説明

凍結乾燥食品及びその製造方法

【課題】ブロックの形状や喫食時における水戻り性が良好で、高密度のブロック状の凍結乾燥食品及びその製造方法を提供する。
【解決手段】ガラス転移温度が80℃以上の2〜8糖の糖類を全固形分中9〜90質量%含有し、水分含有量が40〜78質量%となるように調整された調理液を凍結乾燥して、ガラス転移温度が80℃以上の2〜8糖の糖類を全固形分中9〜90質量%含有し、密度が0.23g/cm〜0.72g/cmである、水性可食液体に戻して喫食するタイプのブロック状の凍結乾燥食品を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水、お湯、又は牛乳等の水性可食液体に戻して喫食するタイプのブロック状の凍結乾燥食品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
凍結乾燥食品は、飲食品を、水、お湯、又は牛乳等の水性可食液体に戻して手軽に調理し食することができるという形態で提供するものである。熱による香り、色、栄養成分などの劣化が生じにくいので、もとの飲食品の風味を保持していることが多い。また、軽くて携帯性があり、特にブロック状の凍結乾燥食品は、外出時に利用するのにも便利であるので、製品として人気の高い形態である。
【0003】
凍結乾燥によってブロック状の凍結乾燥食品を製造するには、通常、喫食時の濃度よりも濃い調理液を調製し、これをトレイに充填して予備凍結し、次いで、予備凍結物を減圧状態にした釜の中で昇華に必要な熱エネルギーを供給しながら乾燥させて製造する。
【0004】
ブロック状の凍結乾燥食品を製造するに際し、調理液の濃縮率を可能な限り高くすることが、生産効率の観点から好ましい。
【0005】
すなわち、調理液の濃縮率を高めることで、調理液中の水分含有率が低くなるので、昇華させる水分が少なくてすみ、結果として乾燥時間を短縮や、昇華する際に必要な熱エネルギーの供給量を節約できる。さらに、得られるブロック状の凍結乾燥食品の密度を高めることができるので、1食当たりのブロックのサイズを小さくすることができ、一度の工程で製造できる個数が多くなって、製造効率の向上にもつながる。
【0006】
しかしながら、水分含有率の低い調理液を凍結乾燥すると、凍結乾燥が円滑に進まず、ブロックの形状がいびつになってしまったり(コラプス現象)、得られる凍結乾燥食品の水戻り性が低下して、商品価値を損ねてしまう問題があった。
【0007】
下記特許文献1には、味噌を主成分とする組成物を、その水分含有率を65〜75重量%に設定し、かつ、組成物全体に対し0.02〜0.15重量%の量のガム質増粘多糖類を含有させた状態で凍結乾燥して、乾燥固形味噌を製造することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】

【特許文献1】特開平8−103240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、調理液にガム質増粘多糖類を加えることで溶解性が著しく低下したり、固形分が凝集するなどの問題があり、均一な調理液を調製することが困難であった。
【0010】
よって、本発明の目的は、ブロックの形状や喫食時における水戻り性が良好で、高密度のブロック状の凍結乾燥食品及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するにあたり、本発明の凍結乾燥食品は、少なくとも糖類を含有する水溶液を凍結乾燥して得られる、水性可食液体に戻して喫食するタイプのブロック状の凍結乾燥食品において、ガラス転移温度が80℃以上の2〜8糖の糖類を全固形分中9〜90質量%含有し、密度が0.23g/cm〜0.72g/cmであることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の凍結乾燥食品の製造方法は、少なくとも糖類を含有する水溶液を凍結乾燥して、水性可食液体に戻して喫食するタイプのブロック状の凍結乾燥食品を製造する方法において、ガラス転移温度が80℃以上の2〜8糖の糖類を全固形分中9〜90質量%含有し、水分含有量が40〜78質量%となるように調整された調理液を凍結乾燥することを特徴とする。
【0013】
本発明において、前記ガラス転移温度が80℃以上の糖類が、2〜4糖類であることが好ましい。特に好ましくは、ラクトースである。
【0014】
本発明において、ガラス転移温度が80℃以上の糖類の他に、砂糖を含有することが呈味を付与する点で好ましい。
【0015】
本発明において、味付け材料として、抹茶、酒粕、麹、黒ごま、黄な粉、野菜、果物、牛乳、粉乳、食塩、香辛料から選ばれた少なくとも1種を含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の凍結乾燥食品は、ガラス転移温度が80℃以上の2〜8糖の糖類を、全固形分中9〜90質量%含有するので、凍結乾燥に供する調理液の水分含有量を低くしても、コラプス現象の発生を抑制できる。
このため、密度が0.23g/cm〜0.72g/cmと、高密度でありながら、ブロックの形状が良好で、喫食時における水戻り性が良好である。また、密度が高いので、1食当たりのブロックのサイズを小さくでき、一度の工程で製造できる個数が多くなって、生産性を向上できる。
【0017】
また、本発明の凍結乾燥食品の製造方法は、ガラス転移温度が80℃以上の2〜8糖の糖類を全固形分中9〜90質量%含有する調理液を凍結乾燥するので、凍結乾燥に供する調理液の水分含有量が40〜78質量%であっても、凍結乾燥時におけるコラプス現象の発生を抑制できる。
このため、ブロックの形状が良好で、喫食時における水戻り性が良好な凍結乾燥食品を製造できる。また、調理液の水分含有量が少ないので、昇華させる水分が少なくてすみ、結果として乾燥時間を短縮し、昇華する際に必要な熱エネルギーの供給量を節約できる。さらに、得られるブロック状の凍結乾燥食品の密度を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の凍結乾燥食品は、調理液を凍結乾燥してなるブロック状の凍結乾燥食品であって、これを水、お湯、又は牛乳等の水性可食液体に戻すことによって、各種飲食品に復元することができるというものである。
【0019】
本発明の凍結乾燥食品は、ガラス転移温度が80℃以上の2〜8糖の糖類(糖アルコールを含む。以下、ガラス転移温度が80℃以上の2〜8糖の糖類を「高Tg糖類」という)を、全固形分中9〜90質量%含有する。好ましくは、高Tg糖類を、全固形分中18〜70質量%含有し、より好ましくは33〜50質量%含有する。高Tg糖類の含有量が9質量%未満であると、凍結乾燥時にコラプス現象が生じることがあり、得られる凍結乾燥食品の形状がいびつになり易く、商品価値が損なわれる。また、90質量%を超えると、味付けが困難である。
【0020】
高Tg糖類としては、ガラス転移温度が80℃以上の2〜4糖の糖類が好ましい。特に好ましくは、ラクトースである。ラクトースは、安価な原料であり、甘みが低い。更には、後述する実施例に示す例1と、例9及び例13との対比から明らかなように、少量であっても、凍結乾燥時におけるコラプス現象の発生をより効果的に抑制できる。このため、ラクトースの使用量を低減でき、得られる凍結乾燥食品の風味のバリエーションを広げることができる。
【0021】
なお、本発明において、糖類のガラス転移温度は、例えば、(「食品とガラス化・結晶化技術」、株式会社サイエンスフォーラム発行、3〜60頁、2000年)に記載される示差走査熱量測定法に基づいて測定した値を意味する。この方法によって測定された、マルトースのガラス転移温度は92℃で、ラクトースのガラス転移温度は101℃で、トレハロースのガラス転移温度は107℃で、マルトトリオースのガラス転移温度は130℃で、マルトテトラオースのガラス転移温度は156℃で、マルトシルトレハロースのガラス転移温度は172℃であった。
【0022】
本発明の凍結乾燥食品は、高Tg糖類の他に、砂糖などの甘味料を含有せしめることもできる。また、砂糖以外の甘味料として、例えば、グルコース、フラクトース、スクロース、マルチトール、ソルビトール、キシリトール等が挙げられる。これらの甘味料は、高Tg糖類100質量部に対し、250質量部以下が好ましく、100質量部以下がより好ましい。
【0023】
本発明の凍結乾燥食品は、密度が0.23g/cm〜0.72g/cmであることが必要であり、0.30g/cm〜0.64g/cmが好ましく、0.36g/cm〜0.57g/cmがより好ましい。本発明は、形状が良好で、喫食時における水戻り性が良く、高密度の凍結乾燥食品を得ることを目的としており、密度が0.23g/cm未満であると、従来の低密度の凍結乾燥食品との差が殆どない。また、密度が0.72g/cmを超えると、喫食時における水戻り性が損なわれ易い。
【0024】
本発明の凍結乾燥食品は、その形状に特に制限はなく、直方体状、円柱状、星状、ハート状などであることができるが、製造の簡便性の観点からは、直方体状、円柱状であることが好ましい。特に、縦20〜100mm×横20〜100mm×高さ10〜30mmの直方体状であることが好ましい。これによれば、調理中の取り扱いにおいて、作業性に優れている。
【0025】
本発明の凍結乾燥食品は、予め定められた、1人前、1カップ分、1皿分などの単位の目的分量のものを、1包装ごとに分包して提供されることが好ましい。これによれば、調理時に簡単に包装から取り出して、使用することができる。
【0026】
本発明の凍結乾燥食品は、その使用時には、例えば、凍結乾燥食品100質量部に対して、400〜3,000質量部の水、お湯、又は牛乳等の水性可食液体に戻すことで、目的とする飲食品に復元することができる。
【0027】
本発明の凍結乾燥食品を適用することができる飲食品としては、特に限定はない。例えば、カレー、シチュー、ポタージュ、スープ、ココア飲料、チョコレート飲料、抹茶飲料、茶飲料、紅茶飲料、コーヒー飲料、野菜飲料、果汁飲料、甘酒、葛湯、しょうが湯、カリン湯、ゆず茶、スポーツ飲料、健康飲料、機能性飲料などが好ましく挙げられる。
【0028】
すなわち、凍結乾燥食品には、各種飲食品に適した味付け材料を含有させることができる。味付け材料としては、香辛料、小麦粉、生クリーム、牛乳、粉乳、動物性油脂、植物性油脂、ココアパウダー、チョコレート、抹茶、茶、紅茶、コーヒー、野菜、果物、酒粕、麹、黒ごま、黄な粉、葛粉、しょうが、カリン、ゆず、ビタミン、ミネラル、ポリフェノール等が好ましい一例として挙げられる。
【0029】
ただし、乳酸菌によって、高Tg糖類(特にラクトース)を資化して消費されてしまうので、これによって凍結乾燥時におけるコラプス現象を抑制できなくなる。このため、凍結乾燥食品を適用することができる飲食品の形態としては、乳酸菌飲食品以外の飲食品が好ましい。したがって、味付け材料として、酸発酵乳等の乳酸菌飲食品の使用は控えることが好ましい。
【0030】
次に、本発明の凍結乾燥食品の製造方法について説明する。
【0031】
高Tg糖類を全固形分中9〜90質量%含有し、水分含有量が40〜78質量%となるように各種原料を混合して、調理液を調整する。高Tg糖類の含有量が9質量%未満であると、凍結乾燥時にコラプス現象が生じ易く、得られる凍結乾燥食品の形状がいびつになって商品価値が損なわれ易い。また、高Tg糖類の含有量が90質量%を超えると、味付けが困難である。また、水分含有量が40質量%未満であると、調理液の粘度が増加しすぎて作業性が著しく低下するなどの問題が発生する。また、78質量%を超えると、高密度の凍結乾燥食品が得られず、本発明の目的を達成しえない。
【0032】
調理液の高Tg糖類の含有量は、全固形分中18〜70質量%となるように調整することが好ましく、33〜50質量%がより好ましい。
【0033】
調理液の水分含有量は、45〜73質量%が好ましく、51〜66質量%がより好ましい。調理液の水分含有量を低減することで、凍結乾燥時間の短縮化を図ることができ、更には、より高密度の凍結乾燥食品が得られ易くなる。
【0034】
次に、上記調理液を凍結乾燥して、本発明の凍結乾燥食品を製造する。調理液の凍結乾燥は、公知の方法で行うことができる。好ましい態様としては、例えば、以下のようにして製造できる。
【0035】
すなわち、まず、上記調理液を必要に応じて殺菌処理し、所定の大きさの容器に充填する。
【0036】
次に、容器に注入した調理液を予備凍結する。予備凍結条件は、−15〜−80℃で12〜48時間が好ましい。
【0037】
次に、予備凍結物をフリーズドライ装置に供し、凍結乾燥する。凍結乾燥条件は、減圧開始から0.1〜1時間かけて1Torr以下に減圧した後、品温が30〜80℃となるように加温してその加温状態を12〜48時間維持し、その後、常温、常圧に戻す。このようにして、容器の形状に型取られたブロック状の凍結乾燥食品を得ることができる。
【0038】
本発明の凍結乾燥食品の製造方法によれば、高Tg糖類を全固形分中9〜90質量%含有する調理液を凍結乾燥するので、凍結乾燥に供する調理液の濃度が高くても、凍結乾燥時におけるコラプス現象の発生を抑制でき、ブロックの形状が良好で、喫食時における水戻り性が良好な凍結乾燥食品を製造できる。
【実施例】
【0039】
以下に例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0040】
以下の実施例において使用した、商品名「ピュアトースP」(サンエイ糖化製)は、マルトトリオースを55%以上含有するオリゴ糖であり、商品名「ハローデックス」(林原商事製)は、マルトシルトレハロースを50%以上含有するオリゴ糖であり、商品名「テトラップ−H」(林原商事製)は、マルトテトラオースを70%以上含有するオリゴ糖である。また、以下の実施例で使用した糖類のガラス転移温度は、表1に示す通りである。
【0041】
【表1】

【0042】
<試験例1>(抹茶飲料凍結乾燥食品の製造)
下記表2〜11に示す例1〜44の原料を混合して抹茶飲料調理液を製造した。縦50mm×横40mm×高さ20mmのポリプロピレン製の容器に、各例の抹茶飲料調理液をそれぞれ充填し、−20℃以下の冷凍庫内で12時間以上予備凍結させた。その後、容器ごとフリーズドライ装置に移し、棚温を40〜60℃に加温し、真空度を1Torr以下に維持しながら凍結乾燥を行った。その後、棚温と品温が一致した時点から2時間後に常温、常圧に戻して、例1〜例44の凍結乾燥食品を得た。得られた凍結乾燥食品の形状の変化、溶解性を評価した。
なお、形状の変化は、予備凍結時の形状からの容積の変化率で判断し、変化率が5%未満を○、5%以上10%未満を△、10%以上を×とした。また、溶解性は、得られた凍結乾燥食品を、100mlの水に溶解させ、1分以内に完全に溶解した場合を○、1分以上3分以内に完全に溶解した場合を△、3分経っても溶け残りが生じた場合は×とした。結果を表2〜11に合わせて記す。
【0043】
【表2】

【0044】
【表3】

【0045】
【表4】

【0046】
【表5】

【0047】
【表6】

【0048】
【表7】

【0049】
【表8】

【0050】
【表9】

【0051】
【表10】

【0052】
【表11】

【0053】
上記結果に示すように、ガラス転移温度が80℃以上の2〜8糖の糖類を全固形分中9〜90質量%含有する例1〜19の凍結乾燥食品は、調理液の固形分量が高くても、形状がよく、溶解性に優れていた。なかでも、例1と、例9,13との比較から、ラクトースは、少量であっても、形状安定性や溶解性を効果的に改善できることが分かった。
また、表2の例1〜8において、調理液の水分含有量が少ないものほど、より短時間で凍結乾燥を行うことができた。
【0054】
<試験例2>(甘酒凍結乾燥食品の製造)
下記表12〜21に示す例45〜88の原料を混合して甘酒調理液を製造した。なお、酒粕としては、水分35%、糖類含有量36%、アルコール含有量8%であるものを用いた。
各例の甘酒調理液を、縦50mm×横40mm×高さ20mmのポリプロピレン製の容器に充填し、−20℃以下の冷凍庫内で12時間以上予備凍結させた。その後、容器ごとフリーズドライ装置に移し、棚温を40〜60℃に加温し、真空度を1Torr以下に維持しながら凍結乾燥を行った。その後、棚温と品温が一致した時点から2時間後に常温、常圧に戻して、例45〜例88の凍結乾燥食品を得た。得られた凍結乾燥食品の形状の変化、溶解性を評価した。結果を表12〜21に合わせて記す。
【0055】
【表12】

【0056】
【表13】

【0057】
【表14】

【0058】
【表15】

【0059】
【表16】

【0060】
【表17】

【0061】
【表18】

【0062】
【表19】

【0063】
【表20】

【0064】
【表21】

【0065】
上記結果に示すように、ガラス転移温度が80℃以上の2〜8糖の糖類を全固形分中9〜90質量%含有する例45〜63の凍結乾燥食品は、調理液の固形分量が高くても、形状がよく、溶解性に優れていた。
また、表12の例45〜52において、調理液の水分含有量が少ないものほど、より短時間で凍結乾燥を行うことができた。
【0066】
<試験例3>(黒胡麻黄な粉飲料凍結乾燥食品の製造)
下記表22〜31に示す例89〜133の原料を混合して黒胡麻黄な粉飲料調理液を製造した。各例の黒胡麻黄な粉飲料調理液を、縦50mm×横40mm×高さ20mmのポリプロピレン製の容器に充填し、−20℃以下の冷凍庫内で12時間以上予備凍結させた。その後、容器ごとフリーズドライ装置に移し、棚温を40〜60℃に加温し、真空度を1Torr以下に維持しながら凍結乾燥を行った。その後、棚温と品温が一致した時点から2時間後に常温、常圧に戻して、例89〜133の凍結乾燥食品を得た。得られた凍結乾燥食品の形状の変化、溶解性を評価した。結果を表22〜31に合わせて記す。
【0067】
【表22】

【0068】
【表23】

【0069】
【表24】

【0070】
【表25】

【0071】
【表26】

【0072】
【表27】

【0073】
【表28】

【0074】
【表29】

【0075】
【表30】

【0076】
【表31】

【0077】
上記結果に示すように、ガラス転移温度が80℃以上の2〜8糖の糖類を全固形分中9〜90質量%含有する例89〜108の凍結乾燥食品は、調理液の固形分量が高くても、形状がよく、溶解性に優れていた。
また、表22の例89〜96において、調理液の水分含有量が少ないものほど、より短時間で凍結乾燥を行うことができた。
なお、調理液の水分含有量が40質量%以下であった例97は、調理液の粘度が高く、凍結乾燥時における作業性が悪かった。また、得られた凍結乾燥食品は、溶解性が悪かった。
【0078】
<試験例4>(パンプキンポタージュ凍結乾燥食品の製造)
下記表32に示す例134、135の原料を混合してパンプキンポタージュ調理液を製造した。なお、パンプキンペーストは、水分含有率84%のものを使用した。
各例のパンプキンポタージュ調理液を、縦50mm×横40mm×高さ20mmのポリプロピレン製の容器に充填し、−20℃以下の冷凍庫内で12時間以上予備凍結させた。その後、容器ごとフリーズドライ装置に移し、棚温を40〜60℃に加温し、真空度を1Torr以下に維持しながら凍結乾燥を行った。その後、棚温と品温が一致した時点から2時間後に常温、常圧に戻して、例134、135の凍結乾燥食品を得た。得られた凍結乾燥食品の形状の変化、溶解性を評価した。結果を表32に合わせて記す。
【0079】
【表32】

【0080】
上記結果に示すように、ガラス転移温度が80℃以上の2〜8糖の糖類を全固形分中9〜90質量%含有する例134の凍結乾燥食品は、形状がよく、溶解性に優れていた。更には、お湯で戻した時の風味が、例135の凍結乾燥食品に比べて濃厚感や呈味が向上した。
【0081】
<試験例5>(トマトスープ凍結乾燥食品の製造)
下記表33に示す例136、137の原料を混合してトマトスープ調理液を製造した。なお、トマトピューレは水分含有率94%、タマネギは水分含有率90%のものを使用した。各例のトマトスープ調理液を、縦50mm×横40mm×高さ20mmのポリプロピレン製の容器に充填し、−20℃以下の冷凍庫内で12時間以上予備凍結させた。その後、容器ごとフリーズドライ装置に移し、棚温を40〜60℃に加温し、真空度を1Torr以下に維持しながら凍結乾燥を行った。その後、棚温と品温が一致した時点から2時間後に常温、常圧に戻して、例136、137の凍結乾燥食品を得た。得られた凍結乾燥食品の形状の変化、溶解性を評価した。結果を表33に合わせて記す。
【0082】
【表33】

【0083】
上記結果に示すように、ガラス転移温度が80℃以上の2〜8糖の糖類を全固形分中9〜90質量%含有する例136の凍結乾燥食品は、形状がよく、溶解性に優れていた。更には、お湯で戻した時の風味が、例136の凍結乾燥食品に比べて濃厚感や呈味が向上した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも糖類を含有する水溶液を凍結乾燥して得られる、水性可食液体に戻して喫食するタイプのブロック状の凍結乾燥食品において、
ガラス転移温度が80℃以上の2〜8糖の糖類を全固形分中9〜90質量%含有し、密度が0.23g/cm〜0.72g/cmであることを特徴とする凍結乾燥食品。
【請求項2】
前記ガラス転移温度が80℃以上の糖類が、2〜4糖類である請求項1記載の凍結乾燥食品。
【請求項3】
前記ガラス転移温度が80℃以上の糖類が、ラクトースである請求項1記載の凍結乾燥食品。
【請求項4】
ガラス転移温度が80℃以上の糖類の他に、砂糖を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の凍結乾燥食品。
【請求項5】
味付け材料として、抹茶、酒粕、麹、黒ごま、黄な粉、野菜、果物、牛乳、粉乳、食塩、香辛料から選ばれた少なくとも1種を含有する請求項1〜4のいずれか1つに記載の凍結乾燥食品。
【請求項6】
少なくとも糖類を含有する水溶液を凍結乾燥して、水性可食液体に戻して喫食するタイプのブロック状の凍結乾燥食品を製造する方法において、
ガラス転移温度が80℃以上の2〜8糖の糖類を全固形分中9〜90質量%含有し、水分含有量が40〜78質量%となるように調整された調理液を凍結乾燥することを特徴とする凍結乾燥食品の製造方法。
【請求項7】
前記ガラス転移温度が80℃以上の糖類が、2〜4糖類である請求項6記載の凍結乾燥食品の製造方法。
【請求項8】
前記ガラス転移温度が80℃以上の糖類が、ラクトースである請求項6記載の凍結乾燥食品の製造方法。
【請求項9】
前記調理液は、ガラス転移温度が80℃以上の糖類の他に、砂糖を含有する請求項6〜8のいずれかに記載の凍結乾燥食品の製造方法。
【請求項10】
前記調理液は、味付け材料として、抹茶、酒粕、麹、黒ごま、黄な粉、野菜、果物、牛乳、粉乳、食塩、香辛料から選ばれた少なくとも1種を含有する請求項6〜9のいずれか1つに記載の凍結乾燥食品の製造方法。

【公開番号】特開2011−229477(P2011−229477A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−104047(P2010−104047)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000006116)森永製菓株式会社 (130)
【Fターム(参考)】