凹凸構造パターンの転写装置
【課題】EB描画装置で困難である比較的大きな凹凸構造パターンとEB描画による微細凹凸構造パターンを同時に作製できる転写装置を提供する。
【解決手段】プレス装置1は、転写基材3が載置される下プレス部4と、下プレス部4に対向し昇降可能に設けられた上プレス部5とを有する。スタンパー6は上プレス部5の下面に着脱可能に取着される。スタンパー6は、上プレス部5に装着される装着面6Aと、装着面6Aと反対に位置し転写基材3に転写する第1凹凸構造パターン7aが形成された転写面6Bとを有している。装着面6Aが装着される上プレス部5の部分、または、装着面6a、または、上プレス部5と装着面6Aとの間に設けられる中間部材に、第1凹凸構造パターン7aの転写時に第1凹凸構造パターン7aと共に転写基材3に転写される第1凹凸構造パターン7aとは異なる第2凹凸構造パターン7bが設けられている。
【解決手段】プレス装置1は、転写基材3が載置される下プレス部4と、下プレス部4に対向し昇降可能に設けられた上プレス部5とを有する。スタンパー6は上プレス部5の下面に着脱可能に取着される。スタンパー6は、上プレス部5に装着される装着面6Aと、装着面6Aと反対に位置し転写基材3に転写する第1凹凸構造パターン7aが形成された転写面6Bとを有している。装着面6Aが装着される上プレス部5の部分、または、装着面6a、または、上プレス部5と装着面6Aとの間に設けられる中間部材に、第1凹凸構造パターン7aの転写時に第1凹凸構造パターン7aと共に転写基材3に転写される第1凹凸構造パターン7aとは異なる第2凹凸構造パターン7bが設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂などの転写基材に凹凸構造パターンを転写する転写装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、商品券や小切手などの有価証券類や紙幣、キャッシュカードや、IDカードなどのカード類、パスポートや免許証などの偽造防止をするため、真偽判定を容易に行うためOVD(Optical Variable Device)が使用されてきている(例えば、特許文献1)。
しかし、OVD自体を偽造する技術が高度化し、比較的容易に偽造や模造が可能となり、偽造防止効果としての機能が弱体化してきている。そのためよりセキュリティ性の高い表示体が求められ、従来の技術とは、明確に差別化でき偽造・模造が困難である表示体及びこれを用いた情報印刷物が開発されている。
【0003】
上記セキュリティ性の高い表示体として、ナノ単位で電子ビームを制御(EB描画装置)し、回折格子を一本一本描画することで、視覚効果を持つ画像を作ったものがある。このようにEB描画装置で視覚効果を持つ表示体を作製可能だが、ランニングコストや描画時間を多く必要とする。また、EB描画装置は、平面に微細な凹凸構造パターンを作製する装置であり、比較的大きな構造や平面性の悪いレジスト(例えば球面状)などの描画には適さないなどの欠点がある。
【0004】
EB描画装置で描画した回折格子の量産を行うには、EB描画装置で描画した回折格子からスタンパーを作製し、このスタンパーを用いて樹脂に転写を行う。しかし、デザインを少しでも追加するとEB描画装置による描画工程を行い、スタンパー作製を行わなければならずコストと時間を要する。
言い換えると、従来のスタンパー作製工程ではデザイン(模様など)の追加ごとに、EB描画装置を用いて凹凸構造パターンを描画し、スタンパー作製しなければならない。
【特許文献1】特開2007−223100号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであり、その目的は、EB描画装置で困難である1mm程度の比較的大きな凹凸構造パターンとEB描画による微細凹凸構造パターンを同時に作製することである。また、本発明の目的は、従来のデザイン追加により発生するEB描画工程を省くことである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、プレス部と、可撓性スタンパーとを有し、前記可撓性スタンパーは、前記プレス部に装着される装着面と、前記装着面と反対に位置し転写基材に転写する第1凹凸構造パターンが形成された転写面とを有する転写装置であって、前記装着面が装着される前記プレス部の部分、または、前記装着面、または、前記プレス部と前記装着面との間に設けられる中間部材に、前記第1凹凸構造パターンの転写時に前記第1凹凸構造パターンと共に前記転写基材に転写される前記第1凹凸構造パターンとは異なる第2凹凸構造パターンが設けられていることを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明は、前記第2凹凸構造パターンは、前記装着面に設けられていることを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明は、前記中間部材は金属板であり、前記第2凹凸構造パターンは前記金属板に設けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明は、前記第2凹凸構造パターンが、前記装着面が装着される前記プレス部の部分に設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項5の発明は、前記スタンパーの厚みが40μm乃至250μmであることを特徴とする。
【0011】
請求項6の発明は、前記第2凹凸構造パターンは、円錐状、角錐状、楕円錐状、円柱状もしくは円筒状、角柱状、角筒状、半球、半楕円体、おわん型をしていることを特徴とする。
【0012】
請求項7の発明は、前記第2凹凸構造パターンを構成する凸部は断面が矩形の角柱であり、前記角柱の一辺は100μm以上であり、前記角柱の高さは100μm乃至1000μmであることを特徴とする。
【0013】
請求項8の発明は、前記第1凹凸構造パターンは、鋸歯状、正弦波状、短形状であることを特徴とする。
【0014】
請求項9の発明は、前記第1凹凸構造パターンのピッチが、650nm 乃至2000nmであることを特徴とする。
【0015】
請求項10の発明は、請求項1乃至9の何れか1項に記載の転写装置を用いて形成したことを特徴とする転写物である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の転写装置を用いることによって、スタンパー表面の第1凹凸構造パターンを樹脂に転写すると同時に、転写装置の装着部の境界の第2凹凸構造パターンも転写することが可能である。また、スタンパー作製後にもデザインの追加が可能であるため、デザイン追加により発生するEB描画工程を省くことによるコストや作製時間の低減が可能である。
【0017】
また、EB描画装置では作製が困難である球面状(平面性の悪い)の上に凹凸構造パターンを作製することが可能である。またEB描画装置で困難である1mm程度の比較的大きな凹凸構造パターンを作製することが可能である。
【0018】
また、転写装置の装着部の境界の凹凸構造パターンをあらかじめ作製しておくことで、比較的容易・短時間で新たな模様を付与したパターンを転写することが可能である。
【0019】
また、スタンパー表面に別の凹凸構造パターンを接着した場合には、転写物に段差が生じてしまうが、本発明の装置を用いることによって、このような段差を無く転写することが可能である。
【0020】
また、転写装置の装着部の境界の凹凸構造パターンは、回折格子などのように光を正確に制御するためのものではないため、比較的大まかな形状でよく作製が容易であり、またバリエーション豊かなものが可能である。
【0021】
本発明の転写方法で作製された転写物の転写面側に光を入射させた場合には、転写装置の装着部の境界の凹凸構造パターンで転写された面により、乱反射させることが可能である。また、転写装置の装着部の境界の凹凸構造パターンを変化させることで、乱反射の状態を変えることができ、視覚的効果に変化を付けられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明の実施の形態における装置の一例を示す説明図である。
プレス装置1は、転写基材3が載置される下プレス部4と、下プレス部4に対向し柱2を介して昇降可能に設けられた上プレス部5とを有しており、スタンパー6は上プレス部5の下面に着脱可能に取着される。
本実施の形態では、本発明の転写装置がこのプレス装置1とスタンパー6とを含んで構成されている。
【0023】
図2は、本発明に用いるスタンパー6(可撓性スタンパー)を示している。
このスタンパー6は、転写面には回折機能を持つ第1凹凸構造パターン7aがある。第1凹凸構造パターン7aとしては、鋸歯状、正弦波状、矩形状など従来公知のさまざまな形状が採用可能である。
一方、転写面の裏側(非転写側)にも、第2凹凸構造パターン7bが設けられている。
より詳細には、スタンパー6は、上プレス部5に装着される装着面6Aと、装着面6Aと反対に位置し転写基材3に転写する第1凹凸構造パターン7aが形成された転写面6Bとを有している。
そして、装着面6Aが装着される上プレス部5の部分、または、装着面6a、または、上プレス部5と装着面6Aとの間に設けられる中間部材に、第1凹凸構造パターン7aの転写時に第1凹凸構造パターン7aと共に転写基材3に転写される第1凹凸構造パターン7aとは異なる第2凹凸構造パターン7bが設けられている。
【0024】
図3は、図2のスタンパーを使用したときの転写時を示している。転写時には、第2凹凸構造パターン7bに圧力がかかるため、スタンパー6が変形し、転写面6Bの表面に第2凹凸構造パターン7b(第2凹凸構造パターン7bに対応する形状)が形成される。そのため図4のように、第1凹凸構造パターン7a及び第2凹凸構造パターン7bが同時に転写基材3に転写される。
【0025】
上記の第2凹凸構造パターン7bとして、円錐状、角錐状、楕円錐状、円柱状、円筒状、角柱状などの凹部または凸部が成形してある。あるいは、第2凹凸構造パターン7bとして、半球、半楕円体、おわん型などの凹部または凸部が成形してある。
このような形状で転写を行うことによって転写される構造は、各パターンの角を緩やかに変化させた形状である。
一例として、第2凹凸構造パターン7bを構成する凸部が図5のように断面が矩形の角柱であるスタンパー6を用いて転写を行った場合の転写基材3の転写表面形状の平面図および断面図を図6(A),(B)に示す。各第2凹凸構造パターンにより転写された転写基材3に平行光を入射させるとそれぞれの成形された第2凹凸構造パターン7bの違いにより反射方向が異なるため、視覚効果に相違を生じさせることが可能である。
【0026】
上記のような第2凹凸構造パターン7bを持つスタンパー6は、例えば次のような方法で製造される。
すなわち、電子線描画などで第1凹凸構造パターン7aを有する原版を作り、該原版を用いて電鋳によりスタンパー6を作製し、そのスタンパー6の裏側(装着面6A)にエッチングにより、あるいは、金型切削機などを用いて第2凹凸構造パターン7bを成形する。
必ずしもスタンパーの表裏に凹凸構造が無くてもよいため、転写装置のスタンパー装着部に凹凸構造パターンがあるものや、スタンパーを二枚作製し重ねること、またはスタンパーにメッシュのような金属を重ねることでも同じような効果が得られる。
その他、スタンパー装着部とスタンパーの間に球面形状の金属を設けることで球面上の転写物の作製が可能である。
言い換えると、スタンパー6の装着面6Aが装着されるプレス部の部分に第2凹凸構造パターン7bが設けられていてもよい。あるいは、プレス部と前記装着面6Aとの間に設けられる中間部材に、第2凹凸構造パターン7bが設けられていてもよい。
また、中間部材が金属板であり、第2凹凸構造パターン7bが金属板に設けられていてもよい。
【0027】
本発明の転写装置によれば、スタンパー6の厚みは40μm乃至250μmである。40μm以下では、第2凹凸構造パターン7bによってスタンパー6が破損してしまう可能性が高い。また、250μm以上では第2凹凸構造パターン7bに対応する形状を転写基材3に転写することが難しいことより、上記のようなスタンパー6の厚みを設定している。
【0028】
本発明の転写装置によれば、第2凹凸構造パターン7bを構成する凸部は断面が矩形の角柱であり、この角柱の一辺は100μm以上であり、角柱の高さは100μm乃至1000μmである。
角柱の一辺が100μm以上でないと、第2凹凸構造パターン7bによる転写基材3表面の形状変化を視認することが難しい。
転写基材3に転写する第2凹凸構造パターン7bの大きさ以下であれば角柱の一辺の上限値は限定されるものではない。
また、角柱の高さが100μm以上でないと第2凹凸構造パターン7bによる転写基材3表面の形状変化を視認することが困難である。また、角柱の高さが1000μm以上であると第1凹凸構造パターン7aを転写することが困難になることにより、上記のような第2凹凸構造パターン7bのサイズを設定している。
【0029】
本発明に転写装置によれば、第1凹凸構造パターン7aのピッチは650nm乃至2000nmである。ピッチが2000nmを上回ると第1凹凸構造パターン7aによる光の回折効果が十分に得られない。また、650nm以下であると第1凹凸構造パターン表面の法線から45度の入射光(可視光)を当てた場合の回折光は、凹凸構造パターン表面に対して急な角度で射出されるため第1凹凸構造パターン表面の法線方向から確認することが困難となる。また、転写率を維持することが困難であるため、上記のようなピッチを設定している。
【0030】
図7は、図2のスタンパー6を使用して転写した転写基材3に光を入射させたときの正反射を示したものである。第1凹凸構造パターン7aによる転写部7dでは回折光が射出されるのに対し、第2凹凸構造パターン7bによる転写部7cは構造が大きく、入射光に対して回折光が発生せず、正反射のみが射出される。また、表面形状が平らではないため乱反射が起こる。
【0031】
本発明の転写装置では、第1凹凸構造パターン7aをスタンパー6に形成した後で、第2の凹凸構造パターン7bとして多種多様の模様を比較的簡単に成形することが可能である。
【0032】
(実施の形態2)
図8は本発明の実施の形態の転写装置によって得られた転写物の一例を示す説明図である。
【0033】
図9(A)はスタンパー6の斜視図、図9(B)は図9(A)の断面図であり図8のI−I線断面に対応している。
このスタンパー6は、第1凹凸構造パターン8dと第2凹凸構造パターン8a,b,c及び非凹凸構造パターン8eから成っている。
第1凹凸構造パターン8dは幅2000nm、高さ200nmで作製されており、第2凹凸構造パターン8aは底辺が100μm角で高さ100μmの角柱が配列してある。また第2凹凸構造パターン8cでは、底辺の直径200μmで高さが200μmの円錐が配列してあり、第2凹凸構造パターン8bでは外径20mm、内径10mmで高さが200μmの円筒形状が成形されている。
【0034】
上記のスタンパー6を用いて転写した結果、図8のような転写物(転写基材3)が得られる。第2凹凸構造パターン8a,bにより転写された転写基材3に平行光を入射させると、乱反射される。第2凹凸構造パターン8cでは内径から外径の構造がある部分では、転写された基材面は比較的面が平らになることから乱反射が起こりにくい。しかし内径の内側または外径の外側では、構造がないため基材面には曲線形状が転写され、平行光を入射させると乱反射が発生する。よって、乱反射が起こりにくい表面構造と乱反射が起こりやすい表面構造が形成されるため、英語「O」文字が目視にて確認することができる。また第2凹凸構造パターン7a,cでの転写部では、それぞれ違う光学的効果を視認することができる。非凹凸構造パターン8eによる転写部では、乱反射が起こりにくいためミラーのような光学的効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の転写装置の概略的に示す図である。
【図2】図1に示す転写装置に用いるスタンパーの断面を示した図である。
【図3】転写時の概略を示した図である。
【図4】転写された基材の断面を示した図である。
【図5】第2凹凸構造パターンの一例を示した図である。
【図6】(A)は図5のスタンパーを用いて転写した場合の転写基材3の平面図、(B)は(A)の断面図である。
【図7】図4の転写表面に入射光9を照らした場合の反射光を示した図である。
【図8】本発明の実施の形態における転写物の一例を示した図である。
【図9】(A)はスタンパー6の斜視図、(B)は(A)の断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1…プレス装置、2…柱、3…転写基材、4…下プレス部、5…上プレス部、6…スタンパー、7a…第1凹凸構造パターン、7b…第2凹凸構造パターン、7c…第2凹凸構造パターンによる転写部、7d…第1凹凸構造パターンによる転写部、8a…第2凹凸構造パターン、8b…第2凹凸構造パターン、8c…第2凹凸構造パターン、8d…第1凹凸構造パターン(回折格子)、8e…非凹凸構造パターン、9…入射光、10…正反射光。
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂などの転写基材に凹凸構造パターンを転写する転写装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、商品券や小切手などの有価証券類や紙幣、キャッシュカードや、IDカードなどのカード類、パスポートや免許証などの偽造防止をするため、真偽判定を容易に行うためOVD(Optical Variable Device)が使用されてきている(例えば、特許文献1)。
しかし、OVD自体を偽造する技術が高度化し、比較的容易に偽造や模造が可能となり、偽造防止効果としての機能が弱体化してきている。そのためよりセキュリティ性の高い表示体が求められ、従来の技術とは、明確に差別化でき偽造・模造が困難である表示体及びこれを用いた情報印刷物が開発されている。
【0003】
上記セキュリティ性の高い表示体として、ナノ単位で電子ビームを制御(EB描画装置)し、回折格子を一本一本描画することで、視覚効果を持つ画像を作ったものがある。このようにEB描画装置で視覚効果を持つ表示体を作製可能だが、ランニングコストや描画時間を多く必要とする。また、EB描画装置は、平面に微細な凹凸構造パターンを作製する装置であり、比較的大きな構造や平面性の悪いレジスト(例えば球面状)などの描画には適さないなどの欠点がある。
【0004】
EB描画装置で描画した回折格子の量産を行うには、EB描画装置で描画した回折格子からスタンパーを作製し、このスタンパーを用いて樹脂に転写を行う。しかし、デザインを少しでも追加するとEB描画装置による描画工程を行い、スタンパー作製を行わなければならずコストと時間を要する。
言い換えると、従来のスタンパー作製工程ではデザイン(模様など)の追加ごとに、EB描画装置を用いて凹凸構造パターンを描画し、スタンパー作製しなければならない。
【特許文献1】特開2007−223100号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであり、その目的は、EB描画装置で困難である1mm程度の比較的大きな凹凸構造パターンとEB描画による微細凹凸構造パターンを同時に作製することである。また、本発明の目的は、従来のデザイン追加により発生するEB描画工程を省くことである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、プレス部と、可撓性スタンパーとを有し、前記可撓性スタンパーは、前記プレス部に装着される装着面と、前記装着面と反対に位置し転写基材に転写する第1凹凸構造パターンが形成された転写面とを有する転写装置であって、前記装着面が装着される前記プレス部の部分、または、前記装着面、または、前記プレス部と前記装着面との間に設けられる中間部材に、前記第1凹凸構造パターンの転写時に前記第1凹凸構造パターンと共に前記転写基材に転写される前記第1凹凸構造パターンとは異なる第2凹凸構造パターンが設けられていることを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明は、前記第2凹凸構造パターンは、前記装着面に設けられていることを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明は、前記中間部材は金属板であり、前記第2凹凸構造パターンは前記金属板に設けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明は、前記第2凹凸構造パターンが、前記装着面が装着される前記プレス部の部分に設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項5の発明は、前記スタンパーの厚みが40μm乃至250μmであることを特徴とする。
【0011】
請求項6の発明は、前記第2凹凸構造パターンは、円錐状、角錐状、楕円錐状、円柱状もしくは円筒状、角柱状、角筒状、半球、半楕円体、おわん型をしていることを特徴とする。
【0012】
請求項7の発明は、前記第2凹凸構造パターンを構成する凸部は断面が矩形の角柱であり、前記角柱の一辺は100μm以上であり、前記角柱の高さは100μm乃至1000μmであることを特徴とする。
【0013】
請求項8の発明は、前記第1凹凸構造パターンは、鋸歯状、正弦波状、短形状であることを特徴とする。
【0014】
請求項9の発明は、前記第1凹凸構造パターンのピッチが、650nm 乃至2000nmであることを特徴とする。
【0015】
請求項10の発明は、請求項1乃至9の何れか1項に記載の転写装置を用いて形成したことを特徴とする転写物である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の転写装置を用いることによって、スタンパー表面の第1凹凸構造パターンを樹脂に転写すると同時に、転写装置の装着部の境界の第2凹凸構造パターンも転写することが可能である。また、スタンパー作製後にもデザインの追加が可能であるため、デザイン追加により発生するEB描画工程を省くことによるコストや作製時間の低減が可能である。
【0017】
また、EB描画装置では作製が困難である球面状(平面性の悪い)の上に凹凸構造パターンを作製することが可能である。またEB描画装置で困難である1mm程度の比較的大きな凹凸構造パターンを作製することが可能である。
【0018】
また、転写装置の装着部の境界の凹凸構造パターンをあらかじめ作製しておくことで、比較的容易・短時間で新たな模様を付与したパターンを転写することが可能である。
【0019】
また、スタンパー表面に別の凹凸構造パターンを接着した場合には、転写物に段差が生じてしまうが、本発明の装置を用いることによって、このような段差を無く転写することが可能である。
【0020】
また、転写装置の装着部の境界の凹凸構造パターンは、回折格子などのように光を正確に制御するためのものではないため、比較的大まかな形状でよく作製が容易であり、またバリエーション豊かなものが可能である。
【0021】
本発明の転写方法で作製された転写物の転写面側に光を入射させた場合には、転写装置の装着部の境界の凹凸構造パターンで転写された面により、乱反射させることが可能である。また、転写装置の装着部の境界の凹凸構造パターンを変化させることで、乱反射の状態を変えることができ、視覚的効果に変化を付けられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明の実施の形態における装置の一例を示す説明図である。
プレス装置1は、転写基材3が載置される下プレス部4と、下プレス部4に対向し柱2を介して昇降可能に設けられた上プレス部5とを有しており、スタンパー6は上プレス部5の下面に着脱可能に取着される。
本実施の形態では、本発明の転写装置がこのプレス装置1とスタンパー6とを含んで構成されている。
【0023】
図2は、本発明に用いるスタンパー6(可撓性スタンパー)を示している。
このスタンパー6は、転写面には回折機能を持つ第1凹凸構造パターン7aがある。第1凹凸構造パターン7aとしては、鋸歯状、正弦波状、矩形状など従来公知のさまざまな形状が採用可能である。
一方、転写面の裏側(非転写側)にも、第2凹凸構造パターン7bが設けられている。
より詳細には、スタンパー6は、上プレス部5に装着される装着面6Aと、装着面6Aと反対に位置し転写基材3に転写する第1凹凸構造パターン7aが形成された転写面6Bとを有している。
そして、装着面6Aが装着される上プレス部5の部分、または、装着面6a、または、上プレス部5と装着面6Aとの間に設けられる中間部材に、第1凹凸構造パターン7aの転写時に第1凹凸構造パターン7aと共に転写基材3に転写される第1凹凸構造パターン7aとは異なる第2凹凸構造パターン7bが設けられている。
【0024】
図3は、図2のスタンパーを使用したときの転写時を示している。転写時には、第2凹凸構造パターン7bに圧力がかかるため、スタンパー6が変形し、転写面6Bの表面に第2凹凸構造パターン7b(第2凹凸構造パターン7bに対応する形状)が形成される。そのため図4のように、第1凹凸構造パターン7a及び第2凹凸構造パターン7bが同時に転写基材3に転写される。
【0025】
上記の第2凹凸構造パターン7bとして、円錐状、角錐状、楕円錐状、円柱状、円筒状、角柱状などの凹部または凸部が成形してある。あるいは、第2凹凸構造パターン7bとして、半球、半楕円体、おわん型などの凹部または凸部が成形してある。
このような形状で転写を行うことによって転写される構造は、各パターンの角を緩やかに変化させた形状である。
一例として、第2凹凸構造パターン7bを構成する凸部が図5のように断面が矩形の角柱であるスタンパー6を用いて転写を行った場合の転写基材3の転写表面形状の平面図および断面図を図6(A),(B)に示す。各第2凹凸構造パターンにより転写された転写基材3に平行光を入射させるとそれぞれの成形された第2凹凸構造パターン7bの違いにより反射方向が異なるため、視覚効果に相違を生じさせることが可能である。
【0026】
上記のような第2凹凸構造パターン7bを持つスタンパー6は、例えば次のような方法で製造される。
すなわち、電子線描画などで第1凹凸構造パターン7aを有する原版を作り、該原版を用いて電鋳によりスタンパー6を作製し、そのスタンパー6の裏側(装着面6A)にエッチングにより、あるいは、金型切削機などを用いて第2凹凸構造パターン7bを成形する。
必ずしもスタンパーの表裏に凹凸構造が無くてもよいため、転写装置のスタンパー装着部に凹凸構造パターンがあるものや、スタンパーを二枚作製し重ねること、またはスタンパーにメッシュのような金属を重ねることでも同じような効果が得られる。
その他、スタンパー装着部とスタンパーの間に球面形状の金属を設けることで球面上の転写物の作製が可能である。
言い換えると、スタンパー6の装着面6Aが装着されるプレス部の部分に第2凹凸構造パターン7bが設けられていてもよい。あるいは、プレス部と前記装着面6Aとの間に設けられる中間部材に、第2凹凸構造パターン7bが設けられていてもよい。
また、中間部材が金属板であり、第2凹凸構造パターン7bが金属板に設けられていてもよい。
【0027】
本発明の転写装置によれば、スタンパー6の厚みは40μm乃至250μmである。40μm以下では、第2凹凸構造パターン7bによってスタンパー6が破損してしまう可能性が高い。また、250μm以上では第2凹凸構造パターン7bに対応する形状を転写基材3に転写することが難しいことより、上記のようなスタンパー6の厚みを設定している。
【0028】
本発明の転写装置によれば、第2凹凸構造パターン7bを構成する凸部は断面が矩形の角柱であり、この角柱の一辺は100μm以上であり、角柱の高さは100μm乃至1000μmである。
角柱の一辺が100μm以上でないと、第2凹凸構造パターン7bによる転写基材3表面の形状変化を視認することが難しい。
転写基材3に転写する第2凹凸構造パターン7bの大きさ以下であれば角柱の一辺の上限値は限定されるものではない。
また、角柱の高さが100μm以上でないと第2凹凸構造パターン7bによる転写基材3表面の形状変化を視認することが困難である。また、角柱の高さが1000μm以上であると第1凹凸構造パターン7aを転写することが困難になることにより、上記のような第2凹凸構造パターン7bのサイズを設定している。
【0029】
本発明に転写装置によれば、第1凹凸構造パターン7aのピッチは650nm乃至2000nmである。ピッチが2000nmを上回ると第1凹凸構造パターン7aによる光の回折効果が十分に得られない。また、650nm以下であると第1凹凸構造パターン表面の法線から45度の入射光(可視光)を当てた場合の回折光は、凹凸構造パターン表面に対して急な角度で射出されるため第1凹凸構造パターン表面の法線方向から確認することが困難となる。また、転写率を維持することが困難であるため、上記のようなピッチを設定している。
【0030】
図7は、図2のスタンパー6を使用して転写した転写基材3に光を入射させたときの正反射を示したものである。第1凹凸構造パターン7aによる転写部7dでは回折光が射出されるのに対し、第2凹凸構造パターン7bによる転写部7cは構造が大きく、入射光に対して回折光が発生せず、正反射のみが射出される。また、表面形状が平らではないため乱反射が起こる。
【0031】
本発明の転写装置では、第1凹凸構造パターン7aをスタンパー6に形成した後で、第2の凹凸構造パターン7bとして多種多様の模様を比較的簡単に成形することが可能である。
【0032】
(実施の形態2)
図8は本発明の実施の形態の転写装置によって得られた転写物の一例を示す説明図である。
【0033】
図9(A)はスタンパー6の斜視図、図9(B)は図9(A)の断面図であり図8のI−I線断面に対応している。
このスタンパー6は、第1凹凸構造パターン8dと第2凹凸構造パターン8a,b,c及び非凹凸構造パターン8eから成っている。
第1凹凸構造パターン8dは幅2000nm、高さ200nmで作製されており、第2凹凸構造パターン8aは底辺が100μm角で高さ100μmの角柱が配列してある。また第2凹凸構造パターン8cでは、底辺の直径200μmで高さが200μmの円錐が配列してあり、第2凹凸構造パターン8bでは外径20mm、内径10mmで高さが200μmの円筒形状が成形されている。
【0034】
上記のスタンパー6を用いて転写した結果、図8のような転写物(転写基材3)が得られる。第2凹凸構造パターン8a,bにより転写された転写基材3に平行光を入射させると、乱反射される。第2凹凸構造パターン8cでは内径から外径の構造がある部分では、転写された基材面は比較的面が平らになることから乱反射が起こりにくい。しかし内径の内側または外径の外側では、構造がないため基材面には曲線形状が転写され、平行光を入射させると乱反射が発生する。よって、乱反射が起こりにくい表面構造と乱反射が起こりやすい表面構造が形成されるため、英語「O」文字が目視にて確認することができる。また第2凹凸構造パターン7a,cでの転写部では、それぞれ違う光学的効果を視認することができる。非凹凸構造パターン8eによる転写部では、乱反射が起こりにくいためミラーのような光学的効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の転写装置の概略的に示す図である。
【図2】図1に示す転写装置に用いるスタンパーの断面を示した図である。
【図3】転写時の概略を示した図である。
【図4】転写された基材の断面を示した図である。
【図5】第2凹凸構造パターンの一例を示した図である。
【図6】(A)は図5のスタンパーを用いて転写した場合の転写基材3の平面図、(B)は(A)の断面図である。
【図7】図4の転写表面に入射光9を照らした場合の反射光を示した図である。
【図8】本発明の実施の形態における転写物の一例を示した図である。
【図9】(A)はスタンパー6の斜視図、(B)は(A)の断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1…プレス装置、2…柱、3…転写基材、4…下プレス部、5…上プレス部、6…スタンパー、7a…第1凹凸構造パターン、7b…第2凹凸構造パターン、7c…第2凹凸構造パターンによる転写部、7d…第1凹凸構造パターンによる転写部、8a…第2凹凸構造パターン、8b…第2凹凸構造パターン、8c…第2凹凸構造パターン、8d…第1凹凸構造パターン(回折格子)、8e…非凹凸構造パターン、9…入射光、10…正反射光。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス部と、可撓性スタンパーとを有し、
前記可撓性スタンパーは、前記プレス部に装着される装着面と、前記装着面と反対に位置し転写基材に転写する第1凹凸構造パターンが形成された転写面とを有する転写装置であって、
前記装着面が装着される前記プレス部の部分、または、前記装着面、または、前記プレス部と前記装着面との間に設けられる中間部材に、前記第1凹凸構造パターンの転写時に前記第1凹凸構造パターンと共に前記転写基材に転写される前記第1凹凸構造パターンとは異なる第2凹凸構造パターンが設けられている、
ことを特徴とする転写装置。
【請求項2】
前記第2凹凸構造パターンは、前記装着面に設けられている、
ことを特徴とする請求項1の転写装置。
【請求項3】
前記中間部材は金属板であり、前記第2凹凸構造パターンは前記金属板に設けられている、
ことを特徴とする請求項1の転写装置。
【請求項4】
前記第2凹凸構造パターンが、前記装着面が装着される前記プレス部の部分に設けられている、
ことを特徴とする請求項1の転写装置。
【請求項5】
前記スタンパーの厚みが40μm乃至250μmである、
ことを特徴とする請求項1〜4記載の転写装置。
【請求項6】
前記第2凹凸構造パターンは、円錐状、角錐状、楕円錐状、円柱状もしくは円筒状、角柱状、角筒状、半球、半楕円体、おわん型をしている、
ことを特徴とする請求項1〜5の転写装置。
【請求項7】
前記第2凹凸構造パターンを構成する凸部は断面が矩形の角柱であり、前記角柱の一辺は100μm以上であり、前記角柱の高さは100μm乃至1000μmである、
ことを特徴とする請求項1〜6記載の転写装置。
【請求項8】
前記第1凹凸構造パターンは、鋸歯状、正弦波状、矩形状である、
ことを特徴とする請求項1〜7記載の転写装置。
【請求項9】
前記第1凹凸構造パターンのピッチが、650nm 乃至2000nmである、
ことを特徴とする請求項1〜8記載の転写装置。
【請求項10】
請求項1乃至9に何れか1項に記載の転写装置を用いて形成したことを特徴とする転写物。
【請求項1】
プレス部と、可撓性スタンパーとを有し、
前記可撓性スタンパーは、前記プレス部に装着される装着面と、前記装着面と反対に位置し転写基材に転写する第1凹凸構造パターンが形成された転写面とを有する転写装置であって、
前記装着面が装着される前記プレス部の部分、または、前記装着面、または、前記プレス部と前記装着面との間に設けられる中間部材に、前記第1凹凸構造パターンの転写時に前記第1凹凸構造パターンと共に前記転写基材に転写される前記第1凹凸構造パターンとは異なる第2凹凸構造パターンが設けられている、
ことを特徴とする転写装置。
【請求項2】
前記第2凹凸構造パターンは、前記装着面に設けられている、
ことを特徴とする請求項1の転写装置。
【請求項3】
前記中間部材は金属板であり、前記第2凹凸構造パターンは前記金属板に設けられている、
ことを特徴とする請求項1の転写装置。
【請求項4】
前記第2凹凸構造パターンが、前記装着面が装着される前記プレス部の部分に設けられている、
ことを特徴とする請求項1の転写装置。
【請求項5】
前記スタンパーの厚みが40μm乃至250μmである、
ことを特徴とする請求項1〜4記載の転写装置。
【請求項6】
前記第2凹凸構造パターンは、円錐状、角錐状、楕円錐状、円柱状もしくは円筒状、角柱状、角筒状、半球、半楕円体、おわん型をしている、
ことを特徴とする請求項1〜5の転写装置。
【請求項7】
前記第2凹凸構造パターンを構成する凸部は断面が矩形の角柱であり、前記角柱の一辺は100μm以上であり、前記角柱の高さは100μm乃至1000μmである、
ことを特徴とする請求項1〜6記載の転写装置。
【請求項8】
前記第1凹凸構造パターンは、鋸歯状、正弦波状、矩形状である、
ことを特徴とする請求項1〜7記載の転写装置。
【請求項9】
前記第1凹凸構造パターンのピッチが、650nm 乃至2000nmである、
ことを特徴とする請求項1〜8記載の転写装置。
【請求項10】
請求項1乃至9に何れか1項に記載の転写装置を用いて形成したことを特徴とする転写物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2010−107878(P2010−107878A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−281898(P2008−281898)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
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