説明

出銑孔閉塞材

【課題】 本発明は、出銑孔閉塞材として接着性が高く、耐磨耗性および耐食性が向上すると共に旧材との接着強さの向上により炉壁保護にも有用な出銑孔閉塞材の提供を課題とする。
【解決手段】 本発明の出銑孔閉塞材は、耐火材料に無水コールタールおよび粉末状のピッチとを配合し、混練した出銑孔閉塞材において、該無水コールタールおよび粉末状のピッチにおける固定炭素率の合計量を40質量%〜50質量%としたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出銑孔閉塞材に関し、特に高炉、電気炉の出銑孔に充填され閉塞するために用いられる出銑孔閉塞材に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の各種高炉は一炉で1〜4箇所の出湯口が設けられ、通常の出湯作業はこれらの出湯口を交互に使用して行われ、また、出湯口の開孔、閉塞の間隔は同一出湯口で通常数時間かけられているが、近年、高炉の大型化と高圧操業による出銑量の増大、微粉炭等の吹き込みによるコークス比の大幅な低減、稼働年数の大幅な延長等の状況の中で、出銑孔閉塞材に対する要求品質はますます厳しいものとなっている。
【0003】
出銑孔用閉塞材に要求される技術としては、圧入機による充填性が良好なことと高温下での結合強度が強く、耐溶銑滓に優れることが一般的に挙げられる。また、一方で、充填される閉塞材の積み重なる堆積により炉底を保護し高炉の耐用を高めるという重要な役割を担っている。
【0004】
出銑孔閉塞材は、通常、粘土を含む耐火原料と金属等の焼結助材に石炭系バインダーや樹脂バインダーを配合したもの(特許文献1〜特許文献3)、また、石油系バインダーを配合したもの(特許文献4、特許文献5)が一般的には知られており、特に、特許文献1、特許文献2における出銑孔閉塞材にあっては、溶銑やスラグに対する耐磨耗性及び耐食性が不十分である。
【0005】
この問題の解決を目的として、本出願人は先に無水コールタールに軟化点250℃以上の粉末状の石炭ピッチを添加した出銑孔閉塞材を提案した(特許文献3)。この出銑孔閉塞材における軟化点250℃以上の粉末状の石炭ピッチは揮発分が少なく、従来より高い割合で固定炭素が残留し、閉塞材中のカーボンボンドを強化させることができ、より緻密な組織を形成できるという効果を奏するが、より接着性、強度、さらには耐用性の向上が求められている。
【特許文献1】特開昭57−7875号公報
【特許文献2】特開平3−279271号公報
【特許文献3】特開平11−278949号公報
【特許文献4】特開昭51−115513号公報
【特許文献5】特開昭51−61515号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、出銑孔閉塞材として接着性が高く、耐磨耗性および耐食性が向上すると共に旧材との接着強さの向上により炉壁保護にも有用な出銑孔閉塞材の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の出銑孔閉塞材は、耐火材料に無水コールタールと粉末状のピッチとを配合して混練した出銑孔閉塞材において、該無水コールタールおよび粉末状のピッチにおける固定炭素率の合計量を40質量%〜50質量%としたことを特徴とする。
【0008】
無水コールタールにおける固定炭素率が32質量%〜36質量%、粉末状のピッチにおける固定炭素率が85質量%〜93質量%であることを特徴とする。
【0009】
耐火材料に対して、無水コールタールおよび粉末状のピッチを外掛けで10質量%〜30質量%の割合で配合したことを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の出銑孔閉塞材は、耐火原料と無水コールタールとピッチとからなる。本発明におけるバインダーは、無水コールタールとピッチとからなるが、本発明者等は、本発明における課題を解決するためには、出銑孔閉塞材における有機バインダーの強化が必要であり、そのためには揮発成分を極力削減し、固定炭素率を高める必要がある点に着目した。まず、固定炭素率の高い無水コールタールを使用することが有効と考えられるが、固定炭素率が36質量%を越える無水コールタールは粘性が高く、輸送が困難であり、使用に際しても取り扱い性が悪い。そのため、出銑孔閉塞材としての充填作業性とマッドガン能力から、固定炭素率が32質量%〜36質量%の無水コールタールが好ましい。市販品としては、高粘性品(粘度 1,000cps/60℃、固定炭素率35質量%)等が例示される。また、コールタールとしては水分0.5質量%以下の無水コールタールである。無水コールタール添加量は、充填作業性とマッドガン能力に基づいて調整される。
【0011】
また、ピッチにあっても、固定炭素率を高くして有機バインダー全体としての固定炭素率を更にアップさせるとよい。ピッチはタールとその由来が同じであり、タールにピッチは溶け込みやすく、特性的にも類似の特徴を有している。ピッチとしては固定炭素率が85質量%〜93質量%の粉末ピッチを使用するとよい。粉末状の石炭ピッチとしては、例えば軟化点350℃、固定炭素90質量%のものが挙げられる。
【0012】
無水コールタールおよび粉末状のピッチは合計して、耐火材料に対し外掛けで10質量%〜30質量%、好ましくは16質量%〜30質量%の割合で配合されるとよく、その内訳は、無水コールタールを耐火材料に対し外掛けで15質量%〜20質量%、また、粉末状のピッチを耐火材料に対し外掛けで1質量%〜10質量%の割合で添加するとよい。
【0013】
また、無水コールタールと粉末ピッチとの合計での固定炭素率は40質量%〜50質量%とするとよい。これにより、カーボン結合が強化され、出銑孔閉塞材としての特性を向上させることができる。合計での固定炭素率が40質量%未満であると無水コールタールのみでのカーボン結合と大差がなく、50質量%を越えると粘性が高くなり、混練が難しく、製造上、また、作業上問題が生じるので好ましくない。
【0014】
出銑孔閉塞材における耐火骨材は、1000℃以下の低温では強度の発現が認められず、1000℃以下の低温では有機バインダーによるカーボン結合に依存するところが大きい。本発明の出銑孔閉塞材は、有機バインダーにおける固定炭素率を40質量%以上の固定炭素率とするものであり、カーボン結合が強化され、1000℃以下の低温領域での出銑孔閉塞材の耐用性を向上できる。
【実施例】
【0015】
以下、実施例、比較例により、本発明を詳細に説明する。
(実施例1)
下記の表1の配合原料をその配合比(質量%)で約5分間混練し、それに60℃に加熱した無水コールタールを添加し、約1時間混練を行った。
【0016】
各実施例、各比較例における無水コールタールの添加量は、図1、図2に示す押し出し抵抗測定装置(マーシャル試験)により総荷重が約350kgfになるように調整した添加量である。すなわち、60℃で保温した練り土を、図1に示す形状のステンレス製試料ホルダー(L1 =9cm、L2 =6cm、L3 =26cm、L4 =12cm、L5 =2cm)に充填し、図2に示す測定装置(図中、Aは試料押し出し用面板、Bは試料ホルダー、Cは台座、Dはシリンダーヘッド)を用い、シリンダーヘッドDの押し出し速度を10mm/secとしたときの押し出し抵抗を、試料押し出し用面板Aに懸かる総荷重として測定するもので、上述したように、総荷重が約350kgfになるように、練り土中における無水コールタールの添加量を調整したものである。
【0017】
接着強さは、図3に示す3点曲げ強さ測定装置(JIS R2213に従う)により測定した。すなわち、1500℃で焼成した出銑孔閉塞材の焼成サンプル(4cm×4cm×8cm)を2つ用意し、各実施例、比較例における試験サンプル20gを用いて図3の如く接着させると共に全体を800℃で還元焼成を行い、接着強さ(MPa)を測定する。
【0018】
下記の表1に各実施例、各比較例で得られた出銑孔閉塞材の接着強さ(MPa)の測定結果を示す。
【0019】
【表1】

【0020】
表中、石炭ピッチとコールタールは、外掛け量(質量%)を示す。
【0021】
石炭ピッチAは、軟化点110℃、固定炭素60質量%、灰分0.5質量%未満
石炭ピッチBは、軟化点350℃、固定炭素90質量%、灰分0.5質量%未満
コールタールAは高粘性品(固定炭素35質量%、水分0.1〜0.3質量%、1,000cps/60℃)
コールタールBは低粘性品(固定炭素28質量%、水分0.1〜0.3質量%、200cps/60℃)。
【0022】
実施例1では固定炭素35質量%の無水タールA(高粘性品1,000cps/60℃)に、固定炭素90質量%のピッチBを添加してタールとピッチの総固定炭素率が43質量%となるように調整した出銑孔閉塞材である。接着強さは2.0MPaと明確に強度増大が認められた。
【0023】
実施例2ではピッチを増量し総固定炭素率を49質量%とした例であり、接着強度が2.2MPaと更に増大した。なお、表には示していないが、総固定炭素率をさらに51質量%まで高めた場合には粘性が高まりすぎ、混練が困難となり製造上不都合が生じた。
【0024】
比較例1は、バインダーとして固定炭素率が28質量%のコールタールBのみを使用した場合であり、バインダーにおける固定炭素率は28質量%であり、接着強さは0.3MPaであった。
【0025】
比較例2は、バインダーとして固定炭素率が35質量%のコールタールAのみを使用した場合であり、バインダーにおける固定炭素率は35質量%である。接着強さは0.5MPaと比較例1に比して接着性が向上したものの、実施例の1/4以下の強度であった。無水コールタールAは60℃で1,000cpsと高粘性であるが、製造上問題の無い範囲での上限である。
【0026】
比較例3は、固定炭素28質量%のタールBに固定炭素90%のピッチBを添加し、総固定炭素率を37質量%としたものであるが、接着強度は0.9MPaと実施例の半分以下の強度であった。
【0027】
比較例4は、固定炭素35質量%のタールAに固定炭素60質量%のピッチAを添加し、総固定炭素率を39質量%としたものであるが、接着強度は1.3MPaであり、実施例の70%以下の強度であったが、固定炭素が60質量%のピッチAは軟化点が低く、混練中に溶けだし、粘りが強く、ミキサーの各部位に付着しやすいため、多量の添加は製造に適さないものと判断された。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】出銑孔閉塞材の押し出し抵抗圧力を測定するために使用したステンレス製試料ホルダーの形状を説明するための図である。
【図2】出銑孔閉塞材の押し出し抵抗圧力を測定するために使用した測定装置を説明するための図である。
【図3】出銑孔閉塞材の接着強さ測定方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0029】
Aは試料押し出し用面板、Bは試料ホルダー、Cは台座、Dはシリンダーヘッドである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐火材料に無水コールタールと粉末状のピッチとを配合して混練した出銑孔閉塞材において、該無水コールタールおよび粉末状のピッチにおける固定炭素率の合計量を40質量%〜50質量%としたことを特徴とする出銑孔閉塞材。
【請求項2】
無水コールタールにおける固定炭素率が32質量%〜36質量%、粉末状のピッチにおける固定炭素率が85質量%〜93質量%であることを特徴とする請求項1記載の出銑孔閉塞材。
【請求項3】
耐火材料に対して、無水コールタールおよび粉末状のピッチを外掛けで10質量%〜30質量%の割合で配合したことを特徴とする請求項1記載の出銑孔閉塞材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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