説明

冷菓製造装置および冷菓製造方法

【課題】冷菓ミックスを再利用して効率的に塊状冷菓を製造することができる冷菓製造装置および冷菓製造方法を提供する。
【解決手段】塊状冷菓を製造する冷菓製造装置であって、液体状の冷菓ミックスを冷却して流動性のある固体状の冷菓ミックスを生成するミックス冷却装置10と、ミックス冷却装置10から供給された冷菓ミックスを成形して塊状冷菓を製造する塊状冷菓成形機20と、塊状冷菓成形機20において塊状冷菓の成形に用いられなかった残余の冷菓ミックスを回収する回収装置40と、回収された冷菓ミックスに含まれる気体を除去する脱気装置50と、脱気された冷菓ミックスをミックス冷却装置10に戻すミックス還流手段60を備えている冷菓製造装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷菓製造装置および冷菓製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ソフトクリームやシェーク等の冷菓の製造・販売において、ソフトクリームなどの冷菓ミックスが収容されている冷菓製造機から冷菓ミックスを回収し再利用する方法として、特許文献1に開示されているような方法が知られている。
【0003】
特許文献1に開示されている冷菓ミックスの再利用方法は、冷菓製造装置内に残存する冷菓ミックスを液化温度に達するまで加熱して液化させ、当該液状の冷菓ミックスを冷菓製造装置内から回収した後、保存して次回の再利用に備えるというものである。
【特許文献1】特開平5−308906号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、液体状の冷菓ミックスを冷却して生成した流動性のある固体状の冷菓ミックスを成形して、例えば、球状の塊状冷菓を製造する場合において、塊状冷菓の成形過程において発生する余剰の冷菓ミックスを、先行文献1に開示されている方法により再利用すると、ミックスの種類によっては、製造される塊状冷菓が脆くて壊れやすいものになり、冷菓ミックスを再利用して効率的に塊状冷菓を製造することが困難であるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような問題を解決すべくなされたものであって、冷菓ミックスを再利用して効率的に塊状冷菓を製造することができる冷菓製造装置および冷菓製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記目的は、塊状冷菓を製造する冷菓製造装置であって、液体状の冷菓ミックスを冷却して流動性のある固体状の冷菓ミックスを生成するミックス冷却装置と、前記ミックス冷却装置から供給された冷菓ミックスを成形して塊状冷菓を製造する塊状冷菓成形機と、前記塊状冷菓成形機において塊状冷菓の成形に用いられなかった残余の冷菓ミックスを回収する回収装置と、回収された冷菓ミックスに含まれる気体を除去する脱気装置と、脱気された冷菓ミックスを前記ミックス冷却装置に戻すミックス還流手段を備えている冷菓製造装置により達成される。
【0007】
この冷菓製造装置において、前記脱気装置は、回収された冷菓ミックスを収容する密閉型のタンクと、該タンク内の空気を吸引してタンク内を減圧する吸引手段とを備えていることが好ましい。
【0008】
また、前記塊状冷菓成形機は、外周面に凹部を有する円筒状の回転体と、前記回転体に隣接して配置される充填部材とを備えており、前記充填部材は、前記ミックス冷却装置から供給された冷菓ミックスを前記回転体の凹部に導くミックス導入孔と、前記回転体の凹部内の空気を外部に導く排出路と、前記排出路に溜まる冷菓ミックスを前記回収装置に導く残余ミックス排出孔とを備えていることが好ましい。
【0009】
また、前記ミックス冷却装置は、前記ミックス還流手段から戻された冷菓ミックスを収容する貯留部、および、前記貯留部に接続し、前記貯留部内に収容される冷菓ミックスの液面に生じる気泡を吸引する吸引手段を備えていることが好ましい。
【0010】
また、本発明の上記目的は、塊状冷菓を製造する冷菓製造方法であって、液体状の冷菓ミックスを冷却して流動性のある固体状の冷菓ミックスを生成するミックス冷却工程と、前記ミックス冷却工程から供給された冷菓ミックスを成形して塊状冷菓を製造する塊状冷菓成形工程と、前記塊状冷菓成形工程において塊状冷菓の成形に用いられなかった残余の冷菓ミックスを回収する回収工程と、回収された冷菓ミックスに含まれる気体を除去する脱気工程と、脱気された冷菓ミックスを前記ミックス冷却工程に戻すミックス還流工程を備えている冷菓製造方法により達成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、冷菓ミックスを再利用して効率的に塊状冷菓を製造することができる冷菓製造装置および冷菓製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に係る冷菓製造装置について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る冷菓製造装置の概略構成図である。図1に示すように、冷菓製造装置1は、ミックス冷却装置10、塊状冷菓成形機20、回収装置40、脱気装置50およびミックス還流手段60を備えている。なお、冷菓とは、公正取引委員会の認定を受け業界の自主規約として定められている「アイスクリーム類及び氷菓の表示に関する公正競争規約」にいう「アイスクリーム」、「アイスミルク」、「ラクトアイス」、「氷菓」を含む概念である。また、冷菓ミックスとは、アイスクリーム類製造用の原料を混合・加工したものであって、常温において液状の物をいう。アイスクリーム類製造用の原料としては、乳製品、植物乳、甘味料、卵製品、各種風味原料、安定剤、着香料及び着色料等を例示することができる。
【0013】
ミックス冷却装置10は、液体状の冷菓ミックスを収容する貯留部10aと、当該貯留部10aから供給された液体状の冷菓ミックスを冷却して流動性のある固体状の冷菓ミックスを生成するフリーザ10bとを備えている。フリーザ10bには、生成された流動性のある固体状の冷菓ミックスを塊状冷菓成形機20に送るポンプ付き管路11が接続している。
【0014】
塊状冷菓成形機20は、ミックス冷却装置10から供給される流動性のある固体状の冷菓ミックスを成形して塊状冷菓を製造する装置であり、例えば、図2の断面図に示すように、温水ロール21、ピンロール22および充填部材23を備えている。なお、図2に示す塊状冷菓成形機20は、冷菓ミックスを球状に成形する塊状冷菓成形機を示している。
【0015】
温水ロール21とピンロール22とは、それぞれ断面円形の中空状をなす円筒状の回転体であり、その外周面に互いに対応する複数の半球状の凹部24,25が円周方向に同じ間隔をおいて形成されている。温水ロール21およびピンロール22における凹部24,25の直径は互いに等しくなるように形成されている。
【0016】
温水ロール21は、図示しない駆動装置に連結された回転軸26に固定されており、ピンロール22は、回転軸26と平行な固定軸27に回転自在に支持され、例えば、歯車などの適宜な手段により回転軸26に連結されている。温水ロール21およびピンロール22は、近接箇所において凹部24,25同士の位置が一致したうえ、それぞれ反対方向(矢示A方向および矢示B方向)に同じ速度で回転するように構成されている。
【0017】
温水ロール21の内部は密閉されており、図示しない温水供給手段および温水排出手段が設けられており、温水が温水ロール21内を連続的に流れるように構成されている。
【0018】
ピンロール22の内部の固定軸27には、円板28が固定されており、当該円板28の外周部に、固定軸27と平行な円筒29が固定されている。この円筒29は、固定軸27より少し温水ロール21寄りの下方に配置して設けられており、円筒29の一部は円板28の外周面28aよりも僅かに突出している。これら円板28と円筒29により、一種のカムが構成されている。
【0019】
ピンロール22の各凹部25の底部には、ピンロール22の周壁を放射方向に貫通する複数のガイド孔30があけられ、各ガイド孔30にはロッド31がガイド孔軸方向摺動自在に設けられている。各ロッド31の内端部には、他の部分より直径の大きい頭部32が形成されている。各ロッド31の外端部は、凹部の底面形状と一致するような凹状に形成されている。
【0020】
ピンロール22の内部は密閉されており、図示しないポンプが接続している。このポンプの作動により、ピンロール22の内部を減圧することによって、各ロッド31が常にピンロール22の内側に吸引され、頭部32が円板28の外周面28aまたは円筒29の外周面29aに接するように構成されている。ロッド31の頭部32が円板28に接しているときには、ロッド31の外端部が凹部25の底部と一致するように構成されており、ロッド31の頭部32が円筒29に接しているときには、ロッド31の外端部が凹部25の底部から凹部25内に突出するように構成されている。
【0021】
充填部材23は、温水ロール21とピンロール22との近接箇所の上方において、温水ロール21およびピンロール22に隣接して配置されている。充填部材23の下部両側には、温水ロール21およびピンロール22に常時摺接可能な形状を有する摺接面33,33が形成されており、当該摺接面33,33には、それぞれ、温水ロール21およびピンロール22の外周面の円周方向に沿って延びる排出路34,34が形成されている。充填部材23の中央部には、充填部材23の上端から下方に伸びて二股に分岐し、排出路34,34に開口するミックス導入孔35が形成されており、このミックス導入孔35を挟んだ両側には、充填部材23の上端から下方に伸びて排出路34,34に開口する残余ミックス排出孔36,36が形成されている。
【0022】
ミックス導入孔35には、上述したミックス冷却装置10のフリーザ10bから伸びる管路11が接続しており、ミックス冷却装置10から供給された流動性のある固体状の冷菓ミックスが、ミックス導入孔35および排出路34,34を介して温水ロール21およびピンロール22の凹部24,25に導かれるように構成されている。また、残余ミックス排出孔36,36は、排出路34,34に溜まる冷菓ミックスを後述する回収装置40に導く機能を有する。
【0023】
回収装置40は、ポンプ41を有する管路42により構成されており、ポンプ41の駆動により、排出路34,34に溜まる冷菓ミックスを吸引して後述するミックス貯留タンク51に供給できるように構成されている。
【0024】
脱気装置50は、塊状冷菓成形機20から回収された冷菓ミックスに含まれている空気などの気体を冷菓ミックスから除去する装置であり、ミックス貯留タンク51、脱気タンク52および脱気タンク52に管路53を介して接続する吸引手段54を備えている。ミックス貯留タンク51は、塊状冷菓成形機20から回収された冷菓ミックスを貯留するタンクである。このミックス貯留タンク51には、レベルスイッチ等の液面検出装置55が設けられており、タンク51内の冷菓ミックスが所定量に達した場合に、バルブ56が自動的に開放して脱気タンク52に冷菓ミックスを供給できるように構成されている。
【0025】
脱気タンク52は、ミックス貯留タンク51から供給された冷菓ミックスを収容する密閉型のタンクである。吸引手段54は、脱気タンク52内の空気を吸引して、脱気タンク52内の空気を吸引して脱気タンク内を減圧状態にする手段であり、本実施形態においては、例えば真空ポンプを採用している。
【0026】
脱気タンク52の下部は、ポンプ付き管路により構成されるミックス還流手段60を介してミックス冷却装置10の貯留部10aに接続している。また、脱気タンク52とミックス還流手段60との接続部の上方には、レベルスイッチ等の液面検出装置57,58が上下方向に並んで設けられている。上側の上限液面検出装置57が冷菓ミックスの液面を検出した場合には、バルブ5が自動的に開放して冷菓ミックスをミックス冷却装置10の貯留部10aに供給できるように構成されており、下側の下限液面検出装置58が冷菓ミックスの液面を検出した場合には、バルブ59を自動的に閉じて冷菓ミックスのミックス冷却装置10の貯留部10aへの供給を停止できるように構成されている。
【0027】
このように構成された冷菓製造装置1を用いて、塊状冷菓を製造する方法を図1から図3を参照しながら以下に説明する。なお、図3は、冷菓製造方法のフローチャートである。冷菓製造方法は、基本的にミックス冷却工程S1と塊状冷菓成形工程S2と回収工程S3と脱気工程S4とミックス還流工程S5により構成されている。また、これら一連の工程は、無菌状態で行われる。
【0028】
まず、図1に示すミックス冷却装置10においてミックス冷却工程S1が行われる。すなわち、ミックス冷却装置10の貯留部10aに収容された液体状の冷菓ミックスをフリーザ10bに供給して冷却することにより、流動性のある固体状の冷菓ミックスを生成する。ミックス冷却装置10において生成される流動性のある固体状の冷菓ミックスの温度は、冷菓ミックスの流動性を確保する観点から、例えば−6℃〜−7℃であることが好ましい。
【0029】
次に、ミックス冷却装置10から流動性のある固体状の冷菓ミックスを塊状冷菓成形機に供給し、冷菓ミックスを成形して塊状冷菓を製造する(塊状冷菓成形工程S2)。具体的には、図2に示すように、塊状冷菓成形機20のミックス導入孔35に供給された冷菓ミックスは、温水ロール21およびピンロール22の凹部24,25にそれぞれ充填される。このとき凹部24,25内にあった空気は、矢示Cおよび矢示Dに示すように、充填部材23の排出路34,34を通って外部に導かれ排出されるため、凹部24,25内に充填される冷菓ミックス内に空気が混入されることは無い。また、ピンロール22のロッド31は、凹部25の底部よりもピンロール22の内側に退入して円板28と接しているので、冷菓ミックスは凹部25全体に半球状に充填される。また、冷菓ミックスは凹部24,25のみに充填されるのではなく、排出路34,34にも充填されることとなる。
【0030】
温水ロール21およびピンロール22の対応する凹部24,25に充填された冷菓ミックスは、凹部24,25が温水ロール21とピンロール22の近接箇所を通過する際に一体に形成されて球状の塊状冷菓が形成される。このとき、冷菓ミックスは、凹部24,25の外側に盛り上がっているので、互いに強い力で接触して完全に一体化される。
【0031】
温水ロール21の内部には温水が連続的に供給されており、温水ロール21の凹部24が加熱されているため、球状に一体化された塊状冷菓は、温水ロール21の凹部24から離れ易くなっている。一方、ピンロール22の凹部25内は塊状冷菓により冷やされているので、塊状冷菓は、ピンロール22の凹部25内から離れにくくなっている。したがって、球状の塊状冷菓は、ピンロール22の凹部25内に収容されたまま、ピンロール22の回転に伴って下方に移動する。そして、ピンロール22内部に設けられたロッド31が円筒29に当たって凹部25内に突出することによりロッド31の外端部に押された塊状冷菓が凹部25から落下して排出される。
【0032】
このようにして形成された塊状冷菓は、その後、例えば、液体窒素中に沈めることにより凍結処理を施す急冷工程を経た後、グレーズ剤を塊状冷菓の表面に被覆するコーティング工程に供されて製品として完成する。
【0033】
一方、排出路34,34に溜まった冷菓ミックスは、球状の塊状冷菓の成形に用いられなかった残余の冷菓ミックスであり、残余ミックス排出孔36,36を介して回収装置40により回収され(回収工程S3)、ミックス貯留タンク51に収容される。これにより、排出路34,34が冷菓ミックスにより詰まることを防止することができ、温水ロール21とピンロール22との凹部24,25内に冷菓ミックスが充填される際の空気抜きを確実に行うようにすることができる。
【0034】
回収装置の作用により排出路34,34から回収された冷菓ミックスは、残余ミックス排出孔36,36や管路40を通過する間、あるいは、ミックス貯留タンク51に貯留されている間に溶けて液体状の冷菓ミックスになる。また、回収装置40は、残余ミックス排出孔36,36を介して、冷菓ミックスの他に空気も同時に吸引することとなるので、回収装置40により回収される冷菓ミックスには、空気が多量に溶け込むと共に、気泡が混入されることとなる。
【0035】
ミックス貯留タンク51に所定量の冷菓ミックスが溜まると、液面検出装置55がミックスの液面を検知して、自動的にバルブ56を開放し、収容されている冷菓ミックスを脱気装置50の脱気タンク52に供給する。
【0036】
脱気タンク52に導かれた冷菓ミックスは、当該脱気タンク52内にて脱気処理され、冷菓ミックスに含まれる気体が除去される(脱気工程S4)。具体的には、吸引手段54の作用によって脱気タンク52内の空気を吸引して脱気タンク52内を減圧状態にすることにより、冷菓ミックス中に溶け込んでいる溶存気体の気泡化を促進させて脱気を行う。気泡化した溶存気体や、もともと冷菓ミックス中に気泡として存在していた気体は、冷菓ミックスの液面に浮き上がって、吸引手段44に吸引されて外部に排出される。この脱気工程S4において、冷菓ミックスに脱気処理を施すことにより、脱気された冷菓ミックスが生成される。
【0037】
脱気工程S4が終了し、冷菓ミックスに含まれていた気体が除去された冷菓ミックスは、ミックス還流手段60の作用によりミックス冷却装置10の貯留部10aに戻される(ミックス還流工程S5)。このとき、脱気タンク52に設けられている上限液面検出装置57および下限液面検出装置58により、冷菓ミックスの液面制御を行いつつ冷菓ミックスをミックス冷却装置10に供給している為、脱気タンク52内の冷菓ミックスの液面がミックス還流手段60よりも下方に位置するような事態を回避することができ、脱気タンク52内の空気がミックス冷却装置10内に誤って供給されることを防止することができる。
【0038】
ミックス冷却装置10に戻された脱気後の冷菓ミックスは、当該ミックス冷却装置10において再度冷却されて流動性のある固体状の冷菓ミックスに生成された後、塊状冷菓成形機20に供給されて塊状冷菓に成形される。脱気された冷菓ミックスを再利用して製造された塊状冷菓は、その内部に空気の気泡をほとんど含まないものであり、壊れにくいものとなる。
【0039】
このように、本実施形態に係る冷菓製造装置1によれば、塊状冷菓成形機20から回収される冷菓ミックスを再利用しても、壊れにくい塊状冷菓を製造することができるため、塊状冷菓の製造不良が発生することを防止しつつ、冷菓ミックスを再利用して効率的に塊状冷菓を製造することができる。
【0040】
また、本実施形態に係る冷菓製造装置1により製造された塊状冷菓は、空気の気泡をほとんど含まないため、従来のように冷菓ミックスに対して脱気処理を行わずに当該冷菓ミックスを再利用して製造された塊状冷菓に比べて比重が高いものとなる。これにより、塊状冷菓を液体窒素中に沈めて凍結処理を施すような場合であっても、塊状冷菓が液体窒素中に沈まずに浮き上がってしまい、塊状冷菓全体を凍結処理できないというような事態が発生することを防止することができ、凍結処理を施した塊状冷菓の品質を一定に保つことが可能となる。
【0041】
また、上述した凍結処理を施した塊状冷菓に対して振動を与えて転がしながら当該塊状冷菓の表面全体に、例えばグレーズ剤のようなコーティング剤を被覆するコーティング処理を行う場合であっても、塊状冷菓が転がる際に受ける衝撃によって塊状冷菓が割れてしまうような事態が発生することを効果的に防止することができ、効率的に塊状冷菓を製造することができる。
【0042】
また、従来のように、冷菓ミックスに対して脱気処理を行わずに当該冷菓ミックスを再利用して製造された塊状冷菓には、空気の気泡を多く含む物やほとんど含まない物が混在し、製品の品質にバラツキが発生していたが、本実施形態に係る冷菓製造装置1によれば、空気の気泡をほとんど含まない塊状冷菓を製造することができるため、製品の品質にバラツキが発生することを防止することができる。
【0043】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の具体的な態様は上記実施形態に限定されない。例えば、塊状冷菓成形機20から回収された冷菓ミックスをミックス貯留タンク51に導く構成を採用しているが、塊状冷菓成形機20から回収された冷菓ミックスを直接脱気装置50の脱気タンク52に導くような構成を採用することもできる。このような構成を採用することにより、冷菓製造装置1の設置スペースを削減することができる。
【0044】
また、本実施形態において、ミックス還流手段60からミックス冷却装置10の貯留部10aに戻された冷菓ミックスの液面に、万が一空気の気泡が発生するような事態に備えて、ミックス冷却装置10は、図4に示すように、貯留部10aに収容される冷菓ミックスの液面75に生じる気泡76を吸引する吸引手段70を貯留部10aに接続する構成を採用してもよい。図4においては、吸引手段70としてエゼクタポンプを例示している。このエゼクタポンプは、ノズル71の上部において矢示Eにて示すように圧縮エアを通過させることにより、ノズルの先端部72に負圧を形成し、この負圧を利用して冷菓ミックスの液面75の気泡76をノズルの吸引口73から矢示Fにて示すように吸い上げ、圧縮エアと共に外部に排出するものである。なお、吸引手段70として、エゼクタポンプの他に真空ポンプを使用して気泡76を吸引除去してもよい。
【0045】
このような構成により、ミックス還流手段60から供給される冷菓ミックスが貯留部10aに収容される際に、仮に空気の気泡76が生じたとしても、当該気泡76を吸引手段70により吸引除去することができるため、ミックス冷却装置10において生成される流動性を有する固体状の冷菓ミックス中に空気の気泡が発生することを確実に防止することができ、壊れにくい塊状冷菓を効率的に製造することができる。
【0046】
また、冷菓ミックスの液面75に生じる気泡76を効率的に除去する観点から、吸引手段70の作動を冷菓ミックスの液面制御と連動させて制御することが好ましい。具体的には、例えば、貯留部10a内に図示しないレベルスイッチ等の液面検出装置を設け、ミックス還流手段60からミックス冷却装置10の貯留部10aに供給される冷菓ミックスの液面レベルが、吸引手段70の吸引口73の設置位置に達したときに冷菓ミックスの供給を停止すると共に、吸引手段70を作動させて液面75に生じている気泡76を吸引除去するように自動制御することが好ましい。
【0047】
また、本実施形態においては、脱気装置50として、脱気タンク52と真空ポンプ等の吸引手段とを組み合わせた減圧式脱気装置を採用しているが、このような構成に特に限定されない。例えば、気体を通過させるが液体を通過させない気液分離膜により冷菓ミックスに含まれる気体を除去する気体膜分離装置や、超音波振動により冷菓ミックスに含まれる気体を除去する超音波脱気装置を採用することもできる。また、減圧式脱気装置、気体膜分離装置および超音波脱気装置を組み合わせることにより脱気装置50を構成することもできる。
【0048】
また、本実施形態において、塊状冷菓成形機20として、球状の塊状冷菓を形成する装置を採用しているが、例えば、球状の他に楕円球状やキュービック形状の塊状冷菓を成形する塊状冷菓成形機を採用することもできる。
【0049】
また、本実施形態において、塊状冷菓成形機20のピンロール22の内部を減圧するためのポンプの吸引作用により、ロッド31とガイド孔30との隙間を介して凹部25からピンロール22の内部に吸引され、塊状冷菓の成形に用いられなかった残余の冷菓ミックスを回収装置40に導くような構成を採用することもできる。このような構成により、冷菓ミックスの再利用を効率的に行うことができる。
【0050】
また、図5に示すように、塊状冷菓成形機20のピンロール22の内部を減圧するためのポンプとして、回収装置40のポンプ41を併用し、当該ポンプ41とピンロール22の内部とを管路43を介して接続する構成を採用してもよい。このような構成により、ロッド31とガイド孔30との隙間を介して凹部25からピンロール22の内部に吸引される残余の冷菓ミックスを管路43を介して回収することができると共に、冷菓製造装置1の小型化や設備コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明に係る冷菓製造装置を示す概略構成図である。
【図2】図1に示す冷菓製造装置を構成する塊状冷菓成形機を示す概略断面図である。
【図3】図1に示す冷菓製造装置の作動を説明するためのフローチャートである。
【図4】図1に示す冷菓製造装置を構成するミックス冷却装置の変形例を示す概略構成図である。
【図5】図1に示す冷菓製造装置の変形例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0052】
1 冷菓製造装置
10 ミックス冷却装置
20 塊状冷菓成形機
24,25 凹部
35 ミックス導入孔
36,36 残余ミックス排出孔
34,34 排出路
40 回収装置
50 脱気装置
52 脱気タンク
54 吸引手段
60 ミックス還流手段



【特許請求の範囲】
【請求項1】
塊状冷菓を製造する冷菓製造装置であって、
液体状の冷菓ミックスを冷却して流動性のある固体状の冷菓ミックスを生成するミックス冷却装置と、
前記ミックス冷却装置から供給された冷菓ミックスを成形して塊状冷菓を製造する塊状冷菓成形機と、
前記塊状冷菓成形機において塊状冷菓の成形に用いられなかった残余の冷菓ミックスを回収する回収装置と、
回収された冷菓ミックスに含まれる気体を除去する脱気装置と、
脱気された冷菓ミックスを前記ミックス冷却装置に戻すミックス還流手段を備えている冷菓製造装置。
【請求項2】
前記脱気装置は、回収された冷菓ミックスを収容する密閉型のタンクと、該タンク内の空気を吸引してタンク内を減圧する吸引手段とを備えている請求項1に記載の冷菓製造装置。
【請求項3】
前記塊状冷菓成形機は、外周面に凹部を有する円筒状の回転体と、前記回転体に隣接して配置される充填部材とを備えており、
前記充填部材は、前記ミックス冷却装置から供給された冷菓ミックスを前記回転体の凹部に導くミックス導入孔と、
前記回転体の凹部内の空気を外部に導く排出路と、
前記排出路に溜まる冷菓ミックスを前記回収装置に導く残余ミックス排出孔とを備えている請求項1又は2に記載の冷菓製造装置。
【請求項4】
前記ミックス冷却装置は、前記ミックス還流手段から戻された冷菓ミックスを収容する貯留部、および、前記貯留部に接続し、前記貯留部内に収容される冷菓ミックスの液面に生じる気泡を吸引する吸引手段を備えている請求項1から3のいずれかに記載の冷菓製造装置。
【請求項5】
塊状冷菓を製造する冷菓製造方法であって、
液体状の冷菓ミックスを冷却して流動性のある固体状の冷菓ミックスを生成するミックス冷却工程と、
前記ミックス冷却工程から供給された冷菓ミックスを成形して塊状冷菓を製造する塊状冷菓成形工程と、
前記塊状冷菓成形工程において塊状冷菓の成形に用いられなかった残余の冷菓ミックスを回収する回収工程と、
回収された冷菓ミックスに含まれる気体を除去する脱気工程と、
脱気された冷菓ミックスを前記ミックス冷却工程に戻すミックス還流工程を備えている冷菓製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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