説明

凍結保存細胞の生存率を向上させるための方法および組成物

本発明は、解凍後の凍結保存細胞の生存率を増加させるためのポリマーおよび方法を提供する。ポロキシマーP188または他の非イオン性ポリマーなどのポリマーの存在下で凍結保存細胞を解凍すると、細胞膜を安定化させ、解凍後生存率の増加を導くと考えられる。かかる方法は、移植用または研究目的の細胞および組織の処理において用いてもよい。抗酸化剤、ビタミン、または浸透圧保護剤などの他の剤もまた、生存率を向上させるために細胞に添加してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2009年7月20日に出願された米国仮特許出願U.S.S.N.61/227,023に対して、35U.S.C.§119(e)のもとに優先権を主張し、それは参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、移植用の細胞や組織の処理に特に有用である凍結保存細胞の生存率を向上させるためのポリマーおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
凍結保存とは、液体窒素中で貯蔵するなど、氷点下に冷却することによって細胞や組織が保存されるような処理である。凍結保存の継続的な課題は、保存されている細胞はしばしば溶液濃度の影響、氷の形成、脱水に起因して損傷し、これは解凍後の細胞の低い生存率に起因しうる。これらの効果の多くは凍結保護剤によって減少させることができるが、現在、DMSOなどの標準的な凍結保護剤の毒性により、凍結保存が制限されている。臨床移植適用などのある種の適用については、標準的な凍結保護剤は時に不適切である。したがって、凍結保護のための新規の方法および剤を同定する必要性が依然存在する。特に、脂肪の凍結保存ための改善された方法は、追加の採取なしで複数の処置を許容することにより、脂肪移植片での再構築を大いに高めるであろう。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、あるポリマーが細胞の解凍処理中に添加されると、凍結保存細胞の生存率を向上させるという認識に基づく。特別な態様において、ポリマーは、凍結時の凍結保護剤、例えば、DMSO、トレハロース、スクロース、グリセロールなどの使用にかかわらず、凍結保存細胞の生存率を向上させる。凍結保存細胞への損傷の防止は、下流適用、例えば臨床的移植、細胞に基づく薬物スクリーニング、細胞生物学研究などのための、より成功的でおよび予測可能な細胞の回復を可能する。凍結保存の成功はまた、細胞の採取を繰り返す必要性を低下させる。ある態様において、凍結保存細胞の生存率を向上させるポリマーは、非毒性であるか、または当技術分野で公知の凍結保護剤に比べて低下した毒性を有する。したがって、いくつかの態様において、本明細書に開示するポリマーおよび方法は、下流の臨床適用のために特に有用である。いくつかの態様において、本発明は、例えば解凍後に、凍結保存細胞の膜をシールするおよび/または安定化させ、その結果解凍後の凍結保存細胞の生存率を向上させる組成物を提供する。典型的には、かかる組成物には、細胞のリン脂質二重層と相互作用する非イオン性ポリマー、例えば非イオン性ポリエーテルが含まれる。また、本発明は、かかる組成物を、組織および細胞(例えば、脂肪細胞(fat cells)、幹細胞など)の処理および移植において用いる方法を提供する。
【0005】
1つの側面において、本発明は、解凍後の凍結保存細胞の生存率の増加を援助するポリマーを利用する。解凍後の凍結保存細胞の生存率は、当該技術分野で公知の方法を用いて評価されてもよく、例えば、グリセロール−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(G3PH)活性アッセイ、ATPレベルアッセイ、細胞カウントアッセイ、アポトーシス活性アッセイ、組織学、DNA含量などを含む。特別な理論に拘束されることを望まないが、ポリマーは、凍結保存後の細胞膜をシールするおよび/または安定させるために作用してもよい。細胞の解凍時に用いると、凍結保存細胞の膜をシールまたは安定化させる任意のポリマーを用いてもよい。好ましくは、本発明で用いられるポリマーは生体適合性および/または生分解性である。いくつかの態様において、ポリマーは、非イオン性ポリマーである。ある態様において、ポリマーはポリエーテルである。ある態様において、ポリエーテルポリアルキルエーテルである。ある態様において、ポリエーテルは、ポリアルキルエーテルおよびもう1つのポリマー(例えば、ポリアルキルエーテル)のブロックコポリマーである。特に、ポロキシマー(poloxymers)(ポロキサマー(poloxamers)としても知られる)を、凍結保存後の細胞膜をシールして安定化するのに有用であるものとして本明細書に開示する。以下の化学構造に示すように、ポロキシマーは、ポリオキシエチレン(ポリエチレングリコールとしても知られる)の2つの親水性鎖に隣接するポリオキシプロピレン(ポリプロピレングリコールとしても知られる)の中央の疎水性鎖で構成される非イオン性トリブロックコポリマーである。
【化1】

ある態様において、ポロキシマーP188を、凍結保存後に細胞、例えば、脂肪移植片の細胞の生存率を増加させるために用いる。ポロキサマーは商品名PLURONIC(登録商標)でBASFにより販売されている。特に、ポロキサマー188(P188)が商品名PLURONIC(登録商標)F68の下で販売されている。ポリマーを構成するブロックの長さがカスタマイズされることができるので、異なる特性を有する多くの異なるポロキサマーが存在する。これらのコポリマーは、共通して、ポロキサマーに対する「P」、次いで三桁の数字で名付けられている。はじめの二桁(×100)は、疎水性ポリオキシプロピレンコアのおおよその分子量を示し、最後の桁(×10)は、ポリオキシエチレン含量のパーセンテージを示す。ポロキサマー188は、ポリオキシプロピレン分子量1800g/molおよび80%ポリオキシエチレン含量を有するポロキシマーであるので、ポロキサマー188は、7680〜9510g/molの平均分子量を有する。「Pxxy」名称から商品名「Fzz」に変換するためには、「Pxxy」のxxに約3が乗算されるので、つまりP188はF68である。本発明において有用であってもよい他のポロキシマーは、ポロキサマーP108(PLURONIC(登録商標)F38)、P184(PLURONIC(登録商標)L64)、P401、P402、P407(PLURONIC(登録商標)F127)、およびP408(PLURONIC(登録商標)F108)を含む。より低い分子量およびほぼ等しいまたはより低いPEG含量を有する他のポロキサマーが、本発明において有用であってもよい。解凍後の凍結保存細胞の生存率を増加させるのに有用であってもよい他の特別なポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリソルベート80、あるTETRONIC(登録商標)界面活性剤、メロキサポール(meroxapols)、ポロキサミン(例えば、304、701、704、901、904、908、1307)、およびPLURADOT(商標)ポリオールを含む。解凍前、解凍直前、解凍開始後、解凍直後、または凍結時に、ポリマー、例えば、ポリエーテルを凍結保存細胞に添加する。典型的には、ml細胞あたり約1mg〜約20mgポリマーの範囲の濃度で、ポリマーを凍結保存細胞に添加する。ある態様において、P188は約10mg/mlの濃度である。ある態様において、ポリマーのミリモル濃度を用いる。典型的には、凍結保存後に所望の膜安定をもたらすポリマーの最低濃度を用いる。当該技術分野の当業者に理解されるように、組成物中のポリマーの濃度は、安定化(例えば、凍結保存細胞の生存率を増加)するために用いるポリマー、凍結保存細胞の種類、用いられた凍結保護剤、解凍処理、細胞の最終用途などに依存する。
【0006】
本発明のいくつかの側面において、凍結保存細胞を、ポリマー、例えばポリエーテルの存在下で解凍する。典型的には、移植する細胞を、適切な濃度のポリマー存在下で解凍し、その後、レシピエント(例えば、ヒト)の所望の移植部位(例えば、顔、唇)に移植する。移植前に任意の余分なポリマーを除去するために、解凍細胞を洗浄してもよい。本発明の技術を用いて、任意の凍結保存細胞を解凍および移植してもよい。ある態様において、細胞は脂肪組織由来である。ある態様において、細胞は含脂肪細胞(adipocytes)である。ある態様において、細胞は線維芽細胞である。いくつかの態様において、細胞は、哺乳類細胞、例えばヒト細胞である。ある態様において、細胞は臍帯血細胞、幹細胞、胚幹細胞、成人幹細胞、癌幹細胞、前駆細胞、自己細胞、同系移植細胞、同種移植細胞、異種移植細胞、細胞株、または遺伝子操作された細胞である。解凍前、例えば、解凍直前、または解凍開始後に、ポリマーを凍結保存細胞と混合することができる。ポリマーを、解凍直後の細胞と混合してもよい。いくつかの態様において、解凍細胞を移植のすぐ前にポリマーと混合することができる。細胞/ポリマーの組成物には、他の剤が含まれてもよい。例えば、その組成は、移植する細胞をさらに保護または安定させる剤、またはポリマーを保護しうる剤を含んでもよい。ある態様において、組成物は、ビタミン、ミネラル、抗酸化剤、還元剤、浸透圧保護剤、粘度増強剤、補酵素、膜安定化剤、脂質、炭水化物、ホルモン、成長因子、抗炎症剤、ポリヌクレオチド、タンパク質、ペプチド、アルコール、有機酸、小有機分子などを含む。
【0007】
もう1つの側面において、本発明は、本発明の組成物および方法を用いて凍結保存細胞または組織を移植するのに有用なキットを提供する。キットは、凍結保存細胞または組織、例えば脂肪由来細胞または脂肪組織を対象へ移植するのに必要な全てのコンポーネントの全てまたは部分集合を含んでもよい。キットは、例えば、ポリマー、細胞、注射器、針、容器、アルコール綿、麻酔薬、洗浄液、抗生物質、防腐剤、酸化防止物、ビタミン、脂質、炭水化物、ホルモン、成長因子などを含んでもよい。ある態様において、細胞は、細胞を受け取る患者から獲得する(すなわち、自家移植片)。ある態様において、キットの成分は、使用上の便宜のため、外科医または他の医療専門家によって、無菌状態でパッケージされる。キットはまた、ポリマーおよび他の剤を解凍処理または移植手順において用いるための説明書を含んでもよい。キットは、単回使用に必要な成分を提供してもよい。キットはまた、医薬品および/または医療機器を規制する政府の規制機関で要求されるパッケージングおよび情報を含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は秤量し、グリセロール−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(G3PH)活性、ATPレベル、細胞カウント、およびアポトーシス活性について分析した、外植した脂肪結節の生存率評価を示す図である。
【0009】
【図2】図2は6週間の凍結保存および6週間のヌードマウスへのin vivo移植後の試料のH&E染色を示す組織画像である。生理食塩水およびDMSO+トレハロース群の両方は、線維形成反応および炎症性浸潤の有意な領域を実証する。P188処置の試料およびP188+DMSO/トレハロースの試料は、有意に低量の線維症および湿潤を実証し、新鮮な脂肪移植片のH&E染色の組織画像に最も類似するようにみえる。
【0010】
【図3】図3は解凍後の細胞死の量を減少させるための、P188の存在下で凍結保存細胞解凍の有効性を示す図である。
【0011】
【図4】図4はP188の存在下で解凍された脂肪移植片における機能向上を示す図である。
【0012】
【図5】図5は通常の生理食塩水(NS)、P188、およびDMSO+トレハロース(DMT)で処置した移植後第6週の脂肪移植片の重さの比較を示す図である。P188が、再吸収において統計学的有意差を示した。
【0013】
【図6】図6は通常の生理食塩水(NS)、P188、およびDMSO+トレハロース(DMT)で処置した移植後第6週の脂肪移植片の生存率を示す図である。第6週において、P188は生細胞シグナルにおいて統計学的有意差(p<0.05)を示した。
【0014】
【図7】図7は通常の生理食塩水(NS)、P188、およびDMSO+トレハロース(DMT)で処置した移植後第6週の脂肪移植片のDNA含量を示す図である。
【0015】
【図8】図8は解凍処置対前処置としてのP188の比較する図である。(A)移植後第6週の脂肪片の重量。(B)移植後第6週の生存率。
【0016】
定義
本明細書で用いられる「抗炎症剤」は、炎症の1つまたは2つ以上の徴候または症状を阻害する任意の物質を指す。
【0017】
数値に対する「約」という用語は、他に記載されない限り、または文脈から明らかでない限り、一般的に、その数値のいずれかの方向(その数値より大きいか小さい)に5%の範囲内の数値を含む(かかる数値が可能な値の100%を越えるときを除く)。
【0018】
「ポリエーテル」は、1つより多いエーテル基を有する化合物である。エーテル基は、一般式R−O−R’の2つの(置換)アルキルまたはアリール基に接続された酸素原子を有する。ポリエーテルは、ホモポリマーまたはコポリマーであってもよい。ポリエーテルは、ジブロック、トリブロック、およびテトラブロックコポリマーなどのブロックコポリマーであってもよい。
【0019】
「凍結保存細胞」は、氷点下の温度へと冷却することによって保存されている細胞である。凍結保存細胞は、凍結保護剤の存在下で保存されてもされなくてもよい。凍結防止剤は、氷点下の温度および/または凍結に関連する損傷(例えば、氷の結晶形成による細胞膜の損傷)から細胞を保護する物質である。凍結保存細胞は、真核および原核細胞を含む。凍結保存細胞は、動物および植物細胞を含含む。
【0020】
「生体適合性」は、その用いられる量において細胞に対し実質的に無毒である材料を意味し、また、レシピエントの身体の用いた部位において顕著に有害なまたは好ましくない作用(例えば、許容し得ない免疫または炎症性反応、許容し得ない瘢痕組織形成等)を誘発しないまたは引き起こさない。
【0021】
「生分解性」は、例えば、生理条件下での加水分解によるもの、および/または、細胞内または体内に存在する酵素の作用などの自然生物的処理によるもの、および/または、典型的には代謝することができ、必要に応じて、身体が用いうる、より小さな化学種を形成するための溶解、分散等の処理によるもの、および/または、排泄もしくは処分されることにより、材料が、細胞内または対象の体内で物理的および/または化学的に分解することが可能であることを意味する。本発明の目的に対し、モノマー数の減少によって分子量がin vivoで時間とともに低下するポリマーは生分解性であると考えられる。
【0022】
用語「ポリヌクレオチド」、「核酸」または「オリゴヌクレオチド」は、ヌクレオチドのポリマーを指す。用語「ポリヌクレオチド」、「核酸」、および「オリゴヌクレオチド」は、互換的に用いられてもよい。典型的には、1つのポリヌクレオチドは、少なくとも2つのヌクレオチドを含む。DNAおよびRNAはポリヌクレオチドである。ポリマーは、天然ヌクレオシド(すなわち、アデノシン、チミジン、グアノシン、シチジン、ウリジン、デオキシアデノシン、デオキシチミジン、デオキシグアノシン、およびデオキシシチジン)、ヌクレオシド類似体(例えば、2−アミノアデノシン、2−チオチミジン、イノシン、ピロロ−ピリミジン、3−メチルアデノシン、C5−プロピニルシチジン、C5−プロピニルウリジン、C5−ブロモウリジン、C5−フルオロウリジン、C5−ヨードウリジン、C5−メチルシチジン、7−デアザアデノシン、7−デアザグアノシン、8−オキソアデノシン、8−オキソグアノシン、O(6)−メチルグアニン、および2−チオシチジン)、化学的修飾された塩基、生物学的修飾された塩基(例えば、メチル化塩基)、インターカレートされた塩基、修飾された糖(例えば、2’−フルオロリボース、2’−メトキシリボース、2’−アミノリボース、リボース、2’−デオキシリボース、アラビノース、およびヘキソース)、または修飾されたリン酸基(例えば、ホスホロチオエートおよび5’−Nホスホロアミダイト結合)を含んでもよい。また、天然または修飾されたヌクレオシドの鏡像異性体を用いてもよい。核酸はまた、核酸に基づく治療剤、例えば、核酸リガンド、siRNA、短鎖ヘアピンRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、アプタマー、及びSPIEGELMERS(商標)、内容全体が参照により本明細書に組み込まれるWlotzka, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2002, 99(13):8898に記載されたオリゴヌクレオチドリガンドを含む。
【0023】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、または「タンパク質」は、ペプチド結合によって互いに連結した少なくとも3つのアミノ酸のストリングを含む。用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」は互換的に用いられてもよい。ペプチドは、個々のペプチドまたはペプチドの集合体を指してもよい。本発明のペプチドは、好ましくは、天然アミノ酸のみを含むが、当該技術分野で知られる非天然アミノ酸(すなわち、自然界に存在しないが、ポリペプチド鎖に組み込むことができる化合物)および/またはアミノ酸類似体を代替的に採用してもよい。また、ペプチド中の1または2以上のアミノ酸を、例えば、化学成分1または複数のそのような炭水化物基、リン酸基、ファルネシル基、イソファルネシル基、脂肪酸基、結合のためのリンカーなどの化学物質の添加、官能化、あるいは他の修飾等により、修飾してもよい。一態様において、ペプチドの修飾は、より安定したペプチド(例えば、in vivoでのより高い半減期)を導く。これらの修飾には、ペプチドの環化、D−アミノ酸の取り込み等が含まれてもよい。いずれの修飾も、ペプチドの所望の生物学的活性を実質的に妨害すべきではない。
【0024】
用語「多糖類」および「炭水化物」は互換的に用いられてもよい。大抵の炭水化物は、多くのヒドロキシル基、通常は分子中の各炭素原子に1つである、を有するアルデヒドまたはケトンである。一般的に、炭水化物は分子式C2nを有する。炭水化物は単糖、二糖、三糖、オリゴ糖、または多糖であってもよい。最も基本的な炭水化物は、グルコース、スクロース、ガラクトース、マンノース、リボース、アラビノース、キシロース、およびフルクトースなどの単糖である。二糖類は、2つの連結した単糖である。例示的な二糖類は、スクロース、マルトース、セロビオース、およびラクトースを含む。典型的には、オリゴ糖は3〜6個の単糖単位(例えば、ラフィノース、スタキオース)を含み、多糖類は6つまたは7つ以上の単糖単位を含む。例示的な多糖類は、デンプン、グリコーゲン、およびセルロースを含む。炭水化物は、ヒドロキシル基が除去された2’−デオキシリボース、ヒドロキシル基がフッ素で置換された2’−フルオロリボース、またはグルコースの窒素含有形態であるN−アセチルグルコサミンなどの修飾された糖単位を含んでもよい。(例えば、2’−フルオロリボース、デオキシリボース、およびヘキソース)。炭水化物は多くの異なる形態、例えば、配座異性体、環状形態、非環状形態、立体異性体、互変異性体、アノマー、および異性体で存在してもよい。
【0025】
「小分子」とは、天然に生じたかまたは人工的に(例えば、化学合成を介して)作製されたかに拘わらず、相対的に低い分子量を有し、タンパク質、ポリペプチド、または核酸ではない有機化合物を指す。小分子は、典型的には、繰り返し単位を有するポリマーではない。ある態様において、小分子は、約1500g/mol未満の分子量を有する。ある態様において、ポリマーの分子量は約1000g/mol未満である。また、小分子は、典型的には、複数の炭素−炭素結合を有し、複数の立体中心および官能基を有してもよい。
【0026】
本明細書で用いられる「対象」は、例えば、実験、診断、および/または治療目的のために剤が送達される個体を指す。好ましい対象は哺乳類であって、特に家畜化哺乳類(例えば、イヌ、ネコ等)、霊長類、またはヒトである。ある態様において、対象はヒトである。ある態様において、対象は、マウスやラットなどの実験動物である。医師または他の医療提供者の保護下の対象は、「患者」と呼ばれてもよい。
【0027】
「薬物」とも呼ばれる「医薬製剤」は、本明細書において、疾患、障害、または他の臨床的に認識される対象にとって有害な症状を処置するため、または予防目的のために対象に投与される剤を指し、病気、障害、または症状を処置または予防するのに身体に臨床的に有意な効果を有する。治療剤は、限定されずに、米国薬局方(USP)、GoodmanおよびGilmanのThe Pharmacological Basis of Therapeutics, 10th Ed., McGraw Hill, 2001; Katzung, B. (ed.) Basic and Clinical Pharmacology, McGraw-Hill/Appleton & Lange; 8th edition (September 21, 2000); Physician’s Desk Reference (Thomson Publishing)、および/またはThe Merck Manual of Diagnosis and Therapy, 17th ed. (1999), またはこの出版に続くthe 18th ed (2006)、Mark H. Beers およびRobert Berkow (eds.)、Merck Publishing Group、または、動物の場合は、The Merck Veterinary Manual, 9th ed., Kahn, C.A. (ed.), Merck Publishing Group, 2005に列挙される剤を含む。
【0028】
発明のある態様の詳細な説明
本発明は、ある種のポリマー、例えばポリエーテルが、凍結細胞の解凍処理の前または間に添加されると、凍結保存細胞の生存率を向上させるという認識に由来する。
生存率の向上は、典型的には、凍結前に細胞に添加する凍結保護剤の使用にかかわらず観察される。特別な理論に拘束されることを望まないが、ポリマーは、細胞膜と相互作用し、シールするか、解凍処理中、または処理直後の細胞膜への欠失を防ぎ、一度解凍した細胞への損傷を防止または最小限に押さえると考えられる。凍結保存細胞への損傷を防止することで、解凍後のアポトーシスおよび細胞死の広がりを軽減し、ある種の下流適用、特に、移植などの下流臨床適用の成功および一貫性の向上に援助する。ある態様において、本発明は、対象(例えば、ヒト)における脂肪移植を改善させるためのポリマー、組成物、および方法を提供する。本発明のシステムを、幹細胞を含む他の種類の細胞を保管/凍結保存するのに用いることもできる。
【0029】
ポリマー
本発明は、冷凍保存後の細胞膜をシールするおよび/または安定化するのに寄与するポリマーおよびこれを達成する方法の発見に基づく。例えば、解凍前、解凍中などに、解凍後の損傷から細胞膜を安定化および保護するのに十分な濃度で、ポリマーを凍結保存細胞と混合する。かかるポリマーを、細胞移植などの下流適用の成功を向上させる他の技術および材料と組み合わせて用いてもよい。
【0030】
細胞の解凍時に添加すると、凍結保存細胞の膜をシールまたは安定化させる任意のポリマーを用いてもよい。ある態様において、ポリマーは合成ポリマー(すなわち、自然界で生成されないポリマー)である。ある態様において、ポリマーは界面活性ポリマーである。ポリマーは、ホモポリマー、コポリマー、ブロックコポリマー、分枝ポリマー、樹状ポリマー、星状ポリマー、ポリマーのブレンド、架橋ポリマー、または非架橋ポリマーであってもよい。ある態様において、ポリマーは非イオン性ポリマーである。ある態様において、ポリマーは非イオン性ブロックコポリマーである。ある態様において、ポリマーは、非イオン性トリブロックコポリマーである。
【0031】
特定の態様において、ポリマーはポリエーテルである。ある態様において、ポリエーテルはポリアルキルエーテルである。ある態様において、ポリエーテルはポリエチレングリコールである。ある態様において、ポリエーテルはポリプロピレングリコールである。ある態様において、ポリエーテルは、ポリブチレングリコールである。ある態様において、ポリエーテルは、ポリペンチレングリコールである。ある態様において、ポリエーテルはポリヘキシレングリコールである。ある態様において、ポリマーは、前述したポリマーのうちの1つのブロックコポリマーである。
【0032】
ある態様において、ポリエーテルは、ポリアルキルエーテル(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール)、および他のポリマーのブロックコポリマーである。ある態様において、ポリエーテルは、ポリアルキルエーテルおよび他のポリアルキルエーテルのブロックコポリマーである。ある態様において、ポリエーテルは、ポリエチレングリコールおよび他のポリアルキルエーテルのブロックコポリマーである。ある態様において、ポリエーテルは、ポリプロピレングリコールおよび他のポリアルキルエーテルのブロックコポリマーである。ある態様において、ポリエーテルは、ポリアルキルエーテルの少なくとも一つの単位を有するブロックコポリマーである。ある態様において、ポリエーテルは、2つの異なるポリアルキルエーテルのブロックコポリマーである。ある態様において、ポリエーテルは、ポリエチレングリコール単位を含むブロックコポリマーである。ある態様において、ポリエーテルは、ポリプロピレングリコール単位を含むブロックコポリマーである。ある態様において、ポリエーテルは、もう2つの親水性単位に隣接するより疎水性単位のトリブロックコポリマーである。ある態様において、ポリエーテルは、もう2つの疎水性単位に隣接するより親水性単位のトリブロックコポリマーである。ある態様において、ポリエーテルは、もう2つの親水性単位に隣接するポリプロピレングリコール単位を含む。ある態様において、ポリエーテルは、より疎水性単位に隣接する2つのポリエチレングリコール単位を含む。ある態様において、ポリエーテルは、2つのポリエチレングリコール単位に隣接するポリプロピレングリコール単位を有するトリブロックコポリマーである。ある態様において、ポリエーテルは、次の式で表される:
【化2】

式中、nは2〜200、包含的、の整数であり、およびmは2〜200、包含的、の整数である。ある態様において、nは、10〜100、包含的、の整数である。ある態様において、mは包含的に5〜50の整数である。ある態様において、nはmの約2倍である。ある態様において、nは約70であり、mは約35である。ある態様において、nは約50であり、およびmは約30である。ある態様において、ポリマーは、商品名PLURONIC(登録商標)F68でBASFにより販売される、ポロキサマーP188である。本発明に有用であってもよい他のPLURONIC(登録商標)ポリマーには、PLURONIC(登録商標)10R5、PLURONIC(登録商標)17R2、PLURONIC(登録商標)17R4、PLURONIC(登録商標)25R2、PLURONIC(登録商標)25R4、PLURONIC(登録商標)31R1、PLURONIC(登録商標)10R5、PLURONIC(登録商標)F108、PLURONIC(登録商標)F127、PLURONIC(登録商標)F38、PLURONIC(登録商標)F68、PLURONIC(登録商標)F77、PLURONIC(登録商標)F87、PLURONIC(登録商標)F88、PLURONIC(登録商標)F98、PLURONIC(登録商標)L10、PLURONIC(登録商標)L101、PLURONIC(登録商標)L121、PLURONIC(登録商標)L31、PLURONIC(登録商標)L35、PLURONIC(登録商標)L43、PLURONIC(登録商標)L44、PLURONIC(登録商標)L61、PLURONIC(登録商標)L62、PLURONIC(登録商標)L64、PLURONIC(登録商標)L81、PLURONIC(登録商標)L92、PLURONIC(登録商標)N3、PLURONIC(登録商標)P103、PLURONIC(登録商標)P104、PLURONIC(登録商標)P105、PLURONIC(登録商標)P123、PLURONIC(登録商標)P65、PLURONIC(登録商標)P84、およびPLURONIC(登録商標)P85を含むが、これらに限定されない。ポロキサマーは、一般的には、プロピレングリコールに最初にプロピレンオキシドを、そして、エチレンオキシドを順次添加することにより合成される。
【0033】
ある態様において、ポリエーテルは、ジブロックコポリマーである。ある態様において、ポリエーテルは、テトラブロックコポリマーである。ある態様において、ジブロックまたはテトラブロックコポリマーは、ポリアルキルエーテル単位を含む。ある態様において、ジブロックまたはテトラブロックコポリマーは、ポリプロピレングリコール単位を含む。ある態様において、ジブロックまたはテトラブロックコポリマーは、ポリエチレングリコール単位を含む。ある態様において、ポリエーテルは、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコール単位のテトラブロックコポリマーである。ある態様において、テトラブロックコポリマーは、BASFから販売されているTETRONIC(登録商標)ポリマーである。例示的なTETRONIC(登録商標)ポリマーは、TETRONIC(登録商標)1301を含む。TETRONIC(登録商標)1304、TETRONIC(登録商標)1307、TETRONIC(登録商標)150R1、TETRONIC(登録商標)304、TETRONIC(登録商標)701、TETRONIC(登録商標)901、TETRONIC(登録商標)904、TETRONIC(登録商標)908、およびTETRONIC(登録商標)90R4。ある態様において、ポリエーテルは、4ブロック単位より多いブロックコポリマーである。
【0034】
ある態様において、ポリエーテルは、メロキサポール(meroxapol)である。メロキサポールは、アルキレンオキシドの添加の順序が逆になったときに製造される。つまり、エチレンオキシドをポリエチレングリコールコアに最初に添加し、次にプロピレングリコールである。親水性部分はもう2つの疎水性単位に隣接する。ある態様において、ポリエーテルはポロキサミンである。ポロキサミンは、エチレンジアミンコアの中心にある4つのポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシド単位の四官能構造を有するブロックコポリマーである。典型的なポロキサミンは、ポロキサミン304、504、701、704、901、904、908、1101、1102、1302、1304、1307、1501、1504、および1508を含むが、これらに限定されない。ある態様において、ポリエーテルは、PLURADOT(商標)ポリオールである。参照により本明細書に組み込まれるSchmolka, “A Review of Block Polymer Surfactants” J. Am. Oil Chemists's Soc. 54(3):110-116, 1977を参照のこと。
【0035】
本発明で採用するポリエーテルの分子量は、約500g/mol〜最大約50,000g/molの範囲であってもよい。ある態様において、ポリエーテルの分子量は約1,000g/mol〜約30,000g/molの範囲である。ある態様において、ポリエーテルの分子量は約2,000g/mol〜約15,000g/molの範囲である。ある態様において、ポリエーテルの分子量は約2,000g/mol〜約12,000g/molの範囲である。ある態様において、ポリエーテルの分子量は約1,000g/mol〜約5,000g/molの範囲である。ある態様において、ポリエーテルの分子量は約5,000g/mol〜約10,000g/molの範囲である。ある態様において、ポリエーテルの分子量は約10,000g/mol〜約15,000g/molの範囲である。ある態様において、ポリエーテルの分子量は約15,000g/mol〜約20,000g/molの範囲である。ある態様において、ポリエーテルの分子量は約20,000g/mol〜約25,000g/molである。ある態様において、P188の平均分子量は約8400g/molである。他の市販のポロキサマーの平均分子量は、当該技術分野で知られている。
【0036】
本発明で用いられるポリエーテルの組成物は、典型的にはヒトおよび/または他の動物に使用するための医薬グレード素材である。ある態様において、ポリエーテルは、ヒトにおける使用および獣医用の使用が承認されている。いくつかの態様において、ポリエーテルは、米国食品医薬品局によって、ヒトにおける使用が承認されている。いくつかの態様において、ポリエーテルは、医薬品グレードの材料である。いくつかの態様において、ポリエーテルは、米国薬局方(USP)、欧州薬局方(EP)、英国薬局方、および/または国際薬局方の基準を満たす。ある態様において、ポリエーテルは少なくとも90%純度である。ある態様において、ポリエーテルは、少なくとも95%純度である。ある態様において、ポリエーテルは少なくとも98%純度である。ある態様において、ポリエーテルは少なくとも99%純度である。ある態様において、ポリエーテルは少なくとも99.5%純度である。ある態様において、ポリエーテルは少なくとも99.9%純度である。ある態様において、ポリエーテルは少なくとも99.99%純度である。ある態様において、ポリエーテルは毒性または非生体適合性材料ではない。
【0037】
本発明で有用なポリエーテルは、典型的には、in vivoで非毒性分解産物に分解するか、または安全に身体により排泄される。ポリマーは、好ましくは生体適合性であり、任意の実質的に望ましくない副作用をもたらさない。ポリマーのin vivoでの半減期は、約1日〜約1ヶ月の範囲であってもよい。ある態様において、ポリエーテルのin vivoでの半減期は、約1日〜約1週間の範囲である。ある態様では、ポリエーテルのin vivoでの半減期は、約1週間〜約2週間に範囲である。ある態様では、ポリエーテルのin vivoでの半減期は、約3週間〜約4週間の範囲である。
【0038】
使用
本発明で採用するポリマーは、凍結保存細胞の生存率を向上させるのに有用である。方法は、典型的には、ポリマー、例えば、P188などのポリエーテルの存在下で凍結保存細胞を解凍すること含む。細胞を凍結保存してその凍結保存細胞をポリマーの存在下で解凍することを含む細胞処理のために、方法が提供される。細胞を、任意の段階(例えば、採取後、凍結前、解凍後、または移植前)で随意に洗浄してもよい。ポリマーを、凍結前に細胞に添加してもよい。ポリマーを、例えば細胞が凍結する前に、凍結保護剤とともに添加してもよい。ポリマーを、解凍前に、凍結保存細胞に添加してもよい。例えば、凍結保存細胞、例えばポリマーの非存在下で凍結されたものを、凍結状態の貯蔵庫から取り出し、ポリマーを細胞に加え、そして、解凍のためのポリマーを有した状態で冷凍庫へ返してもよい。また、ポリマーを解凍直前に凍結保存細胞に添加してもよい。例えば、凍結状態の貯蔵庫から凍結保存細胞を取り出し、細胞に即座に、例えば、細胞がポリマーの存在下で解凍するように、細胞を培養室(例えば、水浴、ヒートブロック、オーブン)に内のセルを配置する前にポリマーを添加してもよい。ポリマーを解凍開始後、例えば細胞を培養室配置した後に凍結保存細胞に添加してもよい。ポリマーを、細胞を凍結保存する前に添加してもよい。また、ポリマーを凍結保存細胞が解凍されたあとに添加してもよい。ポリマーは、細胞を凍結または解凍する前、間、または後の任意の段階で添加することができる。
【0039】
本明細書で提供するおよび当該技術分野で知られる教示を考慮して、当業者は、解凍後に凍結保存細胞の生存率を最大化するために、ポリマーの添加を制御することが可能となる。凍結保存細胞を解凍するための方法は、当該技術分野でよく知られている(例えば、Freshney RI, Culture of Animal cells: A Manual of Basic Technique, 4th Edition, 2000, Wiley-Liss, Inc., Chapter 19を参照のこと)。本明細書で開示する解凍後の生存率を向上させるポリマーは、当該技術分野に公知の方法とともに用いられる余地がある。
【0040】
凍結保存細胞の解凍速度が、様々な要因によって影響されることが理解されるであろう。例えば、凍結保存細胞の容積、取扱い時間、周囲の温度、用いる培養室の温度、細胞を収容する容器の熱伝達特性、凍結保存細胞に添加されたポリマーの容積、凍結保存細胞に添加されたポリマーの温度が、解凍速度に影響を及ぼしてもよい。特別な凍結保存細胞の試料中の細胞がすべて同じ速度でまたは同じ期間内に解凍しなくてもよいことが理解されるであろう。よって、凍結保存細胞の試料に添加されたポリマーは、凍結保存細胞にポリマーを添加するタイミングならびに本明細書に開示するおよび当業者にとって明らかな他の要因によっては、解凍後にいくつかの細胞に、そして解凍中に他の細胞に接触してもよい。
【0041】
ポリマーの存在下で解凍される凍結保存細胞は、最大約1ml、約2ml、約3ml、約4ml、約5ml、約10ml、約20ml、約30ml、約40ml、約50ml、約100ml、約200ml、約300ml、約400ml、約500ml、約1L、またはそれ以上の容積を占める組成物中に存在してもよい。凍結保存細胞は、約1ml〜約10ml、約10mlから約20mlに、約20ml〜約30ml、約30ml〜約40ml、約40ml〜約50ml、約50ml〜約100mlに、約100ml〜約200mlに、約200ml〜約300mlに、約300ml〜約400mlに、約400ml〜約500ml、または約500ml〜約1Lの範囲の容積を占める組成物中に存在してもよい。細胞を含む組成物は、組織、例えば、血液試料、脂肪試料であってもよい。細胞を含む組成物は、さらに、他の剤、例えば、グリセロール DMSO、スクロース、またはトレハロースなどの凍結保護剤を含んでもよい。
【0042】
典型的には、解凍工程は、0℃未満(氷点下の温度)で貯蔵庫から凍結保存細胞を獲得すること、およびそれらを0℃以上の温度にさせることを含む。解凍工程は、約−205℃〜約−195℃の範囲の温度で貯蔵庫から凍結保存細胞を獲得することを含んでもよい。解凍工程は、約−80℃〜約−60℃の範囲の温度で貯蔵庫から凍結保存細胞を獲得することを含んでもよい。解凍工程は、例えば、解凍速度を制御するために、より暖かい温度範囲を有する各インキュベーター間で細胞を移すことにより、凍結保存細胞を徐々に暖めることを含んでもよい。例えば、解凍工程には、第一に、最初に氷点下の温度、例えば約−205℃〜約−195℃の範囲で貯蔵庫から凍結保存細胞を獲得すること、そして解凍前に、凍結保存された細胞を、第二の、典型的にはより暖かいが、典型的には氷点下の貯蔵庫温度、例えば、約−80℃〜約−60℃の範囲の温度に移すことを含んでもよい。このように解凍速度を制御するために、任意の段階数、例えば、2、3、4、5、6、またはそれ以上の段階が想定される。解凍工程はまた、温度制御チャンバー、例えば、水浴、ヒートブロック、オーブン等で細胞を培養することにより凍結保存細胞を徐々に暖めること、そしてチャンバーを徐々に、例えば凍結保存細胞がチャンバー内にある間に制御された速度で温めることを含んでもよい。
【0043】
解凍工程は、凍結保存細胞を、約15℃〜約30℃の範囲の温度で培養することを含んでもよい。解凍工程は、凍結保存細胞を、約30℃〜約45℃の温度で培養することを含んでもよい。かかる培養を、温度制御インキュベーター、例えば温度制御水浴、温度制御オーブン等で、凍結保存細胞を収容する容器を培養することによって行ってもよい。他の培養方法は当業者にとって明らかであろう。
【0044】
解凍工程は約30秒、約1分、約2分、約3分、約4分、約5分、約10分、約20分、約30分、約40分、約50分、約1時間またはより長い時間内に完了してもよい。解凍工程は、約1分〜約5分の範囲内で完了してもよい。解凍工程は、約5分〜約10分の範囲内で完了してもよい。解凍工程は、約10分〜約30分の範囲内で完了してもよい。解凍工程は、約30分〜約60分の範囲内で完了してもよい。
【0045】
解凍工程は、約1℃/分、約2℃/分、約3℃/分、約4℃/分、約5℃/分、約10℃/分、約20℃/分、約30℃/分、約40℃/分、約50℃/分、約60℃/分、約70℃/分、約80℃/分、約90℃/分、約100℃/分、約200℃/分またはそれ以上の速度で凍結保存細胞を暖めることを含んでもよい。解凍工程は、約1℃/分〜約5℃/分の範囲の速度で凍結保存細胞を暖めることを含んでもよい。解凍工程は、約5℃/分〜約25℃/分の範囲の速度で凍結保存を細胞暖めることを含んでもよい。解凍工程は、約25℃/分〜約50℃/分の範囲の速度で凍結保存細胞を暖めることを含んでもよい。解凍工程は、約50℃/分〜約100℃/分の範囲の速度で凍結保存細胞を暖めることを含んでもよい。解凍工程は、約100℃/分〜約200℃/分の範囲の速度で凍結保存細胞を暖めることを含んでもよい。解凍速度は連続的であってもよく、例えば、細胞が完全に解凍されるまで一定速度であってもよい。また、解凍速度は不連続であってもよく、例えば、ある温度範囲における速度は、解凍中の他の温度範囲における速度に比べてより速くてもよく、例えば、解凍中の約−200℃〜約0℃の範囲における速度は、約0℃〜約45℃の範囲に次いで、より速くてもよい。
【0046】
細胞は、凍結保存剤の非存在下で凍結されてもよい。細胞は、当技術分野で公知の1種または2種以上凍結保存剤の存在下で凍結されてもよい。いくつかの態様において、凍結保存剤は、単純または複合炭水化物である。いくつかの態様において、凍結保存剤は、アルドース、ケトース、アミノ糖、二糖、多糖、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの態様において、凍結保存剤は、スクロース、デキストロース、グルコース、ラクトース、トレハロース、アラビノース、ペントース、リボース、キシロース、ガラクトース、ヘキソース、イドース、マンノース(monnose)、タロース、ヘプトース、フルクトース、グルコン酸、ソルビトール、マンニトール、メチルα−グルコピラノシド、マルトース、イソアスコルビン酸、アスコルビン酸、ラクトン、ソルボース、グルカル酸、エリスロース、トレオース、アラビノース、アロース、アルトロース、グロース、エリトルロース、リブロース、キシルロース、プシコース、タガトース、グルクロン酸、グルコン酸、グルカル酸、ガラクツロン酸、マンヌロン酸、グルコサミン、ガラクトサミン、ノイラミン酸、アラビナン、フルクタン、フカン、ガラクタン、ガラクツロナン、グルカン、マンナン、キシラン、レバン、フコイダン、カラギーナン、ガラクトカロロース(galactocarolose)、ペクチン、ペクチン酸、アミロース、プルラン、グリコーゲン、アミロペクチン、セルロース、デキストラン、プスツラン(pustulan)、キチン、アガロース、ケラチン、コンドロイチン、デルマタン、ヒアルロン酸、アルギン酸、キサンチンガム、デンプン、ポリエチレングリコール、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、プロピレングリコール、プロピレン、グリコール、ポリビニル(polyvinvyl)ピロリドン、グリセロール、ポリエチレンオキシド、ポリエーテル、血清、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。ある態様において、凍結保存剤は、本明細書に記載のポロキシマー(例えば、P188)である。
【0047】
典型的には、解凍中に凍結保存細胞をポリマーと、細胞mlあたり約1〜20mgの範囲の濃度でのポリマーを混合する。当業者によって理解されるように、十分に凍結保存細胞の膜を安定化させ、生存率を向上させるために必要なポリマーの濃度は、用いるポリマー、対象、細胞、細胞の濃度、下流適用、例えば移植等に依存して変化してもよい。ある態様において、凍結保存細胞mLあたりのポリマーの濃度は約1〜10mgの範囲である。ある態様において、凍結保存細胞mLあたりのポリマーの濃度は約1〜5mgの範囲である。ある態様において、凍結保存細胞mLあたりのポリマーの濃度は約5〜10mgの範囲である。ある態様において、凍結保存細胞mLあたりのポリマーの濃度は約10〜15mgの範囲である。ある態様において、凍結保存細胞mLあたりのポリマーの濃度は約15〜20mgの範囲である。ある態様において、凍結保存細胞mLあたりのポリマーの濃度は約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15mgである。ある態様において、ポロキシマーP188を用いたとき、ポリマーの濃度は、凍結保存細胞(例えば、脂肪細胞)mlあたり約5mgである。ある態様において、ポロキシマーP188を用いたとき、ポリマーの濃度は、凍結保存細胞(例えば、脂肪細胞)mlあたり約8mgである。ある態様において、ポロキシマーP188を用いたとき、ポリマーの濃度は、凍結保存細胞(例えば、脂肪細胞)mlあたり約10mgである。ある態様において、ポロキシマーP188を用いたとき、ポリマーの濃度は、凍結保存細胞(例えば、脂肪細胞)mlあたり約12mgである。ある態様において、ポロキシマーP188を用いたとき、ポリマーの濃度は、凍結保存細胞(例えば、脂肪細胞)mlあたり約15mgである。
【0048】
細胞を、凍結保存処理中の任意の段階で洗浄してもよい。ある態様において、細胞を採取後に洗浄する。ある態様において、細胞を解凍後に洗浄する。ある態様において、細胞を移植前に洗浄する。細胞を、細胞に関連しない任意の過剰のポリマーを除去するために解凍後に洗浄してもよい。かかる洗浄は、ポリマーまたは凍結保存処理からの任意の細胞残骸への拒絶反応を防止または最小限に抑えてもよい。細胞の洗浄を、当技術分野で任意の公知の方法を用いて行ってもよい。例えば、細胞を、通常の生理食塩水または他の好適な洗浄液で洗浄してもよい。ある態様において、用いる洗浄液の容積は、洗浄される細胞の容積と少なくとも等量である。洗浄には、洗浄液中の細胞を懸濁し、細胞を遠心分離して洗浄した細胞を採取することを伴ってもよい。他の態様において、細胞を、如何なる洗浄液も添加せずに遠心分離し、細胞ペレットを、移植などのさらなる使用のために、通常の生理食塩水または他の適当な溶液に再懸濁する。洗浄工程を、一回または複数回実行してもよい。ある態様においては、洗浄工程を、2回、3回、4回、5回、6回、7回、またはそれより多く繰り返してもよい。典型的には、洗浄工程は、2〜3回より多く行わない。ある態様において、単回の洗浄のみが行われる。
【0049】
凍結保存細胞の濃度は、例えば、細胞または組織の種類、用いる凍結保護剤の種類、用いるポリマーの種類、下流適用などを含む任意の要因によって変化してもよい。ある細胞の種類の濃度は低くてもよく、例えば、卵母細胞は濃度が約1〜30細胞/ml、またはそれより低くてもよい。細胞の濃度は、約10細胞/ml、約10細胞/ml、約10細胞/ml、約10細胞/ml、約10細胞/ml、約10細胞/ml、約10細胞/ml、約10細胞/ml、約10細胞/ml、約10細胞/ml、またはそれより多くてもよい。細胞の濃度は、例えば、約10細胞/ml〜約10細胞/ml、約10細胞/ml〜約10細胞/ml、約10細胞/ml〜約10細胞、約10細胞/ml〜約10細胞/ml、約10細胞/ml〜約10細胞/ml、約10細胞/ml〜約10細胞/ml、約10細胞/ml〜約10細胞/ml、約10細胞/ml〜約10細胞/ml、約10細胞/ml〜約10細胞/mlの範囲であってもよい。
【0050】
本明細書で開示する方法および組成物は、任意の凍結保存細胞、典型的には真核細胞とともに用いられてもよい。しかし、本明細書で開示する方法および組成物はまた、原核細胞で用いることも想定される。本明細書で開示する方法および組成物は、植物細胞にも有用である。
【0051】
細胞は、任意の組織または器官(例えば、結合、神経、筋肉、脂肪または上皮組織)から単離した初代細胞であってもよい。細胞は、間葉、外胚葉、または内胚葉であってもよい。細胞は、単離された結合、神経、筋肉、脂肪、または上皮組織、例えば、組織外植片、例えば、脂肪吸引によって獲得された脂肪組織中に存在してもよい。結合組織は、例えば、骨、靭帯、血液、軟骨、腱、または脂肪組織であってもよい。筋肉組織は、例えば、血管平滑筋、心臓平滑筋、または骨格筋であってもよい。上皮組織は例えば、血管、顎下腺の導管、付着歯肉、舌背、硬口蓋、食道、膵臓、副腎、下垂体、前立腺、肝臓、甲状腺、胃、小腸、大腸、直腸、肛門、胆嚢、甲状腺濾胞、上衣、リンパ管、皮膚、汗腺管、体腔の中皮、卵巣、卵管、子宮、子宮内膜、子宮頸部(子宮頸部内膜)、子宮頸部(子宮頸膣部)、膣、陰唇、細管整流器、精巣網、精巣輸出管、精巣上体、輸精管、射精管、尿道球腺、精嚢、中咽頭、喉頭、声帯、気管、呼吸細気管支、角膜、鼻、腎臓の近位尿細管、腎臓の上行脚の細い部分、腎臓の遠位曲尿細管、腎臓の集合尿細管、腎盂、尿管、膀胱、前立腺部尿道、膜様部尿道、陰茎尿道、または外尿道口のものであってもよい。
【0052】
細胞は、任意の哺乳類の細胞であってもよい。細胞は、任意のヒト細胞であってもよい。細胞は、リンパ球、B細胞、T細胞、細胞傷害性T細胞、ナチュラルキラーT細胞、制御性T細胞、ヘルパーT細胞、骨髄細胞、顆粒球、好塩基球、好酸球、好中球、過分葉好中球、単球、マクロファージ、網状赤血球、血小板(platelet)、マスト細胞、血小板(thrombocytes)、巨核球、樹状細胞、甲状腺細胞、甲状腺上皮細胞、傍濾胞細胞、副甲状腺細胞、副甲状腺主細胞、好酸性細胞、副腎細胞、クロム親和性細胞、松果体細胞(pineal cells)、松果体細胞(pinealocytes)、膠細胞、膠芽細胞、星状細胞、乏突起膠細胞、小膠細胞、巨細胞性神経分泌細胞、星細胞、ベッチャー細胞;脳下垂体細胞、ゴナドトロピン産生細胞、副腎皮質刺激因子、甲状腺刺激ホルモン産生細胞、成長ホルモン産生細胞、乳腺刺激ホルモン分泌細胞、肺胞上皮細胞、I型肺胞上皮細胞、II型肺胞上皮細胞、クララ細胞;杯状細胞、肺胞マクロファージ、心筋細胞、周皮細胞、胃細胞、胃主細胞、壁細胞、杯状細胞、パネート細胞、G細胞、D細胞、ECL細胞、I細胞、K細胞、S細胞、腸内分泌細胞、腸クロマフィン細胞、APUD細胞、肝臓細胞、肝細胞、クッパー細胞、骨細胞(bone cells)、骨芽細胞、骨細胞(osteocytes)、破骨細胞、象牙芽細胞、セメント芽細胞、エナメル芽細胞、軟骨細胞(cartilage cells)、軟骨芽細胞、軟骨細胞(chondrocytes)、皮膚細胞、毛細胞、毛胞、ケラチノサイト、メラノサイト、母斑細胞母斑、筋肉細胞、筋細胞、筋芽細胞、筋管、含脂肪細胞、線維芽細胞、腱細胞、足細胞、糸球体近接細胞、糸球体内メサンギウム細胞、糸球体外メサンギウム細胞、腎細胞、腎細胞、緻密斑細胞、精子、セルトリ細胞、ライディッヒ細胞、卵母細胞、およびこれらの混合物からなる群から選択されてもよい。
【0053】
起源
細胞はまた、病変組織、例えば癌から単離してもよい。よって、細胞は癌細胞であってもよい。例えば、以下の種類の癌の任意のものから単離または由来してもよい:乳がん;胆道癌;膀胱癌;神経膠芽腫および髄芽腫を含む脳癌;子宮頸癌;絨毛癌;大腸癌;子宮内膜癌;食道癌;胃癌;急性リンパ性および骨髄性白血病を含む血液学的新生物;T細胞急性リンパ芽球性白血病/リンパ腫;有毛細胞白血病;慢性骨髄性白血病、多発性骨髄腫;AIDS関連白血病および成人T細胞白血病/リンパ腫;ボーエン病およびページェット病を含む上皮内新生物;肝臓癌;肺癌;ホジキン病およびリンパ球性リンパ腫を含むリンパ腫;神経芽細胞腫;扁平上皮癌を含む口腔癌;上皮細胞、ストローマ細胞、生殖細胞および間葉細胞から生じるものを含む卵巣癌;膵臓癌;前立腺癌;直腸癌;平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫、線維肉腫、および骨肉腫を含む肉腫;メラノーマ、メルケル細胞癌、カポジ肉腫、基底細胞癌、および扁平上皮癌を含む皮膚癌;セミノーマ、非セミノーマ(奇形腫、絨毛癌)などの胚腫瘍、間質腫瘍、および胚細胞腫瘍を含む精巣癌;甲状腺腺癌および髄質癌を含む甲状腺癌;ならびに腺癌およびウィルムス腫瘍を含む腎癌。
【0054】
細胞は、臍帯血細胞、幹細胞、胚性幹細胞、成人幹細胞、癌幹細胞、前駆細胞、自己細胞、同系移植細胞、同種移植細胞、異種移植細胞、および遺伝子操作された細胞からなる群から選択されてもよい。細胞は誘導された前駆細胞であってもよい。細胞は、対象、例えば、細胞の多分化能を誘発する遺伝子に関連した幹細胞で形質転換されたドナー対象から単離された細胞であってもよい。幹細胞関連遺伝子は、Oct3、Oct4、Sox1、Sox2、Sox3、Sox15、Klf1、Klf2、Klf4、Klf5、Nanog、Lin28、C−Myc、L−Myc、およびN−Mycからなる群から選択してもよい。細胞は、対象から単離され、多能性を誘発する幹細胞関連遺伝子で形質転換され、および予め決定された細胞系統に沿って分化された細胞であってもよい。
【0055】
本明細書に開示される任意の細胞の細胞株はまた、本明細書に開示される方法とともに用いることができる。
【0056】
移植
本発明は、対象中に細胞を移植する方法を提供する。本方法は、典型的には、ポリマー、例えばポリエーテルの存在下で凍結保存細胞を解凍し、および対象へと解凍された細胞を移植すること含む。本方法は、例えば同種移植片、同系移植片、または異種移植片として用いるために、移植レシピエントではないドナーから細胞を獲得することを伴ってもよい。方法は、自家移植片として用いるために、移植レシピエントである対象から細胞を獲得することを伴ってもよい。本方法は、移植の前にin vitroで細胞を膨張させることを伴ってもよい。組織に配置させる間に、細胞を凍結保存してもよい。細胞を、組織から単離してから凍結保存してもよい。組織に位置させて、解凍後に組織を単離する間に、細胞を凍結保存してもよい。
【0057】
移植するための凍結保存細胞を、細胞膜を安定化させ、解凍後ならびに取扱いおよび移植の際に細胞への損傷を回避するために十分な濃度のポリマー、例えばポリエーテルの存在下で解凍する。ポリマーは、細胞膜と結合することにより、凍結保存および/または解凍による細胞膜への損傷を修正または防ぐと考えられる。獲得されたポリマー/細胞組成物を、対象への移植前にさらに処理してもよい。例えば、対象へ移植する前に、細胞を洗浄し、精製し、抽出し、膨張させ、または他の処置をしてもよい。
【0058】
凍結保存細胞を、ポリマー、例えばポリエーテルの存在下で解凍し、および細胞の付着を可能にし、人工組織の製造を促進する足場材料に播種してもよい。ハイドロキシアパタイト、シリコーン、および他の無機材料などの他の材料を使用することができるが、一態様において、足場は、合成または天然ポリマーから形成される。足場は、生分解性または非分解性である。代表的な合成非生分解性ポリマーは、エチレン酢酸ビニルおよびポリメタクリレートを含む。代表的な生分解性ポリマーは、ポリ乳酸およびポリグリコール酸などのポリヒドロキシ酸、ポリ酸無水物、ポリオルトエステル、ならびにそれらのコポリマーなどを含む。天然ポリマーは、コラーゲン、ヒアルロン酸、およびアルブミンを含む。ヒドロゲルもまた好適である。他のヒドロゲル材料は、アルギン酸カルシウムおよび展性および細胞をカプセル化するために使用されることができるイオン性ヒドロゲルを形成することができる、ある他のポリマーを含む。例示的な組織工学的手法は、公開PCT出願WO/2002/016557、米国特許出願公開2005/0158358、および米国特許6,103,255に開示されるもののように、当該分野で知られており、これらの内容全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0059】
足場を、血管組織、骨、軟骨、脂肪、筋肉、腱、および靭帯などの新しい組織を生成するために使用する。典型的に、足場に細胞を播種し;細胞を培養し;およびその後足場を移植する。適用は、血管、軟骨、関節ライニング、腱、または靭帯などの臓器または組織の修理および/または交換、あるいは逆流の処置などにおける、開口部または内腔を埋めるため、または隣接する組織を移設するために典型的に使用される「バルク剤」として用いるための組織の生成を含む。
【0060】
本発明の特別な態様において、対象に脂肪吸引を行うことにより細胞を獲得する。したがって、本発明のシステムは、脂肪移植の成功を向上させる、または脂肪組織由来細胞の移植の成功を向上させる上で特に有用である。ある態様において、移植するための細胞を、それらを受ける同一人から採取する(すなわち、自家供与である)。ある態様において、細胞をドナーの腹部、腿部、または臀部から採取する。ある態様において、脂肪組織を、既にポリマーまたはポリマーの組成物を含んでいてもよい注射器または他の容器へと採取する。ある態様において、脂肪組織を、注射器または他の容器に採取し、該注射器または他の容器内で凍結保存する。ポリマー、例えば、ポリエーテルを、凍結前、解凍前、解凍直前、解凍中、または解凍後に、凍結保存した脂肪組織を収容する注射器または他の容器に添加する。ある態様において、移植させる細胞を、解凍中および移植の直前に再び、ポリマーと接触させる。例えば、細胞を、対象へと移植する直前に手術室や診療所でポリマーと混合してもよい。滅菌したポリマーまたはその組成物を、移植させる細胞と混合する。
【0061】
ポリマーの存在下で細胞を解凍した後、細胞/ポリマー組成物を対象に投与してもよい。ある態様において、対象はヒトである。ある態様において、対象は哺乳類である。ある態様において、対象は、マウス、ラット、ウサギ、またはイヌなどの実験動物である。細胞/ポリマー組成物を、典型的には、移植を必要とする患者に投与する。細胞/ポリマー組成物を、脂肪移植片を必要とするまたは所望する患者に投与してもよい。対象が、再建術や美容手術を受けていてもよい。ある態様において、脂肪移植がしわを除去において用いられる。ある態様において、脂肪移植は軟組織の置換または拡張に用いられる。ある態様において、脂肪移植は、唇、頬、胸、顔、臀部、ふくらはぎ、胸筋、および陰茎の増強に用いられる。典型的には、自家脂肪細胞は、細胞が取得された異なる部位でドナーへと移植して戻される。
【0062】
含脂肪細胞に加えて、脂肪組織は、幹細胞の源であることが判明している(Gimble et al., "Adipose-Derived Stem Cells for Regenerative Medicine" Circulation Research 100:1249-1260, 2007、これは参照により本明細書に組み込まれる)。したがって、本発明のシステムは、凍結保存の後に、幹細胞または脂肪細胞由来の他の細胞への損傷を安定化および防止させるのに有用であってもよい。ある態様において、本発明のシステムは、成人幹細胞の移植に有用である。ある態様において、本発明のシステムは、線維芽細胞の移植に有用である。
【0063】
ポリマーを、実験ポリマー、例えば、実験ポリエーテルの存在下で凍結保存細胞を解凍し、獲得された組成物(解凍された細胞および実験ポリマーを含む)をマウスまたは他のげっ歯類へ移植して時間と共に移植の成功を決定することにより移植適用で用いることができるかを試験することができる。移植片、例えば、脂肪移植片を、様々な生化学的および病理学的測定、例えば、移植片の重さ、移植片の容積、アポトーシスおよび/または細胞死のマーカーを評価すること、ミトコンドリアのATPレベルを評価すること、または組織得的マーカー、例えばレプチン、PPARg2、または他のマーカーのレベルを決定するためのリアルタイムPCR、により評価してもよい。ある態様において、実験はヌードマウスで行われる。ポリマーはまた、実験ポリマーの存在下で凍結保存細胞を解凍すること、in vitroで解凍細胞を増殖すること、およびアポトーシスまたは細胞死のマーカーのために細胞を評価すること、毒性などのために細胞を測定することにより、in vitroでスクリーンしてもよい。ある態様において、実験ポリマーを用いた結果を、対照からの結果と比較する。ある態様において、対照ポリマーはP188である。ある態様において、対照ポリマーは、デキストランである。ある態様において、対照細胞を、対照溶液、例えば、通常の生理食塩水または増殖培地の存在下で解凍する。
【0064】
移植方法において、ポリマーを、他の生物学的に活性な剤および/またはその薬学的に許容できる賦形剤と組み合わせて、移植される細胞に添加するために有用な組成物を形成してもよい。かかる剤または賦形剤を、例えば、ポリマーと共に解凍中に、または解凍後移植前に添加してもよい。かかる生物学的に活性な剤はまた、細胞や組織移植片、例えば、脂肪移植片における細胞死を防ぐために動作してもよい。賦形剤を、ポリマーと移植される凍結保存細胞との混合、または獲得されたポリマー/細胞組成物の取扱いおよび貯蔵を援助するために用いてもよい。
【0065】
移植される細胞へポリマーと共に添加してもよい生物学的に活性な剤は、限定されないが、抗酸化剤、ビタミン、膜安定化剤、ミネラル、浸透圧保護剤、補酵素、粘度増強剤、ホルモン、および成長因子を含む。多数の機構、例えば、膜破壊およびフリーラジカルの形成が移植された細胞の細胞死の原因に関与する。抗酸化剤を、フリーラジカル形成を低減するために用いてもよい。抗酸化剤はフリーラジカルを捕捉して活性酸素種による損傷を防ぐ。ある態様において、ポリマー/細胞組成物は、さらに抗酸化剤を含む。ポリマーおよび抗酸化剤は、解凍後の凍結保存細胞の生存率を向上させ、それゆえ移植結果を改善させると考えられる。抗酸化剤は、酵素的または非酵素的抗酸化剤であってもよい。酵素的抗酸化剤は、例えば、スーパーオキシドジスムターゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ、およびカタラーゼを含む。例示的な非酵素的抗酸化剤は、アスコルビン酸(ビタミンC)、α−トコフェロール(ビタミンE)、ビタミンA、グルタチオン、カロチノイド類(例えば、リコプレン(lycoprene)、ルテイン、ポリフェノール、β−カロチン)、フラボノイド類、フラボン類、フラボノール類、グルタチオン、N−アセチルシステイン、システイン、リポ酸、ユビキナール(ubiquinal)(コエンザイムQ)、ユビキノン(コエンザイムQ10)、メラトニン、リコフェン(lycophene)、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、安息香酸塩、メチルパラベン、プロピルパラベン、プロアントシアニジン、マンニトール、およびエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む。ある態様において、抗酸化剤は金属性抗酸化剤である。ある態様において、抗酸化剤はセレンである。ある態様において、抗酸化剤は亜鉛である。ある態様において、抗酸化剤は銅である。ある態様において、抗酸化剤はゲルマニウムである。
【0066】
ある態様において、ポリマー/細胞組成物は、さらにビタミンを含む。ビタミンは抗酸化剤であってもよい。ある態様において、ビタミンは、α−トコフェロール(ビタミンE)である。ある態様において、ビタミンはアスコルビン酸(ビタミンC)である。ある態様において、ビタミンはコエンザイムQ10である。ある態様において、ビタミンはβ−カロチンである。本発明のポリマー/細胞組成物に添加してもよい他のビタミンは、ビタミンA、ビタミンB(チアミン)、ビタミンB(リボフラビン)、ビタミンB(ナイアシン)、ビタミンB(アデニン)、ビタミンB(パントテン酸)、ビタミンB(ピリドキシン)、ビタミンB(ビオチン)、ビタミンB(葉酸)、ビタミンB12(シアノコバラミン)、ビタミンD(エルゴカルシフェロール)、およびビタミンKを含む。
【0067】
ある態様において、ポリマー/細胞組成物はさらに、本明細書で記載される解凍中に用いられるポリマーに加えて、他の膜安定化剤を含む。ある態様において、膜安定化剤は第二のポリマーである。膜安定化剤は、細胞傷害を防ぐために細胞膜の封鎖をさらに促進すると考えられる。ある態様において、膜安定化剤はポリエチレングリコールである。異なる分子量のPEGおよびPEGの異なる異性体を用いてもよい。ある態様において、PEGのコポリマーを、細胞/ポリマー組成物において用いる。
【0068】
ある態様においては、ポリマー/細胞組成物は、浸透圧保護剤をさらに含む。かかる浸透圧保護剤は、浸透圧ダメージまたは浸透圧ストレスから細胞/ポリマー組成物中の細胞を保護するのを援助してもよい。ある態様において、浸透圧保護剤は多糖類である。ある態様において、浸透圧保護剤はマルトースである。ある態様において、浸透圧保護剤はラフィノースである。ある態様において、浸透圧保護剤はスクロースである。ある態様において、浸透圧保護剤はマンニトールである。ある態様において、浸透圧保護剤はPEGである。
【0069】
ある態様において、ポリマー/細胞組成物は、さらに粘度増強剤を含む。ある態様において、粘度増強剤はポリマーである。ある態様において、粘度増強剤は多糖類である。ある態様において、粘度増強剤は、セルロースまたはセルロース誘導体である。ある態様において、粘度増強剤はカルボキシメチルセルロースである。ある態様において、粘度増強剤はメチルセルロースである。ある態様において、粘度増強剤は、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、またはヒドロキシブチルセルロースである。他の例示的な粘度増強剤は、合成ポリマー(例えば、アクリルアミド、アクリル酸)を含む。ある態様において、粘度増強剤はろうまたは脂肪アルコール(例えば、セチルアルコール)である。
【0070】
ある態様において、ポリマー/細胞組成物は、さらにアルコール(例えば、ポリフェノール、脂肪アルコール)を含む。ある態様において、ポリマー/細胞組成物は、ホルモンまたは成長因子をさらに含む。ある態様において、ホルモンまたは成長因子は、インスリン、グリタゾン、コレステロール、VEGF、FGF、EGF、PDGFなどである。ある態様において、ポリマー/細胞組成物は、有機酸(例えば、リポ酸)をさらに含む。ある態様において、ポリマー/細胞組成物は、小さな有機分子(例えば、アントシアニン、カプサイシン)をさらに含む。ある態様において、ポリマー/細胞組成物は、ステロイド化合物(例えば、コレステロール)をさらに含む。ある態様において、ポリマー/細胞組成物は、脂質をさらに含む。
【0071】
ある態様において、凍結保存細胞、例えば、脂肪細胞は、対象に移植するために、P188およびビタミンCと組み合わされる。ある態様において、凍結保存細胞、例えば、脂肪細胞は、P188およびグルタチオンと組み合わされる。ある態様において、凍結保存細胞、例えば、脂肪細胞は、P188およびリポ酸と組み合わされる。ある態様において、凍結保存細胞、例えば、脂肪細胞は、P188およびビタミンEと組み合わされる。
【0072】
本明細書に記載されるポリマーの製剤は、医薬品の分野で公知のまたは今後開発される任意の方法によって製造してもよい。一般に、かかる製造方法は、ポリマーを1つまたは2つ以上の賦形剤および/または1つまたは2つ以上の他の生物学的に活性な剤と関連付ける工程を含む。本発明の組成物中におけるポリマー、薬学的に許容できる賦形剤、および/または任意の追加の剤の相対量は、ポリマーのアイデンティティ、ポリマーの大きさ、移植部位、および/または対象に依存して変化するであろう。例として、移植されるために、凍結保存細胞と、例えば解凍中に混合される組成物は、例えば、1%〜99%(w/w)のポリマーを含んでもよい。
【0073】
ポリマーの製剤は、、本明細書で用いられる、ありとあらゆる溶媒、分散媒体、希釈剤、または他の液体ビヒクル、分散または懸濁助剤、界面活性剤、等張化剤、増粘剤または乳化剤、保存料、固形剤、潤滑剤などを含む、薬学的に許容できる賦形剤を、所望の特別な製剤に適合するように含んでもよい。RemingtonのThe Science and Practice of Pharmacy, 21st Edition, A. R. Gennaro, (Lippincott, Williams & Wilkins, Baltimore, MD, 2006; 参照により本明細書に組み込まれる)は、医薬組成物を製剤化するのに用いられる様々な賦形剤およびこれらの製造のための公知の技術を開示する。任意の望ましくない生物学的効果を作り出す、あるいはさもなければ医薬組成物の他の成分と有害な方法で相互作用することにより任意の従来の賦形剤が物質またはその誘導体と不適合な場合を除き、その使用は本発明の範囲内にあると考えられる。
【0074】
いくつかの態様において、薬学的に許容できる賦形剤は、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、または100%純度である。いくつかの態様において、賦形剤は、ヒトにおける使用および獣医学的用途のために承認されている。いくつかの態様において、賦形剤は、米国食品医薬品局によりヒトにおける使用が承認されている。いくつかの態様において、賦形剤は医薬品グレードである。いくつかの態様において、賦形剤は米国薬局方(USP)、欧州薬局方(EP)、英国薬局方、および/または国際薬局方の基準を満たす。
【0075】
ポリマー組成物の製造に用いる薬学的に許容できる賦形剤は、不活性希釈剤、分散剤、界面活性剤および/または乳化剤、崩壊剤、保存料、緩衝剤、潤滑剤、および/またはオイルを含むが、これらに限定されない。かかる賦形剤は、随意に、本発明の製剤に含まれてもよい。調剤者の判断により、着色料などの賦形剤が組成物中に存在することができる。
【0076】
例示的な希釈剤は、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸ナトリウム、ラクトース、スクロース、セルロース、微結晶性セルロース、カオリン、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、塩化ナトリウム、乾燥デンプン、コーンスターチ、粉砂糖など、およびそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0077】
例示的な分散剤は、ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプン、タピオカデンプン、グリコール酸ナトリウムデンプン、粘土、アルギン酸、グアーガム、柑橘類パルプ、寒天、ベントナイト、セルロースおよび木材製品、天然スポンジ、陽イオン交換樹脂、炭酸カルシウム、ケイ酸塩、炭酸ナトリウム、架橋ポリ(ビニルピロリドン)(クロスポビドン)、カルボキシメチルナトリウムデンプン(グリコール酸ナトリウムデンプン)、カルボキシメチルセルロース、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム(クロスカルメロース)、メチルセルロース、アルファデンプン(スターチ1500)、微結晶性デンプン、水不溶性デンプン、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム(Veegum)、ラウリル硫酸ナトリウム、四級アンモニウム化合物等、およびそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0078】
例示的な界面活性剤および/または乳化剤は、天然の乳化剤(例えば、アカシア、寒天、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、トラガント、コンドラックス(chondrux)、コレステロール、キサンタン、ペクチン、ゼラチン、卵黄、カゼイン、羊毛脂、コレステロール、ろう、およびレシチン)、コロイド性粘土(例えば、ベントナイト[ケイ酸アルミニウム]およびVeegum[ケイ酸アルミニウムマグネシウム])、長鎖アミノ酸誘導体、高分子量のアルコール(例えば、ステアリルアルコール、セチルアルコール、オレイルアルコール、トリアセチンモノステアレート、エチレングリコールジステアレート、グリセリルモノステアレート、およびプロピレングリコールモノステアレート、ポリビニルアルコール)、カルボマー(例えば、カルボキシポリメチレン、ポリアクリル酸、アクリル酸ポリマー、およびカルボキシビニルポリマー)、カラギーナン、セルロース誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、粉末セルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース)、ソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート[Tween(登録商標)20]、ポリオキシエチレンソルビタン[Tween(登録商標)60]、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート[Tween(登録商標)80]、ソルビタンモノパルミテート[Span(登録商標)40]、ソルビタンモノステアレート[Span(登録商標)60]、ソルビタントリステアレート[Span(登録商標)65]、グリセリルモノオレエート、ソルビタンモノオレエート[Span(登録商標)80])、ポリオキシエチレンエステル(例えば、ポリオキシエチレンモノステアレート[Myrj(登録商標)45]、ポリオキシエチレン水素化ヒマシ油、ポリエトキシル化ヒマシ油、ポリオキシメチレンステアリン酸、およびSolutol)、スクロース脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル(例えば、Cremophor(登録商標))、ポリオキシエチレンエーテル(例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル[Brij(登録商標)30])、ポリ(ビニル−ピロリドン)、ジエチレングリコールモノラウレート、トリエタノールアミンオレイン酸、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、オレイン酸エチル、オレイン酸、ラウリン酸エチル、ラウリル硫酸ナトリウム、臭化セトリモニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、ドキュセートナトリウムなど、および/またはそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0079】
例示的な防腐剤は、抗酸化剤、キレート剤、抗菌剤、抗菌保存料、抗真菌保存料、アルコール性保存料、酸性保存料、および他の保存料を含んでもよい。例示的な抗酸化剤は、これらに限定されないが、アルファトコフェロール、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコビル(acorbyl palmitate)、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、モノチオグリセロール、メタ重亜硫酸カリウム、プロピオン酸、没食子酸プロピル、アスコルビン酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、および亜硫酸ナトリウムを含む。例示的なキレート剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、クエン酸一水和物、エデト酸二ナトリウム、エデト酸二カリウム、エデト酸、フマル酸、リンゴ酸、リン酸、エデト酸ナトリウム、酒石酸、エデト酸三ナトリウムを含む。例示的な抗菌保存料は、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、ブロノポール、セトリミド、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、クロロブタノール、クロロクレゾール、クロロキシレノール、クレゾール、エチルアルコール、グリセリン、ヘキセチジン、イミド尿素、フェノール、フェノキシエタノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、プロピレングリコール、およびチメロサールを含むが、これらに限定されない。例示的な抗真菌防腐剤は、ブチルパラベン、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、安息香酸カリウム、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、ソルビン酸を含むが、これらに限定されない。例示的なアルコール性保存料は、エタノール、ポリエチレングリコール、フェノール、フェノール化合物、ビスフェノール、クロロブタノール、ヒドロキシ安息香酸塩、およびフェニルエチルアルコールを含むが、これらに限定されない。代表的な酸性保存料は、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、ベータカロチン、クエン酸、酢酸、デヒドロ酢酸、アスコルビン酸、ソルビン酸、およびフィチン酸を含むが、これらに限定されない。他の保存料は、トコフェロール、酢酸トコフェロール、デテロキシムメシレート、セトリミド、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエンド(hydroxytoluened)(BHT)、エチレンジアミン、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES)、亜硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、メタ重亜硫酸カリウム、Glydant Plus(登録商標)、Phenonip(登録商標)、メチルパラベン、Germall 115、Germaben II、Neolone(商標)、Kathon(商標)、およびEuxyl(登録商標)を含むが、これらに限定されない。ある態様において、保存料は抗酸化剤である。他の態様において、保存料はキレート剤である。
【0080】
例示的な緩衝剤は、クエン酸緩衝液、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、塩化アンモニウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、クエン酸カルシウム、グルビオン酸カルシウム、グルセプト酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、D−グルコン酸、グリセロリン酸カルシウム、乳酸カルシウム、プロパン酸、レブリン酸カルシウム、ペンタン酸、二塩基性リン酸カルシウム、リン酸、三塩基性リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、酢酸カリウム、塩化カリウム、グルコン酸カリウム、カリウム混合物、二塩基性リン酸カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸カリウム混合物、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、二塩基性リン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸ナトリウム混合物、トロメタミン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、アルギン酸、発熱性物質除去蒸留水、等張性食塩水、リンゲル液、エチルアルコールなど、およびそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0081】
例示的な潤滑剤は、限定されるものではないが、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、シリカ、タルク、麦芽、グリセリルベハネート(glyceryl behanate)、水素化植物油、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ロイシン、ラウリル硫酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウムなど、およびこれらの組み合わせを含む。
【0082】
例示的な油は、アーモンド、アプリコットカーネル、アボカド、ババス、ベルガモット、クロスグリの種子、ルリヂサ、ケード、カモミール、キャノーラ、キャラウェー、カルナウバロウ、ヒマシ、シナモン、カカオバター、ココナッツ、タラの肝臓、コーヒー、トウモロコシ、綿実、エミュー、ユーカリ、月見草、魚、亜麻仁、ゲラニオール、ひょうたん、ブドウの種子、ハシバミの実、ヒソップ、ミリスチン酸イソプロピル、ホホバ、ククイの実、ラバンジン、ラベンダー、レモン、リツェアクベバ、マカデミアナッツ、マロー、マンゴーの種子、メドウフォームの種子、ミンク、ナツメグ、オリーブ、オレンジ、オレンジラフィー、パーム、パームカーネル、ピーチカーネル、落花生、ケシの実、カボチャの種子、菜種、米ぬか、ローズマリー、ベニバナ、サンダルウッド、サスクアナ(sasquana)、キダチハッカ、サジー、ゴマ、シアバター、シリコーン、大豆、ヒマワリ、ティーツリー、アザミ、ツバキ、ベチバー、クルミ、および小麦胚芽油を含むが、これらに限定されない。例示的な油は、限定されるものではないが、ステアリン酸ブチル、カプリルトリグリセリド、カプリン酸トリグリセリド、シクロメチコン、セバシン酸ジエチル、ジメチコン360、ミリスチン酸イソプロピル、鉱油、オクチルドデカノール、オレイルアルコール、シリコーン油、およびこれらの組み合わせを含む。
【0083】
他の用途
凍結保存細胞を、任意の適切な下流の適用、例えば、研究、創薬、生物製剤の製造などに用いてもよい。細胞を、例えば、免疫染色、インサイチュハイブリダイゼーションなどと組み合わせて、顕微鏡に対して用いてもよい。細胞を、遺伝子ノックダウンまたは過剰発現研究などの機能的研究のために用いてもよい。細胞を、例えば、細胞周期、細胞シグナル伝達、遺伝子調節などの様々な分子経路についての研究でもよい。細胞を、フローサイトメトリーによって分離してもよい。細胞を、細胞株を作製するために用いてもよい。細胞を、分画研究、例えば、異なる細胞区画からのタンパク質または分子を精製するために用いてもよい。細胞を、異なる病気の経路、例えば、癌を研究するために用いてもよい。細胞を、例えば、腫瘍増殖を研究するために動物モデル内に移植してもよい。細胞を、遺伝子(例えば、mRNAまたはmiRNA)プロファイリング研究のために用いてもよい。細胞の核型または遺伝子型を評価してもよい。細胞を様々な生体分子、例えば、抗体、タンパク質、RNA、DNA、リガンドなどの分離に用いてもよい。
【0084】
細胞を、高含量スクリーニング、例えば、リード同定および化合物特性評価のために、自動化顕微鏡に供してもよい。細胞を、所望の活性(例えば、細胞増殖の阻害、特定の生化学的経路、ある種の遺伝子の発現調節、標的への結合)について、化合物(例えば、小分子、siRNA、ペプチド等)の評価(例スクリーニング、例えばハイスループットスクリーニングすることによる)のために用いてもよい。
【0085】
細胞を、治療分子、例えば、抗体、酵素などの生産及び分離のための生物薬剤学の文脈において用いてもよい。細胞を、顧客、共同研究者などに、例えば、ポリマー、例えばポリエーテルの存在下でドライアイス上で輸送してもよい。細胞を、汚染、例えば、細菌、マイコプラズマ、ウイルスなどのために評価してもよい。本明細書に開示された用途を限定する意図はなく、凍結保存細胞のための他の多様な用途もまた想定されており、当業者に明らかであろう。
【0086】
キット
本発明はまた、1つまたは2つ以上のポリマー、例えばポリエーテル、または本明細書に容器内にあると記載されたポリマーコンポーネントを含むパッケージまたはキットを提供する。たとえば、容器は、凍結保存細胞を解凍するのに用いられるようになっているポリエーテルまたはポリエーテル組成物を含んでもよい。ポリマーを使用するための説明書もまた含んでもよい。特に、説明書は、細胞の解凍中にポリマーを凍結保存細胞と接触させることについての情報を含んでもよい。かかる説明書はまた、患者へのポリマー/細胞組成物の、例えば、ポリマーの存在下で細胞を解凍した後の投与に関連する情報を含んでもよい。パッケージはまた、投与前のポリマー/細胞組成物に含まれる生物学的に活性な剤(単数または複数)を含む1つまたは2つ以上の容器を含んでもよい。パッケージはまた、一般的に、製造、使用、医療機器、および/または医薬品の販売を規制する政府機関によって処方される形式で、容器に関連する通知を含むことができ、ここで、該通知は組織移植におけるヒトまたは獣医学的投与に対する、該組成物の機関による承認を示す。
【0087】
パッケージは、ポリマー/細胞組成物を製造するためのデバイスまたは容器を含んでもよい。デバイスは、例えば、測定または混合デバイスであってもよい。
【0088】
パッケージはまた、随意に本発明のポリマー/細胞組成物を投与するためのデバイスを含んでもよい。例示的なデバイスは、特殊な注射器、針、および多様な喉頭鏡設計に適合可能なカテーテルを含む。
【0089】
キットの成分を、相対的に厳重な管理下で、単一のより大きな容器、例えば、プラスチックや発泡スチロールの箱で提供してもよい。典型的には、キットをヘルスケアの専門家による使用のために便利にパッケージする。ある態様において、キットのコンポーネントを、手術室や診療所などの無菌環境での使用のために無菌パッケージする。
【0090】

例1:含脂肪組織の改善された凍結保存のための剤
背景:我々は、トリブロックコポリマー(P188)を用いる含脂肪細胞蘇生の研究において、移植片保存において有意な改善を発見した。我々は、同様の戦略は凍結脂肪を同様に保護するために利用してもよいという仮説を立てた。本研究では、凍結貯蔵された含脂肪組織を保護剤として種々の剤で処置し、次いでヌードマウスモデルへの注射ならびに連続的な解釈および分析を行った。
【0091】
方法:脂肪を、ヒト脂肪吸引により獲得し、生理食塩水で洗浄し、遠心分離した。脂肪のアリコートを、4つの剤の1つで処置した:ポリマー(P188)、PARPi(抗アポトーシス対照)、DMSO+トレハロース(至適基準(gold standard))、または陰性対照としての生理食塩水。4つの非DMSO含有群を急速凍結し、−80℃で6週間保存し、DMSO群を−20℃(24時間)でゆっくりと冷却してから、6週間−80℃で保存した。その後ヌードマウスに解凍試料(1.0ccおよび0.97g重量)を移植した。試料を3、6、および9日目、ならびに6週目に連続して採取した。外植脂肪結節を秤量し、G3PH活性、ATPレベル、細胞カウント、アポトーシス活性について分析した。(図1)
【0092】
結果:最初の9日間は、移植片重量についてもアポトーシス活性についても、群のいずれの間にも統計学的な差がなかった。しかし、6週間目において、DMSO+トレハロースの対照が最大60%の再吸収を示した。PARPiは、同様の53パーセント再吸収を実証した(p=0.004)。有意なことに、P188で処置された移植片は6週間において25%の再吸収(p=0.012)のみを実証した。生理食塩水対照と比較した場合、6週目でのATPレベルがP188処理移植片において高かった。しかし、6週目でP188とDMSO+トレハロースとの間のATPレベルに有意な違いはなかった。P188処理試料は、組織学的検査では他の群に対して優れた脂肪組織構造を実証した。(図2) 興味深いことに、DMSO+トレハロース試料は、組織学的に、大量の線維性組織および大規模な空胞化スペースを含んでいた。
【0093】
結論:細胞膜安定化剤P188での凍結保存細胞の処置は、DMSOの毒性影響がない脂肪凍結保存方法を提供する。これらの結果は、ポリマーが臨床的に貯蔵された含脂肪組織吸引物での使用のための生存可能な(viable)剤であることを示す。
【0094】
例2:解凍処理中にポリエーテルで処置した移植凍結保存細胞の生存率
処理。
細胞死(アポトーシス)の量を低減させる解凍処理中に用いられるP188の有効性を評価した。図3を参照。試料を生理食塩水(対照)またはDMSO+トレハロース(至適基準)のいずれかで処理し、それから−80℃で8週間凍結させた。それから、試料を生理食塩水で解凍した、またはP188溶液で解凍した。解凍後、各群を、ヌードマウスモデルに1.0ccアリコートで注射した。第5日に、注射物を各群からサンプル化し、移植片における細胞死の量を蛍光標識を用いて測定した。生理食塩水処理群に対するP188処理群の比較により、解凍処理中にP188を用いた場合における細胞死の量の減少が示される。これらの結果は、事前の凍結保護の使用にかかわらず、解凍中に傷害を標的とすることによりP188が結果を向上させることを示す。
【0095】
解凍処理中にP188を用いた場合の脂肪移植片における機能的改善もまた評価した。(図4)これらの試料を、生理食塩水(対照)またはDMSO+トレハロース(至適基準)のいずれかで処置し、そして−80℃で8週間凍結した。試料を、生理食塩水またはP188溶液のいずれかで解凍した。解凍後、各群をヌードマウスモデルに1.0mlのアリコートで注射した。第5日に、注射物を各群からサンプル化し、ATPの量を測定した。
【0096】
生理食塩水処理群に対するP188処理群の比較により、解凍処理中にP188を用いる場合にATPレベルの増加が示された。予想どおり、P188処理なしのDMSO+トレハロースは、生理食塩水よりもわずかに高いATPレベルを実証した。至適基準(DMSO+トレハロース)が解凍時にP188で処理された場合、移植片ATPレベルは劇的に高くなる。また、生理食塩水処理群は、P188で解凍した場合にわずかなATPレベルの向上を実証した。これらの結果により、事前の凍結保護の使用にかかわらず、P188が解凍処理中に膜の損傷から細胞を保護することにより細胞機能が増大させることが示される。したがって、解凍においてP188が用いられる場合、移植片の機能が改善される。
【0097】
例3:脂肪の凍結保存、解凍および移植のためのプロトコール
まず、脂肪吸引を用いて対象から脂肪を単離する。脂肪を注射器、例えば60ml注射器に約30mlのアリコートで分配する。凍結保護剤を、随意にアリコートに添加する。次に、脂肪アリコートを−80℃で凍結する。脂肪のアリコートは、のちに使用するために保管する。解凍直前に、ポリマー、例えばポリエーテル、典型的にはP188の等量の溶液を凍結保存された脂肪アリコートに添加する。その後、凍結保存脂肪アリコートを、ポリマーの存在下で、約37.5℃での約20分間の水浴中でのインキュベーションにより解凍し、次いで約15分間約37度での穏やかなロッカーでさらに培養する。そして、試料をスピンし、対象に移植する。
【0098】
均等物および範囲
当業者は、定常の実験を用いるだけで、本明細書に記載された発明の具体的な態様の多数の均等物を理解し、または確認することができるであろう。本発明の範囲は上記の記載に限定されると意図されず、むしろ、添付の特許請求の範囲に規定される。
【0099】
請求の範囲において、「a」、「an」および「the」などの冠詞は、そうでない旨または文脈から明示的に他に示されなければ、1つまたは1つより多いことを意味してもよい。群の1つまたは2つ以上の要素の間に「or」を含む請求の範囲または記載は、そうでない旨または文脈から明示的に他に示されなければ、群の構成員の1つ、1つより多く、または全てが、存在する、用いられる、あるいはある物品または方法の他の関連であるかどうかを充足すると考えられる。本発明は、群の構成員のちょうど1つが存在する、用いられる、またはある物品または方法の他の関連である態様を含む。本発明はまた、群の構成員の1つ以上、または全てが存在する、用いられる、またはある物品または方法の他の均等物である態様を含む。さらに本発明は、1つまたは2つ以上の請求項からのまたは記載の関連部分からの、限定、要素、節、記述的用語などが他の請求項に導入される、全ての変化形、組み合わせ、および順列を包含すると理解されるべきである。例えば、他の請求項に従属する任意の請求項は、同じ基本請求項に従属する任意の他の請求項において見い出される1つまたは2つ以上の限定を含むように改変されることができる。さらに、特許請求の範囲が組成物を引用する場合、他に示されない限り、または矛盾または不一致が生じることが当業者に明らかでない限り、本明細書中に開示される任意の目的のための組成物の使用方法が包含され、および任意の本明細書中に開示される作製方法または当業界で公知の他の方法が包含されると考えられるべきである。さらに、本発明は、本明細書に開示される組成物の任意の製造方法により作製される組成物を包含する。
【0100】
要素が羅列で、例えばマーカッシュ群形式で提示される場合、要素の副次群もまた開示される、および任意の要素(単数または複数)が群から削除されることができることが理解されるべきである。また、用語「含む(comprising)」は、非限定であることを意図され、追加の要素または工程の包含を許容すると意味される。一般的に、本発明、または本発明の側面が特別な要素、特徴、工程などを含むと言及される場合、本発明または本発明の側面のある態様は、かかる要素、特徴、工程などからなる、または本質的にからなると理解されるべきである。簡略化の目的のために、それらの態様は、本明細書においてそれらの言葉で具体的に規定されない。よって、1つまたは2つ以上の要素、特徴、工程などを含む本発明の各態様に対し、本発明はまた、これらの要素、特徴、工程などからなる、または本質的にからなる態様を提供する。
【0101】
範囲が定められる場合、終端点が包含される。さらに、他に示されないまたは文脈および/または当業者の理解からは他に明示的でなければ、範囲として表現された値は、文脈が明確に指示しない限り、範囲の下限値の単位の10分の1までの、本発明の異なる態様において述べられた範囲内の任意の特定の値を想定できることが理解されるべきである。また、他に示されないまたは文脈および/または当業者の理解からは他に明示的でなければ、範囲として表現された値は、副次的範囲の終端点が範囲の下限の単位の10分の1と同じ程度にまで表現される、定められる範囲内の任意の副次的範囲を想定することができることもまた理解されるべきである。
【0102】
さらに、本発明の任意の特別な態様が、任意の1つまたは2つ以上の請求項から明示的に除外されてもよいことが理解されるべきである。本発明の組成物および/または方法の任意の態様、要素、特徴、適用、または側面が、任意の1つまたは2つ以上の請求項から除外されることができる。簡略化の目的のために、1つまたは2つ以上の要素、特徴、目的、または側面が除外される態様の全てが、本明細書に明示的に記載されるわけではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凍結保存細胞の生存率を向上させる方法であって、ポリエーテルの存在下で凍結保存細胞を解凍することを含む、前記方法。
【請求項2】
ポリエーテルがジブロックコポリマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ポリエーテルがトリブロックコポリマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ポリエーテルがテトラブロックコポリマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ポリエーテルがポリアルキルエーテルである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ポリエーテルが、ポリアルキルエーテルおよび他のポリマーのブロックコポリマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ポリエーテルが、ポリアルキルエーテルおよび第二のポリアルキルエーテルのブロックコポリマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ポリエーテルが、ポリエチレングリコールおよび第二のポリマーのブロックコポリマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
第二のポリマーが、ポリエチレングリコールより疎水性である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ポリエーテルが、ポリプロピレングリコールおよび第二のポリマーのブロックコポリマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
第二のポリマーが、ポリプロピレングリコールより親水性である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ポリエーテルが、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールのブロックコポリマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
ポリエーテルが、ポリ(エチレンオキシド)−ポリ(プロピレンオキシド)−ポリ(エチレンオキシド)のブロックコポリマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
ポリエーテルが、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールのトリブロックコポリマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
ポリエーテルが、形態:ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールのトリブロックコポリマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
ポリエーテルがポロキサマーP188である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
ポリエーテルがポロキサマーP108である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
ポリエーテルがポリエチレングリコールである、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
ポリエーテルがポリソルベート80である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
ポリエーテルがメロキサポールである、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
ポリエーテルがポロキサミンである、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
ポリエーテルが少なくとも95%純度である、請求項1に記載の方法
【請求項23】
ポリエーテルが少なくとも98%純度である、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
ポリエーテルが少なくとも99%純度である、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
ポリエーテルの分子量が約1,000g/mol〜約10,000g/molの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
ポリエーテルの分子量が約2,000g/mol〜約10,000g/molの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
ポリエーテルの分子量が約3,000g/mol〜約10,000g/molの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
ポリエーテルの分子量が約5,000g/mol〜約10,000g/molの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
ポリエーテルが非イオン性である、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
ポリエーテルが解凍前に凍結保存細胞に添加される、請求項1〜29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
ポリエーテルが解凍直前に凍結保存細胞に添加される、請求項1〜29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
ポリエーテルが解凍開始後に凍結保存細胞に添加される、請求項1〜29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
ポリエーテルの濃度が約1mg/ml〜約10mg/mlの範囲である、請求項1〜32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
ポリエーテルの濃度が約10mg/ml〜約20mg/mlの範囲である、請求項1〜32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
ポリエーテルの濃度が約20mg/ml〜約50mg/mlの範囲である、請求項1〜32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
凍結保存細胞が約1ml以下の容積を占める組成物中に存在する、請求項1〜35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
凍結保存細胞が約1ml〜約100mlの容積を占める組成物中に存在する、請求項1〜35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
凍結保存細胞が約100ml〜約500mlの容積を占める組成物中に存在する、請求項1〜35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
凍結保存細胞が約500ml〜約1Lの容積を占める組成物中に存在する、請求項1〜35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
解凍工程が、約−205℃〜約−195℃の範囲の温度の貯蔵庫から凍結保存細胞を獲得することを含む、請求項1〜39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
解凍工程が、約−80℃〜約−60℃の範囲の温度の貯蔵庫から凍結保存細胞を獲得することを含む、請求項1〜39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
解凍工程が、約0℃未満の温度で貯蔵庫から凍結保存細胞を獲得することを含む、請求項1〜39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
解凍工程が、凍結保存細胞を約15℃〜約40℃の範囲の温度で培養することを含む、請求項1〜42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
解凍工程が、凍結保存細胞を約30℃〜約45℃の範囲の温度で培養することを含む、請求項1〜42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
解凍工程が約1分以内に完了する、請求項1〜44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
解凍工程が約1分〜約5分の範囲内に完了する、請求項1〜44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
解凍工程が約5分〜約10分の範囲内に完了する、請求項1〜44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
解凍工程が約10分〜約30分の範囲内に完了する、請求項1〜44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
解凍工程が、約1℃/分〜約5℃/分の範囲の速度で凍結保存細胞を暖めることを含む、請求項1〜48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
解凍工程が、約5℃/分〜約25℃/分の範囲の速度で凍結保存細胞を暖めることを含む、請求項1〜48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
解凍工程が、約25℃/分〜約50℃/分の範囲の速度で凍結保存細胞を暖めることを含む、請求項1〜48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
解凍工程が、約50℃/分〜約100℃/分の範囲の速度で凍結保存細胞を暖めることを含む、請求項1〜48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
細胞を洗浄することをさらに含む、請求項1〜52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
洗浄工程が1〜5回繰り返される、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、グリセロール、プロピレン、グリコール、トレハロース、デキストロース、スクロース、グルコース、マルトースおよび血清からなる群から選択される1つまたは2つ以上の剤の存在下で細胞が凍結保存される、請求項1〜52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
凍結保存細胞が、臍帯血細胞、幹細胞、胚幹細胞、成人幹細胞、前駆細胞、自己細胞、同種移植細胞、異種移植細胞,および遺伝子操作された細胞からなる群から選択される、請求項1〜55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
凍結保存細胞が、結合、神経、筋肉、および上皮からなる群から選択される組織の細胞である、請求項1〜55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
結合組織が脂肪組織である、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
凍結保存細胞が、間葉、外胚葉、または内胚葉起源の細胞である、請求項1〜55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
凍結保存細胞が、リンパ細胞、B細胞、T細胞、細胞傷害性T細胞、ナチュラルキラーT細胞、制御性T細胞、ヘルパーT細胞、骨髄細胞、顆粒球、好塩基球、好酸球、好中球、過分葉好中球、単球、マクロファージ、網状赤血球、血小板(platelet)、マスト細胞、血小板(thrombocytes)、巨核球、樹状細胞、甲状腺細胞、甲状腺上皮細胞、傍濾胞細胞、副甲状腺細胞、副甲状腺主細胞、好酸性細胞、副腎細胞、クロム親和性細胞、松果体細胞、松果体細胞(pinealocytes)、膠細胞、膠芽細胞、星状細胞、乏突起膠細胞、小膠細胞、巨細胞性神経分泌細胞、星細胞、ベッチャー細胞;脳下垂体細胞、ゴナドトロピン産生細胞、副腎皮質刺激因子、甲状腺刺激ホルモン産生細胞、成長ホルモン産生細胞、乳腺刺激ホルモン分泌細胞、肺胞上皮細胞、I型肺胞上皮細胞、II型肺胞上皮細胞、クララ細胞;杯状細胞、肺胞マクロファージ、心筋細胞、周皮細胞、胃細胞、胃主細胞、壁細胞、杯状細胞、パネート細胞、G細胞、D細胞、ECL細胞、I細胞、K細胞、S細胞、腸内分泌細胞、腸クロマフィン細胞、APUD細胞、肝臓細胞、肝細胞、クッパー細胞、骨細胞(bone cells)、骨芽細胞、骨細胞(osteocytes)、破骨細胞、象牙芽細胞、セメント芽細胞、エナメル芽細胞、軟骨細胞(cartilage cells)、軟骨芽細胞、軟骨細胞(chondrocytes)、皮膚細胞、毛細胞、毛胞、ケラチノサイト、メラノサイト、母斑細胞母斑、筋肉細胞、筋細胞、筋芽細胞、筋管、含脂肪細胞、線維芽細胞、腱細胞、足細胞、糸球体近接細胞、糸球体内メサンギウム細胞、糸球体外メサンギウム細胞、腎細胞、腎細胞、緻密斑細胞、精子、セルトリ細胞、ライディッヒ細胞、卵母細胞、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1〜55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
凍結保存細胞の容器にポリエーテルを添加することをさらに含む、請求項1〜60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
凍結保存細胞の容器にポリエーテルの溶液を添加することをさらに含む、請求項1〜61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
細胞を処理する方法であって、
細胞を凍結保存すること、および
ポリエーテルの存在下で凍結保存細胞を解凍すること
を含む、前記方法。
【請求項64】
対象に細胞を移植する方法であって、
ポリエーテルの存在下で凍結保存細胞を解凍すること、および
解凍された細胞を対象へ移植すること
を含む、前記方法。
【請求項65】
ドナーから細胞を獲得することをさらに含む、請求項64に記載の方法であって、ドナーは移植レシピエントではない、前記方法。
【請求項66】
対象から細胞を獲得することをさらに含む、請求項64に記載の方法。
【請求項67】
移植前に細胞を膨張させることをさらに含む、請求項64または65に記載の方法。
【請求項68】
細胞が脂肪組織からである、請求項64〜67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
細胞が、対象に脂肪吸入を実行することにより獲得される、請求項64〜68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
細胞が幹細胞である、請求項64〜69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
細胞における多能性を誘発する幹細胞関連遺伝子で細胞を形質転換することをさらに含む、請求項64〜69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
幹細胞関連遺伝子が、Oct3、Oct4、Sox1、Sox2、Sox3、Sox15、Klf1、Klf2、Klf4、Klf5、Nanog、Lin28、C−Myc、L−Myc、およびN−Mycからなる群から選択される、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
対象が哺乳類である、請求項64〜72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
対象がヒトである、請求項64〜73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
凍結保存細胞の生存率を向上させる方法であって、
凍結保護剤の存在下で細胞を凍結すること;および
ポリエーテルの存在下で凍結保存細胞を解凍すること
を含む、前記方法。
【請求項76】
凍結保護剤がポリエーテルである、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
凍結保護剤がP188である、請求項75に記載の方法。
【請求項78】
細胞を洗浄する工程をさらに含む、請求項75〜77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
細胞を対象に移植する工程をさらに含む、請求項75〜78のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−533620(P2012−533620A)
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−521613(P2012−521613)
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【国際出願番号】PCT/US2010/002033
【国際公開番号】WO2011/011055
【国際公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(506321023)ザ ジェネラル ホスピタル コーポレーション ディー/ビー/エイ マサチューセッツ ジェネラル ホスピタル (3)
【Fターム(参考)】