説明

凝集性脱塩骨組成物

脱塩骨基質繊維および脱塩骨基質組成物が提供される。脱塩骨基質繊維は、約250μmから約2 mmの範囲の平均繊維長を有し、かつ約4を超える縦横比を有する。脱塩骨基質組成物には、脱塩骨基質繊維および生体適合性液体が、凝集性の成形可能な塊を生成可能な量で含まれている。成形可能な塊は、液体に浸漬された場合にその凝集性を保持する。脱塩骨基質繊維および組成物を製造するための方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1. 発明の技術分野
本発明の分野は、骨修復および置換である。本発明は、特に移植に使用するための、凝集性の、成形可能で、注入可能な脱塩骨粉組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
2. 関連技術の説明
骨移植は、外傷、病的疾病、外科的介入、または他の状況によって引き起こされた骨欠損を修復するために使用される。通常は形も深さも不均等な骨部位への骨増殖媒体の置換を促進するために、欠損充填物は、安定で成形可能なパテの形であることが好ましい。医療専門家は、パテをヘラまたは他の器具の上に取り、部位に塗り付けるか、または骨誘導材料を指で取って適当な形に成形し、修復する部位に適合または充填させる。
【0003】
骨欠損の修復における脱塩骨基質(demineralized bone matrix:DMB)粉の使用は、以前から研究されている。DBMは酸処理によって脱塩された長骨破片から最も一般的に得られる、骨形成性および骨誘導性の物質である。酸処理によって、骨の無機鉱物成分および酸可溶性蛋白質が分解し、コラーゲン基質および酸不溶性蛋白質と増殖因子が残る。残った酸不溶性蛋白質と増殖因子の中に、骨形成蛋白質(bone morphogenic protein:BMP)およびトランスフォーミング増殖因子(transforming growth factor:TGF)がある。DMBは、骨誘導性基質を提供し、骨伝導性の可能性を示すために骨増殖と治癒を促進するので、骨移植材料の成分として望ましい(例、国際公開公報第00/45870号)。さらに、DBMは完全に再吸収され、有機DBMを含む骨移植材料は、天然の骨成分を多く含むために、高度に生体適合性がある。有利なことに、DBMは、単離BMPのような他の多くの有機骨成分添加物よりも安価である。
【0004】
DBMは通常、貯蔵寿命を長くするために、凍結乾燥または無菌で提供される。この形の骨は、通常、非常に粗く乾燥しているために、外科的操作には助けとはならない。
【0005】
米国特許第5,073,373号は、変形可能で、形状維持型の骨形成性組成物を開示しており、ここではDBM粒子がグリセロールのような液体のポリヒドロキシキャリアに分散される。DBM粒子の大部分は無作為で不規則な外形を取り、長さの中央値と厚さの中央値の平均の比は、約1:1から約3:1である。グリセロールの高度な水溶性と低下した粘性の組み合わせによって、組成物は「流れやすく」なり、挿入後ほぼ直ちに部位から流れ出し、そのために組成物は移植部位において適切に保持されない(米国特許第6,030,635号)。
【0006】
長さの中央値と厚さの中央値の比が少なくとも約10:1である骨粒子は、骨形成性組成物中で使用されてきた(米国特許第5,314,476号, 第5,510,396号、および第5,507,813号)。これらの伸長した粒子は、約2 mmから少なくとも約400 mmの長さの中央値、および約0.05 mmから約2 mmの厚さの中央値を有する。DBM繊維は、予め形成されたシート、基質、または加工できるパテとして、Grafton(登録商標) DBM Putty, Grafton(登録商標) DBM Flex、およびGrafton(登録商標) DBM Matrixという商品名でOsteotech Corporation(ニュージャージー州シュルーズベリー)から市販されている。長いDBM繊維を使用すると、グリセロール混合物の体積粘性率および取り扱い特性が向上するが、米国特許第5,510,396号では、この混合物はまだ凝集性を欠くとしている。水性環境におけるグリセロールキャリアの混和性のために、混合物の消散速度が速いことは、やはり問題である。大きな粒子は小さな粒状の骨粒子ほどうまく充填できないので、より大きなDBM粒子を用いると、患者による新しい骨の発生が遅れる可能性がある。そのために、混合物中の空隙が多くなり、新しい骨が増殖して欠損部を適切に充填するまでの時間が長くなる。
【0007】
移植部位におけるDBMの凝集性の欠如の問題を解決するために、カルボキシメチルセルロースのような結合剤の使用、またはキャリア媒体として高分子ハイドロゲルまたは他のポリマーを使用することが報告されている(米国特許第6,030,635号および第6,340,477号)。しかし、これらの結合剤はDBM組成物の生体適合性および骨誘導性にマイナスの影響を与える。さらに、これらの結合剤は移植前にしか、組成物に凝集性を提供しない。移植後には、これらの結合剤は移植部位から腐食または溶解し、その結果、インプラントはインビボでその形状を保たなくなる。
【0008】
例えば骨性または準骨性の欠損部位にインプラントとして使用された時に腐食に耐えられるように、DBM組成物が移植中および移植後にもその形状を保つという能力は、望ましい。
【発明の開示】
【0009】
発明の概要
本発明の1つの局面では、移植前、移植中、および移植後にその形状を保つ(「凝集性」)脱塩骨基質(DBM)組成物が提供される。本発明者らは、驚いたことに、生体適合性の液体と混合されると、短いDBM繊維が凝集性で成形できる塊を形成し、この塊は大量の液体、例、水、生理食塩水、または体液に曝されてもその凝集性を保持することを発見した。組成物の形状および質量は、先行技術の組成物で必要とされるような、結合剤または高粘度のキャリア媒体がなくても、保持される。
【0010】
本発明の1つの局面では、DBM組成物は、約250μmから約2 mmの範囲の平均繊維長を有しかつ約4を超える縦横比を有するDBM繊維、および凝集性の成形可能な塊を生成する量の生体適合性液体を含む。成形可能な塊は、液体に浸漬された場合にも、その凝集性を保持する。
【0011】
1つまたは複数の態様では、DBM繊維は約50μmから約250μmの範囲の平均の厚さを有する。
【0012】
1つまたは複数の態様では、縦横比は約10を超え、または縦横比は約10から約50の範囲である。
【0013】
1つまたは複数の態様では、DBM繊維は、平均の厚さに対する平均の幅が約5未満である比率を有する。
【0014】
DBM組成物は、約3未満の縦横比を有するDBM粒子を任意で含んでよい。
【0015】
DBM組成物は、骨の内方成長および再構築を促進するために、骨誘導性添加剤を任意で含んでよい。
【0016】
DBM組成物は、組成物内での細胞、例えば破骨細胞および骨芽細胞の輸送を促進するために、骨伝導性添加剤を任意で含んでよい。
【0017】
DBM組成物は、組成物の取り扱い特性を変化させるような添加剤を任意で含んでよい。しかし、そのような添加剤は、凝集性の最低許容レベルを維持するためには必要ではない。1つまたは複数の態様では、この添加剤は少なくとも部分的にDBM繊維を被覆する。
【0018】
1つまたは複数の態様では、DBM繊維と生体適合性液体の相対量は、1:10から10:1、または1:4もしくは4:1、または約1:1の範囲である。
【0019】
1つまたは複数の態様では、DBM繊維は、自家皮質骨、同種皮質骨、異種皮質骨、自家海綿骨、同種海綿骨、異種海綿骨、自家皮質海綿骨、同種皮質海綿骨、または異種皮質海綿骨から得られる。
【0020】
1つまたは複数の態様では、DBM組成物は、18ゲージの針で注入できる。
【0021】
本発明の別の局面では、DBM組成物は、約250μmから約2 mmの範囲の平均繊維長を有しかつ約4を超える平均縦横比を有するDBM繊維を含む乾燥成分、および凝集性の形成可能な塊を提供するための量の生体適合性液体を含む。DBM繊維は、乾燥成分の40 wt%より多い量で存在する。形成可能な塊は、液体に浸漬された場合に、その凝集性を保持する。
【0022】
本発明の別の局面では、DBM繊維の少なくとも約25 wt%が、約250μmから約2 mmの範囲の平均繊維長を有し、かつ約4を超える縦横比を有するDBM繊維の集合が提供される。
【0023】
本発明の別の局面では、予め決定された形を有する予め形成されたDBM物品が提供され、この予め形成された物品は、約250μmから約2 mmの範囲の平均繊維長を有しかつ約4を超える縦横比を有するDBM繊維、ならびに凝集性の形成可能な塊を生成するための量の生体適合性液体を含む。形成可能な塊は、液体に浸漬された場合にも凝集性を保持する。
【0024】
1つまたは複数の態様では、予め形成されたDBM物品は、約0.3 g/ccから約0.7 g/ccの範囲の密度を有する。
【0025】
1つまたは複数の態様では、予め形成されたDBM物品は、約10 MPaより大きな耐圧強度を有する。
【0026】
本発明の別の局面では、DBM組成物の製造方法が提供され、ここで約250μmから約2 mmの範囲の平均繊維長を有しかつ約4を超える平均縦横比を有するDBM繊維と、生体適合性液体とを組み合わせて、凝集性の形成可能な塊を生産する。形成可能な塊は、液体に浸漬された場合にも凝集性を保持する。
【0027】
本発明のさらに別の局面では、DBM繊維の製造方法が提供され、ここで骨単位が骨の削りくずの面と一致するような削りくずが得られるように、骨を削る。骨の削りくずは針状の骨断片を得るために断片化する。さらに断片化の前、その間、またはその後に、骨の脱塩を行なう。
【0028】
本発明のさらに別の局面では、予め形成されたDBM物品の製造方法が提供され、ここで約250μmから約2 mmの範囲の平均繊維長を有しかつ約4を超える平均縦横比を有するDBM繊維と、生体適合性液体とを組み合わせて、凝集性の、成形可能な塊を生産する。塊は、予め決定された形を有する予め形成された物品に形成され、予め形成された物品は乾燥される。
【0029】
1つまたは複数の態様では、予め形成された物品は、凍結乾燥される。1つまたは複数の態様では、凍結乾燥された予め形成された物品は、約0.3 g/ccの密度を有する。
【0030】
1つまたは複数の態様では、予め形成された物品は、オーブン乾燥される。1つまたは複数の態様では、オーブン乾燥した予め形成された物品は、約0.7 g/ccの密度を有する。
【0031】
本明細書で使用される「約」という用語は、記載された値の±10%の値を意味する。
【0032】
本明細書で使用される「凝集性」と言う用語は、DBMが生体適合性液体と混合された場合に、展性または流動性の塊を形成し、さらに質量の損失なく、その形状を維持する能力を指す。少なくとも10分間の間、水性環境において、最初の質量および体積の90%より多くが、最初の形状のサイズ内に保持されれば、混合物は凝集性と考えられる。
【0033】
本発明のDBM繊維に関する「平均の厚さに対する平均の長さの比率(average length to average thickness ratio)」という表現は、繊維の最短の長さ(平均の厚み)に対する繊維の最長の長さ(平均の長さ)の比率を意味する。これは、繊維の「縦横比(aspect ratio)」ともよばれる。
【0034】
本発明は以下の図に関して説明されるが、これらは説明のために提供されるものであり、本発明を限定する意図はない。
【0035】
発明の詳細な説明
約250μmから約2 mmの範囲の平均繊維長を有し、かつ平均の厚さに対する平均の幅の比率(縦横比)が約4より大きく、約100未満の脱塩骨基質(DBM)繊維が提供される。1つまたは複数の態様では、DBM繊維は約50μmから約250μmの範囲の厚み中央値を有する。1つまたは複数の態様では、DBM繊維は約10より大きい、または約10から約50の範囲の縦横比を有する。少なくともいくつかの態様では、DBM繊維は、約5未満の平均の厚みに対する平均の幅の比率を有する。
【0036】
天然の骨は、平行した層状の骨単位を含む緻密な非海綿骨を含んでいる。本発明の1つまたは複数の態様に係る短い繊維状DBMを調製するためには、脱脂済みまたは未脱脂のいずれかの皮質骨を、天然の骨の薄層または骨単位110が、削りくずまたはプレートの平面内に一致するように削って、薄い(<250μm)削りくずまたはプレート100を作成する(図1)。皮質骨の骨単位は、もともと骨の長さ方向に並んでいるので、皮質骨はこのような削る工程に特に適している。図2に示すように、この薄い削りくずは、切断ツール210を含む骨旋盤200中で長骨220を回転させることによって得られる。得られた骨の削りくずまたはプレートは、通常約50μmと約250μmの間の厚みと、約2 mmと約30 mmの間の幅を有する。図3には、典型的な骨の削りくず300の顕微鏡写真が示されている。骨単位310が線状に並んでいるのが明らかに見える。本発明の1つまたは複数の態様に係る短い繊維DBMは、自家、同種、または異種の供給源に由来する皮質、海綿、または皮質海綿骨から調製することができる。皮質海綿および海綿骨は、皮質骨よりも密度が低く骨単位の整列の度合いも低いため、上記の削る手順は使用できないが、当業者に周知の通常の方法を用いて、短い繊維に切断できる。
【0037】
削った後、骨の削りくずまたはプレートは、無機質含量を非常に低いレベルに低下させるために、脱塩を行なう。骨断片は、脱塩の前に脱脂しても良い。脱塩時には、骨繊維の離層を起こすために、溶液を適度に攪拌し、それにより細かいロープ様のDBM繊維が形成される。繊維は水および/または適当な緩衝液ですすぎ、可溶化した無機質および過剰の酸を除去する。得られた繊維の無機質含量は低く、例えば、典型的には残留カルシウムの重量の1%以下である。その後、繊維は、例えばオーブン乾燥または凍結乾燥のような通常の方法で、乾燥させる。1つまたは複数の態様では、繊維が絡み合うのを減らすために、標準的な繊維コーミング技術を用いて繊維のコーミングを行なう。
【0038】
本発明の1つまたは複数の態様では、直接、針状の骨を削るか機械加工する、または骨の削りくずおよびプレートを機械的に破壊することによって、脱塩の前に針状の骨を形成する。骨の削りくずおよびプレートは、水性または非水性溶液中でかき混ぜるか、乾式製粉して、針状の骨を形成させることができる。典型的な短い、縦横比の高い針状の骨は、図4に示されている。針状の構造により、縦横比の高いDBM繊維の形成が促進され、削った骨の表面積が増加するため、より有効で効率の良い脱塩ができる。
【0039】
薄い骨の削りくずまたは針状の骨の表面積が大きいため、脱塩は迅速に起こる。骨破片またはより大きな繊維を用いた通常の脱塩過程と比較すると、より穏和な酸の条件および/またはより短い反応時間で脱塩は成功する。例えば、本発明の1つまたは複数の態様にかかる短い繊維は、0.5 M HCl溶液中で1時間で完全に脱塩できるが、これに対して、より大きな骨破片の脱塩を行なう通常の過程では、0.5 M HCl溶液で3時間かかる。これらの穏和な脱塩条件のために、DBMの有機成分への損傷が抑えられる。特に、感受性の高い蛋白質および骨形成性の因子は、本発明の少なくともいくつかの態様にかかる過程後に、高レベルの活性を保持する可能性がある。したがって、通常の過程で処理されたDBM粒子と比較して、これらのDBM繊維では、高レベルの骨誘導性および骨の内方成長が期待される。
【0040】
得られたDBM繊維は、図5に示すような、細かい、ロープ様の繊維を形成する。繊維の形は不規則で、線状、蛇行した、鉤状の、または曲がった形をしている。繊維の形が多様で複雑であるために、繊維はしばしば互いにかみ合う。特定の理論または作用機序に縛られることはないが、本発明の短い繊維DBMが互いにかみ合う能力は、凝集性のDBM組成物の形成に有利であると考えられる。既述のように、繊維が絡み合うのを減らすために、標準的な繊維コーミング技術を用いて繊維のコーミングを行なっても良い。
【0041】
本発明の1つまたは複数の態様に係るDBM組成物を調製するためには、上述のようにして調製された、ある量の短いDBM繊維を、水または任意の他の適当な生体適合性の液体と合わせて、滑らかで流動性がある、凝集性のペーストを形成する。得られた組成物は、任意の望ましい形に成形または注入でき、水、生理食塩水、または他の水性溶液に浸された場合にもその形状を保持する。短いDBMのさらなる利点は、得られたペーストが18ゲージの針を用いて注入できることである。反対に、Grafton(登録商標) DBM繊維の寸法を有するDBM繊維または標準的な不規則な粒子サイズのDBMを用いたペースト組成物は、18ゲージの針では注入できない。
【0042】
液体は、水、生理食塩水、緩衝液、血清、骨髄吸引物、多血小板血漿等、およびその混合物を含む、任意の生体適合性液体で良い。血清、骨髄吸引物、および血液のような、短いDBM繊維と使用するのに適したいくつかの生体適合性液体は、組成物が注入された部位における骨増殖を促進するような骨誘導性因子をさらに含んでいる。
【0043】
本発明の短繊維DBM組成物を水または生理食塩水のみと混合した場合に、凝集性で流動性の混合物を形成する能力は、凝集性の物質を形成させるために、粘性のキャリア液体(例、グリセロール、ゲル、ゼラチン、ヒアルロン酸、またはハイドロゲルポリマー)または結合剤さえも必要とする以前のDBM組成物から、本組成物を差別化するものである。本発明の短繊維DBM組成物は水性溶液を用いて形成されるが、本組成物はそのような水性溶液を使用することに限定されないことに注意されたい。本発明の短繊維DBMは、任意の生体適合性液体と共に使用することができる。他の生体適合性液体の例には、ポリヒドロキシ化合物、液体ポリヒドロキシ化合物誘導体、固体ポリヒドロキシ化合物の液体溶液、固体ポリヒドロキシ化合物誘導体の液体溶液、液体ポリヒドロキシ化合物エステル、固体ポリヒドロキシ化合物エステルの液体溶液、グリセロール、グリセロールモノエステル、グリセロールジエステル、単糖類、単糖誘導体、二糖類、二糖誘導体、オリゴ糖類、オリゴ糖誘導体、多糖類、多糖誘導体、グルコース、スクロース、フルクトース、デキストロース、脂肪酸モノエステルの液体溶液、グリセロールモノラウレートの液体溶液、モノアセチン、ジアセチン、ヒアルロン酸ナトリウム、キトサン、N,O-カルボキシメチルキトサン、ゼラチン、および前述のものの溶液が含まれるがこれらに限定されず、参照として本明細書に組み入れられる米国特許第5,073,373号、第5,284,655号、第5,290,558号、第5,314,476号、第5,510,396号、第6,030,635号、第6,051,247号および国際公開公報第98/40113号に既述されている。
【0044】
生体適合性液体は、展性または流動性の混合物を提供するために充分な、任意の量が使用される。典型的な製剤では、短繊維DBM対キャリア液体の比は、組成物の望ましい流体力学的性質によって、約1:19から19:1 wt/wt、または約1:10から10:1 wt/wt、または約1:4から4:1 wt/wt、または約2:1から1:2 wt/wt、または約1:1 wt/wtの範囲である。
【0045】
短繊維DBM組成物には、別の成分が任意で含まれることができる。1つまたは複数の態様では、短繊維DBM組成物は、さらに微粒子DBMを含む場合がある。微粒子DBMは、短繊維DBM組成物の増量剤として使用できる。微粒子DBMは短繊維DBMよりも入手しやすく、既述の骨の加工段階から、ある程度得られる。短繊維DBMと併用するために適した微粒子DBMは、約3未満の縦横比を有し、短繊維DBMが与える利点を組成物が維持するような量で、使用される。DBM粒子は、0〜75 wt%、より好ましくは0〜50 wt%の範囲である。
【0046】
1つまたは複数の態様では、ペーストの骨誘導性をさらに増強するために、短繊維DBM組成物中に骨誘導成分が含まれる。したがって、DBM繊維および生体適合性液体は、骨髄吸引物、血液、血液産物、微粒子DBM、合成もしくは天然由来のBMP、またはTGFもしくは骨形成性蛋白質のような他の増殖因子、または蛋白質の豊富な血漿(protein-rich plasma:PRP)と混合することができる。または、既述のように、生体適合性液体自身が、骨誘導性成分の供給源となっても良い。骨伝導性成分は非常に様々である。生体適合性液体が骨伝導性である場合、骨伝導性成分は、ペーストの、重量で90%、または重量で50%、または重量で10%である可能性がある。いくつかの態様では、骨伝導性成分は、例えば、ペーストの5 wt%未満のような、少量存在する蛋白質である。
【0047】
例えば破骨細胞および骨芽細胞のような細胞は、繊維の長さに沿って移動し、複合物内部にアクセスすることができるので、DBM繊維は天然で骨伝導性を有する。互いにかみ合う繊維ネットワークは、微粒子DBMよりもさらに良い細胞のアクセスを可能にする連続的な経路を提供する。本発明のDBMの繊維のサイズが小さいため、DBM繊維は先行技術の長い繊維よりも、より密に充填できる。したがって、骨伝導性の改善が期待される。
【0048】
1つまたは複数の態様では、組成物内での細胞の輸送を促進するために、短繊維DBM組成物にさらなる骨伝導性成分が含まれる。骨伝導性化合物の例には、リン酸カルシウム、コラーゲン、コラーゲン誘導体、硫酸カルシウム、粒子DBM、天然由来の同種骨無機質または天然由来の自家骨無機質が含まれる。典型的な態様では、乾燥成分の総重量の約20 wt%から約80 wt%、または約25 wt%から約65 wt%の範囲で、骨伝導性化合物が組成物に添加される。
【0049】
1つまたは複数の態様では、短繊維DBMは、天然に存在する骨無機質の化学的組成と類似した、1つまたは複数の無機リン酸カルシウムと混合される。これらの無機組成物は骨伝導性で、骨形成性物質のキャリアの役割を果たし、移植骨に強度および/または硬度を提供するために使用できる。ハイドロキシアパタイトおよび/またはリン酸3カルシウム(例えば、参照として本明細書に組み入れられる国際公開公報第01/08714号および国際公開公報第00/45870号)のようなリン酸カルシウムセラミック組成物、ならびに無定形リン酸カルシウムまたは不完全結晶性アパタイト(PCA)を含むような溶解性リン酸カルシウム組成物(例えば、参照として本明細書に組み入れられる米国特許第6,027,742号)が使用可能である。これらの溶解性リン酸カルシウム組成物は、再構築して天然に存在する骨無機質になる能力があるため、永久に外来物質を移植する場合におきる問題を回避できる。1つまたは複数の態様では、骨形成性添加剤は、より結晶性のリン酸カルシウムの高エネルギー粉砕によって調製される、ナノ結晶リン酸カルシウム粉末を含む。高エネルギーで粉砕したリン酸カルシウムは、反応性が高く、適当な生理的に許容される液体と混合されると、天然に存在する骨の無機成分に近似したリン酸カルシウムアパタイトになる能力を有する。参照として本明細書に組み入れられる同時係属中の米国特許出願第10/222,670号にさらに詳細が説明されている。
【0050】
このように、本発明の1つまたは複数の態様では、短繊維DBMは、リン酸カルシウム粉末中で提供される。リン酸カルシウム粉末は、単一のリン酸カルシウム、例えば無定形リン酸カルシウム、または少なくともその1つが無定形リン酸カルシウムである2つもしくはそれ以上の完全に混合されたリン酸カルシウム源を含む可能性がある。本明細書で使用される「無定形」という用語は、結晶配列が全くまたは短い範囲しかない、すなわち、100 nm未満の結晶配列である、リン酸カルシウム粒子をいう。無定形リン酸カルシウムは、広い、拡散したX線回折パターンを示し、オングストロームスケールで測定すると均一であり、カルシウムおよびリン酸イオン源を含む溶液から、素早く沈殿することにより形成されるゲル様物質である。素早く沈殿すると、リン酸カルシウム核中に、多くの欠損が生成する。生理的条件下では、無定形リン酸カルシウムの溶解性は高く、PCAリン酸カルシウムへの転換速度および形成速度が高い。
【0051】
無定形リン酸カルシウムは、約1.1から約1.9の範囲のCa/P比率を有する。本発明の少なくともいくつかの態様では、無定形リン酸カルシウムは、約1.5未満のCa/P比率を有する。特定の態様では、Ca/P比率は約1.35と約1.49の間である。非定型リン酸カルシウムのCa/P比率は、カルシウムおよびリン酸イオン含有溶液中に、さらなるイオンを導入することによって、変化させられる。そのようなさらなるイオンの例には、CO32-、Mg2+、P2O74-、硝酸イオン、亜硝酸イオン、酢酸イオンがあるが、これらに限定されない。無定形リン酸カルシウムの調製および解析は、参照として本明細書に組み入れられる米国特許第5,650,176号および第6,214,368号にさらに記述されている。リン酸カルシウム粉末には、さらなるリン酸カルシウム源が含まれる場合がある。本発明で使用するために適当なさらなるリン酸カルシウム源には、無定形リン酸カルシウムと反応すると、リン酸カルシウムのアパタイトを生成するような化学量論を有する酸性、塩基性、および中性リン酸カルシウムが含まれる。適当な酸性リン酸カルシウムの例には、メタリン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム二水和物、リン酸七カルシウム、リン酸三カルシウム、ピロリン酸カルシウム二水和物、低結晶ハイドロキシアパタイト、ピロリン酸カルシウム、およびリン酸八カルシウムが含まれるが、これらに限定されない。塩基性リン酸カルシウムの例には、さらなる非定型リン酸カルシウムが含まれる。特定の態様では、第2のリン酸カルシウム源は、リン酸水素カルシウム二水和物(DCPD)である。
【0052】
2つまたはそれ以上のリン酸カルシウム源を使用する場合には、カルシウム源は、全体として望ましいCa/P比率を有するリン酸カルシウム粉末を生成するように、選択する必要がある。第1および第2のリン酸カルシウムは、それぞれ第1および第2のリン酸カルシウムが1:10から10:1、または1:5から5:1、または約1:1の範囲の割合で使用する。PCAリン酸カルシウムを形成する反応は、実質的に完了するまで進行するので、リン酸カルシウム源のCa/P比率は、産物の比率と一致している必要がある。PCAリン酸カルシウムは、約1.1および約1.9の間のCa/P比率を有する。したがって、本発明の少なくともいくつかの態様では、未反応リン酸カルシウム源は、約1.1と約1.9の間のCa/P比率を有するはずである。少なくともいくつかの態様では、Ca/P比率は、1.1から1.7の範囲であり、所望の産物リン酸カルシウム、すなわち1.67未満のCa/P比率を有する低結晶ハイドロキシアパタイト(PCA)リン酸カルシウムの有する比率である可能性がある。
【0053】
本発明の少なくともいくつかの態様では、リン酸カルシウムは、組成物中にかなりの量存在する。したがって、本発明のいくつかの態様では、リン酸カルシウムは乾燥成分の約20 wt%またはそれ以上の量で存在する。特定の態様では、リン酸カルシウムは乾燥成分の約40 wt%またはそれ以上の量で存在する。
【0054】
1つまたは複数の態様では、リン酸カルシウム粉末は、適当な生理的に許容される液体と混合されると、自己硬化するリン酸カルシウムセメントを形成する。
【0055】
1つまたは複数の態様では、粘性および成形性のような、組成物の取り扱い特性をさらに変化させるために、DBM組成物には添加剤が含まれる。添加剤は、水溶性セルロース(例えば、カルボキシメチルセルロース)のような生体適合性ポリマー、またはゼラチンのような天然ポリマーである場合がある。添加剤は、乾燥DBM成分または液体成分のいずれかに添加することができる。添加剤は、液体キャリアと混合する前に、DBM繊維を少なくとも部分的に被覆するために使用できる。DBM組成物に使用するために適した添加剤には、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、他のセルロース誘導体、アルギン酸、ヒアルロン酸塩、ナトリウム塩、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、アラビアガム、グアールガム(guar gum)、キサンサンガム、キトサン、およびポロキサマーが含まれるが、これらに限定されない。
【0056】
組成物に組み入れられる短繊維DBMの量は、組成物の乾燥成分の約5 wt%から約100 wt%の範囲、または組成物の乾燥成分の約20 wt%から80 wt%、または組成物の乾燥成分の約40 wt%より多くと、大きく変り得る。乾燥成分の残りは、任意の組成物を含む。少なくともいくつかの態様では、短繊維DBMは組成物全体の体積の約5%から約90%を占める。
【0057】
本発明のDBM組成物は、現場での調製を促進するために、キットの形式で提供される場合がある。キットは、乾燥(好ましくは凍結乾燥)した無菌DBM繊維および生体適合性液体のパッケージを別々に含む。DBM成分または生体適合性液体との適合性に応じて、いずれかまたは両方の包みにオプションの成分も含まれる場合がある。別の容器の内容物は、使用直前に合わせて混合する。または、DBM組成物を予め調製しておいて、使用するまで無菌条件下で保存することもできる。
【0058】
既述のように、本発明のDBM組成物は、所望の量の短繊維DBM、生体適合性液体、およびオプションの添加剤を、任意の適当な混合操作またはすべて一度に、混合することにより調製される。したがって、短繊維DBMをオプションの成分と混合するか、オプションの成分を生体適合性液体に添加してからDBM成分を添加することができる。これらを変更した順序または他の順序は、本発明で想定される。
【0059】
混合後、組成物は移植部位に適当な方法を用いて、移植部位に送達される。いくつかの態様では、組成物は移植部位に注入される。いくつかの態様では、組成物は所望の形に成形され、移植部位に詰められる。
【0060】
いくつかの態様では、DBM組成物は、任意の望ましい形の予め成形された高密度または低密度の装置として調製される。短繊維DBM、生体適合性液体、および任意のオプション成分を混合した後、組成物は成形、押出し、射出成形、加圧成形、鋳造、または当業者に周知の任意の適当な方法によって、望ましい形に成形することができる。予め成形された装置は、凍結乾燥または真空乾燥される。液体の体積および乾燥技術は、得られる予め成形された装置の細孔の体積およびサイズを調整するように、制御できる。たとえば、凍結乾燥は組成物の収縮を予防し、生体適合性液体で充填された空隙を維持する。本方法では、約0.3 g/ccのように低い密度の、低密度、高多孔性の予め成形された装置でも調製できる。反対に、真空乾燥および加圧により、組成物は収縮し、生体適合性液体で充填された空隙はつぶれる。本方法では、約0.7 g/ccほど高い密度で、約10 MPa以上の圧縮強度を有する高密度、高強度の予め成形された装置が調製できる。
【0061】
以下の実施例は、本発明の特定の態様を説明するものであり、本発明を制限すると考えてはならない。
【0062】
実施例1. 短繊維脱塩骨基質の形成
本実施例では、短繊維DBMの調製を説明する。
【0063】
長骨をクリーニングし、全ての結合組織を除去した。終板を除去し、長骨の皮質骨成分を単離し、骨髄を除去した。中空の長骨をアルコール中で洗浄し、さらにクリーニングして脂肪を除去した。その後、長骨を旋盤上で回転させた。図2に示すように、骨の表面に、端の水平な炭化ケイ素切断ツールを押し当て、削りくずを作製した。切断ツールは長骨の長さに沿って進み、ある長さの削りくずを提供した。切断ツールの動く速度と協調した骨の回転速度は、この過程に精通した人が制御し、物質の除去速度を制御することができる。50μmと250μmの間の様々な厚みで、2 mmと10 mmの間の幅で、不ぞろいの長さの削りくずが、この過程で得られた(図3)。これらの削りくずは、エーテルで洗浄し、残る脂肪を除去した。脱塩は、削りくずを0.5モルの塩酸(HCl)中で1時間攪拌することによって実施した。脱塩後、過剰の酸が除去されるまで、脱イオン水で繊維をすすいだ。これらの繊維は、アルコールおよびエーテル中ですすぎ、エーテルを蒸発させることによって乾燥させた。平均の繊維長は、約250μmと約2 mmの間に無作為に分布しており、平均の繊維厚は約50μmと250μmの間だった。この過程では、少ないながらかなりの割合(重量比< 20%)の微粒子も得られた。これらの粒子の大部分は、DBM繊維とほぼ同じサイズだったが、それより大きいものもあった。
【0064】
実施例2. 短繊維DBM組成物の調製
本実施例では、短繊維DBM組成物の調製を説明し、その凝集性を評価する。
【0065】
上記のようにして調製された試料の凝集特性は、Grafton(登録商標) DBM繊維から調製された試料の特性と比較された。グリセロール中でGrafton(登録商標) DBM繊維の混合物として供給されるGrafton(登録商標) DBM Putty 0.5 ccを、説明書に従って混合し、展性のペーストを形成させた。ペーストを直径約0.5 cmのボール状にし、ボールを水を入れたビーカー中に落とした。塊は直ちに壊れ、個々の繊維成分に分散し、全ての物理的結合性は失われた。このように、試料の質量の100%が、10分以内に元の形状の寸法から溶液中に分散した。
【0066】
実施例1に記述されるようにして調製された短繊維DBMの試料0.25 gを0.5 ccの蒸留水と混合し、展性のペーストを形成し、これも直径約0.5 cmのボール状にした。短繊維DBM試料を水中に落とした。ボールは、少なくとも10分間、観察されるような変形、膨張、質量欠損なく、最初の形状を維持した。水から試料を回収し、試料を水に浸したために失われた繊維の程度を決定するために、水をろ過した。測定可能な量の繊維の損失は観察されなかった。
【0067】
実施例3. 短繊維DBMペーストの調製
本実施例では、短繊維DBMペーストのインプラントの調製を説明する。
【0068】
実施例1のようにして調製された短繊維DBM 1.0 gを、1.6 ccの生理食塩水と混合し、ペーストを形成した。ペースト0.10 ccをカットオフチップを有する1 cc Becton Dickinsonスリップチップシリンジから押し出し、0.1 ccのペーストシリンダーを形成した。
【0069】
実施例4. 短繊維DBM-リン酸カルシウムペーストの調製
本実施例では、短繊維DBMリン酸カルシウムペーストのインプラントの調製を説明する。ペーストは、任意で添加剤を含む可能性がある。
【0070】
実施例1に記述されるようにして調製された短繊維DBM 0.6 gを、無定形リン酸カルシウム(ACP)およびリン酸水素カルシウム二水和物(DCPD)を含むナノ結晶リン酸カルシウム0.3 gと混合容器中で混合した。ナノ結晶リン酸カルシウム粉末は、以下のようにして調製した。
【0071】
ACPの調製:2167 mLの蒸留水中のリン酸水素二ナトリウム七水和物(Na2HPO4・7H2O)150 gの溶液を調製し、攪拌した。83.3 gのNaOH, 50 gのNaHCO3, および3.3 gのピロリン酸四ナトリウム十水和物(Na4P2O7・10H2O)を順に加えて、溶液1を調製した。833 mLの蒸留水中31.2 gの硝酸カルシウム四水和物(Ca(NO3)2・4H2O)の溶液を調製し、攪拌した。溶液に塩化マグネシウム六水和物(MgCl2・6H2O)1.7 gを添加し、溶液2を調製した。室温で溶液2を溶液1に迅速にそそぎ、1分間攪拌した。即座に沈殿が起こり、実質的に完了した。懸濁液のpHは13 ± 0.5で、これは沈殿物がアパタイトまたは他のさらに結晶性のリン酸カルシウムに転換するのを避けるために、維持された。沈殿物はバスケット遠心ろ過を用いて母液から迅速に分離し、約15 Lの蒸留水で洗浄した。洗浄の完了は、最後の洗浄のイオン伝導度<300μsにより確認された。約500 gの無定形リン酸カルシウムのゲルケーキが得られた。乾燥時に無定形構造を保つように、ゲルケーキを直ちに凍結乾燥したが、乾燥により約80%の水分が除去された。凍結乾燥粉末約100 gを、450℃で1時間、焼成した。産物のCa/P比率は、1.5未満で、典型的には1.35〜1.49だった。
【0072】
DCPDの調製:DCPDは室温で、亜硝酸カルシウム四水和物溶液(250 mL蒸留水中17.1 g)をリン酸水素二アンモニウムの溶液(pH 4.6〜4.8で500 mL蒸留水中10 g)に攪拌しながら迅速に添加することによって、調製した。その後直ちに、中程度のろ過速度、約10-2トルの吸引圧で濾紙(0.05平方フィート)を用いて試料をろ過した。試料は薄いケーキを形成し、これを約2リットルの蒸留水で洗浄し、その後、室温で24〜72時間乾燥させた。高度に結晶性のDCPDが得られた。
【0073】
100 gの結晶DCPDおよび無定形リン酸カルシウム(重量比1:1)を混合し、混合した粉末をAttrior Model 01HD(50 g粉末、3時間、100 rpm)中でボールミルで粉砕した。
【0074】
任意で、Hercules 7HFPHカルボキシメチルセルロース(0.1g)をナノ結晶リン酸カルシウム粉末に添加した。乾燥成分1グラムあたり1 ccの生理食塩水を添加し、ペーストを形成したが、これは37℃で10分以内に固くなった。
【0075】
実施例5. 短繊維DBM形成済み装置の調製
本実施例では、シリンダー型の、短繊維DBM形成済み装置の調製を説明する。
【0076】
短繊維DBMペーストシリンダーは、実施例3に記述されるようにして調製された。その後、ペーストシリンダーは、35℃で4時間、真空オーブン中で乾燥させ、シリンダー型の形成済み装置を作製した。装置は、約0.6g/ccの密度を有していた。
【0077】
実施例6. 微粒子DBMの調製
本実施例では、微粒子DBMの調製を説明する。
【0078】
ヒツジの長骨、主に腓骨および脛骨、の骨幹をサジタルソー(sagital saw)を用いて単離した。メスを用いて骨膜および結合組織を骨表面から除去した。骨を分割し、骨髄を除去した。
【0079】
その後、骨を破壊し、約5 mm x 5 mm x 15 mmの断片にした。これらの骨片を4℃で脱イオン水、100%無水エタノール、および無水エーテルで順にすすぐことにより、洗浄および脱脂した。乾燥した脱脂済みの骨片は、SPEX Freezemill 6800中で、低温条件下で粉砕した。得られた骨粉は、ステンレスのふるいを用いて、約125μmから約850μmの間にふるい分けた。
【0080】
ふるった骨粉は、0.50規定の塩酸中で、室温で3時間攪拌した。その後、DBM粉末を回収し、脱イオン水、100%無水エタノール、および無水エーテルで洗浄した。
【0081】
実施例7. 短繊維DBM組成物の移植
無胸腺ラットの筋肉内または皮下ポケットにおける移植後の異所性骨形成の評価は、現在、骨誘導性物質の標準となっている。本実施例では、このモデルを用いた、短繊維DBM組成物の評価およびこれらの組成物と他のDBM製剤との比較を説明する。
【0082】
6〜7週齢の無胸腺ラット(Rattus norvegicus, Crl:NIH-rnu nudes, Charles River Laboratories)を、「実験動物の飼育と使用のためのガイド(Guide for the Care and Use of Laboratory Animals)」(National Research Council, 1996)に推奨される条件下で、アイソレーターまたはマイクロアイソレーター同等物中で飼育し、維持した。ラットには、ガンマ線照射齧歯類用固型飼料および水道水を無制限で与えた。
【0083】
以下のインプラント組成物が試験された:(a) 実施例3に記述されるようにして調製された、短繊維DBMペースト;(b) 実施例4に記述されるようにして調製された、カルボキシメチルセルロース添加剤を加えた短繊維DBM-リン酸カルシウムペースト;(c) 実施例5に記述されるようにして調製された、短繊維DBMの形成済みシリンダー型装置;(d) 実施例6に記述されるようにして調製された、微粒子DBM;および (e) Grafton(登録商標) DBM Putty。微粒子DBMおよびGrafton(登録商標) DBM Puttyは対照となった。
【0084】
35匹の動物に、4つの試験物質を、2つは胸部筋肉系(大胸筋)、2つは後脚(四頭筋)に無作為に移植した。各動物には、ケタミン(100 mg/kg)およびキシラジン(10 mg/kg)の腹腔内(IP)注射を行なった。完全麻酔下で、第1の移植部位にメスで小皮切を作製し、皮膚、皮下組織、および筋膜を剪刀で二等分した。先端のとがった剪刀を用いて筋肉内嚢を作製し、所望の筋肉に進入した。最初の切断は筋繊維と同じ方向に行い、剪刀を開いて小さなポケットを作製し、鉗子で試験物質を0.1 ml投与する間、これを開いた状態に保った。試験物質が固化したら(少なくとも6分間)、筋肉ポケットを縫合して閉じた。その後、残る3ヶ所についても、手術を行った。必要な場合には、移植手順を完了するために充分な麻酔を維持するために、さらに半分の用量のケタミン/キシラジンを投与した。
【0085】
移植後7日間、各動物の臨床観察を毎日行なった。その後は、隔週の臨床観察を行なった。
【0086】
移植の4週間後に、短繊維DBMペーストおよび短繊維DBM形成済みシリンダー型装置を回収した。短繊維DBMリン酸カルシウムペーストは、移植の6週間後に回収した。微粒子DBMおよびGrafton(登録商標) DBM Putty対照は、移植の4週後と6週後の両方で回収した。動物は回収直前に、過量CO2により安楽死させた。組織の採取は、インプラント材料および0.5 cmの端沿いの骨格筋および/または結合組織に限定した。組織検体は、10%中性緩衝ホルマリン中で、最低12時間固定した。組織検体は、インプラント中央切断で横方向に2等分し、通常のようにパラフィン包埋、ガラススライド上への切片搭載、ヘマトキシリンおよびエオシン染色を行い、カバースリップを載せた。必要ならば、組織学的分析の前に、組織検体のさらなる脱塩を行なった。
【0087】
組織学的分析では、すべての短繊維DBM組成物で、対照の微粒子DBMおよびGrafton(登録商標) DBM Puttyインプラントに相当する骨形成および骨芽細胞活性が見られた。骨細胞、骨芽細胞、および骨髄を含む新しい骨基質がインプラント全体に渡って存在することで示されるように、短繊維DBM組成物の新しい骨形成および骨芽細胞活性は顕著であった。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】削りくずの面内に骨単位が整列している、特徴的な骨の削りくずまたはプレートの模式図である。
【図2】本発明の1つまたは複数の態様の実施に使用される、骨削り装置の模式図である。
【図3】本発明の少なくともいくつかの態様に係る、脱塩前の皮質骨削りくずの光学顕微鏡写真である。
【図4】本発明の少なくともいくつかの態様に係る、脱塩前の針状皮質骨の光学顕微鏡写真である。
【図5】本発明の少なくともいくつかの態様に係る、DBM繊維の光学顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約250μmから約2 mmの範囲の平均繊維長を有し、かつ約4を超える縦横比を有する脱塩骨基質繊維;および
凝集性の成形可能な塊を生成するような量の生体適合性液体
を含む、脱塩骨基質組成物であって、
該成形可能な塊が、液体に浸漬された場合にその凝集性を保持する脱塩骨基質組成物。
【請求項2】
脱塩骨基質繊維が、約50μmから約250μmの範囲の平均の厚みを有する、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
縦横比が約10を超える、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
縦横比が約10から約50の範囲である、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
脱塩骨基質繊維の平均の厚みに対する平均の幅の比率が約5未満である、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
生体適合性液体が、水、生理食塩水、緩衝液、血清、骨髄吸引物、血液、多血小板血漿、およびその混合物からなる群より選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
縦横比が約3未満の脱塩骨基質の粒子をさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
骨誘導性添加剤をさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
骨誘導性添加剤が、骨髄吸引物、血液、血液産物、合成および天然由来の骨形成蛋白質、増殖因子、微粒子脱塩骨基質、ならびにその混合物からなる群より選択される、請求項8記載の組成物。
【請求項10】
骨伝導性添加剤をさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項11】
骨伝導性添加剤が、リン酸カルシウム、コラーゲン、コラーゲン誘導体、硫酸カルシウム、微粒子脱塩骨基質、天然由来同種骨塩、および天然由来自家骨塩からなる群より選択される、請求項10記載の組成物。
【請求項12】
組成物の取り扱い特性を変化させる添加剤をさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項13】
添加剤が脱塩骨繊維を少なくとも部分的に被覆する、請求項12記載の組成物。
【請求項14】
添加剤が、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース誘導体、アルギン酸塩、ヒアルロン酸、ナトリウム塩、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、アラビアガム、グアールガム、キサンサンガム、キトサン、およびポロキサマーからなる群より選択される、請求項12記載の組成物。
【請求項15】
脱塩骨基質繊維と生体適合性液体の相対量が、約1:10から約10:1 wt/wtの範囲である、請求項1記載の組成物。
【請求項16】
脱塩骨基質繊維と生体適合性液体の相対量が、約1:4から約4:1 wt/wtの範囲である、請求項1記載の組成物。
【請求項17】
脱塩骨基質繊維と生体適合性液体の相対量が、約1:1 wt/wtである、請求項1記載の組成物。
【請求項18】
脱塩骨基質繊維が、自家皮質骨、同種皮質骨、異種皮質骨、自家海綿骨、同種海綿骨、異種海綿骨、自家皮質海綿骨、同種皮質海綿骨、または異種皮質海綿骨から得られる、請求項1記載の組成物。
【請求項19】
18ゲージの針を通して注射できるような軟度を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項20】
(a) 約250μmから約2 mmの範囲の平均繊維長を有し、かつ約4を超える縦横比を有する脱塩骨基質繊維を含む乾燥成分であって、該脱塩骨基質繊維は、該乾燥成分の40 wt%よりも多い量で存在する成分、および
(b) 凝集性の成形可能な塊を生成するための量の生体適合性液体であって、該成形可能な塊は、液体に浸漬された場合にその凝集性を保持する生体適合性液体
を含む、脱塩骨基質組成物。
【請求項21】
脱塩骨基質繊維が約50μmから約250μmの範囲の平均の厚みを有する、請求項20記載の組成物。
【請求項22】
脱塩骨基質繊維の縦横比が約10を超える、請求項20記載の組成物。
【請求項23】
脱塩骨基質繊維の平均の厚みに対する平均の幅の比率が約5未満である、請求項20記載の組成物。
【請求項24】
骨伝導性添加剤、骨誘導性添加剤、および組成物の取り扱い特性を変更するような添加剤からなる群より選択される添加剤をさらに含む、請求項20記載の組成物。
【請求項25】
脱塩骨基質繊維の少なくとも約25 wt%が、約250μmから約2 mmの範囲の平均繊維長を有し、かつ約4を超える縦横比を有する、脱塩骨基質繊維の集合を含む、脱塩骨基質繊維組成物。
【請求項26】
脱塩骨基質繊維の少なくとも約50 wt%が、約250μmから約2 mmの範囲の平均繊維長を有し、かつ約4を超える縦横比を有する、請求項25記載の組成物。
【請求項27】
脱塩骨基質繊維の少なくとも約75 wt%が、約250μmから約2 mmの範囲の平均繊維長を有し、かつ約4を超える縦横比を有する、請求項25記載の組成物。
【請求項28】
脱塩骨基質繊維の平均の厚みが、約50μmから約250μmの範囲である、請求項25記載の組成物。
【請求項29】
脱塩骨基質繊維の平均の厚みに対する平均の幅の比率が約5未満である、請求項25記載の組成物。
【請求項30】
骨誘導性添加剤、骨伝導性添加剤、および組成物の取り扱い特性を変更するような添加剤からなる群より選択される添加剤をさらに含む、請求項25記載の組成物。
【請求項31】
約250μmから約2 mmの範囲の平均繊維長を有し、かつ約4を超える縦横比を有する脱塩骨基質繊維;および
凝集性の成形可能な塊を生成するための量の生体適合性液体
を含む、予め決定された形を有する形成済み脱塩骨基質物品であって、
該凝集性の塊は、予め決定された形に形成され、液体に浸漬された場合にその凝集性を保持する、形成済み脱塩骨基質物品。
【請求項32】
約0.3 g/ccから約0.7 g/ccの範囲の密度を有する、請求項31記載の物品。
【請求項33】
約10 MPaを超える圧縮強度を有する、請求項31記載の物品。
【請求項34】
約250μmから約2 mmの範囲の平均繊維長を有し、かつ約4を超える縦横比を有する脱塩骨基質繊維と、凝集性の成形可能な塊を生成するための量の生体適合性液体を混合する段階
を含む、脱塩骨基質組成物の製造方法であって、
該成形可能な塊は液体に浸漬された場合にその凝集性を保持する、製造方法。
【請求項35】
骨を削り、骨の削りくずの面内で骨単位が整列された骨の削りくずを得る段階;および
骨単位の方向に沿って骨の削りくずを断片化して、針状の骨断片を得る段階;および
断片化の前、断片化の間、または断片化の後に、骨の脱塩を行い、脱塩骨基質繊維を得る段階
を含む、脱塩骨基質繊維の製造方法。
【請求項36】
骨が、自家皮質骨、同種皮質骨、異種皮質骨、自家海綿骨、同種海綿骨、異種海綿骨、自家皮質海綿骨、同種皮質海綿骨、および異種皮質海綿骨からなる群より選択される、請求項35記載の方法。
【請求項37】
約250μmから約2 mmの範囲の平均繊維長を有し、かつ約4を超える縦横比を有する脱塩骨基質繊維と、凝集性の成形可能な塊を生成するための量の生体適合性液体とを混合する段階;
塊を予め決定された形を有する成形済み物品に成形する段階;および
成形済み物品を乾燥させる段階
を含む、予め決定された形を有する成形済み脱塩骨基質物品の製造方法。
【請求項38】
成形済み物品が凍結乾燥される、請求項37記載の方法。
【請求項39】
成形済み物品の密度が約0.3 g/ccである、請求項38記載の方法。
【請求項40】
成形済み物品がオーブン乾燥される、請求項37記載の方法。
【請求項41】
成形済み物品の密度が約0.7g/ccである、請求項40記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−508715(P2006−508715A)
【公表日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−553668(P2004−553668)
【出願日】平成15年11月14日(2003.11.14)
【国際出願番号】PCT/US2003/036393
【国際公開番号】WO2004/045372
【国際公開日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【出願人】(504238046)エテックス コーポレーション (6)
【Fターム(参考)】