冷陰極蛍光ランプ、筒状電極及び電極ユニット
【課題】筒状電極にリード線を溶接する際の過熱に起因する諸問題、及びガラス管への電極封入時の表面酸化といった課題を同時に解決する。
【解決手段】ビードガラス3によって気密に封止された内部空間5内に少なくとも希ガスが封入され、内壁面4に蛍光体層が形成されたガラス管2と、内部空間5内に配置された筒状電極7と、一端が筒状電極7の底面8に接合され、他端がビードガラス3を貫通してガラス管2の外部に引き出されたリード線9とを備えた冷陰極蛍光ランプ1であって、筒状電極7は、内面を構成する第1の金属層と、外面を構成する第2の金属層と、それら第1の金属層と第2の金属層との間に設けられた焼結金属層とを有し、第1の金属層及び第2の金属層は、焼結金属層を形成する焼結金属よりも融点が低く、かつ、還元されやすい金属によって形成されている。
【解決手段】ビードガラス3によって気密に封止された内部空間5内に少なくとも希ガスが封入され、内壁面4に蛍光体層が形成されたガラス管2と、内部空間5内に配置された筒状電極7と、一端が筒状電極7の底面8に接合され、他端がビードガラス3を貫通してガラス管2の外部に引き出されたリード線9とを備えた冷陰極蛍光ランプ1であって、筒状電極7は、内面を構成する第1の金属層と、外面を構成する第2の金属層と、それら第1の金属層と第2の金属層との間に設けられた焼結金属層とを有し、第1の金属層及び第2の金属層は、焼結金属層を形成する焼結金属よりも融点が低く、かつ、還元されやすい金属によって形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷陰極蛍光ランプに関するものであり、特に、冷陰極蛍光ランプの電極の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶パネルの大型化、高輝度化に伴って、その光源である冷陰極蛍光ランプの電極には、高融点焼結金属を使ったカップ状電極が用いられている。具体的には、ニッケル(Ni)に比べて低仕事関数で耐スパッタ特性に優れたモリブデン(Mo)やニオブ(Nb)などを使ったカップ状電極が用いられている(例えば、特許文献1参照)。しかし、高融点焼結金属を使った電極は上記利点を有する一方で、次のような問題があった。すなわち、冷陰極蛍光ランプの電極には、該電極に電圧を印加するためのリード線を溶接する必要がある。しかし、電極が高融点の焼結金属からなる場合には、リード線の一端を電極に溶接する際に非常に高い熱を加えないと十分な接合強度が得られない。さらに、銅又は銅合金の線材の外側をコバールで被覆したリード線を用いる場合には、電極への溶接時の熱によって内部の銅が過熱され、外部に吹き出してしまうことがあった。
【0003】
そこで、特許文献2には、電極に溶接されるリード線の先端部に、電極材料よりも低融点のニッケル層を設けることによって、上記溶接温度の低下を図った技術が開示されている。
【特許文献1】特開2002−358992号公報
【特許文献2】特開2003−187740号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
モリブデン(Mo)やニオブ(Nb)などの高融点焼結金属を使った電極には、上記問題に加えて、ガラス管への封入時に表面が酸化するといった別の問題があった。具体的には、冷陰極蛍光ランプの製造工程においては、ガラス管の端部に電極を配置した後にそのガラス管の端部を封止ガラス(ビードガラス)によって気密に封止する。しかし、ビードガラスを溶融させる際の熱が電極に伝わり、その熱によって電極表面が酸化してしまう。さらに、モリブデン(Mo)やニオブ(Nb)などの高融点焼結金属は、一度酸化してしまうと還元され難い性質を有する。
【0005】
本発明の目的は、リード線との溶接時の過熱に起因する上記問題、及びガラス管への封入時の表面酸化といった2つの問題を同時に解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の冷陰極蛍光ランプは、封止ガラスによって気密に封止された内部空間内に少なくとも希ガスが封入され、内壁面に蛍光体層が形成されたガラス管と、内部空間内に配置された筒状電極と、一端が筒状電極の外面に接合され、他端が封止ガラスを貫通してガラス管の外部に引き出されたリード線とを備えた冷陰極蛍光ランプであって、筒状電極は、内面を構成する第1の金属層と、外面を構成する第2の金属層と、それら第1の金属層と第2の金属層との間に設けられた焼結金属層とを有し、第1の金属層及び第2の金属層は、焼結金属層を形成する焼結金属よりも融点が低く、かつ、還元されやすい金属によって形成されている。
【0007】
以上の構成を有する本発明によれば、ガラス管へ筒状電極を封入する際における焼結金属層の表面酸化が第1の金属層及び第2の金属層によって回避され、それら金属層の酸化は後に還元される。この意味で第1の金属層及び第2の金属層は焼結金属層に対する保護層として機能する。また、リード線が溶接される筒状電極の外面が焼結金属層に比べて低融点の第2の金属層によって構成されている。従って、焼結金属層にリード線を直接溶接する場合に比べて低い溶接温度によっても筒状電極とリード線とが十分に強固に接合される。
【0008】
これまでの説明から明らかなように、上記筒状電極は、第1の金属層からなる内面と第2の金属層からなる外面との間に焼結金属層が設けられていればよく、3層構造には限定されない。例えば、第1の金属層と焼結金属層との間に他の金属層が1層以上介在していたり、第2の金属層と焼結金属層との間に他の金属層が1層以上介在していてもよい。
【0009】
また、上記筒状電極とリード線とは、冷陰極蛍光ランプの製造工程とは独立した製造工程によって予めユニット化されたものであっても、冷陰極蛍光ランプの一連の製造工程の中で、別体の筒状電極とリード線とが接合されて一体化されたものであってもよい。すなわち、ガラス管へ筒状電極を挿入する際に、その筒状電極の外面にリード線が接合された状態となっていればよい。
【0010】
尚、第1の金属層及び第2の金属層が焼結金属層に比して耐スパッタ特性に劣り、時間の経過に伴って第1の金属層及び第2の金属層が失われ、焼結金属層が露出されることがあっても不都合はない。何故なら焼結金属製の電極はそもそも上記のような利点を有する一方で、冷陰極蛍光ランプの点灯中には、焼結金属層を酸化させるような熱の発生及び酸化雰囲気に曝されることはないからである。かかる観点からは、ガラス管への電極封入後は、むしろ第1の金属層及び第2の金属層がスパッタされ、焼結金属層が露出することが望ましい。但し、第1の金属層及び第2の金属層からスパッタによって叩き出される金属が過剰になると、内部空間内に封入されている水銀と結合してアマルガムが発生する虞がある。そこで、筒状電極の内外面のうち、点灯時によりスパッタされやすい内面を構成する第1の金属層の厚みを焼結金属層の酸化防止という目的を達成するために必要最低限の厚みとすることが望ましい。もちろん、アマルガムの発生回避という観点からは、第2の金属層の厚みも薄いに越したことはないが、第2の金属層は、焼結金属層の酸化防止のみでなく、筒状電極とリード線とを強固に接合させるという別の役割も果たす。そこで、第2の金属層の厚みの設定に当たっては、かかる観点をも考慮する必要がある。以上を総合的に考慮した場合、第1の金属層の厚みと焼結金属層の厚みとの比率を1:45〜2:5の範囲内、第2の金属層の厚みと焼結金属層の厚みとの比率を1:9〜7:20の範囲内とすることが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
低仕事関数で耐スパッタ特性に優れる焼結金属製の電極の利点を損なうことなく、ガラス管内への電極の封入時における表面酸化及びリード線接合時の過熱に起因する諸問題が同時に解決される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(実施形態1)
以下、本発明の冷陰極蛍光ランプの実施形態の一例について図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本例の冷陰極ランプの構造概略を示す断面図である。
【0013】
図1に示す冷陰極蛍光ランプ1では、硼・珪酸ガラスによって形成されたガラス管2の両端が封止ガラス(ビードガラス3)によって気密に封止されている。ガラス管2の外径は、1.5〜6.0mmの範囲内、好ましくは1.5〜3.0mmの範囲内である。もっとも、ガラス管2の材料は、鉛ガラス、ソーダガラス、低鉛ガラスなどであってもよい。
【0014】
ガラス管2の内壁面4には、そのほぼ全長に亙って不図示の蛍光体層が設けられている。蛍光体層を構成する蛍光体は、ハロリン酸塩蛍光体や希土類蛍光体などの既存又は新規の蛍光体から冷陰極蛍光ランプ1の目的や用途に応じて適宜選択することができる。さらに、蛍光体層は、2種類以上の蛍光体が混合されてなる蛍光体によって構成することもできる。
【0015】
内壁面4によって囲まれたガラス管2の内部空間5内には、アルゴン、キセノン、ネオン等の希ガス及び水銀が所定量封入され、内部圧力は大気圧の数十分の一程度に減圧されている。
【0016】
ガラス管2の長手方向両端には、一対の電極ユニット6がそれぞれ設けられている。各電極ユニット6は、筒状電極7と、その筒状電極7の底面8に接合されたリード線9とから構成されている。一方の電極ユニット6が備える筒状電極7は、ガラス管2の内部空間5の長手方向端部よりもやや内側の位置に、他方の電極ユニット6が備える筒状電極7と対向する向きで配置され、各リード線9は、その一端が対応する筒状電極7の底面8に溶接され、他端がビードガラス3を貫通してガラス管2の外部に引き出されている。以上が本例の冷陰極蛍光ランプ1の構造概略である。
【0017】
次に、図1に示す各電極ユニット6について図2及び図3を参照しながらさらに詳しく説明する。図2は、冷陰極蛍光ランプ1が備える電極ユニット6を示す拡大斜視図であり、図3は拡大断面図である。
【0018】
図2に示すように、電極ユニット6を構成している筒状電極7は、長手方向一方に開口部10を有し、他方が底11によって閉塞された円筒状(カップ状)に金属板をプレスしたものであり、リード線9は、一方の端面12が筒状電極7の底面8に溶接されている。筒状電極7の材料である上記金属板は、ニッケル又はニッケル合金からなる2つの金属層の間にモリブデンからなる焼結金属層が積層された多層構造(3層構造)を有する。ここで、2つの金属層は、一方が他方に比べて相対的に厚みが薄く形成されている。尚、ニッケル又はニッケル合金は、モリブデンに比べて融点が低く、かつ、還元されやすい性質を有する。
【0019】
上記金属板から筒状電極7をプレス成形する際には、厚みが薄い方の金属層側から他方の金属層側に向けて金属板に圧力を付与している。従って、図2に示す筒状電極7は図3に示すような断面構造を有する。すなわち、第1の金属層20によって内面21が構成され、第2の金属層22によって外面23が構成され、それら第1の金属層20と第2の金属層22との間に焼結金属層24が設けられている。この結果、リード線9の端面12が溶接されている筒状電極7の底面(外面23の一部)8は、第2の金属層22によって構成され、焼結金属層24の厚み(t1)は、第1の金属層20の厚み(t2)及び第2の金属層22の厚み(t3)よりも薄いことがわかる。
【0020】
もっとも、筒状電極7は、内面21が第1の金属層20によって形成され、外面23が第2の金属層22によって形成され、それら金属層20、22の間に焼結金属層24が配置されていれば4層以上の多層構造であっても同様の効果が得られる。具体的には、第1の金属層20と焼結金属層24との間に他の金属層が1層以上積層されていたり、第2の金属層22と焼結金属層24との間に他の金属層が1層以上積層されていたりしてもよい。
【0021】
また、第1の金属層20及び第2の金属層22を構成する金属は、焼結金属層24を構成する焼結金属よりも融点が低く、かつ、還元されやすい金属であればニッケル又はニッケル合金に限定されない。
【0022】
図3に示すように、本例における筒状電極7では、その端面(開口部10の周縁)において焼結金属層24の一部が外部に露出しているが、この部分も第1の金属層20又は/及び第2の金属層22によって被覆されるように構成してもよい。
【0023】
さらに、筒状電極7の成形方法は上記方法に限定されない。例えば、焼結金属板を筒状にプレスした後に、第1の金属層20及び第2の金属層22を形成してもよい。また、焼結金属層の片面に、第1の金属層20又は第2の金属層22となる金属層が予め積層されている金属板をプレスした後に、第2の金属層22又は第1の金属層20を形成してもよい。
【0024】
(実施形態2)
以下、本発明の冷陰極蛍光ランプの実施形態の他例について説明する。もっとも、本例の例陰極蛍光ランプの基本構成は、実施形態1の冷陰極蛍光ランプと同一であり、異なるのは電極ユニットの構成のみである。そこで、本例の冷陰極蛍光ランプが備える電極ユニットの構成についてのみ説明し、その他の構成についての説明は省略する。
【0025】
本例の冷陰極蛍光ランプが備える電極ユニットと実施形態1の冷陰極蛍光ランプが備える電極ユニットとの相違点はリード線にある。具体的には、図4に示すように、本例の冷陰極蛍光ランプが備える電極ユニット30を構成するリード線31は、銅(Cu)又は銅合金からなる内側部32がコバールからなる外側部33によって被覆された多層構造(2層構造)を有する。尚、実施形態1の冷陰極蛍光ランプ1が備える電極ユニット6と同一の構成については、図中に同一の符号を付して説明を省略する。
【0026】
図4に示すリード線31は、例えば次のようにして製造することができる。まず、図5(a)に示すように、コバール製の板材をローラダイス40を用いて幅方向に丸めつつ、当接した幅方向の端面同士をアルゴンガス雰囲気中で溶接して、中空のコバール管41を製作する(コバール製造工程)。次に、図5(b)に示すように、コバール管41の内部空隙に、銅又は銅合金の線材42を内挿する(線材挿入工程)。その後、図5(c)に示すように、線材42が内挿されたコバール管41を回転するスウェージング用のダイス43に通して伸線化する。次に、伸線化されたコバール管41及び線材42を水素ガス雰囲気中で焼鈍する。かかる焼鈍工程によって、線材42の外周面と、コバール管41の内周面との間に金属拡散層が形成され、コバール管41と線材42との密着性が向上する。また、上記焼鈍によってコバール管41に発生した歪みも除去される。ここで、コバールと銅は上記密着性における相性が良く、密着不良による熱伝導率の低下を招き難いといった利点がある。焼鈍工程終了後、図5(d)に示すように、コバール管41及び線材42を穴ダイス44に通して伸線化し、所定の外径に仕上げ、図5(e)に示すように、所定の長さに切断する。
【0027】
上述の通り、図4に示す筒状電極7は図2に示す筒状電極7と同様の多層構造を有する。すなわち、リード線31の端面12が溶接されている筒状電極7の底面8は、焼結金属層24に比べて低融点の第2の金属層22によって構成されている。従って、焼結金属層24にリード線31を溶接する場合よりも低い溶接温度によって筒状電極7とリード線31とを十分に強固に接合させることができることは勿論、溶接時の熱によってリード線31の内側部32が過熱され、外部に吹き出してしまうといった不都合がない。尚、ガラス管の内部空間内への電極の封入時における焼結金属層24の表面酸化が効果的に抑制される点も図2に示す筒状電極7と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の冷陰極蛍光ランプの実施形態の一例を示す模式的断面図である。
【図2】図1に示す電極ユニットの拡大斜視図である。
【図3】図1に示す電極ユニットの拡大断面図である。
【図4】電極ユニットの他例を示す拡大断面図である。
【図5】(a)〜(e)は、リード線の製造工程の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0029】
1 冷陰極蛍光ランプ
2 ガラス管
3 ビードガラス
4 内壁面
5 内部空間
6 電極ユニット
7 筒状電極
8 底面
9 リード線
10 開口部
11 底
20 第1の金属層
21 内面
22 第2の金属層
23 外面
24 焼結金属層
30 電極ユニット
31 リード線
32 内側部
33 外側部
40 ローラダイス
41 コバール管
42 線材
43 ダイス
44 穴ダイス
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷陰極蛍光ランプに関するものであり、特に、冷陰極蛍光ランプの電極の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶パネルの大型化、高輝度化に伴って、その光源である冷陰極蛍光ランプの電極には、高融点焼結金属を使ったカップ状電極が用いられている。具体的には、ニッケル(Ni)に比べて低仕事関数で耐スパッタ特性に優れたモリブデン(Mo)やニオブ(Nb)などを使ったカップ状電極が用いられている(例えば、特許文献1参照)。しかし、高融点焼結金属を使った電極は上記利点を有する一方で、次のような問題があった。すなわち、冷陰極蛍光ランプの電極には、該電極に電圧を印加するためのリード線を溶接する必要がある。しかし、電極が高融点の焼結金属からなる場合には、リード線の一端を電極に溶接する際に非常に高い熱を加えないと十分な接合強度が得られない。さらに、銅又は銅合金の線材の外側をコバールで被覆したリード線を用いる場合には、電極への溶接時の熱によって内部の銅が過熱され、外部に吹き出してしまうことがあった。
【0003】
そこで、特許文献2には、電極に溶接されるリード線の先端部に、電極材料よりも低融点のニッケル層を設けることによって、上記溶接温度の低下を図った技術が開示されている。
【特許文献1】特開2002−358992号公報
【特許文献2】特開2003−187740号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
モリブデン(Mo)やニオブ(Nb)などの高融点焼結金属を使った電極には、上記問題に加えて、ガラス管への封入時に表面が酸化するといった別の問題があった。具体的には、冷陰極蛍光ランプの製造工程においては、ガラス管の端部に電極を配置した後にそのガラス管の端部を封止ガラス(ビードガラス)によって気密に封止する。しかし、ビードガラスを溶融させる際の熱が電極に伝わり、その熱によって電極表面が酸化してしまう。さらに、モリブデン(Mo)やニオブ(Nb)などの高融点焼結金属は、一度酸化してしまうと還元され難い性質を有する。
【0005】
本発明の目的は、リード線との溶接時の過熱に起因する上記問題、及びガラス管への封入時の表面酸化といった2つの問題を同時に解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の冷陰極蛍光ランプは、封止ガラスによって気密に封止された内部空間内に少なくとも希ガスが封入され、内壁面に蛍光体層が形成されたガラス管と、内部空間内に配置された筒状電極と、一端が筒状電極の外面に接合され、他端が封止ガラスを貫通してガラス管の外部に引き出されたリード線とを備えた冷陰極蛍光ランプであって、筒状電極は、内面を構成する第1の金属層と、外面を構成する第2の金属層と、それら第1の金属層と第2の金属層との間に設けられた焼結金属層とを有し、第1の金属層及び第2の金属層は、焼結金属層を形成する焼結金属よりも融点が低く、かつ、還元されやすい金属によって形成されている。
【0007】
以上の構成を有する本発明によれば、ガラス管へ筒状電極を封入する際における焼結金属層の表面酸化が第1の金属層及び第2の金属層によって回避され、それら金属層の酸化は後に還元される。この意味で第1の金属層及び第2の金属層は焼結金属層に対する保護層として機能する。また、リード線が溶接される筒状電極の外面が焼結金属層に比べて低融点の第2の金属層によって構成されている。従って、焼結金属層にリード線を直接溶接する場合に比べて低い溶接温度によっても筒状電極とリード線とが十分に強固に接合される。
【0008】
これまでの説明から明らかなように、上記筒状電極は、第1の金属層からなる内面と第2の金属層からなる外面との間に焼結金属層が設けられていればよく、3層構造には限定されない。例えば、第1の金属層と焼結金属層との間に他の金属層が1層以上介在していたり、第2の金属層と焼結金属層との間に他の金属層が1層以上介在していてもよい。
【0009】
また、上記筒状電極とリード線とは、冷陰極蛍光ランプの製造工程とは独立した製造工程によって予めユニット化されたものであっても、冷陰極蛍光ランプの一連の製造工程の中で、別体の筒状電極とリード線とが接合されて一体化されたものであってもよい。すなわち、ガラス管へ筒状電極を挿入する際に、その筒状電極の外面にリード線が接合された状態となっていればよい。
【0010】
尚、第1の金属層及び第2の金属層が焼結金属層に比して耐スパッタ特性に劣り、時間の経過に伴って第1の金属層及び第2の金属層が失われ、焼結金属層が露出されることがあっても不都合はない。何故なら焼結金属製の電極はそもそも上記のような利点を有する一方で、冷陰極蛍光ランプの点灯中には、焼結金属層を酸化させるような熱の発生及び酸化雰囲気に曝されることはないからである。かかる観点からは、ガラス管への電極封入後は、むしろ第1の金属層及び第2の金属層がスパッタされ、焼結金属層が露出することが望ましい。但し、第1の金属層及び第2の金属層からスパッタによって叩き出される金属が過剰になると、内部空間内に封入されている水銀と結合してアマルガムが発生する虞がある。そこで、筒状電極の内外面のうち、点灯時によりスパッタされやすい内面を構成する第1の金属層の厚みを焼結金属層の酸化防止という目的を達成するために必要最低限の厚みとすることが望ましい。もちろん、アマルガムの発生回避という観点からは、第2の金属層の厚みも薄いに越したことはないが、第2の金属層は、焼結金属層の酸化防止のみでなく、筒状電極とリード線とを強固に接合させるという別の役割も果たす。そこで、第2の金属層の厚みの設定に当たっては、かかる観点をも考慮する必要がある。以上を総合的に考慮した場合、第1の金属層の厚みと焼結金属層の厚みとの比率を1:45〜2:5の範囲内、第2の金属層の厚みと焼結金属層の厚みとの比率を1:9〜7:20の範囲内とすることが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
低仕事関数で耐スパッタ特性に優れる焼結金属製の電極の利点を損なうことなく、ガラス管内への電極の封入時における表面酸化及びリード線接合時の過熱に起因する諸問題が同時に解決される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(実施形態1)
以下、本発明の冷陰極蛍光ランプの実施形態の一例について図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本例の冷陰極ランプの構造概略を示す断面図である。
【0013】
図1に示す冷陰極蛍光ランプ1では、硼・珪酸ガラスによって形成されたガラス管2の両端が封止ガラス(ビードガラス3)によって気密に封止されている。ガラス管2の外径は、1.5〜6.0mmの範囲内、好ましくは1.5〜3.0mmの範囲内である。もっとも、ガラス管2の材料は、鉛ガラス、ソーダガラス、低鉛ガラスなどであってもよい。
【0014】
ガラス管2の内壁面4には、そのほぼ全長に亙って不図示の蛍光体層が設けられている。蛍光体層を構成する蛍光体は、ハロリン酸塩蛍光体や希土類蛍光体などの既存又は新規の蛍光体から冷陰極蛍光ランプ1の目的や用途に応じて適宜選択することができる。さらに、蛍光体層は、2種類以上の蛍光体が混合されてなる蛍光体によって構成することもできる。
【0015】
内壁面4によって囲まれたガラス管2の内部空間5内には、アルゴン、キセノン、ネオン等の希ガス及び水銀が所定量封入され、内部圧力は大気圧の数十分の一程度に減圧されている。
【0016】
ガラス管2の長手方向両端には、一対の電極ユニット6がそれぞれ設けられている。各電極ユニット6は、筒状電極7と、その筒状電極7の底面8に接合されたリード線9とから構成されている。一方の電極ユニット6が備える筒状電極7は、ガラス管2の内部空間5の長手方向端部よりもやや内側の位置に、他方の電極ユニット6が備える筒状電極7と対向する向きで配置され、各リード線9は、その一端が対応する筒状電極7の底面8に溶接され、他端がビードガラス3を貫通してガラス管2の外部に引き出されている。以上が本例の冷陰極蛍光ランプ1の構造概略である。
【0017】
次に、図1に示す各電極ユニット6について図2及び図3を参照しながらさらに詳しく説明する。図2は、冷陰極蛍光ランプ1が備える電極ユニット6を示す拡大斜視図であり、図3は拡大断面図である。
【0018】
図2に示すように、電極ユニット6を構成している筒状電極7は、長手方向一方に開口部10を有し、他方が底11によって閉塞された円筒状(カップ状)に金属板をプレスしたものであり、リード線9は、一方の端面12が筒状電極7の底面8に溶接されている。筒状電極7の材料である上記金属板は、ニッケル又はニッケル合金からなる2つの金属層の間にモリブデンからなる焼結金属層が積層された多層構造(3層構造)を有する。ここで、2つの金属層は、一方が他方に比べて相対的に厚みが薄く形成されている。尚、ニッケル又はニッケル合金は、モリブデンに比べて融点が低く、かつ、還元されやすい性質を有する。
【0019】
上記金属板から筒状電極7をプレス成形する際には、厚みが薄い方の金属層側から他方の金属層側に向けて金属板に圧力を付与している。従って、図2に示す筒状電極7は図3に示すような断面構造を有する。すなわち、第1の金属層20によって内面21が構成され、第2の金属層22によって外面23が構成され、それら第1の金属層20と第2の金属層22との間に焼結金属層24が設けられている。この結果、リード線9の端面12が溶接されている筒状電極7の底面(外面23の一部)8は、第2の金属層22によって構成され、焼結金属層24の厚み(t1)は、第1の金属層20の厚み(t2)及び第2の金属層22の厚み(t3)よりも薄いことがわかる。
【0020】
もっとも、筒状電極7は、内面21が第1の金属層20によって形成され、外面23が第2の金属層22によって形成され、それら金属層20、22の間に焼結金属層24が配置されていれば4層以上の多層構造であっても同様の効果が得られる。具体的には、第1の金属層20と焼結金属層24との間に他の金属層が1層以上積層されていたり、第2の金属層22と焼結金属層24との間に他の金属層が1層以上積層されていたりしてもよい。
【0021】
また、第1の金属層20及び第2の金属層22を構成する金属は、焼結金属層24を構成する焼結金属よりも融点が低く、かつ、還元されやすい金属であればニッケル又はニッケル合金に限定されない。
【0022】
図3に示すように、本例における筒状電極7では、その端面(開口部10の周縁)において焼結金属層24の一部が外部に露出しているが、この部分も第1の金属層20又は/及び第2の金属層22によって被覆されるように構成してもよい。
【0023】
さらに、筒状電極7の成形方法は上記方法に限定されない。例えば、焼結金属板を筒状にプレスした後に、第1の金属層20及び第2の金属層22を形成してもよい。また、焼結金属層の片面に、第1の金属層20又は第2の金属層22となる金属層が予め積層されている金属板をプレスした後に、第2の金属層22又は第1の金属層20を形成してもよい。
【0024】
(実施形態2)
以下、本発明の冷陰極蛍光ランプの実施形態の他例について説明する。もっとも、本例の例陰極蛍光ランプの基本構成は、実施形態1の冷陰極蛍光ランプと同一であり、異なるのは電極ユニットの構成のみである。そこで、本例の冷陰極蛍光ランプが備える電極ユニットの構成についてのみ説明し、その他の構成についての説明は省略する。
【0025】
本例の冷陰極蛍光ランプが備える電極ユニットと実施形態1の冷陰極蛍光ランプが備える電極ユニットとの相違点はリード線にある。具体的には、図4に示すように、本例の冷陰極蛍光ランプが備える電極ユニット30を構成するリード線31は、銅(Cu)又は銅合金からなる内側部32がコバールからなる外側部33によって被覆された多層構造(2層構造)を有する。尚、実施形態1の冷陰極蛍光ランプ1が備える電極ユニット6と同一の構成については、図中に同一の符号を付して説明を省略する。
【0026】
図4に示すリード線31は、例えば次のようにして製造することができる。まず、図5(a)に示すように、コバール製の板材をローラダイス40を用いて幅方向に丸めつつ、当接した幅方向の端面同士をアルゴンガス雰囲気中で溶接して、中空のコバール管41を製作する(コバール製造工程)。次に、図5(b)に示すように、コバール管41の内部空隙に、銅又は銅合金の線材42を内挿する(線材挿入工程)。その後、図5(c)に示すように、線材42が内挿されたコバール管41を回転するスウェージング用のダイス43に通して伸線化する。次に、伸線化されたコバール管41及び線材42を水素ガス雰囲気中で焼鈍する。かかる焼鈍工程によって、線材42の外周面と、コバール管41の内周面との間に金属拡散層が形成され、コバール管41と線材42との密着性が向上する。また、上記焼鈍によってコバール管41に発生した歪みも除去される。ここで、コバールと銅は上記密着性における相性が良く、密着不良による熱伝導率の低下を招き難いといった利点がある。焼鈍工程終了後、図5(d)に示すように、コバール管41及び線材42を穴ダイス44に通して伸線化し、所定の外径に仕上げ、図5(e)に示すように、所定の長さに切断する。
【0027】
上述の通り、図4に示す筒状電極7は図2に示す筒状電極7と同様の多層構造を有する。すなわち、リード線31の端面12が溶接されている筒状電極7の底面8は、焼結金属層24に比べて低融点の第2の金属層22によって構成されている。従って、焼結金属層24にリード線31を溶接する場合よりも低い溶接温度によって筒状電極7とリード線31とを十分に強固に接合させることができることは勿論、溶接時の熱によってリード線31の内側部32が過熱され、外部に吹き出してしまうといった不都合がない。尚、ガラス管の内部空間内への電極の封入時における焼結金属層24の表面酸化が効果的に抑制される点も図2に示す筒状電極7と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の冷陰極蛍光ランプの実施形態の一例を示す模式的断面図である。
【図2】図1に示す電極ユニットの拡大斜視図である。
【図3】図1に示す電極ユニットの拡大断面図である。
【図4】電極ユニットの他例を示す拡大断面図である。
【図5】(a)〜(e)は、リード線の製造工程の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0029】
1 冷陰極蛍光ランプ
2 ガラス管
3 ビードガラス
4 内壁面
5 内部空間
6 電極ユニット
7 筒状電極
8 底面
9 リード線
10 開口部
11 底
20 第1の金属層
21 内面
22 第2の金属層
23 外面
24 焼結金属層
30 電極ユニット
31 リード線
32 内側部
33 外側部
40 ローラダイス
41 コバール管
42 線材
43 ダイス
44 穴ダイス
【特許請求の範囲】
【請求項1】
封止ガラスによって気密に封止された内部空間内に少なくとも希ガスが封入され、内壁面に蛍光体層が形成されたガラス管と、前記内部空間内に配置された筒状電極と、一端が前記筒状電極の外面に接合され、他端が前記封止ガラスを貫通して前記ガラス管の外部に引き出されたリード線とを備えた冷陰極蛍光ランプであって、
前記筒状電極は、内面を構成する第1の金属層と、外面を構成する第2の金属層と、それら第1の金属層と第2の金属層との間に設けられた焼結金属層とを有し、
前記第1の金属層及び第2の金属層は、前記焼結金属層を形成する焼結金属よりも融点が低く、かつ、還元されやすい金属によって形成されている冷陰極蛍光ランプ。
【請求項2】
前記第1の金属層及び第2の金属層がニッケル又はニッケル合金によって形成され、前記焼結金属層がモリブデン、ニオブ又はこれらの合金によって形成されている請求項1記載の冷陰極蛍光ランプ。
【請求項3】
前記第1の金属層の厚みと前記焼結金属層の厚みとの比率が1:45〜2:5であり、前記第2の金属層の厚みと前記焼結金属層の厚みとの比率が1:9〜7:20である請求項1又は請求項2記載の冷陰極蛍光ランプ。
【請求項4】
前記リード線は、銅又は銅合金からなる内側部がコバールからなる外側部によって被覆された多層構造を有する請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の冷陰極蛍光ランプ。
【請求項5】
冷陰極蛍光ランプに用いられる筒状電極であって、内面を構成する第1の金属層と、外面を構成する第2の金属層と、それら第1の金属層と第2の金属層との間に設けられた焼結金属層とを有し、
前記第1の金属層及び第2の金属層は、前記焼結金属層を形成する焼結金属よりも融点が低く、かつ、還元されやすい金属によって形成されている筒状電極。
【請求項6】
前記第1の金属層及び第2の金属層がニッケル又はニッケル合金によって形成され、前記焼結金属層がモリブデン、ニオブ又はこれらの合金によって形成されている請求項5記載の筒状電極。
【請求項7】
前記第1の金属層の厚みと前記焼結金属層の厚みとの比率が1:45〜2:5であり、前記第2の金属層の厚みと前記焼結金属層の厚みとの比率が1:9〜7:20である請求項5又は請求項6記載の筒状電極。
【請求項8】
請求項5乃至請求項7のいずれかに記載の筒状電極と、一端が前記筒状電極の外面に接合されたリード線とを有する電極ユニット。
【請求項9】
前記リード線は、銅又銅合金からなる内側部がコバールからなる外側部によって被覆された多層構造を有する請求項8記載の電極ユニット。
【請求項1】
封止ガラスによって気密に封止された内部空間内に少なくとも希ガスが封入され、内壁面に蛍光体層が形成されたガラス管と、前記内部空間内に配置された筒状電極と、一端が前記筒状電極の外面に接合され、他端が前記封止ガラスを貫通して前記ガラス管の外部に引き出されたリード線とを備えた冷陰極蛍光ランプであって、
前記筒状電極は、内面を構成する第1の金属層と、外面を構成する第2の金属層と、それら第1の金属層と第2の金属層との間に設けられた焼結金属層とを有し、
前記第1の金属層及び第2の金属層は、前記焼結金属層を形成する焼結金属よりも融点が低く、かつ、還元されやすい金属によって形成されている冷陰極蛍光ランプ。
【請求項2】
前記第1の金属層及び第2の金属層がニッケル又はニッケル合金によって形成され、前記焼結金属層がモリブデン、ニオブ又はこれらの合金によって形成されている請求項1記載の冷陰極蛍光ランプ。
【請求項3】
前記第1の金属層の厚みと前記焼結金属層の厚みとの比率が1:45〜2:5であり、前記第2の金属層の厚みと前記焼結金属層の厚みとの比率が1:9〜7:20である請求項1又は請求項2記載の冷陰極蛍光ランプ。
【請求項4】
前記リード線は、銅又は銅合金からなる内側部がコバールからなる外側部によって被覆された多層構造を有する請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の冷陰極蛍光ランプ。
【請求項5】
冷陰極蛍光ランプに用いられる筒状電極であって、内面を構成する第1の金属層と、外面を構成する第2の金属層と、それら第1の金属層と第2の金属層との間に設けられた焼結金属層とを有し、
前記第1の金属層及び第2の金属層は、前記焼結金属層を形成する焼結金属よりも融点が低く、かつ、還元されやすい金属によって形成されている筒状電極。
【請求項6】
前記第1の金属層及び第2の金属層がニッケル又はニッケル合金によって形成され、前記焼結金属層がモリブデン、ニオブ又はこれらの合金によって形成されている請求項5記載の筒状電極。
【請求項7】
前記第1の金属層の厚みと前記焼結金属層の厚みとの比率が1:45〜2:5であり、前記第2の金属層の厚みと前記焼結金属層の厚みとの比率が1:9〜7:20である請求項5又は請求項6記載の筒状電極。
【請求項8】
請求項5乃至請求項7のいずれかに記載の筒状電極と、一端が前記筒状電極の外面に接合されたリード線とを有する電極ユニット。
【請求項9】
前記リード線は、銅又銅合金からなる内側部がコバールからなる外側部によって被覆された多層構造を有する請求項8記載の電極ユニット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2006−12612(P2006−12612A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−188427(P2004−188427)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(300022353)NECライティング株式会社 (483)
【出願人】(000221258)東芝照明プレシジョン株式会社 (22)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(300022353)NECライティング株式会社 (483)
【出願人】(000221258)東芝照明プレシジョン株式会社 (22)
【Fターム(参考)】
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