説明

凸部の除去方法及びレンズ

【課題】成形されたプラスチックレンズを、凸部除去がし易いように保持することができる凸部の除去方法及びレンズを提供する。
【解決手段】作業者が、成形後の成形品10のスプルー部11の先端を把持して、位置決め用の治具20の上方に配置した後、下降させ、各枝部12が本体21の溝21aに嵌まりこむようにする。各枝部12が本体21の溝21aに嵌まりこみ底付きするようにすると、1本の枝部12の先端のレンズ14が、保持用の治具30に対して所定位置になるように位置決めされる。より具体的には、一対のチャック31、31の段部31c、31cの周面31f、31fの間に、レンズ14のフランジ14bの外周面が位置するようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型を用いて成形されたレンズのバリなど凸部の除去方法及びレンズに関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックレンズは、射出成形により金型を用いて安価に大量に生産できるという利点があるため、各種の光学機器において使用されることが多い。ここで、レンズを用いる光学機器の一例として、光ディスクに対して情報の記録及び/又は再生を光学的に行う光ピックアップ装置が既に市販されている。近年では、Blu−ray Disc(BDともいう)と呼ばれる高密度光ディスクに対して情報の記録及び/又は再生を行える光ピックアップ装置も開発されている。
【0003】
ところで、例えばBD用の光ピックアップ装置に用いる対物レンズは、CD用の光ピックアップ装置に用いる対物レンズなどと比べると、高NAであることから光学面の曲率が大きくなっており、金型を用いた射出成形時にキャビティに空気が残留し易く、それによりレンズの成形不良を招く恐れがある。そこで、金型を型締めした状態で、ゲートと対向する側に、外部と連通する空気抜け用の空隙部(エアベントという)を形成し、更に溶融した樹脂材料の注入に合わせてエアベント内を負圧とすることで、キャビティ内の空気を外部に吸引して空気抜けをスムーズに行う技術が開発されている。ところが、エアベント内を負圧にすると、ゲートを介してキャビティ内に注入された樹脂材料の一部がエアベント内にはみ出し易くなる。このはみ出した樹脂材料は固化後に凸部となり、レンズを離型した際に、光軸直交方向に突き出すこととなる。このような凸部は本来的には不要なものであるため、光ピックアップ装置における組み付け部品との干渉等を回避すべく、予め除去することが望ましいといえる。
【0004】
ここで、手作業でプラスチックレンズの凸部の除去を行うことも考えられるが、手作業で凸部の除去を行うとコストが増大し、安価に大量生産されるというプラスチックレンズのメリットが薄れるという問題がある。これに対し、特許文献1〜3に開示されたような、射出成形により製造されたプラスチックレンズの外周に対しエンドミル等を用いて加工を行う技術を流用して、機械的に凸部の除去を行うことも考えられる。
【特許文献1】特開平9−258008号公報
【特許文献2】特開平11一19981号公報
【特許文献3】特開平11−119005号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかるに、上記特許文献1、3には、レンズを保持する具体的な保持方法が開示されていないので、凸部を除去する際にエンドミル等から伝達される力をどのようにして支持するかという課題が残る。これに対し、特許文献2においては、ゲートの除去時におけるレンズの保持方法が開示されている。より具体的には、まず第1の平行チャックでレンズを保持した後、ゲートをカッターで切断し、レンズをランナーから切り離す。次に、第1の平行チャックを開き、エアチャックでレンズ単体を吸引保持して、第2の平行チャックへ搬送する。その後、第2の平行チャックを閉じてレンズを保持した後、エンドミルでゲート付近を円弧状に切削することにより凸部を除去するというものである。この方法で問題となるのは、第1の平行チャックを開く時、エアチャックでレンズを吸引保持して搬送する時、及び第2の平行チャックが閉じてレンズを再度保持する時などに、レンズが光軸回りに角度ズレを起こし、最適な被切削位置に対して周方向のいずれかに偏った位置でゲートが位置決めされてしまうことである。従って、特許文献2の保持方法を用いてレンズを保持すると、ゲートと同様に凸部も偏った位置に位置決めされてしまい、かかる状態でエンドミルにより凸部を切削しようとすると、偏った側の凸部の一部が削除できずに残ってしまう恐れがある。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、成形されたプラスチックレンズを、凸部除去がし易いように保持することができる凸部の除去方法及びレンズを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の凸部の除去方法は、ゲートを介してランナーと接合した状態で成形されるプラスチック製のレンズのフランジ外周において、前記ゲートとは異なる位置に形成された凸部を除去する除去方法であって、
前記ランナーの枝部を基準として用いることにより、前記ランナーに接合したレンズを、前記レンズを固定する治具に対して所定位置に位置決めし、
前記ランナーが接合した状態で、前記治具に固定した前記レンズの外周から凸部を除去することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、前記ランナーの枝部を基準として用いることにより、前記ランナーに接合したレンズを、前記レンズを固定する治具に対して所定位置に位置決めするので、例え小径のレンズであっても、前記レンズを固定する治具に対して確実に所定位置に位置決めすることが出来、その後、前記治具に固定した前記レンズの外周から凸部を除去することが可能となる。更に、前記ランナーが接合した状態で除去すれば、除去後の取り扱いも容易である。尚、「ランナーの枝部を基準として用いる」とは、例えばランナーの枝部をガイド面でガイドすること等をいうが、それに限られない。更に、「所定位置」とは、例えば治具の一対の面の間であって、かかる一対の面を近接させることで、前記レンズが挟持されるような位置をいう。又、「位置決め」とは、レンズの光軸に直交する方向及びレンズの光軸回りの回転方向のいずれか1つに対して位置決めされることをいう。
【0009】
本発明の別な態様によれば、前記レンズを固定する治具は、レンズのフランジ外周面に対向する一対の第1の面と、レンズのフランジ光軸方向面に対向する一対の第2の面とを有し、
前記所定位置に位置決めされたレンズに対して、光軸直交方向外方から相対的に接近させた前記第1の面により、前記レンズのフランジ外周面を挟み込むようにして保持し、
その後、前記保持されたレンズに対して、光軸方向両側から相対的に接近させた前記第2の面により、前記レンズのフランジ光軸方向面を挟み込むようにして固定するものである。
【0010】
例えば、レンズを成形した後、レンズにランナーが接合されたままの状態で成形した後、レンズを保持することなく、ランナーを保持しながらエンドミル等を用いて凸部の除去を行うという方法もある。しかしながら、このような保持方法では、エンドミル等をレンズの外周に接触させたときに、その切削抵抗に起因して、レンズとランナーとを接合する細いゲートに過大な応力が生じ、不用意な破断を招き歩留まりを悪化させる恐れがある。そこで、本発明の別な態様においては、レンズのフランジを保持することで、除去時における工具からの力を確実に支持するようにしている。又、前記所定位置に位置決めされたレンズに対して、光軸直交方向外方から相対的に接近させた前記第1の面により、先に前記レンズのフランジ外周面を挟み込むようにして保持するため、光軸方向の位置決めの前に光軸直交方向の位置決めを行うことにより、治具がレンズの光学面に接触して傷つけてしまうといったことを確実に防止できる。
【0011】
本発明の別な態様によれば、前記第1の面は、前記レンズのフランジ外周面に応じた曲面状となっており、前記第1の面により、前記レンズのフランジ外周面を挟み込むようにして保持したときに、前記フランジ外周面と前記第1の面とは面接触するものである。これにより、点接触或いは線接触する場合に比べて、確実に前記レンズのフランジ外周面を保持できる。
【0012】
本発明の別な態様によれば、前記レンズを固定する治具は、前記治具と前記ランナーとが相対的に接近したときに、前記レンズが前記所定位置に向かうように前記ランナーの枝部をガイドするガイド面を有するものである。これにより、前記レンズを前記所定位置に確実に向かわせることができる。
【0013】
本発明の別な態様によれば、前記凸部は、エンドミルを用いた切削加工により除去されるものである。これにより、短時間で効率的な除去を行える。但し、エンドミルに限らず、例えば砥石など回転刃を有する工具であれば使用可能である。
【0014】
本発明の別な態様によれば、前記エンドミルは、刃部の形状がテーパー状になっているものである。このようにエンドミルの刃部の形状をテーパー状とすると、フランジ外周面における光軸方向の一部のみを加工することができるため、金型により精度良く成形されたフランジ外周面の一部を未加工のまま残すことが出来、これを保持面や基準面として用いることで、レンズの精度の良い組み付け等を行うことができる。
【0015】
本発明の別な態様によれば、前記エンドミルの軸線を円弧状に移動させて切削することにより、前記凸部を除去した前記フランジ外周面の面形状が略円柱状又は略円錐状となるものである。これにより、製品の価値を向上させることができる。
【0016】
本発明の別な態様によれば、前記凸部を除去した後に、前記レンズからゲートを切断することにより前記ランナーを切り離すものである。
【0017】
本発明のレンズによれば、上述の除去方法により凸部を除去されたものである。よって、本発明の除去方法を用いて製造されたレンズには、フランジの2カ所に加工痕が存在することとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。まず、図1を参照して、本発明の実施の形態にかかるレンズの成形について説明する。図1は、型締めした状態で示す金型の断面図である。図1において、上型UMと下型LMとを合わせた状態で、その内部に、レンズを成形するキャビティCVと、キャビティCVに連通したゲート路GTと、ゲート路GTに連通した供給路SPと、ゲート路GTと対向する側でキャビティCVに連通する、薄いスリット状のエアベント部ABとが形成されている。供給路SPは、上型UMから下型LM側に向かって延在した後、その下端を中心として放射状に複数本枝分かれし、各々その先で絞られたゲート路GTに連通するようになっている。
【0019】
不図示の負圧ポンプを介してエアベント部AB内を負圧にした状態で、供給路SPから溶融した樹脂を注入すると、かかる樹脂はゲート路GTを通過し、キャビティCV内に充填されることとなるが、その一部はエアベント部AB内に侵入する。かかる状態で樹脂が冷却固化すると、キャビティCV内で固化した樹脂がレンズ及びフランジとなり、ゲート路GT内で固化した樹脂がゲートとなり、供給路SP内で固化した樹脂がランナーとなり、エアベント部AB内で固化した樹脂が凸部(バリということもある)となる。その後、上型UMと下型LMを型開きして、取り出された成形品は、図2に示すような形状となっている。
【0020】
図2は、成形品と、加工用の治具の斜視図である。図2において、一体の樹脂からなる成形品10は、中央にて上下に延在するスプルー部11と、スプルー部11の下端から放射状に複数本(ここでは例として3本としたがそれに限られない)延在する丸棒状の枝部12と、枝部12の先端に細いゲート13を介して接合されたレンズ14とを有する。各レンズ14は、外径が3〜6mmであり、光学面14a、14a’(曲率の大きな光学面を14aとし、曲率の小さな光学面を14a’とするが、図2では光学面14a’は見えない位置にある)と、光学面14aの周囲を取り巻きゲート13に接合されたフランジ14bと、ゲート13とは反対側の位置でフランジ14bから薄く舌状に突出した凸部14cとを有する。尚、スプルー部11と枝部12とにより、ランナーを構成する。
【0021】
加工用の治具は、位置決め用の治具20と、レンズを固定するための保持用の治具30とからなる。図2に示すように、位置決め用の治具20は、成形品10の枝部12毎に対応して設けられており、不図示の台座に下端を固定された板状の本体21を有する。各本体21は、枝部12に交差する方向に延在しており、枝部12を収容可能なU字状の溝21aと、溝21aの上部に接続して上方に向かうに連れて離隔する一対のテーパー面(ガイド面)21b、21bとを有する。溝21aの幅は、成形品10の枝部12の外径にほぼ等しくなっている。
【0022】
図3(a)は、保持用の治具30の上面図であり、図3(b)は、図3(a)の構成をIIIB-IIIB線で切断して矢印方向に見た図であり、図3(c)は、図3(a)の構成をIIIC-IIIC線で切断して矢印方向に見た図である。保持用の治具30は、水平方向に並んだ一対のチャック31,31と、下端が中空円筒状の上側パッド32(図2)とを有する。略J字状をしたチャック31の折れ曲がった先端には、それぞれ半円筒部31aと、半円筒部31aに対してチャック31の根元側に延在する合わせ平面31bと、半円筒部31aの上部から拡径してなる段部31cと、段部31cに対してチャック31の根元側に延在する逃げ平面31dと、段部31cに接続したテーパー面31eとが形成されている。
【0023】
図3に示すように、一対のチャック31を対称的に配置したときに、それぞれ、レンズ14の光学面14a’より大径の半円筒部31aと、それに続く段部31cと、それに続くテーパー面31eとが向かい合うように配置されている。段部31cの周面31fが第1の面を構成し、段部31cの周面31fに交差する底面31gが第2の面の一方を構成している。段部31cの周面31fの内径は、レンズ14のフランジ14bの外径に一致している。更に、チャック31の先端がカットされているため、段部31cによりレンズ14を保持した状態で、レンズ14のフランジ14bの一部が露出するようになっている(後述する図5参照)。尚、チャック31、31は、位置決め用の治具20が固定された不図示の台座に取り付けられており、固定された一方のチャック31(ここでは右側)に対して、不図示のアクチュエータにより、他方のチャック31(ここでは左側)が相対的に接近・離間するように0.2〜1mm程度駆動される。但し、両方のチャック31,31を同時に移動させるようにしても良い。
【0024】
上側パッド32の下端32aの内径は、レンズ14の光学面14aの外径より大きく、フランジ14bの外径より小さくなっている。上側パッド32も又、不図示のアクチュエータにより、上下・左右に移動可能に駆動される。上側パッド32の下端32aの端面が、第2の面の他方を構成する。
【0025】
次に、図2,3と、更に図4、5を参照して、成形品10の位置決め及び保持について説明する。図4は、図3(b)の断面におけるレンズとチャックとの関係をステップ的に示す図であるが、ランナーは省略している。図5(a)は、チャック31,31でレンズ14を把持した状態における上面図であり、図5(b)は、図5(a)の構成をVB-VB線で切断して矢印方向に見た図である。
【0026】
保持用の治具30の一対のチャック31、31は、離間した状態にあるものとし、上側パッド32も退避位置にあるものとする。ここで、図2において、作業者が、成形後の成形品10のスプルー部11の先端を把持して、位置決め用の治具20の上方に配置した後(図4(a)参照)、下降させて各枝部12が本体21の溝21aに嵌まりこむようにする。このとき、テーパー面21b、21bは、各枝部12が本体21の溝21aにスムーズに収まるように、ガイドする機能を有する。尚、枝部12が溝21aに嵌まりこむ際に例え傷付いたとしても、ランナー全体が後工程で除去されてしまうため、レンズの品質に悪影響を及ぼすことがない。
【0027】
各枝部12が本体21の溝21aに嵌まりこみ底付きするようにすると、1本の枝部12の先端のレンズ14が、保持用の治具30に対して所定位置になるように位置決めされる(図4(b)参照)。より具体的には、一対のチャック31、31の段部31c、31cの周面31f、31fの間(固定側のチャック31の段部31cの周面31fに密着させることが望ましい)に、レンズ14のフランジ14bの外周面が位置するようになる。このとき、溝21aと枝部12との間に多少ガタなどがあった場合でも、チャック31,31のテーパー面31e、31eがレンズ14のフランジ14bをガイドするので、レンズ14は所定位置に向かってスムーズに移動できる。最終的に、フランジ14bの下面が、チャック31、31の段部31c、31cの底面31g、31gに当接するように位置させると好ましいが、当接させなくても良い。ここで、各枝部12が本体21の溝21aに嵌まりこみ底付きすることで、レンズ14の光軸方向の位置決めと、光軸直交方向の位置決めと、光軸回りの回転方向の位置決めとが同時に行えることとなる。
【0028】
かかる状態から、不図示のアクチュエータにより可動側のチャック31を、固定側のチャック31に対して接近させると、レンズ14のフランジ14bの外周面の両側に、レンズ14の光軸直交方向外側から段部31c、31cの周面31f、31fが密着当接して、レンズ14を固定保持する(図4(c)参照)。このとき、各段部31cの周面31fの内径と、レンズ14のフランジ14bの外径とが一致しているため、面接触により確実にレンズ14を保持することができる。更に、半円筒部31a、31aが形成されているために、その間にレンズ14の光学面14a’が収容され、接触することが回避される。又、逃げ平面31d、31dは、レンズ14の保持状態でも隙間を空けて対向しており、これによりゲート13との干渉を回避している。更に、図5に示すように、チャック31の先端がカットされているため、段部31cによりレンズ14を保持した状態で、レンズ14のフランジ14bの一部が露出するようになっているので、凸部14cは、チャック31,31に干渉することなくチャック31、31から突出して位置することとなる。後述する切削加工時に、エンドミルとの干渉を回避するためには、凸部14cとチャック31との間隔Δは、例えば1mm以上あけるのが望ましい。
【0029】
次いで、退避位置にあった上側パッド32を、保持されたレンズ14の上方に位置させ、そのまま下降させる。すると、中空の上側パッド32の下端32aが光軸方向からレンズ14に接近し、レンズ14の光学面14aに接触することなく、フランジ14bの上面(一方の光軸方向面)を押圧し、これによりフランジ14bの下面(他方の光軸方向面)をチャック31,31の段部31c、31cの底面31g、31gに向かって押圧する。これにより、フランジ14bは、上側パッド32と底面31g、31gによる平面同士の押圧によって確実に保持され、切削加工時にエンドミルから過大な力を受けた場合でも、それに耐えることができる。
【0030】
ここで、周面31f、31fのレンズ保持力は、上側パッド32と底面31g、31gによるレンズ支持力より小さくなっている。これは、レンズ14のフランジ14bを強い力で光軸直交方向に押圧すると、光学面14a、14a’が変形して光学性能を低下させる恐れがあるから、それを回避するためであり、またレンズ14のフランジ14bを光軸方向に押圧しても、光学面14a、14a’が変形する恐れが低いからである。
【0031】
図6(a)は、保持用の治具30によって保持されたレンズ14の凸部14cを除去する状態を示す上面図であり、図6(b)は、図6(a)の構成をVIB-VIB線で切断して矢印方向に見た図である。凸部14cの除去には、エンドミルEMを用いる。より具体的には、保持用の治具30によって保持されたレンズ14のフランジ14bに沿って、回転するエンドミルEMの円筒状の刃部EM1を相対移動させ、凸部14cを除去する。このとき、エンドミルEMの回転軸線を、フランジ14bの外径に合わせて円弧状に移動させて切削すれば、凸部14cを除去したフランジ14bの外周面の面形状が略円柱状となるので好ましい。
【0032】
以上のようにして凸部14cを除去した後、上側パッド32を退避させ、チャック31,31を離間させて、レンズ14の保持を解除した後、作業者が、成形品10のスプルー部11の先端を把持して上昇させ、回転させて未加工のレンズ14を保持用の治具30の上方に位置させ、再度下降させることで、同様にランナーを用いて位置決めし、レンズ14を保持して凸部14cの除去を行える。以下、同様にして全てのレンズ14の凸部14cの除去を行ったら、その中間成形物10を取り外し、ゲート13を切断してレンズ14を枝部12から切り離すことで製品が完成する。本実施の形態によれば、手作業としては、スプルー部11の先端を把持して持ち上げ回転させて下降させるだけでよいので、個々のレンズを治具にセットする必要はなく、特に作業性に優れる。但し、手作業でなく機械で行っても良い。
【0033】
図7(a)は、変形例にかかるエンドミルEM’を用いて、保持用の治具30によって保持されたレンズ14の凸部14cを除去する状態を示す上面図であり、図7(b)は、図7(a)の構成をVIIB-VIIB線で切断して矢印方向に見た図である。変形例にかかるエンドミルEM’は、刃部EM1’が全体的に円錐状(テーパー状)となっている。従って、エンドミルEM’の回転軸線を、フランジ14bの外径に合わせて円弧状に移動させて切削すれば、図8に示すように、凸部14cを除去した後のフランジ14bの外周面の端部近傍CTが略円錐状又は略テーパー状となる。ここで、フランジ14bの残りの外周面は、金型UM、LMの形状を精度良く転写形成しているので、組み付け時の基準面として用いることができ、それにより精度の良い組付けを行える。尚、本変形例では、曲率の大きな光学面14aを下側にしてレンズ14を保持している。
【0034】
図9(a)は、変形例において、チャック31,31でレンズ14を把持した状態における上面図であり、図9(b)は、図9(a)の構成をIXB-IXB線で切断して矢印方向に見た図であり、図9(c)は、図9(a)の構成をIXC-IXC線で切断して矢印方向に見た図である。本変形例においては、レンズ14の曲率の大きな光学面14aを、下方に向けている点のみが異なる。それ以外の点については、上述の実施の形態と同様である。
【0035】
図10は、別な実施の形態にかかるチャック31’,31’の斜視図である。本実施の形態にかかるチャック31’,31’は、上述の実施の形態に対して、その上面に、互いに向かい合う斜面(ガイド面)31h’、31h’を形成した点が異なる。作業者が、成形品10のスプルー部11の先端を把持して下降させたとき、レンズ14の位置がずれている場合、先に枝部12がいずれかの斜面31h’、31h’に当接して滑動することで、レンズ14をセンタリングする機能を有する。これにより、レンズ14はチャック31’、31’の間の保持位置に向かってガイドされ、レンズ14の位置決めを円滑に行える。従って、本実施の形態の場合、位置決め用の治具20は省略することができる。
【0036】
以上、本発明を実施例を参照して説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定して解釈されるべきではなく、適宜変更・改良が可能であることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】型締めした状態で示す金型の断面図である。
【図2】成形品と、加工用の治具の斜視図である。
【図3】図3(a)は、保持用の治具30の上面図であり、図3(b)は、図3(a)の構成をIIIB-IIIB線で切断して矢印方向に見た図であり、図3(c)は、図3(a)の構成をIIIC-IIIC線で切断して矢印方向に見た図である。
【図4】図4は、図3(b)の断面におけるレンズとチャックとの関係を示す図であるが、ランナーは省略している。
【図5】図5(a)は、チャック31,31でレンズ14を把持した状態における上面図であり、図5(b)は、図5(a)の構成をVB-VB線で切断して矢印方向に見た図である。
【図6】図6(a)は、保持用の治具30によって保持されたレンズ14の凸部14cを除去する状態を示す上面図であり、図6(b)は、図6(a)の構成をVIB-VIB線で切断して矢印方向に見た図である。
【図7】図7(a)は、変形例にかかるエンドミルEM’を用いて、保持用の治具30によって保持されたレンズ14の凸部14cを除去する状態を示す上面図であり、図7(b)は、図7(a)の構成をVIIB-VIIB線で切断して矢印方向に見た図である。
【図8】レンズ14の加工後のフランジの一部を拡大して示す図である。
【図9】図9(a)は、変形例において、チャック31,31でレンズ14を把持した状態における上面図であり、図9(b)は、図9(a)の構成をIXB-IXB線で切断して矢印方向に見た図であり、図9(c)は、図9(a)の構成をIXC-IXC線で切断して矢印方向に見た図である。
【図10】別な実施の形態にかかるチャック31’,31’の斜視図である。
【符号の説明】
【0038】
10成形品
11 スプルー
12 枝部
13 ゲート
14 レンズ
14a、14a’ 光学面
14b フランジ
14c 凸部
20 治具
21 本体
21a 溝
21b テーパー面
30 治具
31 チャック
31a 半円筒部
31b 合わせ面
31c 段部
31d 逃げ面
31e テーパー面
31f 周面
31g 底面
31h 斜面
32 上側パッド
32a 下端
AB エアベント部
CT フランジの一部
CV キャビティ
EM,EM’ エンドミル
EM1、EM1’ 刃部
GT ゲート路
LM 下型
SP 供給路
UM 上型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲートを介してランナーと接合した状態で成形されるプラスチック製のレンズのフランジ外周において、前記ゲートとは異なる位置に形成された凸部を除去する除去方法であって、
前記ランナーの枝部を基準として用いることにより、前記ランナーに接合したレンズを、前記レンズを固定する治具に対して所定位置に位置決めし、
前記ランナーが接合した状態で、前記治具に固定した前記レンズの外周から凸部を除去することを特徴とする凸部の除去方法。
【請求項2】
前記レンズを固定する治具は、レンズのフランジ外周面に対向する一対の第1の面と、レンズのフランジ光軸方向面に対向する一対の第2の面とを有し、
前記所定位置に位置決めされたレンズに対して、光軸直交方向外方から相対的に接近させた前記第1の面により、前記レンズのフランジ外周面を挟み込むようにして保持し、
その後、前記保持されたレンズに対して、光軸方向両側から相対的に接近させた前記第2の面により、前記レンズのフランジ光軸方向面を挟み込むようにして固定することを特徴とする請求項1に記載の凸部の除去方法。
【請求項3】
前記第1の面は、前記レンズのフランジ外周面に応じた曲面状となっており、前記第1の面により、前記レンズのフランジ外周面を挟み込むようにして保持したときに、前記フランジ外周面と前記第1の面とは面接触することを特徴とする請求項2に記載の凸部の除去方法。
【請求項4】
前記レンズを固定する治具は、前記治具と前記ランナーとが相対的に接近したときに、前記レンズが前記所定位置に向かうように前記ランナーの枝部をガイドするガイド面を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の凸部の除去方法。
【請求項5】
前記凸部は、エンドミルを用いた切削加工により除去されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の凸部の除去方法。
【請求項6】
前記エンドミルは、刃部の形状がテーパー状になっていることを特徴とする請求項5に記載の凸部の除去方法。
【請求項7】
前記エンドミルの軸線を円弧状に移動させて切削することにより、前記凸部を除去した前記フランジ外周面の面形状が略円柱状又は略円錐状となることを特徴とする請求項5又は6に記載の凸部の除去方法。
【請求項8】
前記凸部を除去した後に、前記レンズからゲートを切断することにより前記ランナーを切り離すことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の凸部の除去方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の凸部の除去方法により凸部を除去されたことを特徴とするレンズ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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