説明

冷陰極チューブの電極及びその製造方法

【課題】一体成形の構造を有し、放電面積を増加出来、生産率を上昇可能な冷陰極チューブの電極を提供する。
【解決手段】金属粉と接着剤とを混合して混合材を形成する工程と、混合材を電極の型内に成形して電極ブランクを形成する工程と、電極ブランクを金属焼結温度まで加熱して電極を形成する工程と、最後に電極をプレス加工して強度を増加する工程とを含む電極の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷陰極チューブの電極及びその製造方法に関わるもので、とくに、冶金及び射出成形の技術を用い、一体成形する構造を提供する冷陰極チューブの電極に関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷陰極チューブは、ランプチューブが細く、ランプチューブの温度が低く、ランプチューブの表面輝度が高く、使用寿命が長い…などの利点があるため、現在、コンピュータースキャナー、ファクシミリプリンター、液晶スクリーンバックライトモジュール、或は広告ランプボックスに幅広く利用されている。その発光原理は、チューブ内電極が放電の後に電子と水銀原子が衝撃することで、水銀原子が激励(励起)され紫外光を放射し、紫外光より管壁に塗布された蛍光粉(蛍光体)を励起させ可視光を発生するものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
冷陰極チューブの電極の寿命及びランプチューブの起動特性を改善するための図1について説明する。この図1は従来の冷陰極チューブの断面図である。この冷陰極チューブにおける電極9は、溶接にてカップ状の放電部94に溶着される電極ワイヤ92を含み、この電極ワイヤ92は、通常、放電部94に接続される第一段部922と、第一段部922をケーブルに接続させる第二段部924とを含む。ガラスに接合し易くするために、第一段部は低膨張係数(CET)の合金であり、現在、一般Kovar合金(ニッケル・鉄・コバルト合金)が使用されている。一方、第二段部には一般Invar合金(ニッケル・鉄合金)が使用されている。カップ状の放電部94は、一般モリブデン或はタングステン合金プレートでプレス成形より作製される。
【0004】
上記従来の冷陰極チューブの欠点は以下の通りである。
1.電極ワイヤ92は、その直径が小さい(約0.4mm)ため、カップ状の放電部94に溶接しにくい。また、製造上面倒で、かつ断裂しやすい。
2.カップ状の放電部94はその製造方法に拘束されるために、形状の単一さにより放電面積を増加するように変更し難く、コストが高く、生産率が低い。
【0005】
そのため、発明者は、これら従来技術の欠点をさらに改良する必要があることに鑑み、研究や設計に専念し、合理的な設計とし、且つ有効に上記の欠点を改善した本発明を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の主な目的は、同一材料で一体成形する電極を供給し、生産率を上昇させ並びに強度を増加し、かつ異なる膨張係数及び熱膨張冷収縮の雰囲気による金属疲労を回避し、使用寿命が延びる冷陰極チューブの電極及びその製造方法を提供する。
【0007】
本発明のもう一つの目的は、放電部の形状をつけ易く、放電面積を増加させ、効率を上昇しかつ電力消費を減少出来る冷陰極チューブの電極及びその製造方法を提供する。
【0008】
上記目的を達成するための本発明は、冷陰極チューブの電極の製造方法であり、金属粉と接着剤とを混合して混合材を形成する工程と、前記混合材を電極の型内に成形して電極ブランクを形成する工程と、前記電極ブランクを金属焼結温度まで加熱して電極を形成する工程と、最後に前記電極をプレス加工して強度を増加する工程とを含むことを特徴とする。
【0009】
以下のように添付図面を参考しながら本発明の好適な実施例を詳しく説明するが、これらは本発明を説明するものだけで、本発明の請求範囲に限定されるものではないことを理解されたい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図2は、本発明による冷陰極チューブの電極の製造方法のフローチャートである。図2を参照すると、この冷陰極チューブの電極の製造方法の核心技術は、粉末冶金を利用し、少なくとも混合工程10と、成形工程20と、熱処理工程30と、プレス工程40とを含む。
【0011】
混合工程10は、金属粉と接着剤とを混合して混合材を形成する工程である。この金属粉は、高融点金属、一般に、2000℃以上の金属であるものが好ましい。この金属粉は、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、タングステン合金、モリブデン合金、或はKovar合金(予め合金粉で好ましい)であり、高融点の特性を持つため、高温に耐える。中には、モリブデン金属粉を使用することが好適で、これはタングステンの融点が高く、より高い加熱温度を必要とするため、製造コストが上昇する理由による。しかるに、この金属粉は、電極としての材料であればよいのである。
【0012】
その中には、この金属粉は細かいほどよく、通常、80μm以下であるが、これに限定されない。金属粉は細かいほど全体としてより大きな表面を持ち、かつ互いに隔てる隙間が減少されるので、金属粉はさらに緊密に堆積(密集)し、さらに焼結結合し易くなり、加熱工程30に要する時間を短縮できる。金属粉の粒子のサイズは焼結体の密度に影響するだけでなく、その性能にも影響しており、これは粉が細かいほど比表面(面積/重量、specificsurface area)が大きくなり、大きな比表面は焼結中に非常に重要な役割を果たすためである。接着剤は主に金属粉を接着するためのもので、高分子接着剤、或は有機接着剤(例えば、熱可塑性樹脂或は蝋)が使用可能である。
【0013】
混合工程10では、さらに攪拌器で混合材を混合(混煉)できる。金属粉と接着剤とを加熱し混合させ成形素材としての混合物を作製する。
【0014】
成形工程20では、本発明は主に射出成形の技術を利用し、混合材を電極の型内に射出成形して電極ブランクを形成する。射出成形の時は、射出成形機を利用する必要がある。この射出成形工程では、先ず加熱工程が必要であり、混合材は、加熱されて流れ性を有するようになり、そして再び電極の型内に射入される。射出成形は既に非常に成熟した技術であり、生産の速度を加速できる。
【0015】
本発明は、射出成形の技術を利用することに限らず、プレス成形の技術も利用できる。用意した混合材を精密な型内に入れ、上、下のプレス圧縮より特定形状のプレス粉体、或はブランクを得る。
【0016】
熱処理工程30では、電極ブランクを金属焼結温度まで加熱し電極仕上がり製品を形成する。この加熱過程において、加熱により電極ブランク中の接着剤を除脱でき、接着剤が残留するのを避けることができる。この熱処理工程30では、主に焼結炉で電極ブランクを焼結する。焼結炉は通常、コンピューターで制御温度やエアー圧力をコントロールし、正確に温度やエアー圧力をコントロールでき、焼結の過程において、保護気体、例えば、窒素などの不活性気体を焼結炉内に導入することにより、金属粉が酸化するのを防止することができる。その中には、焼結温度は、通常金属粉における重要成分の融点の三分の二以上である。例えば、タングステンの融点は3380℃であり、その焼結温度は、約2253℃以上である。モリブデンの融点は2600℃であり、その焼結温度は、約1733℃以上である。
【0017】
本発明は、最後に電極の構造強度を増強するものであり、この電極をプレス成形するプレス工程を含み、この電極内の焼結した金属粉をさらに緊密化して、固着させることになる。
【0018】
以上のような工程より、本発明の冷陰極チューブの電極が得られる。本発明は、主に金属粉射出成形の技術を用いる。本発明の技術は、さらに冷陰極チューブの電極の外形を変更し易くなり、その放電面積を増加できる。図3は、本発明による冷陰極チューブの電極の第一実施例の斜視図である。図3を参照すると、この冷陰極チューブの電極1は、導線部12と、導線部と一体成形されるカップ状の放電部14とを含む。その中において、それら導線部12及び放電部14は、同種の金属から作製され、溶接工程を経る必要のない金属焼結の構造を持つ。導線部12及び放電部14は、好適な構造強度を有し、断裂(裂き痕)の発生を無くすことができる。図4は、本発明による冷陰極チューブの電極の第二実施例の斜視図である。図4を参照すると、本発明による冷陰極チューブの電極の製造方法では、放電部14aが表面から突出する先端142、144を複数有する構造を容易に設計でき、電極1の放電面積を増加させる。本実施例は好ましい実施例であり、先端142、144は放電部14aの外縁及び内壁面から突出する。放電部14aの外縁から外に向かって突出する先端142だけを有する構造も可能であり、或は、放電部14aの内壁面から内に向かって突出する先端144だけを有する構造も設計可能である。
【0019】
図5は、本発明による冷陰極チューブの電極の第三実施例の斜視図である。図5を参照すると、この放電部14bの直径は導線部12bと同一であることで、放電部14bにより強い構造を得る。
【0020】
したがって、本発明により得られる特徴及び機能は、以下の如く列記される。
1.電極の導線部と放電部は、焼結より一体成形され、断裂し難い。
2.電極は同一材料から作製され、同じ熱膨張係数があり、温度の急激な変化で隙間を生じることがない。
3.放電部の形状を変更し易いため、放電面積を増加し効率を上昇させ、電力消費を低下出来る。
4.本発明の製造方法は、大量且つ快速生産でき、生産率を上昇できる。
【0021】
上記のように、本発明は、フルに特許登録の要件を満たすので、法に従って出願を提起する。しかし、以上に述べた事は、単に本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明の請求範囲を局限するものではなく、総じて本発明の明細書及び図面で示した内容等を運用するもので遂げる同等の構造変化は、同様に本発明の範囲内に含まれることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】従来技術の冷陰極チューブの断面図である。
【図2】本発明の冷陰極チューブの電極の製造方法によるフローチャートである。
【図3】本発明の冷陰極チューブの電極による第一実施例の斜視図である。
【図4】本発明の冷陰極チューブの電極による第二実施例の斜視図である。
【図5】本発明の冷陰極チューブの電極による第三実施例の斜視図である。
【符号の説明】
【0023】
9 電極
92 電極ワイヤ
94 放電部
10 混合工程
20 成形工程
30 熱処理工程
40 プレス工程
1、1a、1b 電極
12、12b 導線部
14、14a、14b 放電部
142、144 先端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粉と接着剤とを混合して混合材を形成する工程と、
前記混合材を電極の型内に成形して電極ブランクを形成する工程と、
前記電極ブランクを金属焼結温度まで加熱して電極を形成する工程と、
前記電極をプレス加工する工程とを含むことを特徴とする冷陰極チューブの電極の製造方法。
【請求項2】
前記金属粉は、融点が2000℃以上の金属であることを特徴とする請求項1記載の冷陰極チューブの電極の製造方法。
【請求項3】
前記金属粉は、タングステン、モリブデン、タングステン合金、或はモリブデン合金であることを特徴とする請求項1記載の冷陰極チューブの電極の製造方法。
【請求項4】
前記接着剤は、高分子接着剤、或は有機接着剤であることを特徴とする請求項1記載の冷陰極チューブの電極の製造方法。
【請求項5】
前記混合材を形成する工程では、攪拌器でその混合材を混合することを特徴とする請求項1記載の冷陰極チューブの電極の製造方法。
【請求項6】
前記電極ブランクを形成する工程は、先ず前記混合材を加熱して流れ性を有するようにする工程を含むことを特徴とする請求項1記載の冷陰極チューブの電極の製造方法。
【請求項7】
さらに、前記混合材を電極の型内に射入する射出成形機を利用する工程を含むことを特徴とする請求項6記載の冷陰極チューブの電極の製造方法。
【請求項8】
前記電極ブランク中の非金属成分を除脱する工程を含むことを特徴とする請求項1記載の冷陰極チューブの電極の製造方法。
【請求項9】
焼結炉で前記電極ブランクを焼結することを特徴とする請求項1記載の冷陰極チューブの電極の製造方法。
【請求項10】
保護気体を前記焼結炉内に導入することを特徴とする請求項9記載の冷陰極チューブの電極の製造方法。
【請求項11】
焼結温度の範囲は、主成分の融点の三分の二からその融点までであることを特徴とする請求項1記載の冷陰極チューブの電極の製造方法。
【請求項12】
金属粉を経由した射出成形は、
導線部と、
この導線部と一体成形されるカップ状の放電部とを含み、
前記導線部と前記放電部は、同種の金属から作製され、金属焼結の構造を有することを特徴とする冷陰極チューブの電極。
【請求項13】
前記放電部は、その表面から突出する先端を複数に有することを特徴とする請求項12記載の冷陰極チューブの電極。
【請求項14】
前記先端は、前記放電部の外縁から外に向かって突出することを特徴とする請求項13記載の冷陰極チューブの電極。
【請求項15】
前記先端は、前記放電部の内壁面から内に向かって突出することを特徴とする請求項13記載の冷陰極チューブの電極。
【請求項16】
前記先端は、前記放電部の外縁及び内壁面から突出することを特徴とする請求項13記載の冷陰極チューブの電極。
【請求項17】
前記放電部の直径は、前記導線部と同一であることを特徴とする請求項12記載の冷陰極チューブの電極。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−156091(P2006−156091A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−343883(P2004−343883)
【出願日】平成16年11月29日(2004.11.29)
【出願人】(504439609)
【Fターム(参考)】