説明

刃先交換式溝入れ工具及び端面溝入れ加工方法

【課題】切削インサートの部品点数を増加させることなく、被削材の周面に沿って端面溝入れ加工する場合であっても加工精度を十分に確保できる刃先交換式溝入れ工具及び端面溝入れ加工方法を提供する。
【解決手段】切削インサート30は、インサート高さ軸線C3に関して回転対称、かつ、インサート仮想平面VS1に関して面対称に形成され、インサート幅軸線C2が、他方の幅方向C2Aへ向かうに従い漸次被削材Wの回転する回転方向の前方側へ向けて傾斜し、インサート長手軸線C1が、一方の延在方向C1Aへ向かうに従い漸次工具仮想平面に接近するようにインサート本体31の下面側へ向けて延び、他方の切れ刃32Bにおける他方の幅方向C2Aとは反対側に位置する一方のコーナー部43Cが、一方の切れ刃32Aにおける一方のコーナー部43Aよりも他方の幅方向C2A側に配置されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刃先交換式溝入れ工具及びこれを用いた端面溝入れ加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金属材料等からなる被削材を回転軸線回りに回転させて、この被削材の回転軸線を中心に形成された加工穴の奥面(端面)や、被削材の外周面に形成された段部において回転軸線方向を向く端面に、切削インサートの切れ刃で溝入れ加工を施す刃先交換式溝入れ工具が知られている。例えば、図23に示す従来の刃先交換式溝入れ工具100は、軸状をなす工具本体1の先端部に、断面矩形の棒状に形成された切削インサート30が着脱自在に装着されている。切削インサート30は、棒状をなすインサート本体31の延在方向(図23における左右方向(X方向))の両端部に、一対の切れ刃32を有している。そして、これら切れ刃32のうち工具本体1の先端面から突出された一方の切れ刃32Aが、被削材Wの加工穴Hの奥面(端面)Bに溝入れ加工(内径側端面溝入れ)を施す。図23の例では、被削材Wの奥面Bは、回転軸線WOに直交するとともに加工穴Hの内周面(周面)Sに隣接して形成されており、一方の切れ刃32Aは、この内周面Sに沿うように回転軸線WOに平行にX方向に移動することにより奥面Bに対して溝入れ加工する。尚、切削インサート30は、インサート本体31の延在方向及び幅方向の中央を通るとともにこれら延在方向及び幅方向に垂直な高さ方向に延びるインサート高さ軸線C3に関して回転対称、かつ、このインサート高さ軸線C3を含み前記延在方向に直交するインサート仮想平面(不図示)に関して面対称に形成されており、工具本体1の仕様が左勝手か右勝手かに係わらず、両切れ刃32A、32Bを使用できる。
【0003】
また図23において、一対の切れ刃32のうち他方の切れ刃32Bは切削には供されず、一方の切れ刃32Aが摩耗や欠損等により使用に適さなくなった際に、インサート本体31の取り付け向きを延在方向に反転させることで、該切れ刃32Bが工具本体1の先端面から突出されて溝入れ加工に用いられる。
このようにして、被削材Wの加工穴Hにおける内周面Sの径方向内方に配されるとともに回転軸線WO方向を向く奥面(内径側端面)Bに対して、刃先交換式溝入れ工具100を用いた内径側端面溝入れ加工が行われている。
【0004】
また図24の例では、前述の切削インサート30が、軸状をなす刃先交換式溝入れ工具105の先端部に着脱自在に装着されている。そして、工具本体1の先端面から突出された一方の切れ刃32Aが、多段円柱状に形成された被削材Wの段部Uにおいて回転軸線WO方向を向く端面Eに向けて回転軸線WOに平行にX方向に移動することにより、この端面Eに溝入れ加工(外径側端面溝入れ)を施す。この例では、被削材Wの端面Eは、回転軸線WOに直交するとともに外周面(周面)Rの小径部分に隣接して形成されており、一方の切れ刃32Aは、前記小径部分に沿うように移動することにより端面Eに対して溝入れ加工する。
【0005】
このようにして、被削材Wの前記小径部分における外周面Rの径方向外方に配されるとともに回転軸線WO方向を向く端面(外径側端面)Eに対して、刃先交換式溝入れ工具105を用いた外径側端面溝入れ加工が行われている。
また、このような溝入れ加工に用いられる他の切削インサートとして、例えば、特許文献1に記載されたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平7−115251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述の刃先交換式溝入れ工具100、105においては、次のような課題を有していた。
切削インサート30は、そのインサート本体31の延在方向(図23、図24に示すインサート長手軸線C1)が被削材Wの回転軸線WOに対して平行であるとともに、被削材Wの周面S、Rに対して平行に延びて配置されており、一対の切れ刃32は、周面S、Rからの距離が互いに同一とされている。このような切削インサート30の配置状態で、一方の切れ刃32Aが被削材Wの周面S、Rから離間されて端面B、Eに溝入れ加工する際には特に問題はないが、切れ刃32Aが被削材Wの周面S、Rに沿って移動しつつ端面B、Eに対して溝入れ加工する場合には、他方の切れ刃32Bが周面S、Rに接触して傷付けてしまう。尚、図23、図24に示すように、被削材Wにおいて最も工具本体1の基端側に位置する端面Fから加工穴Hの端面B又は段部Uの端面Eまでの深さd1と、他方の切れ刃32Bから端面B、Eまでの距離L3との関係が、d1<L3である場合には接触は無いが、d1≧L3となると接触することから、被削材Wの形状が制限される上、加工中に前記距離L3が縮小されていき前述の接触が生じることが考えられる。このような接触が生じると、被削材Wの加工精度が確保できないばかりか、未使用の他方の切れ刃32Bが傷んでしまうことになる。詳しくは、図25、図26に示すように、他方の切れ刃32Bにおいて被削材Wの周面S、R側に位置するコーナー部43Cが、周面S、Rに接触する。このため、図23及び図24のような被削材Wの周面S、Rに沿った端面溝入れはできなかった。
【0008】
このような切れ刃32Bの周面S、Rへの接触を防止するために、例えば、工具本体1に装着する切削インサート30の姿勢を変えることが考えられる。すなわち、図27及び図28に示すように、切削インサート30のすくい面33側(インサート本体31の上面側)から見て、インサート本体31のインサート長手軸線C1が、一方の切れ刃32A側から他方の切れ刃32B側へ向かうに従い漸次被削材Wの周面S(R)から離間するように切削インサート30をX方向に対して傾斜させて、工具本体1に装着すればよい。これにより、切削インサート30において他方の切れ刃32Bの周面S(R)側に配置されたコーナー部43Cが、該周面S(R)から離間して配置されることから、前述の接触が防止される。
【0009】
しかしながら、この場合、一方の切れ刃32Aに着目すれば、図28に示すように、切れ刃32Aの正面切れ刃41は、回転軸線WOに垂直な被削材仮想平面VS4に対して図中の角度αだけ傾斜されることになる。本来、溝入れ加工により形成される溝の溝底Dは、回転軸線WOに垂直(すなわち被削材仮想平面VS4に平行)であることが要求されるが、前述のように正面切れ刃41が傾斜されることにより、切削された溝の溝底Dも被削材仮想平面VS4に対して角度αだけ傾斜してしまい、加工精度を十分に確保することができない。
【0010】
一方、特許文献1に記載された切削インサートにおいては、該切削インサートを前記インサート高さ軸線に関して回転対称に形成する一方で、前記インサート仮想平面に関して面対称には形成しておらず、インサート本体が全体に捩れたように形成されている。これにより、切削インサートを工具本体に装着した際に、他方の切れ刃における周面S(R)側のコーナー部が、一方の切れ刃における周面S(R)側のコーナー部よりも該周面S(R)から離間されるようにしている。しかしながら、この場合、工具本体の仕様に合わせて、左勝手用及び右勝手用の切削インサートをそれぞれ用意しなければならず、部品点数が増加して管理が煩雑となる。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、切削インサートの部品点数を増加させることなく、被削材の周面に沿って端面溝入れ加工する場合であっても加工精度を十分に確保できる刃先交換式溝入れ工具及び端面溝入れ加工方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提案している。
すなわち本発明は、回転軸線を中心に回転する被削材の端面に向けて切れ刃を突出させた切削インサートと、軸状をなし、先端部に前記切削インサートが着脱自在に装着される工具本体と、を有し、前記切れ刃で前記端面に溝入れ加工する刃先交換式溝入れ工具であって、前記切削インサートは、棒状をなすインサート本体の延在方向の両端部における該インサート本体の上面に一対の切れ刃を備え、前記インサート本体の延在方向の中央及び該延在方向に直交する幅方向の中央を通りこれら延在方向及び幅方向に直交するインサート高さ軸線に関して回転対称、かつ、前記インサート高さ軸線を含み前記延在方向に垂直なインサート仮想平面に関して面対称に形成され、前記切れ刃は、前記インサート本体の延在方向の端縁に形成されて前記幅方向に沿って延びる正面切れ刃と、この正面切れ刃の両端に配置されて前記幅方向にそれぞれ突出する一対のコーナー部と、前記コーナー部から前記延在方向に沿って該インサート本体の中央側に向かうに従い漸次互いの間隔を狭めるようにそれぞれ延びる一対の側面切れ刃とを有し、前記工具本体は、前記切削インサートを該工具本体の側方を向く一側面に沿うように配置しているとともに、前記一対の切れ刃のうち一方の切れ刃を前記先端部の先端面から先端側へ向けて溝入れ方向に突出させており、前記切削インサートは、前記インサート本体の延在方向の中央を通り前記幅方向に沿うインサート幅軸線が、前記幅方向のうち、前記一対のコーナー部における前記工具本体の一側面側に位置する一方のコーナー部から他方のコーナー部に向かう方向である他方の幅方向へ向かうに従い漸次被削材の回転する回転方向の前方側へ向けて傾斜しており、前記インサート本体の幅方向の中央を通り前記延在方向に沿うインサート長手軸線が、前記一方の切れ刃における他方のコーナー部及び前記回転軸線を含む工具仮想平面に対して傾斜しているとともに、前記延在方向のうち、前記一対の切れ刃における他方の切れ刃から前記一方の切れ刃に向かう方向である一方の延在方向へ向かうに従い漸次前記工具仮想平面に接近するように前記インサート本体の下面側へ向けて延びており、前記他方の切れ刃における前記他方の幅方向とは反対側に位置する一方のコーナー部が、前記一方の切れ刃における前記一方のコーナー部よりも前記他方の幅方向側に配置されていることを特徴とする。
また本発明は、回転軸線を中心に回転する被削材の端面に向けて切れ刃を突出させた切削インサートと、軸状をなし、先端部に前記切削インサートが着脱自在に装着される工具本体と、を有する刃先交換式溝入れ工具を用いて、前記切れ刃で前記被削材の端面に溝入れ加工する端面溝入れ加工方法であって、前記切削インサートは、棒状をなすインサート本体の延在方向の両端部における該インサート本体の上面に一対の切れ刃を備え、前記インサート本体の延在方向の中央及び該延在方向に直交する幅方向の中央を通りこれら延在方向及び幅方向に直交するインサート高さ軸線に関して回転対称、かつ、前記インサート高さ軸線を含み前記延在方向に垂直なインサート仮想平面に関して面対称に形成され、前記切れ刃は、前記インサート本体の延在方向の端縁に形成されて前記幅方向に沿って延びる正面切れ刃と、この正面切れ刃の両端に配置されて前記幅方向にそれぞれ突出する一対のコーナー部と、前記コーナー部から前記延在方向に沿って該インサート本体の中央側に向かうに従い漸次互いの間隔を狭めるようにそれぞれ延びる一対の側面切れ刃とを有し、前記切削インサートを、前記工具本体の側方を向く一側面に沿うように配置するとともに、前記一対の切れ刃のうち一方の切れ刃を前記先端部の先端面から先端側へ向けて溝入れ方向に突出させて該工具本体に装着して、該一方の切れ刃を前記溝入れ方向に沿って移動させることにより前記端面に対して溝入れ加工するときに、前記インサート本体の延在方向の中央を通り前記幅方向に沿うインサート幅軸線を、前記幅方向のうち、前記一対のコーナー部における前記工具本体の一側面側に位置する一方のコーナー部から他方のコーナー部に向かう方向である他方の幅方向へ向かうに従い漸次被削材の回転する回転方向の前方側へ向けて傾斜させ、前記インサート本体の幅方向の中央を通り前記延在方向に沿うインサート長手軸線を、前記一方の切れ刃における他方のコーナー部及び前記回転軸線を含む工具仮想平面に対して傾斜させるとともに、前記延在方向のうち、前記一対の切れ刃における他方の切れ刃から前記一方の切れ刃に向かう方向である一方の延在方向へ向かうに従い漸次前記工具仮想平面に接近するように前記インサート本体の下面側へ向けて延在させ、前記他方の切れ刃における前記他方の幅方向とは反対側に位置する一方のコーナー部を、前記一方の切れ刃における前記一方のコーナー部よりも前記他方の幅方向側に配置することを特徴とする。
【0013】
本発明に係る刃先交換式溝入れ工具及び端面溝入れ加工方法によれば、工具本体の先端部から被削材の端面に向けて突出された切削インサートの一方の切れ刃における正面切れ刃が、インサート幅軸線に平行となるように前記他方の幅方向へ向かうに従い漸次被削材の回転する回転方向の前方側へ向けて傾斜しているので、一方の切れ刃が切削した切屑の排出性が高められる。
【0014】
また、切削インサートのインサート長手軸線が、前記一方の延在方向へ向かうに従い漸次工具仮想平面に接近するように傾斜して、インサート本体の下面側へ向けて延びている。すなわち、前記工具仮想平面に対して、他方の切れ刃がインサート本体の上面側へ向けて離間されているので、一方の切れ刃のくさび角を大きく設定できる。従って、被削材に溝入れ加工する一方の切れ刃の刃先強度が十分に確保されている。
【0015】
また、他方の切れ刃において前記他方の幅方向とは反対側に位置する一方のコーナー部が、一方の切れ刃において前記反対側に位置する一方のコーナー部に対して、前記他方の幅方向側に配置されている。これにより、例えば、被削材の回転軸線を中心に形成された円柱穴状の加工穴の内周面に沿って該加工穴の奥面(端面)に溝入れ加工(内径側端面溝入れ)する場合に、下記のような作用効果を奏する。すなわち、例えば、切削インサートの一方の切れ刃における一方のコーナー部を被削材の内周面に当接させるように近接配置し、この切削インサートを該内周面に沿って溝入れ方向に移動させ溝入れ加工するときに、他方の切れ刃における一方のコーナー部がこの内周面から離間されて、このコーナー部が該内周面に接触して傷付けてしまうようなことが確実に防止される。また、例えば、多段円柱状をなす被削材の段部において、回転軸線に平行な外周面を有する小径部分に沿って該被削材の端面に溝入れ加工(外径側端面溝入れ)する場合に、前述と同様の作用効果が得られる。すなわち、例えば、切削インサートの一方の切れ刃における一方のコーナー部を被削材の前記小径部分の外周面に当接させるように近接配置し、この切削インサートを該小径部分に沿って溝入れ方向に移動させ溝入れ加工するときに、他方の切れ刃における一方のコーナー部が小径部分から離間されて、このコーナー部が該小径部分に接触して傷付けてしまうようなことが防止される。
また、前述した接触によって、未使用の他方の切れ刃が傷んでしまうようなことが防止される。
【0016】
また、図23、図24で説明した被削材Wの端面B、Eの深さd1に係わらず他方の切れ刃の一方のコーナー部が被削材の周面から離間されて、このコーナー部が該周面に接触して傷付けてしまうようなことが確実に防止される。
【0017】
さらに、一方の切れ刃が切削する被削材の溝底に着目すると、切削インサートのインサート幅軸線が前記他方の幅方向に向かうに従い漸次被削材の回転する回転方向の前方側へ向けて傾斜し、インサート長手軸線が前記一方の延在方向に向かうに従い工具仮想平面に対して接近するようにインサート本体の下面側へ向けて傾斜し、かつ、他方の切れ刃における一方のコーナー部が一方の切れ刃における一方のコーナー部よりも前記他方の幅方向側に配置されていることによって、該溝底は被削材の回転軸線に対して垂直に近い傾斜を備えて形成されることになる。すなわち、図28で説明した溝底Dの角度αが比較的小さく形成されて、被削材に切削された溝の加工精度が高められている。
【0018】
また、各切れ刃がそれぞれ備える一対の側面切れ刃は、インサート本体の延在方向の外側から中央側へ向かうに従い漸次互いの間隔を狭めるように傾斜して形成されているので、溝壁の加工精度が確保される。すなわち、切削インサートの工具本体に対する装着姿勢が前述のように設定されても、一方の切れ刃において被削材の周面側とは反対側(つまり前記他方の幅方向側)に配置された側面切れ刃が、被削材に形成された溝の前記反対側における溝壁の開口端縁に接触するようなことがない。
【0019】
また、本発明に係る刃先交換式溝入れ工具において、前記切削インサートを前記工具仮想平面に直交する向きから見て、前記インサート幅軸線と前記回転軸線とのなす角度θ1が、90°≦θ1≦90.5°に設定されることとしてもよい。
【0020】
本発明に係る刃先交換式溝入れ工具によれば、例えば、被削材の前記周面が回転軸線に平行に形成される場合に、インサート本体の延在方向が被削材の周面に対して傾斜する角度は、インサート幅軸線と回転軸線とのなす角度θ1から90°を引いた値(つまりθ1−90°)に近似しつつも僅かに(θ1−90°)よりも大きい値に設定される。すなわち、切削インサートは、インサート本体の延在方向(インサート長手軸線)を被削材の前記周面に対して僅かに傾斜させつつも略平行として工具本体に装着される。従って、前述のように他方の切れ刃の一方のコーナー部を該周面から確実に離間してこの周面の加工精度を確保しつつも、被削材の端面に形成する溝における溝底の加工精度を確保できる。詳しくは、角度θ1が前述の範囲内に設定されることによって、溝入れされた被削材の溝底が回転軸線に略垂直に形成されることから、該溝底の加工精度が高められている。
【0021】
また、本発明に係る刃先交換式溝入れ工具において、前記端面は、被削材に形成された加工穴における前記工具本体の基端側を向く奥面であり、前記一方の切れ刃は、この奥面に対して内径側端面溝入れ加工することとしてもよい。
【0022】
本発明に係る刃先交換式溝入れ工具によれば、被削材に形成されて例えば円柱穴状をなす加工穴の奥面に隣接して、回転軸線に平行な内周面が形成されている場合であっても、溝入れする奥面の位置に係わらず、精度の高い内径側端面溝入れが行える。
【0023】
また、本発明に係る刃先交換式溝入れ工具において、前記端面は、被削材の外周面に形成された段部における前記工具本体の基端側を向く端面であり、前記一方の切れ刃は、この端面に対して外径側端面溝入れ加工することとしてもよい。
【0024】
本発明に係る刃先交換式溝入れ工具によれば、例えば、多段円柱状をなす被削材の段部において工具本体の基端側を向く端面に隣接して、回転軸線に平行な外周面を有する小径部分が形成されている場合であっても、溝入れする端面の位置に係わらず、精度の高い外径側端面溝入れが行える。
【0025】
また、本発明に係る刃先交換式溝入れ工具において、前記一方の切れ刃における前記一対のコーナー部は、前記回転軸線に垂直な被削材仮想平面上に配置されていることとしてもよい。
【0026】
本発明に係る刃先交換式溝入れ工具によれば、一方の切れ刃における一対のコーナー部が、被削材の回転軸線に垂直な被削材仮想平面上に配置されているので、一方の切れ刃で切削する被削材の溝底を、回転軸線に対して垂直に形成できる。よって、被削材の溝の仕上がり精度が十分に確保される。
【0027】
また、本発明に係る刃先交換式溝入れ工具において、前記コーナー部は、凸曲線状の第1コーナー刃を有し、前記一方の切れ刃における前記他方のコーナー部は、このコーナー部に隣接する前記正面切れ刃の延長線と前記第1コーナー刃における前記幅方向の外縁部から前記延長線に向けて延ばした垂線との交点を、前記工具仮想平面上に配置していることとしてもよい。
【0028】
本発明に係る刃先交換式溝入れ工具によれば、切れ刃のコーナー部は、凸曲線状の第1コーナー刃を有しているので、該コーナー部における刃先欠損等が防止される。
【0029】
また、本発明に係る刃先交換式溝入れ工具において、前記コーナー部は、前記第1コーナー刃における前記インサート本体の延在方向の中央側の端部と前記側面切れ刃とを繋ぐ直線状の第2コーナー刃を有し、前記切削インサートを前記工具仮想平面に直交する向きから見て、前記第2コーナー刃は、被削材の前記回転軸線に対して平行となるように延びていることとしてもよい。
【0030】
本発明に係る刃先交換式溝入れ工具によれば、切れ刃のコーナー部には、第1コーナー刃におけるインサート本体の延在方向に沿う中央側の端部と側面切れ刃とを繋ぐ第2コーナー刃が、被削材の回転軸線に対して平行となるように延びているので、一方の切れ刃の正面切れ刃及び第1コーナー刃が切削した被削材の溝壁をこの第2コーナー刃がさらうことになり、該溝壁の仕上げ精度が高められる。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る刃先交換式溝入れ工具及び端面溝入れ加工方法によれば、切削インサートの部品点数を増加させることなく、被削材の周面に沿って端面溝入れ加工する場合であっても加工精度を十分に確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る刃先交換式溝入れ工具と、この刃先交換式溝入れ工具を用いて溝入れ加工を施す被削材とを示す概略斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る刃先交換式溝入れ工具と、この刃先交換式溝入れ工具を用いて溝入れ加工を施す被削材とを示す概略斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る刃先交換式溝入れ工具と被削材とを、切削インサートのすくい面に対向する向きから見た平面図であるとともに、切削インサートを上面から見た図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る刃先交換式溝入れ工具と被削材とを示す概略側面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る刃先交換式溝入れ工具を工具本体の先端側から見た正面図である。
【図6】切削インサートを示す斜視図である。
【図7】図1における切削インサートの一方の切れ刃32Aを拡大して示す図である。
【図8】図3における切削インサート30近傍を拡大して示す図である。
【図9】図8における切削インサートの他方の切れ刃32Bを拡大して示す図である。
【図10】図5における切削インサート30近傍を拡大して示す図である。
【図11】切削インサート30の装着姿勢と、コーナー部43Aを回転軸線WO回りに回転させた仮想円VC1及びコーナー部43Bを回転軸線WO回りに回転させた仮想円VC2とを示す図である。
【図12】本発明の第2の実施形態に係る刃先交換式溝入れ工具と、この刃先交換式溝入れ工具を用いて溝入れ加工を施す被削材とを示す概略斜視図である。
【図13】本発明の第2の実施形態に係る刃先交換式溝入れ工具と被削材とを、切削インサートのすくい面に対向する向きから見た平面図であるとともに、切削インサートを上面から見た図である。
【図14】本発明の第2の実施形態に係る刃先交換式溝入れ工具と被削材とを示す概略側面図である。
【図15】本発明の第2の実施形態に係る刃先交換式溝入れ工具を工具本体の先端側から見た正面図である。
【図16】切削インサートを示す斜視図である。
【図17】図12における切削インサートの一方の切れ刃32Aを拡大して示す図である。
【図18】図13における切削インサート30近傍を拡大して示す図である。
【図19】図15における切削インサート30近傍を拡大して示す図である。
【図20】切削インサート30の装着姿勢と、コーナー部43Aを回転軸線WO回りに回転させた仮想円VC1及びコーナー部43Bを回転軸線WO回りに回転させた仮想円VC2とを示す図である。
【図21】切削インサートの切れ刃におけるコーナー部の変形例を示す図である。
【図22】切削インサートの切れ刃におけるコーナー部の変形例を示す図である。
【図23】従来の刃先交換式溝入れ工具(内径側端面溝入れ)と被削材とを、切削インサートのすくい面に対向する向きから見た平面図であるとともに、切削インサートを上面から見た図である。
【図24】従来の刃先交換式溝入れ工具(外径側端面溝入れ)と被削材とを、切削インサートのすくい面に対向する向きから見た平面図であるとともに、切削インサートを上面から見た図である。
【図25】図23におけるA1部を拡大して示す図である。
【図26】図24におけるA2部を拡大して示す図である。
【図27】従来の刃先交換式溝入れ工具と被削材とを、切削インサートのすくい面に対向する向きから見た平面図であるとともに、切削インサートを上面から見た図である。
【図28】図27における切削インサート30及び溝底Dを拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
(第1実施形態)
図1〜図11は、本発明の第1の実施形態に係る刃先交換式溝入れ工具10、及び、この刃先交換式溝入れ工具10に用いられる切削インサート30を示している。本実施形態に係る刃先交換式溝入れ工具10は、軸状に形成され、その中心軸線TOに直交する断面が略円形をなす工具本体1と、この工具本体1の中心軸線TOに沿う先端側の端部(先端部)3に着脱自在に装着されて該工具本体1の先端面1Aから先端側へ向けて切れ刃32を突出させる切削インサート30とを有している。
【0034】
本実施形態の刃先交換式溝入れ工具10は、略円筒状の被削材Wに内径側端面溝入れ加工を行うものである。被削材Wにおいて円柱穴状をなす加工穴Hには、該被削材Wの回転軸線WO側を向くとともにこの回転軸線WOに平行な内周面(周面)Sが形成されている。この内周面Sは、加工穴Hの最奥部に位置して回転軸線WOに直交する円形状の平面からなる奥面(端面)Bに隣接している。刃先交換式溝入れ工具10は、工具本体1の中心軸線TOを被削材Wの回転軸線WOに対して略平行に配置した状態で、回転軸線WOを中心に回転方向WTに回転する被削材Wにおいて該回転軸線WOを中心に形成された加工穴Hに工具本体1の先端部3を挿入して、内周面Sに沿うように切れ刃32を移動させ、該加工穴Hの奥面Bを切削する。尚、本実施形態では、方向を示す符号X、Y、Zを一部の図中に用いる。ここで、符号X、Yは水平方向をそれぞれ示しており、詳しくは、X方向が被削材Wの回転軸線WOに平行な水平方向を示し、Y方向が回転軸線WOに垂直な水平方向を示している。また、符号Zは鉛直方向を示している。
【0035】
工具本体1は、鋼材等から形成されており、その中心軸線TOに沿う先端部3以外の中央部及び基端部が略一定の外径をなしてシャンク部2とされている。工具本体1の外周面においてシャンク部2に位置する領域には、中心軸線TOを上下(Z方向)に挟むとともに該中心軸線TOに平行に延びる帯状の平面からなり、互いに背向するように配置された上面2A、下面2Bが形成されている。この刃先交換式溝入れ工具10は、これら上面2A、下面2Bによって回り止めされた状態でシャンク部2が保持されることにより、不図示の工作機械に固定支持される。尚、本実施形態では、中心軸線TOがX方向に延びており、上面2A、下面2BがX−Y水平面内に配置されている。以下の説明においては、工具本体1の先端側(図3における左右方向(X方向)の左側)を一方側、基端側(図3におけるX方向の右側)を他方側と呼ぶことがある。
【0036】
工具本体1の先端部3は、図3の平面視において概略台形状をなしており、その先端面1Aから先端側へ突出して上顎部6及び下顎部7が形成されている。先端部3の上顎部6と下顎部7とは、互いに上下方向(Z方向)に対向配置されているとともに、先端面1Aにおいて、回転軸線WOに垂直な方向(図3におけるY方向)のうち一側(図3における下側)の端部に形成されている。また、図4に示すように、先端部3の上面3Aはシャンク部2の上面2Aよりも一段窪まされるように形成されている。また、工具本体1の先端部3における下面3Bは、シャンク部2における下面2Bに面一とされている。
【0037】
また工具本体1は、その先端部3において側方(図3におけるY方向)を向く両側面のうち、前記一側を向く一側面3Cが、シャンク部2において前記一側を向く側面(一側面)2Cに面一に連なっているとともに、上顎部6及び下顎部7の前記一側を向く側面を形成している。先端部3の一側面3C及びシャンク部2の一側面2CにおけるZ方向の中央部分は、上面2A、下面2Bに垂直とされて中心軸線TOに沿って延びる帯状の平面に形成されている。
【0038】
また、先端部3には、前記両側面のうち他側(図3における上側)を向くとともに、一側面3Cに背向するように配置された他側面3Dが形成されている。先端部3の他側面3Dは、工具本体1の基端側から先端側へ向かうに従い漸次前記一側へ向かうように傾斜してテーパ状に形成されている。また、他側面3Dの基端部は、シャンク部2において前記他側を向く断面凸曲線状の側面(他側面)2Dに連なっている。尚、前述した工具本体1のシャンク部2及び先端部3の形状は一例であり、本実施形態に限定されるものではない。例えば、一側面3C、2Cの形状は、前述した平面に限定されるものではなく、それ以外の曲面状や凹凸形状等であっても構わない。また、一側面3Cと2Cとは面一に連なっていなくてもよく、例えば図3の平面視において、シャンク部2の一側面2Cが先端部3の一側面3Cに対して図示するY方向の下側に突出したりY方向の上側に窪んだりして形成されていてもよい。
【0039】
図4の側面視において、上顎部6は略三角形状をなし、上顎部6の上面は基端側から先端側へ向かうに従い漸次下面3B側へ向けて傾斜して形成されている。また、図5の正面視において、下顎部7は、その回転軸線WO側を向く面が断面凹曲線状をなし、回転軸線WOとは反対側を向く面が断面凸曲線状をなしていて、全体に略弓状に形成されている。図5に示すように、下顎部7の肉厚は、上面3A側から下面3B側へ向かうに従い漸次薄肉となるように形成されている。詳しくは、この正面視において、下顎部7はシャンク部2の一側面2C及び先端部3の一側面3CにおけるZ方向の下側部分に対応するように配されているとともに、上側から下側へ向かうに従い漸次他側面3D側へ向かって湾曲して形成されている。また、図4の側面視において、下顎部7は略矩形状をなし、上顎部6よりも工具本体1の先端側へ向けて突出されている。
【0040】
また、これら上顎部6と下顎部7との間には隙間が設けられており、切削インサート30が着脱自在に装着されるインサート取付座4とされている。工具本体1は、このインサート取付座4に切削インサート30を装着して、該切削インサート30を該工具本体1の側方を向く一側面3C、2Cに沿うように配置している。詳しくは、切削インサート30は、図3の平面視において、工具本体1の先端部3の一側面3Cに開口されたインサート取付座4に装着されたときに、中心軸線TOに対して略平行に延在し、後述する切れ刃32Bのコーナー部43Cを該一側面3CからY方向の下側に向けて僅かに突出させた状態で、該一側面3Cに沿うように配置されている。
【0041】
インサート取付座4は、略直方体穴状をなしており、先端部3の一側面3C側に位置しているとともにX方向に沿って延びている。インサート取付座4は、その先端部及び中央部が、上顎部6と下顎部7との間に位置しているとともにY方向の両側に開口されている。また、インサート取付座4の先端部は、X方向のうち先端側を向く方向(後述する溝入れ方向XA)にも開口されている。また、インサート取付座4の基端部は、上面3Aと下面3Bとの間に位置しているとともに一側面3Cに開口されている。図4の側面視において、インサート取付座4は、工具本体1の基端側から先端側へ向かうに従い漸次上面3Aから下面3Bへ向けて傾斜するように形成されている。また、インサート取付座4の基端部には、工具本体1の先端側を向く段部4Aが形成されている。
【0042】
また、インサート取付座4の基端側には、該インサート取付座4よりも幅狭のスリット状をなし、先端面1A、一側面3C及び他側面3Dに開口する締め付け部8が形成されている。締め付け部8は、工具本体1の基端側から先端側へ向かうに従い漸次上面3Aから下面3Bへ向けて傾斜するように形成されている。
【0043】
また、インサート取付座4において上下に向かい合う天壁面4B及び底壁面4Cは、図5、図10に示すように、先端面1A側から見てそれぞれ凸V字状に形成されている。また、図4に示すように、締め付け部8は、インサート取付座4に対して天壁面4Dと底壁面4Eとの間隔が狭く形成されている。締め付け部8の天壁面4Dには、先端部3の上面3Aに開口するとともにクランプネジ5が挿通される貫通孔5Aが形成されている。また、締め付け部8の底壁面4Eには、貫通孔5Aに同軸とされて内周面に雌ねじ加工が施されたねじ穴(不図示)が形成されている。
【0044】
また、この刃先交換式溝入れ工具10に装着される切削インサート30は、超硬合金等の硬質材料からなり、図4に示すように、棒状をなすインサート本体31の延在方向(図4の左右方向(X方向))の両端部における該インサート本体31の上面(図4においてZ方向の上側を向く面)に一対の切れ刃32を備える、所謂ドッグボーン型の切削インサートである。
【0045】
ここで、図6〜図9等に示す符号C1は、インサート本体31の延在方向に沿うインサート長手軸線を示しており、このインサート長手軸線C1は、インサート本体31において前記延在方向に直交する幅方向の中央を通るとともに、一対の切れ刃32における後述する正面切れ刃41、41の中央をそれぞれ通って延びている。また、符号C2は、インサート本体31の幅方向に沿うインサート幅軸線を示しており、該インサート幅軸線C2は、インサート長手軸線C1に沿うインサート本体31の中央(図中に二重丸で示す部位)を通り、該インサート長手軸線C1に直交するとともに正面切れ刃41に平行に延びている。また、符号C3は、インサート本体31の高さ方向に沿うインサート高さ軸線を示しており、該インサート高さ軸線C3は、インサート本体31の前記中央を通り、インサート長手軸線C1及びインサート幅軸線C2にそれぞれ直交する向きに延びている。
【0046】
また、切削インサート30は、インサート長手軸線C1に沿うインサート本体31の中央を通るとともに該インサート長手軸線C1に垂直なインサート仮想平面VS1に関して対称(すなわち面対称)に形成されている。また、この切削インサート30は、インサート長手軸線C1及びインサート高さ軸線C3を含み、インサート本体31の上面(図5において上下方向(Z方向)の上方を向く面)及び下面(図5においてZ方向の下方を向く面)の各中央を通るインサート仮想平面VS2に関しても対称(面対称)に形成されている。すなわち、この切削インサート30は、インサート高さ軸線C3に関して回転対称に形成されている。尚、切削インサート30は、インサート仮想平面VS2に関して面対称に形成されていなくても構わない。
【0047】
また、図6、図10に示すように、切削インサート30は、インサート本体31の上面における前記延在方向の中央部、及び、下面が、インサート長手軸線C1に直交する断面でそれぞれ凹V字状に形成されている。このようなインサート本体31の形状により、切削インサート30がインサート取付座4の先端側に開口する部位において天壁面4B及び底壁面4Cに摺接するように案内され、前記一方側から前記他方側へと挿入される。
【0048】
図4に示すように、インサート取付座4に挿入された切削インサート30は、インサート本体31の前記他方側の端面が段部4Aに突き当てられて位置決めされる。この状態で、クランプネジ5を締め付けることにより、締め付け部8の天壁面4Dが底壁面4Eへ向けて弾性変形しつつ近づくとともに、インサート取付座4の天壁面4Bが底壁面4Cへ向けて弾性変形しつつ近づいていく。このように、天壁面4D、4Bと底壁面4E、4Cとの間隔が狭められて、切削インサート30が工具本体1の先端部3に固定支持される。
【0049】
また、インサート本体31の上面においてインサート長手軸線C1方向に沿う両端部には、一対の切れ刃32が配置されている。図8に示すように、切れ刃32は、インサート本体31の延在方向の端縁に形成されて該延在方向に直交する幅方向(図8における左右方向)に延びる直線状の正面切れ刃41と、この正面切れ刃41の両端に配置されて前記幅方向にそれぞれ突出する一対のコーナー部43と、これらコーナー部43から前記延在方向に沿って該インサート本体31の中央側(内側)に向かうに従い漸次互いの間隔を狭めるようにそれぞれ直線状に延びる一対の側面切れ刃42とを有している。
【0050】
詳しくは、一対の側面切れ刃42は、インサート本体31の延在方向の外側から中央側へ向かうに従い漸次幅方向の外側から中央側(内側)へ向かうように傾斜して形成されており、所謂バックテーパが与えられている。
【0051】
また、インサート本体31の上面における前記両端部は、前記中央部よりも一段後退させられてそれぞれ略四角形状をなしており、一対のすくい面33とされている。すくい面33は、その外周縁のうち前記延在方向の中央側以外の三方が正面切れ刃41及び一対の側面切れ刃42とされている。
【0052】
また、図6において、インサート本体31の外面のうち上面と下面とを繋ぐ周面には、正面切れ刃41に連なる正面逃げ面51と、一対の側面切れ刃42にそれぞれ連なる一対の側面逃げ面52とが形成されている。正面逃げ面51は、正面切れ刃41から下面側へ向かうに従い漸次インサート本体31の外面から後退するように傾斜して形成されている。また、側面逃げ面52は、側面切れ刃42から下面側へ向かうに従い漸次インサート本体31の外面から後退するように傾斜して形成されている。尚、以下の説明では、インサート本体31において正面逃げ面51が形成された面を切削インサート30の正面、インサート本体31において側面逃げ面52が形成された面を切削インサート30の側面と呼ぶ。
【0053】
切削インサート30が工具本体1のインサート取付座4に装着されると、図3に示すように、一対の切れ刃32のうち前記一方側(図3におけるX方向の左側)に切れ刃32Aが配置され、前記他方側(図3におけるX方向の右側)に切れ刃32Bが配置される。そして、一方の切れ刃32Aが、工具本体1の先端部3における先端面1Aから先端側へ向けて突出されるとともに被削材Wの奥面Bに対向配置され、該奥面Bに溝入れ加工を施すようになっている。詳しくは、工具本体1は、一対の切れ刃32のうち一方の切れ刃32Aを、先端部3の先端面1Aから前記X方向のうち符号XAで示される溝入れ方向へ向けて突出させて、切削インサート30を装着している。
【0054】
また、図3、図5〜図8に符号C2Aで示す向きは、インサート本体31の幅方向(インサート幅軸線C2方向)のうち、一対のコーナー部43A、43B(43C、43D)において工具本体1の一側面2C、3C側に位置するとともに被削材Wの内周面S側に位置する一方のコーナー部43A(43C)から、工具本体1の他側面2D、3D側に位置するとともに内周面S側とは反対側に位置する他方のコーナー部43B(43D)に向かう方向である他方の幅方向を示している。図10の正面視に示すように、切削インサート30のインサート幅軸線C2は、前記他方の幅方向C2Aへ向かうに従い漸次被削材Wの回転方向WTの前方側へ向けて傾斜している。
【0055】
すなわち、この切削インサート30は、一方の切れ刃32Aにおける正面切れ刃41が、前記他方の幅方向C2Aへ向かうに従い漸次被削材Wの回転方向WTの前方側へ向けて傾斜している。詳しくは、図5に示すように、切削インサート30は、切れ刃32Aの正面切れ刃41が、工具本体1の一側面3C側から他側面3D側へ向かうに従い漸次回転方向WTの前方側へ向かうとともに該工具本体1の下面3Bへ向けて傾斜している。またこれにより、一方の切れ刃32Aにおいて、一対のコーナー部43A、43Bのうち前記他方の幅方向C2A側に位置するコーナー部43Bは、コーナー部43Aに対して被削材Wの回転方向WTの前方側に配置されている。
【0056】
本実施形態では、切れ刃32Aの正面切れ刃41は、回転軸線WOに向けて内周面Sから離間するに従い漸次被削材Wの回転方向WTの前方側へ向けて傾斜している。ここで、図4、図5及び図10に符号VS3で示すものは、切れ刃32Aのコーナー部43B及び回転軸線WOを含む工具仮想平面を表している。図10において、切れ刃32Aの正面切れ刃41と工具仮想平面VS3とのなす角度θ2は、0°<θ2≦7°の範囲内に設定されている。尚、本実施形態においては、このθ2が例えば3°程度に設定されている。また、インサート幅軸線C2は正面切れ刃41に対して平行であることから、前記θ2は、該インサート幅軸線C2と工具仮想平面VS3とのなす角度であるとも言える。尚、本実施形態においては、工具仮想平面VS3がX−Y水平面内に配置されている。
【0057】
また、図3及び図4に符号C1Aで示す向きは、インサート本体31の延在方向(インサート長手軸線C1方向)のうち、一対の切れ刃32A、32Bにおける他方の切れ刃32Bから一方の切れ刃32Aに向かう方向である一方の延在方向を示している。図4に示すように、工具本体1の一側面3C側から見て、切削インサート30のインサート長手軸線C1は、前記一方の延在方向C1Aへ向かうに従い漸次工具仮想平面VS3に接近するように傾斜されている。
【0058】
詳しくは、図4の側面視において、インサート長手軸線C1は、前記一方の延在方向C1Aへ向かうに従い漸次インサート本体31の上面側(図4における上下方向(Z方向)の上方側)から下面側(図4におけるZ方向の下方側)へ向けて工具仮想平面VS3に接近するように延びている。またこれにより、工具仮想平面VS3に対して、切れ刃32Bの正面切れ刃41が、インサート本体31の上面側へ向けて離間されている。そして、インサート長手軸線C1と工具仮想平面VS3とのなす角度θ3が、0°<θ3≦10°の範囲内に設定されている。本実施形態では、このθ3が例えば3°程度に設定されている。
【0059】
工具本体1に装着された切削インサート30は、図4に示すように、切れ刃32Bが配置される前記他方側から切れ刃32Aが配置される前記一方側へと前記一方の延在方向C1Aに向かうに従い漸次工具本体1の下面3Bへ向かうように傾斜して配置されている。
【0060】
また、図3、図8は、切削インサート30を工具仮想平面VS3に直交する向きから見た上面図であり、この切削インサート30は、インサート幅軸線C2と回転軸線WOとのなす角度θ1が、90°≦θ1≦90.5°の範囲内に設定されて、インサート取付座4に装着されている。本実施形態においては、前記θ1が90°程度に設定されている。これにより、この上面視において、インサート幅軸線C2に平行な切れ刃32Aの正面切れ刃41の延長線と回転軸線WOとのなす角度も、θ1(=90°)とされている。また図8において、インサート長手軸線C1と回転軸線WOとのなす角度θ4は、0°<θ4<1°の範囲内に設定されている。本実施形態においては、このθ4が0.2°程度に設定されている。詳しくは、前記θ4と前記θ1との関係は、1°>θ4>θ1−90°に設定されている。
【0061】
そして、図8、図9に示すように、工具仮想平面VS3に直交するとともにすくい面33に対向する向きから見て、この切削インサート30は、他方の切れ刃32Bにおける前記他方の幅方向C2Aとは反対側に位置するコーナー部43Cが、一方の切れ刃32Aにおける前記反対側に位置するコーナー部43Aよりも前記他方の幅方向C2A側に配置されている。すなわち、一方の切れ刃32Aにおける工具本体1の一側面3C側(図8における右側)に位置するコーナー部43Aは、他方の切れ刃32Bにおける一側面3C側に位置するコーナー部43Cよりも一側面3C側に配置されている。本実施形態では、切れ刃32Bにおいて内周面S側に位置するコーナー部43Cが、切れ刃32Aにおいて内周面S側に位置するコーナー部43Aに対して、内周面Sから離間されている。
【0062】
さらに、前述したθ1〜θ4を調整することにより、図8、図11に示すように、一方の切れ刃32Aにおける一対のコーナー部43A、43Bを、回転軸線WOに垂直な被削材仮想平面VS4上に配置することができる。本実施形態においては、角度θ2、θ3を調整して角度θ1=90°に設定しており、これにより、一対のコーナー部43A、43Bが被削材仮想平面VS4上に配置されている。詳しくは、切れ刃32Aにおいて、コーナー部43Aを回転軸線WO回りに回転させて得られる仮想円VC1と、コーナー部43Bを回転軸線WO回りに回転させて得られる仮想円VC2とは、ともに被削材仮想平面VS4内に含まれている。尚、仮想円VC1の外周(軌跡)は、被削材Wに形成される溝の溝底Dにおける外周縁部に一致し、仮想円VC2の外周は、溝底Dの内周縁部に一致する。また、切れ刃32Aの正面切れ刃41は、コーナー部43Aとコーナー部43Bとの間に位置するいずれの部位においても、被削材仮想平面VS4上に配置されている。
【0063】
本実施形態においては、前述の構成を有する工具本体1の切削インサート30が、一方の切れ刃32Aのコーナー部43Aを被削材Wの内周面Sに当接させるように近接配置した状態で、該内周面Sに沿って被削材Wの回転軸線WO方向へ向け溝入れ方向XAに移動して、切れ刃32Aが工具本体1の基端側を向く奥面Bに対して溝入れ加工する。
【0064】
以上説明したように、本実施形態に係る刃先交換式溝入れ工具10及びこれを用いた端面溝入れ加工方法によれば、工具本体1の先端部3から被削材Wの奥面Bに向けて突出された切削インサート30の一方の切れ刃32Aにおける正面切れ刃41が、インサート幅軸線C2に平行とされているとともに、前記他方の幅方向C2Aへ向かうに従い漸次被削材Wの回転する回転方向WTの前方側へ向けて傾斜しているので、一方の切れ刃32Aが切削した切屑の排出性が高められる。
【0065】
すなわち、切れ刃32Aの正面切れ刃41が前述のように設定されていることにより、該切れ刃32Aで切削された切屑が工具本体1の他側面3D側(内周面Sとは反対側の回転軸線WO側)へ向けて排出される。これにより、切屑の排出性が向上するとともに、工具本体1の一側面3C側に位置する被削材Wの内周面Sに切屑が接触したり該内周面S付近に切屑溜まりが生じたりすることが防止されて、加工精度が向上する。
【0066】
また、切削インサート30のインサート長手軸線C1が、前記一方の延在方向C1Aへ向かうに従い漸次工具仮想平面VS3に接近するように傾斜して、インサート本体31の下面側へ向けて延びている。すなわち、工具仮想平面VS3に対して、他方の切れ刃32Bがインサート本体31の上面側へ向けて離間されているので、一方の切れ刃32Aのくさび角β(図4においてすくい面33と正面逃げ面51とのなす角度)を比較的大きく設定できる。従って、被削材Wに溝入れ加工する一方の切れ刃32Aの刃先強度が十分に確保されている。
【0067】
また、このような切削インサート30の装着姿勢によれば、工具本体1の先端部3において該切削インサート30を支持する下顎部7の肉厚を十分に確保でき、該先端部3の機械的強度が高められる。さらに、切れ刃32Aの正面切れ刃41に連なる正面逃げ面51が溝底Dから離間されて、該溝底Dに接触するようなことが防止される。
【0068】
また、他方の切れ刃32Bにおいて前記他方の幅方向C2Aとは反対側に位置する一方のコーナー部43Cが、一方の切れ刃32Aにおいて前記反対側に位置する一方のコーナー部43Aに対して、前記他方の幅方向C2A側に配置されている。これにより、本実施形態のように、被削材Wの回転軸線WOを中心に形成された円柱穴状の加工穴Hの内周面Sに沿って該加工穴Hの奥面Bに溝入れ加工(内径側端面溝入れ)を行う場合に、下記のような作用効果を奏する。
【0069】
すなわち、切削インサート30の一方の切れ刃32Aにおける一方のコーナー部43Aを被削材Wの内周面Sに当接させるように近接配置し、この切削インサート30を該内周面Sに沿って溝入れ方向XAに移動させ溝入れ加工するときに、他方の切れ刃32Bにおける一方のコーナー部43Cがこの内周面Sから離間されて、このコーナー部43Cが該内周面Sに接触して傷付けてしまうようなことが確実に防止される。また、この接触によって、未使用の他方の切れ刃32Bが傷んでしまうようなことが防止される。
【0070】
また、図3に示す被削材Wの奥面Bの深さd1に係わらず他方の切れ刃32Bの一方のコーナー部43Cが被削材Wの内周面Sから離間されて、このコーナー部43Cが該内周面Sに接触して傷付けてしまうようなことが確実に防止される。
【0071】
さらに、一方の切れ刃32Aが切削する被削材Wの溝底Dに着目すると、切削インサート30のインサート幅軸線C2が前記他方の幅方向C2Aに向かうに従い漸次被削材Wの回転する回転方向WTの前方側へ向けて傾斜し、インサート長手軸線C1が前記一方の延在方向C1Aに向かうに従い工具仮想平面VS3に対して接近するようにインサート本体31の下面側へ向けて傾斜し、かつ、他方の切れ刃32Bにおける一方のコーナー部43Cが一方の切れ刃32Aにおける一方のコーナー部43Aよりも前記他方の幅方向C2A側に配置されていることによって、該溝底Dは被削材Wの回転軸線WOに対して垂直に近い傾斜を備えて形成されることになる。すなわち、図28における溝底Dの角度αが比較的小さく形成されて、被削材Wに切削された溝の加工精度が高められている。
【0072】
また、各切れ刃32A、32Bがそれぞれ備える一対の側面切れ刃42、42は、インサート本体31の延在方向の外側から中央側へ向かうに従い漸次互いの間隔を狭めるように傾斜して形成されているので、加工された溝における溝壁の加工精度が確保される。すなわち、切削インサート30の工具本体1に対する装着姿勢が前述のように設定されても、一方の切れ刃32Aにおいて被削材Wの内周面S側とは反対側(すなわち前記他方の幅方向C2A側)に配置された側面切れ刃42が、被削材Wに形成された溝の前記反対側の溝壁の開口端縁に接触するようなことがない。
【0073】
また、切削インサート30を工具仮想平面VS3に直交する向きから見て、インサート本体31の幅方向に沿うインサート幅軸線C2と被削材Wの回転軸線WOとのなす角度θ1が、90°≦θ1≦90.5°に設定されている。これに伴って、図8において、インサート本体31の延在方向に沿うインサート長手軸線C1が被削材Wの回転軸線WOに対して傾斜する角度θ4は、角度θ1から90°を引いた値(つまりθ1−90°)に近似しつつも僅かに(θ1−90°)よりも大きい値に設定される。本実施形態においては、被削材Wの内周面Sは回転軸線WOに平行に形成されており、切削インサート30は、インサート長手軸線C1を被削材Wの内周面Sに対して僅かに傾斜させつつも略平行として工具本体1に装着される。従って、前述のように他方の切れ刃32Bの一方のコーナー部43Cを内周面Sから確実に離間してこの内周面Sの加工精度を確保しつつも、被削材Wの奥面Bに形成する溝における溝底Dの加工精度を確保できる。詳しくは、角度θ1が前述の範囲内に設定されることによって、溝入れされた被削材Wの溝底Dが回転軸線WOに略垂直に形成されることから、該溝底Dの加工精度が高められている。
【0074】
また本実施形態のように、一方の切れ刃32Aにおける一対のコーナー部43A、43Bが、被削材Wの回転軸線WOに垂直な被削材仮想平面VS4上に配置されている場合には、一方の切れ刃32Aで切削する被削材Wの溝底Dを、回転軸線WOに対して確実に垂直に形成できる。よって、被削材Wの溝の仕上がり精度が十分に確保される。
【0075】
このように、前述した刃先交換式溝入れ工具10を用いた内径側端面溝入れ加工においては、被削材Wに形成されて円柱穴状をなす加工穴Hの奥面Bに隣接して、回転軸線WOに平行な内周面Sが形成されていても、溝入れする奥面Bの位置に係わらず、精度の高い内径側端面溝入れが行えるのである。
【0076】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る刃先交換式溝入れ工具20について、図12〜図20を参照して説明する。尚、前述の実施形態と同一部材には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0077】
本実施形態の刃先交換式溝入れ工具20は、略円柱状の被削材Wに外径側端面溝入れ加工を行うものである。詳しくは、被削材Wは多段円柱状をなしており、その大径部分と小径部分との間に段部Uを有している。被削材Wの段部Uには、前記小径部分の外周面Rに隣接するとともに回転軸線WOに直交する円環面からなる端面Eが形成されている。
【0078】
この刃先交換式溝入れ工具20は、軸状に形成され、断面が略矩形をなす工具本体1と、この工具本体1の先端部3に着脱自在に装着されて該工具本体1の先端面1Aから先端側の溝入れ方向XAへ向けて切れ刃32Aを突出させる前述の切削インサート30とを有している。刃先交換式溝入れ工具20は、工具本体1の延在する方向(図示するX方向)を被削材Wの回転軸線WOに対して略平行に配置した状態で、回転軸線WOを中心に回転方向WTに回転する被削材Wの段部Uに工具本体1の先端部3を向け、該段部Uの前記小径部分における外周面Rに沿うように切れ刃32Aを移動させ、端面Eを切削する。
【0079】
刃先交換式溝入れ工具20は、刃先交換式溝入れ工具10と同様に、切削インサート30のインサート長手軸線C1が工具本体1の延在方向に沿うように延びている。またその一方で、図13に示すように、刃先交換式溝入れ工具20においては、工具本体1の側方(Y方向)を向く両側面のうち一側面3C(2C)と他側面3D(2D)との互いの配置が前述の刃先交換式溝入れ工具10とは異なっている。
【0080】
刃先交換式溝入れ工具20の工具本体1は、その先端部3以外の中央部及び基端部が略直方体状をなしてシャンク部2とされている。シャンク部2の一側面2C及び他側面2Dは、矩形平面状にそれぞれ形成されている。この刃先交換式溝入れ工具20は、シャンク部2が回り止めされた状態で保持されることにより、不図示の工作機械に固定支持される。
【0081】
また、図15に示すように、先端部3の一側面3Cにおいて上顎部6に対応する部分は、上面3Aから下面3Bへ向かうに従い漸次他側面3D側へ向かうように断面凹曲線状に湾曲して形成されている。また、上顎部6において他側面3D側を向く側面は、上面3Aから下面3Bへ向かうに従い漸次他側面3D側へ向かうように断面凸曲線状に湾曲して形成されている。また、先端部3の一側面3Cにおいて下顎部7に対応する部分は、上面3Aから下面3Bへ向かうに従い漸次一側面3C側へ向かうように断面凹曲線状に湾曲して形成されている。また、下顎部7において他側面3D側を向く側面は、上面3Aから下面3Bへ向かうに従い漸次一側面3C側へ向かうように断面凸曲線状に湾曲して形成されている。図15の正面視において、上顎部6及び下顎部7は全体として略弓状に形成されている。
【0082】
そして、切削インサート30は、工具本体1の先端部3において前記一側面3Cに沿うように配置されている。また、図13、図16及び図18に示すように、切削インサート30の一方のコーナー部43A(43C)は、工具本体1の一側面2C、3C側に位置するとともに被削材Wの前記小径部分の外周面Rに対向するように配置されている。この刃先交換式溝入れ工具20においては、一方のコーナー部43A(43C)から他方のコーナー部43B(43D)へ向かう他方の幅方向C2Aが、前述の刃先交換式溝入れ工具10とは反対を向くように設定されている。
【0083】
また、図19の正面視において、一方の切れ刃32Aの正面切れ刃41は、前記他方の幅方向C2Aへ向かうに従い漸次被削材Wの回転方向WTの前方側へ向けて傾斜している。またこれにより、一方の切れ刃32Aにおいて、一対のコーナー部43A、43Bのうち前記他方の幅方向C2A側に位置するコーナー部43Bは、コーナー部43Aに対して被削材Wの回転方向WTの前方側に配置されている。
【0084】
本実施形態では、切れ刃32Aの正面切れ刃41は、回転軸線WOとは反対側に向かって前記小径部分の外周面Rから離間するに従い漸次被削材Wの回転方向WTの前方側へ向けて傾斜している。また、工具仮想平面VS3は、切れ刃32Aのコーナー部43B及び回転軸線WOを含み形成される。図15、図19において、切れ刃32Aの正面切れ刃41と工具仮想平面VS3とのなす角度θ2は、0°<θ2≦7°の範囲内に設定されている。尚、本実施形態においては、このθ2が例えば3°程度に設定されている。また、インサート幅軸線C2は正面切れ刃41に対して平行であることから、前記θ2は、該インサート幅軸線C2と工具仮想平面VS3とのなす角度であるとも言える。
【0085】
また、図14に示すように、工具本体1の一側面3C側から見て、切削インサート30のインサート長手軸線C1は、前記一方の延在方向C1Aへ向かうに従い漸次工具仮想平面VS3に接近するように傾斜されている。
【0086】
詳しくは、インサート長手軸線C1は、前記一方の延在方向C1Aへ向かうに従い漸次インサート本体31の上面側(図14における左右方向(Z方向)の右側)から下面側(図14におけるZ方向の左側)へ向けて工具仮想平面VS3に接近するように延びている。またこれにより、工具仮想平面VS3に対して、切れ刃32Bの正面切れ刃41が、インサート本体31の上面側へ向けて離間されている。そして、インサート長手軸線C1と工具仮想平面VS3とのなす角度θ3が、0°<θ3≦10°の範囲内に設定されている。本実施形態では、このθ3が例えば3°程度に設定されている。
【0087】
また、図13は、切削インサート30を工具仮想平面VS3に直交する向きから見た上面図であり、この切削インサート30は、インサート幅軸線C2と回転軸線WOとのなす角度θ1が、90°≦θ1≦90.5°の範囲内に設定されて、インサート取付座4に装着されている。本実施形態においては、前記θ1が90°程度に設定されている。これにより、この上面視において、インサート幅軸線C2に平行な切れ刃32Aの正面切れ刃41の延長線と回転軸線WOとのなす角度も、θ1(=90°)とされている。また図13において、インサート長手軸線C1と回転軸線WOとのなす角度θ4は、0°<θ4<1°の範囲内に設定されている。本実施形態においては、このθ4が0.2°程度に設定されている。詳しくは、前記θ4と前記θ1との関係は、1°>θ4>θ1−90°に設定されている。
【0088】
そして、図18に示すように、工具仮想平面VS3に直交するとともにすくい面33に対向する向きから見て、この切削インサート30は、他方の切れ刃32Bにおける前記他方の幅方向C2Aとは反対側に位置するコーナー部43Cが、一方の切れ刃32Aにおける前記反対側に位置するコーナー部43Aよりも前記他方の幅方向C2A側に配置されている。すなわち、一方の切れ刃32Aにおける工具本体1の一側面3C側(図18における左側)に位置するコーナー部43Aは、他方の切れ刃32Bにおける一側面3C側に位置するコーナー部43Cよりも一側面3C側に配置されている。本実施形態では、切れ刃32Bにおいて外周面R側に位置するコーナー部43Cが、切れ刃32Aにおいて外周面R側に位置するコーナー部43Aに対して、外周面Rから離間されている。
【0089】
さらに、前述したθ1〜θ4を調整することにより、図18、図20に示すように、一方の切れ刃32Aにおける一対のコーナー部43A、43Bを、回転軸線WOに垂直な被削材仮想平面VS4上に配置することができる。本実施形態においては、角度θ2、θ3を調整して角度θ1=90°に設定しており、これにより、一対のコーナー部43A、43Bが被削材仮想平面VS4上に配置されている。詳しくは、切れ刃32Aにおいて、コーナー部43Aを回転軸線WO回りに回転させて得られる仮想円VC1と、コーナー部43Bを回転軸線WO回りに回転させて得られる仮想円VC2とは、ともに被削材仮想平面VS4内に含まれている。尚、仮想円VC1の外周は、被削材Wに形成される溝の溝底Dにおける内周縁部に一致し、仮想円VC2の外周は、溝底Dの外周縁部に一致する。
【0090】
本実施形態においては、前述の構成を有する工具本体1の切削インサート30が、一方の切れ刃32Aのコーナー部43Aを被削材Wの前記小径部分の外周面Rに当接させるように近接配置した状態で、該外周面Rに沿って被削材Wの回転軸線WO方向へ向け溝入れ方向XAに移動して、切れ刃32Aが工具本体1の基端側を向く端面Eに対して溝入れ加工する。
【0091】
本実施形態に係る刃先交換式溝入れ工具20によれば、多段円柱状をなす被削材Wの段部Uにおいて、回転軸線WOに平行な外周面Rを有する小径部分に沿って該被削材Wの端面Eに溝入れ加工(外径側端面溝入れ)する場合に、前述の実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0092】
詳しくは、一方の切れ刃32Aにおける正面切れ刃41が、インサート幅軸線C2に平行とされているとともに、前記他方の幅方向C2Aへ向かうに従い漸次被削材Wの回転する回転方向WTの前方側へ向けて傾斜しているので、一方の切れ刃32Aが切削した切屑の排出性が高められている。すなわち、切れ刃32Aの正面切れ刃41が前述のように設定されていることにより、該切れ刃32Aで切削された切屑が工具本体1の他側面3D側(外周面Rとは反対側の回転軸線WOから離間する方向)へ向けて排出される。これにより、切屑の排出性が向上するとともに、工具本体1の一側面3C側に位置する被削材Wの外周面Rに切屑が接触したり該外周面R付近に切屑溜まりが生じたりすることが防止されて、加工精度が向上する。
【0093】
そして、切削インサート30の切れ刃32Aが溝入れする被削材Wの端面Eの位置に係わらず、切れ刃32Bのコーナー部43Cが外周面Rから離間されて、このコーナー部43Cが該外周面Rに接触して傷付けてしまうようなことが確実に防止されるとともに、精度の高い外径側端面溝入れが行える。
【0094】
尚、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。
例えば、前述した実施形態では、工具本体1の先端部3にインサート取付座4が形成されていることとしたが、これに限定されるものではなく、先端部3に着脱可能なヘッド部が装着されているとともに、このヘッド部にインサート取付座4が形成されていることとしてもよい。この場合、インサート取付座4は前記ヘッド部の一側面に開口し形成されるとともに、切削インサート30は、前記一側面に沿うように配置される。また、前述した工具本体1の形状は、前述の実施形態で説明したものに限定されない。
【0095】
また、切れ刃32の一対のコーナー部43は、前述の実施形態において説明した形状に限定されるものではない。図21及び図22は、コーナー部43の変形例を示している。図21においては、コーナー部43は、凸曲線状をなし、正面切れ刃41及び側面切れ刃42を滑らかに繋ぐ第1コーナー刃44を有している。そして、一方の切れ刃32Aにおけるコーナー部43Bは、このコーナー部43Bに隣接する正面切れ刃41の延長線VL1と第1コーナー刃44におけるインサート本体31の幅方向の外縁部から延長線VL1に向けて延ばした垂線VL2との交点Pを、前記工具仮想平面VS3上に配置している。この場合、各コーナー部43における刃先欠損等が防止される。
【0096】
また図22においては、コーナー部43は、第1コーナー刃44と、該第1コーナー刃44におけるインサート本体31の延在方向に沿う中央側(図22における上方側)の端部と側面切れ刃42とを繋ぐ直線状の第2コーナー刃45とを有している。切削インサート30を工具仮想平面VS3に直交する向きから見て、第2コーナー刃45は、被削材Wの回転軸線WOに対して平行となるように延びているとともに、内周面S(外周面R)に対して平行に延びて形成されている。この場合、一方の切れ刃32Aの正面切れ刃41及び第1コーナー刃44が切削した被削材Wの溝壁をこの第2コーナー刃45がさらうことになり、該溝壁の仕上げ精度が高められる。
【0097】
また、前述の実施形態では、切削インサート30の切れ刃32Aが、被削材Wの周面S、Rに沿って端面B、Eに溝入れ加工することとしたが、これに限定されるものではない。例えば、被削材Wの周面S、Rから離間した端面B、E部分を溝入れ加工することとしても構わない。本発明の実施形態によれば、被削材Wの周面S、Rに隣接した端面B、E部分又は離間した端面B、E部分のいずれを溝入れする場合であっても、高精度の切削加工を行うことができる。
【符号の説明】
【0098】
1 工具本体
1A 先端面
2C、3C 一側面
3 先端部
10、20 刃先交換式溝入れ工具
30 切削インサート
31 インサート本体
32 切れ刃
32A 一方の切れ刃
32B 他方の切れ刃
41 正面切れ刃
42 側面切れ刃
43 コーナー部
43A 一方の切れ刃において他方の幅方向C2Aとは反対側に位置する一方のコーナー部
43B 一方の切れ刃において他方の幅方向C2A側に位置する他方のコーナー部
43C 他方の切れ刃において他方の幅方向C2Aとは反対側に位置する一方のコーナー部
43D 他方の切れ刃において他方の幅方向C2A側に位置する他方のコーナー部
44 第1コーナー刃
45 第2コーナー刃
B 奥面(端面)
C1 インサート長手軸線(インサート本体の延在方向)
C1A インサート本体の延在方向のうち、他方の切れ刃から一方の切れ刃に向かう方向である、一方の延在方向
C2 インサート幅軸線(インサート本体の幅方向)
C2A インサート本体の幅方向のうち、一方のコーナー部から他方のコーナー部に向かう方向である、他方の幅方向
C3 インサート高さ軸線(インサート本体の高さ方向)
E 端面
H 加工穴
P 延長線VL1と垂線VL2との交点
R 被削材の外周面(周面)
S 内周面(周面)
U 段部
VL1 正面切れ刃の延長線
VL2 第1コーナー刃の外縁部から延長線VL1に向けて延ばした垂線
VS1 インサート仮想平面
VS3 工具仮想平面
VS4 被削材仮想平面
W 被削材
WO 被削材の回転軸線
WT 被削材の回転方向
XA 溝入れ方向
θ1 インサート幅軸線と被削材の回転軸線とのなす角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸線を中心に回転する被削材の端面に向けて切れ刃を突出させた切削インサートと、軸状をなし、先端部に前記切削インサートが着脱自在に装着される工具本体と、を有し、前記切れ刃で前記端面に溝入れ加工する刃先交換式溝入れ工具であって、
前記切削インサートは、棒状をなすインサート本体の延在方向の両端部における該インサート本体の上面に一対の切れ刃を備え、前記インサート本体の延在方向の中央及び該延在方向に直交する幅方向の中央を通りこれら延在方向及び幅方向に直交するインサート高さ軸線に関して回転対称、かつ、前記インサート高さ軸線を含み前記延在方向に垂直なインサート仮想平面に関して面対称に形成され、
前記切れ刃は、前記インサート本体の延在方向の端縁に形成されて前記幅方向に沿って延びる正面切れ刃と、この正面切れ刃の両端に配置されて前記幅方向にそれぞれ突出する一対のコーナー部と、前記コーナー部から前記延在方向に沿って該インサート本体の中央側に向かうに従い漸次互いの間隔を狭めるようにそれぞれ延びる一対の側面切れ刃とを有し、
前記工具本体は、前記切削インサートを該工具本体の側方を向く一側面に沿うように配置しているとともに、前記一対の切れ刃のうち一方の切れ刃を前記先端部の先端面から先端側へ向けて溝入れ方向に突出させており、
前記切削インサートは、
前記インサート本体の延在方向の中央を通り前記幅方向に沿うインサート幅軸線が、前記幅方向のうち、前記一対のコーナー部における前記工具本体の一側面側に位置する一方のコーナー部から他方のコーナー部に向かう方向である他方の幅方向へ向かうに従い漸次被削材の回転する回転方向の前方側へ向けて傾斜しており、
前記インサート本体の幅方向の中央を通り前記延在方向に沿うインサート長手軸線が、前記一方の切れ刃における他方のコーナー部及び前記回転軸線を含む工具仮想平面に対して傾斜しているとともに、前記延在方向のうち、前記一対の切れ刃における他方の切れ刃から前記一方の切れ刃に向かう方向である一方の延在方向へ向かうに従い漸次前記工具仮想平面に接近するように前記インサート本体の下面側へ向けて延びており、
前記他方の切れ刃における前記他方の幅方向とは反対側に位置する一方のコーナー部が、前記一方の切れ刃における前記一方のコーナー部よりも前記他方の幅方向側に配置されていることを特徴とする刃先交換式溝入れ工具。
【請求項2】
請求項1に記載の刃先交換式溝入れ工具であって、
前記切削インサートを前記工具仮想平面に直交する向きから見て、前記インサート幅軸線と前記回転軸線とのなす角度θ1が、90°≦θ1≦90.5°に設定されることを特徴とする刃先交換式溝入れ工具。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の刃先交換式溝入れ工具であって、
前記端面は、被削材に形成された加工穴における前記工具本体の基端側を向く奥面であり、
前記一方の切れ刃は、この奥面に対して内径側端面溝入れ加工することを特徴とする刃先交換式溝入れ工具。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の刃先交換式溝入れ工具であって、
前記端面は、被削材の外周面に形成された段部における前記工具本体の基端側を向く端面であり、
前記一方の切れ刃は、この端面に対して外径側端面溝入れ加工することを特徴とする刃先交換式溝入れ工具。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の刃先交換式溝入れ工具であって、
前記一方の切れ刃における前記一対のコーナー部は、前記回転軸線に垂直な被削材仮想平面上に配置されていることを特徴とする刃先交換式溝入れ工具。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の刃先交換式溝入れ工具であって、
前記コーナー部は、凸曲線状の第1コーナー刃を有し、
前記一方の切れ刃における前記他方のコーナー部は、このコーナー部に隣接する前記正面切れ刃の延長線と前記第1コーナー刃における前記幅方向の外縁部から前記延長線に向けて延ばした垂線との交点を、前記工具仮想平面上に配置していることを特徴とする刃先交換式溝入れ工具。
【請求項7】
請求項6に記載の刃先交換式溝入れ工具であって、
前記コーナー部は、前記第1コーナー刃における前記インサート本体の延在方向の中央側の端部と前記側面切れ刃とを繋ぐ直線状の第2コーナー刃を有し、
前記切削インサートを前記工具仮想平面に直交する向きから見て、前記第2コーナー刃は、被削材の前記回転軸線に対して平行となるように延びていることを特徴とする刃先交換式溝入れ工具。
【請求項8】
回転軸線を中心に回転する被削材の端面に向けて切れ刃を突出させた切削インサートと、軸状をなし、先端部に前記切削インサートが着脱自在に装着される工具本体と、を有する刃先交換式溝入れ工具を用いて、前記切れ刃で前記被削材の端面に溝入れ加工する端面溝入れ加工方法であって、
前記切削インサートは、棒状をなすインサート本体の延在方向の両端部における該インサート本体の上面に一対の切れ刃を備え、前記インサート本体の延在方向の中央及び該延在方向に直交する幅方向の中央を通りこれら延在方向及び幅方向に直交するインサート高さ軸線に関して回転対称、かつ、前記インサート高さ軸線を含み前記延在方向に垂直なインサート仮想平面に関して面対称に形成され、
前記切れ刃は、前記インサート本体の延在方向の端縁に形成されて前記幅方向に沿って延びる正面切れ刃と、この正面切れ刃の両端に配置されて前記幅方向にそれぞれ突出する一対のコーナー部と、前記コーナー部から前記延在方向に沿って該インサート本体の中央側に向かうに従い漸次互いの間隔を狭めるようにそれぞれ延びる一対の側面切れ刃とを有し、
前記切削インサートを、前記工具本体の側方を向く一側面に沿うように配置するとともに、前記一対の切れ刃のうち一方の切れ刃を前記先端部の先端面から先端側へ向けて溝入れ方向に突出させて該工具本体に装着して、該一方の切れ刃を前記溝入れ方向に沿って移動させることにより前記端面に対して溝入れ加工するときに、
前記インサート本体の延在方向の中央を通り前記幅方向に沿うインサート幅軸線を、前記幅方向のうち、前記一対のコーナー部における前記工具本体の一側面側に位置する一方のコーナー部から他方のコーナー部に向かう方向である他方の幅方向へ向かうに従い漸次被削材の回転する回転方向の前方側へ向けて傾斜させ、
前記インサート本体の幅方向の中央を通り前記延在方向に沿うインサート長手軸線を、前記一方の切れ刃における他方のコーナー部及び前記回転軸線を含む工具仮想平面に対して傾斜させるとともに、前記延在方向のうち、前記一対の切れ刃における他方の切れ刃から前記一方の切れ刃に向かう方向である一方の延在方向へ向かうに従い漸次前記工具仮想平面に接近するように前記インサート本体の下面側へ向けて延在させ、
前記他方の切れ刃における前記他方の幅方向とは反対側に位置する一方のコーナー部を、前記一方の切れ刃における前記一方のコーナー部よりも前記他方の幅方向側に配置することを特徴とする端面溝入れ加工方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate


【公開番号】特開2011−161539(P2011−161539A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−24710(P2010−24710)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】