説明

凝集体の解砕方法

【課題】 本発明は、微粒子凝集体、特に、軟質微粒子凝集体の解砕を良好に行うことができる微粒子凝集体の解砕方法を提供する。
【解決手段】 本発明の微粒子凝集体の解砕方法は、微粒子凝集体の解砕室11を有し且つ解砕室11の内周面に固定片12が形成された固定部材1と、解砕室11内において回転し且つ外周部に回転片を有する回転体3とを備え、固定片12と回転片32との間に形成された隙間によって微粒子凝集体を解砕する解砕部4が形成され且つ解砕部4の最短隙間が0.3〜5mmである解砕装置Aの解砕室11内に、気体と微粒子凝集体とを混合してなり且つ混合比が0.01〜0.1である混合体を供給し、回転体3をその回転片32の最外周端32aの周速が100m/秒以上となるように回転させ、固定部材1の固定片12と回転体3の回転片32との間に形成された解砕部4にて微粒子凝集体を解砕することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凝集体の解砕方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微粒子、特に軟質微粒子は非常に凝集し易く、一次粒子として存在していることは極めて少ない。このような微粒子を添加剤として用いる場合、微粒子が凝集した状態であると、微粒子が添加剤としての性能を充分に発揮しない。従って、微粒子凝集体を解砕する方法が種々提案されている。
【0003】
例えば、ジェットミルや衝撃式粉砕機などの公知の粉砕機を用い、粉砕機の運転条件を調整し、微粒子が粉砕しない程度の条件下にて微粒子凝集体を解砕する方法が行われている。
【0004】
しかしながら、上記解砕方法では、微粒子凝集体が大きい場合や、微粒子の硬度が高い場合には微粒子凝集体の解砕が可能であるが、微粒子凝集体の大きさが数10μm以下の場合や、微粒子の硬度が低い場合には、微粒子凝集体の解砕を充分に行うことができないという問題点を有している。
【0005】
又、公知の混合装置を解砕装置として用いることも考えられるが、通常の混合装置では剪断応力が低いために微粒子凝集体を充分に解砕することは難しい。
【0006】
更に、特許文献1には、所定周速で回転する回転片と固定片とから形成される所定最短隙間を有する衝撃部及びホッパーを有する循環路内に、凝集塊を有する一次粒径が1μm以下の微粉体を投入し、微粉体をホッパーを介して衝撃部に繰り返し循環させて通過させ、衝撃部における機械的衝撃により微粉体の凝集塊を解砕する微粉体の解砕方法が提案されている。
【0007】
しかしながら、上記解砕方法では微粉体を衝撃部に繰り返し循環させて微粉体の解砕を行っていることから、有機微粒子、特に、S10強度が0.05〜2kgf/mm2程度の軟質の有機微粒子の解砕を行うと、解砕時に発生する摩擦熱によって有機微粒子が溶融し、有機微粒子同士が二次凝集を生じ或いは有機微粒子が装置内に付着してしまい、有機微粒子凝集体の解砕が困難になる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第2727220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、微粒子凝集体、特に、軟質微粒子凝集体の解砕を良好に行うことができる微粒子凝集体の解砕方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の微粒子凝集体の解砕方法は、内部に微粒子凝集体の解砕室を有し且つ上記解砕室の内周面に固定片が形成された固定部材と、この固定部材の解砕室内に配設されて回転し且つ外周部に回転片を有する回転体とを備え、上記固定部材の固定片と上記回転体の回転片との間に形成された隙間によって上記微粒子凝集体を解砕する解砕部が形成され且つ上記解砕部の最短隙間が0.3〜5mmである解砕装置の上記解砕室内に、気体と微粒子凝集体とを混合してなり且つ混合比が0.01〜0.1である混合体を供給し、上記回転体をその回転片の最外周端の周速が100m/秒以上となるように回転させて、上記固定部材の固定片と上記回転体の回転片との間に形成された解砕部にて上記微粒子凝集体を解砕することを特徴とする。
【0011】
又、上記微粒子凝集体の解砕方法において、微粒子のS10強度が0.05〜2kgf/mm2であることを特徴とする。
【0012】
そして、上記微粒子凝集体の解砕方法において、固定部材の解砕室の内周面には複数の固定片が回転体の回転方向に連続的に一体的に設けられていると共に、回転体の外周部にはアーム部を介して回転片が一体的に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の微粒子凝集体の解砕方法は、上述の如き構成を有しているので、固定部材の固定片と回転体の回転片との隙間によって形成された解砕部において、微粒子凝集体を解砕室内の温度上昇を押えながら解砕することができ、よって、微粒子が軟質の有機微粒子であっても微粒子の溶融を防止しながら微粒子凝集体の解砕を行って微粒子の一次粒子を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】解砕装置の解砕室を示した縦断面図である。
【図2】解砕装置の解砕室を示した水平断面図である。
【図3】微粒子凝集体を解砕するための装置全体を示したフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る微粒子凝集体の解砕方法の一例を図面を参照しながら説明する。先ず、本発明の微粒子凝集体の解砕方法において用いられる解砕装置Aを説明する。図1及び図2において、1は固定部材であり、内部には正面円形状で且つ一定前後幅を有する解砕室11を有している。そして、固定部材1の解砕室11の内周面にはその下周面を除いた部分の全面に亘って複数個の固定片12、12・・・が連続的に鋸歯状に形成されている。固定片12は、その正面形状が三角形状で且つ前後幅が解砕室11の内周面における前後方向の幅と同一寸法に形成されている。なお、固定部材1の解砕室11の下周面には、解砕室11内にて解砕されて得られた微粒子を取り出すための取出口13が内外方向に貫通した状態に開設されており、取出口13には、網状体13a、例えば、孔径が0.5〜0.7mmのパンチングメッシュが張設されている。
【0016】
又、固定部材1の解砕室11における前側壁部の中央部には微粒子凝集体を供給するための供給口11aが開設されており、この供給口11aの外側開口端にはホッパー2がその供給口を連通させた状態に一体的に設けられている。
【0017】
更に、図1に示したように、固定部材1の解砕室11内には所定方向(図1では反時計回り方向)に回転する回転体3が配設されている。この回転体3の外周部には、その周方向に一定間隔毎に一定長さを有するアーム部31が放射状に突設されており、各アーム部31の外周端に正面四角形状で且つ前後方向の寸法が解砕室11の前後方向の寸法よりも僅かに小さな寸法に形成された回転片32が一体的に設けられている。
【0018】
そして、回転する回転体3の回転片32と、固定部材1の固定片12との対向面間の隙間によって解砕部4が形成されており、この解砕部4にて微粒子凝集体が解砕されて一次粒子である微粒子とされる。更に、解砕部4の最短隙間、即ち、回転する回転体3の回転片32の最外周端32aと、固定部材1の固定片12の最内周端12aとが最も接近した時の回転片32の最外周端32aと固定片12の最内周端12aとの距離が0.3〜5mmとなるように形成されており、微粒子凝集体を解砕可能に構成されている。なお、回転体3の回転片32の最外周端32aとは、回転体3が回転した時の回転片32が通る軌道のうち最も外周にある部分をいう。固定部材1の固定片12の最内周端12aとは、固定片12のうちの最も内側にある部分をいう。
【0019】
上述のように構成された解砕装置Aには、図3に示したように、微粒子凝集体と気体との混合体を供給するための供給管5の一端がホッパー2に連結、連通されている。そして、供給管5の他端は二つに分岐されており、一方の分岐管51の他端には微粒子凝集体を貯留している貯留タンクBが連結、連結されていると共に、分岐管51には微粒子凝集体の定量フィーダーCが介在されており、貯留タンクBに貯留されている微粒子凝集体が単位時間当り一定量づつ供給管5に供給されるように構成されている。
【0020】
一方、供給管5の他方の分岐管52の他端には気体取入口Dが開設されていると共に、分岐管52には風量測定器Eが介在されており、気体取入口Dから供給管5に供給される風量を測定しており、この風量測定器Eで測定された風量に基づいて後述する吸引ブロワーFの単位時間当りの気体の吸引量を図示しない制御装置を用いて制御可能に構成している。即ち、吸引ブロワーFの単位時間当りの気体の吸引量を制御することによって、供給管5に供給される単位時間当りの気体量が制御され、微粒子凝集体と気体との混合比が制御されるように構成されている。
【0021】
そして、貯留タンクBから定量フィーダーCによって単位時間当り一定量づつ供給管5に供給された微粒子凝集体は、気体取入口Dから取り入れられて分岐管52を通じて供給管5に供給された気体と上述の制御によって所定比にて混合されて混合体となり、解砕装置Aの解砕室11内に供給管5を通じて供給されるように構成されている。
【0022】
又、解砕装置Aの解砕室11の取出口13には排出管6の一端が連結、連通されており、この排出管6の他端には吸引ブロワーFが配設されている。この吸引ブロワーFによって気体を吸引することにより、排出管6、解砕装置Aの解砕室11、供給管5及び空気取入口Dを通じて解砕装置Aの解砕室11内に微粒子凝集体と気体との混合体が供給されるように構成されている。
【0023】
更に、排出管6には分離装置Gが介在されており、この分離装置Gは、解砕装置Aの解砕室11から排出された微粒子を空気から分離する装置であり、空気から分離された微粒子は、分離装置Gに連結、連通している微粒子タンクHに溜められる。なお、分離装置Gとしては、汎用の装置が用いられ、空気中の微粒子を遠心分離によって微粒子と空気とに分離する装置などが挙げられる。
【0024】
次に、上記解砕装置を用いて微粒子凝集体を解砕する要領について説明する。先ず、上記解砕装置を用いて解砕される微粒子凝集体としては、特に限定されないが、本発明の効果を効果的に発揮できるので、有機微粒子が凝集した微粒子凝集体が好ましく、直径(一次粒径)が50μm以下である有機微粒子が凝集した微粒子凝集体がより好ましい。
【0025】
有機微粒子としては、例えば、ポリアクリル酸メチル粒子などのポリアクリル酸エステル粒子、メタクリル酸メチル粒子などのメタクリル酸エステル粒子などのポリアクリル系樹脂粒子、ポリアミド系樹脂粒子、ポリスチレン系樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子、ポリウレタン系樹脂粒子、ポリエチレン系樹脂粒子、ポリプロピレン系樹脂粒子などが挙げられる。
【0026】
そして、微粒子のS10強度は、小さいと、微粒子凝集体を解砕するのが困難となることがあり、大きいと、一次粒子を粉砕してしまうことがあるので、0.05〜2kgf/mm2が好ましい。
【0027】
なお、微粒子のS10強度は、微粒子をその直径の10%の寸法だけ直径方向に圧縮した時の圧縮強度であり、微粒子の硬さの指標となる値である。下記の要領で測定される。一個の微粒子に一定の負荷速度で1gfまで荷重を加えて圧縮し、微粒子の直径が圧縮前の直径の90%となった時点における荷重P(kgf)を測定する。そして、下記式に基づいて微粒子のS10強度を算出することができる。なお、Lは、一個の微粒子の直径L(mm)である。
微粒子のS10強度(kgf/mm2)=2.8×P/(π×L2
【0028】
なお、微粒子のS10強度は、島津製作所から商品名「微小圧縮試験機HCTM200」で市販されている測定装置を用いて下記の要領で測定することができる。具体的には、微粒子をエタノール中に分散させて分散液を作製し、この分散液を鏡面仕上げした鋼製試料台に塗布して乾燥させ、測定用の試料を調整し、下記条件下にて微粒子のS10強度を測定することができる。なお、一個の微粒子の直径Lは、測定装置に内蔵された顕微鏡にて測定することができる。
【0029】
試験温度:常温(20℃)、相対湿度65(%)
試験用圧子:平面50(直径50μmの平面圧子)
試験種類:圧縮試験(MODE1)
試験荷重:1.00(gf)
負荷速度:0.072500(gf/秒)
変位フルスケール:10(μm)
【0030】
上記微粒子凝集体を貯留タンクBに供給する。しかる後、定量フィーダーCを作動させて、貯留タンクB内の微粒子凝集体を単位時間当り一定量づつ供給管5に供給する。これと同時に、吸引ブロワーFを作動させて気体、通常は空気を吸引し、分岐管52の気体取入口Dから単位時間当り一定量の気体を供給管5に供給する。なお、供給管5に供給される気体量は、風量測定器Eによって計測されており、風量測定器Eにて測定された気体量に基づいて図示しない制御装置によって吸引ブロワーFの気体吸引量が制御されている。
【0031】
そして、供給管5に供給された微粒子凝集体と気体とは混合されて混合体とされ、この混合体は、吸引ブロワーFによる吸引力によって、解砕装置Aのホッパー2を通じて解砕室11内に連続的に供給される。
【0032】
ここで、供給管5に供給された混合体における微粒子凝集体と気体との混合比は、小さいと、解砕装置の解砕室11内の解砕部4にて微粒子凝集体に充分に剪断応力を加えることができず、微粒子凝集体の解砕が不充分となり、大きいと、微粒子凝集体の摩擦熱によって解砕装置の解砕室11内の温度が高くなり、微粒子凝集体の微粒子が溶融し、微粒子同士が二次凝集を生じ或いは解砕室内部に付着する微粒子量が増加するので、0.01〜0.1に限定され、0.03〜0.08が好ましい。
【0033】
混合体における微粒子凝集体と気体との混合比とは、供給管5内を流通する単位時間当りの微粒子凝集体の重量(kg/分)を、供給管5内を流通する単位時間当りの気体の重量(kg/分)で除した値をいう。
【0034】
供給管5内を流通する単位時間当りの微粒子凝集体の重量は、貯留タンクBから定量フィーダーCによって供給管5に供給される単位時間当りの微粒子凝集体の重量であり、定量フィーダーCによって制御することができる。
【0035】
又、供給管5内を流通する単位時間当りの気体の重量は、吸引ブロワーFによって気体取入口Dから取り入れられて供給管5に供給される単位時間当りの気体の重量であり、吸引ブロワーFによる気体の吸引量を調整することによって制御することができる。
【0036】
更に、解砕室11内に供給される単位時間当りの混合体の供給量V1(m3/分)と解砕室11内の空間容積V2(m3)との比率(V1/V2)は、低いと、解砕室11内に供給される単位時間当りの微粒子凝集体の量が少なくなり、微粒子凝集体に解砕部にて充分な剪断応力を加えることができず、高いと、微粒子凝集体の摩擦熱によって解砕装置の解砕室11内の温度が高くなり、微粒子凝集体の微粒子が溶融し、微粒子同士が二次凝集を生じ或いは解砕室内部に付着する微粒子量が増加することがあるので、2000〜40000が好ましく、7000〜20000がより好ましい。
【0037】
なお、解砕室11内の空間容積V2(m3)とは、解砕室11内の気体が存在している部分の容積であり、具体的には、解砕室11の前側壁部に供給口11aを形成しなかった場合における解砕室11内の容積から回転体3の体積を引いた値をいう。
【0038】
一方、解砕装置Aにおいては、解砕室11内に配設された回転体3が一定方向(図1では反時計回り方向)にその回転片32の最外周端32aの周速が100m/秒以上となるように、好ましくは100〜150m/秒となるように回転している。なお、回転片32の最外周端32aの周速が100m/秒未満となると、混合体中の微粒子凝集体に解砕部4において充分な剪断応力を加えることができず、微粒子凝集体の解砕が不充分となる。
【0039】
上述の要領で解砕装置Aの解砕室11内に供給された微粒子凝集体と気体との混合体は、解砕室11内において回転する回転体3によって生じた外側に向く渦巻き状に発生している気流によって解砕室11内の外側方向に運ばれる。
【0040】
この際、回転体3の回転片32はアーム部31を介して回転体3の外周面に一体的に設けられており、回転片32と、回転体3の外周面との間には比較的大きな空間部が形成されていることから、微粒子凝集体は上述した外側に向く渦巻き状の気流によって円滑に解砕室11内の外側方向、即ち、固定片12方向に向かって円滑に運ばれる。
【0041】
そして、微粒子凝集体は、回転している回転体3の回転片32と、固定部材1の固定片12との対向面間に形成された隙間からなる解砕部4間に進入し、固定片12と回転片32とによって微粒子凝集体に剪断応力が加えられて、微粒子凝集体の微粒子同士をこれら微粒子が粉砕されることなく互いに分離させて微粒子凝集体が解砕され、一次粒子である微粒子が製造される。
【0042】
上述のように、微粒子凝集体は、固定部材1の固定片12と回転体3の回転片32とによって剪断応力が加えられて解砕されるが、回転体3の回転片32が固定部材1の固定片12を通過する通過回数Nは解砕効率の点から2×106〜5×106回が好ましい。
【0043】
なお、上記通過回数Nは、固定部材1に形成された固定片の総数N1、回転体3に一体的に設けられた回転片32の総数N2、及び、回転体3の回転数R(rpm)から下記式に基づいて算出することができる。
通過回数N=N1×N2×R
【0044】
上述のようにして製造された一次粒子とされた微粒子は、固定部材1の取出口13から連続的に取り出されて、再度、上記解砕装置Aに戻されることなく、排出管6を通じて分離装置Gに供給される。そして、分離装置Gにて気体中から微粒子が分離され、微粒子は微粒子タンクに供給、収納される。
【実施例】
【0045】
(実施例1)
図1〜3に示した解砕装置を用意した。懸濁重合することによって得られたポリアクリル酸エステル系樹脂微粒子の凝集体を用意した。
【0046】
ポリアクリル酸エステル系樹脂微粒子の凝集体は、目開きが32μmの篩を用いて篩ったところ、全体の20重量%程度しか通過せず、電子顕微鏡で観察すると、ポリアクリル酸エステル系樹脂微粒子の凝集体は、40〜200μmの直径又は長径を有していた。
【0047】
ポリアクリル酸エステル系樹脂微粒子の凝集体を貯留タンクBに供給した。しかる後、定量フィーダーCを作動させて、貯留タンクB内のポリアクリル酸エステル系樹脂微粒子の凝集体を1kg/分の供給量で供給管5に供給した。これと同時に、吸引ブロワーFを作動させて空気を吸引し、分岐管52の気体取入口Dから19.4kg/分の供給量で供給管5に供給した。なお、供給管5に供給される気体量は、風量測定器Eによって計測し、風量測定器Eにて測定された気体量に基づいて図示しない制御装置によって吸引ブロワーFの気体吸引量を制御した。
【0048】
そして、供給管5に供給されたポリアクリル酸エステル系樹脂微粒子の凝集体と気体とは混合されて混合比が0.052の混合体とされ、この混合体は、吸引ブロワーFによる吸引力によって、解砕装置Aのホッパー2を通じて解砕室11内に連続的に供給された。なお、解砕室11内に供給された単位時間当りの混合体の供給量V1は16m3/分であり、解砕室11内の空間容積V2は1.5×10-33であった。解砕室11内に供給された単位時間当りの混合体の供給量V1(m3/分)と、解砕室11内の空間容積V2(m3)との比率(V1/V2)は、10667であった。
【0049】
一方、解砕装置Aにおいては、解砕室11内に配設された回転体3が図1において反時計回り方向にその回転片32の最外周端32aの周速が104m/秒となるように回転速度8000rpmにて回転していた。
【0050】
なお、回転体3の外周面にはその周方向に一定間隔毎に一定長さのアーム部31が12本、形成されており、各アーム部31の外周端には正面四角形状で且つ前後方向の寸法が解砕室11の前後方向の寸法よりも僅かに小さな寸法に形成された回転片32が一体的に設けられていた。
【0051】
又、固定部材1の解砕室11の内周面にはその下周面を除いた部分の全面に亘って34個の固定片12、12・・・が連続的に鋸歯状に形成されていた。固定部材1の固定片12は、その正面形状が三角形状で且つ前後幅が解砕室11の内周面における前後方向の幅と同一寸法に形成されていた。
【0052】
そして、解砕部4の最短隙間、即ち、回転する回転体3の回転片32の最外周端32aと、固定部材1の固定片12の最内周端12aとが最も接近した時の回転片32の最外周端32aと固定片12の最内周端12aとの距離は1mmであった。
【0053】
解砕装置Aの解砕室11内に供給されたポリアクリル酸エステル系樹脂微粒子の凝集体と気体との混合体は、解砕室11内において回転する回転体3によって生じた外側に向く渦巻き状に発生している気流によって解砕室11内の外側方向に運ばれ、ポリアクリル酸エステル系樹脂微粒子の凝集体は、回転している回転体3の回転片32と、固定部材1の固定片12との対向面間に形成された隙間からなる解砕部4間に進入し、固定片12と回転片32とによってポリアクリル酸エステル系樹脂微粒子の凝集体に剪断応力が加えられてポリアクリル酸エステル系樹脂微粒子の凝集体が解砕され、一次粒子であるポリアクリル酸エステル系樹脂微粒子が製造された。なお、ポリアクリル酸エステル系樹脂微粒子の凝集体の解砕にあたって、ポリアクリル酸エステル系樹脂微粒子は粉砕されていなかった。
【0054】
そして、製造された一次粒子とされたポリアクリル酸エステル系樹脂微粒子は、固定部材1の取出口13から連続的に取り出されて排出管6を通じて分離装置Gに供給され、分離装置Gにて空気中からポリアクリル酸エステル系樹脂微粒子が分離され、ポリアクリル酸エステル系樹脂微粒子は微粒子タンクに供給、収納された。なお、固定部材1の取出口13には孔径が0.5〜0.7mmのパンチングメッシュが張設されていた。解砕装置Aの解砕室11の取出口13から排出されたポリアクリル酸エステル系樹脂微粒子は、再度、解砕装置Aの解砕室11に戻されることはなかった。
【0055】
得られたポリアクリル酸エステル系樹脂微粒子は、目開きが32μmの篩を用いて篩ったところ、全体の99.9重量%が通過し、電子顕微鏡で観察すると、全てが一次粒子となっていた。なお、ポリアクリル酸エステル系樹脂微粒子の一次粒子の平均粒径は8μmであった。ポリアクリル酸エステル系樹脂微粒子のS10強度は0.18kgf/mm2であった。
【0056】
ポリアクリル酸エステル系樹脂微粒子の一次粒子の平均粒径は、体積平均粒径であり、ベックマンコールター社から商品名「コールターマルチザイザーII」にて市販されている測定装置を用い、Coulter Electronics Limited発行のREFERENCE MANUAL FOR THE COULTER MULTISIZER(1987)に従って、測定するポリアクリル酸エステル系樹脂微粒子の一次粒子の粒径に適合したアパチャーを用いてキャリブレーションを行い測定した。
【0057】
具体的には、ポリアクリル酸エステル系樹脂微粒子の一次粒子0.1gを0.1体積%のノニオン系界面活性剤溶液10ミリリットル中にタッチミキサー及び超音波を用いて予備分散させて分散液を作製し、本体備え付けのISOTON II(ベックマンコールター社製:測定用電解液)を満たしたビーカー中に上記分散液を緩く攪拌しながらスポイドを用いて滴下して、本体画面の濃度計の示度を10%前後に合わせた。
【0058】
次に、測定装置本体にアパチャーサイズをREFERENCE MANUAL FOR THE COULTER MULTISIZER(1987)に従って入力し、manualで測定を行った。測定中は、ビーカー内に気泡が入らない程度に緩く攪拌しておき、ポリアクリル酸エステル系樹脂微粒子の一次粒子を10万個測定した時点で測定を終了した。
【0059】
(実施例2)
懸濁重合することによって得られたポリアクリル酸エステル系樹脂微粒子の凝集体を用意し、このポリアクリル酸エステル系樹脂微粒子の凝集体における一次粒子の平均粒径は15μmであり、ポリアクリル酸エステル系樹脂微粒子のS10強度が0.19kgf/mm2であったこと、貯留タンクB内のポリアクリル酸エステル系樹脂微粒子の凝集体を0.7kg/分の供給量で供給管5に供給したこと以外は実施例1と同様の要領でポリアクリル酸エステル系樹脂微粒子の凝集体を解砕して一次粒子であるポリアクリル酸エステル系樹脂微粒子を製造した。なお、混合体の混合比は0.036であった。ポリアクリル酸エステル系樹脂微粒子の凝集体の解砕にあたって、ポリアクリル酸エステル系樹脂微粒子は粉砕されていなかった。
【0060】
解砕装置Aで解砕する前のポリアクリル酸エステル系樹脂微粒子の凝集体は、目開きが32μmの篩を用いて篩ったところ、全体の20重量%程度しか通過せず、電子顕微鏡で観察すると、ポリアクリル酸エステル系樹脂微粒子の凝集体は、40〜200μmの直径又は長径を有していた。
【0061】
得られたポリアクリル酸エステル系樹脂微粒子は、目開きが32μmの篩を用いて篩ったところ、全体の99.9重量%が通過し、電子顕微鏡で観察すると、全てが一次粒子となっていた。
【0062】
(実施例3)
回転体3をその回転片32の最外周端32aの周速が130m/秒となるように回転速度10000rpmにて回転させたこと以外は実施例1と同様の要領でポリアクリル酸エステル系樹脂微粒子の凝集体を解砕して一次粒子であるポリアクリル酸エステル系樹脂微粒子を製造した。ポリアクリル酸エステル系樹脂微粒子の凝集体の解砕にあたって、ポリアクリル酸エステル系樹脂微粒子は粉砕されていなかった。
【0063】
得られたポリアクリル酸エステル系樹脂微粒子は、目開きが32μmの篩を用いて篩ったところ、全体の99.9重量%が通過し、電子顕微鏡で観察すると、全てが一次粒子となっていた。
【0064】
(比較例1)
回転体3をその回転片32の最外周端32aの周速が91m/秒となるように回転速度7000rpmにて回転させたこと以外は実施例1と同様の要領でポリアクリル酸エステル系樹脂微粒子の凝集体を解砕して一次粒子であるポリアクリル酸エステル系樹脂微粒子を製造した。
【0065】
得られたポリアクリル酸エステル系樹脂微粒子は、目開きが32μmの篩を用いて篩ったところ、全体の40重量%が通過し、篩を通過したポリアクリル酸エステル系樹脂微粒子を電子顕微鏡で観察すると、全てが一次粒子となっていた。又、篩上には、ポリアクリル酸エステル系樹脂微粒子の凝集体が残っていた。しかしながら、解砕装置Aの解砕室11内を確認したところ、解砕室11内に供給した全量のうちの60重量%がポリアクリル酸エステル系樹脂微粒子の凝集体のまま存在していた。
【0066】
(比較例2)
貯留タンクB内のポリアクリル酸エステル系樹脂微粒子の凝集体を0.17kg/分の供給量で供給管5に供給したこと、吸引ブロワーFを作動させて空気を吸引し、分岐管52の気体取入口Dから19.4kg/分の供給量で供給管5に供給したこと以外は実施例1と同様の要領でポリアクリル酸エステル系樹脂微粒子の凝集体を解砕して一次粒子であるポリアクリル酸エステル系樹脂微粒子を製造した。なお、混合体の混合比は0.0089であった。
【0067】
得られたポリアクリル酸エステル系樹脂微粒子は、目開きが32μmの篩を用いて篩ったところ、全体の47重量%が通過し、篩を通過したポリアクリル酸エステル系樹脂微粒子を電子顕微鏡で観察すると、全てが一次粒子となっていた。又、篩上には、ポリアクリル酸エステル系樹脂微粒子の凝集体が残っていた。しかしながら、解砕装置Aの解砕室11内を確認したところ、解砕室11内に供給した全量のうちの60重量%がポリアクリル酸エステル系樹脂微粒子の凝集体のまま存在していた。
【0068】
(比較例3)
貯留タンクB内のポリアクリル酸エステル系樹脂微粒子の凝集体を2.5kg/分の供給量で供給管5に供給したこと、吸引ブロワーFを作動させて空気を吸引し、分岐管52の気体取入口Dから19.4kg/分の供給量で供給管5に供給したこと以外は実施例1と同様の要領でポリアクリル酸エステル系樹脂微粒子の凝集体を解砕して一次粒子であるポリアクリル酸エステル系樹脂微粒子を製造した。なお、混合体の混合比は0.13であった。
【0069】
得られたポリアクリル酸エステル系樹脂微粒子は、目開きが32μmの篩を用いて篩ったところ、全体の31重量%が通過し、篩を通過したポリアクリル酸エステル系樹脂微粒子を電子顕微鏡で観察すると、全てが一次粒子となっていた。又、篩上には、ポリアクリル酸エステル系樹脂微粒子の凝集体が残っていた。更に、解砕装置Aの解砕室11内を確認したところ、解砕室11の内面には、ポリアクリル酸エステル系樹脂の溶着物の付着が見られた
【符号の説明】
【0070】
1 固定部材
11 解砕室
11a 供給口
12 固定片
12a 最内周端
13 取出口
13a 網状体
2 ホッパー
3 回転体
31 アーム部
32 回転片
32a 最外周端
4 解砕部
5 供給管
6 排出管
51 分岐管
52 分岐管
A 解砕装置
B 貯留タンク
C 定量フィーダー
D 気体取入口
D 空気取入口
E 風量測定器
F 吸引ブロワー
G 分離装置
H 微粒子タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に微粒子凝集体の解砕室を有し且つ上記解砕室の内周面に固定片が形成された固定部材と、この固定部材の解砕室内に配設されて回転し且つ外周部に回転片を有する回転体とを備え、上記固定部材の固定片と上記回転体の回転片との間に形成された隙間によって上記微粒子凝集体を解砕する解砕部が形成され且つ上記解砕部の最短隙間が0.3〜5mmである解砕装置の上記解砕室内に、気体と微粒子凝集体とを混合してなり且つ混合比が0.01〜0.1である混合体を供給し、上記回転体をその回転片の最外周端の周速が100m/秒以上となるように回転させて、上記固定部材の固定片と上記回転体の回転片との間に形成された解砕部にて上記微粒子凝集体を解砕することを特徴とする微粒子凝集体の解砕方法。
【請求項2】
微粒子のS10強度が0.05〜2kgf/mm2であることを特徴とする請求項1に記載の微粒子凝集体の解砕方法。
【請求項3】
固定部材の解砕室の内周面には複数の固定片が回転体の回転方向に連続的に一体的に設けられていると共に、回転体の外周部にはアーム部を介して回転片が一体的に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の微粒子凝集体の解砕方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−74285(P2011−74285A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−228756(P2009−228756)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】