冷輻射パネル15に近い側には、ワイン21、ミネラルウォータ22、醤油23等の比較的低い温度状態で保管することが好ましい物が収納されるようになっている。
また、収納棚17が設置されている側の壁には、換気扇18が設けられており、野菜等から発生したエチレンガスを冷暗所12から抜けるようになっている。
【0025】
本実施の形態によれば、天井高さが0.8m〜1.4mで、かつ、窓のない壁で画成されてなる冷暗所12が設けられているので、この冷暗所12に、手の届く範囲でかつ比較的温度が高い空気や光に晒されることなく、食品や物品を収納保管できる。
また、冷暗所12の壁の表面の壁材が調湿建材で形成されているので、冷暗所12を適切な湿度に保持することができる。
さらに、冷暗所12に冷房手段として冷輻射パネル15が設けられているので、夏季においても、冷暗所の温度を20℃以下に保持できる。
【0026】
また、冷暗所12の短辺を構成する壁に沿って冷輻射パネル15が設けられているので、冷房手段を薄型にできるとともに、長辺を構成する壁に沿って設ける場合に比して、冷輻射パネル15をコンパクトに納めることができる。
また、冷輻射パネルからの放熱(冷熱の放熱)によって、冷暗所12の長辺方向において、温度の勾配が生じるので、収納すべき物の種類によって、温度に合わせて適宜物品の収納位置を選択できる。
さらに、冷暗所12の長辺を構成する壁に出入口13が設けられているので、出入口13を大きくとることができるとともに、出入口13からの奥行きが浅くなるので、食品や物品の収納、取り出しが行い易くなる。
【0027】
また、天井高さが0.8m〜1.4mの収納室10が冷暗所12に隣接して設けられ、この収納室10から出入口11を通って冷暗所12に出入りできるので、収納室10に収納されている物品を必要に応じて冷暗所12に直ぐに収納できる。
また、収納室10の出入口11が、冷暗所12の出入口13が設けられた壁以外の壁に設けられているので、住宅内の他の場所と冷暗所12とを行き来する場合、必ず収納室10を経由することになる。したがって、収納物の種類が複数ある場合に、適宜選択しながら、収納室10と冷暗所12にそれぞれ収納でき、便利である。収納物の種類が複数ある場合に便利である。
【符号の説明】
【0028】
10 収納室
11 出入口
12 冷暗所
13 出入口
15 冷輻射パネル(冷房手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
住宅内に冷暗所が設けられてなる冷暗所付き住宅であって、
天井高さが0.8m〜1.4mで、かつ、窓のない壁で画成されてなる冷暗所が設けられていることを特徴とする冷暗所付き住宅。
【請求項2】
請求項1に記載の冷暗所付き住宅において、
前記壁の表面の壁材が調湿建材で形成されていることを特徴とする冷暗所付き住宅。
【請求項3】
請求項1または2に記載の冷暗所付き住宅において、
前記冷暗所に冷房手段が設けられていることを特徴とする冷暗所付き住宅。
【請求項4】
請求項3に記載の冷暗所付き住宅において、
前記冷暗所が平面視矩形状に形成されており、
前記冷暗所の平面視における短辺を構成する壁に沿って前記冷房手段としての冷輻射パネルが設けられ、長辺を構成する壁に出入口が設けられていることを特徴とする冷暗所付き住宅。
【請求項5】
請求項4に記載の冷暗所付き住宅において、
前記冷暗所の出入口が設けられた壁を境にして、天井高さが0.8m〜1.4mの収納室が前記冷暗所に隣接して設けられ、この収納室の出入口は、前記冷暗所の出入口が設けられた壁以外の壁に設けられていることを特徴とする冷暗所付き住宅。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−36699(P2012−36699A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−179986(P2010−179986)
【出願日】平成22年8月11日(2010.8.11)
【出願人】(307042385)ミサワホーム株式会社 (569)
【Fターム(参考)】