説明

凝集したイオン交換粒子床及び方法

(a)基体粒子と該基体粒子に結合しており且つそこから突出しているポリマー鎖(例えば凝縮ポリマー)とを含む成分A、及び(b)該荷電ポリマー鎖と反対の電荷を持つ外表面を有する基体粒子を含む成分Bを含む液体クロマトグラフィー凝集床であって、成分A及びBは該成分Aの荷電ポリマー鎖及び該成分Bの外表面の間の静電気力によって少なくとも部分的に結合され、コンポジットとしてクロマトグラフィーカラムに充填されるイオン交換粒子の凝集床を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良されたクロマトグラフィー媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のクロマトグラフィー媒体は、多孔性(メソポーラス)又は非多孔性のいずれかでよい球状粒子に基づく。これらの粒子は通常、最大粒子密度を生じるような方法でカラム体に充填される。そのようなカラムの粒子密度を高くし、充填されたカラムのクロマトグラフィー効率及び物理的安定性の両方に有害な効果を示すカラム床内における無作為な空洞の存在を回避するべきである。この様式で製造されたカラムは、良好なクロマトグラフィー性能及び良好な物理的安定性を提供する。理論的な観点から、この様式で充填されたクロマトグラフィー媒体は、立方最密充填の外形で配置された球体の濃密な集合に近い。該球体が均一の直径を有すると仮定すると、立方最密充填の外形で充填されたカラムは、優れた物理的安定性及びほぼ理論的なクロマトグラフィー性能を示す。
【0003】
この充填用外形に伴う一つの問題は、高性能固定相を用いるときにそれが操作圧力に重大な束縛を課すことである。クロマトグラフィー効率は粒径に反比例するため、向上したクロマトグラフィー性能を得るには、小径粒子を用いてのみ達成することができる。立方最密充填の外形で球体により充填されたカラムのための圧力は、操作用流速、カラムの直径、カラムの長さ、操作用温度、移動の粘度及び粒径に関連する。カラム圧力は粒径の二乗に反比例する。このため、粒子サイズの減少は、粒状クロマトグラフィー媒体に基づく従来の充填されたカラムを用いると圧力を増加させる外形を生じ、クロマトグラフィー性能に比例した増加のみを生じる。例えば、粒径を半分に減少させると理論的には該カラムのクロマトグラフィー性能は二倍になるが、該カラム圧力は4倍になる。
【0004】
現代のHPLC及びイオンクロマトグラフィーにおけるクロマトグラフィー材料の評価の歴史は粒径の連続的な減少を含み、向上した性能のクロマトグラフィー材料を提供している。しかし、ここで該粒径はさらなる圧力増加に対応するために、著しい改善には装置コストの劇的な増加と共に器具の信頼性及び使いやすさの著しい減少が必要であるという問題点に達する。
さらに、小粒子サイズクロマトグラフィー媒体の使用はしばしばカラムの長さの減少と組み合わされ、関連する圧力の増加を最小化させる。不運にも、クロマトグラフィー性能はカラムの長さと正比例する。従って、クロマトグラフィー性能の向上が最小となるのは、1メートル当たりのプレートに関する向上したクロマトグラフィー効率が、より小さい粒径サイズのクロマトグラフィー媒体を用いるときにカラムの長さの減少によって十分に相殺され、カラム当たりのプレートに関して同様のクロマトグラフィー性能を生じるためである。小さな粒径サイズのクロマトグラフィー媒体を有する短いカラムは、高い分離が重要な要求でない場合の用途のための急ぎの分離を可能にし、多くのクロマトグラフィー分離はクロマトグラフィー性能に関する改善を必要とする。これは、カラムの長さを増加させるか粒径を減少させ、カラムの長さを一定に保つことによってのみ達成することができる。
【0005】
上記の問題を解決するために用いられている一つの技術は、モノリシック材料の調製である。モノリシック材料は、多孔性構造を通って流体が流れる手段を提供する一連の貫通した孔を有する連続的なクロマトグラフィー媒体からなるクロマトグラフィー材料である。そのような構造は、理論的には該貫通した孔のサイズ及び固定相の体積フラクションを独立に制御することができるために、粒状クロマトグラフィー媒体に著しい潜在的な利点を提供する。そのような材料は、広い種類の材料から広い種類の形状及びサイズで調製されている。該材料の表面積が制御され、モノリシック材料中に流体の流路を提供するマクロ孔に加えて二次的なメソ孔が導入される。孔サイズの制御は固定相部分の有効なサイズに独立であるため、多孔度及びカラム圧力はクロマトグラフィー性能とは独立に制御することができる。
【0006】
この技術に関するいくつかの重要な文献がある。第一に、圧力及び物理的な安定性を操作して好適なクロマトグラフィー性能を有する材料の調製には、かなりの実験が必要である。さらに、最適化は高度に材料に依存し、媒体組成における比較的少ない変化は全調製プロトコルの再度の最適化を必要とする。このため、新規クロマトグラフィー媒体の開発は主要な開発プロジェクトを意味する。これは、所定粒子のプラットフォームが容易に改良され、最小の開発努力で広い種類のクロマトグラフィー媒体を提供することができる従来の粒状クロマトグラフィー媒体に伴う状況と実質的に対照的である。
【0007】
モノリシッククロマトグラフィー媒体に対するさらに重大な欠点は、縮みの問題である。モノリシック材料の調製は、一般的に円筒状の筐体をモノリスの調製に必要な材料で満たすことを伴う。モノリスが形成された後(モノマーの重合又は無機前駆体の縮合のいずれかによる)、円筒状多孔性モノリシックロッドが製造される。この調製方法に関連する問題は、得られたロッドが、中で該ロッドが製造される円筒状筐体よりも小さいことである。これは、高性能クロマトグラフィー媒体の調製に重大な障害を呈する。該モノリスが最初に調製に用いられた筐体に残される場合、流体はモノリスを通って流れるというよりはその周囲を優先的に流れるが、これはモノリスと円筒状筐体の間の隙間に流れる流体のための圧力低下が、モノリスを通って流れる流体のための圧力低下よりも著しく低いためである。
【0008】
強アニオン及びカチオン交換樹脂の混合物を含む床で充填された混合床カラムが、液体クロマトグラフィーに用いられている。該文献は、カチオン及びアニオン交換樹脂が該床、例えばチャネリングを通る液体の乏しい流速分布のために望ましくない凝集物又は凝集塊を形成することを教示しており、これは樹脂のイオン交換容量の低い活用及び一般的に非効率的なイオン交換操作を導くことが教示されている。認識される望ましくない凝集を回避するために種々の技術が提案されている(米国特許第4,347,328号及び第3,168,485号及び欧州特許出願第1,241,083A1号明細書)。
従来の粒状クロマトグラフィー媒体及び従来のモノリシック材料の両方の弱点を克服する必要がある。
【発明の開示】
【0009】
本発明の一つの実施態様は、(a)基体粒子と該基体粒子に結合しており且つそこから突出している正又は負の1価のポリマー鎖とを含む成分A、及び(b)該荷電ポリマー鎖と反対の電荷をもつ外表面を有する基体粒子を含む成分Bを含み、少なくとも一部の成分A及び成分Bが、成分Aの荷電ポリマー鎖及び成分Bの外表面の間の静電気力によって少なくとも部分的に結合されている。該混合物は、好ましくはその後にコンポジットとしてイオン交換粒子の凝集床を形成するクロマトグラフィーカラム上に充填される。
【0010】
本発明の別の実施態様は、クロマトグラフィー充填剤としての使用に好適なイオン交換粒子を含む凝集床を製造するための方法であって:基体粒子と該基体粒子に結合しており且つそこから突出している一価の正又は負に荷電したポリマー鎖とを含む成分Aを、該荷電ポリマー鎖と反対の電荷をもつ外表面を有する基体粒子を含む成分Bと混合し、少なくとも一部の成分A及び成分Bを少なくとも部分的に成分Aの荷電ポリマー鎖及び成分Bの外表面の間の静電気力によって結合し、それによって好ましくはクロマトグラフィーカラムに充填することによってコンポジットとしてイオン交換粒子の凝集床を形成することを含む方法を含む。
【発明の詳細な説明】
【0011】
概して、本発明は、凝集したイオン交換粒子を含み、且つ液体クロマトグラフィー充填剤における使用に好適な床に関する。該床は、基体粒子と前記基体粒子に結合しており、好ましくはそこから突出している一価の正又は負に荷電したポリマー鎖を含む成分Aを含む。成分Aは、該荷電ポリマー鎖と反対の電荷を持つ外表面を有する基体粒子を含む成分Bと混合される。少なくとも一部の前記成分A及び成分Bは、該成分Bの外表面における該成分Aの荷電ポリマー鎖の間の静電気力によって少なくとも部分的に結合している。この混合物は、好ましくは続いてイオン交換粒子の凝集床が形成されるようにカラム機器内に充填される。
【0012】
ここで用いられているように、“凝集床”という用語は、少なくとも一部が静電気力によって保持されている反対の電荷をもつ粒子の凝集物を含む粒状床を意味する。該床における一部の個々の粒子は凝集されていなくてもよい。該凝集物では、凝集物当たりの粒子数が、例えば、凝集物当たり2粒子程度から凝集物当たり5又は10又は20又は50又は100又はそれ以上の粒子数まで大きく変化し得る。凝集される個々の粒子は、クロマトグラフィー樹脂の従来のビーズと同一のサイズでよく、例えば直径が0.5〜1000μm、好ましくは1〜10μm、及びさらに好ましくは2〜8μmである。凝集床という用語は、クロマトグラフィーカラムへのその後の充填のための先の反応チャンバーで形成されたもの、及びクロマトグラフィーカラムに存在するような該床を含む。該用語は、基体イオン交換粒子をコーティングする微細な荷電ラテックス粒子単独によって形成される凝集物を除く。
【0013】
該ポリマー鎖は成分Aと結合している。それらは、好適には該鎖において約5〜25個の炭素原子の長さ以上の有機ポリマーである。以下に記載されるように、該ポリマー鎖は現場で基体粒子上にグラフトすることによって形成され得るか、又は前形成されたポリマーとしての基体粒子に結合され得る。該ポリマー鎖は好ましくは成分Aから突出しており、これは近接する鎖からの全ての個々の鎖の反発力を生じる一価の正又は負に荷電した鎖の結果である。該鎖は直鎖、非架橋又は架橋の鎖でよい。
【0014】
少なくとも成分Aの基体粒子と結合しており、且つそこから延長することができるポリマー鎖は、当業者によく知られた広い種類の異なるポリマー材料から選択することができる。好適なカチオン性ポリマー材料は:2005年8月18日に公開された米国特許出願第2005/0181224号明細書、主題“Coated Ion Exchange Substrate and Method of Forming”に記載されているようなグラフトポリマーを含むことができ、参照としてここに組み込む。さらなるポリマー材料は、限定はしないが、ポリビニルベンジルクロライド、ポリグリシジルメタクリレート、ポリビニルベンジルグリシジルエーテル、エピクロロヒドリンのポリマー並びに弱塩基又は強塩基性置換基のいずれかの導入に好適な反応性置換基を含有する任意の他のポリマー由来のポリマーも含み得る。弱塩基又は強塩基性置換基のいずれかの導入に好適な試薬は、限定はしないが:アンモニア、第一級アミン、第二級アミン及び第三級アミン並びに該置換基の混合物を含有する化合物を含む。そのようなポリマーは前形成されて該樹脂表面に付着され、続いて任意の上記試薬と反応させることができるか、又はそのようなポリマーは前形成されて任意の上記試薬と反応し、続いて該樹脂表面に付着され得る。あるいは、そのようなポリマーは現場で該樹脂表面上に形成され、続いて任意の上記試薬と反応するか、又は該モノマーが任意の上記試薬と反応し、続いて該樹脂表面と反応することで、該樹脂表面から延長するカチオン性ポリマーを製造してよい。そのようなポリマーは当業者に周知の方法を用いて、該樹脂表面に共有結合で付着されるか、又は該樹脂表面に静電気的に付着され得る。多くの他のカチオン性ポリマーも、当業者に周知であるとしてこの目的のために用いられ得る。同様に、類似のアニオン性ポリマーも該樹脂表面に適用され得る。そのようなアニオン性ポリマーは、付着プロセスの後にアニオン性ポリマーに転化される前形成されたアニオン性ポリマー又は中性ポリマーの形態で付着され得る。あるいは、中性モノマー又はアニオン性モノマーは重合プロセスの一部として該樹脂表面に付着され得る。この付着は共有結合性又は静電気性のいずれかであり得る。好適なアニオン性ポリマーは、カルボン酸官能基、スルホン酸官能基、ホスホン酸官能基又はフェノール類官能基並びに該官能基の組み合わせ並びに粒子凝集物の調製に好適な条件下でアニオン特性を示すのに好適な任意の他の官能基を含有するポリマーを含む(Encyclopedia of Polymer Science and Engineering, 2nd ed., John Wiley & Sons, New York, Vol.11 , pages 489-507 and Vol. 17, pages 759-770)。
【0015】
成分Bは、該荷電ポリマー鎖と反対の電荷をもつ外表面を有する基体粒子を含む。ここで用いられているように、“外表面”という用語は多くの形態をとり得る。例えば、該表面は荷電した基体粒子の形態でよい。あるいは、該基体粒子は、中性か、又は続いて化学的に処理されて該成分Aのポリマー鎖と反対の望ましい電荷を提供する選択された外表面の電荷と反対の電荷にすることができる。さらに、該外表面は、成分Aと類似するが反対の電荷で荷電したポリマー鎖にすることができる。さらに、該外表面は、例えば米国特許第4,101,465号明細書に記載のように静電気的に結合するか、又は米国特許第5,532,279号明細書に説明されているように中間分散剤を用いるなどのいくつかの他の様式で結合することのできる基体上に微細なラテックス粒子の層を含むことができる。統一する特徴は、“外表面”という用語が、微細なラテックス粒子又はポリマー鎖を含み得る外部又は露出した表面が成分Aのポリマー鎖と反対の電荷を有する限り、該基体粒子の内部又はコアに種々の電荷を有するか又は電荷を有さない粒子の表面を含むことである。
【0016】
基体粒子は、それらの用語が液体クロマトグラフィーの分野で用いられているような相対的に非多孔性又はメソポーラスでよい。例えば、成分Aの基体粒子がメソポーラスである場合、成分Aの粒子鎖は該基体粒子の外周からだけでなく、該基体粒子の内部のメソ孔からも突出している。
ポリマー鎖は成分Aの基体粒子にグラフトされ得る。一つのグラフトする実施態様では、グラフトが現場で形成され、すなわち該重合が基体粒子、例えば凝縮ポリマー反応生成物の表面で起こる。別の実施態様では、該ポリマー鎖が前形成され、米国特許第6,074,541号明細書に説明されているような遊離基結合によって成分Aの基体粒子の表面上にグラフトされる。
【0017】
好適な基体粒子は、従来のイオンクロマトグラフィーに用いられるイオン交換樹脂粒子である。あるいは、基体粒子は有機又は無機基体及び中性又は荷電した基体を含むことができる。
反対に荷電した粒子間の静電気的相互作用による凝集は、イオンクロマトグラフィーに用いられる基体粒子上への従来のラテックスコーティングの原理に従って前形成することができる。そのような技術は米国特許第4,351,909号、第4,383,047号、第4,252,644号、第4,927,539号、第4,376,047号、第5,324,752号、第5,532,279号及び第5,248,798号明細書に記載されている。
【0018】
本発明には、上記特許文献に記載されている基体粒子上への静電気的コーティングとの違いがいくつかある。該ラテックスコーティングをされた基体と区別される本発明の一つの特徴は、本発明の凝集物と比較して先行技術の基体粒子に対する微細なラテックス粒子の比例した粒子サイズに関する。本発明では、成分A及びBの基体粒子が比較的類似のサイズであることが好ましく、さらに好ましくはそれらが共にクロマトグラフィー床におけるビーズに典型的に用いられるサイズ範囲である。例えば、成分A及び成分Bの直径は、約100〜400%以下、又は好ましくは50〜100%未満、及び最も好ましくは25〜50%未満で変化するのが好ましい。言い方を変えると、本発明の凝集物は、成分Bにおける成分A又はその逆のコーティングを形成すべきでないが、その代わりに静電気力又はその他によって互いに結合されていない両成分A及び成分Bの部分にある相互貫入性ポリマー付着領域でのみ結合している。両成分A及びBに好適な粒子サイズは、少なくとも0.5〜1μm、好ましくは少なくとも1μm、さらに好ましくは少なくとも2μm、好適には0.5〜1000μmの範囲である。該床は、典型的には少なくとも1μm、好ましくは少なくとも2μm、1〜2000μmの範囲、好ましくは5〜20μmの範囲の直径を有する凝集物を含む。該粒子は、従来のフルスケールのクロマトグラフィーカラム、例えば1〜25mmのid又はキャピラリーカラム、例えば25〜1000μmのidに用いることができる。
【0019】
コーティングされた基体粒子との別の違いは、少なくとも成分Aの基体粒子上におけるポリマー鎖の存在である。該成分Aのポリマー鎖は、本発明の凝集物の形成を促進するのに特に有用である。これは、ポリマー鎖が特に該基体表面から突出しているときに、近接した反対電荷を有する成分Bの粒子の静電気的な結合のためのさらなる荷電表面積を提供するためと考えられる。該成分Bの粒子が反対電荷で荷電したポリマー鎖を有する場合も、凝集はさらに効率的になると考えられる。
【0020】
該凝集物は、クロマトグラフィーカラムを充填する前に形成され、続いて該カラムに入れられ得る。例えば、成分A及びBは、キャリア液体、好ましくはカラムなどのチャンバーにおける脱イオン(D1)水などの水性液体のスラリーで前形成され得る。凝集物の形成後、該スラリーをクロマトグラフィーカラムに充填することができる。凝集物の大部分は十分に安定であり、混合及び充填中に損なわれない。前形成は、成分A又はBの一つを他の成分のスラリーへ流入し、必要に応じてさらなる混合と組み合わせることによって行うことができる。あるいは、成分A及びBはクロマトグラフィーカラムに充填することができ、好ましくは該カラムにおける凝集物の混合及び形成のために好ましくは水性液体スラリーにすることができる。あるいは、成分A及びBを乾燥粉末として前混合し、それに続いてスラリー溶媒と混合することができ、凝集物の自発的な形成を可能にする。さらに、イオン強度は、平均サイズ及びサイズ範囲の両方に関する凝集形成の大きさに重要な役割を担う。従って、電解質のスラリー溶媒への添加は、形成された凝集物のサイズ及び多分散性を制御するのに用いることができる。別のアプローチは、成分A及びBのペーストを共に混合し、続いてスラリー溶媒で希釈することである。
【0021】
前述のタイプの凝集粒子で充填したカラムは、凝集物の有効径に匹敵する圧力低下を伴うカラムを製造し、該凝集物が製造される個々の粒子に匹敵するクロマトグラフィー効率を製造する。該凝集物がクロマトグラフィーカラムに充填する前に製造することを想定すると、該凝集物は好ましくは十分な力で結合され、該凝集物の実質的な数以上(例えば、少なくとも10%〜50%)が充填後も損なわれないままにすることができる。該充填剤の物理的安定性は、充填プロセス中に互いに接触する凝集物間の接着により強化される。該床が充填されると、該凝集された粒子床は凝集粒子由来の低い圧力低下特性を保持し、従来の様式で充填された同一の粒子以上の優れたクロマトグラフィー性能を示す。カラム床を高い線状の流速に露出しても、床には粒子凝集物の拡張された多孔特性の著しい歪曲又は崩壊が引き起こされない。
【0022】
一つの実施態様では、成分A及びBが任意の広い範囲の比で共に混合される。例えば、成分Aの約1%〜99%の成分Aの粒子を1〜99%の成分Bの基体粒子と混合して、改善された有用なクロマトグラフィー材料を製造することができる。本発明の有益な効果の一つは、カラム圧力の減少である。比較的低い割合の反対電荷を有する粒子を用いても、カラム圧力が減少し、良好なクロマトグラフィー性能を有する安定なカラムの調製し易さを向上させることが見出された。負及び正に帯電した粒子は、カラム圧力を最も減少させ凝集を最大化させるために約1:1に近づけることが好ましい。従って、各成分A及び成分Bは、好ましくは少なくとも10%、20%、30%又は40%以上の成分A及び成分Bの混合物を含む。1:1の比に近づくと、カラム浸透性が最大化されて3倍以上のカラム圧力の減少が生じ得る。カラム圧力の減少は、成分A及びBのためのクロマトグラフィー粒子又は基体粒子の直径、該凝集物の調製方法、充填方法中に適用される充填用圧力、スラリー溶媒のイオン強度及び基体粒子上の層の存在を含む複数のパラメーターに依存する。
【0023】
成分Bがさらなる層を含まない実施態様では、該凝集物はアニオン交換及びカチオン交換特性の組み合わせを有し得る。クロマトグラフィー中、アニオン及びカチオンはこのタイプの充填剤を有するクロマトグラフィーカラム上で分離され得る。必要に応じて、該凝集物はその外表面上を実質的に一価に変換することができ、従って両方ではなくアニオン又はカチオンを分離するのに用いられ得る。例えば、アニオン交換ポリマー鎖を有する成分Aでは、アニオン交換ラテックス粒子は成分Aの凝集後に成分B粒子の表面に静電気的に結合することができる。このようにして、成分B粒子の表面は、アニオン交換粒子で実質的に完全に積層することができ、両成分A及び成分Bの外表面は全体的にアニオン交換粒子となる。ラテックス粒子を結合するための技術は、前述の先行技術特許文献に記載されているようにすることができる。この実施態様では、好適には上記のような微細なラテックス粒子の大きさであり、例えば約5〜500nmである。十分な数のラテックス粒子を用いて、当技術分野で知られているように成分Bの基体粒子の外面をコーティングすることができる。
【0024】
ラテックス又はコロイド粒子は、メソポーラス又は相対的に非多孔性の基体粒子のいずれかをコーティングするのに用いられ得る。メソポーラス粒子では、該ラテックスコーティングは、好ましくは十分小さなサイズであり、メソポーラス基体粒子の内部及び外部表面の両方をコーティングする体積を有する。あるいは、メソポーラス基体粒子の外表面のみをコーティングする大きさにすることができる。
【0025】
少なくとも成分Aの基体粒子に結合される荷電ポリマー鎖の存在は、反対電荷を有する成分Bの基体粒子と絡み合うことにより安定な凝集物の形成を容易にすると考えられる。少なくとも成分Aの基体粒子に結合されている荷電ポリマー鎖の不存在下では、成分Aの基体粒子及び成分Bの基体粒子の間の静電気的接着は、該接着が任意の2種の粒子間の接点に限定されるために非常に弱い。荷電ポリマー鎖が少なくとも成分Aの基体粒子の外表面に結合しているとき、成分Bの基体粒子の表面におけるこれらのポリマー鎖と絡み合っている成分Aの基体粒子の表面におけるそのようなポリマー鎖、特に基体粒子から伸びているものが、著しく大きな接着剤強度を可能にする。これは、2種の粒子を共に結合している多くのポリマーストランドに沿った著しく大きな有効接触面積によると考えられている。さらに、成分A又は成分Bのいずれも外表面に結合している荷電ポリマー鎖を含まない場合におけるこれらの相互作用の強度は、充填プロセス中に無傷のままでいるには弱過ぎ、そのような粒子の混合物から製造されて得られた凝集床が本発明の粒子凝集床の向上した浸透特性を示さない。
他の技術を用いて凝集物の安定性を強化してもよいことが理解される。例えば、他の層を共有結合又はその他によって加えてもよい。
【0026】
一つの実施態様では、該成分Aのポリマー鎖が、アミン及びポリ官能性化合物の少なくとも第一及び第二の凝縮ポリマー反応生成物によって形成される。該第一の反応生成物は、アミン及びポリ官能性化合物の反応生成物を含む成分Aの基体粒子に付着している。続いて、該第二の反応生成物は該第一の反応生成物と結合している。このタイプのシステムは米国特許出願第2005/0181224号明細書に記載されており、参照としてここに組み込む。この研究は、基体粒子から突出している一価の荷電した直鎖及び架橋ポリマー鎖を形成することができる。
【0027】
好ましい凝縮ポリマーシステムは、クロマトグラフィー用途における使用のための基体上で形成されるアニオン交換コーティングを含む。該方法は、アンモニア、第一級及び第二級アミンからなる群から選択されるアミノ基を含む少なくとも1種の第一のアミン化合物を、前記アミノ基と反応性のある少なくとも2種の官能基を有する少なくとも1種の第一のポリ官能性化合物と基体の存在下で反応させ、第一の凝縮ポリマー反応生成物(“CPRP”)と、前記基体に不可逆的に結合した過剰量の前記第一のアミン化合物又は第一のポリ官能性化合物の少なくともいずれかを形成し、該第一のCPRPが第一のアミン官能基を含む工程(a)、及びアンモニア、第一級及び第二級アミンからなる群から選択されるアミノ基を含む少なくとも1種の第二のアミン化合物、又は少なくとも1種の第二のポリ官能性化合物を、過剰量の第一のアミン化合物又は第一のポリ官能性化合物と、第一の凝縮ポリマー反応生成物の存在下で反応させ、第二のCPRPを形成する工程(b)を含む。これらの工程は、ここではそれぞれ工程(a)及び工程(b)と呼ぶ。
【0028】
工程(a)では、第一のアミン化合物が、前記アミノ基と反応する少なくとも2種の官能基を有する第一のポリ官能性化合物と反応する。第一のアミン化合物及び第一のポリ官能性化合物は基体の存在下で同時に反応し、該基体と不可逆的に結合した第一のCPRPを形成する。該反応は、過剰量の未反応(従って反応性)の第一のアミン化合物又は第一のCPRPにおける第一のポリ官能性化合物を提供するために行う。“未反応”によって、アミノ基又はポリ官能性化合物のポリ官能基の1種以上が未反応(従って反応性)であることが意味される。これは、反応物のモル比、反応物の濃度、反応温度又は反応時間を調整して達成され得る。工程(a)の第一のCPRPは、それが該基体に付着しているために“基部層”と呼ばれる。
【0029】
過剰なモル数のポリ官能性化合物又はアミン化合物を用いてCPRPに過剰な未反応化合物を提供する場合、該過剰なモル数は最終生成物に与えられるのが望ましい特性に依存する広い範囲に渡って変化し得る。従って、例えば、反応物のモル比に関する過剰量は、0.2:1程度の低さから5:1以上の高さにすることができる。過剰量を選択するのに用いられる要因の一部は、以下により詳細に説明される。
【0030】
CPRPはここでは“層”と呼ばれるが、各CPRPは典型的にスペース又は開口部を含む。ここで用いられるように、CPRP又は“凝縮ポリマー反応生成物”という用語は、第一のアミン化合物がポリ官能性化合物の官能基と反応し、凝縮ポリマー反応生成物を形成する生成物を指す。このCPRPにおける“ポリマー”という用語は、鎖成長が多官能性モノマー間に段階様式で生じる多くの同一の小分子の結合によって形成される繰り返し有機鎖を意味する。
【0031】
過剰量の未反応の第一のアミン化合物又は第一のポリ官能性化合物が、工程(b)の反応を開始する。そこで、少なくとも第二のアミン化合物又は第二のポリ官能性化合物が、過剰な未反応のアミン化合物又は第一のCPRPにおける第一のポリ官能性化合物と反応し、第二のCPRPを形成する。例えば、第一のアミン化合物が第一のCPRPより過剰な場合、続く工程(b)では、第二のポリ官能性反応生成物が工程(a)における該過剰な未反応の第一のアミン化合物と反応して、第二のCPRPを形成する。逆に、第一のポリ官能性化合物が第一のCPRPより過剰な場合、続く工程(b)では、第二のアミン化合物が過剰な第一のポリ官能性化合物と反応して第二のCPRPを形成する。
【0032】
工程(a)で用いられる化合物は、唯一のアミン化合物としての第一のアミン化合物、及び唯一のポリ官能性化合物としての第一のポリ官能性化合物を含み得る。あるいは、第一のアミン化合物と1種以上のさらなるアミン化合物との混合物を含むことができる。さらに、第一のポリ官能性化合物単独を第一の又はさらなるアミン化合物と共に含むか、又は第一のポリ官能性化合物及び1種以上のさらなるポリ官能性化合物の混合物を含み得る。このようにして、各凝縮ポリマー反応生成物が調整されて望ましい官能性を含み得る。
【0033】
連続的なCPRPは工程(b)の後に該工程を繰り返すことによって形成され、過剰量のアミン化合物又はポリ官能性化合物を交互にすることによって、各連続層においてこれらの2種の反対の化合物を前の層で過剰だったものと反応させ、さらなるCPRPを形成し得る。例えば、工程(b)の後に工程(c)が行われてもよく、少なくとも第三のアミン化合物又は第三のポリ官能性化合物が第二のCPRPにおける過剰な他の化合物と反応する。従って、第三のアミン化合物又は第三のポリ官能性化合物は、過剰量の第二のアミン化合物又は第二のCPRPにおける第二のポリ官能性化合物と反応して、第三のCPRPを形成する。
【0034】
別の実施態様では、静電気的引力によるアニオン性表面への付着に加え、化学的に修飾された基体の使用によっても付着を達成することができる。例えば、表面に好適なグラフトサイトを含有するポリマー基体の従来のラジカルグラフトは、第一級、第二級又は第三級のアミン官能性を含有するモノマーを用いて達成することができる。この場合、凝縮ポリマーは該基体表面に直接共有結合で結合する。さらに、該基体の表面を誘導化してアミノ官能性を導入することができる。その後の上記凝縮ポリマー試薬への露出は、共有結合された凝縮ポリマー表面グラフトを再び製造する。
【0035】
上記方法により、コーティングされたイオン交換基体が形成され、そのコーティングは少なくとも第一及び第二のCPRPを含む。該第一のCPRPは基体表面に不可逆的に結合され、前述のタイプの少なくとも第一のアミン化合物及び該第一のアミン化合物のアミノ基と反応性のある少なくとも2種の官能基を有する少なくとも1種の第一のポリ官能性化合物を含む。第二のCPRPが形成され、これは第一のアミン化合物又は第一のポリ官能性化合物と第二のアミン化合物又は第二のアミン官能性化合物の反応性生物を含む。この生成物は少なくとも第一及び第二のCPRPを含み、さらに上記のように第二のCPRPとの連続反応で形成される第三又は任意のそれに続くCPRPを含む。これは本発明の荷電ポリマー鎖を製造する。
【0036】
上記のように、反応工程(c)は任意の望ましい回数だけ繰り返してよい。上記方法のいつでも、凝縮ポリマー反応生成物の外層はアミン基のカチオン官能性を有する。一つの実施態様では、この反応の生成物はこの形態でさらなる修飾をせずに成分Aに直接用いられ得る。この場合、この反応の生成物は、数種の分離に有利となり得る強塩基アニオン交換サイト及び弱塩基アニオン交換サイトの両方を含有する。別の実施態様では、強塩基アニオン交換サイトは、第三級アミン基を含むキャッピング化合物との反応によるキャッピング反応によって該凝縮ポリマーの外層に導入され得る。この様式では、該反応がキャッピング又は終了されると、イオン交換コーティングが、該基体がクロマトグラフィーカラムなどのためのアニオン交換充填剤の形態で用いられるときのように、アニオン分離に従来から用いられている非常に増加した数の第四級アミンを含む。
【0037】
別の実施態様では、コーティングされたイオン交換基体を、コーティングされた基体の外表面上の過剰なアミン反応性官能基をカチオン官能性化合物を含有するアミンと反応させることによってカチオン交換基体に転化し、該基体をカチオン交換基体に転化してもよい。上記のように、一つの好ましい実施態様では、該基体が粒子形態の多数の基体を含み、該コーティングされた粒子がクロマトグラフィー分離などのためのイオン交換充填剤粒子を含む。カチオン官能基を含有する好適なアミンは、スルホン酸、ホスホン酸及びカルボン酸又はそれらの組み合わせを含む。好ましくは、カチオン官能性化合物を含有する好適なアミンは、カチオン官能基の全数が予め形成されているアニオン交換サイトの数を超えるような2種以上のカチオン官能基を含む。
【0038】
別の実施態様では、コーティングされたイオン交換基体が、該コーティングされた基体の外表面上の過剰なアミン官能性基をカチオン官能性化合物と反応させることによってカチオン交換基体に転化され、該基体をカチオン交換基体に転化してよい。上記のように、一つの好ましい実施態様では、該基体は粒子形態の多数の基体を含み、該コーティングされた粒子はクロマトグラフィー分離のためのなどのイオン交換充填剤粒子を含む。
一つの実施態様では、1種以上の凝縮ポリマー官能性基が分枝及び/又は架橋している。例えば、第二、第三又はそれ以上のCPRPは、試薬の適切な選択、及び試薬の選択且つ試薬及び下記の過剰量のアミン化合物及びポリ官能性化合物のいずれか一方の比の調整によって分枝及び架橋することができる。
【0039】
本発明は、従来カラムよりも多くの利点を提供する。多孔性モノリシック材料と比較して、該粒子は該カラムを誘導体化することなく従来のクロマトグラフィーカラムに充填され、流体が該床周囲に流れることを回避することができる。また、小粒子に典型的な高性能特性を示し、同時により大きな粒子と類似の浸透特性を示す媒体の調製のために一般的に有用なクロマトグラフィー粒状媒体又はビーズも用いる。得られたカラムは、凝集床の向上した浸透性のために、従来の様式により同一の材料で充填された従来のカラムよりも著しく高い流速で用いることができる。あるいは、凝集したモノリス構造の低い圧力低下が、カラム当たりのプレートの実質的な増加及びクロマトグラフィー再溶解力の関連する向上を提供する著しく長いクロマトグラフィーカラムの使用を可能にする。
【0040】
上記発明は、成分Aにおけるアニオン交換ポリマー鎖及び成分B上の反対電荷に関して記載した。該電荷は逆にすることができることを理解すべきである。
本発明を説明するために、以下の非限定例が提供される。
【0041】
実施例1
凝縮反応を用いて突出しているポリマー鎖を形成する一つの実施態様では、マクロ多孔性エチルビニルベンゼン-ジビニルベンゼンコポリマービーズを、まず濃硫酸において8O℃で約1時間軽く表面をスルホン化し、基体粒子上に負の表面電荷を導入する。得られた粒子を従来のカラム機器に充填し、エポキシモノマーと第一級アミンの反応から現場で形成された凝縮ポリマー(好ましくは、エポキシモノマー及び第一級アミン、好ましくはブタンジオールジグリシジルエーテル及びメチルアミンの反応から現場で形成される)でコーティングする。該カラムは、エポキシモノマーの溶解とそれに続く第一級アミンの溶解によって処理する。一連の処理を繰り返し、好適なアニオン交換相又は基体粒子及びそれから突出しているポリマー鎖を有する成分Aを調製する。続いて該カラムを空にし、コーティングされた材料を高ワット量の超音波プローブで分解して、これらの反応と一緒に結合された粒子を粉砕する。この技術は成分Aを形成するのに用いられる。
【0042】
該凝集物は、好適な溶媒、好ましくは脱塩水における該成分A材料のスラリーを製造することによって形成され、粒子スラリーを製造する。第二の別のスラリー、例えばエポキシモノマー及び第一級アミン凝縮生成物に露出されていない表面スルホン化粒子のバッチを主な粒子スラリー(成分A)に滴下し、該スラリーを攪拌して集合又は凝集したポリマー粒子を提供する。そのような集合したポリマー粒子を、続いてカラムに充填してそのまま用いる。この様式で形成された成分A及びBの凝集物を、続いてエポキシモノマーと第一級アミンの反応から現場で形成された凝縮ポリマー(上記と同一のタイプ)でコーティングする。該コーティング方法を終了させるか、又は該コーティングをエポキシモノマーの溶解とそれに続く第一級アミンの溶解により処理する。該手順を繰り返して好適なアニオン交換相を形成することができる。該コーティングは、樹脂粒子を共にさらに凝集又は接着し、並びに該凝集床のイオン交換能を増加させる方法を提供する。
【0043】
実施例2
60%の細孔容積及び1グラム当たり22m2の表面積を有する55%のジビニルベンゼン及び45%のエチルビニルベンゼンの混合物から調製された50gの7.3μm樹脂粒子を、十分な氷酢酸に懸濁して濃厚なペーストを製造し、そこに1000gの硫酸をゆっくりと加えた。得られた混合物を、攪拌反応器において80℃まで1時間かけて加熱した。得られた軽質な表面スルホン化粒子を、数リットルの脱イオン水の缶に注いで攪拌した。続いて、得られた粒子のスラリーを濾過し、脱イオン水で洗浄し、及びさらなる使用のために湿ったケーキとして保存した。
【0044】
実施例3
上記の4.58gの軽質な表面スルホン化樹脂を、932gの水、5gのlgebal CO-630(エトキシ化アルキルフェノール非イオン性界面活性剤)、50gの酢酸及び13gのエチレンジアミンからなる8.04gの溶液で懸濁した。得られたスラリーを、4mm×250mmのカラム体に1分当たり8mLで65℃の温度にて15分間かけて充填した。続いて、充填されたカラムをカラム充填用の場所から除去し、末口の付属品をカラム体に取り付ける。これに続き、充填されたカラムを続いて65℃の水浴に入れ、7.2質量%のブタンジオールジグリシジルエーテル及び1.12質量%のメチルアミンを含有する混合物を、2時間かけて1分当たり0.25mLでカラムに供給した。流れを遮ることなく、10質量%のブタンジオールジグリシジルエーテルを含有する溶液をさらに30分かけてカラムに通した。この後、流れを遮ることなく、4質量%のメチルアミンを含有する溶液をさらに30分かけてカラムに通した。続いて、該カラムを、水浴から除去する前に脱イオン水で15分間すすいだ。該カラムを空にし、粒子を高ワット量の超音波プローブに曝して前述の方法中に共に固められた全ての粒子を引き離し、該粒子を濾過し、脱イオン水で洗浄し、及び湿ったケーキの形状で保存した。そのように形成された粒子は、内部及び外部の表面の両方から伸びているカチオン性ポリマーでコーティングされた成分Aの粒子を含む。
【0045】
実施例4
0.53gの実施例3の粒子を、932gの水、5gのlgebal CO-630(エトキシ化アルキルフェノール非イオン性界面活性剤)、50gの酢酸及び13gのエチレンジアミンからなる2.99gの溶液と共に用いて混合物を調製した。別々に、0.52gの実施例2からの粒子を、2.09gの上記スラリー溶液で懸濁して混合した。これに続き、実施例2の粒子の混合物を実施例3の粒子の混合物にゆっくり加え、マグネティックスターラーを用いて激しく攪拌した。得られた混合物を、続いて2mm×250mmのカラム体に1分当たり2.5mLで65℃にて15分間に渡って充填した。続いて、該カラムをカラム充填用アダプターから取り外し、末口の付属品を65℃の水浴に置かれている充填されたカラムに取り付けた。これに続き、充填されたカラムを65℃の水浴に入れ、7.2質量%のブタンジオールジグリシジルエーテル及び1.12質量%のメチルアミンを含有する混合物を30分かけて1分当たり0.1mLで注いだ。流れを遮ることなく、10質量%のブタンジオールジグリシジルエーテルを含有する溶液をさらに30分かけてカラムに通した。これに続き、流れを遮ることなく、4質量%のメチルアミンを含有する溶液をさらに30分かけてカラムに通した。最後の2工程は、全部で120分のさらなる時間にわたる2種のさらなる反応サイクルで繰り返した。続いて、該カラムを水浴から除去する前に脱イオン水で15分間すすいだ。得られたカラムを続いてイオンクロマトグラフィーに入れ、クロマトグラフィー性能を評価した。該カラムは、該カラムを調製するのに用いた粒子サイズのために例外的に低圧とした(1分当たり0.25mLの30℃で操作するときは30mMの水酸化カリウム溶離剤を用いて670psi)。該カラムは、7.7分の保持時間を有した硝酸塩のための8600プレートの効率を有するこのサイズの粒子の平均よりもわずかに優れた効率を示した。
【0046】
実施例5
実施例4のカラムを、凝縮ポリマーのさらなる層の添加のために65℃の水浴に戻した。10質量%のブタンジオールジグリシジルエーテルを含有する溶液を、30分間かけて1分当たり0.1mLでカラムに通した。これに続き、流れを遮ることなく、4質量%のメチルアミンを含有する溶液を、さらに30分間かけてカラムに通した。続いて、該カラムを水浴から除去する前に脱イオン水で15分間すすいだ。得られたカラムを続いてイオンクロマトグラフィーに入れ、クロマトグラフィー性能を再評価した。該カラムは、例外的な低圧力(1分当たり0.25mLの30℃で操作するときは30mMの水酸化カリウム溶離剤を用いて670psi)を示し続けた。カラム効率は、さらなるコーティング工程(硝酸塩の8560プレート)によって本質的に影響を受けないが、硝酸塩の保持時間を11.7分に増加させ、凝縮ポリマーのさらなる層の連続的な添加を示した。続いて、該カラムを1分当たり0.75mLにおける試験を含む数日間のクロマトグラフィー評価に曝した。初期のクロマトグラフィー条件に戻した後、該カラムを再試験し、従来の性能から本質的に変化していないクロマトグラフィー性能を示すことが見出され、該カラムの物理的安定性を説明している。
【0047】
実施例6
0.68gの実施例3の粒子を、932gの水、5gのlgebal CO-630(エトキシ化アルキルフェノール非イオン性界面活性剤)、50gの酢酸及び13gのエチレンジアミンからなる2.18gの溶液と共に用いて混合物を調製した。別々に、0.68gの実施例2からの粒子を、2.01gの上記スラリー溶液で懸濁して混合した。これに続き、実施例2の粒子の混合物を実施例3の粒子の混合物にゆっくり加え、マグネティックスターラーを用いて激しく攪拌した。得られた混合物を、続いて2mm×250mmのカラム体に1分当たり2.5mLで65℃にて15分間かけて充填した。続いて、該カラムをカラム充填用アダプターから取り外し、末口の付属品を65℃の水浴に置かれている充填されたカラムに取り付けた。これに続き、充填されたカラムを65℃の水浴に入れ、10質量%のブタンジオールジグリシジルエーテルを含有する混合物を30分かけて1分当たり0.2mLで通した。これに続き、流れを遮ることなく、4質量%のメチルアミンを含有する溶液をさらに30分かけてカラムに通した。最後の2工程は、全部で60分のさらなる時間にわたる1種のさらなる反応サイクルで繰り返した。続いて、該カラムを水浴から除去する前に脱イオン水で15分間すすいだ。得られたカラムを続いてイオンクロマトグラフィーに入れ、クロマトグラフィー性能を評価した。該カラムは、該カラムを調製するのに用いた粒子サイズのために例外的に低圧とした(1分当たり0.25mLの30℃で操作するときは30mMの水酸化カリウム溶離剤を用いて650psi)。該カラムは、6.2分の保持時間を有した硝酸塩のための8630プレートの効率を有するこのサイズの粒子の平均よりもわずかに優れた効率を示した。上記のように調製された材料の特性により、硫酸塩及び炭酸塩の再溶解は上記条件下でこのカラムにより最小となった。
【0048】
実施例7
続いて、実施例6のカラムをカチオン性ラテックス粒子(選択された該粒子はDionex CorporationのlonPac AS11-HCカラムの調製で用いられ得る)のコロイド分散により処理し、該分散系を1分当たり0.1mLの流速でカラムに注いだ。その後、該カラムを、脱イオン水及び25%のアセトニトリルを含有する0.1モル/Lの水酸化ナトリウムですすいだ。続いて、得られたカラムをイオンクロマトグラフィーに入れ、クロマトグラフィー性能を再評価した。該カラムは、該カラムを調製するのに用いた粒子サイズでは例外的に低圧とした(1分当たり0.25mLの30℃で操作するときは30mMの水酸化カリウム溶離剤を用いて650psi)。該カラムは、ラテックスコーティング工程前の評価と比較して向上した効率を示した。硝酸塩のためのクロマトグラフィー効率は9800プレートまで増加し、該保持時間は8.0分まで増加し、成分Bの粒子の表面上のカチオン性ラテックス粒子の取り込みを示した。炭酸塩の硫酸塩からの再溶解は、ラテックスコーティング方法後に実質的に向上し、凝縮カチオン性ポリマー及びカチオン性ラテックス粒子の両方を含有するカラム固定相組成物として期待される。続いて、該カラムを、1分当たり0.75mL程度に高い流速における操作を含む種々の異なる溶離条件に曝し、上記条件下で再試験したときにカラム性能の著しい劣化は起こらなかった。
【0049】
実施例8(比較例)
0.75gの上記実施例2の樹脂を、0.75gの10μmで15%架橋粒子サイズのメソポーラスアニオン交換樹脂(該樹脂はDionex CorporationのCarboPac MA1カラムの調製に用いた)と混合し、932gの水、5gのlgebal CO-630(エトキシ化アルキルフェノール非イオン性界面活性剤)、50gの酢酸及び13gのエチレンジアミンからなる6.0gの溶液に懸濁した。アニオン交換樹脂は、樹脂表面から突出しているカチオン性ポリマーが存在しないように合成した(すなわち、このアニオン交換樹脂は従来の様式で製造した)。この樹脂は凝集のわずかな証拠を示した。4滴のこのスラリーを10mLの脱イオン水に加えて200倍の顕微鏡で調査した。著しい数の凝集粒子が観察された。続いて、4滴の同スラリーを10mLの上記スラリー溶液に加えた。この高いイオン強度媒体では、ほぼ全ての粒子凝集物が凝集物の形態で存在する粒子の10%未満に消失し、該凝集物のほぼ全てが2粒子のみからなる。明らかに、突出しているイオンポリマーの不存在下では静電気的凝集は非常に弱く、イオン強度単独によって分解される。そのような弱い凝集は、物理的に安定な凝集床カラムを製造するのに不十分であった。
【0050】
実施例9
実施例2に記載のように調製された4.12gの7.9μmで軽質表面スルホン化非多孔性の樹脂を、932gの水、5gのlgebal CO-630(エトキシ化アルキルフェノール非イオン性界面活性剤)、50gの酢酸及び13gのエチレンジアミンからなる8.22gの溶液で懸濁した。得られたスラリーを、4mm×250mmのカラム体に1分当たり8mLで65℃の温度にて15分間かけて充填した。続いて、充填されたカラムをカラム充填用の場所から除去し、末口の付属品をカラム体に取り付ける。これに続き、充填されたカラムを続いて65℃の水浴に入れ、7.2質量%のブタンジオールジグリシジルエーテル及び1.12質量%のメチルアミンを含有する混合物を、2時間かけて1分当たり0.25mLでカラムに供給した。流れを遮ることなく、10質量%のブタンジオールジグリシジルエーテルを含有する溶液をさらに30分かけてカラムに通した。この後、流れを遮ることなく、4質量%のメチルアミンを含有する溶液をさらに30分かけてカラムに通した。続いて、該カラムを、水浴から除去する前に脱イオン水で15分間すすいだ。該カラムを空にし、粒子を高ワット量の超音波プローブに曝して前述の方法中に共に固められた全ての粒子を引き離し、該粒子を濾過し、脱イオン水で洗浄し、及び湿ったケーキの形状で保存した。そのように形成された粒子は、外表面からのみ伸びているカチオン性ポリマーでコーティングされた成分Aの粒子を含む。
【0051】
実施例10
上記実施例2の0.75gの樹脂を実施例9の0.75gの樹脂と混合し、932gの水、5gのfgebal CO-630(エトキシ化アルキルフェノール非イオン性界面活性剤)、50gの酢酸及び13gのエチレンジアミンからなる6.0gの溶液で懸濁した。該アニオン交換樹脂を、カチオン性ポリマーが該樹脂表面から突出するように合成した。この樹脂は凝集の実質的な証拠を示した。4滴のこのスラリーを10mLの脱イオン水に加え、200倍の顕微鏡下で調査した。該粒子のほぼ全てが、大きく拡張された凝集物の形態で存在した。続いて、4滴の同スラリーを上記のような10mLのスラリー溶液に加えた。この高いイオン強度媒体では、ほぼ全ての粒子凝集物が残るが、凝集数は著しく減少した。凝集物の形態で存在する粒子の90%より多く、及び凝集物のほぼ全てが、4粒子より多い凝集数を有した。突出しているイオンポリマーの存在下では、静電気的凝集が、粒子凝集物を粉砕するのに十分なイオン強度単独に曝されることでかなり強くなる。そのような強い凝集力は、実施例4-7に記載の物理的に安定な凝集床カラムを製造する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロマトグラフィー充填剤としての使用に好適なイオン交換粒子を含む凝集床であって:
(a)基体粒子と前記基体粒子に結合している一価の正又は負に荷電したポリマー鎖とを含む成分A、及び
(b)前記荷電ポリマー鎖と反対の電荷を持つ外表面を有する基体粒子を含む成分B、
を含み、少なくとも一部の前記成分A及び成分Bが、前記成分Aの荷電ポリマー鎖及び前記成分Bの外表面の間の静電気力によって少なくとも部分的に結合され、コンポジットとしてイオン交換粒子の凝集床を形成する、凝集床。
【請求項2】
前記成分Bの荷電した外表面が、前記成分Aのポリマー鎖と反対の電荷を有するポリマー鎖を含む、請求項1記載の凝集床。
【請求項3】
前記成分Aの基体粒子がマクロポーラスであり、前記成分Aのポリマー鎖が前記粒子のマクロ孔から突出している、請求項1記載の凝集床。
【請求項4】
前記成分Aのポリマー鎖が、前記成分Aの基体粒子上にグラフトされている、請求項1記載の凝集床。
【請求項5】
前記グラフトされているポリマー鎖が、前記成分Aの基体粒子上に現場で重合される、請求項4記載の凝集床。
【請求項6】
前記ポリマー鎖が、前記基体粒子の表面から突出している、請求項1記載の凝集床。
【請求項7】
前記成分Aの基体粒子が、前記成分Aのポリマー鎖が付着している実質的に非荷電のコアを有する、請求項1記載の凝集床。
【請求項8】
前記成分Aの基体又は成分Bの基体粒子よりも実質的に小さく、且つ前記成分Bの外表面と反対の電荷を有する成分Cの基体粒子をさらに含み、前記成分Cの粒子は前記成分Bの外表面に少なくとも部分的に静電気力によって結合されている、請求項1記載の凝集床。
【請求項9】
前記成分Bの基体粒子が、前記突出している成分Aのポリマー鎖と絡み合っている、請求項1記載の凝集床。
【請求項10】
前記成分Aのポリマー鎖が、アミン及びポリ官能性化合物の少なくとも第一及び第二の縮合ポリマー反応生成物によって形成され、前記第一の反応生成物は前記成分Aの基体粒子に付着しており、且つアミン及びポリ官能性化合物の反応生成物を含み、及び第二の反応生成物は前記第一の反応生成物と結合している、請求項1記載の凝集床。
【請求項11】
前記凝集床がクロマトグラフィーカラムに配置されている、請求項1記載の凝集床。
【請求項12】
液体サンプル流におけるイオン種を、請求項11記載のクロマトグラフィーカラムを通る溶離液に該流れを流すことによって分離することを含む、液体クロマトグラフィーの方法。
【請求項13】
前記成分Aの基体粒子:前記成分Bの基体粒子の比が、約1:99〜約99:1である、請求項1記載の凝集床。
【請求項14】
成分A及び成分Bの粒径比が0.2:1〜5:1である、請求項1記載の凝集床。
【請求項15】
クロマトグラフィー充填剤としての使用に好適なイオン交換粒子を含む凝集床を製造するための方法であって:
基体粒子と前記基体粒子に結合している一価の正又は負に荷電したポリマー鎖とを含む成分Aを、前記荷電ポリマー鎖と反対の電荷を持つ外表面を有する基体粒子を含む成分Bと混合して、少なくとも一部の前記成分A及び成分Bを、前記成分Aの荷電ポリマー鎖及び前記成分Bの外表面の間の静電気力によって少なくとも部分的に結合し、コンポジットとしてイオン交換粒子の凝集床を形成する、方法。
【請求項16】
前記成分Aのポリマー鎖を前記成分Aの基体粒子上にグラフトして、前記結合された成分Aのポリマー鎖を形成することをさらに含む、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記グラフト化が、前記成分Aのポリマー鎖を前記成分Aの基体粒子上に現場で重合することによって行われる、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記ポリマー鎖が前記基体粒子から突出している、請求項15記載の方法。
【請求項19】
前記成分Bの荷電した外表面が、前記成分Aのポリマー鎖と反対の電荷で荷電したポリマー鎖を含む、請求項15記載の方法。
【請求項20】
前記成分Aの基体粒子がマクロポーラスであり、前記成分Aのポリマー鎖が前記粒子のマクロ孔から突出している、請求項15記載の方法。
【請求項21】
前記成分Aの粒子又は成分Bの粒子よりも実質的に小さく、且つ前記成分Bの粒子の外表面と反対の電荷を有する成分Cの粒子を混合して、前記成分Cの粒子を前記成分Bの粒子の外表面に少なくとも部分的に静電気力によって結合することをさらに含む、請求項15記載の方法。
【請求項22】
前記成分Aの基体粒子が実質的に非荷電のコアを有する、請求項15記載の方法。
【請求項23】
前記成分Bの基体粒子が、前記突出している成分Aのポリマー鎖と絡み合っている、請求項15記載の方法。
【請求項24】
前記混合物をクロマトグラフィーカラムに充填することをさらに含む、請求項15記載の方法。
【請求項25】
前記成分Aの基体粒子:前記成分Bの基体粒子の比が、約1:99〜約99:1である、請求項15記載の方法。
【請求項26】
成分A及び成分Bの粒径比が0.2:1〜5:1である、請求項15記載の方法。
【請求項27】
前記成分Aのポリマー鎖が、アミン及びポリ官能性化合物の少なくとも第一及び第二の縮合ポリマー反応生成物によって形成され、前記第一の反応生成物は前記成分Aの基体粒子に付着しており、且つアミン及びポリ官能性化合物の反応生成物を含み、及び第二の反応生成物は前記第一の反応生成物と結合している、請求項15記載の方法。
【請求項28】
前記混合が混合用チャンバーで行われ、該凝集床がクロマトグラフィーカラムに充填される、請求項15記載の方法。
【請求項29】
前記凝集床が、混合後且つ充填前に粉砕される、請求項28記載の方法。

【公表番号】特表2009−508675(P2009−508675A)
【公表日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−531345(P2008−531345)
【出願日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際出願番号】PCT/US2006/035956
【国際公開番号】WO2007/035459
【国際公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(591025358)ダイオネックス コーポレイション (38)
【Fターム(参考)】