説明

処方せん管理方法

【課題】他人に読まれてしまう恐れがある処方せんに記録される文字情報やバーコード情報により、第3者に患者の情報(処方せん)が漏洩されることを防止する。
【解決手段】ICタグ付処方せん処理装置111を用いて、少なくとも処方せんを識別する処方せんIDおよび処方の内容を示す処方せん情報を記録したICタグ103および受診カードの如き個人(患者)識別カードである個人識別ICカード104を用いる。そして、このICタグ103からの読取りについて、パスワードを代表とするコードによって制御(読取り可能かの判断)を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療機関で発行される処方せんに従って、薬を処方ないし患者へ受け渡すことを管理するための技術に関する。その中でも特に、いわゆるRFID技術を用いたものに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、医療機関で受診した患者が薬を受け取るために、処方せんが用いられている。つまり、医師が処方した薬の内容を処方せんに書き込み、これを患者が薬局に持参することで、薬局でその薬が調剤される。この際、処方せんは、医師から患者、患者から薬局へ手渡しで受け取りがなされる。処方せんが手書きないし紙でのやり取りであると、調剤誤りなどの問題が生じるおそれがある。このため、処方せんについて電子化することが検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、処方せんにより薬局の業務を正確で迅速に省力化できるように、処方せんに、その記載の項目を文字情報として記載すると共に2次元バーコードとして記録することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−318374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、セキュリティの問題については解決できない。まず、文字情報はその名のとおり他人に読まれてしまう恐れがある。また、2次元バーコードについても、バーコードリーダで読取り可能になるとの恐れがある。つまり、第3者に処方せん情報が流出する恐れがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明では、少なくとも処方せんを識別する処方せんIDおよび処方の内容を示す処方せん情報を記録したRFIDタグおよび受診カードの如き個人(患者)識別カードを用いるものである。そして、このRFIDタグからの読取りについて、パスワードを代表とするコードによって制御(読取り可能かの判断)を行うものである。より詳細には、以下の態様が含まれる。(1)まず、医療機関=処方行う際に、処方せんに添付されたRFIDタグに処方せんIDに対応させて、処方せん情報および処方の行った医師の設定した医師コードを、RFIDタグに記憶する。この際、処方せん情報は、記憶された医師コードの入力を条件に読取り可能となる。また、個人識別カードに、利用者(患者)の使用する利用者コードの入力を条件に読取り可能になる医師パスワードおよび処方せんIDからなるユーザデータを格納する。(2)そして、薬局=調剤機関にて、患者から利用者コードの入力を受付け、個人識別カードに格納されたユーザデータを読取り、読み取られたユーザデータに含まれる医師コードを用いてRFIDタグに記憶され、読み取られたユーザデータに含まれる処方せんIDに対応する処方せん情報を、RFIDタグから読み取るものである。
【0007】
この際、処方せんIDについて、RFIDタグには1つの処方せんIDが記憶されるようにしておき、個人識別カードから読み取ったもの(ユーザデータに含まれる)と、RFIDタグから読み取ったものが一致する場合、正当なものをして処理することがより好適である。
【0008】
さらに、処方せんIDとして、処方せん情報に対して所定の変換を行ったデータを含ませたものを利用するとなお好適である。つまり、処方せん情報に対して上述の変換処理を施し、この内容がRFIDタグに記憶された処方せんIDに含まれているかを確認し、含まれている場合、処方せん情報に改ざんがないと判断できる。また、含まれているかの確認は、処方せんIDが処方せん情報を変換したものそのものである場合は一致するかで確認する。また、これらの場合、変換したものと野比較は、個人識別カードから読み取ったものと行ってもよい。なお、上述した変換には、ハッシュ化がより好適である。
【0009】
またさらに、上述した処方せん情報を変換したものと処方せんIDの比較は以下のとおり行うと好適であり。まず、個人識別カードから読み取った処方せんIDを第1のメモリ領域に格納し、RFIDタグから読み取った処方せんIDを第2のメモリ領域に格納して比較する。そして、この比較の後、処方せん情報に変換を施すことによって算出される処方せんIDないし処方せんIDの一部を、上述した第1のメモリ領域に上書きして第2のメモリ領域に格納されたものと比較する。このことにより、メモリの使用容量を効率的に利用可能になる。この際、上書きを第2のメモリ領域に行い、第1のメモリ領域に格納されたものと比較するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、処方せん情報について、第3者への情報漏洩といったセキュリティ上の解決して、電子データとして管理することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施例におけるシステム構成図である。
【図2】本発明の一実施例での記憶媒体であるICタグ(処方せん103に添付)と個人識別ICカード103に格納されるデータ構成を示す図である。
【図3】本発明の一実施例における処理の内容を示すフローチャートである。
【図4】本発明の一実施例におけるICタグ付処方せん処理装置111(薬局側)のメモリでのデータ格納の様子を示す図(その1)である。
【図5】本発明の一実施例におけるICタグ付処方せん処理装置111(薬局側)のメモリでのデータ格納の様子を示す図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例を、図面を用いて説明する。なお、本実施例は一例に過ぎず、これにより本発明が限定されるものではない。UIIやユーザエリアのデータ、サイズなどについても説明のための便宜上の値である。
【0013】
図1に、本発明の一実施例である処方せんのデータ受け渡しに関する個人認証とデータ認証の方法の構成を示す。
【0014】
ICタグ付き処方せん103は、処方せん101にICタグラベル102を貼付され管理される。ICタグ付き処方せん103はICタグ付処方せん装置111において、ICタグリーダライタ113によりデータを書き込み、読み取りされる。個人識別ICカード104はICタグ付処方せん装置111において、ICカードリーダライタ114によりデータを書き込み、読み取りされる。ICタグ付処方せん103及び個人識別ICカード104に記録されるデータは、PC112で管理されている。なお、このICタグ付処方せん処理装置111は、処方せんを発行する医療機関とそれに基づいて調剤を行う薬局それぞれに設置される。ここでは、いずれでも同じ符号111を付しているが、物理的に異なることが好適である(つまり、使用の度に持ち運びしないですむ)。
【0015】
なお、図1の各ブロックは機能的に分けてあり、各ブロックが複数であったり、各ブロックの統合、分割などがあったりしてよい。また、ここでタグをICタグ103として説明したが、データの読み書き可能ないわゆるRFIDタグであればよい。また、個人識別ICカード104については、後述するような各種情報が格納され、コード(パスワードや暗証番号のようなもの)により読取り制御がされるものであればよい。
【0016】
図1を中心に、他の図を必要に応じて用いながら、本システムの構成及び動作を説明する。図2は、各構成要素の内部データについて説明している。なお、
患者は医師の診断を受ける前に個人識別ICカード104で個人確認がなされ、診断を受診する。このときに医師は個人確認のために、ICタグ付処方せん処理装置111で個人識別ICカード104を読み取らせ、患者は個人識別ICカード104のパスワードであるユーザ個別設定値132をICタグ付処方せん処理装置111に入力することで、本人であることを確認する。つまり、患者から本人であることを確認できた場合に医師は患者の診察を行う。診断の結果、患者に薬を服薬する必要があると判断した場合に、医師は患者に薬を処方する。このときに、医師は患者に対して処方せんを発行する。
【0017】
この処方せんをICタグ付き処方せん103とし、発行する処方せんの情報および医師の診断情報を電子データ化し、ICタグ付き処方せん103のユーザエリアに書き込むためのデータを作成する(これ以降、本実施例での処理装置における処理になる)。作成した処方せんデータについて、ハッシュ値を計算し、ハッシュ値を取得する(ここでは「5678)」)。発行するICタグ付き処方せん103のUII140エリアに書き込む値は個別識別可能なID141(紙の発行時のシリアル番号など、ここでは「1234」)にハッシュ値142をつけた値とする(ここでは「12345678」)。ここで作成したUIIエリアに書き込む値をUII140にユーザエリアに処方せんデータ123を書き込む。書き込み後に、医師はデータ保護のために医師設定パスワード122を設定し、ICタグ付き処方せん103のパスワードエリアに書き込む。なお、ここでは、ハッシュ値を用いているが、他の変換手法を用いてもよい。さらに、処方せんIDには個別IDを含めているが、これを含めなくともよい。例えば、処方せんデータのハッシュ値そのものを処方せんID121とする。
【0018】
医師から(もしくは医師代理から)ICタグ付き処方せん103を患者に渡す際に、患者は処方せんを受け取る前に個人識別ICカード104で個人確認を行う。つまり、患者が入力されたパスワードと個人識別ICカード104に格納されたパスワードを比較して、一致するかなどにより認証を行う。このときに医師(もしくは医師代理)は個人確認のために、ICタグ付処方せん処理装置111で個人識別ICカード104を読み取らせ、患者は個人識別ICカード104のパスワードであるユーザ個別設定値132をICタグ付処方せん処理装置111に入力することで、本人であることを確認する。認証で本人の確認完了した場合、個人識別ICカード104のユーザデータのエリアに「医師設定パスワード+処方せんID」133を書き込む。その後、医師(もしくは医師代理)は個人識別ICカード104を患者に返却し、ICタグ付処方せん103を患者に渡す。
【0019】
患者は個人識別ICカード104および受け取ったICタグ付処方せん103を持参し、保険調剤薬局に行き、薬を受け取る。このときに、個人識別ICカード104とICタグ付処方せん103を用いて、個人認証、処方せん確認、処方せんデータ確認を行う。なお、以降、薬局での処理についても、ICタグ付処方せん処理装置111と同じ番号を付しているが、物理的に違うものを使うのが一般的である。この際、医師が利用するものと薬剤師が利用するものは、機能的には同等のものであることが望ましい。
【0020】
まず、保険調剤薬局で薬剤師に個人識別ICカード104とICタグ付き処方せん103を渡す。薬剤師の操作に従って、ICタグ付処方せん処理装置111が個人識別ICカード104とICタグ付処方せん103を認識する(ステップ201)。ICタグ付処方せん処理装置111は、個人認証のためにパスワードであるユーザ個別設定値132の入力を患者に要求する。ICタグ付処方せん処理装置111は、患者からパスワードであるユーザ個別設定値132の入力を受付ける(ステップ202)。
【0021】
ICタグ付処方せん処理装置111は、入力されたパスワードであるユーザ個別設定値132を個人識別ICカード104に入力し、個人認証を行う(ステップ203)。入力されたパスワードであるユーザ個別設定値132で個人認証がNGであった場合は、パスワードの再入力を要求する。OKであった場合は、ICタグ付処方せん処理装置111はICカードのメモリから医師設定パスワード+処方せんID133を読み取る(ステップ204)。読み取った医師設定パスワードはICタグ付処方せん処理装置111のメモリ領域であるメモリ(1)に保存する(ステップ205)。読み取った処方せんID(ここでは区別するために処方せんID(1)とする)はICタグ付処方せん処理装置111のメモリ領域であるメモリ(2)に保存する(ステップ206)。
【0022】
ICタグ付処方せん処理装置111は、次にICタグ付処方せん103に貼付されているICタグのメモリから処方せんID121を読み取る(ステップ207)。読み取った処方せんID(ここでは区別するために処方せんID(2)とする)はICタグ付処方せん処理装置111のメモリ領域であるメモリ(3)に保存する(ステップ208)。
【0023】
ここまでのICタグ付処方せん処理装置111のメモリの状態は図4となっている。この状態のメモリの値を使い、ICタグ付処方せん103の認証を行っていく。まず、処方せんIDが一致していることを確認するために、ICタグ付処方せん処理装置111はメモリ(2)(データは処方せんID(1)222)とメモリ(3)(データは処方せんID(2)223)とを比較する(ステップ209)。メモリの比較の結果、一致していれば対象としている処方せんであることが確認できる。不一致の場合、対象となる処方せんではないためエラー処理を行い、処理を終了する(ステップ216)。
【0024】
一致していた場合は、メモリ(1)のデータである医師設定パスワードを使用し、ICタグ付処方せん処理装置111はICタグ付き処方せん103に貼付されているICタグに対して、パスワード認証を行う(ステップ210)。パスワード認証がNGである場合、ICタグ付処方せん103に改ざんの恐れがあるため、エラー処理を行い、処理を終了する(ステップ216)。パスワード認証がOKである場合、保護されていたユーザエリアの読み取りが可能となる。
【0025】
ユーザエリアの読取が可能となったので、ICタグ付処方せん処理装置111はICタグ付処方せん103のユーザエリアから処方せんデータ123を読み取る(ステップ211)。ICタグ付処方せん処理装置111は読み取った処方せんデータについて、ハッシュ値を計算し、ハッシュ値を算出する(ステップ212)。ICタグ付処方せん処理装置111はここで計算されたハッシュ値をメモリ(2)の下位ビット部分(ハッシュ値の部分)に上書きをして保存する(ステップ213)。上書きをしたことで処方せんIDは変更されるため処方せんID(3)とすると、ICタグ付処方せん処理装置111のメモリの状態は図5となる。
【0026】
この状態のメモリの値を使い、ICタグ付処方せん103のデータが改ざんされていないこと確認する。ICタグ付処方せん処理装置111はメモリ(2)(データは処方せんID(3)224)とメモリ(3)(データは処方せんID(2)223)とを比較する(ステップ214)。メモリの比較の結果、一致していれば読み取った処方せんデータが改ざんされていないことが確認できる。不一致の場合、処方せんデータは改ざんされている可能性があるためエラー処理を行い、処理を終了する(ステップ216)。ICタグ付処方せん処理装置111は、処方せんデータを画面に出力し、一連の認証処理を終了する。
【0027】
以上の確認により、患者と処方せんと処方せんデータは正しいものと判断できる。薬剤師は表示された処方せん情報を元に、調剤を行い、患者に薬を渡す。
【0028】
なお、ステップ213では、下位のビット部分に上書きするとしたが、ハッシュ値の部分が上位など他の箇所であれば、その箇所に上書きすればよい。この場合、ハッシュ値を処方せんIDとした場合、メモリ(2)全体に上書きすることになる。
【0029】
また、ハッシュ値をメモリ(2)に上書きする場合、上位(他の部分)も消去して、メモリ(2)に格納してもよい(上位は0を記録ないしnull)。この場合、ステップ214の比較処理は、メモリ(2)に格納された情報(ハッシュ値)が、メモリ(3)に格納された情報に含まれるかで、一致かの判断を行う。
【0030】
さらに、本実施例では、処方せんID(3)をメモリ(2)に上書きしたが、メモリ(3)に上書きしてメモリ(2)の内容と上述の各比較処理のように比較を実行してもよい。
【符号の説明】
【0031】
103…ICタグ付処方せん、104…個人識別ICカード、111…ICタグ付処方せん処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療機関で作成された処方せんに基づいて薬局で調剤を行うために処方せんに関する情報を管理する処方せん管理方法において、
前記医療機関に設置された医療機関情報処理装置を用いて、
処方せんに添付されたRFIDタグに処方せんIDに対応させて、処方せん情報および処方の行った医師の設定した医師コードであって当該医師コードの入力を条件に前記処方せん情報の読取りを可能にさせる医師コードを、前記RFIDタグに記憶し、
前記処方せんが処方された患者の利用する個人識別カードに、前記患者の使用する利用者コードの入力を条件に読取り可能になる医師パスワードおよび処方せんIDからなるユーザデータを格納し、
前記薬局に設置された薬局情報処理装置を用いて、
患者から利用者コードの入力を受付け、前記個人識別カードに格納されたユーザデータを読取り、
読み取られたユーザデータに含まれる医師コードを用いて、前記RFIDタグに記憶され、読み取られたユーザデータに含まれる処方せんIDに対応する処方せん情報を、RFIDタグから読み取ることを特徴とする処方せん管理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の処方せん管理方法において、
前記薬局情報処理装置を用いて、
前記個人識別カードから読み取った処方せんIDと前記ユーザデータに含まれる処方せんIDを比較して、一致した場合に、前記RFIDタグに格納された処方せん情報の読み取りを許容することを特徴とする処方せん管理方法。
【請求項3】
請求項2に記載の処方せん管理方法において、
前記医療機関情報処理装置を用いて、
前記処方せんIDを、前記処方せん情報に対して所定の変換を施した変換情報を含むように生成し、
生成された処方せんIDを前記RFIDタグおよび前記個人識別カードにユーザデータに含ませて格納し、
前記薬局情報処理装置を用いて、
前記RFIDタグに格納された処方せん情報に対して前記変換を施した変換情報が、前記RFIDタグに格納された処方せんIDに含まれるか一致する場合、前記処方せん情報の読み出しを許容することを特徴とする処方せん管理方法。
【請求項4】
請求項3に記載の処方せん管理方法において、
前記読み出しを許容するかは、前記薬局情報処理装置を用いて、
前記個人識別カードから読み取った処方せんIDを、第1のメモリ領域に格納し、前記RFIDタグから読み取った処方せんIDを第2のメモリ領域に格納し、前記第1および第2のメモリ領域に格納された処方せんID同士を比較し、
前記比較の結果、一致した場合、前記変換情報である処方せんIDないし処方せんIDの一部を、前記第1のメモリ領域に上書きし、前記第1および前記2のメモリ領域の内容を比較した結果に基づいて読み出しを許容するかを判断することを特徴とする処方せん管理方法。
【請求項5】
請求項3乃至5のいずれかに記載の処方せん管理方法において、
前記所定の変換は、ハッシュ値への変換であることを特徴とする処方せん管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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