説明

処理実行方法およびそのプログラム並びに印刷指示装置

【課題】所定値を超える印刷に関する値である印刷関連値を含む印刷関連情報を用いて印刷機器への印刷指示を行なうことができるようにする。
【解決手段】大部数の印刷を行なうか否かを設定する大部数設定部にチェックが入れられているときには大部数フラグFに値1を設定してこれとDevmodeのうちの印刷部数とをPrivate領域に書き込み、プリンターへの印刷指示を行なう際には、大部数フラグFが値0のときにはPublic領域の印刷部数を含むDevmodeを用いてプリンターへの印刷指示を行ない(S320)、大部数フラグFが値1のときにはPrivate領域の印刷部数を含むDevmodeを用いてプリンターへの印刷指示を行なう(S330)。これにより、大部数の印刷をプリンターに指示できるようにすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理実行方法およびそのプログラム並びに印刷指示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の処理実行方法としては、コンピューター内のプリンタドライバーが、アプリケーションから指定されたオブジェクトに対応する印刷オブジェクト識別情報(ID)に従って印刷設定情報(DEVMODE)最適化テーブルを参照することによってそのIDに対応するDEVMODEをアプリケーションに通知するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この方法では、プリンタドライバーがDEVMODE最適化テーブルを参照してDEVMODEを構築してアプリケーションに通知すると共にアプリケーションがそのDEVMODEをユーザーに通知することにより、DEVMODEを使用するかしないかの選択をユーザーに選択させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−350610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
産業印刷業界などでは、ロール紙などに同一の画像(例えばラベルや切手など)を大部数印刷するよう要求される場合があるが、上述の処理実行方法では、オペレーティングシステムを介してアプリケーションとプリンタードライバーとの間でやりとりされる印刷部数のデータについては特定のデータサイズ(例えばshort型(符号付き16bit)など)が用いられることが多いため、アプリケーションでそのデータのサイズを超える部数を指定することができず、この範囲を超えた部数の印刷を一度にプリンターに指示することができない。また、これ以外にも、所定の範囲を超えた用紙サイズでの印刷や、所定の範囲を超えたピクセル数での印刷なども要求されることがあるが、アプリケーションとプリンタードライバーとの間でやりとりされるデータのサイズに対応する範囲内でしかプリンターに指示することができない。
【0005】
本発明の処理実行方法およびそのプログラム並びに印刷指示装置は、所定値を超える印刷に関する値である印刷関連値を含む印刷関連情報を用いて印刷機器への印刷指示を行なうことができるようにすることを主目的とする。
【0006】
本発明の処理実行方法およびそのプログラム並びに印刷指示装置は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の処理実行方法は、
データを記憶可能な第1の領域とデータを記憶可能で該第1の領域に比して汎用性が低い第2の領域とを有する記憶手段を用いてドライバーによる処理を実行する処理実行方法であって、
(a)印刷に関する値である印刷関連値を所定値を超える値とする指示である超過指示がなされているとき、前記印刷関連値を前記第2の領域に記憶させるステップと、
(b)印刷機器への印刷指示を行なう際、前記印刷関連値が前記第2の領域に記憶されていない非記憶時には前記第1の領域に記憶されている印刷関連値を含む印刷設定情報を用いて前記印刷機器への印刷指示を行ない、前記印刷関連値が前記第2の領域に記憶されている記憶時には該第2の領域に記憶されている印刷関連値を含む印刷設定情報を用いて前記印刷機器への印刷指示を行なうステップと、
を含むことを要旨とする。
【0008】
この本発明の処理実行方法では、印刷に関する値である印刷関連値を所定値を超える値とする指示である超過指示がなされているときにはデータを記憶可能で第1の領域に比して汎用性が低い第2の領域に印刷関連値を記憶させ、印刷機器への印刷指示を行なう際には、印刷関連値が第2の領域に記憶されていない非記憶時には第1の領域に記憶されている印刷関連値を含む印刷設定情報を用いて印刷機器への印刷指示を行ない、印刷関連値が第2の領域に記憶されている記憶時には第2の領域に記憶されている印刷関連値を含む印刷設定情報を用いて印刷機器への印刷指示を行なう。即ち、印刷機器への印刷指示を行なう際における記憶時には、第1の領域に比して汎用性が低い第2の領域に記憶されている印刷関連値を含む印刷設定情報を用いて印刷機器への印刷指示を行なうのである。これにより、所定値を超える印刷関連値を含む印刷関連情報を用いて印刷機器への印刷指示を行なうことができるようにすることができる。ここで、「第1の領域」は、オペレーティングシステムによって定義されてオペレーティングシステム,アプリケーション,ドライバーが認識可能な領域であり、「第2の領域」は、ドライバーによって定義されてドライバーのみが認識可能な領域である、ものとすることもできる。また、「所定値」は、本発明の処理実行方法がアプリケーションからの指示を受けてドライバーによる処理を実行する処理実行方法である場合、アプリケーションとドライバーとの間でやりとりされるデータのサイズに対応する値であるものとすることもできる。さらに、ステップ(a)は、超過指示がなされていないときには印刷関連値を第1の領域に記憶させるステップであるものとすることもできる。
【0009】
こうした本発明の処理実行方法において、前記ステップ(a)は、前記超過指示がなされているか否かを示す超過指示情報を前記第2の領域に記憶させるステップであり、前記ステップ(b)は、前記記憶させた超過指示情報に基づいて前記非記憶時か前記記憶時かを判定すると共に該判定結果に基づいて前記印刷機器への印刷指示を行なうステップである、ものとすることもできる。こうすれば、超過指示情報に応じて印刷機器への印刷指示を行なうことができる。
【0010】
また、本発明の処理実行方法において、前記ステップ(a)は、前記超過指示がなされているとき、該超過指示がなされていないときに前記第1の領域に記憶される前記印刷関連値を前記第2の領域に記憶させるステップである、ものとすることもできる。こうすれば、超過指示がなされているときには、超過指示がなされていないときに比較的汎用性が高い第1の領域に記憶される印刷関連値を第1の領域に比して汎用性が低い第2の領域に記憶させることにより、所定値を超える印刷関連値を含む印刷関連情報を用いて印刷機器への印刷指示を行なうことができるようにすることができる。
【0011】
さらに、本発明の処理実行方法において、前記印刷関連値は、印刷部数、用紙サイズ、ピクセル数のうち少なくとも一つを含む値である、ものとすることもできる。こうすれば、大部数の印刷や大きな用紙サイズでの印刷,大きなピクセル数(解像度など)での印刷を印刷機器に指示できるようにすることができる。ここで、「用紙サイズ」は、印刷機器によって印刷される印刷媒体としてロール紙を用いる場合には長手方向(巻き方向)の長さであるものとすることもできる。
【0012】
あるいは、本発明の処理実行方法において、前記所定値は、前記超過指示がなされていないときにユーザーによる入力を許容する前記印刷関連値の上限であり、前記ステップ(a)の前に、(c)前記超過指示がなされたとき、ユーザーによる前記所定値よりも大きな第2の所定値以下の前記印刷関連値の入力を許容する旨をユーザーに報知するステップを備えるものとすることもできる。こうすれば、超過指示に対応する状態になったことをユーザーに報知することができる。ここで、ユーザーへの報知は、印刷関連値が入力される領域を拡大したり入力を許容する印刷関連値の上限を表示したりすることにより行なわれるものとすることもできる。
【0013】
本発明のプログラムは、上述のいずれかの態様の本発明の処理実行方法の各ステップをコンピューターに実現させるためのものである。このプログラムは、コンピューターが読み取り可能な記録媒体(例えばハードディスク、ROM、FD、CD、DVDなど)に記録されていてもよいし、伝送媒体(インターネットやLANなどの通信網)を介してあるコンピューターから別のコンピューターに配信されてもよいし、その他どのような形で授受されてもよい。このプログラムをコンピューターに実行させるか又は複数のコンピューターに各ステップを分担して実行させれば、上述のいずれかの態様の本発明の処理実行方法の各ステップが実行されるため、本発明の処理実行方法と同様の作用効果を得ることができる。
【0014】
本発明の印刷指示装置は、
印刷機器への印刷指示を行なう印刷指示装置であって、
データを記憶可能な第1の領域と、データを記憶可能で該第1の領域に比して汎用性が低い第2の領域と、を有する記憶手段と、
印刷に関する値である印刷関連値を所定値を超える値とする指示である超過指示がなされているとき、前記印刷関連値を前記第2の領域に記憶させる記憶制御手段と、
前記印刷機器への印刷指示を行なう際、前記印刷関連値が前記第2の領域に記憶されていない非記憶時には前記第1の領域に記憶されている印刷関連値を含む印刷設定情報を用いて前記印刷機器への印刷指示を行ない、前記印刷関連値が前記第2の領域に記憶されている記憶時には該第2の領域に記憶されている印刷関連値を含む印刷設定情報を用いて前記印刷機器への印刷指示を行なう印刷指示手段と、
を備えることを要旨とする。
【0015】
この本発明の印刷指示装置では、印刷に関する値である印刷関連値を所定値を超える値とする指示である超過指示がなされているときには印刷関連値を第2の領域に記憶させ、印刷機器への印刷指示を行なう際には、印刷関連値が第2の領域に記憶されていない非記憶時には第1の領域に記憶されている印刷関連値を含む印刷設定情報を用いて印刷機器への印刷指示を行ない、印刷関連値が第2の領域に記憶されている記憶時には第2の領域に記憶されている印刷関連値を含む印刷設定情報を用いて印刷機器への印刷指示を行なう。即ち、印刷機器への印刷指示を行なう際における記憶時には、第1の領域に比して汎用性が低い第2の領域に記憶されている印刷関連値を含む印刷設定情報を用いて印刷機器への印刷指示を行なうのである。これにより、所定値を超える印刷関連値を含む印刷関連情報を用いて印刷機器への印刷指示を行なうことができるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】ユーザーPC10とプリンター30の構成の概略を示す構成図。
【図2】RAM14の一例を示す説明図。
【図3】印刷設定画面40の一例を示す説明図。
【図4】プロパティボタン押下時処理ルーチンの一例を示すフローチャート。
【図5】プロパティ画面50の一例を示す説明図。
【図6】プロパティ画面50の一例を示す説明図。
【図7】印刷指示送信ルーチンの一例を示すフローチャート。
【図8】大部数の印刷の一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態である印刷指示装置としてのユーザーパソコン(PC)10と印刷機器としてのプリンター30の構成の概略を示す構成図である。ユーザーPC10は、ユーザーが使用する印刷指示装置として構成された周知の汎用コンピューターとして構成されており、各種制御を実行するCPU12や各種処理プログラムを記憶するROM13,データを一時記憶するRAM14などを備えたコントローラー11と、各種アプリケーションプログラムや各種データファイルを記憶する大容量メモリであるHDD15と、USBポート16aに接続された外部機器との間でデータの入出力を行うUSBコントローラー16と、を備えている。HDD15には、オペレーティングシステム20や、文書や画像の作成,編集,印刷指示等の機能を有するアプリケーションプログラム22,プリンター30へ印刷ジョブを送信して印刷処理を行うときに用いられるプリンタードライバー24などが記憶されている。また、ユーザーPC10は、ユーザーが各種指令を入力するキーボードやマウス等の入力装置17や、各種情報を画面表示するディスプレイ18などを備え、ディスプレイ18に表示されたカーソル等をユーザーが入力装置17を介して入力操作するとその入力操作に応じた動作を実行する機能を有している。コントローラー11やHDD15、USBコントローラー16、入力装置17及びディスプレイ18は、バス19によって電気的に接続され、各種制御信号やデータのやりとりができるよう構成されている。このユーザーPC10は、プリンター30に対して印刷指示を送信したりプリンター30の情報を表示したりする。
【0018】
プリンター30は、装着部に装着されたロール紙Pに文書や画像を印刷する大判印刷用のプリンターとして構成されており、各種処理プログラムを記憶したROM33と一時的にデータを記憶するRAM34とを備えCPU32を中心とするマイクロプロセッサとして装置全体の制御を司るコントローラー31と、ロール紙Pへ画像を印刷処理する印刷機構35と、USBポート36aに接続された外部機器との間で情報の入出力が可能なUSBコントローラー36と、を備えている。コントローラー31や印刷機構35,USBコントローラー36は、図示しないバスによって電気的に接続されている。印刷機構35は、図示しないが、各色のインクに圧力をかけ、この加圧されたインクをロール紙Pに吐出して印刷処理を実行するインクジェット方式の機構である。なお、インクへ圧力をかける機構は、圧電素子の変形によるものとしてもよいしヒーターの熱による気泡の発生によるものとしてもよい。
【0019】
次に、こうして構成された本実施形態のユーザーPC10の動作、特にプリンター30への印刷指示を行なう際の動作について説明する。以下、説明の都合上、まず、アプリケーションプログラム22の実行中などにユーザーによって文書や画像の印刷が選択されたときの動作について説明し、その後に、プリンター30への印刷指示を行なう際の動作について説明する。
【0020】
アプリケーションプログラム22の実行中などにユーザーによって文書や画像の印刷が選択されると、コントローラー11のCPU12は、まず、図2に例示するように、プリンター30の印刷設定(以下、Devmodeという)を記憶するための領域としてRAM14に確保されたPublic領域14aやPrivate領域14bにHDD15に記憶されているDevmodeの初期値(デフォルト値)を書き込む。ここで、Public領域14aは、オペレーティングシステム20によって定義されてオペレーティングシステム20やアプリケーションプログラム22,プリンタードライバー24が認識可能な領域(比較的汎用性が高い領域)であり、Private領域14bは、プリンタードライバー24によって定義されてそのプリンタードライバー24のみが認識が可能な領域(Public領域14aに比して汎用性が低い領域)である。本実施形態では、Public領域14aには、Devmodeのうちの印刷部数や用紙サイズ,印刷の向き,ページのレイアウトなどのデータが書き込まれるものとし、Private領域14bには、Devmodeのうちの印刷モードや記録方法,色合わせなどのデータが書き込まれるものとした。また、本実施形態では、オペレーティングシステム20を介してアプリケーションプログラム22とプリンタードライバー24との間でやりとりされるDevmodeの各データについては特定のデータサイズ(例えば、short型(符号付16bit)など)が用いられるものとした。このため、Public領域14aに書き込まれる印刷部数は、特定のデータサイズ(short型の場合、1〜32767)の範囲内で予め設定された上限部数(例えば3桁や4桁の部数など、以下、第1上限部数Nmax1という)以下の値となる。なお、図2中、Private領域14bには、大部数の印刷が設定されたか否かを示す大部数フラグFや、所定の条件が成立したときに印刷部数についても書き込まれるが、これらについては後述する。
【0021】
こうしてRAM14のPublic領域14aやPrivate領域14bにDevmodeのデフォルト値を書き込むと、CPU12は、アプリケーションプログラム22による処理としてプリンタードライバー24にDevmodeを問い合わせる処理を行なってからプリンタードライバー24による処理としてRAM14に記憶されているDevmodeを読み出してアプリケーションプログラム22に出力する処理を行ない、アプリケーションプログラム22による処理としてプリンタードライバー24からのDevmodeを用いて印刷設定画面40をディスプレイ18に表示する処理を行なう。印刷設定画面40の一例を図3に示す。印刷設定画面40は、図示するように、印刷設定画面40中の上部に配置されてウィンドウタイトル(本実施形態では「印刷」)が表示される帯状のタイトルバー41と、タイトルバー41の下方に配置されるメイン画面42と、により構成されている。メイン画面42は、プリンター30の名称を表示するプリンター名称表示部43と、プリンタードライバー24から提供されたプリンター30に関する情報を表示するプリンター情報表示部44と、後述のプロパティ画面50を表示させるためのプロパティボタン45と、印刷範囲を設定する印刷範囲設定部46と、印刷部数を設定する印刷部数設定部47と、OKボタン48と、キャンセルボタン49と、などを備える。ここで、印刷部数設定部47は、前述した第1上限部数以下の値をユーザーが入力できるように構成されている。なお、本実施形態では、ユーザーがこの印刷設定画面40上で変更可能な値は、Public領域14aに書き込まれる値(印刷部数など)のみとした。また、以下の説明では、説明の容易のために、ユーザーによって印刷設定画面40上での値(印刷部数など)の変更は行なわれないものとして説明する。
【0022】
そして、印刷設定画面40をディスプレイ18に表示している最中にユーザーによって印刷設定画面40のプロパティボタン45が押下されると、CPU12は、プリンタードライバー24による処理、具体的には、図4に例示するプロパティボタン押下時処理ルーチンの各処理を実行する。プロパティボタン押下時処理ルーチンが実行されると、CPU12は、まず、RAM14のPublic領域14aやPrivate領域14bに書き込まれているDevmodeを読み込むと共に読み込んだDevmodeを用いてプロパティ画面50をディスプレイ18に表示する(ステップS100)。プロパティ画面50の一例を図5に示す。プロパティ画面50は、プロパティ画面50中上部に配置されウィンドウタイトル(本実施形態では「プリンター30のプロパティ」)が表示される帯状のタイトルバー51と、タイトルバー51の下方に配置されるメイン画面52と、により構成されている。メイン画面52は、用紙サイズを設定する用紙サイズ設定部53と、印刷部数を設定する印刷部数設定部54と、大部数の印刷を行なうか否かを設定する大部数設定部55と、OKボタン56と、キャンセルボタン57と、などを備える。ここで、印刷部数設定部54は、大部数設定部55にチェックが入れられていないときには、印刷設定画面40の印刷部数設定部47と同様に第1上限部数Nmax1以下の値をユーザーが入力できるように構成されている。なお、図5中、印刷部数設定部54に記載されている数値は、入力可能な最大部数(第1上限部数Nmax1)の一例である。
【0023】
続いて、プロパティ画面50の大部数設定部55にチェックが入れられているか否かを判定し(ステップS110)、大部数設定部55にチェックが入れられていないと判定されたときには、大部数の印刷が設定されたか否かを示す大部数フラグFに値0を設定すると共に(ステップS120)、印刷部数設定部54の領域のサイズを通常サイズとしてディスプレイ18に表示し(ステップS130)、ユーザーによってプロパティ画面50のOKボタン56が押下されたか否かを判定し(ステップS160)、OKボタン56が押下されていないと判定されたときには、ステップS110の処理に戻る。即ち、大部数設定部55にチェックが入れられていない状態が保持されているときには、印刷部数設定部54の領域のサイズを通常サイズで保持するのである。このとき、ユーザーは、第1上限部数Nmax1以下の値を印刷部数設定部54に入力可能である。
【0024】
一方、ステップS110で大部数設定部55にチェックが入れられていると判定されたときには、大部数フラグFに値1を設定すると共に(ステップS140)、印刷部数設定部54の領域のサイズを通常サイズより大きい拡大サイズとしてディスプレイ18に表示し(ステップS150)、ユーザーによってプロパティ画面50のOKボタン56が押下されたか否かを判定し(ステップS160)、OKボタン56が押下されていないと判定されたときには、ステップS110の処理に戻る。このときのプロパティ画面50の一例を図6に示す。図6中、印刷部数設定部54は、オペレーティングシステム20を介してアプリケーションプログラム22とプリンタードライバー24との間でやりとりされるデータのサイズ(例えばshort型など)や第1上限部数Nmax1より大きく且つプリンタードライバー24の仕様に対応する範囲内で予め設定された上限部数(例えば6桁や7桁の部数など、以下、第2上限部数Nmax2という)以下の値をユーザーが入力できるようそのサイズが拡大サイズとして構成されている。なお、図中、印刷部数設定部54に記載されている数値は、入力可能な最大部数(第2上限部数Nmax2)の一例である。即ち、ステップS150の処理では、大部数設定部55にチェックが入れられていない状態からそこにチェックが入れられたときには印刷部数設定部54の領域のサイズを通常サイズから拡大サイズに拡大し、大部数設定部55にチェックが入れられている状態が保持されているときには印刷部数設定部54の領域のサイズを拡大サイズで保持するのである。このように、大部数設定部55にチェックが入れられているときに、そこにチェックが入れられていないときに比して印刷部数設定部54の領域のサイズを拡大することにより、印刷部数設定部54に入力可能な最大部数が第1上限部数Nmax1から第2上限部数Nmax2に大きくなったことをユーザーに報知することができる。
【0025】
ステップS160でOKボタン56が押下されたと判定されたときには、大部数フラグFの値を調べ(ステップS170)、大部数フラグFが値0のときには、Devmodeのうちの印刷部数や用紙サイズ,印刷の向き,ページのレイアウトなどをPublic領域14aに書き込むと共に大部数フラグFとDevmodeのうちの印刷モードや記録方法,色合わせなどとをPrivate領域14bに書き込み(ステップS180)、プロパティ画面50を閉じて(ステップS200)、このルーチンを終了する。なお、このときにPublic領域14aに書き込まれる印刷部数は、第1上限部数Nmax1以下の値である。
【0026】
一方、ステップS170で大部数フラグFが値1のときには、大部数フラグFとDevmodeのうちの印刷部数とをPrivate領域14bに書き込むと共にDevmodeのうちの印刷部数以外のデータを大部数フラグFが値0のときと同様にPublic領域14aやPrivate領域14bに書き込み(ステップS190)、プロパティ画面50を閉じて(ステップS200)、このルーチンを終了する。即ち、大部数フラグFが値1のときには、印刷部数をPublic領域14aではなくPrivate領域14bに書き込むのである(図2中、Private領域14b参照)。なお、このときにPrivate領域に書き込まれる印刷部数は、第2上限部数Nmax2以下の値である。また、大部数設定部55にチェックが入れられている状態でプロパティ画面50を閉じたときには、CPU12は、アプリケーションプログラム22による処理を実行して印刷設定画面40の印刷部数設定部47に予め設定された大きな部数(例えば、999や9999など)を表示する。これにより、大部数設定部55にチェックが入れられている旨をユーザーに報知することができる。
【0027】
次に、プリンター30への印刷指示を行なう際のユーザーPC10の動作について説明する。ユーザーによって図3の印刷設定画面40のOKボタン48が押下されると、CPU12は、アプリケーションプログラム22からの印刷データとDevmodeと印刷指示とを用いてプリンタードライバー24による処理、具体的には、図7に例示する印刷指示送信ルーチンの各処理を実行する。印刷指示送信ルーチンが実行されると、CPU12は、Private領域14bに書き込まれている大部数フラグFを入力してその値を調べ(ステップS300,S310)、大部数フラグFが値0のときには、大部数設定部55にチェックが入れられていないと判断し、いま印刷設定画面40における値(例えば印刷部数など)が変更されないときを考えているから、Public領域14aやPrivate領域14bに書き込まれているDevmode(印刷部数はPublic領域14aに書き込まれている値)と印刷データ(文字や画像など)と印刷指示とをプリンター30に送信して(ステップS320)、このルーチンを終了する。そして、Devmodeと印刷データと印刷指示とを受信したプリンター30は、ロール紙Pへの印刷を行なう。なお、プロパティ画面50を閉じた後にユーザーによって印刷設定画面40における値(印刷部数など)が変更されたときには、ステップS320の処理として、変更されてアプリケーションプログラム22から出力された値をPublic領域14aに書き込むと共に書き込んだ値を読み込んでプリンター30に送信するものとすることができる。
【0028】
一方、ステップS310で大部数フラグFが値1のときには、大部数設定部55にチェックが入れられていると判断し、いま印刷設定画面40における値(印刷部数など)が変更されないときを考えているから、Public領域14aやPrivate領域14bに書き込まれているDevmode(印刷部数はPrivate領域14bに書き込まれている値)と印刷データと印刷指示とをプリンター30に送信して(ステップS330)、このルーチンを終了する。即ち、大部数フラグFが値1のときには、Devmodeのうち印刷部数については、Public領域14aの値ではなくPrivate領域14bの値(第2上限部数Nmax2以下の値)を用いるのである。なお、プロパティ画面50を閉じた後にユーザーによって印刷設定画面40における値が変更されたときには、ステップS330の処理として、変更されてアプリケーションプログラム22から出力された値が印刷部数でないときにはその値をPublic領域14aに書き込むと共に書き込んだ値を読み込んでプリンター30に送信し、変更されてアプリケーションプログラム22から出力された値が印刷部数のときにはその変更については無視してPrivate領域14bに書き込まれている印刷部数を読み込んでプリンター30に送信するものとすることができる。そして、Devmodeと印刷データと印刷指示とを受信したプリンター30は、ロール紙Pへの印刷を行なう。大部数フラグFが値1のときにプリンター30によって印刷される大部数の印刷の一例を図8に示す。産業印刷業界などでは、ロール紙Pなどに同一の画像(例えばラベルや切手など)を大部数印刷するよう要求される場合があるが、CPU12によってプリンタードライバー24によるこうした処理を実行することにより、オペレーティングシステム20を介してアプリケーションプログラム22とプリンタードライバー24との間でやりとりされるデータのサイズ(例えばshort型など)の範囲を超えた大部数の印刷をプリンター30に指示できるようにすることができる。しかも、大部数設定部55のチェックだけで大部数の印刷をプリンター30に指示できるようにするから、大部数の印刷を行なうか否かの切り替えを容易にすることができる。さらに、プリンタードライバー24による処理によって大部数の印刷をプリンター30に指示できるようにするから、オペレーティングシステム20やアプリケーションプログラム22の種類に拘わらず大部数の印刷をプリンター30に指示できるようにすることができる。
【0029】
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態の図4のプロパティボタン押下時処理ルーチンのステップS170,S190の処理が本発明のステップ(a)の処理に相当し、図7の印刷指示送信ルーチンの各処理が本発明のステップ(b)の処理に相当する。また、本実施形態のユーザーPC10が本発明の印刷指示装置に相当し、RAM14が記憶手段に相当し、プリンタードライバー24による処理を実行するCPU12が記憶制御手段,印刷指示手段に相当する。なお、本実施形態では、ユーザーPC10の動作を説明することにより本発明の処理実行方法の一例も明らかにしている。
【0030】
以上説明した実施例のユーザーPC10によれば、大部数設定部55にチェックが入れられているときには、大部数フラグFに値1を設定して大部数フラグFとDevmodeのうちの印刷部数とをPrivate領域14bに書き込むと共にDevmodeのうち印刷部数以外のデータを大部数設定部55にチェックが入れられていないときと同様にPublic領域14aやPrivate領域14bに書き込み、プリンター30への印刷指示を行なう際には、大部数フラグFが値0のときにはPublic領域14aに書き込まれている印刷部数を含むDevmodeを用いてプリンター30への印刷指示を行ない、大部数フラグFが値1のときにはPrivate領域14bに書き込まれている印刷部数を含むDevmodeを用いてプリンター30への印刷指示を行なうから、オペレーティングシステム20を介してアプリケーションプログラム22とプリンタードライバー24との間でやりとりされるデータのサイズの範囲を超えた大部数の印刷をプリンター30に指示できるようにすることができる。
【0031】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0032】
上述した実施形態では、プロパティ画面50が大部数設定部55を有するものとしたが、印刷に関する値を予め設定された所定値を超える値とするか否かを設定する設定部を有するものであればよく、大部数設定部55に加えてまたは代えて、例えば、予め設定された所定サイズを超える用紙サイズ(例えば、ロール紙Pの長手方向(巻き方向)の長さが所定の長さより長いサイズ)での印刷を行なうか否かを設定する大サイズ設定部を有するものとしてもよいし、予め設定された所定ピクセル数を超えるピクセル数での印刷を行なうか否かを設定する大ピクセル数設定部を有するものとしてもよい。なお、プロパティ画面50が大部数設定部55と大サイズ設定部と大ピクセル数設定部とを有する場合、例えば、プロパティ画面50のOKボタン56が押下されたときに、大部数設定部55と大サイズ設定部と大ピクセル数設定部とのうち少なくとも一つにチェックが入れられているときに値1が設定され全部にチェックが入れられていないときに値0が設定されるフラグF2とチェックが入れられている項目に関するデータ(印刷部数や用紙サイズ,ピクセル数など)とをPrivate領域14bに記憶させると共にチェックが入れられていない項目に関するデータをPublic領域14aに記憶させ、プリンター30への印刷指示を行なう際に、フラグF2が値1のときには、チェックが入れられている項目に関するデータについてはPublic領域14aではなくPrivate領域14bに書き込まれている値を用いるものとしてもよい。
【0033】
上述した実施形態では、大部数設定部55にチェックが入れられたときには、大部数設定部55にチェックが入れられていないときに比して印刷部数設定部54の領域を拡大することによって印刷部数設定部54に入力可能な最大部数が第1上限部数から第2上限部数に大きくなったことをユーザーに報知するものとしたが、これ以外の方法(例えば、入力可能な最大部数の表示や音声など)によって印刷部数設定部54に入力可能な最大部数が大きくなったことをユーザーに報知するものとしてもよいし、こうしたユーザーへの報知を行なわないものとしてもよい。
【0034】
上述した実施形態では、印刷設定画面40のプロパティボタン45が押下されたときに大部数設定部55にチェックが入れらていないプロパティ画面50(図5参照)をディスプレイ18に表示する場合すなわち大部数設定部55にチェックが入れらていない状態がDevmodeのデフォルト値として設定されている場合について説明したが、大部数設定部55にチェックが入れらている状態がDevmodeのデフォルト値として設定されている場合には、アプリケーションプログラム22の実行中などにユーザーによって文書や画像の印刷が選択されて印刷設定画面40をディスプレイ18に表示する際に、印刷部数設定部47に予め設定された大きな部数(例えば、999や9999など)を表示するものとしてもよい。
【0035】
上述した実施形態では、プリンター30への印刷指示を行なう際には、大部数フラグFの値に応じてプリンター30への印刷指示を行なうものとしたが、大部数フラグFに代えて、所定値を超える印刷に関する値である印刷関連値(本実施形態では印刷部数)がPrivate領域14bに記憶されているか否かに応じてプリンター30への印刷指示を行なうものとしてもよい。
【0036】
上述した実施形態では、大部数設定部55にチェックが入れられている状態でOKボタン56が押下されてプロパティ画面50を閉じたときには、印刷設定画面40の印刷部数設定部47に予め設定された大きな部数(例えば、999や9999など)を表示するものとしたが、これに代えて、値1を表示するものとしてもよいし、他の方法によって大部数設定部55にチェックが入れられている旨を表示するものとしてもよい。
【0037】
上述した実施形態では、印刷指示装置としてのユーザーPC10について説明したが、ドライバーによる処理を実行する処理実行方法の形態としてもよいし、処理実行方法を実行するプログラムの形態としてもよい。
【符号の説明】
【0038】
10 ユーザーPC、11 コントローラー、12 CPU、13 ROM、14 RAM、14a Public領域、14b Private領域、15 ハードディスク(HDD)、16 USBコントローラー、16a USBポート、17 入力装置、18 ディスプレイ、19 バス、20 オペレーティングシステム、22 アプリケーションプログラム、24 プリンタードライバー、30 プリンター、31 コントローラー、32 CPU、33 ROM、34 RAM、35 印刷機構、36 USBコントローラー、36a USBポート、40 印刷設定画面、41 タイトルバー、42 メイン画面、43 プリンター名称表示部、44 プリンター情報表示部、45 プロパティボタン、46 印刷範囲設定部、47 印刷部数設定部、48 OKボタン、49 キャンセルボタン、50 プロパティ画面、51 タイトルバー、52 メイン画面、53 用紙サイズ設定部、54 印刷部数設定部、55 大部数設定部、56 OKボタン、57 キャンセルボタン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データを記憶可能な第1の領域とデータを記憶可能で該第1の領域に比して汎用性が低い第2の領域とを有する記憶手段を用いてドライバーによる処理を実行する処理実行方法であって、
(a)印刷に関する値である印刷関連値を所定値を超える値とする指示である超過指示がなされているとき、前記印刷関連値を前記第2の領域に記憶させるステップと、
(b)印刷機器への印刷指示を行なう際、前記印刷関連値が前記第2の領域に記憶されていない非記憶時には前記第1の領域に記憶されている印刷関連値を含む印刷設定情報を用いて前記印刷機器への印刷指示を行ない、前記印刷関連値が前記第2の領域に記憶されている記憶時には該第2の領域に記憶されている印刷関連値を含む印刷設定情報を用いて前記印刷機器への印刷指示を行なうステップと、
を含む処理実行方法。
【請求項2】
請求項1記載の処理実行方法であって、
前記ステップ(a)は、前記超過指示がなされているか否かを示す超過指示情報を前記第2の領域に記憶させるステップであり、
前記ステップ(b)は、前記記憶させた超過指示情報に基づいて前記非記憶時か前記記憶時かを判定すると共に該判定結果に基づいて前記印刷機器への印刷指示を行なうステップである、
処理実行方法。
【請求項3】
前記ステップ(a)は、前記超過指示がなされているとき、該超過指示がなされていないときに前記第1の領域に記憶される前記印刷関連値を前記第2の領域に記憶させるステップである、請求項1または2記載の処理実行方法。
【請求項4】
前記印刷関連値は、印刷部数、用紙サイズ、ピクセル数のうち少なくとも一つを含む値である、請求項1ないし3のいずれか1つの請求項に記載の処理実行方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1つの請求項に記載の処理実行方法であって、
前記所定値は、前記超過指示がなされていないときにユーザーによる入力を許容する前記印刷関連値の上限であり、
前記ステップ(a)の前に、(c)前記超過指示がなされたとき、ユーザーによる前記所定値よりも大きな第2の所定値以下の前記印刷関連値の入力を許容する旨をユーザーに報知するステップを備える
処理実行方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1つの請求項に記載の処理実行方法の各ステップをコンピューターに実現させるためのプログラム。
【請求項7】
印刷機器への印刷指示を行なう印刷指示装置であって、
データを記憶可能な第1の領域と、データを記憶可能で該第1の領域に比して汎用性が低い第2の領域と、を有する記憶手段と、
印刷に関する値である印刷関連値を所定値を超える値とする指示である超過指示がなされているとき、前記印刷関連値を前記第2の領域に記憶させる記憶制御手段と、
前記印刷機器への印刷指示を行なう際、前記印刷関連値が前記第2の領域に記憶されていない非記憶時には前記第1の領域に記憶されている印刷関連値を含む印刷設定情報を用いて前記印刷機器への印刷指示を行ない、前記印刷関連値が前記第2の領域に記憶されている記憶時には該第2の領域に記憶されている印刷関連値を含む印刷設定情報を用いて前記印刷機器への印刷指示を行なう印刷指示手段と、
を備える印刷指示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−182195(P2010−182195A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−26557(P2009−26557)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】