説明

処方物

【課題】 特にワクチンの分野の、免疫療法にて有用な、H1−TH2バランスをTH1応答が都合のよいように偏向させることのできる新規な抗原処方物を提供することが望まれている。
【解決手段】 (A)抗原;(B)TH1を誘発するアジュバント;および(C)貧水溶性アミノ酸またはその誘導体を有してなる組成物であって、抗原およびTH1を誘発するアジュバントの溶液を、貧可溶性アミノ酸またはその誘導体の強酸水溶液中溶液と混合し、その間にその溶液の混合液を中和し、それにより貧可溶性アミノ酸、抗原およびアジュバントを共同沈降させることで得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、限定するものではないが、特に免疫化に用いるための新規な処方物に関する。
【背景技術】
【0002】
免疫系は、外来または新規な物質を宿主より検出し、排除するように特異的に進化している。この物質は、ウイルス、細菌または寄生体を起源とするものであってもよく、宿主の細胞外または細胞内に属していてもよく、あるいは新生物を起源とするものであってもよい。
抗原に対する免疫応答は、一般に、細胞性(T−細胞性攻撃)または体液性(抗原全体を認識することによる抗体産生)のいずれかである。免疫応答に関与しているTH細胞がサイトカインを産生するパターンは、これらの応答型のいずれが優勢であるかで変化し得る:細胞性免疫(TH1)はIL−2およびIFNγの産生が高いが、IL−4産生が低いことで特徴付けられるのに対して、体液性免疫(TH2)では、そのパターンはIL−2およびIFNγが低く、IL−4、IL−5およびIL−10が高い。分泌のパターンは第2のリンパ系器官または細胞のレベルで調節されるため、特異的なTHサイトカインパターンの薬理学的操作は形成する免疫応答の型および程度に影響を及ぼし得る。
【0003】
TH1−TH2バランスとは、異なる2つの形態のヘルパーT細胞が相互変換することをいう。この2つの形態は免疫系において大掛かりな反対の作用を有する。免疫応答がTH1細胞に好都合であるならば、その場合、これら細胞は細胞性応答を行うのに対して、TH2細胞は抗体を優勢とする応答を行うであろう。いくつかのアレルギー反応の原因となる抗体はTH2細胞により誘発される。
ワクチン注射が、ヒトの健康に対する免疫学的原理の最もよく知られかつ最も成功している方法である。通常、導入されかつ承認されるには、ワクチンは効果的でなければならず、すべてのワクチンの効能は時に再検討される。多くの要因がそれに影響を及ぼす。効果的なワクチンは、免疫性を正しく誘発し、貯蔵にて安定しており、かつ十分な免疫原性を有していなければならない。特に、生ワクチン以外では、アジュバントを用いてその免疫原性をブーストすることが必要なことが多々ある。このことはある生ワクチン、例えば弱毒ワクチンに適用することもできる。アジュバントは抗原に対する免疫応答を強化する物質である。
【0004】
ヒトの治療のために動物抗血清を製造するという1920年代の研究の間に、ある物質、特に抗原に加えられるか、あるいは抗原と一緒に乳化されたアルミニウム塩が、抗体産生を著しく強化すること、すなわち、アジュバントとして作用することが判明した。水酸化アルミニウムは、今でも、例えば、ジフテリアおよび破傷風トキソイドと一緒に広く使用されている。
GB−A−1377074は、その中にアレルゲンを分散させた、チロシンの共同沈降体の製法を記載する。
GB−A−1492973は、その中に修飾アレルゲンを分散させた、チロシンの共同沈降体の製法を記載する。アレルゲンは、分子内架橋を生じさせ、未修飾アレルゲンと比べて生成物のアレルギー原性を減少させる、グルタルアルデヒドなどの試薬で処理することにより修飾されている。
【0005】
3De−O−アシル化モノホスホリルリピドAがGB−A−2220211(Ribi)より知られている。化学的には、それは、4、5または6アシル化鎖を有する3De−アシル化モノホスホリルリピドAの混合物であり、Ribi Immonochen Montanaが製造している。3De−O−アシル化モノホスホリルリピドAの好ましい形態は国際特許出願92/16556号に開示されている。
PCT国際公開WO98/44947は、アレルギー患者の脱感作療法にて用いるための処方であって、修飾されていてもよいアレルゲン、チロシンおよび3De−O−アシル化モノホスホリルリピドAを有してなる処方を記載する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特に、T細胞性応答のための、より優れたアジュバントを産生しようとする試みがなされているが、これら近年のアジュバントは未だほとんどヒトに慣用的に用いられるとは認められていないことに留意すべきである。
アジュバントの効果が、主として2つの活性:リンパ球が抗原に曝されている部位における抗原の濃度(「デボット」効果)および、リンパ球の機能を調節する、サイトカンの誘導化によるのは明らかである。リポソームおよび免疫刺激複合体(ISCOMS)などの新しい手段も、その中に取り込んだ抗原を抗原提示細胞に確実に輸送することにより同じ目的を達成する。マイコバクテリア細胞壁、エンドトキシンなどの細菌性産物は、サイトカインの形成を刺激することにより作用すると考えられる。サイトカイン誘発は、正規のワクチンに応答しないことが多い、免疫抵抗性減弱の患者にて特に有用であるかもしれない。そのようなサイトカイン誘発はまた、免疫応答を望ましい方向に向けることで、例えば、TH1またはTH2細胞応答だけが望まれる疾患にて有用であるかもしれないと考えられる(Roittら、「Immunology」、第4版)。
本発明者らは、この度、TH1−TH2バランスをTH1応答が都合のよいように偏向させることのできる新規な抗原処方物を提供するものである。その処方物は、特にワクチンの分野の、免疫療法にて有用である。さらに、免疫応答の研究および抗原の産生にも有用である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の態様によれば、
(A)抗原;
(B)TH1を誘発するアジュバント;および
(C)貧可溶性アミノ酸またはその誘導体
を有してなる組成物が提供される。
抗原は、細菌もしくはウイルス、または他の病原体もしくは新生物から、あるいはその抗原性構造を有することが判っているものから誘導されるのが好ましい。
TH1を誘発するアジュバントは、MPL、3−DMPLまたはその誘導体であることが好ましい。
貧可溶性アミノ酸は、チロシン、トリプトファンまたはその誘導体であることが好ましい。
本発明はまた、医薬にて用いるための組成物を提供する。
好ましくは、該組成物はワクチンの形態である。
【0008】
本発明はまた、細菌、ウイルス感染または癌などの他の疾患の治療または予防にて用いるための医薬の調製における上記した組成物の使用を提供する。
本発明はさらには、動物を本発明の組成物で免疫化することからなる、イムノグロブリンの製法を提供する。
本発明はまた、抗原とTH1誘発のアジュバントの溶液を、貧可溶性アミノ酸またはその誘導体の水性強酸中溶液と混合し、その間にその溶液の混合液を中和し、それにより貧可溶性アミノ酸、抗原およびアジュバントを共同沈降させることからなる、本発明の組成物の製法を提供する。この方法はさらには医薬上許容される担体、希釈体または賦形剤を添加するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0009】
TH1−TH2バランスをTH1応答が都合のよいように偏向させることのできる新規な抗原処方物を提供するものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の種々の特徴および具体例を、以下の実施例を用いて説明するが、それらは本発明を限定するものではない。
【0011】
(A)抗原
最初、「抗原」なる語は、特定の抗体を産生するようにB細胞を誘発する分子について使用された。しかしながら、今では、その語は、免疫応答の適応因子により、すなわち、B細胞またはT細胞、あるいはその両方で特異的に認識することのできる分子を示すように用いられている。このような抗原は、機能抗体と、TおよびB細胞上の特定の受容体で反応する分子である。しかしながら、本発明者らは、伝統的に「アレルゲン」として知られているもの、すなわち、IgE介在の過敏症を引き起こす物質、例えば、花粉、塵を排除する。
アレルギーは、肥満細胞に付着した先在するIgE抗体による環境抗原(アレルゲン)に対する応答である。即時過敏感反応は、喘息、枯草熱、血清病、系統的アナフィラキシーまたは接触性皮膚炎を引き起こす、肥満細胞産物(ヒスタミンなど)により産生される。このような過敏感反応には4つの型(I、II、IIIおよびIV型)がある。その最初の3つの型は抗体性であり;4番目は主としてT細胞およびマクロファージにより媒介される。すなわち、本発明はかかる環境抗原の使用に関するものではない。
【0012】
このように、本発明で用いられる「抗原」は、好ましくは、アレルギー原因物質、例えば、花粉(例、ブタクサまたはシラカンバ花粉)、食料、昆虫毒、カビ、動物の下毛または家塵ダニ(D.farinaeまたはD.pteronyssinus)から由来の「アレルゲン」を包含しない。
本発明は、したがって、IgEまたはIgG1性応答よりもむしろ、細胞性のIgG2aまたはIgG2b媒介応答に関与することが多い、抗原に関連することがわかる。
本発明で用いられる抗原は、免疫原、すなわち、免疫細胞を活性化させ、その物に対する免疫応答を惹起する抗原であることが好ましい。
好ましい態様において、本発明はワクチンとして使用するための処方物に関し、抗原がそのようなワクチンにて有用なものである。
【0013】
本発明において用いられる抗原は適当ないずれの抗原であってもよく、あるいは利用できるようになる適当ないずれの抗原であってもよい。
ワクチンに使用される抗原の型は多くの因子に依存する。一般に、微生物の抗原がワクチン中に多く残っていればいるほどよく、死菌よりも生菌の方が効果的な傾向にある。この例外がトキシンが病原的効果の原因である疾患である。この場合、ワクチンはトキシンまたはトキソイドだけを基準とすることができる。
本発明で用いられる抗原は、どのような生菌;無傷または生でない菌;亜細胞性フラグメント;トキソイド;組換えDNAを基礎とする抗原または抗−遺伝子型あるいは合成抗原より誘導させることができる。抗原は天然または弱毒生物より誘導することができ、ウイルスまたは細菌に由来するものであってもよい。抗原の型は、莢膜多糖類、表面または内部抗原であってもよい。組換えDNAを基礎とする場合、抗原はクローンし、発現させた遺伝子からまたは裸のDNAから得ることができる。
【0014】
抗原は、例えば、交差結合剤、例えば、ジアルデヒド、さらに好ましくはグルタルアルデヒドと反応させることにより修飾させてもよい。
例えば、ワクチンに用いることができ、あるいは求められる微生物は、サルモネラ(Salmonella)、シゲラ(Shigella)、クレブシエラ(Klebsiella)、エンテロバクター(Enterobacter)、セラチア(Serratia)、プロテウス(Proteus)、イルシニア(Yersinia)、ビブリオ(Vibrio)、アエロモナス(Aeromonas)、パステュレラ(Pasteurella)、シュードモナス(Pseudomonas)、アシネトバクター(Acinetobacter)、モラキセラ(Moraxella)、フラボバクテリウム(Flavobacterium)、ボルデテラ(Bordetella)、アクチノバシラス(Actinobacillus)、ネイセリア(Neisseria)、ブルセラ(Brucella)、ヘモフィラス(Haemophilus)およびエシェリヒア・コリ(Eschrichia coli)を包含する。
【0015】
好ましいワクチンは、ワクチニア(痘瘡について)ワクチン;ボル・バシラス(vole bacillus)(TBについて)ワクチン;ポリオワクチン;麻疹ワクチン;ムンプスワクチン;風疹ワクチン;黄熱ワクチン;水痘−帯状疱疹ワクチン;BCGワクチン;狂犬病ワクチン;インフルエンザワクチン;A型肝炎ワクチン;発疹チフスワクチン;百日咳ワクチン;腸チフスワクチン;コレラワクチン;ペストワクチン;ペヌモコッカス(penumococcus)ワクチン;髄膜炎菌ワクチン;ヘモフィラス・インフルエンザエワクチン;B型肝炎ワクチン;C型肝炎ワクチン;破傷風ワクチンおよびジフテリアワクチンを包含する。トキシンをベースとするワクチンは、クロストリジウム・テタニ(Clostridium tetani)、コリネバクテリウム・ジフセリエ(Corynebacterium diphtheriae)、ビブリオ・コレレ(Vibrio cholerae)およびクロストリジウム・パーフリンジェンス(Clostridium perfringens)を包含する。
【0016】
ワクチンが有用である他の主な疾患は、HIV、ヘルペス、ウイルス、アデノウイルス、リノウイルス、スタフィロコッカス、A群ストレプトコッカス、マイコバクテリウム・レプラエ(Mycobacterium leprae)、トレポネマ・パリダム(Treponema pallidum)、クラミジア、カンジダ、ニューモシスチス、マラリア、トリパノソミアシス;シャガス病;住血吸虫症および糸状虫症を包含する。
腫瘍抗原の存在も明らかとなり、その結果、癌に対するワクチン処置の概念が生まれた。さらに、原則として、広範囲に及ぶ妊娠および他の再生ホルモンに対する免疫性を誘発することにより、妊娠および移植を妨げることもできる。
【0017】
(B)TH1を誘発するアジュバント
「TH1を誘発するアジュバント」とは、抗原に対するTH1応答を強化するアジュバントを意味する。
アジュバントのTH1誘発アジュバントとしての有効性は、種々のアジュバントを有してなるワクチンにおいて、抗原の投与により得られるこの抗原に拮抗する抗体の特性を測定することにより決定することができる。
好ましくは、アジュバントは修飾リポ多糖類である。米国特許第4912094号に記載されるように、腸内細菌のリポ多糖類(LPS)は強力な免疫刺激剤である。しかし、該物質はまた有害な、特に致死的な応答を惹起させ得る。今では、LPSに伴う内毒素活性の結果としてそのリピドA成分が得られることが知られている。したがって、本発明は、さらに好ましくはリピドAの解毒作用誘導体としての用途を提供するものである。Ribiは、最初、精製された解毒内毒素(RDE)として知られていたが、一リン酸化リピドA(MPL)として知られるようになったリピドAの誘導体を生成した。米国特許第4912094号に記載されるように、MPLはグラム陰性菌(例えば、サルモネラ種)のヘプトース不含変異体より得られるLPSまたはリピドAを中程度の強度の鉱酸溶液(例えば、0.1N塩酸)中で約30分間還流することにより産生される。この処置により還元末端グルコサミンの1位でリン酸基の欠失が得られる。加えて、この処理の間にその核となる炭水化物が非還元グルコサミンの6’位より取り除かれる。
【0018】
しかしながら、解毒リピドAが非還元グルコサミンの6’位に付着したコア部を保持する、修飾LPSまたはリピドAを用いることが好ましい。かかるLPSおよびリピドAの誘導体はまた、米国特許第4912094号に記載されている。さらに詳細には、米国特許第4912094号は、リポ多糖類の3’位で還元末端グルコサミンにエステル結合するリポ多糖類のβ−ヒドロキシミリスチン酸アシル残基だけを選択的に除去する方法であって、そのリポ多糖類をアルカリ性加水分解に付すことにより得られる修飾リポ多糖類を開示する。そのような脱−O−アシル化一リン酸化リピドA(MPL)、ジリン酸化リピドA(DPL)およびLPSを本発明において用いることができる。このように好ましい具体例において、本発明は、還元末端グルコサミンの3’位が脱−O−アシル化されている、MPL、DPLまたはLPSを使用する。これらの化合物は、各々、3−DMPL、3−DDPLおよび3−DLPSとして知られている。
【0019】
米国特許第4987237号において、式:
【化1】

【0020】
[式中、RおよびRは水素であり、RはC、Hおよび、所望によりO、NおよびSを含んでおり、1種以上の原子があるとしても、それらは同一または異なっていてもよく、C原子の総数が60個を越えない、直鎖または分岐鎖炭化水素であり、環はMPL核を意味する]
で示されるMPLの誘導体が記載されている。
【0021】
別法として、MPL誘導体は、式:
【化2】

【0022】
[式中、
【化3】

で示されるMPL誘導体の部分は、2−60個の炭素原子を含有し、RはC、Hおよび所望によりO,NおよびSを含んでおり、1種以上の原子があるとしても、それらは同一または異なっていてもよく、xは最低1であり、x部分の炭素原子の総数が60を越えないような数とすることができ、各部分の各Rの構造が同一または異なっていてもよく、環がMPL核を意味する]
で示される。
【0023】
利用可能であるか、または利用可能となるそのようなLPSまたはリピドAのすべての誘導体または塩を本発明にて用いてもよい。
TH1を誘発するアジュバントを投与前に組成物の他の成分と混合することができる。また、製品を製造する間に他の成分と一緒に処方することもできる。また、他の成分と異なる部位または時間に投与することもできる。投与は多数の経路によりものであってもよい。
【0024】
(C)貧可溶性アミノ酸
アミノ酸は、アジュバントおよび抗原が免疫応答を生じさせることができるように水溶液に貧可溶性でなければならない。
大部分のアミノ酸は、結晶格子中に強い分子間力が作用する結果、水中にほんのわずかに溶けるだけである。例外がグリシン、プロリン、リシン、スレオニン、システインおよびアルギニンであり、それらは本当に水可溶性であり、本発明の一部を形成しない。アミノ酸の水溶性を以下の表に示す:
【0025】
【表1】

【0026】
本発明にて用いられるアミノ酸の水溶性は、25℃の水100ml中、約1.1またはそれ以下のグラムであることが好ましい。チロシンまたはトリプトファンが特に好ましく、より不溶性のチロシンが好ましい。これらアミノ酸の誘導体、例えば、ベンジル−O−オクタデカノイル−L−チロシンもまた本発明の範囲内にある。
典型的には、共同沈降させるかまたは夫々、混合することにより、抗原をアミノ酸内に分散させ、および/またはアミノ酸上に吸着させる。
【0027】
調製
本発明の組成物は、抗原の水溶液をアミノ酸の水性強酸中溶液と混合し、その溶液の混合液を中和し、それによりアミノ酸および抗原を共同沈降させ、生成物をTH1を誘発するアジュバントと混合し、所望により生理学上許容される希釈体、賦形剤または担体を前記した混合の前後いずれかで添加することで調製してもよい。また、TH1を誘発するアジュバントを抗原と共同沈降させてもよい。投与前に組成物の他の成分と混合または共同沈降させるのと同様、TH1を誘発するアジュバントを他の成分と異なる部位および/または時に投与することもできる。
典型的には、好ましくはpH7±1の、固体の溶媒和から得ることができる、抗原の水溶液を、アミノ酸の水性強酸中溶液と混合する。強酸は、通常、無機酸、好ましくは塩酸である。この工程で使用される抗原の溶液は、典型的には、0.1μg/mlと1000μg/mlの、例えば、約400μg/mlの抗原タンパク質を有する。混合物中の抗原:アミノ酸の割合は、典型的には、1:4x10ないし1:1x10w/wの範囲にある。
【0028】
得られた抗原とアミノ酸の溶液の混合物を中和する。中和とは、pH値を4.0ないし7.5の範囲に調整することを意味する。中和はごく短時間に、または少なくとも長時間を要することなく、その溶液のpHを7.5よりも上であるとはっきりと判る程度まで上げることが望ましい。この条件は該溶液を激しく攪拌し、必要ならば必要量の塩基を用いるだけで合致させることができる。通常、種々の緩衝化剤を抗原の溶液に注意しながら添加し、混合および中和段階でのpH調整を補助することができる。
中和を行うのに特に有用な方法は、アミノ酸および中和塩基を別々の溶液流で抗原の溶液と混ぜることである。加える溶液の流速はpHスタット、すなわち、反応混合物のpHが実質的に所定のレベルで一定であるように、溶液の一方または両方の流速を制御する装置により調節する。本発明者らは、正確なpHは抗原の特性により変化するが、最適な結果が、通常、pHを6.5ないし7.5の範囲内に調整することで得られることを見出した。
【0029】
中和した結果、抗原の溶液が吸蔵および/または吸着されている範囲内および/または上で、アミノ酸の迅速な沈降が起こる。沈降後、混合物を直ちに洗浄するか、または洗浄までに2、3時間または1日もしくは2日放置する。得られた沈降物を遠心分離または濾過により溶液から除去し、例えば、フェノール−セイラインで洗浄してもよく、要すれば、生理学的に許容される担体、賦形剤または希釈体に再び懸濁させてもよい。
【0030】
後記する調製例3に記載の方法によりまたは超音波処理により溶解させたMPL(または他のTH1を誘発するアジュバント)を、抗原のアミノ酸吸着体に添加する前に種々の手段により希釈することができる。MPLの調製物を、最初、典型的には0.5mg/mlと4mg/mlの間、例えば、1mg/mlの濃度で調製する。ついで、それを500μg/mlと20μg/ml、好ましくは100μg/mlの濃度に希釈することができる。この希釈体は精製水または1%と4%の間の、好ましくは2%のグリセロールを含有する水性グリセロール溶液中に製造することができる。ついで、このような希釈体を、前記調製のアミノ酸吸着体の懸濁液に加えることができる。便宜のため、MPL溶液とアミノ酸吸着体の懸濁液の濃度は、各々、略等しい容量を混合して注射用の最終生成物が得られるように選択する。典型的な最終生成物は約100μg/mlの抗原および約250μg/mlのMPLを含有する。
【0031】
このように、本発明の処方物は直接投与してもよいが、好ましくはその処方物を医薬上許容される担体、賦形剤または希釈体と合し、ヒトまたは獣に使用することのできる、医薬組成物を製造する。適当な生理学上許容される担体および希釈体は、等張セイライン溶液、例えば、リン酸塩緩衝セイライン、フェノール−セイラインおよび滅菌水を包含する。組成物を非経口、筋肉内、静脈内または経皮投与用に処方してもよい。
本明細書に記載の投与経路および投与量は、当業者が個々の患者のための最適な投与経路および投与量ならびに条件を容易に決定することができるよう指針として示すにすぎない。
【0032】
ワクチンの調製
本発明の処方物からワクチンを調製してもよい。活性成分としての抗原を含有するワクチンの調製は当業者に公知である。典型的には、そのようなワクチンを液体溶液または懸濁液として注射できるように調製する;注射前に液体に溶解または懸濁させるのに適当な固体形態を調製してもよい。調製物をさらに乳化させてもよく、あるいはその処方物をリポソーム中にカプセル化してもよい。前記したように、その処方物を、医薬上許容され、かつその処方物と混和する担体、希釈体および賦形剤と混合してもよい。かかる賦形剤は、例えば、水、セイライン、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、およびその組み合わせを包含する。
加えて、所望により、ワクチンはさらに少量の補助物質、例えば、湿潤もしくは乳化剤、pH緩衝化剤および/またはワクチンの効能を向上させる別のアジュバントを有していてもよい。
【0033】
抗原とアジュバントの割合は、その両方が有効量で配合されるように広範囲にわたって変化することができる。都合よくは、0.2μg/mlないし200μg/mlの範囲にある、好ましくは5μg/mlないし50μg/mlの、最も好ましくは約15μg/mlの最終濃度の抗原を含むようにワクチンを処方する。
処方した後、そのワクチンを滅菌容器に入れ、次にそれを密封し、低温で、例えば40℃で貯蔵してもよく、あるいは凍結乾燥させてもよい。凍結乾燥は、安定した形態で長期間貯蔵することができる。
【0034】
ワクチンは、通常、例えば、経皮的または筋肉内のいずれかで注射することにより、非経口的に投与される。他の投与経路に適する別の処方物として坐剤、ある場合には、経口処方物が挙げられる。坐剤の場合、伝統的な結合剤および担体として、例えば、ポリアルキレングリコールまたはトリグリセリドが挙げられ;かかる坐剤は、活性成分を0.5%ないし10%、好ましくは1%ないし2%の範囲にて含有する混合物より形成してもよい。経口処方物は、例えば、医薬品階級のマンニトール、ラクトース、澱粉、ステアリン酸マグネシウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどそのように一般的に使用される成分を有していてもよい。これらの組成物は溶液、懸濁液、錠剤、ピル、カプセル、徐放性処方または散剤の形態を取り、10%ないし95%の、好ましくは25%ないし70%の活性成分を含有する。ワクチン組成物を凍結乾燥させる場合、その凍結乾燥させた物質を投与前に、例えば、懸濁液として復元させてもよい。復元は緩衝液にて行うことが好ましい。
【0035】
患者に経口投与するためのカプセル、錠剤およびピルは、例えば、オイドラギット「S」、オイドラギット「L」、セルロースアセテート、セルロースアセテートフタレートまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースを有してなる腸溶性コーティング剤で被覆されていてもよい。
本発明で用いられる抗原は、中性のまたは塩の形態のワクチンに処方してもよい。医薬上許容される塩は酸付加塩(ペプチドの遊離アミノ基で形成される)および、例えば、塩酸またはリン酸などの無機酸、あるいは酢酸、蓚酸、酒石酸およびマレイン酸などの有機酸で形成される酸付加塩を包含する。遊離カルボキシル基で形成される塩もまた、例えば、水酸化ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムまたは鉄などの無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリエチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジンおよびプロカインのような有機塩基から誘導してもよい。
【0036】
ワクチンの投与量
ワクチンは投与処方と融和する方法にて、および予防的および/または治療的に効果的であるような用量にて投与される。投与すべき量は、一般に、1投与当たり抗原5μgないし250μgの範囲にあり、治療すべき対象、対象の免疫系の抗体の合成能および所望の保護度に依存する。好ましい範囲は1投与当たり約20μgから約40μgである。
適当な用量は約0.5mlである。したがって、筋肉内注射の用量は、例えば、20μgの免疫原を0.5%アジュバントと混合して含む0.5mlからなる。
投与するのに必要な活性成分の正確な量は顧問医の判断によって左右され、個々の対象に特有なものである。
【0037】
ワクチンは一回の投与計画で投与してもよく、あるいは好ましくは複数の投与計画で投与してもよい。複数の投与計画は、ワクチン処置の一次投与を1−10回の個々の用量で行い、つづいてその後、別の投与量を免疫応答を維持および/または強化するのに必要な間隔、例えば、第二投与については1ないし4ヶ月で投与し、必要ならば、その後の投与を数ヶ月後に行うものである。その投与方法はまた、少なくともある程度は、個体の要求により決定され、顧問医の判断に依存するであろう。
加えて、抗原を含むワクチンは、他の免疫調節剤、例えば、免疫グロブリンと一緒に投与してもよい。
【0038】
本発明の処方物を用いる抗体の調製
本発明の組成物は、さらにアジュバントを使用することなく、直接的に免疫原として使用し、抗血清およびモノクローナル抗体を生成してもよい。
本発明は、このように、抗原特異的免疫グロブリン産生の誘発方法であって、
a)動物を本発明の処方物で免疫化する工程;および
b)その動物の血清から該組成物の一連の抗原に特異的な免疫グロブリンを回収する工程
からなる方法を提供する。
抗体産生に用いられる動物は、一般に、その目的に利用されるいずれの動物、特に哺乳動物であってもよい。特に、指示される動物は、マウス、ラット、モルモットおよびウサギである。
【0039】
免疫処理は確立された技法に従って行う(「Antibodies、A Laboratory Manual」、E.HarlowおよびD.Lane(1988) Cold Spring Habor、米国を参照のこと)。精製された組成物(約1mg)をウサギに注射した。0.5mgの組成物のブースター注射を最初の注射から4週間後に行った。抗体をウサギの血清から単離し、反応性について試験する。選択された抗原との選択的結合能を有する抗体はこの方法により得られる。
さらに詳しくは、抗原を有してなる本発明の処方物を用い、ポリクローナルおよびモノクローナルの両方の抗体を産生することができる。ポリクローナル抗体が望ましい場合、選択された動物(例えば、マウス、ウサギ、ヤギ、ウマなど)を免疫化する。その免疫化された動物からの血清を集め、公知技法に従って試験する。血清が他の抗原に対するポリクローナル抗体を含んでいる場合、そのポリクローナル抗体はイムノアフィニティークロマトグラフィーにより精製することができる。ポリクローナル抗血清を産生し、かつ処理する方法は、当該分野において公知である。
【0040】
本発明にて用いた抗原に拮抗するモノクローナル抗体もまた当業者であれば容易に産生することができる。ハイブリドーマを用いてモノクローナル抗体を産生する一般的方法が周知である。不変的な抗体産生細胞系は、細胞融合により、またBリンパ球の癌遺伝子DNAとの直接形質転換あるいはエプステイン−バール(Epstein−Barr)ウイルスとのトランスフェクションなどの他の方法によっても創製することができる。抗原に拮抗して産生されたモノクローナル抗体のパネルを種々の特性について、すなわちイソタイプおよびエピトープ結合性についてスクリーニングすることができる。
別法として、例えば、ファージがそのコート表面に多種の補体決定領域(CDR)を有するscFvフラグメントを発現する、ファージ提示ライブラリーをスクリーニングすることが挙げられる。この方法は当該分野にて周知である。
【0041】
抗原に拮抗する、モノクローナルおよびポリクローナルの両方の抗体は、診断において特に有用であり、中和している抗体は受動免疫療法にて有用である。特に、モノクローナル抗体を用いて、抗−イディオタイプ抗体を惹起してもよい。抗−イディオタイプ抗体は、それに対する保護が望まれる感染物質の抗原の「内部イメージ」を担持している免疫グロブリンである。
抗−イディオタイプ抗体を惹起する方法は当該分野にて知られている。これらの抗−イディオタイプ抗体もまた、治療ならびに抗原の免疫原領域を解明するのに有用である。
本発明の目的のために、「抗体」なる語は、特記しない限り、標的とする抗原に対する結合活性を保持している全抗体のフラグメントを包含する。かかるフラグメントは、Fv、F(ab’)およびF(ab’)フラグメントならびに単鎖抗体(scFv)を包含する。さらには、抗体およびそのフラグメントは、例えばEP−A−239400に記載される、ヒト化抗体であってもよい。
本発明を以下の実施例を用いて説明するが、それは単なる説明であって本発明を限定するものではない。
【0042】
参考例
調製例1
アレルゲン実験として8mgのオボアルブミン(XOA)を混合することで20mlのEVANS溶液に溶かした。次に、6.9mlのリン酸緩衝液を混合しながら添加した。溶液を磁気攪拌棒を含む100mlのビーカーに入れる。磁気攪拌器を用いて混合しながら、24%w/vのチロシンを含有する6.9mlの3.2N水酸化ナトリウムおよび6.9mlの3.8N塩酸を5分間にわたって同時に滴下し、沈降物を形成させた。混合物をさらに5分間攪拌し、ついで50mlの遠心管に移し、2500rpmで10分間遠心分離に付した。遠心分離した後、上澄をデカンテーションし、ペレット状の沈降物を40mlのリン酸緩衝液に再び懸濁させた。その混合物を2500rpmで5分間遠心分離に付した。遠心分離した後、上澄をデカンテーションし、沈降物を40mlのリン酸緩衝液に再び懸濁させた。その混合物を2500rpmで5分間遠心分離に付した。遠心分離した後、上澄をデカンテーションし、ペレット状の沈降物を、0.4%v/vグリセロールおよび0.01%w/vチメロサールを保存料として含有する、40mlのリン酸緩衝セイライン(pH7.2)に再び懸濁させた。その最終生成物は約40mg/mlのチロシン吸着物を含有した。XOAが100%チロシン吸着物に結合すると仮定すると、XOAはその最終生成物中に200μg/mlで存在した。必要となるまでそのXOAチロシン吸着物を4℃で貯蔵した。
【0043】
調製例2
1,2−ジパルミトイル−SN−グリセロ−3−ホスホコリン(DPPC)の無水エタノール中4mg/ml溶液を調製した。1.0mgのMPL(登録商標)−TEA(トリエチルアミン)塩を可溶化させるのに、27μlのDPPCを加えてMPL(登録商標)を溶かした。MPL(登録商標)は上記したように調製してもよい。窒素流を緩やかにそのバイアルに流すことでエタノールを除去した。次に、乾燥MPL(登録商標)/DPPC混合物中のMPL(登録商標)1mgに対して、1.0mlの発熱物質不含注射用水を加えた。透明になるまで、その溶液をソニケーター浴中、60−70℃で超音波処理した。ついで、MPL(登録商標)/DPPC溶液をSFCA290−4520Nalgene0.2μmフィルターを介して濾過することで濾過滅菌した。そのMPL(登録商標)/DPPC溶液を1.0mg/mlで発熱物質除去バイアルに無菌分配し、MPL(登録商標)−AF(DPPCに溶かしたMPL(登録商標))とラベルし、4℃で貯蔵した。
【0044】
生物学的活性
マウスにおけるTH1誘発活性はIgG2aおよびIgG2b抗体の産生と等しく、TH2誘発活性はIgG1抗体およびIgE抗体の産生と同等であると考えることができる。
そこで、例えば、マウスにて実験を行い、ニワトリの卵より由来の周知のアレルゲンである、オボアルブミン(XOA)に対するアレルゲン特異的抗体の特性を測定した。MPL+XOA+チロシンを有してなる処方物は、MPL+XOA、XOA+チロシンまたはXOA単独の場合よりもより優れた抗体特性を刺激した。
一群8匹の6−8週齢のBALB/c雌マウスに、以下のワクチンの一を0.2mlで鼠蹊部に皮下注射した。
【0045】
XOA+チロシン
前記した調製例1にて調製したXOAチロシン吸着物を、注射する30分以内に等容量のリン酸緩衝セイラインで希釈した。
XOA+チロシン+MPL
前記した調製例1にて調製したXOAチロシン吸着物を、注射する30分以内に等容量のリン酸緩衝セイライン中500μg/mlのMPL(登録商標)−AFで希釈した。
XOA+MPL
XOAを200μg/mlでリン酸緩衝セイラインに溶かし、注射する30分以内に等容量のリン酸緩衝セイライン中500μg/mlのMPL(登録商標)−AFで希釈した。
XOA単独
XOAを200μg/mlでリン酸緩衝セイラインに溶かし、等容量のリン酸緩衝セイラインで希釈した。
【0046】
21日後、4群のマウスに新たに調製したワクチン0.2mlでブースター処理した。ブースター処理した14日後、マウスを放血させて血清を分離し、アッセイするまでー70℃で貯蔵した。
その血清を、Southern Biotechnology Inc.(米国、AL、バーミンガム)より入手し、製造業者の指示に従って使用される、西洋ワサビ接合ヤギ抗−マウスIgG、IgG2aおよびIgG2b抗体を用いる通常のELISA法によりアッセイした。IgG1、IgG2aおよびIgG2b力価は、A490で>0.1ODユニットの読みが得られる相互の血清希釈度を意味する。
血清IgEレベルを、抗−IgE捕獲ELISAを用い、つづいてビオチニル化オボアルブミンプローブを用いて測定した。西洋ワサビ接合ストレパビジン調製物を添加した後の結合を測定した。結果をA490でのODユニットとして報告する。
【0047】
結果
特に重要なことは、アレルゲン+チロシン+MPLの組み合わせが、他の組み合わせほど抗原特異的IgE抗体を誘発しないことである。さらには、IgG2aまたはIgG2bのIgG1抗体に対する割合は大きく、初めの2つの抗体で最高レベルのイソタイプが、他のいずれの群のマウスよりも抗原+チロシン+MPLを付与したマウス実験で見られることとも一致する。これはこの群では他の群のマウスにて誘発される割合と比較してTH1細胞誘発のTH2細胞誘発に対する割合が大きいことを示すものである。
【実施例】
【0048】
調製例A
B型肝炎ウイルス抗原性を示す精製されたポリペプチド(かかるポリペプチドの製法に関する詳細はEP−A−0182442およびWO98/44947に見ることができる)の中和溶液に、pH7±1のリン酸緩衝溶液を添加する。塩酸中の1倍容量の1−チロシン(24gのL−チロシンを100mlの3.8M塩酸に溶かして調製)および1倍容量の3.2M水酸化ナトリウムを同時に4倍容量の抗原溶液に激しく攪拌しながら添加することにより、抗原溶液をチロシンと一緒に共同沈降させる。こうして形成した懸濁液を遠心分離に付し、緩衝セイライン(pH6±1)で繰り返し洗浄する。
【0049】
調製例B
XOAを肝炎ウイルス(HBV)抗原性を示すポリペプチドと置き換える以外、参考例の調製例1と同様にした。
【0050】
調製例C
参考例の調製例2と同様にして行った。
【0051】
生物学的活性
マウスにおけるTH1誘発活性はIgG2aおよびIgG2b抗体の産生と等しく、TH2誘発活性はIgG1抗体およびIgE抗体の産生と同等であると考えることができる。
そこで、例えば、マウスにて実験を行い、周知のアレルゲンである、抗原(HBV)に対する抗原特異的抗体の特性を測定した。MPL+HBV+チロシンを有してなる処方物は、MPL+HBV、HBV+チロシンまたはHBV単独の場合よりもより優れた抗体特性を刺激した。
一群8匹の6−8週齢のBALB/c雌マウスに、以下のワクチンの一を0.2mlで鼠蹊部に皮下注射した。
【0052】
HBV+チロシン
前記した調製例Aにて調製したHBVチロシン吸着物を、注射する30分以内に等容量のリン酸緩衝セイラインで希釈した。
HBV+チロシン+MPL
前記した調製例Aにて調製したHBVチロシン吸着物を、注射する30分以内に等容量のリン酸緩衝セイライン中500μg/mlのMPL(登録商標)−AFで希釈した。
HBV+MPL
HBVを200μg/mlでリン酸緩衝セイラインに溶かし、注射する30分以内に等容量のリン酸緩衝セイライン中500μg/mlのMPL(登録商標)−AFで希釈した。
HBV単独
HBVを200μg/mlでリン酸緩衝セイラインに溶かし、等容量のリン酸緩衝セイラインで希釈した。
【0053】
21日後、4群のマウスに新たに調製したワクチン0.2mlでブースター処理した。ブースター処理した14日後、マウスを放血させて血清を分離し、アッセイするまでー70℃で貯蔵した。その血清を、Southern Biotechnology Inc.(米国、AL、バーミンガム)より入手し、製造業者の指示に従って使用される、西洋ワサビ接合ヤギ抗マウスIgG、IgG2aおよびIgG2b抗体を用いる通常のELISA法によりアッセイした。IgG、IgG2aおよびIgG2b力価は、A490で>0.1ODユニットの読みを与える相互の血清希釈度を意味する。血清IgEレベルを、抗−IgE捕獲ELISAを用い、つづいてビオチニル化オボアルブミンプローブを用いて測定した。西洋ワサビ接合ストレパビジン調製物を添加した後の結合を測定した。特に重要なことは、抗原+チロシン+MPLの組み合わせが、他の組み合わせほど抗原特異的IgE抗体を誘発しないことである。さらには、IgG2aまたはIgG2bのIgG1抗体に対する割合は大きく、初めの2つの抗体で最高レベルのイソタイプが、他のいずれの群のマウスよりも抗原+チロシン+MPLを付与したマウス実験で見られることとも一致する。これはこの群では他の群のマウスにて誘発される割合と比較してTH1細胞誘発のTH2細胞誘発に対する割合が大きいことを示すものである。
引用文献を出典明示により本明細書の一部とする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)抗原;
(B)TH1を誘発するアジュバント;および
(C)貧水溶性アミノ酸またはその誘導体
を有してなる組成物。
【請求項2】
抗原が細菌、ウイルスまたは新生物より誘導される請求項1記載の組成物。
【請求項3】
抗原が、抗原ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを有してなるポリペプチドまたはベクターの形態であり、そのポリヌクレオチドの発現を可能とする調節配列に機能的に連結している、請求項1または請求項2記載の組成物。
【請求項4】
TH1を誘発するアジュバントがMPL、3−DMPLまたはその誘導体もしくは塩である、前記した請求項のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項5】
貧可溶性アミノ酸がチロシン、トリプトファンまたはその誘導体である、前記した請求項のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項6】
医薬としての用途の前記した請求項のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項7】
前記したいずれかの請求項に記載の組成物と、医薬上許容される担体、希釈体または賦形剤とを有してなる医薬組成物。
【請求項8】
請求項1ないし6のいずれか1つに記載の組成物と、医薬上許容される担体、希釈体または賦形剤とを有してなるワクチン組成物。
【請求項9】
ヒトまたは動物における細菌もしくはウイルス感染または癌に対する罹病性を治療、予防または減少させる方法であって、ヒトまたは動物に、有効量の前記いずれかの請求項に記載の組成物を投与してなる方法。
【請求項10】
抗原を認識する抗体を産生するための方法における請求項1ないし8のいずれか1つに記載の組成物の使用。
【請求項11】
抗原を認識する抗体の産生方法であって、請求項1ないし8のいずれか1つに記載の組成物を哺乳動物に投与してなる方法。
【請求項12】
ヒトまたは動物における細菌もしくはウイルス感染または癌の治療法であって、ヒトまたは動物に請求項10または11の記載に従って製造した有効量の抗体を投与してなる方法。
【請求項13】
請求項1ないし6のいずれか1つに記載の組成物の製法でって、抗原およびTH1を誘発するアジュバントの溶液を、貧可溶性アミノ酸またはその誘導体の強酸水溶液中溶液と混合し、その間にその溶液の混合液を中和し、それにより貧可溶性アミノ酸、抗原およびアジュバントを共同沈降させることを特徴とする方法。
【請求項14】
さらに医薬上許容される担体、希釈体または賦形剤を添加してなる請求項13記載の方法。

【公開番号】特開2010−265330(P2010−265330A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−190949(P2010−190949)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【分割の表示】特願平11−263652の分割
【原出願日】平成11年9月17日(1999.9.17)
【出願人】(599131930)アラージー・セラピューティックス・リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】Allergy Therapeutics Limited
【Fターム(参考)】