出力スプロケットの取付構造
【課題】軸方向に振れる力成分を吸収しながら所要の軸方向範囲内に出力スプロケットを常に位置させて、安定した動力伝達を行うことができる多段変速機の出力スプロケット取付構造を供する。
【解決手段】出力軸(12)に嵌合された皿バネ(34)が段差部(33a)に当接して位置決めされ、出力軸(12)の段差部(33a)より外側部に形成されたスプライン溝(12s)にスプライン嵌合した出力スプロケット(32)が前記皿バネ(34)に押圧され、出力軸(12)の端部に形成された雄ねじ(12e)に螺合する袋ナット(37)が出力軸(12)の軸端に底面を規制されて固定され、皿バネ(34)により押圧された前記出力スプロケット(32)の軸方向の移動が前記袋ナット(37)の開口端部により規制される出力スプロケットの取付構造。
【解決手段】出力軸(12)に嵌合された皿バネ(34)が段差部(33a)に当接して位置決めされ、出力軸(12)の段差部(33a)より外側部に形成されたスプライン溝(12s)にスプライン嵌合した出力スプロケット(32)が前記皿バネ(34)に押圧され、出力軸(12)の端部に形成された雄ねじ(12e)に螺合する袋ナット(37)が出力軸(12)の軸端に底面を規制されて固定され、皿バネ(34)により押圧された前記出力スプロケット(32)の軸方向の移動が前記袋ナット(37)の開口端部により規制される出力スプロケットの取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーユニット内燃機関の出力軸に取り付けられる出力スプロケットの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の機関ケースに変速機が組み込まれ、変速機のカウンターシャフト(被動歯車軸)を出力軸として、その端部に出力スプロケットが取り付けられた例がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−085460号公報
【0004】
同特許文献1に開示された多段変速機において、カウンターシャフト(被動歯車軸)の軸端部は、縮径され段差部を有して形成された細径部にインボリュートスプライン係合歯が形成されており、段差部にカラー部材を挟むように出力スプロケットがスプライン嵌合し、カウンターシャフトの端面にワッシャを介装してボルトを締めこんでいる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
すなわち、特許文献1に開示された出力スプロケット取付構造では、出力スプロケットは段差部とワッシャとの間でカラー部材により位置決めされて固定された構造である。
したがって、出力スプロケットは軸方向に移動することが全くできず、チェーンの巻掛けによる軸方向に振れる力成分を吸収することができないため、安定した動力伝達を行うことが難しい。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みなされたもので、その目的とする処は、軸方向に振れる力成分を吸収しながら所要の軸方向範囲内に出力スプロケットを常に位置させて、安定した動力伝達を行うことができる多段変速機の出力スプロケット取付構造を供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、
内燃機関の出力軸(12)の駆動をチェーン(38)に伝達するための出力スプロケット(32)の取付構造において、
前記出力軸(12)に嵌合された皿バネ(34)が段差部(33a)に当接して位置決めされ、
前記出力軸(12)の前記段差部(33a)より外側部に形成されたスプライン溝(12s)にスプライン嵌合した前記出力スプロケット(32)が前記皿バネ(34)に押圧され、
前記出力軸(12)の端部に形成された雄ねじ(12e)に螺合する袋ナット(37)が前記出力軸(12)の軸端に底面を規制されて固定され、
前記皿バネ(34)により押圧された前記出力スプロケット(32)の軸方向の移動が前記袋ナット(37)の開口端部により規制されることを特徴とする出力スプロケットの取付構造である。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の出力スプロケットの取付構造において、
前記袋ナット(37)の開口端部と前記出力スプロケット(32)との間に環状のスペーサ(35)を挿入したことを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の出力スプロケットの取付構造において、
前記スペーサ(35)はDLC加工が施されていることを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれか1項記載の出力スプロケットの取付構造において、
前記出力軸(12)の軸端と前記袋ナット(37)の底面との間に介装部材(36)が介装されることを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明は、
内燃機関の出力軸(12)の駆動をチェーン(38)に伝達するための出力スプロケット(80)の取付構造において、
前記出力軸(12)に嵌合された皿バネ(34)が、段差部(33a)に当接して位置決めされ、
前記出力軸(12)の前記段差部(33a)より軸方向外側部に形成されたスプライン溝(12s)にトルク検出用円筒部材がスプライン嵌合され、
前記出力スプロケット(80)は、スプロケット歯(80a)を支持する内周基部の内周端が軸方向外側に延出して円筒基部(80b)を構成し、
前記トルク検出用円筒部材(81)の外周を前記出力スプロケット(80)の円筒基部(80b)が覆い、
前記円筒基部(80b)の軸方向外側端部が、前記トルク検出用円筒部材(81)のスプライン嵌合部(81s)より軸方向外側に延出したねじれ検出円筒部(81t)の端部(81a)に固着され、
前記円筒基部(80b)の軸方向内側端部が前記皿バネ(34)に押圧され、
前記出力軸(12)の端部に形成された雄ねじ(12e)に螺合する袋ナット(37)が、前記出力軸(12)の軸端に底面を規制されて固定され、
前記皿バネ(34)により押圧された前記出力スプロケット(80)の軸方向の移動が前記袋ナット(37)の開口端部により規制されることを特徴とする出力スプロケットの取付構造である。
【0012】
請求項6記載の発明は、請求項1ないし請求項5のいずれか1項記載の出力スプロケットの取付構造において、
互いに平行な歯車軸(11,12)にそれぞれ複数の駆動歯車(m)と被動歯車(n)が変速段毎に常時噛み合い状態で軸支され、
前記駆動歯車(m)と前記被動歯車(n)の一方の複数の歯車(m)が歯車軸(11)に固定され、他方の複数の歯車(n)と歯車軸(12)との間で歯車軸(12)と各歯車(n)の係合を歯車ごとに切り換える係合切換機構(20)が備えられ、
変速駆動機構(50)のコトロールロッド(51)が歯車軸(12)の内部を軸方向に移動することにより前記係合切換機構(20)が駆動されて変速を行う多段変速機(10)における前記被動歯車(n)の歯車軸(12)が、前記出力軸(12)であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の出力スプロケット(32)の取付構造によれば、出力軸(12)に嵌合された皿バネ(34)が、段差部(33a)に当接して位置決めされ、出力軸(12)の段差部(33a)より外側部に形成されたスプライン溝(12s)にスプライン嵌合した出力スプロケット(32)が、皿バネ(34)に押圧され、出力軸(12)の端部に形成された雄ねじ(12e)に螺合する袋ナット(37)が、出力軸(12)の軸端に底面を規制されて固定され、皿バネ(34)により押圧された出力スプロケット(32)の軸方向の移動が袋ナット(37)の開口端部により規制されるので、少ない部品点数で、出力スプロケット(32)を直接締め付けて固定することなく軸方向の移動を許容し、出力スプロケット(32)に加わる軸方向に振れる力成分を皿バネ(34)により吸収しながら所要の軸方向範囲内に出力スプロケット(32)を常に位置させて、安定した動力伝達を行うことができる。
【0014】
請求項2記載の出力スプロケット(32)の取付構造によれば、袋ナット(37)の開口端部と出力スプロケット(32)との間に環状のスペーサ(35)を挿入したので、出力スプロケット(32)が直接袋ナット(37)の開口端部に当接することにより袋ナット(37)の螺合が緩むようなことは防止できる。
【0015】
請求項3記載の出力スプロケット(32)の取付構造によれば、前記スペーサ(35)はDLC加工が施されているので、出力スプロケット(32)のスペーサ(35)との当接による摩擦力が大幅に低減され、出力スプロケット(32)の回転による袋ナット(37)の螺合への影響を回避するとともに、出力スプロケット(32)の回転を円滑にすることができる。
【0016】
請求項4記載の出力スプロケット(32)の取付構造によれば、出力軸(12)の軸端と袋ナット(37)の底面との間に介装部材(36)が介装されるので、出力軸(12)の軸端の加工が容易であるとともに、特殊な袋ナット(32)が不要で汎用品を使用することができる。
【0017】
請求項5記載の出力スプロケット(80)の取付構造によれば、出力軸(12)のスプライン溝(12s)にスプライン嵌合するトルク検出用円筒部材(81)の外周を出力スプロケット(80)の円筒基部(80b)が覆い、円筒基部(80b)の軸方向外側端部が、前記トルク検出用円筒部材(81)のスプライン嵌合部(81s)より軸方向外側に延出したねじれ検出円筒部(81t)の端部(81a)に固着され、円筒基部(80b)の軸方向内側端部が皿バネ(34)に押圧され、出力軸(12)の端部に形成された雄ねじ(12e)に螺合する袋ナット(37)が、出力軸(12)の軸端に底面を規制されて固定され、皿バネ(34)により押圧された出力スプロケット(80)の軸方向の移動が袋ナット(37)の開口端部により規制されるので、出力スプロケット(80)をトルク検出用円筒部材(81)とともに直接締め付けて固定することなく軸方向の移動を許容し、出力スプロケット(80)に加わる軸方向に振れる力成分を皿バネ(34)により吸収しながら所要の軸方向範囲内に出力スプロケット(80)を常に位置させて、安定した動力伝達を行うことができる。
トルク検出用円筒部材(81)は、出力軸(12)にスプライン嵌合するスプライン嵌合部(81s)より軸方向外側に延出してねじれ検出円筒部(81t)が形成されて、その端部(81a)を出力スプロケット(80)の円筒基部(80b)の端部に固着しているので、ねじれ検出円筒部(81t)のねじれを検出することでトルクを容易に測定できる。
【0018】
請求項6記載の出力スプロケット(80)の取付構造によれば、互いに平行な共に中空軸である歯車軸(11,12)にそれぞれ複数の駆動歯車(m)と被動歯車(n)が変速段毎に常時噛み合い状態で軸支され、駆動歯車(m)と被動歯車(n)の一方の複数の歯車(m)が歯車軸(11)に固定され、他方の複数の歯車(n)と歯車軸(12)との間で歯車軸(12)と各歯車(n)の係合を歯車ごとに切り換える係合切換機構(20)が備えられ、変速駆動機構(50)のコトロールロッド(51)が歯車軸(12)の内部を軸方向に移動することにより前記係合切換機構(20)が駆動されて変速を行う多段変速機(10)における前記被動歯車(n)の歯車軸(12)が、前記出力軸(12)であるので、出力スプロケット(80)をボルトにより直接締め付けできない中空の出力軸(12)の端部に、部品点数の少ない簡単な構造で出力スプロケット(80)を所要の軸方向範囲内に移動可能に支持することができ、安定した動力伝達を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施の形態に係る多段変速機の断面図である。
【図2】カウンタ歯車軸およびその周りの構造を示す断面図(図4,図5のII−II線断面図)である。
【図3】カウンタ歯車軸およびその周りの構造を示す別の断面図(図4,図5のIII−III線断面図)である。
【図4】図2,図3のIV−IV線断面図である。
【図5】図2,図3のV−V線断面図である。
【図6】コントロールロッドとロストモーション機構の分解斜視図である。
【図7】コントロールロッドにロストモーション機構組み付けた状態とカムロッド等の分解斜視図である。
【図8】カウンタ歯車軸およびピン部材とスプリングの一部の分解斜視図である。
【図9】カウンタ歯車軸の左側面図(図8のIX矢視図)である。
【図10】揺動爪部材および支軸ピン,ピン部材,スプリングの分解斜視図である。
【図11】コントロールロッドに変速駆動手段の一部および係合手段を組み付けた状態を示す斜視図である。
【図12】図11に示す状態のカウンタ歯車軸に1つの軸受カラー部材を外装した状態を示す斜視図である。
【図13】2速へのシフトアップ完了直前のカウンタ歯車軸およびその周りの構造を示す断面図である。
【図14】図13のXIV−XIV線断面図である。
【図15】図13のXV−XV線断面図である。
【図16】出力スプロケットのカウンタ歯車軸への取付構造を説明するための分解断面図である。
【図17】同出力スプロケットのカウンタ歯車軸への取付構造を示す断面図である。
【図18】別の実施の形態における出力スプロケットのカウンタ歯車軸への取付構造を説明するための分解断面図である。
【図19】同出力スプロケットのカウンタ歯車軸への取付構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る一実施の形態について図1ないし図15に基づいて説明する。
本実施の形態に係る多段変速機10は、自動二輪車に搭載される内燃機関に組み込まれて構成されている。
図1は、該多段変速機10の断面図であり、同図1に示すように、該多段変速機10は、内燃機関と共通の機関ケース1に設けられている。
左右割りの左機関ケース1Lと右機関ケース1Rが合体して構成された機関ケース1は、変速室2を形成しており、同変速室2にメイン歯車軸11とカウンタ歯車軸12が互いに平行に左右方向に指向して回転自在に軸支されている。
【0021】
メイン歯車軸11は、左機関ケース1Lの側壁と右機関ケース1Rの別体の側壁1RRにベアリング3L,3Rを介して回転自在に軸支され、右ベアリング3Rを貫通して変速室2から突出した右端部には多板式の摩擦クラッチ5が設けられている。
【0022】
摩擦クラッチ5の左側には、図示されないクランク軸の回転が伝達されるプライマリ被動ギヤ4がメイン歯車軸11に回転自在に軸支されている。
内燃機関のクランク軸の回転がプライマリ被動ギヤ4から係合状態の摩擦クラッチ5を介してメイン歯車軸11に伝達される。
【0023】
他方、カウンタ歯車軸12も、左機関ケース1Lの側壁と右機関ケース1Rの側壁1RRにベアリング7L,7Rを介して回転自在に軸支され、左ベアリング7Lを貫通して変速室2から突出した左端部には出力スプロケット32がスプライン嵌合して取り付けられる。
出力スプロケット32の取付構造については、後記する。
【0024】
出力スプロケット32に巻き掛けられた駆動チェーン38が後方の図示されない後輪を駆動するスプロケットに巻き掛けられ、カウンタ歯車軸12の回転動力が後輪に伝達され、車両が走行する。
【0025】
メイン歯車軸11には、左右のベアリング3L,3Rの間に駆動変速歯車m群がメイン歯車軸11と一体に回転可能にメイン歯車軸11に構成されている。
右ベアリング3Rに沿って第1駆動変速歯車m1がメイン歯車軸11に一体に形成され、メイン歯車軸11の同第1駆動変速歯車m1と左ベアリング3Lとの間に形成されたスプラインに右から左へ順に順次径を大きくした第2,第3,第4,第5,第6駆動変速歯車m2,m3,m4,m5,m6がスプライン嵌合されている。
【0026】
他方、カウンタ歯車軸12には、左右のベアリング7L,7Rの間に被動変速歯車n群が円環状の軸受カラー部材13を介して回転自在に軸支されている。
カウンタ歯車軸12において、右ベアリング7Rの左に介装されたカラー部材14Rを介して外装された右端の軸受カラー部材13と、左ベアリング7Lの右に介装されたカラー部材14Lを介して外装された左端の軸受カラー部材13との間に、等間隔に5つの軸受カラー部材13が外装され、この全部で7つの軸受カラー部材13の隣り合う軸受カラー部材13,13間に跨るようにして右から左へ順に順次径を小さくした第1,第2,第3,第4,第5,第6被動変速歯車n1,n2,n3,n4,n5,n6が回転自在に軸支されている。
【0027】
メイン歯車軸11と一体に回転する第1,第2,第3,第4,第5,第6駆動変速歯車m1,m2,m3,m4,m5,m6は、カウンタ歯車軸12に回転自在に軸支される対応する第1,第2,第3,第4,第5,第6被動変速歯車n1,n2,n3,n4,n5,n6にそれぞれ常時噛み合っている。
【0028】
第1駆動変速歯車m1と第1被動変速歯車n1の噛合が、最も減速比の大きい1速を構成し、第6駆動変速歯車m6と第6被動変速歯車n6の噛合が、最も減速比の小さい6速を構成し、その間順次減速比が小さくなって2速、3速、4速、5速が構成される。
【0029】
カウンタ歯車軸12に変速段が奇数段の奇数段歯車(第1,第3,第5被動変速歯車n1,n3,n5)と変速段が偶数段の偶数段歯車(第2,第4,第6被動変速歯車n2,n4,n6)が交互に配列されることになる。
【0030】
中空筒状をなすカウンタ歯車軸12は、各被動変速歯車nと係合可能な係合手段20が後記するように組み込まれ、後記するように係合手段20の1構成要素である種類ごと2本ずつ4種類の計8本のカムロッドC(Cao,Cao,Cae,Cae,Cbo,Cbo,Cbe,Cbe)がカウンタ歯車軸12の中空内周面に形成された後記するカム案内溝12gに嵌合して軸方向に移動自在に設けられる。
【0031】
このカムロッドCを駆動して変速する変速駆動手段50の1構成要素であるコントロールロッド51が、カウンタ歯車軸12の中空中心軸に挿入されており、コントロールロッド51の軸方向の移動は、ロストモーション機構52,53を介して連動してカムロッドCを軸方向に移動する。
【0032】
このコントロールロッド51を軸方向に移動する機構が、右機関ケース1Rに設けられている。
コントロールロッド51の軸方向の移動は、ロストモーション機構52,53を介してカムロッドCを軸方向に連動し、このカムロッドCの移動がカウンタ歯車軸12に組み込まれた係合手段20により各被動変速歯車nを選択的にカウンタ歯車軸12と係合して変速を行う。
【0033】
図6を参照して、変速駆動手段50のコントロールロッド51は、円柱棒状をなし、軸方向の左右2か所に縮径して形成された外周凹部51a,51bがそれぞれ所定長さに亘って形成されている。
コントロールロッド51の右端は雄ねじが形成された雄ねじ端部51bbとなっており、雄ねじ端部51bbの手前に6角形状のナット部51cが形成されている。
【0034】
このコントロールロッド51の左右の外周凹部51a,51bにそれぞれ対応してロストモーション機構52,53が組み付けられる。
左右のロストモーション機構52,53は、同じ構造のものを左右に配設している。
【0035】
左側のロストモーション機構52は、コトロールロッド51を摺動自在に嵌挿するスプリングホルダ52hが長尺ホルダ52hlと短尺ホルダ52hsの連結で構成され、内周面にコトロールロッド51の外周凹部51aに対応する内周凹部52haが形成されている。
【0036】
このスプリングホルダ52hにコントロールロッド51を貫通させてスプリングホルダ52hを外周凹部51aに位置させたとき、スプリングホルダ52hの内周凹部52haとコントロールロッド51の外周凹部51aの両空間が共通の空間を構成する。
【0037】
スプリングホルダ52hの内周凹部52haとコントロールロッド51の外周凹部51aの両空間に跨るようにスプリング受けである左右一対のコッタ52c,52cが対向して嵌挿され、両コッタ52c,52c間にコントロールロッド51に巻回される圧縮コイルスプリング52sが介装されて両コッタ52c,52cを離間する方向に付勢する。
なお、コッタ52cは、スプリングホルダ52hの内周凹部52haの内径を外径とし、コトロールロッド51の外周凹部51aの外径を内径とした中空円板状をなし、組み付けのため半割りにされている。
【0038】
右側のロストモーション機構53(スプリングホルダ53h,長尺ホルダ53hl,短尺ホルダ53hs,内周凹部53ha,コッタ53c,圧縮コイルスプリング53s)も同じ構造をしてコトロールロッド51の外周凹部51bに配設される。
したがって、コトロールロッド51が軸方向に移動すると、左右のロストモーション機構52,53の圧縮コイルスプリング52s,53sを介してスプリングホルダ52h,53hが軸方向に移動する。
【0039】
このコントロールロッド51の左右の外周凹部51a,51bに取り付けられたロストモーション機構52,53のスプリングホルダ52h,53hの外周面に、8本のカムロッドC(Cao,Cao,Cae,Cae,Cbo,Cbo,Cbe,Cbe)が放射位置にあって当接される(図7参照)。
【0040】
カムロッドCは、断面が矩形で軸方向に長尺に延びる角柱棒状部材であり、スプリングホルダ52h,53hと接する内周側面の反対側の外周側面がカム面を形成しており、カム面にカム溝vが所要3か所に形成され、内周側面にはスプリングホルダ52h,53hのいずれか一方を左右から挟むように係止する一対の係止爪pが突出している。
カムロッドCは、断面が特別な形状をしておらず概ね外形が単純な矩形の角柱棒状部材であるので、カムロッドCを容易に製造することができる。
【0041】
カム溝v1,v3,v5が奇数段歯車(第1,第3,第5被動変速歯車n1,n3,n5)に対応する3か所に形成された奇数段用カムロッドCao,Cboには、正回転(加速時に被動変速歯車nからカウンタ歯車軸12に力が加わる回転方向)用と逆回転(減速時に被動変速歯車nからカウンタ歯車軸12に力が加わる回転方向)用の2種類があり、一方の正回転奇数段用カムロッドCaoは、内周側面に右側スプリングホルダ53hに係止する係止爪pを有し、他方の逆回転奇数段用カムロッドCboは、内周側面に左側スプリングホルダ52hに係止する係止爪pを有する(図7参照)。
【0042】
同様に、カム溝v2,v4,v6が偶数段の偶数段歯車(第2,第4,第6被動変速歯車n2,n4,n6)に対応する3か所に形成された偶数段用カムロッドCae,Cbeには、正回転用と逆回転用の2種類があり、一方の正回転偶数段用カムロッドCaeは、内周側面に左側スプリングホルダ52hに係止する係止爪pを有し、他方の逆回転偶数段用カムロッドCbeは、内周側面に右側スプリングホルダ53hに係止する係止爪pを有する(図7参照)。
【0043】
したがって、コントロールロッド51の軸方向の移動により、右側のロストモーション機構53の圧縮コイルスプリング53sを介してスプリングホルダ53hとともに正回転奇数段用カムロッドCaoと逆回転偶数段用カムロッドCbeが軸方向に連動し、左側のロストモーション機構52のコイルスプリング52sを介してスプリングホルダ52hとともに逆回転奇数段用カムロッドCboと正回転偶数段用カムロッドCaeが軸方向に連動する。
【0044】
図7に示すように、コントロールロッド51のナット部51cより右側の右端部分には、円筒状をしたコントロールロッド操作子55が、その内側に嵌装されたボールベアリング56を介して取り付けられる。
【0045】
ボールベアリング56は、軸方向に2個連結したもので、コントロールロッド51のナット部51cより右側の右端部分に嵌入され、雄ねじ端部51bbに螺合されるナット57によりナット部51cとの間で挟まれて締結される。
【0046】
したがって、コントロールロッド操作子55は、コントロールロッド51の右端部を回転自在に保持している。
このコントロールロッド操作子55の螺着されたナット57より右側に延出した円筒部に直径方向に穿孔したピン孔55hが形成されており、同ピン孔55hにシフトピン58が貫通する。
【0047】
シフトピン58は、コトロールロッド操作子55を貫通して一方にのみ突出するもので(図2参照)、図14に示すように、その突出する端部が後記するシフトドラム67のシフト案内溝Gに摺動自在に係合する円柱状の係合部58aであり、コトロールロッド操作子55を貫通する小径円柱部58cと係合部58aとの間に直方体状をした摺動部58bが形成されている。
右機関ケース1Rの側壁1RRの右方に突出したガイド部1Raに溝条60が左右方向に指向して形成されており、この溝条60にシフトピン58の直方体状をした摺動部58bが摺動自在に嵌合してシフトピン58の回り止めとしている。
【0048】
側壁1RRには右方に突出して支軸65が植設されて、同支軸65にベアリング66を介してシフトドラム67が回動自在に軸支されており、このシフトドラム67のシフト溝67vにシフトピン58の突出した係合部58aが摺動自在に嵌合している。
【0049】
シフトドラム67のシフト溝67vは、ドラム外周面に略一周に亘って螺旋を描くように形成され、その間に所定回動角度(例えば60度)毎に1速から6速までの各変速段位置およびその途中にニュートラル位置が形成されている。
【0050】
したがって、シフトドラム67の回動は、シフト溝67vに嵌合するシフトピン58をコントロールロッド操作子55とともに軸方向に移動させる。
コントロールロッド操作子55はコントロールロッド51の右端部を回転自在に保持しているので、結局シフトドラム67の回動はコントロールロッド51を軸方向に移動させる。
【0051】
このシフトドラム67は、図示されないシフトセレクトレバーの手動操作によってシフト伝達手段(図示せず)を介して回動する。
シフト伝達手段は、シフトドラム67を所定角度毎の変速段位置に安定して保持させるシフトカム部材などの機構を備えてシフトセレクトレバーの操作動力をシフトドラム67の側縁に形成されたギヤ67gに伝達してシフトドラム67を順次変速段位置に回動する。
なお、シフトドラム67は、変速用モータにより回動するようにしてもよい。
【0052】
以上のように、変速駆動手段50は、シフトセレクトレバーの手動操作(または変速用モータの駆動)によってシフトドラム67が回動し、シフトドラム67の回動がシフト溝67vに嵌合したシフトピン58を案内して軸方向に移動し、シフトピン58の移動がコントロールロッド操作子55を介してコントロールロッド51を軸方向に移動し、コントロールロッド51の移動がロストモーション機構52,53を介して係合手段20の8本のカムロッドCao,Cao,Cae,Cae,Cbo,Cbo,Cbe,Cbeを連動する。
【0053】
ロストモーション機構52,53が組み付けられたコントロールロッド51は、カウンタ歯車軸12の中空内に挿入され中心軸に配設される。
この中空円筒状のカウンタ歯車軸12は、内径がロストモーション機構52,53のスプリングホルダ52h,53hの外径に略等しく、コントロールロッド51に取り付けられたスプリングホルダ52h,53hを摺動自在に嵌挿する。
【0054】
そして、カウンタ歯車軸12の中空の内周面における8か所の放射位置に断面が矩形の8本のカム案内溝12gが軸方向に指向して延出形成されている(図9参照)。
8本のカムロッドCao,Cao,Cae,Cae,Cbo,Cbo,Cbe,Cbeは、図7に示す配列で対応するカム案内溝12gに摺動自在に嵌合する。
同種類のカムロッドCは、対称位置に配設される。
カウンタ歯車軸12に対するカム部材Cの回り止めとなるカム案内溝12gは、断面コ字状の単純な形状をして簡単に加工成形できる。
【0055】
カム案内溝12gの深さはカムロッドCの放射方向の幅に等しく、よってカムロッドCの外周側面であるカム面はカム案内溝12gの底面に摺接し、内周側面は中空内周面と略同一面をなしてスプリングホルダ52h,53hの外周面に接し、内周側面から突出した係止爪pはスプリングホルダ52h,53hのいずれかを両側から挟むようにして掴む。
【0056】
中空筒状をなすカウンタ歯車軸12は、軸受カラー部材13を介して被動変速歯車nが軸支される中央円筒部12aの左右両側に外径が縮径された左側円筒部12bと右側円筒部12cが形成されている(図8参照)。
【0057】
カウンタ歯車軸12の左側円筒部12bにはワッシャ14Lを介してベアリング7Lが嵌合され、他方、右側円筒部12cにはワッシャ14Rを介してベアリング7Rが嵌合される(図1,図2,図3参照)。
なお、カウンタ歯車軸12の左側円筒部12bの軸端部は外径が縮径されて雄ねじ12eが形成されており、雄ねじ12eの軸方向内側には出力スプロケット32がスプライン嵌合するスプライン溝12sが形成されている。
【0058】
カウンタ歯車軸12の中空内は、カム案内溝12gが形成される内径がスプリングホルダ52h,53hの外径に等しい小径内周面と、同小径内周面の両側の内径がカム案内溝12gの底面と略同一周面をなす大径内周面とが形成されている(図2,図3参照)。
右側の拡大内径部の内側に前記コントロールロッド操作子55が半分程挿入されている。
【0059】
このように、カウンタ歯車軸12の中空内にコントロールロッド51とロストモーション機構52,53と8本のカムロッドCao,Cao,Cae,Cae,Cbo,Cbo,Cbe,Cbeが組み込まれると、これら全てが一緒に回転し、コントロールロッド51が軸方向に移動すると、左側ロストモーション機構52のコイルスプリング52sを介して逆回転奇数段用カムロッドCboと正回転偶数段用カムロッドCaeが軸方向に連動し、右側ロストモーション機構53のコイルスプリング53sを介して正回転奇数段用カムロッドCaoと逆回転偶数段用カムロッドCbeが軸方向に連動する。
【0060】
ロストモーション機構52,53がカウンタ歯車軸12の軸方向に並んでコントロールロッド51の外周面と複数のカムロッドCの内側面との間に介装されるので、カウンタ歯車軸12の中空内にあってコントロールロッド51,ロストモーション機構52,53,カムロッドCと径方向に重なる構造で多段変速機10の軸方向の拡大を避け、ロストモーション機構52,53をカウンタ歯車軸12の中空内にコンパクトに収容して、多段変速機10自体の小型化を図ることができる。
【0061】
ロストモーション機構52,53は、コントロールロッド51上に軸方向に2つ設け、各ロストモーション機構52,53は互いに別のカムロッドCを連動するので、1本のコントロールロッド51の移動に対して複数のカムロッドCに2種類の異なる動きをさせて変速を滑らかにさせることを可能とするとともに、ロストモーション機構52,53を同じ構造として、製造コストを抑えるとともに組立て時の部品管理を容易とする。
【0062】
ロストモーション機構52,53がコントロールロッド51の外周面と複数のカムロッドCの内側面との間に介装されるスプリングホルダ52h,53hの内周凹部52ha,53haとコントロールロッド51の外周凹部51a,51bで形成される空間にコイルスプリング52s,53sが介装されるので、同じ形状のロストモーション機構52,53をコントロールロッド51上に構成することができる。
【0063】
また、ロストモーション機構52(53)は、コッタ52cが半割りの割りコッタとし、スプリングホルダ52h(53h)は長尺ホルダ52hl(53hl)と短尺ホルダ52hs(53hs)に2分割されているので、コントロールロッド51の外周凹部51a(51b)の軸方向中央部に拡径ストッパ部51as(51bs)が形成されていても、その両側凹部に割りコッタ52cを配してスプリングホルダ52h(53h)を簡単に組み付けることができ、ロストモーション機構52(53)の組立を容易にすることができる。
【0064】
図8に示すように、カウンタ歯車軸12の軸受カラー部材13を介して被動変速歯車nが軸支される中央円筒部12aは、外径が大きく厚肉に構成されており、この厚肉の外周部に周方向に一周する幅狭の周方向溝12cvが第1,第2,第3,第4,第5,第6被動変速歯車n1,n2,n3,n4,n5,n6に対応して軸方向に亘って等間隔に6本形成されるとともに、軸方向に指向した軸方向溝12avが周方向に亘って等間隔に4本形成されている。
【0065】
さらに、カウンタ歯車軸12の中央円筒部12aの外周部には、4本の軸方向溝12avで区画された4つの部分が各周方向溝12cvにおいて周方向溝12cvの溝幅を隣り合う軸方向溝12av,12av間に亘って長尺に左右均等に拡大した長尺矩形凹部12pと、周方向溝12cvの溝幅を隣り合う軸方向溝12av,12av間の一部で左右均等に拡大した短尺矩形凹部12qとが、軸方向に交互に形成されている。
【0066】
長尺矩形凹部12pの底面の周方向に離れた2か所に軸方向に長尺の楕円形をして周方向溝12cvに跨って若干凹んだスプリング受部12d,12dが形成されている。
また、短尺矩形凹部12qと軸方向溝12avとの間の厚肉部で周方向溝12cv上にピン孔12hが前記カム案内溝12gまで径方向に穿孔されている。
【0067】
すなわち、カウンタ歯車軸12の中空内周面から周方向の8か所に刻設されたカム案内溝12gの放射方向にピン孔12hが穿孔される。
各周方向溝12cv上にはそれぞれ4か所ピン孔12hが形成される。
【0068】
スプリング受部12dには、楕円形に巻回された圧縮スプリング22がその端部を嵌装させて設けられる。
ピン孔12hにはピン部材23が摺動自在に嵌挿される。
なお、ピン孔12hが連通するカム案内溝12gの幅は、ピン部材23の外径幅より小さい。
したがって、ピン孔12hを進退するピン部材23がカム案内溝12gに脱落することがないので、カウンタ歯車軸12への係合手段20の組み付けを容易にする。
【0069】
カム案内溝12gにはカムロッドCが摺動自在に嵌合されるので、ピン孔12hに嵌挿されたピン部材23は中心側端部が対応するカムロッドCのカム面に接し、カムロッドCの移動でカム溝vがピン孔12hに対応するとピン部材23がカム溝vに落ち込み、カム溝v以外の摺接面が対応するとピン部材は摺接面に乗り上げ、カムロッドCの移動により進退する。
ピン孔12h内でのピン部材23の進退は、その遠心側端部を周方向溝12cvの底面より外側に出没させる。
【0070】
以上のような構造のカウンタ歯車軸12の中央円筒部12aの外周部に形成された長尺矩形凹部12pと短尺矩形凹部12qと両凹部間を連通する周方向溝12cvに、揺動爪部材Rが埋設され、軸方向溝12avに揺動爪部材Rを揺動自在に軸支する支軸ピン26が埋設される。
このようにして、全ての揺動爪部材Rが組み付けられた状態を図11に示す。
【0071】
図10の分解斜視図には、奇数段歯車(第1,第3,第5被動変速歯車n1,n3,n5)に対応する周方向溝12cvおよび長尺矩形凹部12p,短尺矩形凹部12qに埋設される4個の揺動爪部材Rと、偶数段の偶数段歯車(第2,第4,第6被動変速歯車n2,n4,n6)に対応する周方向溝12cvおよび長尺矩形凹部12p,短尺矩形凹部12qに埋設される4個の揺動爪部材Rとが、互いの相対角度位置関係を維持した姿勢で図示されており、加えて各揺動爪部材Rを軸支する支軸ピン26および各揺動爪部材Rに作用する圧縮スプリング22とピン部材23が示されている。
【0072】
揺動爪部材Rは、全て同じ形状のものを使用しており、軸方向視で略円弧状をなし、中央に支軸ピン26が貫通する貫通孔の外周部が欠損して軸受凹部Rdが形成されており、同軸受凹部Rdの揺動中心に関して一方の側に長尺矩形凹部12pに揺動自在に嵌合する幅広矩形の係合爪部Rpが形成され、他方の側にはピン孔12hが形成された周方向溝12cvに揺動自在に嵌合する幅狭のピン受部Rrが延出し、その端部は短尺矩形凹部12qに至り幅広に拡大した幅広端部Rqが形成されている。
【0073】
揺動爪部材Rは、ピン受部Rrがピン孔12hが形成された周方向溝12cvに嵌合し、一方の係合爪部Rpが長尺矩形凹部12pに嵌合するとともに軸受凹部Rdが軸方向溝12avに合致し、他方の幅広端部Rqが短尺矩形凹部12qに嵌合する。
そして、合致した軸受凹部Rdと軸方向溝12avに支軸ピン26が嵌合される。
【0074】
揺動爪部材Rは、嵌合する周方向溝12cvに関して左右対称に形成されており、一方の幅広矩形の係合爪部Rpが他方のピン受部Rrおよび幅広端部Rqより重く、支軸ピン26に軸支されてカウンタ歯車軸12とともに回転したとき、遠心力に対して係合爪部Rpが重錘として作用して遠心方向に突出するように揺動爪部材Rを揺動させる。
【0075】
揺動爪部材Rは、ピン受部Rrが揺動中心に関して反対側の係合爪部Rp側より幅が狭く形成されている。
また、ピン受部Rrは、ピン部材23を受け止めるだけの幅を具えれば足りるので、揺動爪部材Rを小型に形成することができ、かつ他方の係合爪部Rpの遠心力による揺動を容易にすることができる。
【0076】
周方向に隣り合う揺動爪部材Rは、互いに対称な姿勢にカウンタ歯車軸12に組み付けられるので、互いに所定間隔を存して対向する係合爪部Rp,Rpは共通の長尺矩形凹部12pに嵌合し、他方の互いの近接する幅広端部Rqは共通の短尺矩形凹部12qに嵌合する。
【0077】
揺動爪部材Rの係合爪部Rpの内側にカウンタ歯車軸12のスプリング受部12dに一端を支持された圧縮スプリング22が介装され、ピン受部Rrの内側にピン孔12hに嵌挿されたピン部材23がカムロッドCとの間に介装される。
【0078】
このようにして、揺動爪部材Rが、支軸ピン26に揺動自在に軸支されてカウンタ歯車軸12の長尺矩形凹部12p,短尺矩形凹部12q,周方向溝12cvに埋設され、一方の係合爪部Rpが圧縮スプリング22により外側に付勢され、他方のピン受部Rrがピン部材23の進退により押圧されることで、圧縮スプリング22の付勢力に抗して揺動爪部材Rが揺動する。
【0079】
ピン部材23が遠心方向に進行して揺動爪部材Rを揺動したときは、揺動爪部材Rは係合爪部Rpが長尺矩形凹部12pに没してカウンタ歯車軸12の中央円筒部12aの外周面より外側に突出するものはない。
また、ピン部材23が退行したときは、圧縮スプリング22により付勢された係合爪部Rpがカウンタ歯車軸12の中央円筒部12aの外周面より外側に突出し被動変速歯車nと係合可能とする。
【0080】
圧縮スプリング22がカウンタ歯車軸12の軸方向を長径とする楕円形状をなし、楕円形状をした圧縮スプリング22は、長径が揺動爪部材Rのピン受部Rrの幅より大きく、ピン受部Rrを揺動可能に嵌合する周方向に一周に亘って形成される周方向溝12cvを跨いで受け止められるので、カウンタ歯車軸12の加工を容易にするとともに、揺動爪部材Rを安定してカウンタ歯車軸12に組み付けることができる。
【0081】
奇数段歯車(第1,第3,第5被動変速歯車n1,n3,n5)に対応する4個の揺動爪部材Rと、偶数段の偶数段歯車(第2,第4,第6被動変速歯車n2,n4,n6)に対応する4個の揺動爪部材Rは、互いに軸中心に90度回転した相対角度位置関係にある。
【0082】
奇数段歯車(第1,第3,第5被動変速歯車n1,n3,n5)に対応する4個の揺動爪部材Rは、歯車の正回転方向で当接して各奇数段被動変速歯車n1,n3,n5とカウンタ歯車軸12とが同期して回転するように係合する正回転奇数段揺動爪部材Raoと、歯車の逆回転方向で当接して各奇数段被動変速歯車n1,n3,n5とカウンタ歯車軸12とが同期して回転するように係合する逆回転奇数段係合部材Rboとが、それぞれ対称位置に一対ずつ設けられる。
【0083】
同様に、偶数段歯車(第2,第4,第6被動変速歯車n2,n4,n6)に対応する4個の揺動爪部材Rは、歯車の正回転方向で当接して各偶数段被動変速歯車n2,n4,n6とカウンタ歯車軸12とが同期して回転するように係合する正回転偶数段揺動爪部材Raeと、歯車の逆回転方向で当接して各偶数段被動変速歯車n2,n4,n6とカウンタ歯車軸12とが同期して回転するように係合する逆回転偶数段係合部材Rbeとが、それぞれ対称位置に一対ずつ設けられる。
【0084】
正回転奇数段揺動爪部材Raoが前記正回転奇数段用カムロッドCaoの移動により進退するピン部材23により揺動し、逆回転奇数段係合部材Rboが前記逆回転奇数段用カムロッドCboの移動により進退するピン部材23により揺動する。
同様に、正回転偶数段揺動爪部材Raeが前記正回転偶数段用カムロッドCaeの移動により進退するピン部材23により揺動し、逆回転偶数段係合部材Rbeが前記逆回転偶数段用カムロッドCbeの移動により進退するピン部材23により揺動する。
【0085】
カウンタ歯車軸12に係合手段20を組み込む場合、まず右端の軸受カラー部材13を中央円筒部12aの外周端部に外装し、その軸受カラー部材13の内側の軸方向溝12avに支軸ピン26の一端を嵌入するようにして右端の係合手段20を組み込み、次の軸受カラー部材13を前記支軸ピン26の他端を覆うように外装した後、前段と同じようにして次段の係合手段20を組み込むことを、順次繰り返して、最後に左端の軸受カラー部材13を外装して終了する。
【0086】
図12に示すように、軸受カラー部材13は、中央円筒部12aの長尺矩形凹部12pおよび短尺矩形凹部12q以外の軸方向位置に外装され、それは軸方向溝12avに一列に連続して埋設される支軸ピン26の隣り合う支軸ピン26,26に跨って配置され、支軸ピン26および揺動爪部材Rの脱落を防止する。
カウンタ歯車軸12の中央円筒部12aの軸方向溝12avに埋設される支軸ピン26は、中央円筒部12aの外周面に接する深さに埋設されるので、軸受カラー部材13が外装されると、ガタなく固定される。
【0087】
7個の軸受カラー部材13がカウンタ歯車軸12に等間隔に外装され、隣り合う軸受カラー部材13,13間に跨るようにして被動変速歯車nが回転自在に軸支される。
各被動変速歯車nは、左右内周縁部(内周面の左右周縁部)に切欠きが形成されて左右切欠きの間に薄肉環状の突条30が形成されており、この突条30を挟むように左右の軸受カラー部材13,13が切欠きに滑動自在に係合する(図2,図3参照)。
【0088】
この各被動変速歯車nの内周面の突条30に係合凸部31が周方向に等間隔に6箇所形成されている(図2,図3,図4,図5参照)。
係合凸部31は、側面視(図4,図5に示す軸方向視)で薄肉円弧状をなし、その周方向の両端面が前記揺動爪部材Rの係合爪部Rpと係合する係合面をなす。
【0089】
正回転奇数段揺動爪部材Rao(正回転偶数段揺動爪部材Rae)と逆回転奇数段係合部材Rbo(逆回転偶数段係合部材Rbe)は、互いに対向する側に係合爪部Rp,Rpを延出しており、正回転奇数段揺動爪部材Rao(正回転偶数段揺動爪部材Rae)は被動変速歯車n(およびカウンタ歯車軸12)の正回転方向で係合凸部31に当接して係合し、逆回転奇数段係合部材Rbo(逆回転偶数段係合部材Rbe)は被動変速歯車nの逆の回転方向で、係合凸部31に当接して係合する。
【0090】
なお、正回転奇数段揺動爪部材Rao(正回転偶数段揺動爪部材Rae)は被動変速歯車nの逆の回転方向では係合爪部Rpが外側に突出していても係合せず、同様に、逆回転奇数段係合部材Rbo(逆回転偶数段係合部材Rbe)は被動変速歯車nの正回転方向では係合爪部Rpが外側に突出していても係合しない。
【0091】
以上の係合手段20をカウンタ歯車軸12に組み付ける手順について説明する。
コントロール操作子55およびシフトピン58を取付けたコントロールロッド51に左右2つのロストモーション機構52,53を組み付け、ロストモーション機構52,53の外周囲に8本のカムロッドCao,Cao,Cae,Cae,Cbo,Cbo,Cbe,Cbeを配設した状態で、カウンタ歯車軸12の中空内に嵌挿する。
【0092】
その際、8本のカムロッドCao,Cao,Cae,Cae,Cbo,Cbo,Cbe,Cbeは、対応する8本のカム案内溝12gにそれぞれ挿入される。
そして、8本のカムロッドCao,Cao,Cae,Cae,Cbo,Cbo,Cbe,Cbeのカウンタ歯車軸12に対する左右移動位置は、ニュートラル位置になるように設定しておく。
【0093】
このような状態のカウンタ歯車軸12を、左を上にして立てた姿勢とする。
そして、まず図12に実線で示すように中央円筒部12aの下端(右端)に右端の軸受カラー部材13を外装してから、最も下の第1被動変速歯車n1に対応する周方向溝12cvにおけるピン孔12hにピン部材23を挿入し、スプリング受部12dに圧縮スプリング22の一端を支持させて揺動爪部材Rを長尺矩形凹部12p,短尺矩形凹部12q,周方向溝12cvに嵌合し、支軸ピン26を右端の軸受カラー部材13の内側の軸方向溝12avに嵌入すると同時に揺動爪部材Rの軸受凹部Rdに嵌合して揺動爪部材Rを組み付ける。
【0094】
カムロッドCはニュートラル位置にあって、ピン部材23はカム溝以外の摺接面に接して揺動爪部材Rのピン受部Rqを内側から押圧して圧縮スプリング22の付勢力に抗して揺動し係合爪部Rpを長尺矩形凹部12pに没して中央円筒部12aの外周面より外側に突出するものがない状態にしている。
【0095】
第1被動変速歯車n1に対応する周方向溝12cvにおける4個揺動爪部材Rを組み付けると、第1被動変速歯車n1を上から嵌挿して軸受カラー部材13に第1被動変速歯車n1の突条30を当接し切欠きを係合して組み付け、次に第2の軸受カラー部材13を上から嵌挿し第1被動変速歯車n1の切欠きに係合してカウンタ歯車軸12の所定位置に外装して第1被動変速歯車n1を軸方向に位置決めして取り付ける。
【0096】
次に、第2被動変速歯車n2用の係合手段20を組み付け、第2被動変速歯車n2を取り付け、以後、この作業を繰り返して残りの第3,第4,第5,第6被動変速歯車n3,n4,n5,n6が順次組み付けられ、最後に第7の軸受カラー部材13を外装する。
【0097】
こうして6個の被動変速歯車nがカウンタ歯車軸12に組み付けられた状態で、図1に示すように、カウンタ歯車軸12が左機関ケース1Lと右機関ケース1Rの側壁1RRに嵌着される左右のベアリング7L,7Rにカラー部材14L,14Rを介して挟まれるようにして回転自在に軸支されると、6個の被動変速歯車nと7個の軸受カラー部材13が交互に組み合わされて左右から挟まれ、軸方向の位置決めがなされる。
軸受カラー部材13は、各被動変速歯車nの軸方向の力を支え、軸方向の位置決めとスラスト力を受けることができる。
【0098】
このようにしてカウンタ歯車軸12に軸受カラー部材13を介して第1,第2,第3,第4,第5,第6被動変速歯車n1,n2,n3,n4,n5,n6が回転自在に軸支される。
【0099】
カムロッドCがニュートラル位置にあるので、全ての被動変速歯車nは、それぞれ対応する係合手段20のカムロッドCの移動位置によりピン部材23が突出して揺動爪部材Rのピン受部Rqを内側から押し上げ係合爪部Rpを内側に引っ込めた係合解除状態にあって、カウンタ歯車軸12に対して自由に回転する。
【0100】
一方、係合手段20のカムロッドCのニュートラル位置以外の移動位置によりピン部材23がカム溝vに入り揺動爪部材Rが揺動して係合爪部Rpを外側に突出した係合可能状態となれば、対応する被動変速歯車nの係合凸部31が係合爪部Rpに当接して、該被動変速歯車nの回転がカウンタ歯車軸12に伝達されるか、またはカウンタ歯車軸12の回転が該被動変速歯車nに伝達される。
【0101】
前記変速駆動手段50において、シフトセレクトレバーの手動操作によってシフトドラム67を所定量回動し、シフトドラム67の回動がシフト溝67vに嵌合したシフトピン58を介してコントロールロッド51を軸方向に所定量移動し、ロストモーション機構52,53を介して係合手段20の8本のカムロッドCao,Cao,Cae,Cae,Cbo,Cbo,Cbe,Cbeを連動する。
【0102】
カムロッドCが軸方向に移動することで、カムロッドCのカム面に摺接するピン部材23がカム溝vに入ったり抜けたりして進退し、揺動爪部材Rを揺動して、被動変速歯車nとの係合を解除し、他の被動変速歯車nと係合してカウンタ歯車軸12と係合する被動変速歯車nを変えることで変速が行われる。
【0103】
シフトセレクトレバーの手動操作によって変速する場合、一度のシフトセレクトレバーの操作は、シフトドラム67を所定角度回動し、シフトピン58,コントロールロッド操作子55を介してコントロールロッド51を所定量(変速1段分)移動し、シフトセレクトレバー自体は元に戻り、次の変速に備える。
【0104】
図2ないし図5は1速の加速状態を示しており、この1速の加速状態からシフトセレクトレバーの手動操作によって2速に変速する場合を考察してみると、シフトセレクトレバーの手動操作によってシフトドラム67が所定角度回動し、シフトピン58を介してコントロールロッド51を軸方向右方に所定量移動させる。
【0105】
コントロールロッド51が右方に移動すると、ロストモーション機構52,53のコイルスプリング52s,53sを介して8本のカムロッドCao,Cao,Cae,Cae,Cbo,Cbo,Cbe,Cbeを連動して軸方向右方に移動しようとするが、正回転奇数段用カムロッドCaoは、ピン部材23を介して作動する正回転奇数段揺動爪部材Raoが第1被動変速歯車n1の係合凸部31と係合して第1被動変速歯車n1から動力を受けているので、正回転奇数段揺動爪部材Raoを揺動して係合を解除するのに相当大きな摩擦抵抗があり、当初直ぐには移動せず、よって逆回転偶数段用カムロッドCbeも停止したままであるが、正回転偶数段用カムロッドCaeと逆回転奇数段用カムロッドCboは抵抗なく移動する。
逆回転奇数段用カムロッドCboの移動で1速の逆回転奇数段揺動爪部材Rboが係合爪部Rpを内側に引っ込める。
【0106】
図13ないし図15を参照して、正回転偶数段用カムロッドCaeの移動で、カム溝v2にピン部材23が入り、よって第2被動変速歯車n2に対応する正回転偶数段揺動爪部材Raeが圧縮スプリング22の付勢力および係合爪部Rpの遠心力により揺動して係合爪部Rpを外側に突出し、第2被動変速歯車n2に係合可能となり、第1被動変速歯車n1とともに回転するカウンタ歯車軸12より高速で回転する第2被動変速歯車n2の係合凸部31が正回転偶数段揺動爪部材Raeの外側に突出した係合爪部Rpに追いつき当接する。
【0107】
図13ないし図15は、第2被動変速歯車n2の係合凸部31が正回転偶数段揺動爪部材Raeの外側に突出した係合爪部Rpに追いつく直前の状態を示しており、図14で第1被動変速歯車n1の係合凸部31が正回転奇数段揺動爪部材Raoと係合した状態で、同時に図15に示すように第2被動変速歯車n2の係合凸部31が正回転偶数段揺動爪部材Raeの外側に突出した係合爪部Rpに追いつく直前である。
【0108】
この時点で、まだ正回転奇数段揺動爪部材Raoが第1被動変速歯車n1の係合凸部31と係合して第1被動変速歯車n1から動力を受けているので、コントロールロッド51は移動しているが、摩擦抵抗により正回転奇数段用カムロッドCaoは停止したままである。
【0109】
図13ないし図15に示す状態から、第2被動変速歯車n2の係合凸部31が正回転偶数段揺動爪部材Raeの外側に突出した係合爪部Rpに追いつくと、より高速で回転する第2被動変速歯車n2によりカウンタ歯車軸12が第2被動変速歯車n2と同じ回転速度で回転し始め、第1被動変速歯車n1の係合凸部31から正回転奇数段揺動爪部材Raoの係合爪部Rpが離れ、実際の1速から2速へのシフトアップが実行される。
【0110】
第1被動変速歯車n1の係合凸部31から正回転奇数段揺動爪部材Raoの係合爪部Rpが離れることで、正回転奇数段揺動爪部材Raoを固定する摩擦抵抗が無くなり、ロストモーション機構53のコイルスプリング53sにより付勢されていた正回転奇数段用カムロッドCaoが後れて右方に移動してカム溝v1に入っていたピン部材23が抜け出し、正回転奇数段揺動爪部材Raoを揺動してその係合爪部Rpを内側に引っ込める。
【0111】
以上のように、1速の加速状態から減速比が1段小さい2速状態にシフトアップする際に、第1被動変速歯車n1の係合凸部31が正回転奇数段揺動爪部材Raoの係合爪部Rpに当接して係合しカウンタ歯車軸12を第1被動変速歯車n1と同速度で回転させている状態で、より高速で回転する第2被動変速歯車n2の係合凸部31が正回転偶数段揺動爪部材Raeの係合爪部Rpに追いつき当接してカウンタ歯車軸12を第2被動変速歯車n2とともにより高速度で回転させて変速するので、第1被動変速歯車n1の係合凸部31から正回転奇数段揺動爪部材Raoの係合爪部Rpは自然と離れていき係合が円滑に解除されるため、係合解除に力を要せず滑らかに作動して滑らかなシフトアップを行うことができる。
【0112】
2速から3速、3速から4速、4速から5速、5速から6速の各シフトアップも同様に、被動変速歯車nが揺動爪部材Rに係合している状態で、減速比が1段小さい被動変速歯車nが揺動爪部材Rに係合してシフトアップがなされるので、係合解除に力を要せず滑らかに作動して変速用のクラッチを必要とせず、かつシフトアップ時の切換え時間に全くロスがなく、駆動力の抜けがないとともに変速ショックも小さく、滑らかなシフトアップを行うことができる。
【0113】
シフトダウンも同様に、被動変速歯車nが揺動爪部材Rに係合している状態で、減速比が1段大きい被動変速歯車nに揺動爪部材Rが係合してシフトダウンがなされるので、係合解除に力を要せず滑らかに作動して変速用のクラッチを必要とせず、かつシフトダウン時の切換え時間に全くロスがなく、駆動力の抜けがないとともに変速ショックも小さく、滑らかなシフトダウンを行うことができる。
【0114】
以上のような多段変速機において、カウンタ歯車軸12の左側円筒部12bにスプライン嵌合される出力スプロケット32の取付構造について図16および図17に基づいて説明する。
【0115】
図16を参照して、カウンタ歯車軸12の左側円筒部12bに嵌合する円筒状のカラー部材33がカウンタ歯車軸12を軸支するベアリング7Lのインナレースに当接しており、カウンタ歯車軸12のカラー部材33が嵌合される箇所に径方向に貫通された給油導入孔12xが複数穿孔され、対応してカラー部材33にも導入孔33xが形成され、その外周を環状シール部材39が覆っている。
カラー部材33の左端は縮径して段差部33aが形成されている。
なお、カウンタ歯車軸12の左側円筒部12bの内側には有底円筒状の蓋部材40が嵌入されている。
【0116】
カウンタ歯車軸12の左側円筒部12bは、カラー部材33の左端部辺りから外側方にスプライン溝12sが形成され、前記したように軸端部は雄ねじ12eが形成されている。
このカウンタ歯車軸12の左側円筒部12bに皿バネ34を嵌入してカラー部材33の段差部33aに内周縁を嵌合する。
【0117】
そして、出力スプロケット32をカウンタ歯車軸12のスプライン溝12sにスプライン嵌合する。
出力スプロケット32は、スプライン歯32aを支持する内周基部の内周端が軸方向外側に延出して円筒基部32bを構成し、円筒基部32bの内周面にスプライン突条32sが形成されている。
この出力スプロケット32のスプライン突条32sをカウンタ歯車軸12のスプライン溝12sにスプライン嵌合すると、出力スプロケット32はカラー部材33の段差部33aに嵌合した皿バネ34を押圧する。
【0118】
出力スプロケット32を嵌挿したのち、環状のスペーサ35をカウンタ歯車軸12の軸端にスプライン溝12sの手前まで嵌挿して出力スプロケット32の円筒基部32bに当接する。
スペーサ35は、出力スプロケット32の円筒基部32bの左端面に対向する内外径の円環板状金属部材であり、DLC(Diamond-Like Carbon)加工が施されている。
DLCは硬質炭素膜であり、表面平滑性および耐摩耗性に極めて優れている。
【0119】
そして、カウンタ歯車軸12の軸端に円筒状の介装部材36を当接し、袋ナット37をカウンタ歯車軸12の軸端の雄ねじ12eに螺合する。
袋ナット37は本体である有底円筒部37aの内周面に雌ねじ37eが形成され、有底円筒部37aの底壁より作業用筒部37bが突出している。
介装部材36は、円筒部36aの外周面にカウンタ歯車軸12の軸端に対向するフランジ36fが形成されており、フランジ36fは円筒部36aの左端面から所定距離に位置している。
【0120】
介装部材36はフランジ36fをカウンタ歯車軸12の軸端に当接する。
そして、袋ナット37を介装部材36を覆うように被せてカウンタ歯車軸12の雄ねじ12eに螺合すると、袋ナット37の有底円筒部37aの底面37tが介装部材36に当接して所定位置に固定される。
このとき、袋ナット37の有底円筒部37aの右側開口端面は、皿バネ34により左方に付勢される出力スプロケット32とともに移動するスペーサ35に当接する。
【0121】
こうして出力スプロケット32のカウンタ歯車軸12への組付けが完了した状態を、図17に示す。
袋ナット37は、カウンタ歯車軸12の雄ねじ12eに螺合し、袋ナット37の底面37tとカウンタ歯車軸12の軸端との間に介装部材36が挟まれて介装されて、カウンタ歯車軸12の軸方向所定位置に固着され、皿バネ34により外側方(左方)に押圧された出力スプロケット32の移動がスペーサ35を介して袋ナット37の開口端部により規制される。
【0122】
すなわち、出力スプロケット32は皿バネ34に付勢されながら軸方向所要範囲内の移動が許容されている。
出力スプロケット32を直接締め付けてカウンタ歯車軸12に固定することなく、軸方向の移動を許容し、出力スプロケット32に加わる軸方向に振れる力成分を皿バネ34により吸収しながら所要の軸方向範囲内に出力スプロケット32を常に位置させて、安定した動力伝達を行うことができる。
【0123】
次に、別の実施の形態に係る出力スプロケットの取付構造を、図18および図19に基づいて説明する。
本出力スプロケット80の取付構造は、前記実施の形態に係る出力スプロケット32の取付構造と比べると、出力スプロケット80以外は略同じであり、同じ部材は同じ符号を使用する。
【0124】
出力スプロケット80は、直接カウンタ歯車軸12のスプライン溝12sに嵌合するのではなく、出力スプロケット80を内側から支持するトルク検出用円筒部材81がスプライン嵌合する。
出力スプロケット80は、スプロケット歯80aを支持する内周基部の内周端が軸方向外側に比較的長く延出して円筒基部80bを構成している。
【0125】
トルク検出用円筒部材81は、出力スプロケット80の円筒基部80bの内側に円筒部81bが嵌合するとともに、円筒部81bの外側端(左端)に形成されたフランジ81aが出力スプロケット80の円筒基部80bの外側端に左側から当接してフランジ81aの外側端とがノックピン82および図示されないボルトにより固着される。
なお、出力スプロケット80の円筒基部80bの右端は、内側に中心軸に向けて突出した内フランジ81cが、トルク検出用円筒部材81の円筒部81bの右端外周縁の切欠きに係合している。
【0126】
トルク検出用円筒部材81の円筒部81bの内周面の右側部分にカウンタ歯車軸12のスプライン溝12sに嵌合するスプライン突条81sが形成され、円筒部81bのスプライン突条81sより左側部分が外周面の外径が縮径し内周面の内径が段差部81dを構成して拡径して、くびれ形状をなして薄肉のねじれ検出円筒部81tを形成している。
なお、トルク検出用円筒部材81のフランジ81aの付け根辺りに貫通孔81hが穿孔されている。
ねじれ検出円筒部81tの外周面にトルクセンサの検出部である磁性体シート等を貼りつけ、その信号線を貫通孔81hを通して外部に導くことができる。
【0127】
このように、内外で嵌合したトルク検出用円筒部材81と出力スプロケット80は、一体となって、先に皿バネ34が嵌入されたカウンタ歯車軸12の左側円筒部12bにスプライン嵌合する。
すなわち、トルク検出用円筒部材81の円筒部81bの右側のスプライン突条81sをカウンタ歯車軸12のスプライン溝12sにスプライン嵌合し出力スプロケット80が皿バネ34を押圧する。
【0128】
その後、スペーサ35をカウンタ歯車軸12の軸端に嵌挿すると、スペーサ35はトルク検出用円筒部材81の円筒部81bの左側のねじれ検出円筒部81tの内側に挿入され、円筒部81bの段差部81dに当接する。
そして、介装部材36を内側に介装して袋ナット37を、カウンタ歯車軸12の軸端の雄ねじ12eに螺合する。
袋ナット37の有底円筒部37aはトルク検出用円筒部材81のねじれ検出円筒部81tの内側に挿入される。
【0129】
こうして、出力スプロケット80が、トルク検出用円筒部材81を介してカウンタ歯車軸12に組付けられると、袋ナット37は介装部材36を介してカウンタ歯車軸12の軸方向所定位置に固着され、皿バネ34により外側方(左方)に押圧された出力スプロケット80の移動がトルク検出用円筒部材81の段差部81dに当接するスペーサ35を介して袋ナット37の開口端部により規制される。
【0130】
出力スプロケット80を直接締め付けてカウンタ歯車軸12に固定することなく、軸方向の移動を許容し、出力スプロケット80に加わる軸方向に振れる力成分を皿バネ34により吸収しながら所要の軸方向範囲内に出力スプロケット32を常に位置させて、安定した動力伝達を行うことができる。
【0131】
トルクセンサ90は、円筒状本体90aに回転円板部90bが同軸に組付けられたもので、円板部90bは円筒状本体90aとの間でスリップリングを構成している。
このようなトルクセンサ90の円板部90bを円筒状のトルクセンサ保持部材91が保持し、このトルクセンサ保持部材91がトルク検出用円筒部材81のフランジ81aにボルト(図示せず)により締結される。
なお、このボルトは、トルクセンサ保持部材91とトルク検出用円筒部材81のフランジ81aと出力スプロケット80の円筒基部80bの左端とを一体に締結する。
【0132】
したがって、出力スプロケット80とともにトルク検出用円筒部材81、トルクセンサ保持部材91およびトルクセンサ90の回転円板部90bが、一緒に回転する。
ねじれ検出円筒部81tに設けられたトルクセンサ検出部から延出した信号線は、貫通孔81hを通って、回転円板部90bに連結することができ、検出信号をトルクセンサ90の円筒状本体90aで入力処理することができる。
【0133】
カウンタ歯車軸12の回転力は、トルク検出用円筒部材81のスプライン嵌合部からねじれ検出円筒部81tを経てねじれ検出円筒部81tの端部フランジ81aから出力スプロケット80に伝達されるので、ねじれ検出円筒部81tのねじれ状態をトルクセンサ検出部で検出することで、駆動トルクが容易に検出される。
【符号の説明】
【0134】
m…駆動変速歯車、m1〜m6…第1〜第6駆動変速歯車、
n…被動変速歯車、n1〜n6…第1〜第6被動変速歯車、
10…多段変速機、11…メイン歯車軸、12…カウンタ歯車軸、13…軸受カラー部材、
20…係合手段、23…ピン部材、31…係合凸部、
32…出力スプロケット、33…カラー部材、34…皿バネ、35…環状スペーサ、36…環状介装部材、37…ナット部材、38…チェーン、39…環状シール部材、
C…カムロッド、p…係止爪、v…カム溝、R…揺動爪部材、Rp…係合爪部、
50…変速駆動手段、51…コントロールロッド、51a,51b…外周凹部、51as,51bs…拡径ストッパ部、52,53…ロストモーション機構、52h,53h…スプリングホルダ、52ha,53ha…内周凹部、52s,53s…コイルスプリング、52c,53c…コッタ、55…コントロールロッド操作子、58…シフトピン、59…係合ピン、60…溝条、67…シフトドラム、67v…シフト溝、
80…出力スプロケット、81…トルク検出用円筒部材、81t…ねじれ検出円筒部、
90…トルクセンサ、91…トルクセンサ保持部材。
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーユニット内燃機関の出力軸に取り付けられる出力スプロケットの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の機関ケースに変速機が組み込まれ、変速機のカウンターシャフト(被動歯車軸)を出力軸として、その端部に出力スプロケットが取り付けられた例がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−085460号公報
【0004】
同特許文献1に開示された多段変速機において、カウンターシャフト(被動歯車軸)の軸端部は、縮径され段差部を有して形成された細径部にインボリュートスプライン係合歯が形成されており、段差部にカラー部材を挟むように出力スプロケットがスプライン嵌合し、カウンターシャフトの端面にワッシャを介装してボルトを締めこんでいる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
すなわち、特許文献1に開示された出力スプロケット取付構造では、出力スプロケットは段差部とワッシャとの間でカラー部材により位置決めされて固定された構造である。
したがって、出力スプロケットは軸方向に移動することが全くできず、チェーンの巻掛けによる軸方向に振れる力成分を吸収することができないため、安定した動力伝達を行うことが難しい。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みなされたもので、その目的とする処は、軸方向に振れる力成分を吸収しながら所要の軸方向範囲内に出力スプロケットを常に位置させて、安定した動力伝達を行うことができる多段変速機の出力スプロケット取付構造を供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、
内燃機関の出力軸(12)の駆動をチェーン(38)に伝達するための出力スプロケット(32)の取付構造において、
前記出力軸(12)に嵌合された皿バネ(34)が段差部(33a)に当接して位置決めされ、
前記出力軸(12)の前記段差部(33a)より外側部に形成されたスプライン溝(12s)にスプライン嵌合した前記出力スプロケット(32)が前記皿バネ(34)に押圧され、
前記出力軸(12)の端部に形成された雄ねじ(12e)に螺合する袋ナット(37)が前記出力軸(12)の軸端に底面を規制されて固定され、
前記皿バネ(34)により押圧された前記出力スプロケット(32)の軸方向の移動が前記袋ナット(37)の開口端部により規制されることを特徴とする出力スプロケットの取付構造である。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の出力スプロケットの取付構造において、
前記袋ナット(37)の開口端部と前記出力スプロケット(32)との間に環状のスペーサ(35)を挿入したことを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の出力スプロケットの取付構造において、
前記スペーサ(35)はDLC加工が施されていることを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれか1項記載の出力スプロケットの取付構造において、
前記出力軸(12)の軸端と前記袋ナット(37)の底面との間に介装部材(36)が介装されることを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明は、
内燃機関の出力軸(12)の駆動をチェーン(38)に伝達するための出力スプロケット(80)の取付構造において、
前記出力軸(12)に嵌合された皿バネ(34)が、段差部(33a)に当接して位置決めされ、
前記出力軸(12)の前記段差部(33a)より軸方向外側部に形成されたスプライン溝(12s)にトルク検出用円筒部材がスプライン嵌合され、
前記出力スプロケット(80)は、スプロケット歯(80a)を支持する内周基部の内周端が軸方向外側に延出して円筒基部(80b)を構成し、
前記トルク検出用円筒部材(81)の外周を前記出力スプロケット(80)の円筒基部(80b)が覆い、
前記円筒基部(80b)の軸方向外側端部が、前記トルク検出用円筒部材(81)のスプライン嵌合部(81s)より軸方向外側に延出したねじれ検出円筒部(81t)の端部(81a)に固着され、
前記円筒基部(80b)の軸方向内側端部が前記皿バネ(34)に押圧され、
前記出力軸(12)の端部に形成された雄ねじ(12e)に螺合する袋ナット(37)が、前記出力軸(12)の軸端に底面を規制されて固定され、
前記皿バネ(34)により押圧された前記出力スプロケット(80)の軸方向の移動が前記袋ナット(37)の開口端部により規制されることを特徴とする出力スプロケットの取付構造である。
【0012】
請求項6記載の発明は、請求項1ないし請求項5のいずれか1項記載の出力スプロケットの取付構造において、
互いに平行な歯車軸(11,12)にそれぞれ複数の駆動歯車(m)と被動歯車(n)が変速段毎に常時噛み合い状態で軸支され、
前記駆動歯車(m)と前記被動歯車(n)の一方の複数の歯車(m)が歯車軸(11)に固定され、他方の複数の歯車(n)と歯車軸(12)との間で歯車軸(12)と各歯車(n)の係合を歯車ごとに切り換える係合切換機構(20)が備えられ、
変速駆動機構(50)のコトロールロッド(51)が歯車軸(12)の内部を軸方向に移動することにより前記係合切換機構(20)が駆動されて変速を行う多段変速機(10)における前記被動歯車(n)の歯車軸(12)が、前記出力軸(12)であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の出力スプロケット(32)の取付構造によれば、出力軸(12)に嵌合された皿バネ(34)が、段差部(33a)に当接して位置決めされ、出力軸(12)の段差部(33a)より外側部に形成されたスプライン溝(12s)にスプライン嵌合した出力スプロケット(32)が、皿バネ(34)に押圧され、出力軸(12)の端部に形成された雄ねじ(12e)に螺合する袋ナット(37)が、出力軸(12)の軸端に底面を規制されて固定され、皿バネ(34)により押圧された出力スプロケット(32)の軸方向の移動が袋ナット(37)の開口端部により規制されるので、少ない部品点数で、出力スプロケット(32)を直接締め付けて固定することなく軸方向の移動を許容し、出力スプロケット(32)に加わる軸方向に振れる力成分を皿バネ(34)により吸収しながら所要の軸方向範囲内に出力スプロケット(32)を常に位置させて、安定した動力伝達を行うことができる。
【0014】
請求項2記載の出力スプロケット(32)の取付構造によれば、袋ナット(37)の開口端部と出力スプロケット(32)との間に環状のスペーサ(35)を挿入したので、出力スプロケット(32)が直接袋ナット(37)の開口端部に当接することにより袋ナット(37)の螺合が緩むようなことは防止できる。
【0015】
請求項3記載の出力スプロケット(32)の取付構造によれば、前記スペーサ(35)はDLC加工が施されているので、出力スプロケット(32)のスペーサ(35)との当接による摩擦力が大幅に低減され、出力スプロケット(32)の回転による袋ナット(37)の螺合への影響を回避するとともに、出力スプロケット(32)の回転を円滑にすることができる。
【0016】
請求項4記載の出力スプロケット(32)の取付構造によれば、出力軸(12)の軸端と袋ナット(37)の底面との間に介装部材(36)が介装されるので、出力軸(12)の軸端の加工が容易であるとともに、特殊な袋ナット(32)が不要で汎用品を使用することができる。
【0017】
請求項5記載の出力スプロケット(80)の取付構造によれば、出力軸(12)のスプライン溝(12s)にスプライン嵌合するトルク検出用円筒部材(81)の外周を出力スプロケット(80)の円筒基部(80b)が覆い、円筒基部(80b)の軸方向外側端部が、前記トルク検出用円筒部材(81)のスプライン嵌合部(81s)より軸方向外側に延出したねじれ検出円筒部(81t)の端部(81a)に固着され、円筒基部(80b)の軸方向内側端部が皿バネ(34)に押圧され、出力軸(12)の端部に形成された雄ねじ(12e)に螺合する袋ナット(37)が、出力軸(12)の軸端に底面を規制されて固定され、皿バネ(34)により押圧された出力スプロケット(80)の軸方向の移動が袋ナット(37)の開口端部により規制されるので、出力スプロケット(80)をトルク検出用円筒部材(81)とともに直接締め付けて固定することなく軸方向の移動を許容し、出力スプロケット(80)に加わる軸方向に振れる力成分を皿バネ(34)により吸収しながら所要の軸方向範囲内に出力スプロケット(80)を常に位置させて、安定した動力伝達を行うことができる。
トルク検出用円筒部材(81)は、出力軸(12)にスプライン嵌合するスプライン嵌合部(81s)より軸方向外側に延出してねじれ検出円筒部(81t)が形成されて、その端部(81a)を出力スプロケット(80)の円筒基部(80b)の端部に固着しているので、ねじれ検出円筒部(81t)のねじれを検出することでトルクを容易に測定できる。
【0018】
請求項6記載の出力スプロケット(80)の取付構造によれば、互いに平行な共に中空軸である歯車軸(11,12)にそれぞれ複数の駆動歯車(m)と被動歯車(n)が変速段毎に常時噛み合い状態で軸支され、駆動歯車(m)と被動歯車(n)の一方の複数の歯車(m)が歯車軸(11)に固定され、他方の複数の歯車(n)と歯車軸(12)との間で歯車軸(12)と各歯車(n)の係合を歯車ごとに切り換える係合切換機構(20)が備えられ、変速駆動機構(50)のコトロールロッド(51)が歯車軸(12)の内部を軸方向に移動することにより前記係合切換機構(20)が駆動されて変速を行う多段変速機(10)における前記被動歯車(n)の歯車軸(12)が、前記出力軸(12)であるので、出力スプロケット(80)をボルトにより直接締め付けできない中空の出力軸(12)の端部に、部品点数の少ない簡単な構造で出力スプロケット(80)を所要の軸方向範囲内に移動可能に支持することができ、安定した動力伝達を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施の形態に係る多段変速機の断面図である。
【図2】カウンタ歯車軸およびその周りの構造を示す断面図(図4,図5のII−II線断面図)である。
【図3】カウンタ歯車軸およびその周りの構造を示す別の断面図(図4,図5のIII−III線断面図)である。
【図4】図2,図3のIV−IV線断面図である。
【図5】図2,図3のV−V線断面図である。
【図6】コントロールロッドとロストモーション機構の分解斜視図である。
【図7】コントロールロッドにロストモーション機構組み付けた状態とカムロッド等の分解斜視図である。
【図8】カウンタ歯車軸およびピン部材とスプリングの一部の分解斜視図である。
【図9】カウンタ歯車軸の左側面図(図8のIX矢視図)である。
【図10】揺動爪部材および支軸ピン,ピン部材,スプリングの分解斜視図である。
【図11】コントロールロッドに変速駆動手段の一部および係合手段を組み付けた状態を示す斜視図である。
【図12】図11に示す状態のカウンタ歯車軸に1つの軸受カラー部材を外装した状態を示す斜視図である。
【図13】2速へのシフトアップ完了直前のカウンタ歯車軸およびその周りの構造を示す断面図である。
【図14】図13のXIV−XIV線断面図である。
【図15】図13のXV−XV線断面図である。
【図16】出力スプロケットのカウンタ歯車軸への取付構造を説明するための分解断面図である。
【図17】同出力スプロケットのカウンタ歯車軸への取付構造を示す断面図である。
【図18】別の実施の形態における出力スプロケットのカウンタ歯車軸への取付構造を説明するための分解断面図である。
【図19】同出力スプロケットのカウンタ歯車軸への取付構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る一実施の形態について図1ないし図15に基づいて説明する。
本実施の形態に係る多段変速機10は、自動二輪車に搭載される内燃機関に組み込まれて構成されている。
図1は、該多段変速機10の断面図であり、同図1に示すように、該多段変速機10は、内燃機関と共通の機関ケース1に設けられている。
左右割りの左機関ケース1Lと右機関ケース1Rが合体して構成された機関ケース1は、変速室2を形成しており、同変速室2にメイン歯車軸11とカウンタ歯車軸12が互いに平行に左右方向に指向して回転自在に軸支されている。
【0021】
メイン歯車軸11は、左機関ケース1Lの側壁と右機関ケース1Rの別体の側壁1RRにベアリング3L,3Rを介して回転自在に軸支され、右ベアリング3Rを貫通して変速室2から突出した右端部には多板式の摩擦クラッチ5が設けられている。
【0022】
摩擦クラッチ5の左側には、図示されないクランク軸の回転が伝達されるプライマリ被動ギヤ4がメイン歯車軸11に回転自在に軸支されている。
内燃機関のクランク軸の回転がプライマリ被動ギヤ4から係合状態の摩擦クラッチ5を介してメイン歯車軸11に伝達される。
【0023】
他方、カウンタ歯車軸12も、左機関ケース1Lの側壁と右機関ケース1Rの側壁1RRにベアリング7L,7Rを介して回転自在に軸支され、左ベアリング7Lを貫通して変速室2から突出した左端部には出力スプロケット32がスプライン嵌合して取り付けられる。
出力スプロケット32の取付構造については、後記する。
【0024】
出力スプロケット32に巻き掛けられた駆動チェーン38が後方の図示されない後輪を駆動するスプロケットに巻き掛けられ、カウンタ歯車軸12の回転動力が後輪に伝達され、車両が走行する。
【0025】
メイン歯車軸11には、左右のベアリング3L,3Rの間に駆動変速歯車m群がメイン歯車軸11と一体に回転可能にメイン歯車軸11に構成されている。
右ベアリング3Rに沿って第1駆動変速歯車m1がメイン歯車軸11に一体に形成され、メイン歯車軸11の同第1駆動変速歯車m1と左ベアリング3Lとの間に形成されたスプラインに右から左へ順に順次径を大きくした第2,第3,第4,第5,第6駆動変速歯車m2,m3,m4,m5,m6がスプライン嵌合されている。
【0026】
他方、カウンタ歯車軸12には、左右のベアリング7L,7Rの間に被動変速歯車n群が円環状の軸受カラー部材13を介して回転自在に軸支されている。
カウンタ歯車軸12において、右ベアリング7Rの左に介装されたカラー部材14Rを介して外装された右端の軸受カラー部材13と、左ベアリング7Lの右に介装されたカラー部材14Lを介して外装された左端の軸受カラー部材13との間に、等間隔に5つの軸受カラー部材13が外装され、この全部で7つの軸受カラー部材13の隣り合う軸受カラー部材13,13間に跨るようにして右から左へ順に順次径を小さくした第1,第2,第3,第4,第5,第6被動変速歯車n1,n2,n3,n4,n5,n6が回転自在に軸支されている。
【0027】
メイン歯車軸11と一体に回転する第1,第2,第3,第4,第5,第6駆動変速歯車m1,m2,m3,m4,m5,m6は、カウンタ歯車軸12に回転自在に軸支される対応する第1,第2,第3,第4,第5,第6被動変速歯車n1,n2,n3,n4,n5,n6にそれぞれ常時噛み合っている。
【0028】
第1駆動変速歯車m1と第1被動変速歯車n1の噛合が、最も減速比の大きい1速を構成し、第6駆動変速歯車m6と第6被動変速歯車n6の噛合が、最も減速比の小さい6速を構成し、その間順次減速比が小さくなって2速、3速、4速、5速が構成される。
【0029】
カウンタ歯車軸12に変速段が奇数段の奇数段歯車(第1,第3,第5被動変速歯車n1,n3,n5)と変速段が偶数段の偶数段歯車(第2,第4,第6被動変速歯車n2,n4,n6)が交互に配列されることになる。
【0030】
中空筒状をなすカウンタ歯車軸12は、各被動変速歯車nと係合可能な係合手段20が後記するように組み込まれ、後記するように係合手段20の1構成要素である種類ごと2本ずつ4種類の計8本のカムロッドC(Cao,Cao,Cae,Cae,Cbo,Cbo,Cbe,Cbe)がカウンタ歯車軸12の中空内周面に形成された後記するカム案内溝12gに嵌合して軸方向に移動自在に設けられる。
【0031】
このカムロッドCを駆動して変速する変速駆動手段50の1構成要素であるコントロールロッド51が、カウンタ歯車軸12の中空中心軸に挿入されており、コントロールロッド51の軸方向の移動は、ロストモーション機構52,53を介して連動してカムロッドCを軸方向に移動する。
【0032】
このコントロールロッド51を軸方向に移動する機構が、右機関ケース1Rに設けられている。
コントロールロッド51の軸方向の移動は、ロストモーション機構52,53を介してカムロッドCを軸方向に連動し、このカムロッドCの移動がカウンタ歯車軸12に組み込まれた係合手段20により各被動変速歯車nを選択的にカウンタ歯車軸12と係合して変速を行う。
【0033】
図6を参照して、変速駆動手段50のコントロールロッド51は、円柱棒状をなし、軸方向の左右2か所に縮径して形成された外周凹部51a,51bがそれぞれ所定長さに亘って形成されている。
コントロールロッド51の右端は雄ねじが形成された雄ねじ端部51bbとなっており、雄ねじ端部51bbの手前に6角形状のナット部51cが形成されている。
【0034】
このコントロールロッド51の左右の外周凹部51a,51bにそれぞれ対応してロストモーション機構52,53が組み付けられる。
左右のロストモーション機構52,53は、同じ構造のものを左右に配設している。
【0035】
左側のロストモーション機構52は、コトロールロッド51を摺動自在に嵌挿するスプリングホルダ52hが長尺ホルダ52hlと短尺ホルダ52hsの連結で構成され、内周面にコトロールロッド51の外周凹部51aに対応する内周凹部52haが形成されている。
【0036】
このスプリングホルダ52hにコントロールロッド51を貫通させてスプリングホルダ52hを外周凹部51aに位置させたとき、スプリングホルダ52hの内周凹部52haとコントロールロッド51の外周凹部51aの両空間が共通の空間を構成する。
【0037】
スプリングホルダ52hの内周凹部52haとコントロールロッド51の外周凹部51aの両空間に跨るようにスプリング受けである左右一対のコッタ52c,52cが対向して嵌挿され、両コッタ52c,52c間にコントロールロッド51に巻回される圧縮コイルスプリング52sが介装されて両コッタ52c,52cを離間する方向に付勢する。
なお、コッタ52cは、スプリングホルダ52hの内周凹部52haの内径を外径とし、コトロールロッド51の外周凹部51aの外径を内径とした中空円板状をなし、組み付けのため半割りにされている。
【0038】
右側のロストモーション機構53(スプリングホルダ53h,長尺ホルダ53hl,短尺ホルダ53hs,内周凹部53ha,コッタ53c,圧縮コイルスプリング53s)も同じ構造をしてコトロールロッド51の外周凹部51bに配設される。
したがって、コトロールロッド51が軸方向に移動すると、左右のロストモーション機構52,53の圧縮コイルスプリング52s,53sを介してスプリングホルダ52h,53hが軸方向に移動する。
【0039】
このコントロールロッド51の左右の外周凹部51a,51bに取り付けられたロストモーション機構52,53のスプリングホルダ52h,53hの外周面に、8本のカムロッドC(Cao,Cao,Cae,Cae,Cbo,Cbo,Cbe,Cbe)が放射位置にあって当接される(図7参照)。
【0040】
カムロッドCは、断面が矩形で軸方向に長尺に延びる角柱棒状部材であり、スプリングホルダ52h,53hと接する内周側面の反対側の外周側面がカム面を形成しており、カム面にカム溝vが所要3か所に形成され、内周側面にはスプリングホルダ52h,53hのいずれか一方を左右から挟むように係止する一対の係止爪pが突出している。
カムロッドCは、断面が特別な形状をしておらず概ね外形が単純な矩形の角柱棒状部材であるので、カムロッドCを容易に製造することができる。
【0041】
カム溝v1,v3,v5が奇数段歯車(第1,第3,第5被動変速歯車n1,n3,n5)に対応する3か所に形成された奇数段用カムロッドCao,Cboには、正回転(加速時に被動変速歯車nからカウンタ歯車軸12に力が加わる回転方向)用と逆回転(減速時に被動変速歯車nからカウンタ歯車軸12に力が加わる回転方向)用の2種類があり、一方の正回転奇数段用カムロッドCaoは、内周側面に右側スプリングホルダ53hに係止する係止爪pを有し、他方の逆回転奇数段用カムロッドCboは、内周側面に左側スプリングホルダ52hに係止する係止爪pを有する(図7参照)。
【0042】
同様に、カム溝v2,v4,v6が偶数段の偶数段歯車(第2,第4,第6被動変速歯車n2,n4,n6)に対応する3か所に形成された偶数段用カムロッドCae,Cbeには、正回転用と逆回転用の2種類があり、一方の正回転偶数段用カムロッドCaeは、内周側面に左側スプリングホルダ52hに係止する係止爪pを有し、他方の逆回転偶数段用カムロッドCbeは、内周側面に右側スプリングホルダ53hに係止する係止爪pを有する(図7参照)。
【0043】
したがって、コントロールロッド51の軸方向の移動により、右側のロストモーション機構53の圧縮コイルスプリング53sを介してスプリングホルダ53hとともに正回転奇数段用カムロッドCaoと逆回転偶数段用カムロッドCbeが軸方向に連動し、左側のロストモーション機構52のコイルスプリング52sを介してスプリングホルダ52hとともに逆回転奇数段用カムロッドCboと正回転偶数段用カムロッドCaeが軸方向に連動する。
【0044】
図7に示すように、コントロールロッド51のナット部51cより右側の右端部分には、円筒状をしたコントロールロッド操作子55が、その内側に嵌装されたボールベアリング56を介して取り付けられる。
【0045】
ボールベアリング56は、軸方向に2個連結したもので、コントロールロッド51のナット部51cより右側の右端部分に嵌入され、雄ねじ端部51bbに螺合されるナット57によりナット部51cとの間で挟まれて締結される。
【0046】
したがって、コントロールロッド操作子55は、コントロールロッド51の右端部を回転自在に保持している。
このコントロールロッド操作子55の螺着されたナット57より右側に延出した円筒部に直径方向に穿孔したピン孔55hが形成されており、同ピン孔55hにシフトピン58が貫通する。
【0047】
シフトピン58は、コトロールロッド操作子55を貫通して一方にのみ突出するもので(図2参照)、図14に示すように、その突出する端部が後記するシフトドラム67のシフト案内溝Gに摺動自在に係合する円柱状の係合部58aであり、コトロールロッド操作子55を貫通する小径円柱部58cと係合部58aとの間に直方体状をした摺動部58bが形成されている。
右機関ケース1Rの側壁1RRの右方に突出したガイド部1Raに溝条60が左右方向に指向して形成されており、この溝条60にシフトピン58の直方体状をした摺動部58bが摺動自在に嵌合してシフトピン58の回り止めとしている。
【0048】
側壁1RRには右方に突出して支軸65が植設されて、同支軸65にベアリング66を介してシフトドラム67が回動自在に軸支されており、このシフトドラム67のシフト溝67vにシフトピン58の突出した係合部58aが摺動自在に嵌合している。
【0049】
シフトドラム67のシフト溝67vは、ドラム外周面に略一周に亘って螺旋を描くように形成され、その間に所定回動角度(例えば60度)毎に1速から6速までの各変速段位置およびその途中にニュートラル位置が形成されている。
【0050】
したがって、シフトドラム67の回動は、シフト溝67vに嵌合するシフトピン58をコントロールロッド操作子55とともに軸方向に移動させる。
コントロールロッド操作子55はコントロールロッド51の右端部を回転自在に保持しているので、結局シフトドラム67の回動はコントロールロッド51を軸方向に移動させる。
【0051】
このシフトドラム67は、図示されないシフトセレクトレバーの手動操作によってシフト伝達手段(図示せず)を介して回動する。
シフト伝達手段は、シフトドラム67を所定角度毎の変速段位置に安定して保持させるシフトカム部材などの機構を備えてシフトセレクトレバーの操作動力をシフトドラム67の側縁に形成されたギヤ67gに伝達してシフトドラム67を順次変速段位置に回動する。
なお、シフトドラム67は、変速用モータにより回動するようにしてもよい。
【0052】
以上のように、変速駆動手段50は、シフトセレクトレバーの手動操作(または変速用モータの駆動)によってシフトドラム67が回動し、シフトドラム67の回動がシフト溝67vに嵌合したシフトピン58を案内して軸方向に移動し、シフトピン58の移動がコントロールロッド操作子55を介してコントロールロッド51を軸方向に移動し、コントロールロッド51の移動がロストモーション機構52,53を介して係合手段20の8本のカムロッドCao,Cao,Cae,Cae,Cbo,Cbo,Cbe,Cbeを連動する。
【0053】
ロストモーション機構52,53が組み付けられたコントロールロッド51は、カウンタ歯車軸12の中空内に挿入され中心軸に配設される。
この中空円筒状のカウンタ歯車軸12は、内径がロストモーション機構52,53のスプリングホルダ52h,53hの外径に略等しく、コントロールロッド51に取り付けられたスプリングホルダ52h,53hを摺動自在に嵌挿する。
【0054】
そして、カウンタ歯車軸12の中空の内周面における8か所の放射位置に断面が矩形の8本のカム案内溝12gが軸方向に指向して延出形成されている(図9参照)。
8本のカムロッドCao,Cao,Cae,Cae,Cbo,Cbo,Cbe,Cbeは、図7に示す配列で対応するカム案内溝12gに摺動自在に嵌合する。
同種類のカムロッドCは、対称位置に配設される。
カウンタ歯車軸12に対するカム部材Cの回り止めとなるカム案内溝12gは、断面コ字状の単純な形状をして簡単に加工成形できる。
【0055】
カム案内溝12gの深さはカムロッドCの放射方向の幅に等しく、よってカムロッドCの外周側面であるカム面はカム案内溝12gの底面に摺接し、内周側面は中空内周面と略同一面をなしてスプリングホルダ52h,53hの外周面に接し、内周側面から突出した係止爪pはスプリングホルダ52h,53hのいずれかを両側から挟むようにして掴む。
【0056】
中空筒状をなすカウンタ歯車軸12は、軸受カラー部材13を介して被動変速歯車nが軸支される中央円筒部12aの左右両側に外径が縮径された左側円筒部12bと右側円筒部12cが形成されている(図8参照)。
【0057】
カウンタ歯車軸12の左側円筒部12bにはワッシャ14Lを介してベアリング7Lが嵌合され、他方、右側円筒部12cにはワッシャ14Rを介してベアリング7Rが嵌合される(図1,図2,図3参照)。
なお、カウンタ歯車軸12の左側円筒部12bの軸端部は外径が縮径されて雄ねじ12eが形成されており、雄ねじ12eの軸方向内側には出力スプロケット32がスプライン嵌合するスプライン溝12sが形成されている。
【0058】
カウンタ歯車軸12の中空内は、カム案内溝12gが形成される内径がスプリングホルダ52h,53hの外径に等しい小径内周面と、同小径内周面の両側の内径がカム案内溝12gの底面と略同一周面をなす大径内周面とが形成されている(図2,図3参照)。
右側の拡大内径部の内側に前記コントロールロッド操作子55が半分程挿入されている。
【0059】
このように、カウンタ歯車軸12の中空内にコントロールロッド51とロストモーション機構52,53と8本のカムロッドCao,Cao,Cae,Cae,Cbo,Cbo,Cbe,Cbeが組み込まれると、これら全てが一緒に回転し、コントロールロッド51が軸方向に移動すると、左側ロストモーション機構52のコイルスプリング52sを介して逆回転奇数段用カムロッドCboと正回転偶数段用カムロッドCaeが軸方向に連動し、右側ロストモーション機構53のコイルスプリング53sを介して正回転奇数段用カムロッドCaoと逆回転偶数段用カムロッドCbeが軸方向に連動する。
【0060】
ロストモーション機構52,53がカウンタ歯車軸12の軸方向に並んでコントロールロッド51の外周面と複数のカムロッドCの内側面との間に介装されるので、カウンタ歯車軸12の中空内にあってコントロールロッド51,ロストモーション機構52,53,カムロッドCと径方向に重なる構造で多段変速機10の軸方向の拡大を避け、ロストモーション機構52,53をカウンタ歯車軸12の中空内にコンパクトに収容して、多段変速機10自体の小型化を図ることができる。
【0061】
ロストモーション機構52,53は、コントロールロッド51上に軸方向に2つ設け、各ロストモーション機構52,53は互いに別のカムロッドCを連動するので、1本のコントロールロッド51の移動に対して複数のカムロッドCに2種類の異なる動きをさせて変速を滑らかにさせることを可能とするとともに、ロストモーション機構52,53を同じ構造として、製造コストを抑えるとともに組立て時の部品管理を容易とする。
【0062】
ロストモーション機構52,53がコントロールロッド51の外周面と複数のカムロッドCの内側面との間に介装されるスプリングホルダ52h,53hの内周凹部52ha,53haとコントロールロッド51の外周凹部51a,51bで形成される空間にコイルスプリング52s,53sが介装されるので、同じ形状のロストモーション機構52,53をコントロールロッド51上に構成することができる。
【0063】
また、ロストモーション機構52(53)は、コッタ52cが半割りの割りコッタとし、スプリングホルダ52h(53h)は長尺ホルダ52hl(53hl)と短尺ホルダ52hs(53hs)に2分割されているので、コントロールロッド51の外周凹部51a(51b)の軸方向中央部に拡径ストッパ部51as(51bs)が形成されていても、その両側凹部に割りコッタ52cを配してスプリングホルダ52h(53h)を簡単に組み付けることができ、ロストモーション機構52(53)の組立を容易にすることができる。
【0064】
図8に示すように、カウンタ歯車軸12の軸受カラー部材13を介して被動変速歯車nが軸支される中央円筒部12aは、外径が大きく厚肉に構成されており、この厚肉の外周部に周方向に一周する幅狭の周方向溝12cvが第1,第2,第3,第4,第5,第6被動変速歯車n1,n2,n3,n4,n5,n6に対応して軸方向に亘って等間隔に6本形成されるとともに、軸方向に指向した軸方向溝12avが周方向に亘って等間隔に4本形成されている。
【0065】
さらに、カウンタ歯車軸12の中央円筒部12aの外周部には、4本の軸方向溝12avで区画された4つの部分が各周方向溝12cvにおいて周方向溝12cvの溝幅を隣り合う軸方向溝12av,12av間に亘って長尺に左右均等に拡大した長尺矩形凹部12pと、周方向溝12cvの溝幅を隣り合う軸方向溝12av,12av間の一部で左右均等に拡大した短尺矩形凹部12qとが、軸方向に交互に形成されている。
【0066】
長尺矩形凹部12pの底面の周方向に離れた2か所に軸方向に長尺の楕円形をして周方向溝12cvに跨って若干凹んだスプリング受部12d,12dが形成されている。
また、短尺矩形凹部12qと軸方向溝12avとの間の厚肉部で周方向溝12cv上にピン孔12hが前記カム案内溝12gまで径方向に穿孔されている。
【0067】
すなわち、カウンタ歯車軸12の中空内周面から周方向の8か所に刻設されたカム案内溝12gの放射方向にピン孔12hが穿孔される。
各周方向溝12cv上にはそれぞれ4か所ピン孔12hが形成される。
【0068】
スプリング受部12dには、楕円形に巻回された圧縮スプリング22がその端部を嵌装させて設けられる。
ピン孔12hにはピン部材23が摺動自在に嵌挿される。
なお、ピン孔12hが連通するカム案内溝12gの幅は、ピン部材23の外径幅より小さい。
したがって、ピン孔12hを進退するピン部材23がカム案内溝12gに脱落することがないので、カウンタ歯車軸12への係合手段20の組み付けを容易にする。
【0069】
カム案内溝12gにはカムロッドCが摺動自在に嵌合されるので、ピン孔12hに嵌挿されたピン部材23は中心側端部が対応するカムロッドCのカム面に接し、カムロッドCの移動でカム溝vがピン孔12hに対応するとピン部材23がカム溝vに落ち込み、カム溝v以外の摺接面が対応するとピン部材は摺接面に乗り上げ、カムロッドCの移動により進退する。
ピン孔12h内でのピン部材23の進退は、その遠心側端部を周方向溝12cvの底面より外側に出没させる。
【0070】
以上のような構造のカウンタ歯車軸12の中央円筒部12aの外周部に形成された長尺矩形凹部12pと短尺矩形凹部12qと両凹部間を連通する周方向溝12cvに、揺動爪部材Rが埋設され、軸方向溝12avに揺動爪部材Rを揺動自在に軸支する支軸ピン26が埋設される。
このようにして、全ての揺動爪部材Rが組み付けられた状態を図11に示す。
【0071】
図10の分解斜視図には、奇数段歯車(第1,第3,第5被動変速歯車n1,n3,n5)に対応する周方向溝12cvおよび長尺矩形凹部12p,短尺矩形凹部12qに埋設される4個の揺動爪部材Rと、偶数段の偶数段歯車(第2,第4,第6被動変速歯車n2,n4,n6)に対応する周方向溝12cvおよび長尺矩形凹部12p,短尺矩形凹部12qに埋設される4個の揺動爪部材Rとが、互いの相対角度位置関係を維持した姿勢で図示されており、加えて各揺動爪部材Rを軸支する支軸ピン26および各揺動爪部材Rに作用する圧縮スプリング22とピン部材23が示されている。
【0072】
揺動爪部材Rは、全て同じ形状のものを使用しており、軸方向視で略円弧状をなし、中央に支軸ピン26が貫通する貫通孔の外周部が欠損して軸受凹部Rdが形成されており、同軸受凹部Rdの揺動中心に関して一方の側に長尺矩形凹部12pに揺動自在に嵌合する幅広矩形の係合爪部Rpが形成され、他方の側にはピン孔12hが形成された周方向溝12cvに揺動自在に嵌合する幅狭のピン受部Rrが延出し、その端部は短尺矩形凹部12qに至り幅広に拡大した幅広端部Rqが形成されている。
【0073】
揺動爪部材Rは、ピン受部Rrがピン孔12hが形成された周方向溝12cvに嵌合し、一方の係合爪部Rpが長尺矩形凹部12pに嵌合するとともに軸受凹部Rdが軸方向溝12avに合致し、他方の幅広端部Rqが短尺矩形凹部12qに嵌合する。
そして、合致した軸受凹部Rdと軸方向溝12avに支軸ピン26が嵌合される。
【0074】
揺動爪部材Rは、嵌合する周方向溝12cvに関して左右対称に形成されており、一方の幅広矩形の係合爪部Rpが他方のピン受部Rrおよび幅広端部Rqより重く、支軸ピン26に軸支されてカウンタ歯車軸12とともに回転したとき、遠心力に対して係合爪部Rpが重錘として作用して遠心方向に突出するように揺動爪部材Rを揺動させる。
【0075】
揺動爪部材Rは、ピン受部Rrが揺動中心に関して反対側の係合爪部Rp側より幅が狭く形成されている。
また、ピン受部Rrは、ピン部材23を受け止めるだけの幅を具えれば足りるので、揺動爪部材Rを小型に形成することができ、かつ他方の係合爪部Rpの遠心力による揺動を容易にすることができる。
【0076】
周方向に隣り合う揺動爪部材Rは、互いに対称な姿勢にカウンタ歯車軸12に組み付けられるので、互いに所定間隔を存して対向する係合爪部Rp,Rpは共通の長尺矩形凹部12pに嵌合し、他方の互いの近接する幅広端部Rqは共通の短尺矩形凹部12qに嵌合する。
【0077】
揺動爪部材Rの係合爪部Rpの内側にカウンタ歯車軸12のスプリング受部12dに一端を支持された圧縮スプリング22が介装され、ピン受部Rrの内側にピン孔12hに嵌挿されたピン部材23がカムロッドCとの間に介装される。
【0078】
このようにして、揺動爪部材Rが、支軸ピン26に揺動自在に軸支されてカウンタ歯車軸12の長尺矩形凹部12p,短尺矩形凹部12q,周方向溝12cvに埋設され、一方の係合爪部Rpが圧縮スプリング22により外側に付勢され、他方のピン受部Rrがピン部材23の進退により押圧されることで、圧縮スプリング22の付勢力に抗して揺動爪部材Rが揺動する。
【0079】
ピン部材23が遠心方向に進行して揺動爪部材Rを揺動したときは、揺動爪部材Rは係合爪部Rpが長尺矩形凹部12pに没してカウンタ歯車軸12の中央円筒部12aの外周面より外側に突出するものはない。
また、ピン部材23が退行したときは、圧縮スプリング22により付勢された係合爪部Rpがカウンタ歯車軸12の中央円筒部12aの外周面より外側に突出し被動変速歯車nと係合可能とする。
【0080】
圧縮スプリング22がカウンタ歯車軸12の軸方向を長径とする楕円形状をなし、楕円形状をした圧縮スプリング22は、長径が揺動爪部材Rのピン受部Rrの幅より大きく、ピン受部Rrを揺動可能に嵌合する周方向に一周に亘って形成される周方向溝12cvを跨いで受け止められるので、カウンタ歯車軸12の加工を容易にするとともに、揺動爪部材Rを安定してカウンタ歯車軸12に組み付けることができる。
【0081】
奇数段歯車(第1,第3,第5被動変速歯車n1,n3,n5)に対応する4個の揺動爪部材Rと、偶数段の偶数段歯車(第2,第4,第6被動変速歯車n2,n4,n6)に対応する4個の揺動爪部材Rは、互いに軸中心に90度回転した相対角度位置関係にある。
【0082】
奇数段歯車(第1,第3,第5被動変速歯車n1,n3,n5)に対応する4個の揺動爪部材Rは、歯車の正回転方向で当接して各奇数段被動変速歯車n1,n3,n5とカウンタ歯車軸12とが同期して回転するように係合する正回転奇数段揺動爪部材Raoと、歯車の逆回転方向で当接して各奇数段被動変速歯車n1,n3,n5とカウンタ歯車軸12とが同期して回転するように係合する逆回転奇数段係合部材Rboとが、それぞれ対称位置に一対ずつ設けられる。
【0083】
同様に、偶数段歯車(第2,第4,第6被動変速歯車n2,n4,n6)に対応する4個の揺動爪部材Rは、歯車の正回転方向で当接して各偶数段被動変速歯車n2,n4,n6とカウンタ歯車軸12とが同期して回転するように係合する正回転偶数段揺動爪部材Raeと、歯車の逆回転方向で当接して各偶数段被動変速歯車n2,n4,n6とカウンタ歯車軸12とが同期して回転するように係合する逆回転偶数段係合部材Rbeとが、それぞれ対称位置に一対ずつ設けられる。
【0084】
正回転奇数段揺動爪部材Raoが前記正回転奇数段用カムロッドCaoの移動により進退するピン部材23により揺動し、逆回転奇数段係合部材Rboが前記逆回転奇数段用カムロッドCboの移動により進退するピン部材23により揺動する。
同様に、正回転偶数段揺動爪部材Raeが前記正回転偶数段用カムロッドCaeの移動により進退するピン部材23により揺動し、逆回転偶数段係合部材Rbeが前記逆回転偶数段用カムロッドCbeの移動により進退するピン部材23により揺動する。
【0085】
カウンタ歯車軸12に係合手段20を組み込む場合、まず右端の軸受カラー部材13を中央円筒部12aの外周端部に外装し、その軸受カラー部材13の内側の軸方向溝12avに支軸ピン26の一端を嵌入するようにして右端の係合手段20を組み込み、次の軸受カラー部材13を前記支軸ピン26の他端を覆うように外装した後、前段と同じようにして次段の係合手段20を組み込むことを、順次繰り返して、最後に左端の軸受カラー部材13を外装して終了する。
【0086】
図12に示すように、軸受カラー部材13は、中央円筒部12aの長尺矩形凹部12pおよび短尺矩形凹部12q以外の軸方向位置に外装され、それは軸方向溝12avに一列に連続して埋設される支軸ピン26の隣り合う支軸ピン26,26に跨って配置され、支軸ピン26および揺動爪部材Rの脱落を防止する。
カウンタ歯車軸12の中央円筒部12aの軸方向溝12avに埋設される支軸ピン26は、中央円筒部12aの外周面に接する深さに埋設されるので、軸受カラー部材13が外装されると、ガタなく固定される。
【0087】
7個の軸受カラー部材13がカウンタ歯車軸12に等間隔に外装され、隣り合う軸受カラー部材13,13間に跨るようにして被動変速歯車nが回転自在に軸支される。
各被動変速歯車nは、左右内周縁部(内周面の左右周縁部)に切欠きが形成されて左右切欠きの間に薄肉環状の突条30が形成されており、この突条30を挟むように左右の軸受カラー部材13,13が切欠きに滑動自在に係合する(図2,図3参照)。
【0088】
この各被動変速歯車nの内周面の突条30に係合凸部31が周方向に等間隔に6箇所形成されている(図2,図3,図4,図5参照)。
係合凸部31は、側面視(図4,図5に示す軸方向視)で薄肉円弧状をなし、その周方向の両端面が前記揺動爪部材Rの係合爪部Rpと係合する係合面をなす。
【0089】
正回転奇数段揺動爪部材Rao(正回転偶数段揺動爪部材Rae)と逆回転奇数段係合部材Rbo(逆回転偶数段係合部材Rbe)は、互いに対向する側に係合爪部Rp,Rpを延出しており、正回転奇数段揺動爪部材Rao(正回転偶数段揺動爪部材Rae)は被動変速歯車n(およびカウンタ歯車軸12)の正回転方向で係合凸部31に当接して係合し、逆回転奇数段係合部材Rbo(逆回転偶数段係合部材Rbe)は被動変速歯車nの逆の回転方向で、係合凸部31に当接して係合する。
【0090】
なお、正回転奇数段揺動爪部材Rao(正回転偶数段揺動爪部材Rae)は被動変速歯車nの逆の回転方向では係合爪部Rpが外側に突出していても係合せず、同様に、逆回転奇数段係合部材Rbo(逆回転偶数段係合部材Rbe)は被動変速歯車nの正回転方向では係合爪部Rpが外側に突出していても係合しない。
【0091】
以上の係合手段20をカウンタ歯車軸12に組み付ける手順について説明する。
コントロール操作子55およびシフトピン58を取付けたコントロールロッド51に左右2つのロストモーション機構52,53を組み付け、ロストモーション機構52,53の外周囲に8本のカムロッドCao,Cao,Cae,Cae,Cbo,Cbo,Cbe,Cbeを配設した状態で、カウンタ歯車軸12の中空内に嵌挿する。
【0092】
その際、8本のカムロッドCao,Cao,Cae,Cae,Cbo,Cbo,Cbe,Cbeは、対応する8本のカム案内溝12gにそれぞれ挿入される。
そして、8本のカムロッドCao,Cao,Cae,Cae,Cbo,Cbo,Cbe,Cbeのカウンタ歯車軸12に対する左右移動位置は、ニュートラル位置になるように設定しておく。
【0093】
このような状態のカウンタ歯車軸12を、左を上にして立てた姿勢とする。
そして、まず図12に実線で示すように中央円筒部12aの下端(右端)に右端の軸受カラー部材13を外装してから、最も下の第1被動変速歯車n1に対応する周方向溝12cvにおけるピン孔12hにピン部材23を挿入し、スプリング受部12dに圧縮スプリング22の一端を支持させて揺動爪部材Rを長尺矩形凹部12p,短尺矩形凹部12q,周方向溝12cvに嵌合し、支軸ピン26を右端の軸受カラー部材13の内側の軸方向溝12avに嵌入すると同時に揺動爪部材Rの軸受凹部Rdに嵌合して揺動爪部材Rを組み付ける。
【0094】
カムロッドCはニュートラル位置にあって、ピン部材23はカム溝以外の摺接面に接して揺動爪部材Rのピン受部Rqを内側から押圧して圧縮スプリング22の付勢力に抗して揺動し係合爪部Rpを長尺矩形凹部12pに没して中央円筒部12aの外周面より外側に突出するものがない状態にしている。
【0095】
第1被動変速歯車n1に対応する周方向溝12cvにおける4個揺動爪部材Rを組み付けると、第1被動変速歯車n1を上から嵌挿して軸受カラー部材13に第1被動変速歯車n1の突条30を当接し切欠きを係合して組み付け、次に第2の軸受カラー部材13を上から嵌挿し第1被動変速歯車n1の切欠きに係合してカウンタ歯車軸12の所定位置に外装して第1被動変速歯車n1を軸方向に位置決めして取り付ける。
【0096】
次に、第2被動変速歯車n2用の係合手段20を組み付け、第2被動変速歯車n2を取り付け、以後、この作業を繰り返して残りの第3,第4,第5,第6被動変速歯車n3,n4,n5,n6が順次組み付けられ、最後に第7の軸受カラー部材13を外装する。
【0097】
こうして6個の被動変速歯車nがカウンタ歯車軸12に組み付けられた状態で、図1に示すように、カウンタ歯車軸12が左機関ケース1Lと右機関ケース1Rの側壁1RRに嵌着される左右のベアリング7L,7Rにカラー部材14L,14Rを介して挟まれるようにして回転自在に軸支されると、6個の被動変速歯車nと7個の軸受カラー部材13が交互に組み合わされて左右から挟まれ、軸方向の位置決めがなされる。
軸受カラー部材13は、各被動変速歯車nの軸方向の力を支え、軸方向の位置決めとスラスト力を受けることができる。
【0098】
このようにしてカウンタ歯車軸12に軸受カラー部材13を介して第1,第2,第3,第4,第5,第6被動変速歯車n1,n2,n3,n4,n5,n6が回転自在に軸支される。
【0099】
カムロッドCがニュートラル位置にあるので、全ての被動変速歯車nは、それぞれ対応する係合手段20のカムロッドCの移動位置によりピン部材23が突出して揺動爪部材Rのピン受部Rqを内側から押し上げ係合爪部Rpを内側に引っ込めた係合解除状態にあって、カウンタ歯車軸12に対して自由に回転する。
【0100】
一方、係合手段20のカムロッドCのニュートラル位置以外の移動位置によりピン部材23がカム溝vに入り揺動爪部材Rが揺動して係合爪部Rpを外側に突出した係合可能状態となれば、対応する被動変速歯車nの係合凸部31が係合爪部Rpに当接して、該被動変速歯車nの回転がカウンタ歯車軸12に伝達されるか、またはカウンタ歯車軸12の回転が該被動変速歯車nに伝達される。
【0101】
前記変速駆動手段50において、シフトセレクトレバーの手動操作によってシフトドラム67を所定量回動し、シフトドラム67の回動がシフト溝67vに嵌合したシフトピン58を介してコントロールロッド51を軸方向に所定量移動し、ロストモーション機構52,53を介して係合手段20の8本のカムロッドCao,Cao,Cae,Cae,Cbo,Cbo,Cbe,Cbeを連動する。
【0102】
カムロッドCが軸方向に移動することで、カムロッドCのカム面に摺接するピン部材23がカム溝vに入ったり抜けたりして進退し、揺動爪部材Rを揺動して、被動変速歯車nとの係合を解除し、他の被動変速歯車nと係合してカウンタ歯車軸12と係合する被動変速歯車nを変えることで変速が行われる。
【0103】
シフトセレクトレバーの手動操作によって変速する場合、一度のシフトセレクトレバーの操作は、シフトドラム67を所定角度回動し、シフトピン58,コントロールロッド操作子55を介してコントロールロッド51を所定量(変速1段分)移動し、シフトセレクトレバー自体は元に戻り、次の変速に備える。
【0104】
図2ないし図5は1速の加速状態を示しており、この1速の加速状態からシフトセレクトレバーの手動操作によって2速に変速する場合を考察してみると、シフトセレクトレバーの手動操作によってシフトドラム67が所定角度回動し、シフトピン58を介してコントロールロッド51を軸方向右方に所定量移動させる。
【0105】
コントロールロッド51が右方に移動すると、ロストモーション機構52,53のコイルスプリング52s,53sを介して8本のカムロッドCao,Cao,Cae,Cae,Cbo,Cbo,Cbe,Cbeを連動して軸方向右方に移動しようとするが、正回転奇数段用カムロッドCaoは、ピン部材23を介して作動する正回転奇数段揺動爪部材Raoが第1被動変速歯車n1の係合凸部31と係合して第1被動変速歯車n1から動力を受けているので、正回転奇数段揺動爪部材Raoを揺動して係合を解除するのに相当大きな摩擦抵抗があり、当初直ぐには移動せず、よって逆回転偶数段用カムロッドCbeも停止したままであるが、正回転偶数段用カムロッドCaeと逆回転奇数段用カムロッドCboは抵抗なく移動する。
逆回転奇数段用カムロッドCboの移動で1速の逆回転奇数段揺動爪部材Rboが係合爪部Rpを内側に引っ込める。
【0106】
図13ないし図15を参照して、正回転偶数段用カムロッドCaeの移動で、カム溝v2にピン部材23が入り、よって第2被動変速歯車n2に対応する正回転偶数段揺動爪部材Raeが圧縮スプリング22の付勢力および係合爪部Rpの遠心力により揺動して係合爪部Rpを外側に突出し、第2被動変速歯車n2に係合可能となり、第1被動変速歯車n1とともに回転するカウンタ歯車軸12より高速で回転する第2被動変速歯車n2の係合凸部31が正回転偶数段揺動爪部材Raeの外側に突出した係合爪部Rpに追いつき当接する。
【0107】
図13ないし図15は、第2被動変速歯車n2の係合凸部31が正回転偶数段揺動爪部材Raeの外側に突出した係合爪部Rpに追いつく直前の状態を示しており、図14で第1被動変速歯車n1の係合凸部31が正回転奇数段揺動爪部材Raoと係合した状態で、同時に図15に示すように第2被動変速歯車n2の係合凸部31が正回転偶数段揺動爪部材Raeの外側に突出した係合爪部Rpに追いつく直前である。
【0108】
この時点で、まだ正回転奇数段揺動爪部材Raoが第1被動変速歯車n1の係合凸部31と係合して第1被動変速歯車n1から動力を受けているので、コントロールロッド51は移動しているが、摩擦抵抗により正回転奇数段用カムロッドCaoは停止したままである。
【0109】
図13ないし図15に示す状態から、第2被動変速歯車n2の係合凸部31が正回転偶数段揺動爪部材Raeの外側に突出した係合爪部Rpに追いつくと、より高速で回転する第2被動変速歯車n2によりカウンタ歯車軸12が第2被動変速歯車n2と同じ回転速度で回転し始め、第1被動変速歯車n1の係合凸部31から正回転奇数段揺動爪部材Raoの係合爪部Rpが離れ、実際の1速から2速へのシフトアップが実行される。
【0110】
第1被動変速歯車n1の係合凸部31から正回転奇数段揺動爪部材Raoの係合爪部Rpが離れることで、正回転奇数段揺動爪部材Raoを固定する摩擦抵抗が無くなり、ロストモーション機構53のコイルスプリング53sにより付勢されていた正回転奇数段用カムロッドCaoが後れて右方に移動してカム溝v1に入っていたピン部材23が抜け出し、正回転奇数段揺動爪部材Raoを揺動してその係合爪部Rpを内側に引っ込める。
【0111】
以上のように、1速の加速状態から減速比が1段小さい2速状態にシフトアップする際に、第1被動変速歯車n1の係合凸部31が正回転奇数段揺動爪部材Raoの係合爪部Rpに当接して係合しカウンタ歯車軸12を第1被動変速歯車n1と同速度で回転させている状態で、より高速で回転する第2被動変速歯車n2の係合凸部31が正回転偶数段揺動爪部材Raeの係合爪部Rpに追いつき当接してカウンタ歯車軸12を第2被動変速歯車n2とともにより高速度で回転させて変速するので、第1被動変速歯車n1の係合凸部31から正回転奇数段揺動爪部材Raoの係合爪部Rpは自然と離れていき係合が円滑に解除されるため、係合解除に力を要せず滑らかに作動して滑らかなシフトアップを行うことができる。
【0112】
2速から3速、3速から4速、4速から5速、5速から6速の各シフトアップも同様に、被動変速歯車nが揺動爪部材Rに係合している状態で、減速比が1段小さい被動変速歯車nが揺動爪部材Rに係合してシフトアップがなされるので、係合解除に力を要せず滑らかに作動して変速用のクラッチを必要とせず、かつシフトアップ時の切換え時間に全くロスがなく、駆動力の抜けがないとともに変速ショックも小さく、滑らかなシフトアップを行うことができる。
【0113】
シフトダウンも同様に、被動変速歯車nが揺動爪部材Rに係合している状態で、減速比が1段大きい被動変速歯車nに揺動爪部材Rが係合してシフトダウンがなされるので、係合解除に力を要せず滑らかに作動して変速用のクラッチを必要とせず、かつシフトダウン時の切換え時間に全くロスがなく、駆動力の抜けがないとともに変速ショックも小さく、滑らかなシフトダウンを行うことができる。
【0114】
以上のような多段変速機において、カウンタ歯車軸12の左側円筒部12bにスプライン嵌合される出力スプロケット32の取付構造について図16および図17に基づいて説明する。
【0115】
図16を参照して、カウンタ歯車軸12の左側円筒部12bに嵌合する円筒状のカラー部材33がカウンタ歯車軸12を軸支するベアリング7Lのインナレースに当接しており、カウンタ歯車軸12のカラー部材33が嵌合される箇所に径方向に貫通された給油導入孔12xが複数穿孔され、対応してカラー部材33にも導入孔33xが形成され、その外周を環状シール部材39が覆っている。
カラー部材33の左端は縮径して段差部33aが形成されている。
なお、カウンタ歯車軸12の左側円筒部12bの内側には有底円筒状の蓋部材40が嵌入されている。
【0116】
カウンタ歯車軸12の左側円筒部12bは、カラー部材33の左端部辺りから外側方にスプライン溝12sが形成され、前記したように軸端部は雄ねじ12eが形成されている。
このカウンタ歯車軸12の左側円筒部12bに皿バネ34を嵌入してカラー部材33の段差部33aに内周縁を嵌合する。
【0117】
そして、出力スプロケット32をカウンタ歯車軸12のスプライン溝12sにスプライン嵌合する。
出力スプロケット32は、スプライン歯32aを支持する内周基部の内周端が軸方向外側に延出して円筒基部32bを構成し、円筒基部32bの内周面にスプライン突条32sが形成されている。
この出力スプロケット32のスプライン突条32sをカウンタ歯車軸12のスプライン溝12sにスプライン嵌合すると、出力スプロケット32はカラー部材33の段差部33aに嵌合した皿バネ34を押圧する。
【0118】
出力スプロケット32を嵌挿したのち、環状のスペーサ35をカウンタ歯車軸12の軸端にスプライン溝12sの手前まで嵌挿して出力スプロケット32の円筒基部32bに当接する。
スペーサ35は、出力スプロケット32の円筒基部32bの左端面に対向する内外径の円環板状金属部材であり、DLC(Diamond-Like Carbon)加工が施されている。
DLCは硬質炭素膜であり、表面平滑性および耐摩耗性に極めて優れている。
【0119】
そして、カウンタ歯車軸12の軸端に円筒状の介装部材36を当接し、袋ナット37をカウンタ歯車軸12の軸端の雄ねじ12eに螺合する。
袋ナット37は本体である有底円筒部37aの内周面に雌ねじ37eが形成され、有底円筒部37aの底壁より作業用筒部37bが突出している。
介装部材36は、円筒部36aの外周面にカウンタ歯車軸12の軸端に対向するフランジ36fが形成されており、フランジ36fは円筒部36aの左端面から所定距離に位置している。
【0120】
介装部材36はフランジ36fをカウンタ歯車軸12の軸端に当接する。
そして、袋ナット37を介装部材36を覆うように被せてカウンタ歯車軸12の雄ねじ12eに螺合すると、袋ナット37の有底円筒部37aの底面37tが介装部材36に当接して所定位置に固定される。
このとき、袋ナット37の有底円筒部37aの右側開口端面は、皿バネ34により左方に付勢される出力スプロケット32とともに移動するスペーサ35に当接する。
【0121】
こうして出力スプロケット32のカウンタ歯車軸12への組付けが完了した状態を、図17に示す。
袋ナット37は、カウンタ歯車軸12の雄ねじ12eに螺合し、袋ナット37の底面37tとカウンタ歯車軸12の軸端との間に介装部材36が挟まれて介装されて、カウンタ歯車軸12の軸方向所定位置に固着され、皿バネ34により外側方(左方)に押圧された出力スプロケット32の移動がスペーサ35を介して袋ナット37の開口端部により規制される。
【0122】
すなわち、出力スプロケット32は皿バネ34に付勢されながら軸方向所要範囲内の移動が許容されている。
出力スプロケット32を直接締め付けてカウンタ歯車軸12に固定することなく、軸方向の移動を許容し、出力スプロケット32に加わる軸方向に振れる力成分を皿バネ34により吸収しながら所要の軸方向範囲内に出力スプロケット32を常に位置させて、安定した動力伝達を行うことができる。
【0123】
次に、別の実施の形態に係る出力スプロケットの取付構造を、図18および図19に基づいて説明する。
本出力スプロケット80の取付構造は、前記実施の形態に係る出力スプロケット32の取付構造と比べると、出力スプロケット80以外は略同じであり、同じ部材は同じ符号を使用する。
【0124】
出力スプロケット80は、直接カウンタ歯車軸12のスプライン溝12sに嵌合するのではなく、出力スプロケット80を内側から支持するトルク検出用円筒部材81がスプライン嵌合する。
出力スプロケット80は、スプロケット歯80aを支持する内周基部の内周端が軸方向外側に比較的長く延出して円筒基部80bを構成している。
【0125】
トルク検出用円筒部材81は、出力スプロケット80の円筒基部80bの内側に円筒部81bが嵌合するとともに、円筒部81bの外側端(左端)に形成されたフランジ81aが出力スプロケット80の円筒基部80bの外側端に左側から当接してフランジ81aの外側端とがノックピン82および図示されないボルトにより固着される。
なお、出力スプロケット80の円筒基部80bの右端は、内側に中心軸に向けて突出した内フランジ81cが、トルク検出用円筒部材81の円筒部81bの右端外周縁の切欠きに係合している。
【0126】
トルク検出用円筒部材81の円筒部81bの内周面の右側部分にカウンタ歯車軸12のスプライン溝12sに嵌合するスプライン突条81sが形成され、円筒部81bのスプライン突条81sより左側部分が外周面の外径が縮径し内周面の内径が段差部81dを構成して拡径して、くびれ形状をなして薄肉のねじれ検出円筒部81tを形成している。
なお、トルク検出用円筒部材81のフランジ81aの付け根辺りに貫通孔81hが穿孔されている。
ねじれ検出円筒部81tの外周面にトルクセンサの検出部である磁性体シート等を貼りつけ、その信号線を貫通孔81hを通して外部に導くことができる。
【0127】
このように、内外で嵌合したトルク検出用円筒部材81と出力スプロケット80は、一体となって、先に皿バネ34が嵌入されたカウンタ歯車軸12の左側円筒部12bにスプライン嵌合する。
すなわち、トルク検出用円筒部材81の円筒部81bの右側のスプライン突条81sをカウンタ歯車軸12のスプライン溝12sにスプライン嵌合し出力スプロケット80が皿バネ34を押圧する。
【0128】
その後、スペーサ35をカウンタ歯車軸12の軸端に嵌挿すると、スペーサ35はトルク検出用円筒部材81の円筒部81bの左側のねじれ検出円筒部81tの内側に挿入され、円筒部81bの段差部81dに当接する。
そして、介装部材36を内側に介装して袋ナット37を、カウンタ歯車軸12の軸端の雄ねじ12eに螺合する。
袋ナット37の有底円筒部37aはトルク検出用円筒部材81のねじれ検出円筒部81tの内側に挿入される。
【0129】
こうして、出力スプロケット80が、トルク検出用円筒部材81を介してカウンタ歯車軸12に組付けられると、袋ナット37は介装部材36を介してカウンタ歯車軸12の軸方向所定位置に固着され、皿バネ34により外側方(左方)に押圧された出力スプロケット80の移動がトルク検出用円筒部材81の段差部81dに当接するスペーサ35を介して袋ナット37の開口端部により規制される。
【0130】
出力スプロケット80を直接締め付けてカウンタ歯車軸12に固定することなく、軸方向の移動を許容し、出力スプロケット80に加わる軸方向に振れる力成分を皿バネ34により吸収しながら所要の軸方向範囲内に出力スプロケット32を常に位置させて、安定した動力伝達を行うことができる。
【0131】
トルクセンサ90は、円筒状本体90aに回転円板部90bが同軸に組付けられたもので、円板部90bは円筒状本体90aとの間でスリップリングを構成している。
このようなトルクセンサ90の円板部90bを円筒状のトルクセンサ保持部材91が保持し、このトルクセンサ保持部材91がトルク検出用円筒部材81のフランジ81aにボルト(図示せず)により締結される。
なお、このボルトは、トルクセンサ保持部材91とトルク検出用円筒部材81のフランジ81aと出力スプロケット80の円筒基部80bの左端とを一体に締結する。
【0132】
したがって、出力スプロケット80とともにトルク検出用円筒部材81、トルクセンサ保持部材91およびトルクセンサ90の回転円板部90bが、一緒に回転する。
ねじれ検出円筒部81tに設けられたトルクセンサ検出部から延出した信号線は、貫通孔81hを通って、回転円板部90bに連結することができ、検出信号をトルクセンサ90の円筒状本体90aで入力処理することができる。
【0133】
カウンタ歯車軸12の回転力は、トルク検出用円筒部材81のスプライン嵌合部からねじれ検出円筒部81tを経てねじれ検出円筒部81tの端部フランジ81aから出力スプロケット80に伝達されるので、ねじれ検出円筒部81tのねじれ状態をトルクセンサ検出部で検出することで、駆動トルクが容易に検出される。
【符号の説明】
【0134】
m…駆動変速歯車、m1〜m6…第1〜第6駆動変速歯車、
n…被動変速歯車、n1〜n6…第1〜第6被動変速歯車、
10…多段変速機、11…メイン歯車軸、12…カウンタ歯車軸、13…軸受カラー部材、
20…係合手段、23…ピン部材、31…係合凸部、
32…出力スプロケット、33…カラー部材、34…皿バネ、35…環状スペーサ、36…環状介装部材、37…ナット部材、38…チェーン、39…環状シール部材、
C…カムロッド、p…係止爪、v…カム溝、R…揺動爪部材、Rp…係合爪部、
50…変速駆動手段、51…コントロールロッド、51a,51b…外周凹部、51as,51bs…拡径ストッパ部、52,53…ロストモーション機構、52h,53h…スプリングホルダ、52ha,53ha…内周凹部、52s,53s…コイルスプリング、52c,53c…コッタ、55…コントロールロッド操作子、58…シフトピン、59…係合ピン、60…溝条、67…シフトドラム、67v…シフト溝、
80…出力スプロケット、81…トルク検出用円筒部材、81t…ねじれ検出円筒部、
90…トルクセンサ、91…トルクセンサ保持部材。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の出力軸(12)の駆動をチェーン(38)に伝達するための出力スプロケット(32)の取付構造において、
前記出力軸(12)に嵌合された皿バネ(34)が、段差部(33a)に当接して位置決めされ、
前記出力軸(12)の前記段差部(33a)より外側部に形成されたスプライン溝(12s)にスプライン嵌合した前記出力スプロケット(32)が、前記皿バネ(34)に押圧され、
前記出力軸(12)の端部に形成された雄ねじ(12e)に螺合する袋ナット(37)が、前記出力軸(12)の軸端に底面を規制されて固定され、
前記皿バネ(34)により押圧された前記出力スプロケット(32)の軸方向の移動が前記袋ナット(37)の開口端部により規制されることを特徴とする出力スプロケットの取付構造。
【請求項2】
前記袋ナット(37)の開口端部と前記出力スプロケット(32)との間に環状のスペーサ(35)を挿入したことを特徴とする請求項1記載の出力スプロケットの取付構造。
【請求項3】
前記スペーサ(35)はDLC加工が施されていることを特徴とする請求項2記載の出力スプロケットの取付構造。
【請求項4】
前記出力軸(12)の軸端と前記袋ナット(37)の底面との間に介装部材(36)が介装されることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項記載の出力スプロケットの取付構造。
【請求項5】
内燃機関の出力軸(12)の駆動をチェーン(38)に伝達するための出力スプロケット(80)の取付構造において、
前記出力軸(12)に嵌合された皿バネ(34)が、段差部(33a)に当接して位置決めされ、
前記出力軸(12)の前記段差部(33a)より軸方向外側部に形成されたスプライン溝(12s)にトルク検出用円筒部材がスプライン嵌合され、
前記出力スプロケット(80)は、スプロケット歯(80a)を支持する内周基部の内周端が軸方向外側に延出して円筒基部(80b)を構成し、
前記トルク検出用円筒部材(81)の外周を前記出力スプロケット(80)の円筒基部(80b)が覆い、
前記円筒基部(80b)の軸方向外側端部が、前記トルク検出用円筒部材(81)のスプライン嵌合部(81s)より軸方向外側に延出したねじれ検出円筒部(81t)の端部(81a)に固着され、
前記円筒基部(80b)の軸方向内側端部が前記皿バネ(34)に押圧され、
前記出力軸(12)の端部に形成された雄ねじ(12e)に螺合する袋ナット(37)が、前記出力軸(12)の軸端に底面を規制されて固定され、
前記皿バネ(34)により押圧された前記出力スプロケット(80)の軸方向の移動が前記袋ナット(37)の開口端部により規制されることを特徴とする出力スプロケットの取付構造。
【請求項6】
互いに平行な歯車軸(11,12)にそれぞれ複数の駆動歯車(m)と被動歯車(n)が変速段毎に常時噛み合い状態で軸支され、
前記駆動歯車(m)と前記被動歯車(n)の一方の複数の歯車(m)が歯車軸(11)に固定され、他方の複数の歯車(n)と歯車軸(12)との間で歯車軸(12)と各歯車(n)の係合を歯車ごとに切り換える係合切換機構(20)が備えられ、
変速駆動機構(50)のコトロールロッド(51)が歯車軸(12)の内部を軸方向に移動することにより前記係合切換機構(20)が駆動されて変速を行う多段変速機(10)における前記被動歯車(n)の歯車軸(12)が、前記出力軸(12)であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項記載の出力スプロケットの取付構造。
【請求項1】
内燃機関の出力軸(12)の駆動をチェーン(38)に伝達するための出力スプロケット(32)の取付構造において、
前記出力軸(12)に嵌合された皿バネ(34)が、段差部(33a)に当接して位置決めされ、
前記出力軸(12)の前記段差部(33a)より外側部に形成されたスプライン溝(12s)にスプライン嵌合した前記出力スプロケット(32)が、前記皿バネ(34)に押圧され、
前記出力軸(12)の端部に形成された雄ねじ(12e)に螺合する袋ナット(37)が、前記出力軸(12)の軸端に底面を規制されて固定され、
前記皿バネ(34)により押圧された前記出力スプロケット(32)の軸方向の移動が前記袋ナット(37)の開口端部により規制されることを特徴とする出力スプロケットの取付構造。
【請求項2】
前記袋ナット(37)の開口端部と前記出力スプロケット(32)との間に環状のスペーサ(35)を挿入したことを特徴とする請求項1記載の出力スプロケットの取付構造。
【請求項3】
前記スペーサ(35)はDLC加工が施されていることを特徴とする請求項2記載の出力スプロケットの取付構造。
【請求項4】
前記出力軸(12)の軸端と前記袋ナット(37)の底面との間に介装部材(36)が介装されることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項記載の出力スプロケットの取付構造。
【請求項5】
内燃機関の出力軸(12)の駆動をチェーン(38)に伝達するための出力スプロケット(80)の取付構造において、
前記出力軸(12)に嵌合された皿バネ(34)が、段差部(33a)に当接して位置決めされ、
前記出力軸(12)の前記段差部(33a)より軸方向外側部に形成されたスプライン溝(12s)にトルク検出用円筒部材がスプライン嵌合され、
前記出力スプロケット(80)は、スプロケット歯(80a)を支持する内周基部の内周端が軸方向外側に延出して円筒基部(80b)を構成し、
前記トルク検出用円筒部材(81)の外周を前記出力スプロケット(80)の円筒基部(80b)が覆い、
前記円筒基部(80b)の軸方向外側端部が、前記トルク検出用円筒部材(81)のスプライン嵌合部(81s)より軸方向外側に延出したねじれ検出円筒部(81t)の端部(81a)に固着され、
前記円筒基部(80b)の軸方向内側端部が前記皿バネ(34)に押圧され、
前記出力軸(12)の端部に形成された雄ねじ(12e)に螺合する袋ナット(37)が、前記出力軸(12)の軸端に底面を規制されて固定され、
前記皿バネ(34)により押圧された前記出力スプロケット(80)の軸方向の移動が前記袋ナット(37)の開口端部により規制されることを特徴とする出力スプロケットの取付構造。
【請求項6】
互いに平行な歯車軸(11,12)にそれぞれ複数の駆動歯車(m)と被動歯車(n)が変速段毎に常時噛み合い状態で軸支され、
前記駆動歯車(m)と前記被動歯車(n)の一方の複数の歯車(m)が歯車軸(11)に固定され、他方の複数の歯車(n)と歯車軸(12)との間で歯車軸(12)と各歯車(n)の係合を歯車ごとに切り換える係合切換機構(20)が備えられ、
変速駆動機構(50)のコトロールロッド(51)が歯車軸(12)の内部を軸方向に移動することにより前記係合切換機構(20)が駆動されて変速を行う多段変速機(10)における前記被動歯車(n)の歯車軸(12)が、前記出力軸(12)であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項記載の出力スプロケットの取付構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2012−201170(P2012−201170A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66243(P2011−66243)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
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