説明

凝固剤および蛍光増白剤を使用する製紙法

紙またはボール紙の製紙方法であって、製紙パルプに、好ましくは置換度が0.045を超える少なくとも一種の荷電澱粉と、少なくとも一種の蛍光増白剤とを導入するステップ、そして次にそのパルプを紙またはボール紙に形成するステップを含む方法について記載する。本発明は、さらに、蛍光増白剤の性能を改善する方法について記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国特許法119条に基づき、2006年1月25日に出願された先の(特許文献1)の利益を主張し、その全体は参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、製紙法、およびこうした方法から作製された製品に関する。より詳しくは、本発明は、陽イオンに荷電した澱粉など、一種以上の荷電澱粉、および一種または複数の蛍光増白剤で製紙パルプを処理することに関する。
【背景技術】
【0003】
通常、ある種の製紙法では、紙またはボール紙の白色度を高めまたは改善し、かつ/または紙蛍光強度を高めまたは改善するために、蛍光増白剤(optical brightener)もしくは蛍光増白剤(OBA:optical brightening agent)、および蛍光漂白剤(FWA:fluorescent whitening agent)を使用する。OBA/FWA製品は、他の添加物と共にサイズプレス時に加えてよい。製紙工程のウェットエンドで、他のある種のOBA/FWAも加えてよい。任意の供給源からのOBAが、製紙機および最終的な紙に及ぼす影響を消光せず、または鈍化させないことはもちろん、破断物(再生紙を含む)中に存在するOBAまたはOBAのウェットエンドでの添加から存在しようが、存在しまいが、本発明は、部分的に、OBA/FWAの、歩留りおよび/または効率を高めることに関する。多くの消費者は、白色度の高い紙を好み、通常、紙製品の消費者にとって重要な一つのパラメーターとして、紙の白色度を増加させている。紙の白色度、特に白色度が高い紙の白色度、例えば80%超を達成するために、製紙工程中に一種または複数の蛍光増白剤(optical brightener)または蛍光増白剤(optical brightening agent)を添加する。これらの蛍光増白剤は非常に高価なこともあり、紙製品の全体的費用を押し上げる。これは、紙を購入する任意の消費者なら誰でも経験し得る。例えば、白色度が96%の紙と白色度が80%の紙との間には著しいコスト差がありうる。
【0004】
一般的には、蛍光増白剤は製紙工程中、ウェットエンド工程、またはサイズプレス、または両ウェットエンドとサイズプレスに添加する。典型的な製紙工程では、望ましいパルプの特性、紙の特性、ならびに製紙機保持率および稼働率を得るために、製紙工程中、さらに凝固剤および凝集剤を使用する。一般的には、凝固剤は、系の荷電を中和し、パルプ繊維、微粒子、填料、および機能性添加物をシート中に保持しながら、それらが静電気的に凝固するのを助けて、より均一な紙製品を形成する。従来の凝固剤には、ポリアミノアミドグリコール、ポリエチレンイミン、ポリアミン、ポリダドマク(polydadmac)、ミョウバン、およびポリ塩化アルミニウムが含まれる。凝固剤は、適切な特性を有する紙を生成するのに必要であるが、遺憾ながらこれら凝固剤の多くは、先に加える蛍光増白剤にマイナスの形で影響を及ぼす。特に、従来の凝固剤は、蛍光増白剤の作用を鈍化し、それによって紙ISO白色度を低下し、かつ/または紙蛍光強度を低下させうる。その結果、製紙業者は、従来の凝固剤の使用によって生じるこの鈍化を補うために、通常、特に製紙機装置のウェットエンドで蛍光増白剤をより多く添加してきた。
【0005】
凝固剤はまた、通常、製紙工程のウェットエンド段階で、濃紙料または薄紙料供給位置に加える。
【特許文献1】米国仮特許出願第60/761,913号
【特許文献2】米国特許第5,873,913号
【特許文献3】米国特許第6,723,846号
【特許文献4】米国特許第4,025,507号
【特許文献5】米国特許第6,464,832号
【特許文献6】米国公開特許出願第2004/0077515号
【特許文献7】米国公開特許出願第2004/0074021号
【特許文献8】米国特許第5,356,800号
【特許文献9】米国特許出願第09/031,830号
【特許文献10】国際公開公報WO第99/43780号
【特許文献11】国際公開出願WO第99/43780号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、従来の凝固剤によって生じるこの鈍化効果を回避する新規な製紙法が必要とされている。さらに、製紙工程中の凝固剤の使用を代償する追加量の蛍光増白剤を与えなくてもよい、蛍光増白剤の使用を可能にする方法を開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の特徴は、好ましくは蛍光増白剤の効果を鈍化しない、紙またはボール紙の作製方法を提供することである。
【0008】
本発明の別の特徴は、蛍光増白剤の量を減少でき、かつさらに紙またはボール紙で満足できる白色度および/または紙蛍光強度を達成する方法を提供することである。
【0009】
本発明の追加の特徴および利点は、以下の記述に部分的に述べられ、その記述から部分的に明らかになり、または本発明を実施することによって理解されよう。本発明の目的および他の利点は、特に記述および添付の特許請求の範囲に指摘した、成分および組合せによって実現し達成されるであろう。
【0010】
これらの利点や他の利点を実現するために、そして本発明の目的に従って、本明細書に例示し概略するように、本発明は、紙またはボール紙の作製方法であって、(好ましくは置換度が0.045を超える)少なくとも一種のイオン的に荷電した澱粉と、少なくとも一種の蛍光増白剤とを製紙パルプに導入して、処理パルプを形成するステップを含む方法に関する。次いで、処理パルプを紙またはボール紙製品に形成することができる。イオン的に荷電した澱粉と蛍光増白剤は、任意の順序で加えることができる。例えば、薄紙料に澱粉を加え、濃紙料に蛍光増白剤を加え、薄紙料、濃紙料、または両紙料にOBAを加え、かつ/または薄紙料、濃紙料、または両紙料に澱粉を加えることができる。
【0011】
本発明は、さらに、蛍光増白剤の性能を改善する方法であって、少なくとも一種のイオン的に荷電した澱粉(好ましくは置換度が0.045を超える)と、少なくとも一種の蛍光増白剤とを使用し、製紙パルプにこれらの成分を加えて処理パルプを形成する工程、そして次に該処理パルプを紙またはボール紙に形成する工程による方法に関する。
【0012】
本発明は、さらに、本発明の方法の一つ以上によって得られる紙またはボール紙に関する。
【0013】
上記の一般的記述および以下の「発明を実施するための最良の形態」は、単に例示的かつ説明的なものにすぎず、特許請求する本発明をさらに説明することを意図したものであることは理解されよう。
【0014】
本出願に援用され、その一部を構成する添付の図面は、記述と一緒になって本発明のいくつかの実施形態を例示し、本発明の少なくとも一種の理念を説明するのに役立つ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、製紙工程またはボール紙作製工程中に、一種以上の蛍光増白剤を使用する、紙またはボール紙の製造方法を提供する。本発明において、製紙パルプは、紙またはボール紙製品に作製することができるパルプをさす。
【0016】
本発明では、製紙パルプに、少なくとも一種の蛍光増白剤と共に、一種または複数のイオン的に荷電した澱粉、例えば、陽イオン性澱粉または好ましくは置換度が0.045を超える澱粉を加える。本発明によれば、パルプに、別々に、または任意の組合せで、イオン的に荷電した澱粉を加えることができる。同じ工程によって作製されているが、置換度が0.045を超え、そして製紙機装置のウェットエンドに加えられた陽イオン性澱粉が存在しない同じ紙およびボール紙と比べて、本発明の方法によって作製された紙およびボール紙製品は、高い紙白色度および/または紙蛍光強度を示すのが好ましい。
【0017】
本発明では、イオン的に荷電した澱粉と蛍光増白剤は、製紙パルプに順次補給するなど、任意の導入順序で加えることができる。蛍光増白剤と澱粉は、製紙工程のサイズプレス段階前に両成分を加える限り、製紙工程の同じ段階で加えることができ、あるいは製紙工程の異なる段階で加えることもできる。例えば、パルプにその2種の成分を、互いに50分間以内に、互いに40分間以内に、互いに20分間以内に、互いに10分間以内に、または互いに5分間以内に、または互いに2分間以内に、または互いに1分間以内に、または互いに数秒以内であっても加えることができる。
【0018】
記載した澱粉は、好ましくは置換度が0.045を超える、陽イオンに荷電した澱粉または陽イオン性澱粉であることが好ましいイオン的に荷電した澱粉である。澱粉の荷電状態は、澱粉の全体正味電荷をさす。2種またはそれ以上の陽イオン性澱粉など、2種またはそれ以上の荷電澱粉を使用することができる。2種またはそれ以上の澱粉を使用する場合、澱粉を予めブレンドした組成物として加えることができ、あるいは単独でまたは一種もしくは複数の蛍光増白剤を組み合わせて、それらをパルプに同時に、順次、または任意の順序で加えることができる。2種またはそれ以上の澱粉を使用する場合、澱粉の1種は中性澱粉であってよい。好ましくは、荷電澱粉の少なくとも一種の置換度は、約0.045〜約0.5、例えば、約0.07〜約0.45、または約0.10〜約0.40、または約0.15〜約0.4の範囲にある。これらの範囲を超える他の置換度、および下回る他の置換度も使用することができる。一般的には、0.045を超える置換度が好ましく、そして使用することができる。置換度は0.4を超えてよく、高い置換度は本発明に利益をもたらす。好ましい陽イオン性澱粉には、それだけには限らないが、ジャガイモ澱粉、コーンスターチ、および他のウェットエンド澱粉、またはそれらの組合せが含まれる。本発明で使用できる陽イオン性澱粉の特定の例には、それだけには限らないが、BUFLOC 5521およびBUFLOC 5567製品が含まれ、どちらも、Buckman Laboratories International, Inc., Memphis, Tennesseeから購入できる。他の例には、それだけには限らないが、Raifix,Raisiobond、および当業界に供給されているCIBA社製品が含まれる。
【0019】
蛍光増白剤に関しては、一種以上の、例えば2種以上の、または3種以上の蛍光増白剤を使用することができる。本発明において、蛍光増白剤(optical brightening agent)は蛍光増白剤(fluorescent whitening agent)を含む。本発明において、蛍光増白剤は、一般的には、紙繊維の視認可能な白さ (whiteness) または白色度 (brightness)を純化しかつ/または増大するために使用される化学薬品である。蛍光増白剤(optical brightening agent)は、蛍光漂白剤(optical whitening agent)であってもよく、水溶性染料を含んでもよい。蛍光漂白剤は、日光からの不可視UV光を吸収し、可視領域で再発光する蛍光染料であってよく、それによって紙で優れた白さを備えて白色度を高める。澱粉と同様に、2種またはそれ以上の蛍光増白剤を使用する場合、それらを予備ブレンドとして、順次、または任意の順序でパルプに加えることができる。蛍光増白剤の一般的種類には、スチルベン、スチルベン誘導体、ジスチリルビフェニル、トリアジニルアミノスチルベンなどが含まれる。本発明において、蛍光増白剤は着色剤を含む。OBAの例には、スチルベンジスルホネート、スチルベンテトラスルホネート、スチルベンヘキサスルホネート、4,4'ジアミノスチレン、2,2'ジスルホン酸、またはスチルベン誘導体が含まれる。(特許文献2)、(特許文献3)、(特許文献4)、(特許文献5)、および(特許文献6)、(特許文献7)に記載されているOBAを使用することができ、それら全体は参照により本明細書に援用される。具体的蛍光増白剤の例には、それだけには限らないが、Blankophor、Leucophor、Tinopal、Catowhite OWA等級、Unipal、Palinil Brilliant White、Uvitex、Milkawhite、Fluolite、Kalbrite、OBA−CおよびWが含まれる。
【0020】
陽イオン性澱粉など、イオン的に荷電した澱粉の好ましい量は、紙ISO白色度および/または紙蛍光強度に関する改善など、蛍光増白剤の性能を改善するのに有効な任意の量であってよい。別法として、またはこの特性の改善と組み合せて、陽イオン性澱粉など、イオン性澱粉は、乾燥固体分基準で乾燥パルプ1トン当たり約0.25〜約25ポンドの量で、または乾燥固体分基準で乾燥パルプ1トン当たり約1.0ポンド〜20ポンドの量で、より好ましくは乾燥固体分基準で乾燥パルプ1トン当たり約1ポンド〜約6ポンドの量で加えることができる。蛍光増白剤に関しては、乾燥パルプ1トン当たり約1ポンド〜約50ポンドなど、従来の量で使用し、より好ましくは乾燥固体分基準で乾燥パルプ1トン当たり約2.0〜約10.0ポンドで使用する。
【0021】
この工程に関しては、この工程は、上質紙または塗工もしくは非塗工上級紙、新聞用紙、特殊新聞用紙、スーパーカレンダー仕上げ(SC)紙、および軽量塗工(LWC)等級紙を作製する際に使用するのが好ましい。非塗工上級紙は自由に流出する紙料から作製される。塗工上級紙は、塗工原料紙料が一般的に機械パルプをわずか10重量%含む出版物等級紙である。スーパーカレンダー仕上げ(SC)は、交互になった冷却鉄繊維ロールを有する積層体を使用するオフマシンカレンダリング紙である。LWCは、比較的低い坪量塗工紙である。新聞用紙機械仕上げ紙は、主として、新聞を印刷するために通常使用されている機械パルプから構成される。
【0022】
好ましくは、パルプがブレンドチェストに進入する時に、またはその前に澱粉と増白剤を導入する。少なくとも本発明の一実施形態では、パルプが機械チェストに進入する時に、またはその前に、蛍光増白剤と澱粉とを加えることができる。少なくとも本発明の一実施形態では、サイズプレス前に、パルプに澱粉と蛍光増白剤とを加えることができる。澱粉と蛍光増白剤は、一般的に製紙工程の任意の位置で加えることができ、製紙工程の白水サイロ(whitewater silo)の前に加えることができ、または機械チェストの前に加えることができ、またはブレンドチェストの前に加えることができ、または第一叩解機の前もしくは後に加えることができる。
【0023】
本発明の方法は、本発明を考慮して従来の製紙機を容易に改変して実施することができる。本方法は、多くの異なる種類の製紙パルプまたはそれらの組合せを使用することができる。例えば、パルプには、バージンパルプおよび/または再生パルプ、例えば、バージン亜硫酸パルプ、破断パルプ、広葉樹クラフトパルプ、針葉樹クラフトパルプ、そのようなパルプの混合物などを含めてよい。
【0024】
パルプを処理するために酵素組成物を任意で使用することができ、セルロース分解活性を有する従来のいかなる製紙パルプ処理酵素も含みうる。これらの他の成分が澱粉または蛍光増白剤にマイナスの形で影響を及ぼさない限り、他の従来の製紙成分を存在させることもできる。好ましくは、酵素組成物は、ヘミセルロース分解活性も示す。適切な酵素および酵素含有組成物には、Jaquessへの(特許文献8)、1998年2月27日出願の(特許文献9)、および(特許文献10)に記載された組成物が含まれ、全てについて参照によりその全体を本明細書に組み込む。他の例示的な製紙パルプ処理酵素は、BUZYME(登録商標)2523およびBUZYME(登録商標)2524であり、どちらもBuckman Laboratories International, Inc., Memphis, Tenn.から購入することができる。セルロース分解性酵素組成物は、酵素を約5%〜約20重量%含むのが好ましい。好ましい酵素組成物には、さらに、ポリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリビニルピロリドン、テトラヒドロフリルアルコール、グリセリン、水、および例えば(特許文献8)に記載されている他の従来の酵素組成物添加物を含めることがきる。酵素は、パルプに任意の量で、例えばパルプの乾燥重量を基にして酵素約0.001〜約0.100重量%、例えば約0.005〜約0.05重量%で加えてよい。
【0025】
本発明の一実施形態では、酵素組成物は、少なくとも一種のポリアミドオリゴマーと少なくとも一種の酵素を含む。ポリアミドは、酵素を安定化させるのに有効な量で存在する。ポリアミドオリゴマーと酵素を含む典型的な酵素組成物は、(特許文献11)に記載されており、その全体は参照により本明細書に援用される。
【0026】
本発明によれば、酵素組成物は、2種またはそれ以上の異なる酵素の組合せを含むことができる。酵素組成物は、例えば、リパーゼとセルラーゼの組合せを含むことができ、任意で安定化剤を含んでもよい。安定化剤は、本明細書に記載したポリアミドオリゴマーであってよい。
【0027】
工程中いつでも微小粒子添加物をパルプに加えてよい。微小粒子添加物は、パルプの電荷またはパルプの成分の電荷を改変することができる。微小粒子添加物は、例えば、荷電剤(charging agent)または改変剤、填料、凝固剤、および/または歩留り向上剤であってよい。微小粒子添加物は、天然または合成ヘクトライト、ベントナイト、ゼオライト、アルミナゾル、シリカ、または当業者には周知の従来の粒子状添加物のいずれかであってよい。
【0028】
製紙工程中、殺生物剤の従来の使用に伴って、殺生物剤をパルプにまたは処理パルプに加えてよい。例えば、ブレンドチェスト中の前記処理パルプに殺生物剤を加えてよい。本発明による製紙パルプに有用な殺生物剤には、当業者に周知の殺生物剤、例えば、Buckman Laboratories International, Inc., Memphis, Tenn.から購入できるBUSAN(登録商標)1130が含まれる。
【0029】
図1に、本発明の方法を実施するための製紙装置のフローチャートを記載する。図示する装置は本発明の例であり、決して本発明の範囲を制限しないことは理解されよう。図1の装置では、製紙パルプの一連の流れに、それぞれ所望する濃度で澱粉の供給および蛍光増白剤(OBA)の供給がなされ、図示するようにウェット工程前端の任意の部分で処理パルプが形成される。図示するパルプの供給は、パルプの流れ、例えば、パルプ保持タンクすなわちサイロから供給されたパルプの流れを表す。図1に示すパルプの供給は、導管、保持タンク、または混合タンクであってよく、またはパルプの流れの他の容器、通路、または混合区域であってよい。澱粉またはOBAの供給は、例えば、前記処理パルプタンクの流入口に連通する排出口を有する保持タンクであってよい。
【0030】
澱粉とOBAで処理したパルプは、前記処理パルプタンクから叩解機を通り、次いでブレンドチェストを通過してよく、このブレンドチェストでは、殺生物剤を含む任意選択の添加物と処理パルプとを混合することができる。叩解機は、処理パルプタンクの排出口に連通する流入口と、ブレンドチェストの流入口に連通する排出口とを有する。
【0031】
図1の実施形態によれば、ブレンドチェストで処理されたパルプは、ブレンドチェスト排出口から機械チェスト流入口への連通を通って通過する。ブレンドチェストおよび機械チェストは、当業者には周知の従来の任意の型であってよい。機械チェストは、レベルヘッド、すなわち、装置下流部分全体にわたって、特にヘッドボックスで、処理パルプまたは紙料に確実に一定の圧力がかるようにする。
【0032】
図1の装置では、ヘッドボックスでの製紙から得られた排出パルプは白水サイロに再循環される。
【0033】
図2に示す実施形態では、ブレンドチェストでまたはスタッフボックスまでに、叩解し処理されたパルプに、陽イオン性澱粉および/またはOBAを加えるが、この装置は従来のスタッフボックスを備える。図2に図示していないが、スタッフボックスで追加の陽イオン性澱粉を加えてよい。図2の装置は、機械チェストとスタッフボックスの間に第2叩解機を備える。スタッフボックスで、ミョウバンなどのpH調整剤を含む他の添加物を加えてよい。pH調製剤は、設備を通るパルプまたは処理パルプの流れに沿う他の地点で加えることもできる。
【0034】
本発明の設備は、パルプの流れに適切な濃度のOBAを提供するための、例えば、パルプの乾燥固体重量に基づきOBA約0.05〜約2.5重量%を提供するための計量器具を備えることができる。設備は、パルプの流れに適切な量の陽イオン性澱粉、例えば、パルプの乾燥固体重量に基づき、好ましくは0.045を超える置換度を有する陽イオン性澱粉を約0.05重量%〜約1.5重量%提供するための計量器具を備えることができる。本方法中に使用しうる他方の添加物および成分用には、他の計量器具または投薬機器を準備するのが好ましい。
【0035】
上図1、2の実施形態のいずれかに従って、遠心力清浄器具などのクリーナーを例えばファンポンプとスクリーンの間に配置することができる。
【0036】
本発明は、さらに、製紙パルプに、陽イオン性澱粉など、少なくとも一種のイオン的に荷電した澱粉と、少なくとも一種の蛍光増白剤を導入して処理パルプを形成するステップ、そして次に処理パルプを紙またはボール紙に形成するステップを含む、本発明の方法の実施形態の一つを実施することによって、蛍光増白剤の性能を改善する方法に関する。好ましくは、改善される蛍光増白剤の性能には、紙ISO白色度の上昇および/または紙蛍光強度の上昇が含まれる。同量の蛍光増白剤を使用するが、サイズプレス前に、いかなる荷電澱粉も、および/またはいかなる澱粉も加えない同じ方法とこれらの上昇を比較する。
【0037】
本発明では、本発明は、蛍光増白剤の消光を回避する方法を提供し、かつ/または蛍光増白剤の使用によって達成された色彩または白色度を保持する。
【0038】
蛍光増白剤の性能の改善は、紙ISO白色度または紙蛍光強度によって測定することができ、同じOBAおよび量を用いたが、サイズプレス前にいかなる荷電澱粉も使用しない同じ方法で作製した同じ紙と比べて、およそ少なくとも5%またはそれ以上、例えば、10%またはそれ以上、または約5%〜約25%でありうる。
【0039】
本発明によって実現した上記した利益に加え、本発明は選択肢としてさらに、例えば、PCC、TiO2、クレイなどの優れた填料歩留りを達成することができる。さらに、より高い灰分歩留りが達成され、かつより高い灰分歩留りは、歩留り率を増大させる本発明の能力を考慮して、填料の使用量を減少させて達成することさえできる。また、本発明によって、ULMA欠陥検出機(ULMA defects)によって測定するものなど、シート欠陥の量を減少させることもできる。特に、例えばドライヤーの早期区画で塵取を減少させることができ、全てのカテゴリーで、孔を減少(例えば、小孔の減少、中孔の減少、小光点の減少)させることができる。さらに、本発明によって、濾水を増加することができ、それによって速度を速め、かつ/または蒸気を減少させることができる。さらに、本発明によって、本発明は、サイジング歩留りを促進でき、そしてFPRおよび/またはFPARを増大させることができる。また、本発明によって、繊維対繊維および繊維対填料の結合の改善など、強度を上げることができる。さらに、本発明によって、破断を減少し、かつ/または製紙機稼働率が改善される。また、本発明によって、繊維屑取および塵取を減少させることができる。また、本発明によって、BOD(生物学的酸素要求量)および/またはCOD(化学的酸素要求量)を減少させることができる。本発明によって、荷電澱粉を使用しない時と比べて、これらの改善の一つ以上を実現することができる。
【0040】
本発明の一つ以上の実施形態では、本発明によって、以下の特性の一つ以上を改善することができる:
(a)荷電澱粉が存在しないときと比べて、填料歩留りの上昇
(b)荷電澱粉を使用しない時と比べて、紙中のシート灰分含有率の上昇
(c)荷電澱粉が存在しないときと比べて、排水の増大
(d)荷電澱粉が存在しないときと比べて、サイジング歩留りの上昇
(e)荷電澱粉が存在しないときと比べて、破断の減少
(f)荷電澱粉が存在しないときと比べて、繊維屑取および/または塵取の減少。
【0041】
これらの特性の改善の一つ以上に関して、改善は、およそ少なくとも2%、少なくとも5%またはそれ以上、例えば、7%またはそれ以上、10%またはそれ以上、25%またはそれ以上、50%またはそれ以上、75%またはそれ以上、100%またはそれ以上、例えば、2%〜100%、5%〜75%、10%〜50%、およびこれらの範囲内の任意の範囲または値であってよく、その際、前記改善率は、同じOBAおよび量であるが、サイズプレス前にいかなる荷電澱粉も使用せずに、同じ方法で作製した同じ紙と比較する。実施例に詳述した特定の数値的改善は、他のOBA、他の荷電澱粉、および/または工程条件を意味する本発明の他の実施形態に関して、一般的に本明細書で達成することができる。
【0042】
本発明は、さらに、本発明から得られるパルプおよび紙に関する。特に、本発明は、パルプ、またはパルプを含むパルプスラリー、一種以上の蛍光増白剤、および、好ましくは置換度が0.045を超える少なくとも一種の陽イオン荷電澱粉に関する。荷電澱粉は、上記の任意の置換度を有することができる。その量は、上記の量であってよい。パルプは、さらに、他の従来成分、例えば、少なくとも一種の填料、少なくとも一種の殺生物剤、少なくとも一種の微小粒子、少なくとも一種の酵素、少なくとも一種のポリマー、他の澱粉、または任意のそれらの組合せを含むことがきる。同様に、本発明は、本発明から得られる紙またはボール紙に関する。特に、紙またはボール紙は、どんな種類の紙、例えば、上記の紙等級であってよく、紙またはボール紙には、プレスされたセルロース繊維と、好ましくは置換度が0.045を超える少なくとも荷電した澱粉と、少なくとも蛍光増白剤とが含まれる。陽イオン性澱粉など、荷電澱粉の置換度は、先に述べた様々な置換度であってよい。記載したように、紙は、上質紙または塗工紙もしくは非塗工紙であってもよい。紙は、新聞用紙、特殊新聞用紙、スーパーカレンダー仕上げ紙、または軽量塗工等級紙であってよい。パルプから作製した紙は、再生および/またはバージンパルプから作製したものであってよい。
【0043】
本発明は、本発明の例示を意図した以下の実施例によって、さらに明らかになるであろう。
【実施例1】
【0044】
実験用:この実施例で使用するパルプ懸濁液には、CSFが380mLの晒広葉樹70重量%および晒針葉樹30重量%が含まれる。使用した蛍光増白剤はTinopalであった。BFL5521およびBFL5567(Buckman Laboratories International, Inc.社製)は荷電密度が異なる陽イオン性澱粉であった。
【0045】
手漉き紙作製中、濃パルプ紙料(粘稠性2.2%)に、まずOBAを15ポンド/1トン(受取)加え、続いて陽イオン性澱粉を加えた。その後、パルプ紙料を0.4%に希釈し、標準Tappi法T205によって手漉き紙を製紙した。
【0046】
図3は、作製した手漉き紙の白色度の結果を示す。OBAを導入すると、紙ISO白色度は64.0から65.2に上昇した。BFL5521およびBFL5567の陽イオン性澱粉を7 ポンド/1トン(受取)添加すると、さらに白色度はそれぞれ65.2と66.0に上昇した。
【0047】
図4は、製紙した紙試料の蛍光像を示す。この実験では、小さい紙片を手漉き紙から切り取り蛍光灯にテープ付けする。暗室でデジタルカメラを使用し写真を撮った。見てのとおり、陽イオン性澱粉の導入によって蛍光強度が増大した(試料3および5)。さらに、陽イオン性澱粉投薬量(試料4および6)が多い試料では、より高い蛍光強度を示した。
【0048】
従って、BFL5521およびBFL5567澱粉組成物など、陽イオン性澱粉は、紙ISO白色度および紙蛍光強度(UVにより励起)を高めることによって、蛍光増白剤の性能を改善した。
【0049】
別の実験では、従来から使用している他の凝固剤、すなわちポリアミンおよびpolyDMDAACに対して、本発明の澱粉を基にした凝固剤の効果を比較した。この特定の実験では、下表に示すように、晒広葉樹70重量%および晒針葉樹30重量%のパルプから作製した手漉き紙について、蛍光および白色度を測定した。パルプは、さらに、乾燥固体分基準に基づき乾燥パルプ1トン当たり15ポンドの量で存在するOBA(Leucophor OBA)を有した。試料の一つには、凝固剤を入れなかった。他の2試料では、本発明に従って、陽イオン性澱粉が、湿潤パルプ中に、乾燥固体分基準に基づき乾燥パルプ1トン当たり4ポンドの量で存在した。これらの陽イオン性澱粉のどちらも、Buckman Laboratories Internationalから購入することができる。残りの4試料には、パルプ中に従来の凝固剤、すなわちポリアミンまたはpolyDMDAACを乾燥固体分基準に基づき乾燥パルプ1トン当たり2ポンド/1トンまたは4ポンドの量で含めた。
【0050】
下表から分かるように、OBAと陽イオン性澱粉を含む試料は、対照試料、および従来の凝固剤とさらにOBA含む試料と比べて、白色度が著しく高く蛍光度も著しく高かった。本発明が、優れた白色度および蛍光特性を提供し、陽イオン性澱粉の存在によってOBAが消光しまたは減少しないことは明らかである。
1.2g手漉き紙 pH=8.0
70%晒広葉樹 15#/ton OBA
30%晒針葉樹
【表1】

【実施例2】
【0051】
実験では、製紙機で5日間実験試行を行い、蛍光増白剤と共に陽イオン性澱粉を使用する効果を定量した。特に、BUFLOC 5567有機凝固剤を使用した。より具体的には、BUFLOC 5567凝固剤を0.5ポンド/1トンの量で出発して薄紙料段階に導入し、残りの試行用に、これを2ポンド/1トンに徐々に増加して、次いで3ポンド/1トンに増加して、次いで4ポンド/1トンに増加して導入する。次いで、試行を終了するまで、リール毎に投薬量を1ポンド/1トンずつ減少した。
【0052】
この実験から、試行中、機械での破断は、一日当たり平均2.4破断(1ヵ月平均に基づき)から一日当たり平均1.6破断に落ちることが判明した。機械での破断は、当業者に理解されている用語であり、機械で形成した紙が巻き取り前に破断しないことをさす。
【0053】
さらに、実験中、任意の用量でBUFLOC 5567凝固剤を添加したヘッドボックスの荷電に著しい影響はなかった。また、実験中、ULMA孔(紫色のみ)も著しい影響を受けなかった。
【0054】
さらに、実験中、サイズプレスの通紙(threading)は迅速で容易であると判断されたが、これはBUFLOC 5567凝固剤を使用して実現した、優れた繊維対繊維結合または優れたサイジングによるものであろう。
【0055】
さらに、実験中、歩留りが増大し、5日間の試行中でさえ、紙中の填料および他の機能性添加物の歩留りおよび分布を達成した。30日間の実験では、より高い歩留り率の上昇が見られたと思われる。
【0056】
OBAの持ち越し(蛍光増白剤の持ち越し)に関しては、BUFLOC 5567凝固剤によって、白色度と蛍光レベルが著しい影響を受けることはなかった。92明るさ等級の生成では、実験後1週間前および1週間後の平均白色度は91.8であり平均蛍光度は2.4であった。実験中の平均白色度は、約91.3であり蛍光度は約2.2であった。さらに重要なことには、蛍光増白剤の使用は著しく減少しても、上記のように平均白色度および平均蛍光度を維持した。より具体的には、実験する前、OBA使用は一面当たり約750〜950ml/mであった。しかし、BUFLOC 5567を使用する実験では、OBAで著しい減少が得られた。具体的には、光学項目に適合させる実験で使用したOBAは、約450〜550ml/minであった。これは、約500〜700ml/minの全体減少である。広葉樹レベルチェストは、約0.73ポンド/1トンで一定のまま装填することをベースとした。従って、本発明によって、OBAの量を著しく低減することができ、さらに許容されるレベルで白色度レベルと蛍光レベルを維持した。
【0057】
全体的紙質に影響を与えずに、ピッチ制御添加物を排除できたことも、ある時点で判定した。
【0058】
さらに、BUFLOC 5567凝固剤を使用した場合、塵取が著しく減少した。
【実施例3】
【0059】
この実験では、OBA効率の見地から、BUFLOC 5567凝固剤を使用する長期効果を定量するために、製紙機で45日間の実験試行を行った。具体的に、45日間、BUFLOC 5567凝固剤を2.6ポンド/1トンの量で使用した。記載のように、OBAも存在させた。実験から以下の観察を行った。
45日間の使用をBUFLOC 5567不含の104日間と比較した場合は、機械の休止時間を一日当たり13〜17分間短縮した。
第2プレス区画と第1ドライヤー区画間のドロー(draw)は、添加したBUFLOC 5567からの濾水により4〜5フィート減少した。
第一通過灰分歩留りは、BUFLOC 5567の追加使用により最小11%上昇した。
ULMA小孔は、BUFLOC 5567により、直線で1,000,000フィート当たり3.8小孔から、直線で1,000,000フィート当たり0.75小孔に減少した。
ULMA中孔は、BUFLOC 5567により、直線で1,000,000フィート当たり5.9中孔から、直線で1,000,000フィート当たり0.4中孔に減少した。
ULMA小光点は、BUFLOC 5567により、直線で1,000,000フィート当たり210小光点から、直線で1,000,000フィート当たり40小光点に減少した。
【0060】
休止時間データ
【表2】

【0061】
破断位置データ
【表3】

【0062】
BUFLOC 5567を用いて実施した評価の過程において、装置にBUFLOC 5567を導入したので、第6区画蒸気制御装置がそれを目標値に戻すまで、カウチバキューム(couch vacuum)は減少し、サイズプレスの湿度も減少するであろう。評価を行うと、これを添加した濾水によって、第2プレスと第1ドライヤー区画の間のドローは減少した。等量の叩解装填量、プレス装填量、填料装填量および同等のカウチバキュームで、2.6ポンド/TのBUFLOC 5567によってドローは4〜5フィート減少した。カウチバキュームは、BUFLOC 5567の導入により、17.78"から17.25"に減少した。サイズプレスの湿度は、第6sxn蒸気制御装置の効果まで、3.0%から2.8%に減少した。第6区画蒸気圧は、59.5psigから52.5psigに下がった。
【0063】
歩留りに対するBUFLOC 5567の効果は、総歩留りと比べて、第一通過灰分歩留り(FPAR:first pass ash retentions)でより顕著である。試行中のBUFLOC 5567の導入によって、全体的増加は第一通過歩留り(FPR:first pass retention)で2%〜5%が示された。BUFLOC 5567の導入により、FPARで11%〜20%の増加を観察した。
【0064】
92 BCP(蛍光(brightness)コピー用紙)APAM(1.15ポンド/T)、微小粒子(1.35ポンド/T)および2.850ポンド/TのBUFLOC 5567での填料使用(16%)で評価すると、FPRは7%増加し、FPARは22%増加した。
【0065】
BUFLOC 5567の使用3.0ポンド/T、APAM(0.7ポンド/T)、微小粒子(1.0 ポンド/T)および填料使用定数(15%)によって、FPRは2〜4%増加し、FPARは11〜13%を増加した。
【0066】
ファンポンプ吸引にBUFLOC 5567を導入中、表示するBUFLOC 5567が微細繊維(fines)および填料歩留りに対して効果を有することが、填料および重量読取り値から証明された。それらのそれぞれの制御装置が全てを目標値に戻すまで、導入するつどに、填料読取り値および重量は上昇したであろう。以下は、填料傾向の概要である。測定にはABBスキャナを使用した。
【0067】
BUFLOC 5567の使用中、ULMAの欠陥を減少した。上記のように灰分歩留りの改善は、欠陥を減少させるはずである。また、評価中の留意として、主区画早期のドライヤーで塵取の減少が観察された。これも、ULMA欠陥を減少させるであろう。以下は、概説する経時データの概要である。
ULMA小孔は、BUFLOC 5567により、直線で1,000,000フィート当たり3.8小孔から、直線で1,000,000フィート当たり0.75小孔に減少した。
ULMA中孔は、BUFLOC 5567により直線で1,000,000フィート当たり5.9中孔から、直線で1,000,000フィート当たり0.4中孔に減少した。
ULMA小光点は、直線で1,000,000フィート当たり210小光点から、直線で1,000,000フィート当たり40小光点に減少した。
唯一の負の傾向は、ULMA大暗点で生じた。他の欠陥カテゴリーで観察された全ての正の結果で、これが生じた理由に関しては不明である。ULMA大暗点は、直線で1,000,000フィート当たり19から44暗点に増加した。
【0068】
BUFLOC 5567の初期評価中、蛍光の7.2%増加が同じOBA使用時に観察された。これは、BUFLOC 5567がOBAの保持に役立っていることを示した。92 BCPでOBAの使用は、163 oz./Tから149 oz./Tに減少して標的蛍光に到達した。
【実施例4】
【0069】
追加の実験で、OBAを含む白水系で本発明の効果を研究した。BUFLOC 5567凝固剤を導入する前に、白色度が92の紙の基線は蛍光が2.5であり、白色度が96の紙の基線は蛍光が6.0であった。
【0070】
BUFLOC 5567凝固剤を1.5kg/tの速度で導入した場合は、92白色度等級紙の蛍光の平均3.2であり、BUFLOC 5567凝固剤を2.0kg/tの速度で導入した場合は、白色度92の紙の蛍光の平均は2.6であった。この研究では、スクリーンの吸引面上にBUFLOC 5567を導入した。
【0071】
また、白色度が96の紙に関して、OBA消費が減少して匹敵する白色度が達成された。特に、歴史的に、一面当たりOBAの量は3700〜4300ml/minであった。BUFLOC 5567凝固剤の使用中、1.5kg/tの速度で、OBAの平均は一面当たり2400ml/minの量であったが、これは、紙の白色度に大きな揺れもなく、OBAの消費で平均40%の減少であった。
【0072】
さらに、BUFLOC 5567凝固剤不含と、投薬速度1.5kg/tおよび投薬速度2.0kg/tでのBUFLOC 5567凝固剤との比較に基づき塵取研究を行った。下表にその結果を示す。
【表4】

【0073】
これらの結果から、本荷電澱粉凝固剤が、全ての等級の紙に使用して、歩留り、排水、搾水、および/または形成を改善するのと同様に、白色度および蛍光効率を改善できることは明瞭に見て取ることができる。さらに、本研究に示すように、本荷電澱粉凝固剤の使用によって、填料および他の機能性添加物の歩留りおよび分布が著しく改善される一方で、塵取、繊維屑、シート欠陥、および/または孔が減少し、かつ優れた製紙機稼働率および紙質を得ることができる。
【0074】
本出願人らは、具体的に、本開示中に引用した全ての参照文献のその内容全体を組み込む。さらに、量、濃度、または他の値、またはパラメーターが、範囲、好ましい範囲、すなわち、好ましい上の値と好ましい下の値のリストとして記載されている場合、範囲が別々に開示されているかどうかに関わらず、これは、任意の上限範囲または好ましい値と、任意の下限範囲または好ましい値との任意の対から形成される全ての範囲を具体的に開示していると理解されたい。ある範囲の数値を本明細書に再度引用した場合、特に明記しない限り、その範囲は、それらの端点、ならびに範囲内の全ての整数および端数を含むものとする。本発明の範囲は、ある範囲を定義した場合、列挙した具体的値に限定されないものとする。
【0075】
本明細書に開示した、本明細書の考察および本発明の実施から、本発明の他の実施形態は当業者に明らかであろう。本明細書および実施例は、添付の請求項の範囲およびその同等物によって示される、真の本発明の範囲と精神を単に例示したものと考えるべきものである。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の一個または複数の実施形態による製紙法を示すフローチャートである。
【図2】本発明の一個または複数の実施形態による製紙法を示すフローチャートである。
【図3】蛍光増白剤は含有するが、陽イオン性澱粉は含有しまたは含有しない、様々な手漉き紙試料を比較し、得られたISO白色度を測定した棒グラフである。
【図4】蛍光増白剤は含有するが、陽イオン性澱粉は含有しまたは含有しない、様々な手漉き紙試料の蛍光像を示す写真である。
【符号の説明】
【0077】
図1
1 パルプ
2 ブレンドチェスト
3 機械チェスト
4 白水サイロ
5 ファンポンプ
6 澱粉
7 ヘッドボックス
8 スクリーン
9 叩解機
図2
1 パルプ
2 ブレンドチェスト
3 機械チェスト
4 スタッフボックス
5 白水サイロ
6 ファンポンプ
7 澱粉
8 ヘッドボックス
9 スクリーン
10 叩解機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙またはボール紙の作製方法であって、
a)置換度が0.045を超える少なくとも一種の荷電澱粉と、
b)少なくとも一種の蛍光増白剤と
を任意の順序で、そして同時にまたは異なる時間に製紙パルプに導入して、処理パルプを形成する工程、および次に該処理パルプを紙またはボール紙に形成する工程を含む方法。
【請求項2】
前記荷電澱粉が、陽イオン性澱粉である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記荷電澱粉が、2種以上の荷電澱粉のブレンドである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも2種の荷電澱粉を導入する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記蛍光増白剤が、スチルベン化合物またはジスチリルビフェニル化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記蛍光増白剤が染料である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記荷電澱粉の置換度が、約0.01〜約0.5である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記荷電澱粉の置換度が、約0.15〜約0.42である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記荷電澱粉の置換度が、約0.12〜約0.3である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記方法によって、上質紙または塗工もしくは非塗工上級紙、新聞用紙、特殊新聞用紙、スーパーカレンダー仕上げ紙、または軽量塗工等級紙を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記パルプがブレンドチェストに進入する時に、またはその前に、少なくとも一種の荷電澱粉と、前記少なくとも一種の蛍光増白剤とを導入する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記パルプが機械チェストに進入する時に、またはその前に、前記少なくとも一種の荷電澱粉と、前記少なくとも一種の蛍光増白剤とを加える、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
サイズプレス前に、前記少なくとも一種の荷電澱粉と、前記少なくとも一種の蛍光増白剤とを導入する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
乾燥パルプ1トン当たり約1〜約20ポンドの量で前記荷電澱粉を加える、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
乾燥パルプ1トン当たり約0.25〜約5ポンドの量で前記荷電澱粉を加える、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
蛍光増白剤の性能を改善する方法であって、
a)少なくとも一種の荷電澱粉と、
b)少なくとも一種の蛍光増白剤と
を任意の順序で、同時にまたは異なる時間に製紙パルプに導入して、処理パルプを形成する工程、および次に前記処理パルプを紙またはボール紙に形成する工程を含む方法。
【請求項17】
前記蛍光増白剤の性能の改善は、同じ方法であるが、任意のサイズプレス前に荷電澱粉を加えていない方法と比較した場合、紙ISO白色度の上昇を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記蛍光増白剤の性能の改善は、同じ方法を実施したが、任意のサイズプレス前に荷電澱粉は加えなかった方法と比較した場合、紙蛍光強度の上昇を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
請求項1に記載の方法から得られた紙またはボール紙。
【請求項20】
パルプと、置換度が0.045を超える少なくとも一種の荷電澱粉と、少なくとも一種の蛍光増白剤とを含むパルプ組成物。
【請求項21】
前記荷電澱粉が、陽イオン性澱粉であり、置換度が0.045〜約0.5である、請求項20に記載のパルプ組成物。
【請求項22】
以下の特性の少なくとも一つを改善する、請求項16に記載の方法:
(a)荷電澱粉が存在しないときと比べて、填料歩留りの上昇、
(b)荷電澱粉を使用しない時と比べて、紙中のシート灰分含有率の上昇、
(c)荷電澱粉が存在しないときと比べて、排水の増大、
(d)荷電澱粉が存在しないときと比べて、サイジング歩留りの上昇、
(e)荷電澱粉が存在しないときと比べて、破断の減少、
(f)荷電澱粉が存在しないときと比べて、繊維屑取および/または塵取の減少。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−524749(P2009−524749A)
【公表日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−552369(P2008−552369)
【出願日】平成19年1月24日(2007.1.24)
【国際出願番号】PCT/US2007/001806
【国際公開番号】WO2007/087320
【国際公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(590003238)バックマン・ラボラトリーズ・インターナショナル・インコーポレーテッド (18)
【氏名又は名称原語表記】BUCKMAN LABORATORIES INTERNATIONAL INCORPORATED
【Fターム(参考)】