説明

凍結除草方法及び除草スプレー

【目的】農薬や化学除草剤を用いることなく、極めて効果的に且つ簡易に除草できる安全性の極めて高い凍結除草方法及び除草スプレーを提供する。
【構成】田畑に代表される農耕地や家庭菜園、或いは、庭、学校、ゴルフ場、公園、鉄道線路、法面等の非農耕地等に植生している雑草等の除草対象植物を農薬を用いることなく凍結させることで除草する凍結除草方法であって、
携帯可能なスプレー缶に、(1)噴射ガス、又は(2)噴射ガスと共に冷却剤を混入してあるスプレーを用い、対象植物に前記冷却剤を噴射し、凍結させることを特徴とする凍結除草方法及び除草スプレーである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は凍結除草方法及び除草スプレーに関し、詳しくは雑草等の除草対象植物を凍結処理することで除草する方法、及び除草に用いる除草スプレーに関する。
【背景技術】
【0002】
田畑に代表される農耕地や家庭菜園、或いは、庭、学校、ゴルフ場、公園、鉄道線路、法面等の非農耕地において雑草の除去(除草)は、煩雑であるだけでなく大変な労力を伴うものである。
【0003】
除草を怠ることにより、農耕地においては各種農作物の収穫量に悪影響を与え、非農耕地においては景観や施設への悪影響等が生じる問題が発生する。
【0004】
除草は通常、農耕地においては農薬の散布、非農耕地においては化学除草剤の散布により行われているが、農薬や化学除草剤は人を含めた生物種への悪影響が多い。
【0005】
従って、農薬や化学除草剤等の化学的な成分を用いない除草方法が種々模索され、提案されている(例えば、特許文献1等参照)。
【0006】
特許文献1に記載の技術は、雑草に対して病原性を示す微生物を用いることで、化学除草剤の使用を抑制することができるものである。
【0007】
しかし特許文献1の技術では、病原性を示す雑草が極限られた特定の雑草のみであり、他の種類の雑草に対しては効果が無いか、有ったとしても効果が弱く、効果的な除草を行うためには化学除草剤の併用が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3184967号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明の課題は、農薬や化学除草剤を用いることなく、極めて効果的に且つ簡易に除草できる安全性の極めて高い凍結除草方法及び除草スプレーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明は下記構成を有する。
【0011】
1.農薬を用いることなく対象植物を凍結させる凍結除草方法であって、
携帯可能なスプレー缶に、(1)噴射ガス、又は(2)噴射ガスと共に冷却剤を混入してあるスプレーを用い、対象植物に前記冷却剤を噴射し、凍結させることを特徴とする凍結除草方法。
【0012】
2.前記冷却剤がエチルアルコールを主成分とし、噴射ガスがLPガスを主成分とする構成であることを特徴とする上記1に記載の凍結除草方法。
【0013】
3.前記冷却剤がエチルアルコールを主成分とし、噴射ガスがジメチルエーテルを主成分とする構成であることを特徴とする上記1に記載の凍結除草方法。
【0014】
4.前記冷却剤が水を含む構成であることを特徴とする上記3に記載の凍結除草方法。
【0015】
5.前記冷却剤:前記噴射ガスが5〜20質量%:80〜95質量%であり、前記冷却剤がエチルアルコール30〜70質量%:水30〜70質量%であることを特徴とする上記4に記載の凍結除草方法。
【0016】
6.前記噴射ガスが、(1)LPガス、(2)ジメチルエーテル、(3)フロン、(4)代替フロンから選ばれる1つ、又は前記(1)〜(4)の少なくとも2つ以上から成る混合ガスであることを特徴とする上記1に記載の凍結除草方法。
【0017】
7.冷却温度が−40℃以下であることを特徴とする上記1〜6のいずれかに記載の凍結除草方法。
【0018】
8.(1)噴射ガス、又は(2)噴射ガスと共に冷却剤が混入されているスプレー缶であり、除草対象植物に対して前記冷却剤を噴射可能な噴射部を有する構成であることを特徴とする除草スプレー。
【0019】
9.前記冷却剤がエチルアルコールを主成分とし、噴射ガスがLPガスを主成分とする構成であることを特徴とする上記8に記載の除草スプレー。
【0020】
10.前記冷却剤がエチルアルコールを主成分とし、噴射ガスがジメチルエーテルを主成分とする構成であることを特徴とする上記8に記載の除草スプレー。
【0021】
11.前記冷却剤が水を含む構成であることを特徴とする上記10に記載の除草スプレー。
【0022】
12.前記冷却剤:前記噴射ガスが5〜20質量%:80〜95質量%であり、前記冷却剤がエチルアルコール30〜70質量%:水30〜70質量%であることを特徴とする上記11に記載の除草スプレー。
【0023】
13.前記噴射ガスが、(1)LPガス、(2)ジメチルエーテル、(3)フロン、(4)代替フロンから選ばれる1つ、又は前記(1)〜(4)の少なくとも2つ以上から成る混合ガスであることを特徴とする上記8に記載の除草スプレー。
【0024】
14.前記冷却剤が、冷却温度氷点下(零下)、好ましくは−10℃以下であることを特徴とする上記8〜13のいずれかに記載の除草スプレー。
【発明の効果】
【0025】
請求項1又は8に示す発明によれば、農薬や化学除草剤を用いることなく、極めて効果的に且つ簡易に除草できる安全性の極めて高い凍結除草方法又は除草スプレーを提供することができる。
【0026】
特に、対象植物の根元部分に効果的に冷却剤を噴射することができるため、対象植物の生育を根本的に停止させて凍死させることで極めて効果的に且つ簡易に除草が可能である。しかも除草に際しては、農薬を用いる必要が無いので極めて安全性が高い。
【0027】
請求項2又は9に示す発明によれば、対象植物の被冷却箇所を−40℃以下とすることができるので除草効果が極めて高い。
【0028】
請求項3又は10に示す発明によれば、噴射ガス成分として水と相溶性が高いジメチルエーテルを用いることができるので、冷却材に水を混合することで冷却温度を−45℃以下まで更に下げることができと共に揮発性が低下するので冷却効果が長く持続して除草効果をより高めることができる。更に水の分量によっては、スプレー缶としてアルミ缶に比べて低コストのスチール缶を用いることができる。
【0029】
請求項4又は11に示す発明によれば、冷却温度を−45℃以下まで更に下げることができ、除草効果をより高めることができる。
【0030】
請求項5又は12に示す発明によれば、水の分量を増やすことで揮発性を低めて冷却効果の持続時間を長くすることができる。
【0031】
請求項6又は13に示す発明によれば、噴射スプレー用の一般的な噴射ガスを用いることができるので製造が極めて容易である。
【0032】
請求項7又は14に示す発明によれば、雑草の根等を氷点下(零下)、好ましくは−10℃以下に下げることで生育を停止させて凍死させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る凍結除草方法及び除草スプレーの利用法の一実施例を示す概略説明図
【発明を実施するための形態】
【0034】
次に、本発明を詳細に説明する。
【0035】
本発明に係る凍結除草方法及び除草スプレーは、農薬や化学除草剤等の人体に対して悪影響のある化学的な成分を用いることなく、雑草等の除草対象植物を凍結処理することで極めて効果的に且つ簡易に除草することができるものである。
る除草スプレーに関する。
【0036】
本発明に係る凍結除草方法及び除草スプレーは、農薬を用いることなく対象植物を凍結させることで除草することを特徴とし、携帯可能なスプレー缶に、(1)噴射ガス、又は(2)噴射ガスと共に冷却剤を混入してあるスプレーを用い、対象植物への噴射によって冷却作用により凍結させることで除草対象植物である雑草の生育を停止させて凍死させ除草するものである。
【0037】
前記冷却剤としては、この種のスプレー缶に充填されて噴射することで冷却作用を示す液状物質であれば公知公用の冷却剤を特別の制限無く用いることができ、例えば、メタノール、エタノール(エチルアルコール)、イソプロパノール等の低級アルコール、プロパン、ブタン、ペンタン、イソペンタン等の飽和炭化水素、液体窒素、その他、ポリエチレングリコール等の冷却効果が知られているものを挙げることができ、好ましくはエチルアルコール、又はエチルアルコールを主成分とするものである。
【0038】
本発明に用いられる噴射ガスは、気化に際し冷却作用を示す液化ガスが好ましく、エアゾール容器やスプレー缶に用いられる公知公用の噴射ガスを特別の制限無く用いることができ、例えば、LPガス、ジメチルエーテル、塩素を含まないフロン、代替フロン(HFC−152a、HFC−134a、HFO−1234yf、HFO−1234ze)、液化二酸化炭素、これらの混合ガス等を挙げることができ、好ましくはLPガス、ジメチルエーテル、又はこれらを主成分とするものである。
【0039】
噴射ガスとして、ジメチルエーテル、又はジメチルエーテルを主成分とするものを用いた場合、冷却剤に水を付加することができるため、LPガスを用いた場合には−40℃以下程度であった冷却温度を−45℃以下まで下げることができ、更には水無しに比べて揮発性を低くすることができるので冷却効果の持続時間を長くすることができる。冷却剤に水を加えた場合、水の分量によってはアルミ缶に比して低コストであるスチール缶を用いることができる。
【0040】
本発明において最も好ましい配合としては、前記噴射ガスがジメチルエーテルを主成分とし、前記冷却剤がエチルアルコール及び水を主成分とするものとし、冷却剤:噴射ガスが5〜20質量%:80〜95質量%であり、前記冷却剤がエチルアルコール30〜70質量%:水30〜70質量%である。特に、冷却剤に含まれる水を50質量%以下、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下とすることでスチール缶を用いることができる。
【0041】
以上説明した除草スプレーを用いて除草を行うには、図1に示すように除草スプレー1を対象植物である雑草2の根元部分に向けて冷却剤を噴射する。噴射時間としては1〜30秒程度、好ましくは3〜10秒程度である。
【0042】
冷却剤を噴射することで雑草の生育を停止させて凍死させることで効果的な除草を行うには、生育の基盤である根部分を凍結させることが極めて有効であるため、冷却剤の噴射に際しては根元部分に向けて噴射することが好ましい。
【0043】
本発明の凍結除草方法及び除草スプレーによれば、雑草の種類にかかわらず、農薬を用いることなく極めて効果的且つ容易に除草を行うことができる。
【0044】
尚、本発明は、冷却剤を噴射ガスと組合せることが特に好ましいが、対象植物の種類によっては、噴射ガスだけであっても除草効果を得ることができる。即ち、噴射ガスだけであっても、液化ガスの気化に際し冷却作用を示し、本発明の効果を得ることができるが、冷却剤を組合せることで、冷却温度を下げたり、冷却時間を持続させることができ、除草効果が格段に向上する。
【実施例】
【0045】
以下、本発明について実験例に基づき更に説明する。
【0046】
実施例1
下記配合の試料1を作成し、アルミスプレー缶に充填した。
冷却剤=水:70質量%、エチルアルコール:30質量%
噴射ガス=ジメチルエーテル
噴射ガス:90質量%、冷却剤10質量%
【0047】
上記試料1を用いて、オオバコ、セイタカアワダチソウ、ハキダメギクの各々について、その根元部分に向けて冷却剤を15秒間噴射した。
【0048】
噴射して3日後、冷却剤を噴射したオオバコ、セイタカアワダチソウ、ハキダメギクの各々について観察したところ萎れ始めていることが確認された。
【0049】
噴射して7日後に同様に観察したところ、噴射したものの大部分(目視確認で90%程度)が枯れ始めていることが確認された。
【0050】
噴射して15日後に同様に観察したところ、噴射したものの大部分(目視確認で90%程度)が枯れていることが確認された。
【0051】
実施例2
下記配合の試料2を作成した。尚、試料2についてはスチールスプレー缶に充填した。
冷却剤=水:30質量%、エチルアルコール:70質量%
噴射ガス=ジメチルエーテル
噴射ガス:90質量%、冷却剤10質量%
【0052】
上記試料2を用いて、オオバコ、セイタカアワダチソウ、ハキダメギクの各々について、その根元部分に向けて冷却剤を15秒間噴射した。
【0053】
噴射して3日後、冷却剤を噴射したオオバコ、セイタカアワダチソウ、ハキダメギクの各々について観察したところ萎れ始めていることが確認された。
【0054】
噴射して7日後に同様に観察したところ、噴射したものの大部分(目視確認で95%程度)が枯れ始めていることが確認された。
【0055】
噴射して15日後に同様に観察したところ、噴射したものの大部分(目視確認で95%程度)が枯れていることが確認された。
【0056】
上記試料2を充填したスチールスプレー缶は、使用済みと未使用の双方において3ヵ月後もサビの発生は無く充填缶への影響も無いことが判った。
【符号の説明】
【0057】
1 除草スプレー
2 雑草

【特許請求の範囲】
【請求項1】
農薬を用いることなく対象植物を凍結させる凍結除草方法であって、
携帯可能なスプレー缶に、(1)噴射ガス、又は(2)噴射ガスと共に冷却剤を混入してあるスプレーを用い、対象植物に前記冷却剤を噴射し、凍結させることを特徴とする凍結除草方法。
【請求項2】
前記冷却剤がエチルアルコールを主成分とし、噴射ガスがLPガスを主成分とする構成であることを特徴とする請求項1に記載の凍結除草方法。
【請求項3】
前記冷却剤がエチルアルコールを主成分とし、噴射ガスがジメチルエーテルを主成分とする構成であることを特徴とする請求項1に記載の凍結除草方法。
【請求項4】
前記冷却剤が水を含む構成であることを特徴とする請求項3に記載の凍結除草方法。
【請求項5】
前記冷却剤:前記噴射ガスが5〜20質量%:80〜95質量%であり、前記冷却剤がエチルアルコール30〜70質量%:水30〜70質量%であることを特徴とする請求項4に記載の凍結除草方法。
【請求項6】
前記噴射ガスが、(1)LPガス、(2)ジメチルエーテル、(3)フロン、(4)代替フロンから選ばれる1つ、又は前記(1)〜(4)の少なくとも2つ以上から成る混合ガスであることを特徴とする請求項1に記載の凍結除草方法。
【請求項7】
冷却温度が−40℃以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の凍結除草方法。
【請求項8】
(1)噴射ガス、又は(2)噴射ガスと共に冷却剤が混入されているスプレー缶であり、除草対象植物に対して前記冷却剤を噴射可能な噴射部を有する構成であることを特徴とする除草スプレー。
【請求項9】
前記冷却剤がエチルアルコールを主成分とし、噴射ガスがLPガスを主成分とする構成であることを特徴とする請求項8に記載の除草スプレー。
【請求項10】
前記冷却剤がエチルアルコールを主成分とし、噴射ガスがジメチルエーテルを主成分とする構成であることを特徴とする請求項8に記載の除草スプレー。
【請求項11】
前記冷却剤が水を含む構成であることを特徴とする請求項10に記載の除草スプレー。
【請求項12】
前記冷却剤:前記噴射ガスが5〜20質量%:80〜95質量%であり、前記冷却剤がエチルアルコール30〜70質量%:水30〜70質量%であることを特徴とする請求項11に記載の除草スプレー。
【請求項13】
前記噴射ガスが、(1)LPガス、(2)ジメチルエーテル、(3)フロン、(4)代替フロンから選ばれる1つ、又は前記(1)〜(4)の少なくとも2つ以上から成る混合ガスであることを特徴とする請求項8に記載の除草スプレー。
【請求項14】
前記冷却剤が、冷却温度氷点下(零下)、好ましくは−10℃以下であることを特徴とする請求項8〜13のいずれかに記載の除草スプレー。

【図1】
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【公開番号】特開2012−148996(P2012−148996A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−7703(P2011−7703)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【出願人】(507270300)株式会社びーんず研究所 (9)
【Fターム(参考)】