説明

凹凸部を有する板材並びにそれを用いた車両パネル及び積層構造体

【課題】剛性向上効果の極めて高い凹凸部パターンを有する板材を提供し、また、そのような板材を用いた有用な車両パネルや積層構造体を提供すること。
【解決手段】仮想の正方形の多数が縦横に組み合わされて、板面が構成されると共に、その板面に凹凸形状が形成されてなる板材において、かかる仮想の正方形に第一領域MとZ型の第二領域Nとが形成されている基本形状とそれから派生した各種の基本形状のうちの複数を、それぞれの周縁部に位置する第一及び第二領域M,Nが相互に一致するように突き合わせた形態において組み合わせて、板面の全体形状を構成すると共に、第一領域Mを上方に突出させる一方、第二領域Nを下方に凹陥せしめるか、或は、第一及び第二領域M,Nのうちの何れか一方又は両方を、上方に突出又は下方に凹陥せしめることにより、板面全体に凹凸形状が形成されるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凹凸部を有する板材並びにそれを用いた車両パネル及び積層構造体に係り、特に、凹凸部の形成によって剛性が著しく高められた板材と、そのような板材を用いて得られる、剛性やエネルギ吸収性等の特性に優れた積層構造体及び車両パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車においては、その軽量化を目的として、鋼板等によって構成されている部品の材料を、アルミニウム合金板等の軽量な材料に置き換えることが検討され、また実用化も為されている。尤も、そのような部品の軽量化の前提として、かかる部品に要求される剛性を確保することが必要であることは、言うまでもないところである。
【0003】
ところで、これまで、板材の板厚を厚くすることなく、その剛性を向上させるために、板材に波板形状や凹凸模様を設けることによって、形状的に、剛性を向上させることが検討されてきている。例えば、特許文献1においては、自動車部品の一つであるヒートインシュレーターという、板材よりなる部品の材料として、板厚を厚くすることなく、等方的な剛性を確保するために、エンボス成形による多数の凸部を形成してなるものが、提案されている。また、そのようなヒートインシュレーターに限らず、様々な用途において、エンボス成形等の凹凸部を形成することによって、剛性を向上させた各種の板材が、特許文献2〜6等において、提案されている。
【0004】
そこにおいて、特許文献1等の様に、多数の凹凸部を形成した板材は、凹凸部のないものよりも、2倍程度、剛性が高くなることは事実であり、それによって20%程度の軽量化を図り得ることも事実である。また、板材に波板形状を形成した板材の剛性には方向性があり、一方向においては剛性が向上するものの、その他の方向においては所望の剛性向上効果が得られない場合がある。このように、板厚を厚くすることなく、剛性を向上するのに最適な凹凸部の形状が、如何なるものであるかについては、未だ十分に解明されているとは言い難い。しかも、板材における剛性向上効果をこれまで以上に高くすることは、常に要求されていることである。また、自動車に限らず、様々な機械装置等において、板材からなる部分を少しでも軽量化する要求が存在しているのであり、更には、そのような軽量化の必要性以外にも、材料費削減の効果も、期待されているのである。また、板材(板形状を有する材料)であれば、材質を問わず、剛性向上の要求は存在している。
【0005】
また、そのような剛性向上効果の高い凹凸部を有する板材を用いて、それを一つの構成部材とした積層構造体や、剛性向上効果の高い凹凸部を有する板材をインナパネルやアウタパネルとして用いてなる車両パネルについても、従来以上の高剛性なものとすることも求められている。
【0006】
このため、本発明者は、先に、非特許文献1において、板面にH形状のパターンが繰り返し形成されるように、凹凸部を形成してなるシェル構造によって、任意の方向の曲げ剛性が元の平板の10倍を超える剛性を有する高剛性な板材が実現され得て、軽量化率を50%以上に高めることが出来ることを明らかにした。しかしながら、本発明者の更なる検討によれば、そのようなシェル構造の板材は、その曲げ剛性の向上効果に比べて、面剛性において今一つ十分でなく、また曲げ剛性にあっても、その用途に応じて、更に高い剛性が要求される場合にあっては、その要求に十分に応え得るものではないことが明らかとなったのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許4388558号公報
【特許文献2】特許3332353号公報
【特許文献3】特開平9−254955号公報
【特許文献4】特開2000−288643号公報
【特許文献5】特開2002−307117号公報
【特許文献6】特開2002−321018号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】日本機械学会第20回設計工学・システム部門講演会アブストラ クト集第26頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、凹凸部を設けることによって剛性を向上させた板材において、その剛性向上効果をより一層効果的に高めて、軽量化を更に有利に図り得る、凹凸部パターンを有する板材を提供することにあり、また、そのような板材を用いた有用な車両パネルや積層構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そして、本発明は、上記した課題または明細書全体の記載や図面から把握される課題を解決するために、以下に列挙せる如き各種の態様において、好適に実施され得るものであるが、また、以下に記載の各態様は、任意の組み合わせにおいても、採用可能である。なお、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに何等限定されることなく、明細書全体の記載並びに図面に開示の発明思想に基づいて認識され得るものであることが、理解されるべきである。
【0011】
(1) 仮想の正方形の多数が縦横に組み合わされて、板面が構成されていると共に、該板面に凹凸形状が形成されてなる板材にして、
かかる正方形の一辺の長さ:Lを六等分してL=6aとして二次元直交座標系にて表したとき、A1点(a,6a)、A2点(a,3.5a〜4a)、A3点(3a,a)及びA4点(0,a)を順次つなぐ第一仕切線が、A1点とA2点の間及びA3点とA4点の間でそれぞれ直線とされ、またB1点(6a,5a)、B2点(3a,5a)、B3点(5a,2a〜2.5a)及びB4点(5a,0)を順次つなぐ第二仕切線が、B1点とB2点の間及びB3点とB4点との間でそれぞれ直線とされて、それら第一及び第二仕切線にて、前記正方形が三つの部分に仕切られてなり、且つ該第一仕切線における前記A2点とA3点とをつなぐ連結線と該第二仕切線における前記B2点とB3点とをつなぐ連結線とが、前記正方形の対角の角部(0,6a)、(6a,0)をつなぐ対角線から離隔して、該対角線の中点に関して回転対称に位置するように構成されて、該第一及び第二仕切線よりも、それぞれ外側の正方形部分にて構成される第一領域と、それら第一及び第二仕切線の間の正方形部分にて構成される背面視Z型の第二領域とが形成されてなる仮想の基本形状Aと、
前記第一領域と前記Z型の第二領域とが、該基本形状Aに対して線対称に配置されてなる仮想の基本形状Bと、
該基本形状Bを90°回転させてなる形態において、前記第一及び第二仕切線の間の正方形部分にてZ型の第一領域を構成すると共に、それら第一及び第二仕切線よりもそれぞれ外側の正方形部分にて第二領域を構成してなる仮想の基本形状Cと、
該基本形状Cに対して線対称に配置されてなる前記Z型の第一領域及び第二領域を有する仮想の基本形状Dと、
からなる四つの基本形状のうちの複数を、それぞれの基本形状の周縁部に位置する第一領域と第二領域とが相互に一致するように対応する周縁部で突き合わせた形態において、縦方向及び横方向に組み合わせて、板面の全体形状を構成すると共に、
前記各基本形状における第一仕切線及び第二仕切線を、互いに平行な上下三つの仮想の基準面のうち中間に位置する第一の基準面に配置せしめて、前記各基本形状における第一領域を、該第一の基準面よりも上方に位置する第二の基準面にその頂部が位置した形態において、上方に突出させる一方、前記各基本形状における第二領域を、該第一の基準面よりも下方に位置する第三の基準面にその底部が位置した形態において、下方に凹陥せしめるか、或は、
前記各基本形状における第一仕切線及び第二仕切線を、互いに平行な上下二つの仮想の基準面のうちの何れか一方に配置せしめる一方、前記各基本形状における第一領域及び第二領域のうちの何れか一方又は両方を、他方の基準面に、その頂部又は底部が位置した形態において、上方に突出又は下方に凹陥せしめることにより、
板面全体に凹凸形状が形成されていることを特徴とする凹凸部を有する板材。
(2) 前記A2点とA3点とをつなぐ連結線及び前記B2点とB3点とをつなぐ連結線が、直線又は曲線にて構成されていることを特徴とする前記態様(1)に記載の凹凸部を有する板材。
(3) 前記頂部及び/又は前記底部が、それぞれの位置せしめられる基準面において平坦面を有していることを特徴とする前記態様(1)又は(2)に記載の凹凸部を有する板材。
(4) 前記基本形状A〜Dの全てを用いて、前記板材の板面が構成されている前記態様(1)乃至前記態様(3)の何れか1つに記載の凹凸部を有する板材。
(5) 前記基本形状A〜Dのうちの三つを用いて、前記板材の板面が構成されている前記態様(1)乃至前記態様(3)の何れか1つに記載の凹凸部を有する板材。
(6) 前記基本形状A〜Dのうちの二つを用いて、前記板材の板面が構成されている前記態様(1)乃至前記態様(3)の何れか1つに記載の凹凸部を有する板材。
(7) 前記第一領域及び/又は前記第二領域の前記上方に突出又は下方に凹陥せしめられた部位の側面の傾斜角度が、10°〜90°の範囲内にある前記態様(1)乃至(6)の何れか1つに記載の凹凸部を有する板材。
(8) 前記板材が、金属板をプレス成形することによって前記凹凸形状を形成したものである前記態様(1)乃至(7)の何れか1つに記載の凹凸部を有する板材。
(9) 前記金属板のプレス成形前の板厚が、0.03mm〜6.00mmである前記態様(8)に記載の凹凸部を有する板材。
(10) 前記正方形の一辺の長さ:L(mm)と前記プレス成形前の金属板の板厚:t(mm)との比:L/tが、10〜2000である前記態様(8)又は(9)に記載の凹凸部を有する板材。
(11) 隣接する前記基準面間の距離:H(mm)と、前記プレス成形前の金属板の板厚:t(mm)と、前記第一領域及び/又は前記第二領域の前記上方に突出又は下方に凹陥せしめられた部位の側面の最も大きな傾斜角度:θ(°)とが、次式:
1≦H/t≦−3θ+272
の関係を満たしている前記態様(8)乃至(10)の何れか1つに記載の凹凸部を有する板材。
(12) 複数枚の板材を積層してなる積層構造体であって、該板材の少なくとも1枚は、前記態様(1)乃至(11)の何れか1項に記載の凹凸部を有する板材であることを特徴とする積層構造体。
(13) アウタパネルと、該アウタパネルの裏面に接合されたインナパネルとを有する車両パネルであって、該インナパネル及び/又は該アウタパネルが、前記態様(1)乃至(11)の何れか1項に記載の凹凸部を有する板材にて構成されていることを特徴とする車両パネル。
【発明の効果】
【0012】
このように、本発明に従う凹凸部を有する板材にあっては、第一領域と第二領域の凹凸形状によって、異なるZ型パターンを呈する基本形状A〜Dの四つのうちの複数を、組み合わせて、上下左右に連続的に配置してなる形態において、板面に凹凸パターンが形成されることとなるのであり、これによって、剛性の向上、振動抑制及び音の反響抑制等の特性においてより一層優れた板材が実現され得たのである。
【0013】
特に、そのような基本形状におけるZ型パターンの採用にて、板面全体においてZ型の凹凸形状が組み合わされて配列せしめられていることによって、異方性が小さい高い曲げ剛性特性を確保しつつ、板材の面剛性をも、著しく高め得たのであり、以て有効な剛性向上効果を効果的に発揮せしめて、板材の軽量化を有利に図り得たのである。
【0014】
このように、本発明によれば、従来の凹凸部を有する板材よりも、より一層の軽量化を図りつつ、剛性向上の効果が著しく高く、またエネルギ吸収特性等にも優れた、凹凸部パターンを有する板材を、有利に得ることが出来るのである。
【0015】
なお、本発明に従って、上記の如き剛性に優れた凹凸部を有する板材を、積層構造体の一部として用いることによって、非常に剛性が高く、エネルギ吸収特性に優れた積層構造体を容易に得ることが出来る利点がある。
【0016】
また、本発明に従って、上記の如き剛性の高い凹凸部を有する板材を、車両パネルにおけるインナパネル及び/又はアウタパネルとして用いることによって、非常に剛性が高く、エネルギ吸収特性に優れた車両パネルを容易に得ることも可能となるのである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明における仮想の基本形状Aの一例において、第一仕切線及び第二仕切線の配置形態を示す平面説明図である。
【図2】基本形状Aを仕切る第一仕切線及び第二仕切線における、A2点とA3点の連結線及びB2点とB3点の連結線の別の形態を示す、図1に対応する図である。
【図3】本発明に係る4つの仮想の基本形状の一例を示す平面説明図であって、(a)は基本形状A、(b)は基本形状B、(c)は基本形状C、及び(d)は基本形状Dを、それぞれ示している。
【図4】本発明において用いられる仮想の基本形状Aの一例を示す説明図であって、(a)は、かかる基本形状Aにおける第一領域及び第二領域のパターンの一例を示す平面説明図であり、(b)は、凹凸形状を形成して為る基本形状Aの平面説明図であり、(c)は、そのような基本形状Aの斜視説明図である。
【図5】図4(b)におけるIV−IV断面部分説明図である。
【図6】本発明において用いられる仮想の基本形状Bの一例を示す説明図であって、(a)は、かかる基本形状Bにおける第一領域及び第二領域のパターンの一例を示す平面説明図であり、(b)は、凹凸形状を形成して為る基本形状Bの平面説明図であり、(c)は、そのような基本形状Bの斜視説明図である。
【図7】本発明において用いられる仮想の基本形状Cの一例を示す説明図であって、(a)は、かかる基本形状Cにおける第一領域及び第二領域のパターンの一例を示す平面説明図であり、(b)は、凹凸形状を形成して為る基本形状Cの平面説明図であり、(c)は、そのような基本形状Cの斜視説明図である。
【図8】図7(b)における、VII−VII断面部分説明図である。
【図9】本発明において用いられる仮想の基本形状Dの一例を示す説明図であって、(a)は、かかる基本形状Dにおける第一領域及び第二領域のパターンの一例を示す平面説明図であり、(b)は、凹凸形状を形成して為る基本形状Dの平面説明図であり、(c)は、そのような基本形状Dの斜視説明図である。
【図10】仮想の基本形状Aにおいて凹凸形状の異なる例を示す説明図であって、(a)は、基本形状Aにおいて、第二領域Nを下方に凹陥させずに平坦な形状の底部として構成した例を示す図4(b)に対応する説明図であり、(b)は、基本形状Bにおいて、第二領域Nが平坦な形態とされた図6(b)に対応する平面説明図であり、(c)は、図10(a)及び(b)におけるX−X断面部分説明図である。
【図11】図10と同様に、第二領域Nを凹陥せしめない仮想の基本形状の他の例を示す説明図であって、(a)は、基本形状Cに係る図7(b)に対応する平面説明図であり、(b)は、基本形状Dについての図9(b)に対応する平面説明図であり、(c)は、図11(a)及び(b)におけるXI−XI断面部分説明図である。
【図12】仮想の基本形状A〜Dにおける第一領域Mと第二領域Nとが共に同じ方向に突出又は凹陥せしめられてなる形態を示す、図5に対応する断面説明図である。
【図13】配置例1に係る第一領域Mと第二領域Nの配設パターンにて構成される板面の全体を示す平面説明図である。
【図14】配置例1に係る凹凸部を有する板材の説明図であって、(a)は、その凹凸形態を示す平面説明図であり、(b)は、その斜視説明図である。
【図15】配置例2に係る凹凸部を有する板材の説明図であって、(a)は、第一領域Mと第二領域Nの配置パターンを示す板面全体の平面説明図であり、(b)は、そのような板材の凹凸形状を示す平面説明図である。
【図16】配置例3に係る凹凸部を有する板材の説明図であって、(a)は、第一領域Mと第二領域Nからなる配置パターンを有する板面全体の平面説明図であり、(b)は、そのような板材の凹凸形状を示す平面説明図である。
【図17】配置例3において求められた荷重−変位線図である。
【図18】配置例3に係る配置パターンを有する板材における凹凸形態の異なる例を示す説明図であって、(a)は、第一領域Mのみを上方に突出させてなる凹凸形状を示す平面説明図であり、(b)は、第二領域Nのみを下方に凹陥せしめてなる構造の凹凸形状を示す平面説明図である。
【図19】配置例3に係る配置パターンを有する板材において、第一領域M及び第二領域Nを共に上方に突出せしめてなる形態における、板面の凹凸形状を示す平面説明図である。
【図20】配置例4に係る凹凸部を有する板材の板面全体の説明図であって、(a)は、第一領域M及び第二領域Nにて構成されるパターンの板面全体を示す平面説明図であり、(b)は、その凹凸形状を示す平面説明図である。
【図21】配置例5に係る凹凸部を有する板材において、その第一領域M及び第二領域Nにて構成される板面パターンを示す平面説明図である。
【図22】配置例6に係る凹凸部を有する板材において、その第一領域M及び第二領域Nにて構成される板面パターンを示す平面説明図である。
【図23】配置例7に係る凹凸部を有する板材において、その第一領域M及び第二領域Nにて構成される板面パターンを示す平面説明図である。
【図24】配置例8に係る凹凸部を有する板材において、その第一領域M及び第二領域Nにて構成される板面パターンを示す平面説明図である。
【図25】配置例9に係る凹凸部を有する板材において、その第一領域M及び第二領域Nにて構成される板面パターンを示す平面説明図である。
【図26】配置例10に係る凹凸部を有する板材において、その第一領域M及び第二領域Nにて構成される板面パターンを示す平面説明図である。
【図27】凹凸部を有する円筒材を示す説明図である。
【図28】積層構造体の一例を示す分解説明図である。
【図29】車両パネルの一例を示す分解説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の構成について、図面を参照しつつ、詳細に説明することとする。
【0019】
先ず、図1には、本発明に従う凹凸部を有する板材において、それを構成する仮想の基本形状(基本ユニット)のベースとなる基本形状Aの一例が、第一仕切線及び第二仕切線の配設パターンと共に、平面形態において示されている。また、そこにおいて、仮想の基本形状Aは正方形を呈し、それが、第一仕切線Xと第二仕切線Yにて三つの部分に仕切られている。そして、第一仕切線X及び第二仕切線Yよりも、それぞれ外側の正方形部分、換言すれば、第一仕切線Xと正方形の外形線にて囲まれる部分と、第二仕切線Yと正方形の外形線にて囲まれる部分とから、第一領域Mが構成されている一方、それら第一仕切線Xと第二仕切線Yとの間の正方形部分にて、背面視においてZ型の第二領域Nが、構成されている。なお、ここで、Z型とは、Z字形状が回転したり、反転したりして、N字形状や角ばったS字形状に見えるものも含むものとする。
【0020】
具体的には、かかる基本形状Aを仕切る第一仕切線X及び第二仕切線Yは、それぞれ、A1点〜A4点及びB1点〜B4点を順次つなぐことによって得られるものである。そこにおいて、第一仕切線Xを与えるA1点、A2点、A3点及びA4点は、かかる正方形の一辺の長さ:Lを六等分して、L=6aとして二次元直交座標系にて表したとき、それぞれ(a,6a)、(a,3.5a〜4a)、(3a,a)及び(0,a)にて表示されるものであり、そこでは、A1点とA2点の間及びA3点とA4点の間が、それぞれ直線的に接続されてなる形態とされている。また、第二仕切線Yについても、それを与えるB1点、B2点、B3点及びB4点は、それぞれ、上記と同様な二次元直交座標系にて表すと、(6a,5a)、(3a,5a)、(5a,2a〜2.5a)及び(5a,0)にて示されるものであって、そこでは、B1点とB2点の間及びB3点とB4点との間が、それぞれ、直線的に接続せしめられてなる形態とされている。更に、第一仕切線Xにおける、A2点(a,3.5a〜4a)とA3点(3a,a)とをつなぐ連結線CXと、第二仕切線Yにおける、B2点(3a,5a)とB3点(5a,2a〜2.5a)とをつなぐ連結線CYとが、実質的に傾斜した直線の形態において、正方形の対角の角部(0,6a)、(6a,0)をつなぐ対角線Tから離隔して、この対角線Tの中点Oに関して回転対称に位置するように、換言すれば、対角線Tの中点Oを回転中心として180°回転した形態となるように、構成されている。ここで、A2点とB3点は、それぞれ、図1において上下方向に0.5aの距離において移動可能であり、そのように移動させても、本発明の目的は充分に達成可能である。
【0021】
なお、それら二つの連結線CX、CYの、対角線Tからの距離としては、それら二つの連結線CX、CYの間の最短距離が、基本形状Aを与える正方形の一辺の長さの1/6以上、即ちa以上となるように、設定されていることが望ましい(図1では、2a程度の間隔において設けられている)。また、それら二つの連結線CX、CYの間隔を十分に確保することによって、第一領域Mや第二領域Nを上方に突出又は下方に凹陥せしめるのに適した形状となり、そうすることによって、本発明に従う作用・効果がより一層有利に発揮せしめられ得ることとなる。更に、図1におけるA2点とA3点とをつなぐ連結線CXやB2点とB3点とをつなぐ連結線CYは、正方形の各辺に対して所定の角度をもって傾斜する直線(斜線)にて、実質的に構成されているが、それら二つの連結線CX、CYは、対角線Tから離隔した形態において、折れ線形状の如き線分として構成されたり、また図2に示される如く、曲線形態の線分として構成され得る等、公知の各種形態の線分にて構成することが可能である。
【0022】
そして、本発明にあっては、かかる基本形状Aと共に、それから派生した三つの基本形状、即ち、図1に示される基本形状Aに対しては、図3における(b)、(c)及び(d)にそれぞれ示される仮想の基本形状B、C及びDが、適宜に組み合わされて、用いられることとなる。具体的には、図3における(a)は、図1に示される基本形状Aに相当するものであり、また(b)は、(a)に示される基本形状Aに対して、例えば正方形の四つの辺のうちの一辺に関して線対称の形態を有する基本形状Bを示すものであって、第一領域MとZ型の第二領域Nとが、基本形状Aとは左右対称な形態において、配置されてなる構造を有している。また、図3の(c)に示される基本形状Cは、(b)に示される基本形状Bを、例えば正方形の角部の一つを回転中心として、90°回転させてなる形態において、かかる基本形状Bとは、第一領域Mと第二領域Nの配設形態が互いに逆となったパターンを有している。即ち、第一仕切線Xと第二仕切線Yとの間の正方形部分にて、Z型の第一領域Mが構成されると共に、それら第一及び第二仕切線X、Yよりも、それぞれ外側の正方形部分にて、二つの第二領域Nが構成されているのである。更に、図3の(d)に示される基本形状Dは、かかる(c)に示される基本形状Cに対して、例えば正方形の四つの辺のうちの一辺に関して線対称に配置されてなる、Z型の第一領域Mと二つの第二領域Nとを有している。即ち、基本形状Dは、基本形状Cに対して、背面視でZ型の第一領域Mと二つの第二領域Nとを、左右対称な形態において有しているのである。なお、図3に示される四つの仮想の基本形状A〜Dにおいては、それらを立体形状とした場合に、同じ方向に突出乃至凹陥させられる領域を明確にするために、白色領域と灰色領域とに塗り分けられており、そこでは、第一領域Mが白色領域とされる一方、第二領域Nが灰色領域として示されている。
【0023】
また、本発明では、それら四つの仮想の基本形状A〜Dにおいて、そのうちの複数を、それぞれの基本形状の周縁部に位置する第一領域Mと第二領域Nとが相互に一致するように、対応する周縁部で突き合わせた形態において、縦方向及び横方向に順次組み合わせることにより、目的とする板材の板面の全体形状が構成されるのであるが、そのような板材の板面に凹凸部を形成するために、それら四つの基本形状A〜Dは、それぞれ、上方に凸及び/又は下方に凹なる形態の立体形状において、形成されることとなる。
【0024】
具体的には、図1や図3(a)に示される基本形状Aは、例えば、図4に示されるように、上下に凹凸した立体形状とされているのである。そこにおいて、(a)は、図3(a)に相当するものであって、そこでは、白色領域とされた第一領域Mが上方に(紙面に対して)所定高さで突出せしめられる一方、灰色領域とされた第二領域が下方に(紙面に対して垂直方向下方に)所定深さに凹陥せしめられて、図4(b)及び(c)に示される如き、凹凸形態を呈する立体形状とされているのである。そして、そのような立体形状においては、図4(b)におけるIV−IV断面の一部の形態を明らかにする図5に示される如く、互いに平行な上下3つの仮想の基準面K1〜K3のうち、中間に位置する第一の基準面K1に、基本形状Aにおける第一仕切線X及び第二仕切線Yを配置せしめると共に、白色の第一領域Mを、かかる第一の基準面K1よりも上方にH1の距離に位置する第二の基準面K2に、その頂部12が位置した形態において、上方に突出させられており、また、灰色の第二領域Nが、第一の基準面K1よりも下方にH2の距離に位置する第三の基準面K3に、その底部14が位置した形態において、下方に凹陥せしめられてなる形状とされているのである。なお、そのような第一領域Mの上方への突出により、第一の基準面K1から第二の基準面K2に向かう傾斜面からなる側面を有する側壁16が、第一の基準面K1に対して、所定の傾斜角度:θ1(°)をもって、形成されることとなり、また、第二領域Nの下方への凹陥によって、第一の基準面のK1〜第三の基準面K3に向かう傾斜面からなる側面を有する側壁18が、第一の基準面K1に対して、所定の傾斜角度:θ2(°)をもって、形成されることとなる。
【0025】
また、図3(b)に示される基本形状Bにあっても、それは、上記した基本形状Aに対して線対称となる凹凸形態の立体形状において構成されており、図6に、その詳細が明らかにされている。そこにおいて、(a)は、図3(b)に対応し、その白色の第一領域Mが、基本形状Aと同様に、上方に突出せしめられる一方、灰色の第二領域Nが、下方に凹陥せしめられることによって、図6(b)及び(c)に示される如き凹凸形態の立体形状が形成されているのである。そして、そのような基本形状Bにおける図6(b)のVI−VI断面の部分形態は、図5と同様な断面構造とされ、第一領域Mには、頂部12が第二の基準面K2上に位置するように形成されている一方、第二領域Nには、底部14が第三の基準面K3上に位置するように形成されている。
【0026】
さらに、図3の(c)に示される基本形状Cにあっては、その第一領域M及び第二領域Nは、上記した基本形状Bにおける第一領域M及び第二領域Nとは逆の形態において、設定されている。従って、かかる基本形状Cにおいては、Z型の第一領域Mが、横向きに位置して、上方に突出せしめられる一方、二つの第二領域Nが下方に凹陥せしめられてなる形状とされているのであり、その概略が、図7に示されている。そこにおいて、(a)は、図3(c)に対応するものであって、そのような基本形状Cが、上述した基本形状Bとは、その凹凸形状を反転せしめた形態において、(b)及び(c)に示される如き凹凸構造とされているのである。そこでは、(b)のVII−VII断面の一部を示す図8から明らかな如く、白色の第一領域Mが、第一の基準面K1から上方にH1の距離に突出せしめられて、その頂部12が第二の基準面K2上に位置するように構成されている一方、灰色の第二領域Nが、第一の基準面K1から下方にH2の距離に凹陥せしめられて、その底部14が第三の基準面K3上に位置するように、構成されている。
【0027】
加えて、図3の(d)に示される基本形状Dにおいては、上記した基本形状Cとは線対称の形態において、凹凸形状が設けられており、その概略が、図9に示されている。そこにおいて、(a)は、図3(d)に対応するものであって、その背面視においてZ型を呈する白色の第一領域Mが上方に突出せしめられる一方、灰色の第二領域Nが下方に凹陥させられることによって、(b)及び(c)に示される如き凹凸形態の立体形状とされているのである。そして、その(b)におけるIX−IX断面形状は、先の図8の断面形状と同様であって、頂部12が第二の基準面K2上に位置するように、第一領域Mが上方に突出せしめられて、所定の傾斜角度:θ1(°)を有する側面を与える側壁16が形成されている一方、第二領域Nが下方に凹陥せしめられて、底部14が所定の傾斜角度:θ2(°)を有する側面を与える側壁18をもって、形成されている。
【0028】
なお、図4〜図9に例示の仮想の基本形状A〜Dにおいては、何れも、その第一領域Mが上方に突出せしめられて、頂部12を形成している一方、第二領域Nが下方に凹陥せしめられて、底部14を形成してなる凹凸構造とされているが、それら第一領域M及び第二領域Nのうち何れか一方を、上方に突出或いは下方に凹陥せしめて、凹凸構造を形成することも可能である。即ち、基本形状A〜Dにおける第一仕切線X及び第二仕切線Yを、互いに平行な上下二つの仮想の基準面K1、K2の一方に配置せしめる一方、基本形状A〜Dにおける第一領域M及び第二領域Nのうちの何れか一方を、他方の基準面に、その頂部又は底部が位置した形態において、上方に突出又は下方に凹陥せしめることにより、凹凸構造が形成されるのであって、その一例が、図10及び図11に示されている。
【0029】
それら図10及び図11においては、基本形状A〜Dにおいて、その第一領域Mのみが上方に突出せしめられて、頂部12が形成されており、第二領域Nは、平坦な形態の底部14として、構成されている。具体的には、基本形状Aを示す図10(a)は、図4(b)に対応するものであって、そこでは、第二領域Nに相当する大きさの平坦な底部14が形成されており、また、基本形状Bを示す図10(b)は、図6(b)に対応するものであって、そこにおいても、第二領域Nと同じ大きさにおいて、平坦な底部14が形成されている。そして、図10(c)は、それら(a)及び(b)におけるX−X断面の一部を示す、図5に対応する説明図であって、そこでは、第一の基準面K1上に底部14が配置されている一方、かかる第一の基準面K1から所定高さ:H1の位置にある第二の基準面K2上に頂部12が位置せしめられているのである。なお、傾斜した側壁16は、図8と同様に、基準面K1に対して所定の角度:θ1(°)をもって形成されている。
【0030】
また、基本形状Cを示す図11(a)は、図7(b)に対応するものであって、そこでは、第一領域Mのみが上方に突出せしめられて、頂部12を形成している一方、第二領域Nに相当する大きさの平坦な底部14が形成されており、更に、基本形状Dを示す図11(b)は、図9(b)に対応するものであって、そこでも、第一領域Mのみが上方に突出せしめられて、頂部12を形成している一方、第二領域Nに等しい大きさの平坦な底部14が形成されてなる構造とされている。そして、それら図11(a)及び(b)におけるXI−XI断面を部分的に示す図11(c)は、図8に相当するものである。この図11(c)の断面形状は、先の図10(c)の断面形状と同様であるので、同様な部分には同一の符号を付して、詳細な説明は省略する。
【0031】
さらに、図10及び図11に示される基本形状A〜Dにおいては、それぞれ第一の領域Mが上方に凸なる形状とされる一方、第二領域Nが平坦面とされてなる、凹凸形状とされているが、これとは逆に、第一領域を平坦な形状とする一方、第二領域Nを上方に凸なる形状としたり、或いはそれら基本形状A〜Dの第一領域Mのみ又は第二領域Nのみを下方に凹陥せしめたりすることも可能であり、更には、基本形状A〜Dの仕切線X、Yを一つの基準面に位置せしめる一方、そのような基準面とは平行な他の基準面に対して、第一領域M及び第二領域Nを共に突出せしめたり、或いは凹陥せしめたりしてなる形態の、凹凸形状とすることも可能である。なお、図12には、第一の領域Mと第二の領域Nとを共に上方に突出せしめて、それぞれ、頂部12を形成せしめてなる凹凸構造が、部分断面図の形態において示されている。かかる図12においては、第一仕切線X及び第二仕切線Yを第一の基準面K1上に位置せしめた状態において、第一領域Mと第二領域Nとが、それぞれ、所定の傾斜角度:θ1、θ2の側壁16、18を形成しつつ、上方に突出せしめられて、それらの頂部に12(14)が、第一の基準面K1から所定高さH1の位置にある第二の基準面K2上に位置せしめられてなる形態とされている。
【0032】
なお、かかる基本形状A〜Dの凹凸形状に関して、図3〜図12に例示の実施形態においては、上方に突出せしめられる第一領域Mの頂部12や下方に凹陥せしめられる第二領域Nの底部14は、何れも、それぞれの位置する基準面において平坦面を有する構造とされているが、それら頂部12や底部14のうちの何れか一方又は両方を、そのような平坦面を有しない角部構造(図12における基準面K1上に位置する角部と同様な構造)とすることも可能である。
【0033】
また、そのような基本形状A〜Dにおいて、正方形等の仮想の形状は、何れも、幾何学上の概念にとどまらず、一般的に指定された正方形等の形状と認識できる形状を含むものであり、各辺が若干曲線となったり、角部や面に成形上において必要な丸み等が生じる、所謂フィレットと言われる曲面を設けたりすることも、当然に許容されるものであることが理解されるべきである。更に、各基本形状A〜Dに形成される凹凸形状において、その凹凸の角部が平面と平面とが交わる角部のみならず、湾曲形状で平面と平面とが接続されてなる角部とされていても、何等差し支えない。加えて、基本形状A〜Dをそれぞれ仕切る仕切線X、Yを規定する、aにて表わされる座標位置は、かかるaを正方形の長さ(L)の1/6の正確な値にて設定されるのみならず、本発明の目的が達成され得る範囲内において、或る程度の変動を許容することが出来る。
【0034】
さらに、それぞれの基本形状A〜Dにおいて、その第一領域M及び第二領域Nを、それぞれ、上方に突出せしめたり、下方に凹陥せしめる際に生ずる側壁16、18の、第一の基準面K1に対する傾斜角度θ1、θ2は、それぞれ、10°〜90°の範囲にあることが望ましく、そうすることによって、目的とする凹凸部を有する板材の成形性を確保しつつ、その優れた剛性向上効果を発揮する凹凸部形状を有利に得ることが出来る。
【0035】
なお、かかる側壁16の傾斜角度θ1や側壁18の傾斜角度θ2が10°未満となると、第一領域Mの突出高さや第二領域Nの凹陥深さを大きくすることが難しくなり、剛性向上効果が低下するようになる。また、それらの傾斜角度θ1、θ2が90°を超えるようになると、凹凸部の形成が困難となる。
【0036】
特に、金属板をプレス成形して、仮想の基本形状A〜Dに対応する凹凸部を形成する上において、それらの傾斜角度θ1、θ2は、何れも、成形性の問題から、70°以下とすることが望ましく、従って、それら傾斜角度θ1、θ2の好ましい範囲は、10°〜70°であると言うことが出来る。更に、基本形状A〜Dの各々における凹凸部のパターンを形成するために、第一領域M及び第二領域Nに対応して、複数の側壁16及び側壁18が形成されることとなるが、それら複数の側壁16、18が全て同じ傾斜角度である必要はなく、部位によって、傾斜角度を変えることも可能であり、また、角度が2段以上に変化してもよいが、その際、それらの傾斜角度は、何れも、上記した望ましい傾斜角度の範囲内とされることとなる。
【0037】
そして、かくの如き凹凸形態を有する四つの基本形状A〜Dが、それぞれの仮想の正方形の各辺(周縁部)における白色の第一領域Mと灰色の第二領域Nとが連続して接するように、それら四つの基本形状A〜Dのうちの全部又は三つ又は二つが適宜に組み合わされることとなるが、それら四つの基本形状A〜Dにおける第一領域M及び第二領域Nの配設パターンに従って、それら基本形状A〜Dの組み合わせは、自ずから制約されることとなるのである。即ち、基本形状Aに対しては、その上下左右に、基本形状B又は基本形状Cが配置され得、また基本形状Bに対しては、その上下左右に、基本形状A又は基本形状Dが配置せしめられ得るのである。更に、基本形状Cに対しては、その上下左右に、基本形状A又は基本形状Dが配置され得、そして基本形状Dに対しては、その上下左右に、基本形状B又は基本形状Cが配置され得るのである。そして、そのような配置形態において、基本形状A〜Dの複数を組み合わせることにより、板面全体に凹凸形状が形成されてなる、目的とする凹凸部を有する板材が構成されるのである。
【0038】
例えば、組み合わされる基本形状の対応する周縁部(辺)における、第一領域Mと第二領域Nの形(長さ)が相互に一致するようにして、四つの基本形状A、B、C及びDをランダムに配置することにより、下記表1に示される如き、基本形状A〜Dの配置パターンをもって、凹凸部を有する板材が得られることとなるのである。また、そのような配置パターンにて構成される凹凸部を有する板材は、図13に示される如く、凸状の第一領域Mと凹状の第二領域Nとが組み合わされて、複雑な平面模様を呈するものとなるのであり、更に、図14(a)及び(b)に示される如き、立体形状を有しているのである。
【0039】
【表1】

【0040】
ところで、かくの如き仮想の基本形状A〜Dの複数を組み合わせて得られる、本発明に従う凹凸部を有する板材は、一般に、所定の金属板をプレス成形することによって、基本形状A〜Dに対応した凹凸形状を形成することにより、有利に製造されることとなる。金属板には、エンボス成形等のプレス成形によって、或いは、ロール成形等の塑性加工によって、容易に凹凸部を形成することが出来るところから、前記した基本形状A〜Dにおける、所定の凹凸部形状を形成する上において、金属板が有利に用いられることとなるのである。そして、そのような金属板の材質としては、アルミニウム若しくはその合金、鋼、銅若しくはその合金等の、塑性加工が可能な公知の各種のものを、採用することが可能である。
【0041】
なお、本発明に従う凹凸部形状の形成手法としては、上記したプレス成形や塑性加工の他、鋳造や切削等によって、目的とする凹凸部形状を形成することも可能である。また、そのような凹凸部の形成される板材の材質としても、金属以外の、樹脂等の他の材質とすることも可能である。特に、樹脂材料を用いれば、射出成形或いはホットプレス等の成形手法によって、容易に凹凸部を形成することが可能となる。樹脂材料を用いた場合においては、金属材料の場合よりも成形上の制約を受け難く、設計の自由度もより広くなる利点がある。また、金属と樹脂とを積層したものであっても、複合材であっても、何等差支えない。
【0042】
また、本発明に従う凹凸部を有する板材の製造に際して用いられる金属板は、そのプレス成形前の板厚t(mm)が0.03mm〜6.0mmであることが好ましい。なお、板厚が0.03mm未満の金属板や、板厚が6.0mmを超えるような金属板においては、それら金属板の用途において、剛性を向上させる必要性が少なくなるからである。
【0043】
さらに、本発明に従う凹凸部を有する板材において、それを構成すべく選択される仮想の基本形状A〜Dにおける、仮想の正方形の一辺の長さをL(mm)としたとき、上記プレス成形前の金属板の板厚:t(mm)との関係において、その比:L/tが10〜2000であることが好ましい。かかる比:L/tが10未満の場合には、成形が困難となるおそれがあるからであり、一方、かかる比:L/tが2000を超える場合には、十分な凹凸形状を形成することが困難となり、剛性の向上効果を十分に発揮し得なくなるおそれが生じる。
【0044】
また、基本形状A〜Dにおいて、それぞれの第一領域Mの上方への突出高さH1(mm)や、第二領域Nの下方への凹陥深さH2(mm)に相当する、隣接する基準面間の距離:H(mm)は、上記したプレス成形前の金属板の板厚:t(mm)と、かかる第一領域M及び/又は第二領域Nの上方に突出又は下方に凹陥せしめられた部位の、側壁16、18の最も大きな傾斜角度:θ(°)との関係において、次式:
1≦H/t≦−3θ+272
を満たしているように、凹凸形状が、それぞれの基本形状A〜Dに形成されることが望ましい。なお、かかる比:H/tの値が1未満となると、第一領域Mや第二領域Nにおける凹凸部の形成による剛性向上効果を、十分に得難くなるおそれがあるからであり、また、(−3θ+272)の値を超えるようになると、成形が困難となる問題を生じるおそれがあるからである。
【0045】
そして、かくの如くして得られた本発明に従う凹凸部を有する板材は、そのままでも、曲げ剛性の著しく高められたものであると共に、極めて高い面剛性を備えたものであるところから、軽量で高剛性の板材として、各種の用途に単独で用いられ得る他、積層構造体としても、有利に用いられることとなる。そのような積層構造体においては、本発明に従う凹凸部を有する板材を一枚のコア材として、その両側に1枚ずつの平坦な面板を配設して一体化せしめてなる、三層構造の積層体とすることが出来る。また、そのような三層の基本構造を繰り返した構造、つまり本発明に従う凹凸部を有する板材の複数枚を、その1枚毎に平坦な面板を介して積層一体化してなる、多層構造の積層体とすることも可能である。勿論、凹凸部を有する板材の複数枚を直接に積層して、コア材とし、その片側又は両側の面に、平坦な面板を接合してなる構造を採用することも可能であり、更に、凹凸部を有する板材の複数枚を直接積層して一体化しただけの状態の積層構造体とすることも可能である。なお、そのような凹凸部を有する板材の積層枚数としては、得られる積層体の用途や要求特性に応じて、適宜に変更することが出来る。
【0046】
また、本発明に従う凹凸部を有する板材を用いた車両パネルは、自動車のフードに限られることなく、ドア、ルーフ、フロア、トランクリッド等のパネル及びその補強部材や、バンパー、クラッシュボックス、ドアビーム等のエネルギ吸収部材等にも、好適に適用され得るものである。そして、アウタパネルと、そのアウタパネルの裏面に接合されたインナパネルとを有する車両パネルにおいては、かかるインナパネル及びアウタパネルの一方又は両方が、本発明に従う凹凸部を有する板材にて、構成されることとなるのである。なお、そこにおいて、アウタパネルやインナパネルの材質としては、鋼材質やアルミニウム合金材質等が用いられる。
【0047】
ここにおいて、先に説明した仮想の基本形状A〜Dの複数を組み合わせて、凹凸部を有する板材の板面を構成してなる各種の配置例を、以下に明らかにして、本発明の特徴を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような配置例によって、何等限定的に解釈されるものでないことは、言うまでもないところである。そして、本発明が、以下の配置例に限られることなく、本発明の趣旨を逸脱することなく、当業者の知識に基づいて、各種の配置形態において実施され得るものであり、そのような形態のものが、何れも、本発明の範疇に属するものであることが、理解されるべきである。
【0048】
なお、以下の配置例において採用する、基本形状A〜Dのベースとなる基本形状Aは、図1に示される如き、第一領域M及び第二領域Nの配置パターンを有するものであって、その仮想の正方形の一辺の長さ(L)を24mmとすると共に、かかる一辺の長さ(L)を六等分してなるaの値を4mmとし、更に、連結線CX及びCYの仮想の正方形の辺に対する傾斜角度を45°として、図1に示される如き、第一領域M及び第二領域Nのパターンを有するものが用いられた。また、A2点及びB3点の位置は、それぞれ、(4mm,14.4mm)及び(20mm,9.6mm)であり、更に連結線CX、CYにおける傾斜線分の長さ:11.3mm、上下方向の線分の長さ:2.4mmであった。そして、第一領域Mを上方に1.5mm突出させると共に、第二領域Nを下方に1.5mm凹陥させ、更に、それぞれの側壁(側面)16、18の傾斜角度を30°とする一方、凹凸部を形成した後の板材の板厚は、表面積の増加を考慮して、0.273mmとして、以下のFEM解析を行なった。更に、このような基本形状Aに対応した、図3(b)〜(d)に示される基本形状B、C及びDが、用いられることとなる。
【0049】
−配置例1−
基本形状A〜Dを、先の表1に示される如く、ランダムに配置すると、第一領域Mと第二領域Nの組み合わせにて形成される板面全体の配置パターンは、144mm×144mmの大きさにおいて、図13に示される如くなる。また、そうして得られる凹凸部を有する板材の平面形態は、図14(a)に示される如くなるのであり、更にその斜視図は、図14(b)に示される如くなる。
【0050】
そして、このような配置例1に係る凹凸部を有する板材について、その曲げ剛性を、FEM解析により、次のようにして評価した。即ち、図14(a)に示される板材の下端を固定する一方、上端の中央部に、1Nの荷重を加えた場合において、かかる板材に生じる変位を求め、それを曲げ剛性とした。更に、そのような変位を、0°方向の曲げ剛性として、144mm×144mm×0.3mmの平板の変位と比較して、剛性倍率を求めた。その結果、配置例1に係る凹凸部を有する板材の0°方向の曲げ剛性は、平板の16.59倍に向上することがわかった。
【0051】
また、図14(a)に示される凹凸部を有する板材の左端を固定する一方、その右端の中央部に、1Nの荷重を加えた場合に生じる変位を、90°方向の曲げ剛性として、それを、144mm×144mm×0.3mmの平板の変位と比較して、剛性倍率を求めた。その結果、配置例1に係る凹凸部を有する板材の90°方向の曲げ剛性は、板厚が0.3mmの平板に比べて18.56倍に向上することが明らかとなった。
【0052】
上記FEM解析の結果、本例に示す凹凸部を有する板材は、曲げ剛性向上効果が低い0°方向においても、平板に比べて16.59倍の剛性倍率Gを有し、軽量化率W(%)は少なくとも60%程度が見込まれる。なお、軽量化率W(%)は、剛性倍率Gを用いて、W=(1−1/3√G)×100の計算式より算出したものである。
【0053】
さらに、この配置例1に係る凹凸部を有する板材について、その面剛性を、円板におけるFEM解析により評価した。そこでは、半径120mmの円板形状の試料を用い、その外周縁部の上下方向の変位を固定する一方、円板の中心部に1Nの荷重を与えて、その変位を求めた。配置例1に係る凹凸部を有する板材(円板状試料)の変位と、板厚が0.3mmの平板からなる円板の変位とを比較したところ、配置例1に係る板材の面剛性は、27.08倍に向上することが明らかとなった。
【0054】
このように、配置例1に係る板材は、近似計算であるFEM解析の結果によっても、曲げ剛性と共に、面剛性においても、極めて優れた特性を発揮することが明らかとなった。
【0055】
−配置例2−
基本形状A〜Dのうち、基本形状Bと基本形状Dの二つを用い、下記表2に示される形態において規則的に配置すると、図15(a)及び(b)に示される、第一領域M及び第二領域Nの配設パターン及び凹凸パターンを有する板材が得られる。
【0056】
【表2】

【0057】
そして、こうして得られる配置例2に係る凹凸部を有する板材について、配置例1の場合と同様にして、FEM解析した結果、0°方向の曲げ剛性は、板厚が0.3mmの平板に対して15.74倍に向上し、また90°方向の曲げ剛性は、15.99倍に向上することが、明らかとなった。なお、ここで、配置例2に係る凹凸部を有する板材は、0°方向も90°方向も同じ形状となるのであるが、上記のFEM解析による剛性倍率の差は、固定端部の形状の違い等による誤差と考えられる。
【0058】
また、面剛性についてのFEM解析の結果においても、配置例2に係る凹凸部を有する板材は、板厚が0.3mmの平板に対して、面剛性が27.36倍と、大きく向上することが明らかとなった。
【0059】
−配置例3−
下記表3に示される如く、基本形状Dと基本形状Bとを横方向に規則的に配置してなる列と、基本形状Cと基本形状Aとを横方向に規則的に配置してなる列とを、縦方向(上下方向)に交互に配置せしめてなる形態を採用すると、板面における第一領域Mと第二領域Nの全体としての配設パターンや立体形状は、それぞれ、図16(a)及び(b)に示されるようになる。
【0060】
そして、この配置例3に係る凹凸部を有する板材について、先の配置例1の場合と同様にして、FEM解析した結果、0°方向の曲げ剛性は、板厚が0.3mmの平板に対して、20.91倍に向上し、また90°方向の曲げ剛性は、同様な平板に対して、15.19倍に向上することが明らかとなった。
【0061】
また、かかる配置例3に従って得られる凹凸部を有する板材の面剛性について、配置例1と同様にして、FEM解析した結果、その面剛性は、厚さが0.3mmの平板に対して、26.58倍に向上することが明らかとなった。
【0062】
【表3】

【0063】
さらに、板厚が0.3mmのアルミニウム合金板(JISA3004−O)を用いて、プレス成形操作によって、この配置例3に従う、図16に示される如き凹凸部を有する板材を製造し、そしてその凹凸部を有する板材について、3点曲げ試験(支持スパン80mm)を行ない、図17に示される如き荷重−変位線図を得た。なお、図17には、凹凸部を有する板材の0°方向及び90°方向における結果と共に、平板(0.3mm板厚)についての結果も示されているが、本発明に従う凹凸部を有する板材は、平板に比して、極めて大きな剛性を備えていることが認められる。また、かかる図17に示される荷重−変位線から、立ち上がり傾き(N/mm)を求めると、本発明に従う板材の0°方向では、33.77N/mm、90°方向では25.58N/mmとなり、平板の1.63N/mmに比較して、極めて大きな値となった。更に、図17の結果から、エネルギー吸収量が大幅に増加することも理解される。
【0064】
なお、このような配置例3において、その第一領域Mのみを上方に突出させ、第二領域Nはそのまま平坦な領域とした(下方に凹陥させたり、或いは上方に突出させたりしていない領域としている)板材は、図18(a)に示される如き立体形状を有するものとなるのであり、また、第一領域Mを平坦な領域とする一方、第二領域Nを上方に突出せしめると、図18(b)に示される如き立体形状を呈する板材となる。更に、それら第一領域M及び第二領域Nを、共に、上方に突出せしめると、図19に示される如き立体形状の板材が得られることとなる。このように、2つの基準面間において、その一方の基準面に第一仕切線X及び第二仕切線Yを、それぞれ位置せしめた形態において、他方の基準面に対して、第一領域M及び第二領域Nのうちの何れか一方又は両方を、頂部又は底部が位置するようにした形態において、上方に突出又は下方に凹陥せしめることによって、所定の凹凸部を有する板材を得ることも出来るのである。
【0065】
−配置例4−
基本形状A及び基本形状Bを用い、それらを、下記表4に示される形態において、規則的に配置すると、図20(a)及び(b)に示される如き、第一領域M及び第二領域Nの配設パターンや立体形状を有する板材を得ることが出来る。
【0066】
【表4】

【0067】
そして、そのような凹凸パターンを有する板材について、先の配置例1と同様にしてFEM解析すると、その0°方向の曲げ剛性は、板厚が0.3mmの平板の曲げ剛性の26.39倍に向上し、また90°方向の曲げ剛性も、そのような平板の9.84倍に向上することが明らかとなった。
【0068】
さらに、かかる配置例4の如き凹凸形状を有する板材の、面剛性についてのFEM解析により、そのような凹凸部を有する板材の面剛性は、板厚が0.3mmの平板の面剛性の26.89倍に向上することが明らかとなった。
【0069】
−配置例5−
下記表5に示されるように、基本形状D及び基本形状Bを規則的に配置してなる領域と基本形状A及び基本形状Cを規則的に配置せしめてなる領域とを、上下に組み合わせてなる形態を採用すると、図21に示される如き、第一領域Mと第二領域Nが配置されてなるパターンを板面全体に有する凹凸形状の板材を得ることが出来る。
【0070】
【表5】

【0071】
−配置例6−
基本形状D、B、A及びCが、下記表6に示される如く配置させられると、図22に示される如き第一領域M及び第二領域Nの配設パターンにて、板面全体が構成されてなる、凹凸形状の板材を得ることが出来る。
【0072】
【表6】

【0073】
−配置例7−
基本形状A、C、D及びBを、下記表7に示される如く配置せしめることにより、図23に示される如き第一領域M及び第二領域Nの配置パターンにて、板面全体が構成されてなる、凹凸形状の板材を得ることが出来る。
【0074】
【表7】

【0075】
−配置例8−
基本形状A〜Dを、下記表8に示される如く、横方向に規則的に配列せしめることにより、図24に示される如き第一領域Mと第二領域Nの配設パターンにて、板面全体が形成されてなる、凹凸形状の板材を得ることが出来る。
【0076】
【表8】

【0077】
−配置例9−
基本形状A〜Dを、下記表9に示される如き形態において配置すると、図25に示される如き第一領域M及び第二領域Nからなる配置パターンにて、板面全体が構成されてなる、凹凸形状の板材を得ることが出来る。
【0078】
【表9】

【0079】
−配置例10−
基本形状A、B、Dの三つを、下記表10に示される如き形態において配置すると、図26に示される如き第一領域M及び第二領域Nからなる配置パターンにて、板面全体が構成されてなる、凹凸形状の板材を得ることが出来る。
【0080】
【表10】

【0081】
−円筒シェル構造−
本発明に従う凹凸部を有する板材は、図27に示される如く、円筒体形状において構成されるようにすることも可能である。その際、第一領域M及び第二領域Nの頂部12や底部14、第一仕切線X、第二仕切線Yの位置せしめられる、二つ又は三つの基準面K1〜K3は、同軸的な円筒状の曲面にて構成されることとなる。なお、凹凸形状を与える第一領域Mや第二領域Nの構成は、先に説明した具体例と同様である。
【0082】
そして、そのような凹凸部を有する円筒体20を、飲料缶やロケットのような、円筒形の構造物に用いることで、材料の板厚を増加させることなく、剛性を高めることが出来る特徴がある他、優れたエネルギ吸収性を有しており、そのために、自動車等の車体に使用することで、高い剛性と優れたエネルギ吸収特性を付与することが可能である。
【0083】
−積層構造体−
図28には、本発明に従う積層構造体の一例が示されており、そこにおいて、積層構造体は、配置例1に係る凹凸部を有する板材22を間にして、その両側の表面に、それぞれ面板24、26を接合して、構成されている。なお、面板24、26は、JIS規格の3000系アルミニウム合金からなる、板厚が1.0mmの平板が用いられる。
【0084】
このような積層構造体においては、優れた剛性を有する凹凸形状の板材22を、コア材として用い、その両側に、面板24、26が接着、ロウ付け等によって接合されていることによって、凹凸部を有する板材22単体の場合よりも、格段に剛性が高い積層構造体として、用いることが出来、しかも、板材22や面板24、26もアルミニウム合金板より構成されることによって、その軽量化を有利に図ることが出来る。
【0085】
また、剛性向上に伴なう制振性の向上効果と、空気層を包容することによって吸音性の向上効果を得ることが出来る。また、よく知られているように、面板24、26の何れか一方に、貫通孔を形成することによって、ヘルムホルツ型吸音構造となり、更に吸音性を向上させることも出来る。なお、ここで用いられる面板24、26としては、アルミニウム合金以外の材質の金属板、例えば、鋼板、チタン板等や樹脂板等を用いることも可能である。
【0086】
−車両パネル−
図29に示される如く、本発明に従う凹凸部30を有する板材32をインナパネルとして用い、この板材32の一方の側の面を、アウタパネル34の裏面側に向けて配置して、構成されてなる車両パネルの一例が、明らかにされている。なお、そのような板材32からなるインナパネルは、その外周部において、アウタパネル34に対して、ヘム加工等によって接合されている。
【0087】
かかる図29に例示の車両パネルは、そのインナパネルを構成する、凹凸部30を有する板材32が、前述せるように、剛性向上効果に優れているところから、歩行者が衝突した際の、一次衝突のエネルギ及び二次衝突のエネルギを吸収する特性に優れたものとなるのであり、また、剛性向上に伴なう制振性の向上効果と、空気層を包容することによる吸音性の向上効果を得ることも出来る。なお、本例においては、凹凸部を有する板材をインナパネルとして用いたが、インナパネルとアウタパネルの何れか一方又は両方に用いることが出来る。
【符号の説明】
【0088】
12 頂部
14 底部
16,18 側壁
20 円筒体
22 板材
24,26 面板
30 凹凸部
32 板材
34 アウタパネル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮想の正方形の多数が縦横に組み合わされて、板面が構成されていると共に、該板面に凹凸形状が形成されてなる板材にして、
かかる正方形の一辺の長さ:Lを六等分してL=6aとして二次元直交座標系にて表したとき、A1点(a,6a)、A2点(a,3.5a〜4a)、A3点(3a,a)及びA4点(0,a)を順次つなぐ第一仕切線が、A1点とA2点の間及びA3点とA4点の間でそれぞれ直線とされ、またB1点(6a,5a)、B2点(3a,5a)、B3点(5a,2a〜2.5a)及びB4点(5a,0)を順次つなぐ第二仕切線が、B1点とB2点の間及びB3点とB4点との間でそれぞれ直線とされて、それら第一及び第二仕切線にて、前記正方形が三つの部分に仕切られてなり、且つ該第一仕切線における前記A2点とA3点とをつなぐ連結線と該第二仕切線における前記B2点とB3点とをつなぐ連結線とが、前記正方形の対角の角部(0,6a)、(6a,0)をつなぐ対角線から離隔して、該対角線の中点に関して回転対称に位置するように構成されて、該第一及び第二仕切線よりも、それぞれ外側の正方形部分にて構成される第一領域と、それら第一及び第二仕切線の間の正方形部分にて構成される背面視Z型の第二領域とが形成されてなる仮想の基本形状Aと、
前記第一領域と前記Z型の第二領域とが、該基本形状Aに対して線対称に配置されてなる仮想の基本形状Bと、
該基本形状Bを90°回転させてなる形態において、前記第一及び第二仕切線の間の正方形部分にてZ型の第一領域を構成すると共に、それら第一及び第二仕切線よりもそれぞれ外側の正方形部分にて第二領域を構成してなる仮想の基本形状Cと、
該基本形状Cに対して線対称に配置されてなる前記Z型の第一領域及び第二領域を有する仮想の基本形状Dと、
からなる四つの基本形状のうちの複数を、それぞれの基本形状の周縁部に位置する第一領域と第二領域とが相互に一致するように対応する周縁部で突き合わせた形態において、縦方向及び横方向に組み合わせて、板面の全体形状を構成すると共に、
前記各基本形状における第一仕切線及び第二仕切線を、互いに平行な上下三つの仮想の基準面のうち中間に位置する第一の基準面に配置せしめて、前記各基本形状における第一領域を、該第一の基準面よりも上方に位置する第二の基準面にその頂部が位置した形態において、上方に突出させる一方、前記各基本形状における第二領域を、該第一の基準面よりも下方に位置する第三の基準面にその底部が位置した形態において、下方に凹陥せしめるか、或は、
前記各基本形状における第一仕切線及び第二仕切線を、互いに平行な上下二つの仮想の基準面のうちの何れか一方に配置せしめる一方、前記各基本形状における第一領域及び第二領域のうちの何れか一方又は両方を、他方の基準面に、その頂部又は底部が位置した形態において、上方に突出又は下方に凹陥せしめることにより、
板面全体に凹凸形状が形成されていることを特徴とする凹凸部を有する板材。
【請求項2】
前記A2点とA3点とをつなぐ連結線及び前記B2点とB3点とをつなぐ連結線が、直線又は曲線にて構成されていることを特徴とする請求項1に記載の凹凸部を有する板材。
【請求項3】
前記頂部及び/又は前記底部が、それぞれの位置せしめられる基準面において平坦面を有していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の凹凸部を有する板材。
【請求項4】
前記基本形状A〜Dの全てを用いて、前記板材の板面が構成されている請求項1乃至請求項3の何れか1つに記載の凹凸部を有する板材。
【請求項5】
前記基本形状A〜Dのうちの三つを用いて、前記板材の板面が構成されている請求項1乃至請求項3の何れか1つに記載の凹凸部を有する板材。
【請求項6】
前記基本形状A〜Dのうちの二つを用いて、前記板材の板面が構成されている請求項1乃至請求項3の何れか1つに記載の凹凸部を有する板材。
【請求項7】
前記第一領域及び/又は前記第二領域の前記上方に突出又は下方に凹陥せしめられた部位の側面の傾斜角度が、10°〜90°の範囲内にある請求項1乃至請求項6の何れか1つに記載の凹凸部を有する板材。
【請求項8】
前記板材が、金属板をプレス成形することによって前記凹凸形状を形成したものである請求項1乃至請求項7の何れか1つに記載の凹凸部を有する板材。
【請求項9】
前記金属板のプレス成形前の板厚が、0.03mm〜6.00mmである請求項8に記載の凹凸部を有する板材。
【請求項10】
前記正方形の一辺の長さ:L(mm)と前記プレス成形前の金属板の板厚:t(mm)との比:L/tが、10〜2000である請求項8又は請求項9に記載の凹凸部を有する板材。
【請求項11】
隣接する前記基準面間の距離:H(mm)と、前記プレス成形前の金属板の板厚:t(mm)と、前記第一領域及び/又は前記第二領域の前記上方に突出又は下方に凹陥せしめられた部位の側面の最も大きな傾斜角度:θ(°)とが、次式:
1≦H/t≦−3θ+272
の関係を満たしている請求項8乃至請求項10の何れか1つに記載の凹凸部を有する板材。
【請求項12】
複数枚の板材を積層してなる積層構造体であって、該板材の少なくとも1枚は、請求項1乃至請求項11の何れか1項に記載の凹凸部を有する板材であることを特徴とする積層構造体。
【請求項13】
アウタパネルと、該アウタパネルの裏面に接合されたインナパネルとを有する車両パネルであって、該アウタパネルと該インナパネルの何れか一方又は両方が、請求項1乃至請求項11の何れか1項に記載の凹凸部を有する板材にて構成されていることを特徴とする車両パネル。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2012−148290(P2012−148290A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−7311(P2011−7311)
【出願日】平成23年1月17日(2011.1.17)
【出願人】(000002277)住友軽金属工業株式会社 (552)