冷蔵庫
【課題】食品の鮮やかな赤色を維持しつつ、貯蔵空間の酸素を減少させ食品の鮮度を維持することができる冷蔵庫を提供する。
【解決手段】食品を貯蔵する貯蔵空間と、貯蔵空間を冷却する冷却手段と、貯蔵空間の酸素を減少させる酸素減少手段と、冷却手段及び酸素減少手段を制御する制御手段を備え、制御手段は、貯蔵空間に食品が貯蔵されてから所定条件を満たすまで貯蔵空間に貯蔵された食品を冷却し、前記所定条件を満たした後に貯蔵空間の酸素を減少させ始める。
【解決手段】食品を貯蔵する貯蔵空間と、貯蔵空間を冷却する冷却手段と、貯蔵空間の酸素を減少させる酸素減少手段と、冷却手段及び酸素減少手段を制御する制御手段を備え、制御手段は、貯蔵空間に食品が貯蔵されてから所定条件を満たすまで貯蔵空間に貯蔵された食品を冷却し、前記所定条件を満たした後に貯蔵空間の酸素を減少させ始める。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
冷蔵庫に貯蔵される食品の劣化要因として、空気中に存在する酸素による食品の酸化が知られている。そこで、食品を貯蔵する貯蔵空間の酸素を減少させることで、食品の酸化を抑えて食品の鮮度を維持することができる冷蔵庫が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−167472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
肉や赤身の魚などのミオグロビンを含む赤色の食品では、一般的に、鮮やかな赤色であるほど新鮮であるとされ人々に好まれるが、上記のような冷蔵庫でミオグロビンを含む食品を保存する場合、貯蔵空間に投入された食品が冷却される前に貯蔵空間の酸素を減少させると、食品自身の鮮度は維持できるものの、食品が青みを帯びた赤色(紫赤色)に変色することを本発明者は見出した。
【0005】
そこで、本発明は、ミオグロビンを含む赤色の食品の鮮やかな赤色を維持しつつ、貯蔵空間の酸素を減少させ食品の鮮度を維持することができる冷蔵庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係る冷蔵庫は、食品を貯蔵する貯蔵空間と、前記貯蔵空間を冷却する冷却手段と、前記貯蔵空間の酸素を減少させる酸素減少手段と、前記冷却手段及び前記酸素減少手段を制御する制御手段を備え、前記制御手段は、前記貯蔵空間に前記食品が貯蔵されてから所定条件を満たすまで前記貯蔵空間を冷却し、前記所定条件を満たした後に前記貯蔵空間の酸素を減少させ始めることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施形態に係る冷蔵庫の断面図である。
【図2】図1の要部拡大図である。
【図3】図2のA-A断面図である。
【図4】図1に示す冷蔵庫の電気構成を示すブロック図である。
【図5】図1に示す冷蔵庫の制御を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面に基づき本発明の1実施形態について説明する。本実施形態に係る冷蔵庫10は、図1に示すように、前面に開口する断熱箱状の冷蔵庫本体12の内部に貯蔵空間が形成され、貯蔵空間が断熱仕切壁14によって上方の冷蔵空間20と下方の冷凍空間40とに区画している。
【0009】
冷蔵空間20は、さらに仕切体21によって上下に区画され、上部空間に複数段の載置棚を設けた冷蔵室22が設けられ、下部空間に上下2段に設けられた容器26を配置する野菜室24が設けられている。
【0010】
冷蔵室22の開口部は、冷蔵庫本体12の一側部の上下に設けられたヒンジにより回動自在に枢支された冷蔵室扉23により閉塞されている。冷蔵室扉23の前面にはこの冷蔵庫10を操作するための操作パネル36が配されている。操作パネル36は、押釦式の操作スイッチ37を押圧操作することで、各貯蔵空間の冷却強度を切り替えて設定したり、後述する「解凍モード」や「赤みモード」の実行を選択するモード選択手段として機能する。
【0011】
野菜室24の開口部は、引き出し式の野菜室扉25により閉塞されている。野菜室扉25の裏面側には、容器26を保持する左右一対の支持枠が固着されており、開扉動作とともに容器26が庫外に引き出されるように構成されている。
【0012】
野菜室24の下方に断熱仕切壁14を介して配置された冷凍空間40には、自動製氷装置を備えた製氷室(不図示)と第1冷凍室44を左右に併設しており、その下方には第2冷凍室46が設けられている。
【0013】
製氷室、第1冷凍室44、及び第2冷凍室46の開口部も、野菜室24と同様、引き出し式の扉45,47により閉塞され、各扉45,47の裏面側に固着した左右一対の支持枠に収納容器が保持されており、開扉動作とともに該収納容器が庫外に引き出されるように構成されている。
【0014】
図1及び図2に示すように、第1冷凍室44に設けられた収納容器60は、内部に食品Mを貯蔵する貯蔵空間が形成された上面に開口する容器体で、上面の開口部が蓋体62によって密閉状態で閉塞可能に設けられている。蓋体62は、例えば、扉45の開扉動作に伴って開放され、閉扉動作に伴って蓋体62が収納容器60の上面開口部を閉塞するように構成されている。収納容器60には、蓋体62によって上面開口部が閉塞されているか否か検知する蓋センサ65(図4参照)が設けられている。
【0015】
収納容器60の後面には、透過孔64が設けられている。収納容器60が第1冷凍室44内部に収納される扉45の閉扉状態において、この透過孔64が酸素濃度調節装置70によって覆われ、収納容器60が密閉される。
【0016】
酸素濃度調節装置70は、図2及び図3に示すように、収納容器60の内部空間の酸素を減少させる酸素減少手段72と、収納容器60の内部空間の酸素を増加させる酸素増加手段74とを備える。
【0017】
酸素減少手段72は、固体高分子電解質膜76、アノード電極(陽極)77、カソード電極(陰極)78からなる電解膜素子79を備え、板状の固体高分子電解質膜76がアノード電極77とカソード電極78によって挟まれた状態でケース80内に収納されユニット化されている。
【0018】
詳細には、酸素減少手段72は、カソード電極78に対向するケース80の前面にスリット81が穿設され、アノード電極77に対向するケース80の後面にスリット83が穿設されている。ケース80の前面に穿設されたスリット81を介してケース80内に収納されたカソード電極78と収納容器60の後面に設けられた透過孔64とが対向する。
【0019】
ケース80の前面には、スリット81を取り囲むようにシール材82が設けられており、扉45が閉扉され第1冷凍室44内部に収納容器60が収納されると、シール材82が透過孔64の外側を取り囲むように収納容器60の後面に当接する。
【0020】
アノード電極77及びカソード電極78は、いずれも集電体、多孔質支持発水膜、カーボン電極、白金触媒などから形成されリード線85を介して電源部84に接続されている。
【0021】
酸素増加手段74は、アノード電極77及びカソード電極78とが反対に設けられている点、つまり、アノード電極77が、ケース80の前面に設けられたスリット81を介して収納容器69の後面に設けられた透過孔64に対向し、カソード電極78が、スリット83が設けられたケース80の後面に対向して設けられている点において、酸素減少手段72と相違するのみで、その他の構成は酸素減少手段72と同一であるため、ここでは、酸素減少手段72と同一の構成については同じ符号を付して酸素増加手段74の詳細な説明を省略する。
【0022】
そして、酸素減少手段72及び酸素増加手段74において、電源部84よりアノード電極77とカソード電極78の間に数ボルトの直流電圧が印加されると、アノード電極77において空気中の水分が分解されて酸素と水素イオンが発生し、アノード電極77において発生した水素イオンが固体高分子電解質膜76を通ってカソード電極78へ移動する。
【0023】
つまり、酸素減少手段72では、電源部84から電源が供給されると、アノード電極77側からカソード電極78側(すなわち、収納容器60の外部から内部)へ水素イオンが移動して収納容器60内部の酸素と反応して水を生成し、収納容器60内の酸素を減少させる。また、酸素増加手段74では、電源部84から電源が供給されると、アノード電極77側(すなわち、収納容器60内部)に酸素が発生し、収納容器60内の酸素を増加させる。
【0024】
第1冷凍室44の天井を構成する断熱仕切壁14の下面には、上方に向けて凹陥する凹部48が形成されており、この凹部48内に温度センサ49が配設されている。
【0025】
温度センサ49は、第1冷凍室44に配設される収納容器60内部に貯蔵された食品Mが有する熱エネルギーを赤外線の放射量として検出する赤外線センサを備え、検出された赤外線の放射量から収納容器60内部に貯蔵された食品Mの温度を測定する。
【0026】
そして、冷蔵空間20の後部には、冷蔵空間20内の空気を冷却する冷却手段に相当する冷蔵用冷却器52と、冷蔵用冷却器52で冷却された空気を冷蔵室22及び野菜室24へ送風する冷蔵用ファン53が設けられ、冷凍空間40の後部には、冷凍空間40内の空気を冷却する冷凍用冷却器54と、冷凍用冷却器54で冷却された空気を製氷室、第1冷凍室44及び第2冷凍室へ送風する冷凍用ファン55が設けられている。
【0027】
冷蔵用冷却器52及び冷凍用冷却器54は、圧縮機32や凝縮器(不図示)や切替弁(不図示)とともに冷凍サイクルを構成し、圧縮機32から吐出された冷媒によって冷却され、冷蔵用ファン53及び冷凍用ファン55を制御することにより冷蔵空間20及び冷凍空間40に設けられた各貯蔵室をそれぞれ所定温度に冷却する。
【0028】
第1冷凍室44については、上記した冷凍サイクルの運転、及び第1冷凍室44に冷気を吹き出す吹出口の開度を変更するダンパ38を制御して室内への冷気導入量を調整することで、第1冷凍室44内に配設された収納容器60内の温度が、例えば、−18℃から−3℃までの食品Mが凍結する冷凍温度帯と、1℃〜5℃までの冷蔵温度帯とに切換可能に設けられている。なお、本実施形態では、初期設定状態において、第1冷凍室44内の温度が第2冷凍室46内の温度と同じ温度(例えば、−18℃)に設定されている。
【0029】
図1に示すように、冷蔵庫本体12の背面下部には、冷凍サイクルの一部を構成する圧縮機32及び凝縮器を収納する機械室30が配設されており、機械室30の背面に制御部34が設けられている。
【0030】
制御部34は、図4に示すように、操作スイッチ37、温度センサ49、蓋センサ65などの各種センサやタイマ66等から入力される信号や、EEPROM等の不揮発性記録媒体からなるメモリ39に記憶された制御プログラムに基づいて、圧縮機32、ダンパ38、冷蔵用ファン53、冷凍用ファン55、酸素濃度調節装置70を駆動する電源部84などの各種電気部品を制御する。
【0031】
このような構成の冷蔵庫10において、使用者が操作パネル36の操作スイッチ37を操作することで「赤みモード」を選択すると、制御部34は、「赤みモード」を実行する。ここで「赤みモード」とは、肉や赤身魚などのミオグロビンを含み赤身の食品Mを保存する貯蔵方法であって、食品Mの鮮やかな赤色を維持又は向上させるための貯蔵方法である。
【0032】
詳細には、図5に示すように、制御部34は、収納容器60内に食品Mが貯蔵されたことを検出すると、タイマ66により食品Mが貯蔵されてからの経過時間を測定する(ステップS1参照)。なお、本実施形態では、第1冷凍室44の扉45が開扉され収納容器60の上面開口部が開放された状態から、扉45が閉扉され収納容器60の上面開口部が蓋体62により閉塞されるのを蓋センサ65が検出することによって、つまり、蓋センサ65が蓋体62の開放状態から閉塞状態への変化を検出することによって、収納容器60内に食品Mが貯蔵されたことを検出する。
【0033】
なお、上記のような蓋センサ65以外にも、例えば、温度センサ49の検出温度の変化や、あるいは、収納容器60内の貯蔵物の重量を測定する重量センサを設けこの重量センサの検出値の変化などから、収納容器60内に食品Mが貯蔵されたことを検出するように構成してもよい。また、「赤みモード」が選択させたことを検出する、あるいは、その検出後一定時間経過すると、収納容器60に食品Mが貯蔵されたことを検出するなど、食品Mを貯蔵した時に使用者が操作できるスイッチを設け、そのスイッチのON操作を検出する、あるいは、その検出後一定時間経過すると、収納容器60に食品Mが貯蔵されたことを検出してもよい。
【0034】
次いで、制御部34は、タイマ66によって測定される収納容器60内に食品Mが貯蔵されてからの経過時間が所定時間(例えば、1時間)に達するまで、酸素減少手段72を停止させた、あるいは酸素減少手段停止72の停止を維持した状態で収納容器60内の食品Mを冷却することで、収納容器60内の酸素濃度を低下させずに食品Mが収納容器60内の酸素によって酸化しやすい状態を維持しつつ食品Mを冷却する(図5のステップS2、ステップS3参照)。つまり、収納容器60内に食品Mが貯蔵されてから所定時間に達するまでの期間は、食品Mの酸化を維持する期間に相当する。
【0035】
なお、上記した所定時間は、収納容器60内に投入される食品Mの凍結が予想される時間以上に設定されることが好ましい。
【0036】
そして、収納容器60内に食品Mが貯蔵されてから所定時間が経過すると、収納容器60内の酸素を減少させ始めるための所定条件を満たしたとして、その後、酸素減少手段72の動作を開始して収納容器60内の酸素を減少させ始める(図5のステップS4参照)。そして、収納容器60内の酸素濃度が所定値以下になるまで、あるいは、酸素減少手段72の動作時間が所定時間に達するまで酸素減少手段72を動作させ、その後、酸素減少手段72を停止する(図5のステップS5参照)。また、酸素減少手段72の動作を開始した後も第2冷凍室46内が所定温度になるように継続して冷却されている。
【0037】
以上のように、本実施形態の冷蔵庫10では、収納容器60内に食品Mが投入されてから所定条件を満たすまで、収納容器60内の食品Mを冷却するとともに、酸素減少手段72を停止させ収納容器60内に貯蔵された食品Mの酸化を維持する。
【0038】
これにより、食品Mに含まれるミオグロビンのうち、青みを帯びた赤色(紫赤色)を呈する還元状態にあるミオグロビン(MbFe(II))が酸化され鮮やかな赤色を呈するオキシミオグロビン(MbFe(II)O2)に変化し、食品Mの色彩がより鮮やかな赤色となり、食品Mの赤みが向上する。また、食品Mに含まれるミオグロビンのうち、収納容器60に投入される前から既に酸化状態にあるオキシミオグロビン(MbFe(II)O2)は、還元状態のミオグロビン(MbFe(II))との間で可逆的に酸化還元反応が起こりえるが、上記のように酸素減少手段72を停止させ収納容器60内の酸素分圧がほぼ一定に維持されているため、オキシミオグロビン(MbFe(II)O2)の還元反応を抑えて収納容器60内に貯蔵された食品Mの鮮やかな赤色を維持することができる。
【数1】
【0039】
そして、所定条件を満たしてから酸素減少手段72を動作させ収納容器60内の酸素を減少させるため、収納容器60内に投入された食品Mがある程度冷却されオキシミオグロビン(MbFe(II)O2)の還元反応を起こりにくくしてから収納容器60内の酸素を減少させることができる。そのため、収納容器60内の酸素が減少しても、食品Mに含まれるオキシミオグロビン(MbFe(II)O2)が還元されて青みを帯びた赤色(紫赤色)を呈する還元状態にあるミオグロビン(MbFe(II))が生成されにくくなり、食品Mの鮮やかな赤色を維持することができる。
【0040】
しかも、所定条件を満たした後では、収納容器60内の酸素が減少しているため、食品Mに含まれるオキシミオグロビン(MbFe(II)O2)が上記式(1)に示すような褐色を呈するメトミオグロビン(met MbFe(III))に変化する、いわゆるメト化を抑えることができ、食品Mの劣化を抑え鮮度を維持することができ長期保存が可能になる。
【0041】
特に、本実施形態では、収納容器60を配設する第1冷凍室44内の温度が、食品Mを凍結させることができる0℃以下に設定されている場合において、収納容器60内に投入された食品Mが凍結するまで酸素減少手段72を停止させた状態で収納容器60内の食品Mを冷却し、食品Mの凍結後に酸素減少手段72の動作を開始して収納容器60内の酸素を減少させ始めることが好ましい。このような場合であると、食品組織が凍結し食品Mに含まれるオキシミオグロビン(MbFe(II)O2)がほぼ還元されることがない状態になってから収納容器60内の酸素を減少させることができ、より一層、食品Mに含まれるオキシミオグロビン(MbFe(II)O2)が還元されにくくなり、食品Mの鮮やかな赤色を維持しつつ、貯蔵空間の酸素を減少させ食品Mの鮮度を維持することができる。
【0042】
なお、本実施形態では、収納容器60内に食品Mが貯蔵されてからの経過時間が所定時間に達すると、酸素減少手段72の動作を開始して収納容器60内の酸素を減少させ始めるように構成したが、例えば、温度センサ49によって測定される収納容器60内に貯蔵された食品Mの温度から該食品Mの凍結を検出すると、酸素減少手段72の動作を開始して収納容器60内の酸素を減少させ始めるように構成してもよい。このように、温度センサ49によって、収納容器60内に貯蔵された食品Mの凍結を検出することで、不必要に酸素減少手段72の動作を開始させるまでの時間が不必要に長くなることが無く、食品Mの鮮度劣化を抑えることができる。
【0043】
また、上記した本実施形態では、収納容器60内に食品Mが貯蔵されてからの経過時間が所定時間(例えば、1時間)に達するまで(つまり、所定条件を満たすまで)、酸素減少手段72を停止させるように構成したが、その際に、酸素濃度調節装置70の酸素増加手段74を動作させ収納容器60内の酸素濃度を大気中の酸素濃度より増加させた状態を維持してもよい。
【0044】
このように、収納容器60内に食品Mが貯蔵されてから所定条件を満たすまで、酸素増加手段74を動作させて収納容器60内の酸素濃度を増加させた状態とすることで、食品Mに含まれる還元状態のミオグロビン(MbFe(II))が酸化されオキシミオグロビン(MbFe(II)O2)が生成されやすくなり、より一層、食品Mの赤みが向上する。
【0045】
また、上記した冷蔵庫10において、使用者が操作パネル36の操作スイッチ37を操作することで「解凍モード」を選択すると、制御部34は、酸素濃度調節装置70の酸素増加手段74を動作させて収納容器60内の酸素を増加させた後に、第1冷凍室44内の温度を冷凍温度帯から冷蔵温度帯に変化させる「解凍モード」を実行する。
【0046】
このように、収納容器60内の酸素濃度を大気中の酸素濃度より増加させた後に、収納容器60が配設された第1冷凍室44の温度を冷凍温度帯から冷蔵温度帯に変化させることで、食品Mが酸化しやすくオキシミオグロビン(MbFe(II)O2)が生成されやすい雰囲気下で冷凍された食品Mを解凍することができ、鮮やかな赤色を保ったまま食品Mを解凍することができる。
【実施例】
【0047】
上述した「赤みモード」によって冷凍貯蔵された牛肉の色度を測定し、貯蔵性能評価試験を行った。
【0048】
試験では、実施例として、第1冷凍室44に配設した収納容器60内に牛肉を貯蔵してからT1(=1時間)経過するまで、つまり、時刻0から時刻T1まで酸素減少手段72を停止(OFF)させ、その後、時刻T1から時刻T2(=1週間)まで酸素減少手段72を動作(ON)させて、収納容器60内の酸素濃度を低下させた雰囲気下で牛肉を冷凍貯蔵した。
【0049】
また、比較例1として、収納容器60内に食品Mを貯蔵した直後からT2(=1週間)経過するまで、つまり、時刻0から時刻T2まで酸素減少手段72を停止(OFF)させて、収納容器60内の酸素濃度を低下させずに牛肉を冷凍貯蔵した。
【0050】
比較例2として、収納容器60内に牛肉を貯蔵した直後からT2(=1週間)経過するまで、つまり、時刻0から時刻T2まで酸素減少手段72を動作(ON)させて、収納容器60内の酸素濃度を低下させた雰囲気下で牛肉を冷凍貯蔵した。
【0051】
比較例3として、収納容器60内に牛肉を貯蔵してからT1(=1時間)経過するまでつまり、時刻0から時刻T1まで酸素減少手段72を動作(ON)し、その後、時刻T1から時刻T2(=1週間)まで酸素減少手段72を停止(OFF)させて、収納容器60内の酸素濃度を低下させずに雰囲気下で牛肉を冷凍貯蔵した。
【0052】
なお、実施例、比較例1〜3では、いずれも、第1冷凍室44内の温度を−20度に設定した。
【0053】
上記のような実施例及び比較例1〜3の各方法により貯蔵された牛肉について、収納容器60内に貯蔵してから1時間(T1)経過したもの、及び収納容器60内に貯蔵してから1週間(T2)経過したもののそれぞれについて、分光測色方法(JIS Z8722)により色を測定した。結果を下記表1に示す。
【表1】
【0054】
実施例及び比較例1と、比較例2及び3とを比較すると明らかなように、収納容器60内に牛肉を貯蔵してから1時間(=T1)経過するまで酸素減少手段72を停止(OFF)し収納容器60内の酸素濃度を維持することで、鮮やかな赤色を維持したまま牛肉が凍結したが、収納容器60内の酸素濃度を低下させると紫赤色に変色した状態で牛肉が凍結した。
【0055】
また、実施例では、収納容器60内に牛肉を貯蔵してから1時間(=T1)経過後から酸素減少手段72を動作(ON)して収納容器60内の酸素を減少させることで、鮮やかな赤色を維持したまま牛肉を1週間凍結保存することができたが、比較例1では、凍結保存中に牛肉の色が褐色に変化し、比較例2では、紫赤色に変色した状態を維持したまま牛肉が1週間凍結保存され、比較例3では、凍結保存中に牛肉の色が褐色に変化しており、各比較例1〜3では牛肉が褐色あるいは紫赤色に変色したが、本実施例では鮮やかな赤色を維持したまま冷凍保存が可能となっていた。
【符号の説明】
【0056】
10…冷蔵庫 20…冷蔵空間 22…冷蔵室
24…野菜室 34…制御部 36…操作パネル
37…操作スイッチ 40…冷凍空間 44…第1冷凍室
46…第2冷凍室 48…凹部 49…温度センサ
52…冷蔵用冷却器 53…冷蔵用ファン 54…冷凍用冷却器
55…冷凍用ファン 60…収納容器 62…蓋体
64…透過孔 65…蓋センサ 66…タイマ
70…酸素濃度調節装置 72…酸素減少手段 74…酸素増加手段
M…食品
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
冷蔵庫に貯蔵される食品の劣化要因として、空気中に存在する酸素による食品の酸化が知られている。そこで、食品を貯蔵する貯蔵空間の酸素を減少させることで、食品の酸化を抑えて食品の鮮度を維持することができる冷蔵庫が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−167472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
肉や赤身の魚などのミオグロビンを含む赤色の食品では、一般的に、鮮やかな赤色であるほど新鮮であるとされ人々に好まれるが、上記のような冷蔵庫でミオグロビンを含む食品を保存する場合、貯蔵空間に投入された食品が冷却される前に貯蔵空間の酸素を減少させると、食品自身の鮮度は維持できるものの、食品が青みを帯びた赤色(紫赤色)に変色することを本発明者は見出した。
【0005】
そこで、本発明は、ミオグロビンを含む赤色の食品の鮮やかな赤色を維持しつつ、貯蔵空間の酸素を減少させ食品の鮮度を維持することができる冷蔵庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係る冷蔵庫は、食品を貯蔵する貯蔵空間と、前記貯蔵空間を冷却する冷却手段と、前記貯蔵空間の酸素を減少させる酸素減少手段と、前記冷却手段及び前記酸素減少手段を制御する制御手段を備え、前記制御手段は、前記貯蔵空間に前記食品が貯蔵されてから所定条件を満たすまで前記貯蔵空間を冷却し、前記所定条件を満たした後に前記貯蔵空間の酸素を減少させ始めることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施形態に係る冷蔵庫の断面図である。
【図2】図1の要部拡大図である。
【図3】図2のA-A断面図である。
【図4】図1に示す冷蔵庫の電気構成を示すブロック図である。
【図5】図1に示す冷蔵庫の制御を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面に基づき本発明の1実施形態について説明する。本実施形態に係る冷蔵庫10は、図1に示すように、前面に開口する断熱箱状の冷蔵庫本体12の内部に貯蔵空間が形成され、貯蔵空間が断熱仕切壁14によって上方の冷蔵空間20と下方の冷凍空間40とに区画している。
【0009】
冷蔵空間20は、さらに仕切体21によって上下に区画され、上部空間に複数段の載置棚を設けた冷蔵室22が設けられ、下部空間に上下2段に設けられた容器26を配置する野菜室24が設けられている。
【0010】
冷蔵室22の開口部は、冷蔵庫本体12の一側部の上下に設けられたヒンジにより回動自在に枢支された冷蔵室扉23により閉塞されている。冷蔵室扉23の前面にはこの冷蔵庫10を操作するための操作パネル36が配されている。操作パネル36は、押釦式の操作スイッチ37を押圧操作することで、各貯蔵空間の冷却強度を切り替えて設定したり、後述する「解凍モード」や「赤みモード」の実行を選択するモード選択手段として機能する。
【0011】
野菜室24の開口部は、引き出し式の野菜室扉25により閉塞されている。野菜室扉25の裏面側には、容器26を保持する左右一対の支持枠が固着されており、開扉動作とともに容器26が庫外に引き出されるように構成されている。
【0012】
野菜室24の下方に断熱仕切壁14を介して配置された冷凍空間40には、自動製氷装置を備えた製氷室(不図示)と第1冷凍室44を左右に併設しており、その下方には第2冷凍室46が設けられている。
【0013】
製氷室、第1冷凍室44、及び第2冷凍室46の開口部も、野菜室24と同様、引き出し式の扉45,47により閉塞され、各扉45,47の裏面側に固着した左右一対の支持枠に収納容器が保持されており、開扉動作とともに該収納容器が庫外に引き出されるように構成されている。
【0014】
図1及び図2に示すように、第1冷凍室44に設けられた収納容器60は、内部に食品Mを貯蔵する貯蔵空間が形成された上面に開口する容器体で、上面の開口部が蓋体62によって密閉状態で閉塞可能に設けられている。蓋体62は、例えば、扉45の開扉動作に伴って開放され、閉扉動作に伴って蓋体62が収納容器60の上面開口部を閉塞するように構成されている。収納容器60には、蓋体62によって上面開口部が閉塞されているか否か検知する蓋センサ65(図4参照)が設けられている。
【0015】
収納容器60の後面には、透過孔64が設けられている。収納容器60が第1冷凍室44内部に収納される扉45の閉扉状態において、この透過孔64が酸素濃度調節装置70によって覆われ、収納容器60が密閉される。
【0016】
酸素濃度調節装置70は、図2及び図3に示すように、収納容器60の内部空間の酸素を減少させる酸素減少手段72と、収納容器60の内部空間の酸素を増加させる酸素増加手段74とを備える。
【0017】
酸素減少手段72は、固体高分子電解質膜76、アノード電極(陽極)77、カソード電極(陰極)78からなる電解膜素子79を備え、板状の固体高分子電解質膜76がアノード電極77とカソード電極78によって挟まれた状態でケース80内に収納されユニット化されている。
【0018】
詳細には、酸素減少手段72は、カソード電極78に対向するケース80の前面にスリット81が穿設され、アノード電極77に対向するケース80の後面にスリット83が穿設されている。ケース80の前面に穿設されたスリット81を介してケース80内に収納されたカソード電極78と収納容器60の後面に設けられた透過孔64とが対向する。
【0019】
ケース80の前面には、スリット81を取り囲むようにシール材82が設けられており、扉45が閉扉され第1冷凍室44内部に収納容器60が収納されると、シール材82が透過孔64の外側を取り囲むように収納容器60の後面に当接する。
【0020】
アノード電極77及びカソード電極78は、いずれも集電体、多孔質支持発水膜、カーボン電極、白金触媒などから形成されリード線85を介して電源部84に接続されている。
【0021】
酸素増加手段74は、アノード電極77及びカソード電極78とが反対に設けられている点、つまり、アノード電極77が、ケース80の前面に設けられたスリット81を介して収納容器69の後面に設けられた透過孔64に対向し、カソード電極78が、スリット83が設けられたケース80の後面に対向して設けられている点において、酸素減少手段72と相違するのみで、その他の構成は酸素減少手段72と同一であるため、ここでは、酸素減少手段72と同一の構成については同じ符号を付して酸素増加手段74の詳細な説明を省略する。
【0022】
そして、酸素減少手段72及び酸素増加手段74において、電源部84よりアノード電極77とカソード電極78の間に数ボルトの直流電圧が印加されると、アノード電極77において空気中の水分が分解されて酸素と水素イオンが発生し、アノード電極77において発生した水素イオンが固体高分子電解質膜76を通ってカソード電極78へ移動する。
【0023】
つまり、酸素減少手段72では、電源部84から電源が供給されると、アノード電極77側からカソード電極78側(すなわち、収納容器60の外部から内部)へ水素イオンが移動して収納容器60内部の酸素と反応して水を生成し、収納容器60内の酸素を減少させる。また、酸素増加手段74では、電源部84から電源が供給されると、アノード電極77側(すなわち、収納容器60内部)に酸素が発生し、収納容器60内の酸素を増加させる。
【0024】
第1冷凍室44の天井を構成する断熱仕切壁14の下面には、上方に向けて凹陥する凹部48が形成されており、この凹部48内に温度センサ49が配設されている。
【0025】
温度センサ49は、第1冷凍室44に配設される収納容器60内部に貯蔵された食品Mが有する熱エネルギーを赤外線の放射量として検出する赤外線センサを備え、検出された赤外線の放射量から収納容器60内部に貯蔵された食品Mの温度を測定する。
【0026】
そして、冷蔵空間20の後部には、冷蔵空間20内の空気を冷却する冷却手段に相当する冷蔵用冷却器52と、冷蔵用冷却器52で冷却された空気を冷蔵室22及び野菜室24へ送風する冷蔵用ファン53が設けられ、冷凍空間40の後部には、冷凍空間40内の空気を冷却する冷凍用冷却器54と、冷凍用冷却器54で冷却された空気を製氷室、第1冷凍室44及び第2冷凍室へ送風する冷凍用ファン55が設けられている。
【0027】
冷蔵用冷却器52及び冷凍用冷却器54は、圧縮機32や凝縮器(不図示)や切替弁(不図示)とともに冷凍サイクルを構成し、圧縮機32から吐出された冷媒によって冷却され、冷蔵用ファン53及び冷凍用ファン55を制御することにより冷蔵空間20及び冷凍空間40に設けられた各貯蔵室をそれぞれ所定温度に冷却する。
【0028】
第1冷凍室44については、上記した冷凍サイクルの運転、及び第1冷凍室44に冷気を吹き出す吹出口の開度を変更するダンパ38を制御して室内への冷気導入量を調整することで、第1冷凍室44内に配設された収納容器60内の温度が、例えば、−18℃から−3℃までの食品Mが凍結する冷凍温度帯と、1℃〜5℃までの冷蔵温度帯とに切換可能に設けられている。なお、本実施形態では、初期設定状態において、第1冷凍室44内の温度が第2冷凍室46内の温度と同じ温度(例えば、−18℃)に設定されている。
【0029】
図1に示すように、冷蔵庫本体12の背面下部には、冷凍サイクルの一部を構成する圧縮機32及び凝縮器を収納する機械室30が配設されており、機械室30の背面に制御部34が設けられている。
【0030】
制御部34は、図4に示すように、操作スイッチ37、温度センサ49、蓋センサ65などの各種センサやタイマ66等から入力される信号や、EEPROM等の不揮発性記録媒体からなるメモリ39に記憶された制御プログラムに基づいて、圧縮機32、ダンパ38、冷蔵用ファン53、冷凍用ファン55、酸素濃度調節装置70を駆動する電源部84などの各種電気部品を制御する。
【0031】
このような構成の冷蔵庫10において、使用者が操作パネル36の操作スイッチ37を操作することで「赤みモード」を選択すると、制御部34は、「赤みモード」を実行する。ここで「赤みモード」とは、肉や赤身魚などのミオグロビンを含み赤身の食品Mを保存する貯蔵方法であって、食品Mの鮮やかな赤色を維持又は向上させるための貯蔵方法である。
【0032】
詳細には、図5に示すように、制御部34は、収納容器60内に食品Mが貯蔵されたことを検出すると、タイマ66により食品Mが貯蔵されてからの経過時間を測定する(ステップS1参照)。なお、本実施形態では、第1冷凍室44の扉45が開扉され収納容器60の上面開口部が開放された状態から、扉45が閉扉され収納容器60の上面開口部が蓋体62により閉塞されるのを蓋センサ65が検出することによって、つまり、蓋センサ65が蓋体62の開放状態から閉塞状態への変化を検出することによって、収納容器60内に食品Mが貯蔵されたことを検出する。
【0033】
なお、上記のような蓋センサ65以外にも、例えば、温度センサ49の検出温度の変化や、あるいは、収納容器60内の貯蔵物の重量を測定する重量センサを設けこの重量センサの検出値の変化などから、収納容器60内に食品Mが貯蔵されたことを検出するように構成してもよい。また、「赤みモード」が選択させたことを検出する、あるいは、その検出後一定時間経過すると、収納容器60に食品Mが貯蔵されたことを検出するなど、食品Mを貯蔵した時に使用者が操作できるスイッチを設け、そのスイッチのON操作を検出する、あるいは、その検出後一定時間経過すると、収納容器60に食品Mが貯蔵されたことを検出してもよい。
【0034】
次いで、制御部34は、タイマ66によって測定される収納容器60内に食品Mが貯蔵されてからの経過時間が所定時間(例えば、1時間)に達するまで、酸素減少手段72を停止させた、あるいは酸素減少手段停止72の停止を維持した状態で収納容器60内の食品Mを冷却することで、収納容器60内の酸素濃度を低下させずに食品Mが収納容器60内の酸素によって酸化しやすい状態を維持しつつ食品Mを冷却する(図5のステップS2、ステップS3参照)。つまり、収納容器60内に食品Mが貯蔵されてから所定時間に達するまでの期間は、食品Mの酸化を維持する期間に相当する。
【0035】
なお、上記した所定時間は、収納容器60内に投入される食品Mの凍結が予想される時間以上に設定されることが好ましい。
【0036】
そして、収納容器60内に食品Mが貯蔵されてから所定時間が経過すると、収納容器60内の酸素を減少させ始めるための所定条件を満たしたとして、その後、酸素減少手段72の動作を開始して収納容器60内の酸素を減少させ始める(図5のステップS4参照)。そして、収納容器60内の酸素濃度が所定値以下になるまで、あるいは、酸素減少手段72の動作時間が所定時間に達するまで酸素減少手段72を動作させ、その後、酸素減少手段72を停止する(図5のステップS5参照)。また、酸素減少手段72の動作を開始した後も第2冷凍室46内が所定温度になるように継続して冷却されている。
【0037】
以上のように、本実施形態の冷蔵庫10では、収納容器60内に食品Mが投入されてから所定条件を満たすまで、収納容器60内の食品Mを冷却するとともに、酸素減少手段72を停止させ収納容器60内に貯蔵された食品Mの酸化を維持する。
【0038】
これにより、食品Mに含まれるミオグロビンのうち、青みを帯びた赤色(紫赤色)を呈する還元状態にあるミオグロビン(MbFe(II))が酸化され鮮やかな赤色を呈するオキシミオグロビン(MbFe(II)O2)に変化し、食品Mの色彩がより鮮やかな赤色となり、食品Mの赤みが向上する。また、食品Mに含まれるミオグロビンのうち、収納容器60に投入される前から既に酸化状態にあるオキシミオグロビン(MbFe(II)O2)は、還元状態のミオグロビン(MbFe(II))との間で可逆的に酸化還元反応が起こりえるが、上記のように酸素減少手段72を停止させ収納容器60内の酸素分圧がほぼ一定に維持されているため、オキシミオグロビン(MbFe(II)O2)の還元反応を抑えて収納容器60内に貯蔵された食品Mの鮮やかな赤色を維持することができる。
【数1】
【0039】
そして、所定条件を満たしてから酸素減少手段72を動作させ収納容器60内の酸素を減少させるため、収納容器60内に投入された食品Mがある程度冷却されオキシミオグロビン(MbFe(II)O2)の還元反応を起こりにくくしてから収納容器60内の酸素を減少させることができる。そのため、収納容器60内の酸素が減少しても、食品Mに含まれるオキシミオグロビン(MbFe(II)O2)が還元されて青みを帯びた赤色(紫赤色)を呈する還元状態にあるミオグロビン(MbFe(II))が生成されにくくなり、食品Mの鮮やかな赤色を維持することができる。
【0040】
しかも、所定条件を満たした後では、収納容器60内の酸素が減少しているため、食品Mに含まれるオキシミオグロビン(MbFe(II)O2)が上記式(1)に示すような褐色を呈するメトミオグロビン(met MbFe(III))に変化する、いわゆるメト化を抑えることができ、食品Mの劣化を抑え鮮度を維持することができ長期保存が可能になる。
【0041】
特に、本実施形態では、収納容器60を配設する第1冷凍室44内の温度が、食品Mを凍結させることができる0℃以下に設定されている場合において、収納容器60内に投入された食品Mが凍結するまで酸素減少手段72を停止させた状態で収納容器60内の食品Mを冷却し、食品Mの凍結後に酸素減少手段72の動作を開始して収納容器60内の酸素を減少させ始めることが好ましい。このような場合であると、食品組織が凍結し食品Mに含まれるオキシミオグロビン(MbFe(II)O2)がほぼ還元されることがない状態になってから収納容器60内の酸素を減少させることができ、より一層、食品Mに含まれるオキシミオグロビン(MbFe(II)O2)が還元されにくくなり、食品Mの鮮やかな赤色を維持しつつ、貯蔵空間の酸素を減少させ食品Mの鮮度を維持することができる。
【0042】
なお、本実施形態では、収納容器60内に食品Mが貯蔵されてからの経過時間が所定時間に達すると、酸素減少手段72の動作を開始して収納容器60内の酸素を減少させ始めるように構成したが、例えば、温度センサ49によって測定される収納容器60内に貯蔵された食品Mの温度から該食品Mの凍結を検出すると、酸素減少手段72の動作を開始して収納容器60内の酸素を減少させ始めるように構成してもよい。このように、温度センサ49によって、収納容器60内に貯蔵された食品Mの凍結を検出することで、不必要に酸素減少手段72の動作を開始させるまでの時間が不必要に長くなることが無く、食品Mの鮮度劣化を抑えることができる。
【0043】
また、上記した本実施形態では、収納容器60内に食品Mが貯蔵されてからの経過時間が所定時間(例えば、1時間)に達するまで(つまり、所定条件を満たすまで)、酸素減少手段72を停止させるように構成したが、その際に、酸素濃度調節装置70の酸素増加手段74を動作させ収納容器60内の酸素濃度を大気中の酸素濃度より増加させた状態を維持してもよい。
【0044】
このように、収納容器60内に食品Mが貯蔵されてから所定条件を満たすまで、酸素増加手段74を動作させて収納容器60内の酸素濃度を増加させた状態とすることで、食品Mに含まれる還元状態のミオグロビン(MbFe(II))が酸化されオキシミオグロビン(MbFe(II)O2)が生成されやすくなり、より一層、食品Mの赤みが向上する。
【0045】
また、上記した冷蔵庫10において、使用者が操作パネル36の操作スイッチ37を操作することで「解凍モード」を選択すると、制御部34は、酸素濃度調節装置70の酸素増加手段74を動作させて収納容器60内の酸素を増加させた後に、第1冷凍室44内の温度を冷凍温度帯から冷蔵温度帯に変化させる「解凍モード」を実行する。
【0046】
このように、収納容器60内の酸素濃度を大気中の酸素濃度より増加させた後に、収納容器60が配設された第1冷凍室44の温度を冷凍温度帯から冷蔵温度帯に変化させることで、食品Mが酸化しやすくオキシミオグロビン(MbFe(II)O2)が生成されやすい雰囲気下で冷凍された食品Mを解凍することができ、鮮やかな赤色を保ったまま食品Mを解凍することができる。
【実施例】
【0047】
上述した「赤みモード」によって冷凍貯蔵された牛肉の色度を測定し、貯蔵性能評価試験を行った。
【0048】
試験では、実施例として、第1冷凍室44に配設した収納容器60内に牛肉を貯蔵してからT1(=1時間)経過するまで、つまり、時刻0から時刻T1まで酸素減少手段72を停止(OFF)させ、その後、時刻T1から時刻T2(=1週間)まで酸素減少手段72を動作(ON)させて、収納容器60内の酸素濃度を低下させた雰囲気下で牛肉を冷凍貯蔵した。
【0049】
また、比較例1として、収納容器60内に食品Mを貯蔵した直後からT2(=1週間)経過するまで、つまり、時刻0から時刻T2まで酸素減少手段72を停止(OFF)させて、収納容器60内の酸素濃度を低下させずに牛肉を冷凍貯蔵した。
【0050】
比較例2として、収納容器60内に牛肉を貯蔵した直後からT2(=1週間)経過するまで、つまり、時刻0から時刻T2まで酸素減少手段72を動作(ON)させて、収納容器60内の酸素濃度を低下させた雰囲気下で牛肉を冷凍貯蔵した。
【0051】
比較例3として、収納容器60内に牛肉を貯蔵してからT1(=1時間)経過するまでつまり、時刻0から時刻T1まで酸素減少手段72を動作(ON)し、その後、時刻T1から時刻T2(=1週間)まで酸素減少手段72を停止(OFF)させて、収納容器60内の酸素濃度を低下させずに雰囲気下で牛肉を冷凍貯蔵した。
【0052】
なお、実施例、比較例1〜3では、いずれも、第1冷凍室44内の温度を−20度に設定した。
【0053】
上記のような実施例及び比較例1〜3の各方法により貯蔵された牛肉について、収納容器60内に貯蔵してから1時間(T1)経過したもの、及び収納容器60内に貯蔵してから1週間(T2)経過したもののそれぞれについて、分光測色方法(JIS Z8722)により色を測定した。結果を下記表1に示す。
【表1】
【0054】
実施例及び比較例1と、比較例2及び3とを比較すると明らかなように、収納容器60内に牛肉を貯蔵してから1時間(=T1)経過するまで酸素減少手段72を停止(OFF)し収納容器60内の酸素濃度を維持することで、鮮やかな赤色を維持したまま牛肉が凍結したが、収納容器60内の酸素濃度を低下させると紫赤色に変色した状態で牛肉が凍結した。
【0055】
また、実施例では、収納容器60内に牛肉を貯蔵してから1時間(=T1)経過後から酸素減少手段72を動作(ON)して収納容器60内の酸素を減少させることで、鮮やかな赤色を維持したまま牛肉を1週間凍結保存することができたが、比較例1では、凍結保存中に牛肉の色が褐色に変化し、比較例2では、紫赤色に変色した状態を維持したまま牛肉が1週間凍結保存され、比較例3では、凍結保存中に牛肉の色が褐色に変化しており、各比較例1〜3では牛肉が褐色あるいは紫赤色に変色したが、本実施例では鮮やかな赤色を維持したまま冷凍保存が可能となっていた。
【符号の説明】
【0056】
10…冷蔵庫 20…冷蔵空間 22…冷蔵室
24…野菜室 34…制御部 36…操作パネル
37…操作スイッチ 40…冷凍空間 44…第1冷凍室
46…第2冷凍室 48…凹部 49…温度センサ
52…冷蔵用冷却器 53…冷蔵用ファン 54…冷凍用冷却器
55…冷凍用ファン 60…収納容器 62…蓋体
64…透過孔 65…蓋センサ 66…タイマ
70…酸素濃度調節装置 72…酸素減少手段 74…酸素増加手段
M…食品
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品を貯蔵する貯蔵空間と、前記貯蔵空間を冷却する冷却手段と、前記貯蔵空間の酸素を減少させる酸素減少手段と、前記冷却手段及び前記酸素減少手段を制御する制御手段を備え、
前記制御手段は、前記貯蔵空間に前記食品が貯蔵されてから所定条件を満たすまで前記貯蔵空間に貯蔵された前記食品を冷却し、前記所定条件を満たした後に前記貯蔵空間の酸素を減少させ始めることを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
前記貯蔵空間が冷凍温度帯に冷却されることを特徴とする請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記貯蔵空間に貯蔵された前記食品が凍結するまで前記貯蔵空間を冷却した後に、前記貯蔵空間の酸素を減少させ始めることを特徴とする請求項2に記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記貯蔵空間に貯蔵された前記食品の温度を測定する温度センサを備え、
前記温度センサによって前記食品の凍結を検出することを特徴とする請求項3に記載の冷蔵庫。
【請求項5】
前記貯蔵空間に前記食品が貯蔵されてから前記貯蔵空間を冷却した時間を測定するタイマ手段を備え、
前記タイマ手段により測定される時間が予め設定された時間より長くなると、前記貯蔵空間の酸素を減少させ始めることを特徴とする請求項1又は2に記載の冷蔵庫。
【請求項6】
前記貯蔵空間の温度を冷凍温度帯から冷蔵温度帯に変化させる解凍モードが実行可能な冷蔵庫において、
前記貯蔵空間の酸素を増加させる酸素増加手段を備え、
前記制御手段は、前記酸素増加手段を制御して前記貯蔵空間の酸素を増加させた後に前記解凍モードを実行することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の冷蔵庫。
【請求項7】
前記貯蔵空間の酸素を増加させる酸素増加手段を備え、
前記制御手段は、前記貯蔵空間に前記食品が貯蔵されてから所定条件を満たすまで前記酸素増加手段を制御して酸素を増加させた状態に前記貯蔵空間を維持することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の冷蔵庫。
【請求項8】
前記食品の赤みを向上させるための赤みモードを選択できるモード選択手段を備え、
前記モード選択手段で前記赤みモードが選択されると、前記制御手段は、前記貯蔵空間に前記食品が貯蔵されてから所定条件を満たすまで前記貯蔵空間を冷却し、前記所定条件を満たした後に前記貯蔵空間の酸素を減少させ始めることを特徴とする請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項1】
食品を貯蔵する貯蔵空間と、前記貯蔵空間を冷却する冷却手段と、前記貯蔵空間の酸素を減少させる酸素減少手段と、前記冷却手段及び前記酸素減少手段を制御する制御手段を備え、
前記制御手段は、前記貯蔵空間に前記食品が貯蔵されてから所定条件を満たすまで前記貯蔵空間に貯蔵された前記食品を冷却し、前記所定条件を満たした後に前記貯蔵空間の酸素を減少させ始めることを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
前記貯蔵空間が冷凍温度帯に冷却されることを特徴とする請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記貯蔵空間に貯蔵された前記食品が凍結するまで前記貯蔵空間を冷却した後に、前記貯蔵空間の酸素を減少させ始めることを特徴とする請求項2に記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記貯蔵空間に貯蔵された前記食品の温度を測定する温度センサを備え、
前記温度センサによって前記食品の凍結を検出することを特徴とする請求項3に記載の冷蔵庫。
【請求項5】
前記貯蔵空間に前記食品が貯蔵されてから前記貯蔵空間を冷却した時間を測定するタイマ手段を備え、
前記タイマ手段により測定される時間が予め設定された時間より長くなると、前記貯蔵空間の酸素を減少させ始めることを特徴とする請求項1又は2に記載の冷蔵庫。
【請求項6】
前記貯蔵空間の温度を冷凍温度帯から冷蔵温度帯に変化させる解凍モードが実行可能な冷蔵庫において、
前記貯蔵空間の酸素を増加させる酸素増加手段を備え、
前記制御手段は、前記酸素増加手段を制御して前記貯蔵空間の酸素を増加させた後に前記解凍モードを実行することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の冷蔵庫。
【請求項7】
前記貯蔵空間の酸素を増加させる酸素増加手段を備え、
前記制御手段は、前記貯蔵空間に前記食品が貯蔵されてから所定条件を満たすまで前記酸素増加手段を制御して酸素を増加させた状態に前記貯蔵空間を維持することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の冷蔵庫。
【請求項8】
前記食品の赤みを向上させるための赤みモードを選択できるモード選択手段を備え、
前記モード選択手段で前記赤みモードが選択されると、前記制御手段は、前記貯蔵空間に前記食品が貯蔵されてから所定条件を満たすまで前記貯蔵空間を冷却し、前記所定条件を満たした後に前記貯蔵空間の酸素を減少させ始めることを特徴とする請求項1に記載の冷蔵庫。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2012−37201(P2012−37201A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−180299(P2010−180299)
【出願日】平成22年8月11日(2010.8.11)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(502285664)東芝コンシューマエレクトロニクス・ホールディングス株式会社 (2,480)
【出願人】(503376518)東芝ホームアプライアンス株式会社 (2,436)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月11日(2010.8.11)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(502285664)東芝コンシューマエレクトロニクス・ホールディングス株式会社 (2,480)
【出願人】(503376518)東芝ホームアプライアンス株式会社 (2,436)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]