説明

凹み吸収紙カップ

【課題】紙カップの液体加温充填後に発生する容器の凹みの視覚的な違和感を低減する凹み吸収紙カップを提供すること。
【解決手段】液体の加温充填に用いる紙カップにおいて、紙カップの側面に複数の規則的な平面領域を形成することによって構造的に凹み易い部位を作り出し、凹み発生の位置を誘導して視覚的な違和感を軽減することを特徴とする凹み吸収紙カップ。複数の規則的な平面領域が、略円錐台形の容器を平面で切断した場合に作成される面を単位平面とし、この単位平面を容器の円錐中心軸を中心に90度づつ回転させて4面を対称形状で設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙カップに関するものであり、特にホット充填を行なった場合に側面の凹みが目立たない凹み吸収紙カップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の紙カップは、扇状に打ち抜かれた胴部ブランクと円形の底板から成形されている円錐台形状のカップが殆どである。その成形は、胴部ブランクを円錐曲面を有するコアーに巻き付けて胴貼りし、底板を供給してダブルシームして底部を成形し、最後にトップカーリングを行っている。
【0003】
このような円錐台形状の紙カップに液体のHOT充填を行なって製品とする場合、充填後に蓋材で密封した後で容器内の温度が低下すると容器ヘッドスペース内の圧力が減少する。紙容器は十分な剛性があるとは限らないため、内圧の低下により容器表面に凹みが発生する場合がある。消費者には円形が正常な形状との意識があるため、容器に凹みのある製品は消費者に不良品との印象を与え、購買意欲の低下へと繋がり得る。
【0004】
また、現状の円錐台形の紙カップでは、側面の断面は円形という構造上、部位による強度の差がなく、したがって上記の凹みの発生位置はばらばらであり一定していない。
円錐台形以外の形状の紙カップは従来からいくつかの用途で検討されてきている。
【0005】
たとえば、特許文献1においては、予め、プラスチック樹脂層を設けていない材料を用い、また、紙カップ形状に成形した後、型内で内面に熱可塑性樹脂製フィルムにより内面保護フィルム層を設けるという独特な方法で、底面が多角形で、開口面が円形であるという独特な形状の多角形状紙カップおよびその製造方法が提案されている。これにより、紙カップのフォルムの斬新さと成形工程の改善が達成できるとされている。
【0006】
また、特許文献2においては、一般的な紙、板紙を使用して成形しやすく、かつ外装紙とカップとの間の断熱空気層が潰れにくい形状を持った保温性断熱容器として、截頭円錐形の紙製カップの胴部外面に紙製サックを巻き付けてカップ胴部を2重構造にした紙カップにおいて、ほぼ扇形に打ち抜いた紙または板紙から成る紙製サックを紙製カップの胴部外面に巻き付ける際に、該扇形の紙または板紙の上縁と下縁との間に、直線状または円弧状をなす罫線で区切られた多角形またはレンズ形の多数の単位面が連設されるように形成した上で全体をサック貼りしてカップ胴部外面に巻き付けると、サックの単位面と、サック内側のカップ胴面との間に、ほぼ3角形のトラス構造もしくはアーチ構造からなる断熱空気層が作られ、紙坪量の大きい特別な紙基材を使用することなしに断熱空気層を維持して、良好な保温、断熱性を付与できるとされている。
【0007】
さらに、特許文献3においては、円形カップの曲面上にラベルを貼りやすく、また貼られてラベルを見やすくする円形紙カップの提供を目的として、円錐台形のカップの側面の曲面上の少なくとも一か所にラベル貼り用の平面部分を設けた紙カップが提案されている。
【0008】
しかしながら、紙カップに液体のHOT充填を行なって製品とする場合に発生する容器の凹みに関しては上記の文献に提案されている方法では解決が出来なかった。
凹みは容器の構造上強度の弱い部分に発生する。特に断面形状が多角形になる容器の場合、凹みの形状は各面の重心部分の凹み量が最大となるオーバル状になる。
一般的に「凹み」を抑止するために紙の剛性を高めれば紙は変形しにくくなる。紙の剛
性を高めるには紙の坪量を上げる方策がある。しかしこの方策では省資源の目的を達成できないばかりでなく、ブランクスを成形する際に紙が厚すぎて成形しにくく、紙折れを発生して見栄えが悪くなるなどの問題があった。
紙の重量を上げずに剛性を発揮する手段としては、古紙の配合量を減らすか配合せずに強度の高いUKP(未晒クラフトパルプ)などのパルプを使用する事が考えられるが、紙強度を上げると、厚すぎる場合と同様に紙が硬すぎて成形しにくく紙折れを発生して見栄えが悪くなるなどの問題があった。
さらに、胴部材を円筒状に貼り合せる工程で、貼り合せ部が曲線、または複数の直線からなる場合、貼り合せ時にたるみや張りが生じ接着不良となり内容物の漏れへと繋がる問題もあった。
【0009】
以上のように、成形しやすさと、HOT充填時に凹みの発生しない剛性を併せ持つカップ原紙の選定にも限界があり、一般的な紙、板紙を使用して凹みを目立たなくすることの出来る方法が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−238758号公報
【特許文献2】特許第4143781号公報
【特許文献3】特開平9−193919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
紙カップのホット充填時に発生する容器の凹みの視覚的な違和感を低減する凹み吸収紙カップを提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、上記の課題について鋭意検討の結果、凹みが発生しても視覚的に違和感を感じる程度を軽減するためには、凹みの位置と形状が規則的になるように、容器の側面に構造上強度の弱い部分(平面領域)を対称位置に作成することによって凹みの発生する場所を誘導することが出来ることを見出し本発明に到達した。
【0013】
すなわち、本発明の請求項1に係る発明は、液体の加温充填に用いる紙カップにおいて、紙カップの側面に複数の規則的な平面領域を形成することによって構造的に凹み易い部位を作り出し凹み発生の位置を誘導して視覚的な違和感を軽減することを特徴とする凹み吸収紙カップである。
【0014】
請求項2に係る発明は、複数の規則的な平面領域が、略円錐台形の容器を平面で切断した場合に作成される面を単位平面とし、この単位平面を容器の円錐の中心軸を中心に90度づつ回転させて4面を対称形状で設けたことを特徴とする請求項1に記載の凹み吸収紙カップである。このようにすることで置いた場合の不安定感がなくデザイン的にも違和感のない形状とすることが出来る
【0015】
請求項3に係る発明は、単位平面の高さが紙カップの高さの1/2以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の凹み吸収紙カップである。紙カップの高さの1/2以上とすることによって凹みの深さが大きくなるのを防ぐための十分に大きな面積の平面を確保することが出来る。
【0016】
請求項4に係る発明は、単位平面の高さが紙カップの高さの4/5以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の凹み吸収紙カップである。
単位平面の上部からトップ側の円形部までの高さを紙カップの高さの1/5以上とすることによって、トップカール時の成形性を確保することが出来る。
【0017】
請求項5に係る発明は、任意の高さの水平断面における容器胴部の外周長が、円錐形のカップの場合の同一高さの水平断面における容器胴部の外周長と同じになるように胴部材の寸法を設定したことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の凹み吸収紙カップである。
これにより、胴部材ブランクの形状が扇形になり胴部側面貼り合わせ部が一直線になる。したがって、貼り合わせ部に張りやたるみが生じることなく、貼り合わせ部からの内容物の漏れを防ぐことが出来る。
【0018】
請求項6に係る発明は、複数の規則的な平面領域が、一条または複数条のオーバル形状または三角形状の罫線によって区画されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の凹み吸収紙カップである。
胴部材の平面部の高さ以下の部分に一条または複数条のオーバル形状またはオーバル形状を直線で切断した対象形状の罫線を設けることによって、充填時の凹みの発生部位を誘導し、規則的な凹みとすることを容易にする。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る凹み吸収紙カップでは、液体紙容器の側面に平面部分を部分的に持たせることで、構造的に強度の弱い部分を作り出し、それによって容器凹みの発生部位が誘導される。
また、容器凹みが容器側面の対称な部位に発生することから凹みがデザインであるという認識を消費者に与えることが可能になり、ホット充填凹みの違和感が低減される。
これによって、容器凹みを不良と認識することによる消費者の購買意欲の低下を防止することが可能になり売り上げの向上が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の紙カップの例を模式的に表した外観略図である。
【図2】本発明の紙カップに形成される平面の説明図である。
【図3】本発明の紙カップの成形法の説明図である。(a)は口径部を中心とした上型と下型の関係を示す断面略図、(b)は紙を追加したK部の拡大図である。
【図4】本発明の紙カップの成形法の説明図である。(c)は図3のC−C’線、(d)は図3のD−D’線での断面略図である。
【図5】従来の紙カップの例を模式的に表した外観略図である。上は上方から見た平面図、下は横から見た正面図である。
【図6】本発明によるカップ形状(b)と一般的な円錐台形カップ形状(a)の断面略図である。
【図7】本発明によるカップ(b)と一般的な円錐台形カップ(a)のブランク形状の略図である。
【図8】平面部分に罫線を入れたカップ概略図である。(a)は上側が円形、下側が四角形のカップ、(b)はオーバル形状の罫線を入れた場合、(c)はオーバル形状を直線で切断した形状の罫線を入れた場合。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明を図面を用いて、更に詳しく説明する。図5には比較のために、従来の円錐台形状紙カップ(20)の一例の外観を示す平面図と側面図を示した。
カップ(20)の胴部(1)の表面は円錐曲面を形成しており、上端の口径部(2)から底部(3)に移行するにつれて胴部断面の曲率半径は小さくなるが断面の形状は円形で一定である。
【0022】
従って、内容物の加温充填後の温度低下により惹起される、胴部(1)にかかるカップ中心方向への力は円周方向のどの位置でも略同一であり、それによって生じる胴部(1)の凹みの位置もばらばらになってしまう。また、胴部(1)にかかるカップ中心方向への力による凹みの高さ方向の位置も予測が難しい。
【0023】
図1と図2は本発明に係る凹み吸収紙カップ(10)の説明図である。
図2(a)は、円錐状の胴部(1)面の下方の一か所を平面(4)で切断して生成する、高さAの単位平面(4a)を示している。図2(b)は、円錐状の胴部(1)面の上方の一か所を平面(5)で切断して生成する、高さBの単位平面(5b)を示している。
【0024】
図1(a)は図2(a)の単位平面(4a)を胴部(1)の円錐状面に置き換えて、円錐の中心軸に関して対称な4箇所に形成した、本発明に係る凹み吸収紙カップ(10)の模式的な外観略図である。同様に図1(b)は図2(b)の単位平面(5b)を胴部(1)の円錐状面に置き換えて、円錐の中心軸に関して対称な4箇所に形成した、本発明に係る凹み吸収紙カップ(10)の模式的な外観略図である。
図1(a)と(b)の紙カップはそれぞれ4箇所の単位平面がカップの円周方向に中心角で90度づつ離れた位置の胴部(1)に形成されている。
【0025】
このように、本発明の凹み吸収紙カップは、液体の加温充填(ホット充填)に用いる紙カップにおいて、紙カップの側面に複数の規則的な平面領域を形成することによって構造的に凹み易い部位を作り出した紙カップであり、複数の規則的な平面領域が、略円錐台形の容器を平面で切断した場合に作成される面を単位面とし、この単位面を容器胴部の円錐中心軸を中心に90度づつ回転させた位置に4面を対称形状で設けた紙カップである。
【0026】
さらに上記単位面の高さ(A)または(B)が紙カップ(10)の高さの1/2以上であることによって、凹みの深さが大きくなるのを防ぐための十分に大きな面積の平面を確保することが出来る。
【0027】
また、単位平面の高さ(A)が紙カップの高さの4/5以下である、すなわち単位平面の上部からトップ側の円形部までの高さを紙カップの高さの1/5以上とすることによって、トップカール時の成形性を確保することが出来る。
【0028】
本発明の凹み吸収紙カップの構成材料としては、一般にカップ原紙等の紙基材にシーラント層を積層した積層体が用いられ、さらに、必要に応じてバリア性や意匠性等を備えた積層体が用いられる。
【0029】
積層体を構成する紙基材としては、通常、カップ原紙等の板紙が用いられる。坪量と密度は容器の容量やデザインにより適宜選定されるが、通常は坪量200g/m〜500g/mの範囲で密度0.8前後のカップ原紙がよく用いられる。
【0030】
バリア層としては、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂などのプラスチックの延伸または未延伸のフィルムや、各種プラスチックフィルムにポリビニルアルコールを塗工したり、アルミニウムなどの金属や酸化珪素などの金属酸化物の薄膜を蒸着した加工フィルム、さらにはアルミ箔などが適用できる。この場合のフィルム厚みは6μm〜25μm、蒸着層の厚みは5nm〜100nm程度が適当である。
【0031】
一方、積層体を構成する各層の接着に用いる接着剤層としては代表的にはイソシアネート化合物からなるドライラミネート用接着剤層が挙げられる。接着剤の塗布量としては0.5〜5.0g/m程度が適当である。
【0032】
他方、シーラント層は、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂などからなる層である。具体的には、高密度ポリエチレン樹脂、低密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、エチレン−αオレフィン共重合体などのエチレン系樹脂や、ホモ・ブロック・ランダムの各ポリプロピレン樹脂や、プロピレン−αオレフィン共重合体などのプロピレン系樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体やエチレン−メタクリル酸共重合体などのエチレン−α,β不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−アクリル酸メチルやエチレン−アクリル酸エチルやエチレン−メタクリル酸メチルやエチレン−メタクリル酸エチルなどのエチレン−α,β不飽和カルボン酸共重合体のエステル化物、カルボン酸部位をナトリウムイオン、亜鉛イオンで架橋した、エチレン−α,β不飽和カルボン酸共重合体のイオン架橋物、エチレン−無水マレイン酸グラフト共重合体やエチレン−アクリル酸エチル−無水マレイン酸のような三元共重合体に代表される酸無水物変性ポリオレフィン樹脂、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体などのエポキシ化合物変性ポリオレフィン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体から選ばれる樹脂の単体あるいは2種以上のブレンド物などにより設けられる。
とくにポリエチレン樹脂としては直鎖状低密度ポリエチレン樹脂が好ましい。シーラント層の厚みは特に限定はないが通常30μm〜100μmの範囲が多用される。
【0033】
カップ表面に必要に応じて設けられる印刷インキ層は周知のインキを用いてグラビア印刷等の方法で施すことが出来る、絵柄や商品情報などを含む層である。熱可塑性樹脂層としてポリオレフィン系樹脂を用いる場合にはインキの密着を良くするために通常はコロナ処理等の易接着処理を表面に行う。
【0034】
内容物封入後にカップを密閉する蓋材は紙を主体とした積層材料でよいが、フランジと貼着可能で、かつ適度な強度でフランジとはがれるピール層が必要であり、例えばポリプロピレン樹脂に高密度ポリエチレン樹脂と低密度ポリエチレン樹脂を適量ブレンドした低剥離強度タイプの無延伸ポリプロピレン樹脂を用い、加熱による貼着方法とすることが望ましい。
【0035】
以上、本発明に係る凹み吸収紙カップに用いる積層体について説明したが、これらの積層体は上記のような構成のものに限定されるものではなく、包装材料としての用途を考慮し、包装材料として要求される剛性や耐久性などを向上する目的で、他の層を介在させた構成であってもよい。
【0036】
以下本発明に係る凹み吸収紙カップの成形法について説明する。図3は本発明に係る凹み吸収紙カップの成形法の一例の説明図である。図3(a)には口径部を中心とした上型と下型の関係を示す断面略図を、図3(b)にはそのK部の拡大図を示した。
通常の方法で底成形された紙カップは次いで胴部(1)のトップにカーリング加工が施される。このカーリング加工は基本的に図3に示すようなカール上型(11)とカール下型(12)によって行われる。必要ならテフロン(登録商標)加工したカール型押さえ(13)を使用する場合もある。
【0037】
図3(a)に示すように、胴貼りされたカップ胴部(1)は、図4(d)に示したような、図3(a)のD−D’線で切断した断面形状を有する下型(12)にはめ込まれた状態で、図4(c)に示したような、図3(a)のC−C’線で切断した断面形状を有する上型(11)にその先端が押しつけられてカール成形される。この場合、アールの大きな上型(11)で1段目の成形を行い、次いでアールの小さな上型に切り換えて2段目の成形を行うことが一般的である。
【0038】
図3(a)のK部において、型締めが行われた状態でカール成形が行われる。図3(b
)はK部の拡大図であって、2段目の上型(11)によってカール成形が略完結した状態を示している。以上の方法によれば、カール成形が終了した時点で、胴部上部の円周方向4箇所に単位平面(5b)を有した凹み吸収紙カップ(10)が得られる。
さらに上記の紙カップをリテイナーに上部から押し込んだ状態で、上から加熱板を圧着させて口径部のカールを押し潰し、フラットなフランジ状に熱圧着させることが一般的である。
【0039】
カップの保形性の優劣に影響する要因は上記のカール成形型やリテイナーの形状の他にカップの素材がある。一般にカップ原紙と低密度ポリエチレンだけの積層体よりはアルミ箔7〜20μmを積層してある方が保形性は優れている。またカップ原紙そのものによる違いも多少はある。また製造条件の中で上記のカール成形条件、あるいはフランジ成形条件によっても異なる。
【0040】
また、本発明に係る紙カップは、その任意の高さの水平断面における容器胴部の外周長が、円錐形のカップの場合の同一高さの水平断面における容器胴部の外周長と同じになるように胴部材の寸法を設定した凹み吸収紙カップである。
図6は本発明によるカップ形状(b)と一般的な円錐台形カップ形状(a)の外観略図である。図7は本発明によるカップ(b)と一般的な円錐台形カップ(a)のブランク形状の外観略図である。
【0041】
図6(b)に示した本発明に係る紙カップは図6(a)に示した一般的な円錐台形紙カップと比較して、トップ部分の外周長LTと底部分の外周長LBおよび高さHが同じ場合に、任意の高さhの水平面で切断した断面の外周長L2が一般的な円錐台形カップの同じ高さでの断面の外周長L1と常に等しくなっている。
断面の形状は図6(a)に示した紙カップが任意の高さの断面で常に円形であるのに比べて、本発明に係る紙カップは図6(b)に示したように高さhがH1よりも小さい位置での断面では角の取れた四角形になっているが、同じ高さでの断面の外周長は図6(a)の紙カップと変わらない。
【0042】
このようにすることによって、胴部材ブランクの形状が扇形になり胴部側面貼り合わせ部が一直線になる。胴部材ブランクの形状について図6(a)、(b)に示した紙カップについて比較した概略図が図7である。
【0043】
図7(a)には図6(a)に示した一般的な円錐台形紙カップに対応する胴部材ブランク(1a)と底部を形成する底部材(3a)の成型前の形状の概略を示した。底部材(3a)は円形の積層体であり、胴部材(1a)は扇形の積層体である。胴部材(1a)はさらに筒状に成型するときの両端部の接着に用いる糊代(8)を片方の端部に備えており、両方の上端部にはトップカールを行なったときの段差を低減する為のトップ切り欠き(6)と、糊代の下端部には端面の封止を確実に行なうための底部切り欠き部(7)が設けられている。
【0044】
図7(a)に示した胴部材ブランク(1a)と底部材(3a)を用いて紙カップを成形する成形方法の一例を説明する。この成形方法は図7(b)に示した場合でも同様である。
胴部材ブランクの端面の折り返し樹脂部を設けた側端縁を内面側にして、もう一方の側端縁に重ね合わせて、胴部貼り合わせ部を形成させて円筒形状の胴部材とする。
胴部材(1a)の下部内面に、底部材(3a)の周縁部の外面を接合させ、さらに周縁部を覆うように、胴部材(1a)の下端縁部を内方に折り曲げ、底部材の周縁部内面に接合させて環状脚部を形成させる。
最後に胴部材(1a)の上部周縁を外方に1周以上巻き込み、口径部(フランジ部)(
2)を形成させ、紙カップとする。
【0045】
フランジ部(2)は、前記のように上部周縁を外方に1周以上巻き込んだ構成だけでなく、さらに、このフランジ部を上下から、加圧圧着して、上面を平坦にしてもよい。
ここで、胴部材(1a)は、両側端縁上部にそれぞれ切欠き部(6)を設けた胴部材ブランクを用いているので、胴部材(1a)の上部周縁を外方に1周以上巻き込んで、フランジ部(2)を形成した際、貼り合わせ部(8)においても、紙基材が、前記貼り合せ部以外の部分と同様の重なりの巻き込み状態となるので、フランジ部の段差を解消することができる。
また、この切欠き部(6)の形状を異なる形状とすると、フランジ部(2)の上面を平坦にしても、フランジ部上面に生じる段差を解消することができる。
【0046】
特に、前記切欠き部(6)として、樹脂部を設けた側端部の切欠き部の幅が、他方の側端部の切欠き部の幅より大きく、または、樹脂部を設けた側端縁の切欠き部の高さが、他方の側端縁の切欠き部の高さより小さくすることで、上端縁を1周以上巻き込んで形成したフランジ部(2)の上面を平坦にしても、フランジ部上面に生じる段差を確実に解消することができる。
【0047】
紙カップを形成している胴部材(1a)は、胴部貼り合わせ部の内側となる側端部下端に底部切り欠き部(7)を有する紙層と、その内面に設けられた熱可塑性樹脂層が、前記底部切り欠き部(7)を含む紙層の内側端縁から延出した樹脂部が形成されている。
このように、底部切り欠き部(7)を含む紙基材の内側端縁から延出した樹脂部により、内側となる側端部端縁を被覆する被覆部を形成する胴部材を用いて、紙カップを形成することにより、紙層の端縁が確実に保護され、かつ、底部切り欠き部(7)における樹脂部の樹脂量が多くなるので、底部成形において隙間のない構造が確実に得られる。
【0048】
このような形状の胴部材を使用することにより、図6に示すような紙カップを成形した際に、環状脚部の胴部貼り合わせ部の切欠き部分は、内側端縁から延出して形成される樹脂部が存在しているので、段差がなく、隙間のない成形状態が安定化し、圧力ムラも少なくなって、形状の安定した見栄えの良い環状脚部が成形できる。
【0049】
図7(a)に示したブランクから製造される紙カップは任意の高さの平面で切断した断面の形状が円形であり、その外周長も底部から口径部まで高さに対して比例的に変化しているので高さによって外周長が変化することによる問題がなく、胴部材端面の接合部分端部も単純な直線に自動的になるという構成であった。
これに対して、任意の高さの平面で切断した断面の形状がさまざまであり、その外周長も底部から口径部まで高さに対して比例的に変化していない紙カップの場合には特に胴部材の接合部の形状が曲線や複数の直線になってしまうことによる部分的な張りや応力によるズレ等で形状が変形したり、はなはだしくは接着面がはがれてしまうという問題が起こる場合がある。
【0050】
この問題に関して、本発明に係る紙カップは図6(b)に示したように高さhがH1よりも小さい位置での断面では角の取れた四角形になっているが、同じ高さでの断面の外周長は図6(a)の紙カップと変わらないので、図7(b)に示したように、胴部材ブランクの形状が扇形になり胴部側面貼り合わせ部が一直線になる。
このように、本発明の凹み吸収紙カップによれば、貼り合わせ部に張りやたるみが生じることなく、貼り合わせ部からの内容物の漏れを防ぐことが出来る。
【0051】
また、本発明の凹み吸収紙カップは、複数の規則的な平面領域が一条または複数条のオーバル形状または三角形状の罫線によって区画されていることによって、凹みの位置をより
確実に所定の位置に誘導することが出来る紙カップである。
凹みは容器の構造上強度の弱い部分に発生する。特に高さ方向の断面形状が多角形になる容器の場合、凹みの形状は各面の重心部分の凹み量が最大となるオーバル状になる。したがって上記のオーバル状の領域の外周近辺に罫線を設けることによって、凹みの位置をより確実に所定の位置に誘導することが出来る。
【0052】
図8には平面部分に罫線を入れた紙カップの概略図を示した。
図8(a)は上側の口径部(2)が円形で下側の底部(3)が四角形の紙カップの罫線の入っていない状態での外観を示した図であり、複数の規則的な平面領域(4a)の高さ(H1)が紙カップの高さ(H)の1/2よりも大きく、4/5よりも小さく設定されている。
図8(b)は図8(a)の紙カップに対して、その平面領域(4a)に高さHrのオーバル形状の罫線(9)を入れた場合を示し、図8(c)はオーバル形状を直線で切断した形状の罫線(9’)を入れた場合を示している。
平面領域に形成する罫線の形状がオーバル形状であるのは各面の重心部分の凹み量の分布から来るものであり、部分的なオーバル形状や三角形状であってもよい。
【0053】
図8(b)の場合も図8(c)の場合も、罫線部分の高さHrは平面領域の高さH以下に設定されており、凹みの形状の輪郭が誘導し易い位置になっている。
これによって、紙カップの胴部に生じる凹みの位置と形状のばらつきが少なく規則的な位置に固定されるので、容器凹みを不良と認識することによる消費者の購買意欲の低下を防止することが出来るので売り上げの向上が期待できる。
【実施例】
【0054】
本発明に係る凹み吸収紙カップの実施形態の例として次の仕様と製造条件で作成した2種類の紙カップを比較した。
<実施例1>
以下のカップ原紙とポリエチレン樹脂の積層体を用いて作成した、図7(b)の形状の胴部材ブランクと底部材に、図8(b)に示した高さ50mmのオーバル形状の罫線を形成した後、以下の仕様と条件で成形して紙カップを作成した。
カップ原紙(大昭和製紙(株)製 215g/m)/ポリエチレン層( 15μm)
カップ内容量:200ml 高さ:80.5 mm 口径:74 mm 円形カール巾:2.8 mm フランジ巾:2.65 mm
カール巻締め条件:第1カール 0.5 sec.第2カール 0.5 sec.上型温度 90〜100 ℃
フランジ成形条件:加熱板表面温度 200℃ 加熱圧着時間 1.1sec. 圧力 50 kg/cm
【0055】
<比較例1>
以下のカップ原紙とポリエチレン樹脂の積層体を用いて作成した、図7(a)の形状の胴部材ブランクと底部材を、以下の仕様と条件で成形して図5の形状の紙カップを作成した。
カップ原紙(大昭和製紙(株)製 215g/m)/ポリエチレン層( 15μm)
カップ内容量:200ml 高さ:80.5 mm 口径:74 mm 円形カール巾:2.8 mm フランジ巾:2.65 mm
カール巻締め条件:第1カール 0.5 sec.第2カール 0.5 sec.上型温度 90〜100 ℃
フランジ成形条件:加熱板表面温度 200℃ 加熱圧着時間 1.1sec. 圧力 50 kg/cm
【0056】
以上の条件で成形した2種の紙カップに沸騰水を注入して蓋材で密封し、室温で24時間保管したところ、実施例1のカップはその胴部のオーバル形状の平面部が均等にわずかに凹んでいた。また、比較例1のカップはその胴部が不規則に凹んでいて見苦しかった。
【0057】
実施例1のカップの凹みはわずかであり、しかも4箇所のオーバル状の罫線で囲まれた部分が均等に凹んでいたために、容器のデザインと区別できないような程度であった。
これに対して比較例1の紙カップでは容器の凹みが明確にそれと分かる状態であった。実施例1のカップでは凹みがデザインであるという認識を消費者に与えることが可能になり、ホット充填凹みの違和感が低減され、これによって、容器凹みを不良と認識することによる消費者の購買意欲の低下を防止することが可能になったと思われる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の方法は充填後の内圧の変動する液体容器の外観変化を目立たなくすることが要求される場合に紙カップに限らず一般的な液体紙容器にも利用できる。
【符号の説明】
【0059】
1…胴部
1a…胴部材
2…口径部
3…底部
3a…底部材
4…平面
4a…高さAの単位平面
5…平面
5b…高さBの単位平面
6…胴部材トップ切り欠き部
7…胴部材底部切り欠き部
8…糊代
9…罫線
9’…罫線
10…凹み吸収紙カップ
11…カール上型
12…カール下型
13…カール型押さえ
20…従来の紙カップ
H…紙カップの高さ
H1…単位平面の高さ
H2…紙カップの高さ−単位平面の高さ
h…水平断面の底面からの高さ
LT…口径部断面
LB…底部断面
L1…高さhでの紙カップ断面
L2…高さhでの紙カップ断面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の加温充填に用いる紙カップにおいて、紙カップの側面に複数の規則的な平面領域を形成することによって構造的に凹み易い部位を作り出し、凹み発生の位置を誘導して視覚的な違和感を軽減することを特徴とする凹み吸収紙カップ。
【請求項2】
複数の規則的な平面領域が、略円錐台形の容器を平面で切断した場合に作成される面を単位平面とし、この単位平面を容器の円錐中心軸を中心に90度づつ回転させて4面を対称形状で設けたことを特徴とする請求項1に記載の凹み吸収紙カップ。
【請求項3】
単位平面の高さが紙カップの高さの1/2以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の凹み吸収紙カップ。
【請求項4】
単位平面の高さが紙カップの高さの4/5以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の凹み吸収紙カップ。
【請求項5】
任意の高さの水平断面における容器胴部の外周長が、円錐形のカップの場合の同一高さの水平断面における容器胴部の外周長と同じになるように胴部材の寸法を設定したことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の凹み吸収紙カップ。
【請求項6】
複数の規則的な平面領域が一条または複数条の、オーバル形状または三角形状の罫線によって区画されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の凹み吸収紙カップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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