説明

冷陰極放電管の駆動回路

【課題】 冷陰極放電管におけるスネーキング現象の発生を、極力事前に防止し得る冷陰極放電管の駆動装置を提供する。
【解決手段】 直流電圧を入力信号に対応した値の交流電圧に変換して冷陰極放電管に供給するインバータ回路を備えた冷陰極放電管の駆動装置において、前記入力信号を調整することで、前記冷陰極放電管に供給する電圧を制御する制御手段と、前記冷陰極放電管に供給される電圧の値;前記冷陰極放電管に供給される電流の値;前記冷陰極放電管の温度;のうちの何れかを検出する検出手段と、を備え、前記制御手段は、該検出値が予め設定された許容範囲を逸脱しているか否かを判断し、逸脱している場合は、該検出値が該許容範囲内に収まるように前記制御を行うことを特徴とする冷陰極放電管の駆動装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置のバックライト等に用いられる蛍光灯の駆動回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来OA機器や液晶テレビのバックライト等として、冷陰極放電管が広く用いられている。冷陰極放電管は、一対の棒状をなした主電極のそれぞれを筒状のガラスバルブの内部で一端を対向させ、かつ他端部を外部に露呈させるように、ビードガラスを介してガラスバルブの両端部を封止した構造となっている。
【0003】
ここで冷陰極放電管の内部には不純ガス等が残存していることから、電極間の放電経路がこの不純ガスに遮られて直進できず、その結果、局所的に放電密度に変化が発生して、冷陰極放電管に明暗模様を生じる現象(スネーキング現象)が発生することがある。特に冷陰極放電管に供給される電圧もしくは電流が大きく変動すると、これが電極間の放電強度に影響を及ぼすために、スネーキング現象の生ずる可能性が高くなる。また、冷陰極放電管の温度が大きく変動する場合も、不純ガスの発生度合い(ランプ管面に冷えて吸着していた不純ガス分子が飛び出してくる度合い)に影響を及ぼす結果、スネーキング現象の生ずる可能性が高くなる。
【0004】
このようなスネーキング現象が生じると、その冷陰極放電管がバックライトとして使用されている画像表示装置の画面には光ムラやフリッカが生じ、表示品質が低下することとなる。
【0005】
かかる問題を回避する従来技術として、例えば特許文献1には、冷陰極放電管(蛍光灯)内のスネーキング現象の発生が検出されると、不純ガスの吸着が十分に成されてスネーキング現象が消滅するまで冷陰極放電管の点灯と消灯を繰り返すことにより、スネーキング現象を消滅させる技術が開示されている。
【特許文献1】実開平3−125331
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし特許文献1に係る従来技術によると、スネーキング現象の発生から消滅までの間は、冷陰極放電管の点灯と消灯が繰り返されることになる。そのためスネーキング現象が頻繁に発生する場合は、かかる点灯と消灯が何度も繰り返される結果、冷陰極放電管の発光性能が低下するおそれがある。
【0007】
このような事情から、冷陰極放電管の発光性能を維持するためには、スネーキング現象の発生を事前に防止することが重要である。そこで本発明は、冷陰極放電管におけるスネーキング現象の発生を極力事前に防止し得る冷陰極放電管の駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の冷陰極放電管の駆動装置は、直流電圧を入力信号に対応した値の交流電圧に変換して冷陰極放電管に供給するインバータ回路を備えた冷陰極放電管の駆動装置において、前記入力信号を調整することで、前記冷陰極放電管に供給する電圧を制御する制御手段と、前記冷陰極放電管に供給される電圧の値;前記冷陰極放電管に供給される電流の値;前記冷陰極放電管の温度;のうちの何れかを検出する検出手段と、を備え、前記制御手段は、該検出値が予め設定された許容範囲を逸脱しているか否かを判断し、逸脱している場合は、該検出値が該許容範囲内に収まるように前記制御を行う構成(第1の構成)とする。
【0009】
先述の通り、冷陰極放電管に供給される電圧の変動、冷陰極放電管に供給される電流の変動、および冷陰極放電管の温度の変動は、スネーキング現象の重大な誘発要因である。また冷陰極放電管に供給される電流および冷陰極放電管の温度は、何れも冷陰極放電管に供給される電圧と密接に関連しているから、上記入力信号を制御(冷陰極放電管への供給電圧を制御)することによって、これらを調整することが可能である。
【0010】
そこで本構成によれば、冷陰極放電管に供給される電圧、冷陰極放電管に供給される電流、冷陰極放電管の温度の何れかにつき、スネーキング現象を誘発しないような変動の許容範囲を予め設定しておくことで、検出値が当該許容範囲内に収まるように制御がなされる。その結果、これらが大きく変動するのを未然に防ぎ、冷陰極放電管に生じるスネーキング現象を極力事前に防止することが可能となる。
【0011】
また本発明の冷陰極放電管の駆動装置は、直流電圧を入力信号に対応した値の交流電圧に変換して冷陰極放電管に供給するインバータ回路を備えた冷陰極放電管の駆動装置において、前記入力信号を調整することで、前記冷陰極放電管に供給する電圧を制御する制御手段と、前記インバータ回路の温度を検出する検出手段と、を備え、前記制御手段は、該検出値が予め設定された許容範囲を逸脱しているか否かを判断し、逸脱している場合は、該検出値が該許容範囲内に収まるように前記制御を行う構成(第2の構成)とする。
【0012】
インバータ回路の温度の変動は、該回路内部に生じたジュール熱による発熱状態の変動が要因であると考えられる。そのため、インバータ回路の温度が変動しているときは、該回路内部の電圧値が変動しており、ひいては冷陰極放電管に供給される電圧も変動していると考えられる。そこで本構成によれば、インバータ回路の温度につき、スネーキング現象を誘発しないような変動の許容範囲を予め設定しておくことで、検出値が当該許容範囲内に収まるように制御がなされる。その結果、冷陰極放電管に供給される電圧が大きく変動するのを未然に防ぎ、冷陰極放電管に生じるスネーキング現象を極力事前に防止することが可能となる。
【0013】
また上記第1または第2の構成において、前記検出手段による検出処理および前記制御手段による制御処理は、前記冷陰極放電管の駆動中、継続的に実行される構成(第3の構成)としてもよい。
【0014】
冷陰極放電管への供給電圧等の変動は、例えば外部からの変動要因や負荷(ランプ)の経時変化などによって、冷陰極放電管の駆動開始時以外にも生ずる可能性がある。そこで本構成では、上記検出処理および制御処理が、前記冷陰極放電管の駆動中に継続的に実行されるので、このような変動にも対応できる。
【0015】
また、前記入力信号はパルス波であり、かつ、インバータ回路は、前記入力信号のパルスが到来したときにオンデューティとなる上記第1から第3の何れかの構成による冷陰極放電管の駆動装置であって、前記制御手段は、電圧を上げるべきときは、前記パルスの幅を増大及び/または前記パルスの周波数を増加させ、電圧を下げるべきときは、前記パルスの幅を縮小及び/または前記パルスの周波数を減少させるように前記入力信号を制御する構成(第4の構成)としてもよい。
【0016】
本構成によれば、冷陰極放電管に供給する電圧値を簡易かつ正確に制御することができるため、上記第1から第4の何れかの構成に係る電圧制御を、容易に実現することが可能となる。
【0017】
また、冷陰極放電管をバックライトとして用いた液晶表示装置において、上記第1から第4の何れかの構成による冷陰極放電管の駆動装置を備えた液晶表示装置とすれば、バックライトにおけるスネーキング現象の発生を極力事前に防止し、表示画面での光ムラやフリッカによる表示品質の低下を極力抑えることができる。
【発明の効果】
【0018】
上記したように、本発明に係る冷陰極放電管の駆動回路であれば、冷陰極放電管に供給される電圧、冷陰極放電管に供給される電流、冷陰極放電管の温度、あるいは、インバータ回路の温度の何れかにつき、スネーキング現象を誘発しないような変動の許容範囲を予め設定しておくことで、検出値が当該許容範囲内に収まるように制御がなされる。その結果、これらが大きく変動するのを未然に防ぎ、冷陰極放電管に生じるスネーキング現象を極力事前に防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
[実施例1]
本発明の実施例1に係る蛍光灯駆動装置の構成を、図1の構成図を参照しながら説明する。本実施形態は、制御部1、インバータ回路2、蛍光灯3、電圧検知部4等からなる。
【0020】
制御部1は、インバータ回路2に入力信号を送り、インバータ回路2が出力する交流電圧を制御する。制御は電圧検知部4の検出値に基づいて、蛍光灯3に出力される電圧値が所定の許容範囲を超えないように、或いは下回らないようになされる。この点については改めて述べる。
【0021】
電圧検知部4は、蛍光灯3に出力される電圧値を検出し、その値を制御部1に伝達する。具体的には図1に示すように、蛍光灯3の前段に設けた分割コンデンサ等を用いて、出力電圧の分圧を得る。そしてこの分圧を検知情報として、抵抗を介して制御部1の電圧検知端子(V−SENCE)に伝送する。
【0022】
インバータ回路2は、継続的に供給される直流電圧を、制御部1から入力される入力信号に対応した値の交流電圧に変換する。当該直流電圧は、例えば商用の交流電源を整流平滑すること等によって得られる。なおインバータ回路2は、入力信号に対応した値の電圧を出力できるものであれば、その種類は問わない。本実施形態ではその一例として、蛍光灯駆動装置等に広く用いられているプッシュプルインバータ回路を採用する。以下、このプッシュプルインバータ回路について簡潔に説明する。
【0023】
回路構成は、パルス入力用のトランジスタ51、起動用の抵抗52a、52b、プッシュプル動作用のトランジスタ53a、53b、共振用コンデンサ54、トランス55、チョークコイル56などから成っており、図2のように各々が接続されている。
【0024】
トランジスタ51のベースに入力信号(パルス信号)が入力されていない場合は、トランジスタ53a、53bは動作しないので、out端子に電位差は生じない。しかしトランジスタ51のベースに入力信号が入力された場合は、トランジスタ53a、53bも動作状態となる。
【0025】
まずトランジスタ53aとトランジスタ53bの閾値電圧のうち、低い方のトランジスタがオンする。例えばトランジスタ53aの閾値電圧の方が小さいとすると、トランジスタ53aがオンすることとなり、トランジスタ53aのコレクタに電流が流れる。そのコレクタ電流の変化はトランス55を介し、2次巻線に伝えられると共に、3次巻線に接続されたトランジスタ53aのベース電位を増大させ、トランジスタ53bのベースの電位を減少させるように3次巻線に電圧を誘起する。
【0026】
次に、トランジスタ53aのコレクタ電流が増加するにともない、トランジスタ53aのエミッタ電流も増加し、ベース・エミッタ間電圧も上昇する。トランジタ53a、53bのエミッタは共通して接地されているため、該ベース・エミッタ間電圧がトランジスタ53bの閾値電圧となればトランジスタ53bはオンする。
【0027】
これによりトランジスタ53bのコレクタに電流が流れ、トランス55の1次巻線の電流はトランジスタ53aのコレクタ電流からトランジスタ53bのコレクタ電流を引いたものとなる。この電流変化はトランス55を介し、2次巻線側に流れる電流となるとともに3次巻線に接続されたトランジスタ53aのベース電位を減少させ、トランジスタ53bのベース電位を上昇させるよう3次巻線に電圧を誘起する。
【0028】
この結果、トランジスタ53aはオフしてトランジスタ53bがオンし、トランジスタ53aのコレクタ電流はトランジスタ53aのコレクタ・エミッタ間を流れることができないので、コンデンサ54に充電される。
【0029】
この後は定常状態となり、コンデンサ54とトランス55の1次巻線とで構成される共振回路により、トランス55の1次巻線にこの共振回路の共振周波数で振動する電流が流れる。以上のように、制御手段からの入力信号によってトランジスタ51がオンされている期間だけ、上述したプッシュプル動作を行わせる。これによって、上記入力信号に応じた値の交流電圧を出力することができる。
【0030】
次に本実施形態による蛍光灯駆動装置の作用について、図3に基づいて説明する。ユーザからの駆動開始の指示により、制御部1は入力信号(パルス信号)をインバータ回路2の信号入力端子に出力する。これにより、インバータ回路2は供給される直流電圧を入力信号に応じた値の交流電圧に変換し、蛍光灯3へ供給する(ステップS1)。なお駆動開始時には、入力信号は蛍光灯3が適正に駆動するよう予め設定されたパルス波形となっている。しかし後述するように、入力信号のパルス波形の調整が行われた場合は、調整後のパルス波形となる。
【0031】
このように蛍光灯3を駆動させている間、制御部1は電圧検知部4を通じて、蛍光灯3に出力されている電圧値を継続的に検出する(ステップS2)。そして制御部1は、検出値が所定の許容範囲内に収まっているかを判断する。なおこの許容範囲は、蛍光灯3におけるスネーキング現象の発生を抑制できる範囲として、予め設定されている。
【0032】
その結果、検出値が当該許容範囲の下限値を下回っていると判断した場合(ステップS3のY)、制御部1は蛍光灯3に出力される電圧の値を上げるように、入力信号のパルスを調整する(ステップS5)。また逆に検出値が当該許容範囲の上限値を上回っていると判断した場合(ステップS4のY)、制御部1は蛍光灯3に出力される電圧の値を下げるように、入力信号のパルスを調整する(ステップS6)。
【0033】
なお入力信号のパルスの調整において、蛍光灯3に出力される電圧の値を上げる場合は、図4のように、パルスの幅を増大、及び/または、パルスの周波数を増加させることでインバータ回路2のオンデューティを増加させ、蛍光灯3への出力電圧を実質的に上げることとする。また逆に蛍光灯3に出力される電圧の値を下げる場合は、パルス幅を縮小、及び/または、パルス周波数を減少させることでインバータ回路2のオンデューティを減少させ、蛍光灯3への出力電圧を実質的に下げることとする。このように、入力信号のパルスの幅若しくは周波数を調整することによって、冷陰極放電管に供給する電圧値を簡易かつ正確に制御することができる。
【0034】
以上の結果、蛍光灯3に出力される電圧値が何らかの要因で許容範囲を逸脱しかけても、当該電圧値は補正され、大きく変動するのを未然に防止することができる。そのためスネーキング現象の発生を、極力事前に抑えることができる。
【0035】
[実施例2]
次に実施例2における蛍光灯駆動装置の構成を図5に示す。本実施形態は、制御部11、インバータ回路部12、蛍光灯13、電流検知部14等から成る。
【0036】
制御部は11、インバータ回路12に入力信号を送り、インバータ回路12の出力する交流電圧を制御する。制御は電流検知部14の検出値に基づいて、蛍光灯13に出力される電流値が所定の許容範囲を超えないように、或いは下回らないようになされる。
【0037】
電流検知部14は、蛍光灯13に出力される電流値を検出し、その値を制御部に伝達する。具体的には図5に示すように、蛍光灯13と直列に設けた抵抗を利用して、電流の大きさに応じた電圧を得る。そしてこの電圧を検知情報として、電流検知端子(I−SENCE)に伝送する。なおインバータ回路12の構成等は、実施例1のものと同様である。
【0038】
本実施例に係る蛍光灯駆動装置の作用について、図6に基づいて説明する。蛍光灯13に電圧を供給する処理(ステップS1)においては、実施例1の場合と同様である。しかし実施例1のステップS2では、制御部1は蛍光灯3に出力されている電圧値を検出するのに対し、本実施例における制御部11は電流検知部14を通じて、蛍光灯13に出力されている電流を継続的に検出する(ステップS2)。
【0039】
そして検出された電流値が許容範囲の下限値を下回っていた場合は(ステップS3のY)、制御部11は蛍光灯13に出力される電流値を上げるように、入力信号のパルスを調整する(ステップS5)。逆に検出値が許容範囲の上限値を上回っていた場合は(ステップS4のY)、蛍光灯13に出力される電流値を下げるように、入力信号のパルスを調整する(ステップS6)。なおこの許容範囲は、蛍光灯13におけるスネーキング現象の発生を抑制できる範囲として、予め設定されているものとする。
【0040】
なお通常の負荷であれば電流値を上げるためには供給電圧を上げ、電流値を下げるためには供給電圧を下げるように入力信号を調整すべきである。ただし蛍光灯の電圧電流特性が負特性(供給電圧が増大するほど、管内の電流が下がる)であれば、電流値を下げる場合は供給電圧を上げ、電流値を上げる場合は、供給電圧を下げるように入力信号を調整する。またパルスの調整は実施例1の場合と同様、パルスの幅や周波数を変えることにより行う。
【0041】
以上の結果、蛍光灯13に出力される電流値が何らかの要因で許容範囲を逸脱し始めても、その度に当該電流値は補正され、大きく変動するのを未然に防止することができる。そのためスネーキング現象の発生を、極力事前に抑えることができる。
【0042】
[実施例3]
次に実施例3の構成を図7に示す。本実施形態は、制御部21、インバータ回路22、蛍光灯23、温度検知部24等から成る。
【0043】
制御部21は、インバータ回路22に入力信号を送り、インバータ回路22の出力する交流電圧を制御する。制御は温度検知部24の検出値に基づき、蛍光灯の温度が所定の許容範囲を超えないように、或いは下回らないようになされる。
【0044】
温度検知部24は、蛍光灯23の温度を検知し、その情報を制御部21に伝達する。具体的には、蛍光灯23の近傍に温度センサ(温度を電圧に変換する装置)を設けており、温度状態に応じた電圧を得る。そしてこの電圧を検知情報として、制御部21の温度検知端子(T−SENCE)に伝送する。なおインバータ回路22の構成等は、実施例1のものと同様である。
【0045】
本実施例に係る蛍光灯駆動装置の作用を、図8に基づいて説明する。本実施例の場合も、蛍光灯23に電力を供給する処理(ステップS1)においては、実施例1の場合と同様である。しかし実施例1のステップS2では、制御部1は蛍光灯3に出力されている電圧値を検出するのに対し、本実施例の制御部21は温度検知部24を通じて、蛍光灯23近傍の温度を検出する(ステップS2)。
【0046】
そして検出された温度が許容範囲の下限値を下回っていた場合は(ステップS3のY)、蛍光灯23内部の発熱を増大させるべく、制御部21は蛍光灯23に出力される電流値を上げるように、入力信号のパルスを調整する(ステップS5)。逆に検出値が許容範囲の上限値を上回っていた場合は(ステップS4のY)、蛍光灯23内部の発熱を減少させるべく、蛍光灯23に出力される電流値を下げるように、入力信号のパルスを調整する。なおこの許容範囲は、蛍光灯3におけるスネーキング現象の発生を抑制できる範囲として、予め設定されているものとする。
【0047】
なお通常の負荷であれば電流値を上げるためには供給電圧を上げ、電流値を下げるためには供給電圧を下げるように入力信号を調整すべきである。ただし蛍光灯の電圧電流特性が負特性(供給電圧が増大するほど、管内の電流が下がる)であれば、電流値を下げる場合は供給電圧を上げ、電流値を上げる場合は、供給電圧を下げるように入力信号を調整する。またパルスの調整は実施例1の場合と同様、パルスの幅や周波数を変えることにより行う。
【0048】
以上の結果、蛍光灯23の温度が何らかの要因で許容範囲を逸脱し始めても、当該温度は補正され、大きく変動するのを未然に防止することができる。そのためスネーキング現象の発生を、極力事前に抑えることができる。
【0049】
また上述した温度センサは、インバータ回路22の近傍に設けてインバータ回路の温度状態を検出することとしても良い。インバータ回路22の温度の変動は、該回路内部に生じたジュール熱による発熱状態の変動が要因であると考えられる。そこでインバータ回路22の温度が許容範囲の上限値を超えているときは、該回路内の電圧が過剰となっており、ひいては蛍光灯23に供給している電圧も過剰であると考えられるため、供給電圧を減少させるように入力信号を調整する。また逆に下限値を下回っているときは、供給電圧を増加させるように入力信号を調整する。
【0050】
また上述した実施例1から実施例3における検出処理および制御処理は、蛍光灯の駆動中に継続的に実行される。ここで「継続的」とは、蛍光灯の駆動開始時のみならず、駆動中に繰り返しなされることであり、例えば毎秒1回の頻度で繰り返しなされること等を意味する。これにより、例えば外部からの変動要因や負荷(ランプ)の経時変化などによって、冷陰極放電管の駆動開始時以外にも生ずる供給電圧等の変動にも対応できる。
【0051】
また上記実施例1から実施例3までの各蛍光灯駆動装置は、検出値が許容値の上限を逸脱しているかという判断と、検出値が許容値の下限を逸脱しているかという判断の双方を行うものであるところ、実際には何れか一方のみを判断することとしてもよい。
【0052】
また蛍光灯をバックライトとして用いた液晶表示装置において、上記実施例1から実施例3までの各蛍光灯駆動装置を備えたものとすれば、バックライトにおけるスネーキング現象の発生を極力事前に防止し、表示画面での光ムラやフリッカによる表示品質の低下を極力抑えることができる。
【0053】
そして本発明の構成は、上記実施形態のほか、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。なお上記説明は冷陰極放電管として蛍光灯を例示して説明したが、他種の冷陰極放電管であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】実施例1の蛍光灯駆動装置の構成図である。
【図2】各実施例で用いられるインバータ回路の構成図である。
【図3】実施例1の蛍光灯駆動装置における処理の流れ図である。
【図4】入力信号の制御に係る説明図である。
【図5】実施例2の蛍光灯駆動装置の構成図である。
【図6】実施例2の蛍光灯駆動装置における処理の流れ図である。
【図7】実施例3の蛍光灯駆動装置の構成図である。
【図8】実施例3の蛍光灯駆動装置における処理の流れ図である。
【符号の説明】
【0055】
1、11、21 制御部(制御手段)
2、12、22 インバータ回路
3、13、23 蛍光灯(冷陰極放電管)
4 電圧検知回路
14 電流検知回路
24 温度検知回路
51 パルス入力用トランジスタ
52a、52b 起動用抵抗
53a、53b プッシュプル動作用トランジスタ
54 共振用コンデンサ
55 トランス
56 チョークコイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電圧を入力信号に対応した値の交流電圧に変換して冷陰極放電管に供給するインバータ回路を備えた冷陰極放電管の駆動装置において、
前記入力信号を調整することで、前記冷陰極放電管に供給する電圧を制御する制御手段と、前記冷陰極放電管に供給される電圧の値;前記冷陰極放電管に供給される電流の値;前記冷陰極放電管の温度;のうちの何れかを検出する検出手段と、を備え、
前記制御手段は、該検出値が予め設定された許容範囲を逸脱しているか否かを判断し、逸脱している場合は、該検出値が該許容範囲内に収まるように前記制御を行うことを特徴とする冷陰極放電管の駆動装置。
【請求項2】
直流電圧を入力信号に対応した値の交流電圧に変換して冷陰極放電管に供給するインバータ回路を備えた冷陰極放電管の駆動装置において、
前記入力信号を調整することで、前記冷陰極放電管に供給する電圧を制御する制御手段と、前記インバータ回路の温度を検出する検出手段と、を備え、
前記制御手段は、該検出値が予め設定された許容範囲を逸脱しているか否かを判断し、逸脱している場合は、該検出値が該許容範囲内に収まるように前記制御を行うことを特徴とする冷陰極放電管の駆動装置。
【請求項3】
前記検出手段による検出処理および前記制御手段による制御処理は、前記冷陰極放電管の駆動中、継続的に実行されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の冷陰極放電管の駆動装置。
【請求項4】
前記入力信号はパルス波であり、かつ、インバータ回路は、前記入力信号のパルスが到来したときにオンデューティとなる請求項1から請求項3の何れかに記載の冷陰極放電管の駆動装置であって、
前記制御手段は、電圧を上げるべきときは、前記パルスの幅を増大及び/または前記パルスの周波数を増加させ、電圧を下げるべきときは、前記パルスの幅を縮小及び/または前記パルスの周波数を減少させることを特徴とする冷陰極放電管の駆動装置。
【請求項5】
冷陰極放電管をバックライトとして用いた液晶表示装置において、請求項1から請求項4の何れかに記載の冷陰極放電管の駆動装置を備えたことを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−48510(P2007−48510A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−229343(P2005−229343)
【出願日】平成17年8月8日(2005.8.8)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】