説明

凹凸模様を有する固形化粧料および、その製造方法

【課題】固形化粧料表面に繊細かつ明瞭な凹凸模様が形成された化粧料及びその製造方法を提供する。
【解決手段】プレスヘッド4a及びシート材5と皿状容器3に充填された化粧料2との間に、上面から下面に貫通する模様状の孔1aを有する抜型1を介してプレスし、更に充填された化粧料2と異なる化粧料、または色材、パール材などの粉体原料、若しくはそれらを油性成分と混合した組成物などを表面に付着させた後、前記抜型を除去することにより従来にない繊細且つ明瞭な凹凸模様が形成された固形化粧料が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複雑で繊細且つ明瞭な凹凸模様を有する固形化粧料及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、皿状容器に充填、成型された固形化粧料の成型物表面は、一般に平坦であり、他の製品との差別化を図り、外観での付加価値を得る為に、表面を凹凸に成型(レリーフ加工)、多色化、加飾などが行われている。
成型物表面を凹凸に成型する為には、プレスヘッドの化粧料に接する面に凹凸の加工(4b、4c)を施し加圧プレスを行う方法が一般的であるが、充填された化粧料とプレスヘッドの間にシート材(布、紙、不織布、ナイロンメッシュなど)が介在するため、そのシート材の厚さや伸縮度の影響でプレスヘッドに加工された凹凸に対し、化粧料表面に形成される凹凸は、角部(2b)に丸みを帯び、なだらかな凹凸となり、更に模様の細部、狭部はつぶれてしまう。従って凹凸模様は意図した模様に比べ不明瞭で、ぼやけた印象になってしまう(図6〜11)。
凹凸模様を鮮明にするために弾性押型、可撓性シートなどを用いる方法(特許文献1)など検討されているが、従来方法のプレスヘッドやシート材の材質を変えただけであり繊細且つ明瞭な凹凸模様の形成には不十分である。
(特許文献2)では、表面に凹凸を有する弾性スタンプを用いて油性固形化粧料表面に粉末化粧料を転写した凹凸模様の形成方法が検討されているが、弾性体であるため加圧による凹凸成型は不十分であり、シート材が使えないためスタンプ面凹部に化粧料が入り込み、凹凸模様は崩れ、スタンプ面の掃除が必要になる。その他、転写のばらつき等問題となる点は多い。
【0003】
また、固形化粧料の表面に模様を形成加飾する方法としては、化粧料と色の異なる粉体を揮発性溶媒に分散し、輪郭孔を有するプレートを介して噴霧する方法(特許文献3)、静電印刷スクリーンを用いて、印刷用粉体を固形化粧料表面に転移させる方法(特許文献4)更に、レーザー光線の照射による印字、表面加工(特許文献5)などが開示されている。
しかしながら、特許文献3などのスプレー噴霧の方法ではプレートの厚みの影響で、模様の中心部に比べ輪郭部分は噴霧が不十分となり、ぼやけた不明瞭な輪郭の模様となってしまう。また凹凸の表面加工に対し模様状に噴霧した場合、凹凸の輪郭と噴霧された輪郭が一致せず、見栄えのしない表面加飾となる。
特許文献4の静電印刷を用いた方法では、スクリーンの粉体汚れ(粉体残留物)により、印刷用粉体の飛散が生ずるため頻繁にスクリーンの取り替え若しくは清掃を行う必要があり、また複数の対象物を纏めて処理する方法となるため、生産ライン上で連続して加工する低コストな製造工程には適さない。更に静電発生を伴う製法の為、化粧料表面の不要な部分に粉体や異物が点在飛散し易く不良発生の要因ともなる。
そして特許文献5に記載のレーザー光線の照射による方法では、細かい模様に対応することは可能であるが、細かく複雑な模様を得るためには長時間の照射時間を必要とし、更に模様に凹凸状態も得ようとした場合にも長時間の照射を必要となり、表面加工の方法としては高コストとなる。また、化粧料にレーザー照射を行った場合、照射部表面は焦げたような褐色味を帯び、異臭を発することから油分、粉体等の有機物成分の変性など、安全性、安定性が懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−154732
【特許文献2】特開2009−155275
【特許文献3】特開平1−146812
【特許文献4】特開2005−144935
【特許文献5】特開2002−192770
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、化粧料に外観的付加価値を与え、他の類似製品との差別化を図るために、製品の安全性を保ち、低コストな製造方法にて、複雑で繊細な凹凸模様を明瞭に形成する製造方法が必要とされている。
しかしながら、上記背景技術に記載のように、明瞭な凹凸を含む複雑な模様の形成は難しく、工程としては低コストな方法として検討されているものの、高価なレーザー照射機や静電印刷装置が別途必要であり、また不良率、生産性などの点からも製造工程全体としては高コストとなるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するため鋭意検討を進めた結果、本発明はプレスヘッド(4a)及びシート材(5)と充填された化粧料(2)との間に上面から下面に貫通する模様状の孔(1a)を有する抜型(1)(以下、抜型と記載)を介在する状態でプレスした後、上記抜型を除去することにより、明瞭な輪郭を有する複雑な凹凸模様の固形化粧料が得られた(図1)。上記抜型を複数重ねて使用することにより凹凸模様は立体的にも複雑な形状を可能とし(図4)、更には抜型を除去する前に該固形化粧料と異なる化粧料、または色材、パール材等粉体原料、若しくはそれらを油性成分と混合した組成物を付着させることで、より付加価値の高い凹凸模様を明瞭な状態に形成された固形化粧料および、その製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の製造方法によって、従来にない明瞭な輪郭を有する凹凸模様を固形化粧料表面に形成することが可能となり、高付加価値な外観が得られる。そして抜型の複数使用や、異なる化粧料、組成物等の付着、など行うことにより、多種多様な表面模様の固形化粧料が製造可能となる。更に本発明では抜型の種類、設定を変えることで、形成される凹凸模様を簡易に切り替えることが可能であり、また、従来の製造設備を利用できるため、少量多品種の生産から大量生産まで幅広い生産体系において低コストとなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施例の斜視図である。
【図2】本発明の工程の説明図であり、(A)抜型設置、(B)加圧、(C)抜型除去の工程断面を示す。
【図3】上記図2(C)の固形化粧料拡大図である。
【図4】抜型を複数枚用いた状態の断面拡大図である。
【図5】上記図4の固形化粧料拡大図である。
【図6】プレスヘッド表面に凹型加工を施す従来製法の工程説明図である。
【図7】上記図6(B)の拡大図である。
【図8】上記図6(C)の固形化粧料拡大図である。
【図9】プレスヘッド表面に凸型加工を施す従来製法の工程説明図である。
【図10】上記図9(B)の拡大図である。
【図11】上記図9(C)の固形化粧料拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について詳述する。
本発明において、固形化粧料としては、粉末原料が主成分となるファンデーション、アイシャドウ、頬紅等の固形粉末化粧料、固形油、液状油などが主成分となる油性固形化粧料などが挙げられる。凹凸模様を形成する際、加圧されるため、皿状容器などに充填される形態が好ましい。ここで用いる装置は油圧、エアー圧、パルスモーターなどでプレスヘッドが上下に稼働するプレス装置、皿状容器下部の孔から揮発性溶剤でスラリー状とした化粧料を圧入する装置など従来から用いられているもので対応することができる。プレス圧力、プレス回数、シート材の選択などの諸条件は凹凸模様を形成される固形化粧料により適宜選択される。
【0010】
本発明において用いられる抜型(1)は、材質としては、アルミニウム、ステンレス等の金属類、ABS、PET、PP等の樹脂類、NBR、天然ゴム、シリコンラバー、などのエラストマー素材、ナイロン、綿、絹等の布類、紙類、不織布などの他、これらの複合材料が用いることができ、材質により発泡素材または多孔質素材に成型されたものでもよい。これらの材質は化粧料との適性、模様デザインなどにより適宜選択される。抜型の上面から下面に貫通する模様状の孔(1a)は、プレス金型による打ち抜き加工、刃物やレーザーによる切り抜き加工、モールド成型などにより形成することができる。孔の側面(1b)は化粧料に接する面に対して垂直、または、抜型を除去する際の作業性や凹凸模様の見栄えに影響しない程度で角度を付けることも可能である。
抜型の厚さは0.01〜1mmが好ましい、更に好ましくは0.1〜0.5mmであるが、2枚以上を重ねて凹凸模様の高さを調節することも可能である。抜型を2枚以上重ねる際、上部抜型の孔を下部抜型の孔と異なるサイズや模様とすることで、立体的に複雑な凹凸模様が形成できる(図4)。更には抜型やプレスヘッドの化粧料に接する面に細かな模様を凹凸加工したものを用いれば、凹凸模様のバリエーションは、より多彩なものとなる。
【0011】
本発明のプレスヘッド(4)及びシート材(5)と充填された化粧料(2)との間に模様状の孔(1a)を有する抜型(1)を介在する状態でプレスする製造方法は、化粧料の充填方法、成型装置に制限されることはなく、例えば特開昭60−172917に記載される「多孔質素材からなる成型ヘッドを用いた製造方法」、「容器内に除去可能な仕切りを設置する製造方法」、更には特公昭61−54766に記載される「中皿下部の孔から化粧料を圧入する製造方法」及び「固定された仕切りを有する中皿の形態」においても同様の効果を示し、明瞭な輪郭の凹凸模様を形成できる。
【0012】
更に凹凸模様を明瞭にするために本発明では上記抜型(1)を除去する前に該固形化粧料(2)と異なる化粧料、または色材、パール材等の粉体原料、若しくはそれらを油性成分と混合した組成物を固形化粧料表面(2)に形成された凹凸模様の天面若しくは、凸部のみに付着させることができる。付着させるものとしては、抜型により凹凸模様が形成された固形化粧料(2)と色調、性状などの少なくとも1点が異なる化粧料、または色材、パール材等粉体原料、若しくはそれらを油性成分と混合した組成物があげられ、これらの1種または2種以上を選択して用いる。
【0013】
ここで用いられる色材としては、酸化チタン、黒酸化鉄、ベンガラ、黄酸化鉄等の無機顔料、赤色202号、赤色104号(1)、赤色218号、黄色4号、青色1号などの有機色材などがあげられる。パール材としては、雲母チタン、酸化鉄被覆雲母チタン、酸化チタン被覆ガラス末、酸化チタン被覆合成金雲母などがあげられる。更に粉体原料として無水ケイ酸、タルク、マイカ、アクリル系球状粉体、シリコーンエラストマー球状粉体などを用いることができる。これらは、シリコーン処理、金属石鹸処理、アミノ酸処理等、公知の表面処理を施して用いることも可能であり、化粧料に通常用いられるものであれば特に限定されない。
【0014】
また上記色材、パール材等の粉体原料は、油性成分と混合した組成物として用いることも可能であり、ここで油性成分としては、軽質イソパラフィン、揮発性シリコーン、エタノールなどの揮発性油剤、シリコーン油、炭化水素油、エーテル油、などの不揮発性油剤、ポリエチレンワックス、キャンデリラロウなどの固形油、界面活性剤など化粧料に通常用いられるもがあげられ、該固形化粧料(2)への付着性、付着させる方法などにより1種または2種以上を適宜選択して用いる。
【0015】
これらを付着させる方法としては、ロールや刷毛などによる塗布、スプレーによる噴霧、メッシュを通して落下させる方法など従来から用いられる方法が可能である。本発明では、抜型(1)を除去する前にこれらの付着工程を行うため、従来問題となっていた不要な部分への付着(色飛び)は発生せず、また固形化粧料の凹凸天面(2a)と抜型の上面は面一となっているために凹凸の輪郭と付着により加飾された輪郭がずれることなく一致し、模様の微細な部分も正確に付着させることができることで、凹凸模様がより一層明瞭となる。
【実施例】
【0016】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。本発明の製造方法及び、固形化粧料は、これらの記載される内容に限定されるものではない。
【0017】
(実施例1)予め調整された粉末化粧料100部に対し、揮発性溶剤として軽質イソパラフィンを30部添加、混練後、皿状容器(3)に充填する。充填された化粧料スラリー(2)の上に模様状の孔(1a)を有する紙製抜型(1)を設置し、更に抜型に上に不織布製シート材(5)を設置し、プレスヘッド(4a)にて加圧プレスを行った(30φエアシリンダー、3kgf、3回)。次に雲母チタン100部に対し、スクワラン1部、軽質イソパラフィン300部にて混合調整された組成物を加圧された化粧料表面にスプレーを用いて噴霧し、抜型(1)を除去した。最後に揮発性溶剤を乾燥除去することで、表面に凹凸模様が形成され、凸部天面のみ雲母チタン組成物で加飾された固形粉末化粧料が得られた。
【0018】
(実施例2)予め調整された油性固形化粧料を90℃に加温熔解し、皿状容器に充填する。油性固形化粧料を放冷固化した後、模様状の孔を有するアルミニュウム製抜型を化粧料上部表面に設置する。次いでコーツヒーターにて抜型を含む化粧料表面を加熱した後、布製シート材を介して加圧プレスを行った(50φ油圧シリンダー、10kgf、1回)。この油性固形化粧料を急冷し、抜型を除去することで、表面に凹凸模様の形成された油性固形化粧料が得られた。
【0019】
(実施例3)予め調整された粉末化粧料(2)を皿状容器に充填する。充填された粉末化粧料の上に模様状の孔を有するPET製抜型(10)を設置し、更に抜型(10)の模様状の孔が異なる抜型(11)(12)を順次重ねて設置する。ここで模様状の孔は抜型(10)の模様を(10)〜(12)へと順次狭小にする形で設定した。紙製シート材とナイロンメッシュ製シート材を介して加圧プレス(50φ油圧シリンダー、30kgf、1回)し、まず粉末化粧料(2)と色調の異なる粉末化粧料を30メッシュの篩いから落下させ、再度加圧プレスを行う(50φ油圧シリンダー、10kgf、1回)。そして最上部にある抜型(12)を除去し実施例1で用いた組成物をスプレーにて噴霧する。次いで抜型(11)を除去した後、雲母チタン30部、無水ケイ酸50部、タルク19部、スクワラン1部、軽質イソパラフィン300部からなる組成物をスプレーにて噴霧する。最後に抜型(10)を除去し、立体的に色調の異なる凹凸模様を有する固形粉体化粧料が得られた。
【符号の説明】
【0020】
1抜型
1a模様状孔
1b孔側面
2化粧料
2a化粧料凹凸天面
2b化粧料凹凸角部
3皿状容器
4aプレスヘッド
4bプレスヘッド(表面凹型加工)
4cプレスヘッド(表面凸型加工)
5シート材
10、11,12抜型


【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレスヘッド及びシート材と容器に充填された化粧料との間に上面から下面に貫通する模様状の孔を有する抜型を介在する状態でプレスした後、上記抜型を除去する固形化粧料の製造方法。
【請求項2】
上記抜型の1種または2種以上を2枚以上重ねて使用する請求項1記載の固形化粧料の製造方法。
【請求項3】
プレスヘッド及びシート材と容器に充填された化粧料との間に上面から下面に貫通する模様状の孔を有する抜型が介在する状態でプレスした表面に、該固形化粧料と異なる化粧料、または色材、パール材等の粉体原料、若しくはそれらを油性成分と混合した組成物から1種または2種以上を付着させた後、上記抜型を除去する請求項1及び2に記載の固形化粧料の製造方法。

【請求項4】
請求項1〜3に記載されるいずれかの製造方法により得られる固形化粧料。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate