説明

出力軸と伝達部品の締結構造

【課題】 伝達部品が製品に干渉することを防止することができる出力軸と伝達部品の締結構造を提供する。
【解決手段】 出力軸3の周面に軸方向のキー溝3aを形成し、このキー溝3aにキー4を組み付けて伝達部品5の回り止めを図りながら伝達部品5を出力軸3に装着した出力軸と伝達部品の締結構造において、前記キー4形状を、前記キー溝3a内に一部が配置されるキー本体4a部に、前記伝達部品5の奥行き側端面を係止する突起部4cを設けた構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに組み付けられた減速機などの出力軸に、プーリーなどの伝達部品を固定するための出力軸と伝達部品の締結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
減速機などの出力軸には、周面に軸方向のキー溝が加工されたものがあり、このキー溝にキーを装着し、このキーと係合させてプーリーなどの伝達部品を出力軸に固定し、伝達部品を出力軸に対して回転しないように締結するようにしている。
【0003】
図6は一般的な、減速機を示したもので、減速機100は、ハウジング101内に複数の歯車102,103,104などから構成される歯車機構105を内蔵しており、ハウジング101に設けられた開口穴106から、モータの出力軸201を導入して、回転動力を取り入れ、歯車機構105によって減速した後、減速機100の出力軸107から減速した回転を取り出している。歯車機構105は、モータの出力軸201に設けられた歯車201aと噛み合う第1の歯車102と、この第1の歯車102を支持する歯車軸102aに設けられた駆動歯車102bと、この駆動歯車102bに噛み合う第2の歯車103と、この第2の歯車103を支持する歯車軸103aに設けられた駆動歯車103bと、この駆動歯車103bに噛み合う第3の歯車104とで構成されている。この第3の歯車104を支持する歯車軸が減速機100の出力軸107として、ハウジング101の開口穴108から外部に導出されている。
【0004】
この出力軸107は、ハウジング101内の軸受け109などに支持されており、ハウジング101の外部に導出した先端部分107aを小径に形成して、この小径の先端部分107aにプーリーなどの動力伝達部品が装着されている。
この先端部分107aには、周面に、後述するキー110を装着するためのキー溝111が軸方向に設けられている。
【0005】
図7は、減速機100の出力軸107と伝達部品の締結構造を示したもので、キー溝111に装着されたキー110を介して回転止めを図られてプーリーなどの伝達部品301が装着されている。キー110は図8および図9(a)(b)(c)に示すように、先端が平面視で半円状に形成された角柱状の部材である。
前記伝達部品301には、軸方向に組付け孔301aが設けられており、この組付け孔301aを介して伝達部品301を出力軸107の先端部分107aに組付けている。
組付けに際しては伝達部品301の端面に環状のスペーサ302を介在させてネジ303を出力軸107に固定して、伝達部品301を出力軸107に固定している。伝達部品301には径方向の孔304が設けられており、この孔304に固定ネジ305を螺合させて伝達部品301の回り止めを図っている。
【0006】
前記伝達部品301は、出力軸107の先端部分107aに組付けられて出力軸107の段差部107bに内側を固定され、スペーサ302に外側を固定されて出力軸107に対する軸方向のズレを防止している(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平4−341616
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、歯車減速機を例に上げると、小型の減速機では、減速機内部の部品寸法が制限されるため、図7に示すような段差部107bを設けることができない。そこで、図10に示すように、出力軸117の先端部分117aが一定の径に形成され、段差部がないことから、使用中に出力軸に締結している伝達部品301の締結ねじに緩みが生じると、伝達部品301が軸方向に移動し、減速機100のハウジング101外面に干渉してしまう虞が発生する。
【0009】
本発明は、上記課題を解決し、伝達部品が製品に干渉することを防止することができる出力軸と伝達部品の締結構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するため、出力軸の周面に軸方向のキー溝を形成し、このキー溝にキーを組み付けて伝達部品の回り止めを図りながら伝達部品を出力軸に装着した出力軸と伝達部品の締結構造において、前記キー形状を、前記キー溝内に一部が配置されるキー本体部に、前記伝達部品の奥行き側端面を係止する突起部を設けた構造にしたことにある。
また、本発明は、前記キー本体部の前記キー溝から外側に露出された部分に前記軸方向に延出された延出部と、該延出部の外表面に前記出力軸と直交する方向に延出された突起部を備え、前記突起部を前記伝達部品の奥行き端面に係合させたことにある。
【発明の効果】
【0011】
請求項1によれば、伝達部品が製品に干渉する不具合を防止することができる。
請求項2によれば、突起部によって伝達部品の奥行き端面を係止しているので、伝達部品が製品に干渉する不具合を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態による出力軸と伝達部品の締結構造を示す概念断面図である。
【図2】図1のキーを示す斜視図である。
【図3】図2のキーを示し、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は底面図、(d)は左側面図である。
【図4】図3のキーの変形例を示す斜視図である。
【図5】図4のキーを示し、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は左側面図である。
【図6】従来の減速機を示す断面図である。
【図7】従来の出力軸と伝達部品の締結構造を示す概念断面図である。
【図8】従来のキーを示す斜視図である。
【図9】図8のキーを示し、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は左側面図である。
【図10】段差のない出力軸を備えた減速機を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下図示の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
図1において、1は小型の歯車減速機で、ハウジング2内に設けられた歯車機構によって減速された回転出力が出力軸3から取り出される。この出力軸3は、図2に示すように、周面に所定深さの軸方向のキー溝3aが設けられており、かつ出力軸3の基端部には段差部が設けられていない。
【0015】
前記キー溝3aにはキー4の下部側本体部4aが内蔵されており、このキー4の本体部4a上部側には、図2および図3(a)〜図3(d)に示すように、減速機ハウジング2側に向けて延出される、延出部4bが設けられている。この延出部4bの先端部外面には出力軸3と直交する向きに突出する突起部4cが設けられている。
前記出力軸3には、キー4と係合させてプーリーなどの伝達部品5が装着されている。
伝達部品5は、中心軸線上に出力軸3に組付けるための挿通孔5aが形成されており、この挿通孔5aには内周面の軸方向に前記キー4の上面側4dに係合する凹条5bが形成されている。また、伝達部品5には、前記挿通孔5aと直交する方向の孔5cが設けられており、この孔5cに固定ねじ6を螺合して伝達部品5を固定している。一方、出力軸3の端面には、軸方向のネジ溝5dが軸線上に形成されており、スペーサ7を介して締結ねじ8によってスペーサ7を固定し、伝達部品5の抜け止めが図られている。
【0016】
上記構成によると、伝達部品5を出力軸3に組付けるのは、伝達部品5の奥行き側の端面をキー4の突起部4cに係止させておき、スペーサ7を介して締結ねじ8をネジ溝5dに螺合して伝達部品5を固定する。そして、固定ねじ6を孔5cに螺合して伝達部品5の回転方向のがたつきを防止する。
【0017】
図4および図5(a)〜(c)は、本発明のキーの変形例であり、この場合、キー9のキー本体部9aの先端には、キー溝3aに形成された円弧状部に合致する円弧状部9bを奥行き方向の端面に形成しており、このキー本体部9aの円弧状部9b側を径方向に延出して、突起部9cを形成している。この突起部9cに係合させて伝達部品5を組付けるようにしている。
【0018】
上記実施の形態によれば、キー4,9によって伝達部品5の軸方向への動きを係止するので、小型減速機などのように出力軸3に段差部がない出力軸を用いた場合にも伝達部品5を固定することができるので、伝達部品5が減速機1のハウジング2外面に干渉するなどの不具合を防止することができる。
【0019】
なお、本発明は、上記実施の形態のみに限定されるものではなく、例えば、上記実施の形態では、減速機の出力軸について本発明を適用したが、キー溝が設けられた出力軸であれば、減速機に限らず適用することができるなど、その他、本発明の要旨を変更しない範囲内で、適宜変更して用いることができるのは、言うまでもない。
【符号の説明】
【0020】
1 減速機
2 ハウジング
3 出力軸
3a キー溝
4,9 キー
4c,9c 突起部
5 伝達部品
6 固定ねじ
7 スペーサ
8 締結ねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力軸の周面に軸方向のキー溝を形成し、このキー溝にキーを組み付けて伝達部品の回り止めを図りながら伝達部品を出力軸に装着した出力軸と伝達部品の締結構造において、
前記キー形状を、前記キー溝内に一部が配置されるキー本体部に、前記伝達部品の奥行き側端面を係止する突起部を設けた構造にしたことを特徴とする出力軸と伝達部品の締結構造。
【請求項2】
前記キー本体部の前記キー溝から外側に露出された部分に前記軸方向に延出された延出部と、該延出部の外表面に前記出力軸と直交する方向に延出された突起部を備え、前記突起部を前記伝達部品の奥行き端面に係合させたことを特徴とする請求項1に記載の出力軸と伝達部品の締結構造。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−80519(P2011−80519A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−232595(P2009−232595)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【出願人】(000103792)オリエンタルモーター株式会社 (150)