説明

出力合成器

【課題】この発明は、構成簡易にして、小形化を確保し得、且つ、簡便にして容易に合成効率の高効率化を図り得るようにすることにある。
【解決手段】二次導体13をふっ素樹脂132が被覆された金属線材131で形成して、この金属線材131を巻き線112が施された複数のフェライトコア111内に三回巻き回して並列状に巻き回し配置して構成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば中波ラジオ送信機等の送信機の電力増幅回路に用いられる出力合成器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種の出力合成器は、巻き線の施された複数のフェライトコアを所定の間隔を有して直列状に配し、この各フェライトコアには、一次導体で有る巻き線が施される。そして、この巻き線を施したフェライトコアには、二次導体を構成する銅パイプが遊挿される(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このような出力合成器は、そのフェライトコアの巻き線に対して複数の電力増幅器の増幅出力が供給されると、この複数の電力増幅器の増幅出力が銅パイプで合成されて、その出力端から合成出力として出力される。そして、この出力合成器は、その一次導体を構成する巻き線に対して二次導体を構成する銅パイプを一軸以上、例えば複数の挿通軸をターン配置することにより、その挿通軸数に応じて合成効率を高めることが可能となることが知られている。
【0004】
一方、出力合成器を用いる送信機の分野においては、その送信出力の高効率化が強く要請されており、この要請を満足させるのに上記出力合成器による合成効率を高めることが強く要請されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−237063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記出力合成器では、一次導体に挿通配置する二次導体を、銅パイプを用いて二本以上を挿通させて高効率化を図る場合、二本以上の銅パイプを同軸的に配して、この銅パイプで構成した複数の挿通軸の端末をターン接続処理する方法が考えられているが、二本以上の数になると、そのパイプ端末のターン接続構造が複雑となるために、大形となるという問題を有する。
【0007】
この発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、構成簡易にして、小形化を確保し得、且つ、簡便にして容易に合成効率の高効率化を図り得るようにした出力合成器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、巻き線が施された複数のフェライトコアが直列状に位置決め配置され、それぞれに増幅出力が印加される一次導体と、絶縁材が被覆される金属線材が前記一次導体の複数のフェライトコア内に複数回巻き回されて並列状に配置され、合成出力を生成する二次導体とを備えて出力合成器を構成した。
【0009】
上記構成によれば、二次導体は、金属線材の弾性力を利用して一次導体のフェライトコアの中心部空間に複数回並列状に巻き回して配置していることにより、特に、実装スペースを大きくとることなく、二次導体を、一次導体に複数回巻き回して組付け配置することが可能となる。従って、小形化を確保したうえで、合成効率の向上を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
以上述べたように、この発明によれば、構成簡易にして、小形化を確保し得、且つ、簡便にして容易に合成効率の高効率化を図り得るようにした出力合成器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の一実施の形態に係る出力合成器の要部を示した構成図である。
【図2】図1のA−Aを断面して示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は、この発明の一実施の形態に係る出力合成器を示すもので、フレーム部材10には、一次導体11を構成する複数のフェライトコア111が支部部材12を介して相互間が電気的に絶縁された状態で、所定の間隔を有して直列状に、例えば二列収容配置される。この複数のフェライトコア111には、それぞれ巻き線112が施され(図1中では、図の都合上、一ケ所のみ図示)、この各巻き線112には、それぞれ例えば送信機を構成する図示しない複数の電力増幅器の増幅出力が選択的に供給される。
【0014】
また、上記二列のフェライトコア111間には、二次導体13が架設されて、例えば3回、に巻き回して配置され、固定部材14を用いてフェライトコア11内に位置決めされて巻き回し配置される。これにより、二次導体13は、複数のフェライトコア111の中心部空間を利用して複数回、例えば三回に巻き回して並列状に配置することが可能となり、実装スペースを最小限に保ったうえで、合成効率の向上を図ることが可能となる。
【0015】
上記二次導体13は、図2に示すように銅線等の金属線材131の周囲に絶縁材、例えばふっ素樹脂132が被覆されて形成され、相互間が固定部材14を用いて所定の間隔を有してフェライトコア111内に並列状に巻き回し配置される。そして、この二次導体13の金属線材131は、その一端が信号入力端として形成され、その他端が信号出力端として形成される。
【0016】
上記構成において、上記複数の電力増幅器(図示せず)が駆動されると、その増幅出力が一次導体11を構成するフェライトコア111の巻き線112に導かれる。同時に、二次導体13の金属線材131の片側から増幅出力が加算される。すると、金属線材131は、複数のフェライトコア111の巻き線112に供給された電力増幅器(図示せず)の増幅出力を合成して、この合成信号を出力端から図示しないバンドパスフィルタに出力する。
【0017】
このように、上記出力合成器は、二次導体13をふっ素樹脂132が被覆された金属線材131で形成して、この金属線材131を巻き線112が施された複数のフェライトコア111内に三回巻き回して並列状に巻き回し配置して構成した。
【0018】
これによれば、二次導体13は、金属線材131の弾性力を利用して一次導体11のフェライトコア111の中心部空間に三回巻き回して並列状に配置していることにより、実装スペースを大きくとることなく、二次導体13を一次導体11のフェライトコア111に複数回巻き回して組付け配置することが可能となる。この結果、小形化を確保したうえで、合成効率の向上を図ることが可能となり、送信機の高効率化に寄与することができる。
【0019】
なお、上記実施の形態では、二次導体13の金属線材131を一次導体11のフェライトコア111内に三回並列に巻き回し配置するように構成した場合について説明したが、この巻き回し数に限ることなく、その他、二次導体13の金属線材131を一次導体11のフェライトコア111内に2回以上巻き回して並列状に配置することで、同様の効果が期待される。
【0020】
また、上記実施の形態では、一次導体11を構成する複数のフェライトコア111をフレーム部材10内に二列直列状に配置するように構成した場合について説明したが、これに限ることなく、複数のフェライトコア111をフレーム部材10内に直列状に二列以上、配置するように構成することも可能で、同様に有効な効果が期待される。
【0021】
よって、この発明は、上記実施の形態に限ることなく、その他、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を実施し得ることが可能である。さらに、上記実施形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組合せにより種々の発明が抽出され得る。
【0022】
例えば実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0023】
10…フレーム部材、11…一次導体、111…フェライトコア、112…巻き線、12…指示部材、13…二次導体、131…金属線材、132…ふっ素樹脂、14…固定部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻き線が施された複数のフェライトコアが直列状に位置決め配置され、それぞれに増幅出力が印加される一次導体と、
絶縁材が被覆される金属線材が前記一次導体の複数のフェライトコア内に複数回巻き回されて並列状に配置され、合成出力を生成する二次導体と、
を具備することを特徴とする出力合成器。
【請求項2】
前記一次導体は、複数のフェライトコアが直列状に二列配置され、相互間に前記二次導体が複数回巻き回されて並列配置されることを特徴とする請求項1記載の出力合成器。
【請求項3】
前記二次導体は、前記一次導体のフェライトコアに三回巻き回されて並列状に配置されることを特徴とする請求項1又は2記載の出力合成器。
【請求項4】
前記二次導体の絶縁材は、ふっ素樹脂であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の出力合成器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−160125(P2011−160125A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−19224(P2010−19224)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】