説明

分光光度計

【課題】光電子増倍管の感度を低下させることなく光電子増倍管を劣化させる過大な電流が光電子増倍管を流れないようにする。
【解決手段】CPU14は信号予測部16と比較・算出部18を備えている。信号予測部16は光検出部10からの信号強度に基づいて次周期に出力される信号強度を予測する。比較・算出部18は光電子増倍管11を流れる電流の限界値を規定したADコンバータ12からの信号強度の基準値と信号予測部16による予測値とを比較し、予測値が基準値を超えている場合には次周期の信号強度が基準値以下となるような光電子増倍管11への印加電圧を算出する。印加電圧制御部20は、光検出部12の次周期の信号強度の予測値が基準値を越えている場合に比較・算出部18で算出された印加電圧値に基づく印加電圧制御を行なうよう構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば液体クロマトグラフにおいて分離された試料成分を検出するための検出器として用いられる分光光度計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的な蛍光分光光度計は、試料セル、光検出部、光源、励起側光学系及び蛍光側光学系からなる。試料セルは、例えば液体クロマトグラフの分析カラムの下流に配置されて分析カラムで分離された試料成分を含む溶出液が流されるフローセルである。励起側光学系は光源から発せられた光から、試料を励起して蛍光を発生させるための励起光成分を取り出して試料セルへ導くものである。蛍光側光学系は試料セルから出た光のうち蛍光成分を取り出して光検出部へ導くものである。
【0003】
光検出部としては、光電子増倍管を含んだものが一般的である。光電子増倍管は、入射窓に光が入射すると光電効果によってその入射量に応じた電子を発生させ、その電子数を増倍して電流として出力するものである。光電子増倍管に一定電圧を印加して増倍率を一定に保った状態で使用することにより、入射窓に入射する光量に比例する大きさの電流が出力され、その出力値によって入射窓への入射光量を測定することができる。光電子増倍管では、増倍率が高いほど光電子増倍管に入射した光量に応じた電子数をより大きく増幅した電流値を出力できるため、高感度の検出が可能となる。
【0004】
ところが、光電子増倍管は内部を流れる電流が許容範囲を超えてしまうと劣化する問題がある。例えば励起光の波長と蛍光の波長が同じか近い場合、試料によって反射された励起光が蛍光側光学系で全く減衰されないか、減衰されても大幅には減衰されない。そのため、光電子増倍管には試料が発した蛍光とともに励起光成分も入射することによって、光電子増倍管への入射光量が増大し、その結果、光電子増倍管は過大な電流が流れることによって劣化することがある。
【0005】
上記の問題を解決するために、光電子増倍管の限界電流値をしきい値として、光電子増倍管からの出力電流をしきい値と比較し、出力電流がしきい値を超えると光電子増倍管への印加電圧を下げて増倍率を下げることにより光電子増倍管を流れる電流を小さくすることが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。光電子増倍管の限界電流値とは、光電子増倍管を劣化させることなく光電子増倍管を流れることができる電流の最大値である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−9644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記の方法では、光電子増倍管からの出力電流が限界値を超えてから光電子増倍管への印加電圧を下げるため、短時間ではあるが限界値を超える電流が光電子増倍管を流れることになり、光電子増倍管のいくらかの劣化は避けられない。その方法でも、しきい値を限界電流値よりも低く設定すれば、光電子増倍管を流れる電流が限界電流値を超える前に光電子増倍管の増倍率を低下させることが可能になるが、その場合には、光電子増倍管の感度を最大限に利用することができないことになる。
【0008】
そこで本発明は、分光光度計の光電子増倍管の感度を低下させることなく、かつ光電子増倍管を劣化させる過大な電流が光電子増倍管を流れないようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の分光光度計は、光源と、試料セルと、光源からの光から励起光成分を取り出して試料セルへ導く励起側光学系と、試料セルからの光から蛍光成分を取り出す蛍光側光学系と、蛍光側光学系で取り出された蛍光成分を検出する光検出部と、信号予測部と、制御部と、を備えたものである。
【0010】
光検出部は、光電子増倍管を備えて、光電子増倍管における光検出量に応じた信号を一定周期で出力する。
【0011】
信号予測部は、光検出部の出力信号に基づいて以降の複数の周期の光検出部からの出力信号強度を1周期ずつ順次予測する。
【0012】
制御部は、以降の周期の出力信号強度が光電子増倍管を流れる電流の限界を規定する光検出部の出力信号強度の基準値を越えないように、信号予測部による予測値に基づいて光電子増倍管への印加電圧値を調整するものである。
【0013】
予測値が、基準値を超えている場合に制御部が予測値に基づいて光電子増倍管への印加電圧値を調整する方法は、例えば次のようなものである。第1の形態では、制御部は、予測値がちょうど基準値となるように光電子増倍管への印加電圧値を第1の電圧だけ下げるように光電子増倍管への印加電圧値を決定する。第2の形態では、制御部は、予測値がちょうど基準値となるように第1の電圧だけ下げた光電子増倍管への印加電圧値からさらに予め定めた第2の電圧だけ下げるように光電子増倍管への印加電圧値を決定する。この場合、第2の電圧は大きさの異なる複数種類のものが制御部に設定されており、いずれかを選択できるようになっていることが好ましい。
【0014】
液体クロマトグラフにおける試料成分を検出したクロマトグラムのピーク曲線はピークが過ぎた後は下降していくが、そのピーク付近で光電子増倍管の増倍率を下げてそのままにしておくと光電子増倍管の感度が低いままとなってしまい、その後の測定精度が悪くなってしまう。そこで、光電子増倍管の増倍率を一旦下げた後においては、光電子増倍管の増倍率を元の状態に戻しても光電子増倍管を劣化させないと予測される場合には光電子増倍管の増倍率を元に戻すようにする。そうすれば、光電子増倍管の感度を最大限に発揮することができる。
【0015】
そのために、本発明の好ましい形態では、信号予測部による予測値(これを第1の予測値とする。)が、印加電圧を所定電圧よりも低くなるように調整した後の状態での出力信号強度を予測したものであるときは、信号予測部は光電子増倍管への印加電圧を所定電圧に戻したものと仮定した状態での同じ周期の信号強度(これを第2の予測値とする。)も予測するものであることが好ましい。その場合、その第2の予測値が基準値以下である場合には、制御部は該周期に対応するタイミングで光電子増倍管への印加電圧を所定電圧に戻すようになっていることが好ましい。
【0016】
信号予測部は、光検出部の最新周期の出力信号強度と前周期の出力信号強度との差分に基づいて以降の複数の周期の信号強度を1周期ずつ順次予測するものであってもよいし、複数の周期の出力信号強度に基づいた近似式を用いて以降の複数の周期の信号強度を1周期ずつ順次予測するものであってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の分光光度計は、信号予測部が光検出部の出力信号に基づいて以降の複数の周期の信号強度を1周期ずつ順次予測し、制御部がその予測値に基づいて以降の周期の信号強度が基準値を超えないように光電子増倍管への印加電圧を調整するので、過大な電流が光電子増倍管を流れる前に光電子増倍管の増倍率を低下させて光電子増倍管を流れる電流を減少させることができ、光電子増倍管の劣化を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】分光光度計の一実施例を概略的に示すブロック図である。
【図2】光電子増倍管への印加電圧の制御動作を示すフローチャートである。
【図3】光検出部からの信号強度の時間変化の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、図1を参照して分光光度計の一実施例を説明する。
【0020】
例えば液体クロマトグラフの分析カラムからの溶出液が試料として試料セル(フローセル)6の内部を流れる。光源2が発する光から励起光成分が励起側光学系4によって取り出されて、試料セル6を流れる試料に照射される。その励起光により励起された試料からの蛍光が蛍光側光学系8によって光検出部10の光電子増倍管11へ導かれて検出される。
【0021】
励起側光学系4は、光源2からの光を例えば回折格子を用いて分光して励起光成分を取り出し、試料セル6に導くものである。励起側光学系4は、好ましくは、試料セル6を流れる試料に応じて励起光として試料セル6へ導くべき光の波長を切り替えて選択できるようになっている。
【0022】
蛍光側光学系8は、試料セル6からの光を例えば回折格子を用いて分光し、検出しようとする蛍光波長の光を取り出して光電子増倍管11へ導くものである。蛍光側光学系8は、好ましくは、試料セル6を流れる試料に応じて蛍光として光電子増倍管11へ導くべき光の波長を切り替えて選択できるように構成されている。
【0023】
光電子増倍管11は、光が入射することによって光電子を発生させる光電面が、蛍光側光学系8からの光を受光するように配置されており、蛍光側光学系8からの入射光量に基づく光電子を増幅して電流を出力する。光検出部10は光電子増倍管11から出力される電流の大きさに相当する強度の信号を一定周期で出力するADコンバータ12を備えている。ADコンバータ12は中央処理装置(CPU)14に接続されている。
【0024】
CPU14は信号予測部16と比較・算出部18を構成している。信号予測部16は光検出部10からの信号強度に基づいて以降の複数の周期に出力される信号強度を1周期ずつ順次予測するものである。比較・算出部18は光電子増倍管11の限界電流値を規定する、ADコンバータ12からの信号強度の基準値を保持しており、信号予測部16による予測値と基準値を比較する。比較・算出部18は、予測値と基準値を比較した結果、予測値が基準値を超えている場合には次周期の信号強度が基準値以下となるような光電子増倍管11への印加電圧を算出する。印加電圧制御部20は光電子増倍管11への印加電圧を調整するものであり、光電子増倍管11へ所定の電圧を印加するとともに、光検出部10の次周期の信号強度の予測値が基準値を越える場合に比較・算出部18で算出されて出力された印加電圧算出値になるように印加電圧制御を行なうよう構成されている。比較・算出部18と印加電圧制御部20は本発明における制御部21を構成する。
【0025】
CPU14は上記の機能のほか、光検出部10の信号強度に基づいて表示部22に測定データを表示する機能や、操作部24から入力された分析者による指示に基づいて光源2、励起側光学系4及び蛍光側光学系8の動作を制御する機能も備えている。
【0026】
次に、この実施例の分光光度計における光電子増倍管11への印加電圧の制御動作の一例について図2及び図3を用いて説明する。図2は光電子増倍管への印加電圧制御の動作を示すフローチャートであり、図3は光検出部から出力される強度の時間変化の一例を示すグラフである。
【0027】
以下に説明する印加電圧制御動作は、光検出部10からの最新周期までの信号強度を用いて次周期の信号強度を予測し、その予測値に基づいて次周期の信号が出力される前に光電子増倍管11への印加電圧を調節するものである。なお、本発明はこの例に限定されるものでなく、2以上先の周期の信号強度を以前の信号強度に基づいて予測し、その予測値に基づいてその周期の信号強度が基準値を超えないように予め光電子増倍管11への印加電圧を算出しておき、光電子増倍管11への電圧を調整すべきタイミングになってから印加電圧を算出しておいたものに調整するものであってもよい。
【0028】
励起光が照射された試料セル6中の試料が発した蛍光は蛍光側光学系8によって抽出されて光検出部10の光電子増倍管11に入射する。光電子増倍管11には所定の負高圧(以下、所定値という。)が印加されて一定の増倍率が与えられている。光電子増倍管11に光が入射するとその入射光量に相当する光電子が発生され、一定の増倍率で増倍されて電流としてADコンバータ12に出力される。ADコンバータ12は光電子増倍管11からの電流に相当する強度の信号を一定周期でCPU14へ出力する(ステップS1)。
【0029】
CPU14の信号予測部16はADコンバータ12からの最新の信号強度と過去の信号強度に基づいて次周期の信号強度を予測する(ステップS2)。信号強度の予測方法としては、最新周期の信号強度とそれ以前の信号強度との差分(傾き)に基づいて次周期の信号強度を予測する方法や、複数周期分の信号強度から近似式を作成し、その近似式に基づいて以降の複数の信号強度を1周期ずつ順次予測する方法が挙げられる。なお、ここで予測される予測値を「予測値1」とする。
【0030】
比較・算出部18は信号予測部16で予測された予測値1と予め保持している基準値とを比較する(ステップS3)。
【0031】
比較の結果、予測値1が基準値を超えている場合、比較・算出部18は両者の差に基づいて、次周期信号強度が基準値以下になるような光電子増倍管11への印加電圧値を算出する(ステップS4)。印加電圧制御部20はその算出値に基づいて光電子増倍管11への印加電圧を調節し、光電子増倍管11の増倍率を低下させ(ステップS5)、光検出部10の次周期の出力信号を待つ。
【0032】
ADコンバータ12からの信号強度は光電子増倍管11の出力電流の大きさを反映したものである。光電子増倍管11の出力電流は光電子増倍管11への入射光量と光電子増倍管11の増倍率によって決定されるため、光電子増倍管11の増倍率を低下させることで出力電流を小さくすることができる。光電子増倍管11への印加電圧(負高圧)と増倍率との固有の関係は予め測定されて比較・算出部18に格納されている。比較・算出部18は印加電圧と増倍率との関係と予測値とに基づいて、次周期の信号強度が基準値に近い基準値以下の強度となるように光電子増倍管11への印加電圧を決定する。
【0033】
また、予測値1が基準値以下である場合、光電子増倍管11への印加電圧が所定値かどうか、すなわち、光電子増倍管11への印加電圧に上記ステップS4,S5による調整が加えられていないかを確認し(ステップS6)、光電子増倍管11への印加電圧が所定値であれば光電子増倍管11への印加電圧に何ら調整を加えることなく光検出部10の次周期の出力信号を待つ。
【0034】
光電子増倍管11への印加電圧にすでに上記ステップS4,S5による調整が施されて所定値ではなくなっている場合、信号予測部16は印加電圧を所定値に戻したときの信号強度を予測値2として予測し(ステップS7)、比較・算出部18は予測値2と基準値とを比較して(ステップS8)、予測値2が基準値以下である場合には印加電圧制御部20が光電子増倍管11への印加電圧を所定値に戻して光検出部10の次周期の出力信号を待つ。一方、予測値2が基準値を超えている場合には光電子増倍管11への印加電圧を調整されたそのままの状態にして光検出部10の次周期の信号出力を待つ。
【0035】
予測値1に基づいて光電子増倍管11への印加電圧を決定する方法は、例えば次のように行う。光電子増倍管11への所定の印加電圧(負高圧の所定値)を−PVとする。ADコンバータ12として16ビットの出力をもつものを使用するものとする。その場合、0V〜−PVの間を65536ポイントに分割したその1ポイント単位で負高圧を変化させることができる。その1ポイントは電圧にすると、(P/65536)Vとなる。比較・算出部18は信号予測部16から与えられる予測値がちょうど基準値となるように負高圧を下げる範囲(αポイント)を算出する。ここで、光電子増倍管11への印加電圧は負高圧であるので、「下げる」というのは電圧の絶対値を下げて0Vに近づけることを意味する。その値αは、比較・算出部18に格納されている光電子増倍管11への印加負高圧と増倍率との関係から算出することができる。具体的には、個々の光電子増倍管について、負高圧の変化に対する出力値(X)の変化の割合を示す係数(k)を予め測定して求めておき、次の式(1)によってαを算出する。
α=kX (1)
【0036】
第1の形態は、予測値に基づいて光電子増倍管11への印加電圧を−PVからその算出されたαポイントを下げて、実際の負高圧を[−(P−α)]Vとする。
【0037】
第2の形態は、次の周期で実際の検出値が基準値を超えないようにすることをより確実にするために、算出されたαポイントから更にβポイント下げて、実際の負高圧を[−(P−(α+β))]Vとする。βは、例えば、β=α/2とすることができる。
【0038】
また、βを状況に応じて異なるように設定することもできる。例えば、励起光と蛍光の
波長が近いとき(例えば5nm以内)や、光強度の変化が大きい場合にはβを大きなものにすることができるようにする。例えば、CPU14に次のように3つの状態を設定しておく。
(状態1)β=α×(1/2)
(状態2)β=α×1
(状態3)β=α×2
そして、ユーザがどのβを選択するかを操作部24から選択できるようにしておく。このように、予測値に基づいて光電子増倍管11への印加電圧を下げる大きさを選択できるようにすることにより、励起光と蛍光の波長が近いときや光強度の変化が大きい場合にも、光電子増倍管11を流れる電流値が限界電流値を超えることを有効に阻止することができるようになる。
【0039】
以上説明した光電子増倍管11への印加電圧の制御動作によれば、光電子増倍管11からの出力電流の大きさに相当するADコンバータ12からの最新周期の出力信号強度と過去の周期の出力信号強度に基づいて次周期の信号強度を予測し、その予測値が基準値を超えている場合には、次周期の信号強度を基準値以下にするために光電子増倍管11の増倍率を下げて光電子増倍管11からの出力電流を小さくするよう印加電圧を調整する。これにより、光電子増倍管11を過大な電流が流れる前に光電子増倍管11の増倍率を下げることができるので、光電子増倍管11の劣化を防止することができる。
【0040】
この動作制御により、光検出部10からの信号強度の時間変化のグラフにおいて、例えば図3の実線で示されるようなピーク波形を得ることができる。このグラフでは、波形のピーク付近の3点がそれまでの複数の信号強度に基づいた予測で基準値を超えると予測され、光電子増倍管11の増倍率の補正がなされて実際に基準値に近い基準値以下の信号強度が検出されている。このグラフから明らかなように、波形の一部の時間帯で光電子増倍管にかける負高圧が一定であれば信号強度が基準値を超えるピーク波形が存在する場合であっても光電子増倍管にかける負高圧を下げるので、信号強度が基準値を超える時間帯が全くないため、光電子増倍管11に過大電流が流れず、光電子増倍管11の劣化を防止できる。
【0041】
なお、このような分光光度計では、励起側光学系4において選択した励起波長と蛍光側光学系8で選択した蛍光波長とが同じか近い場合に、光電子増倍管11への入射光量がその他の場合よりも増加して過大電流が光電子増倍管11を流れる可能性が高まる。そこで、励起側光学系4において選択した励起波長と蛍光側光学系8で選択した蛍光波長とが同じか近い場合にのみ、信号予測部16で予測される予測値に1より大きい係数を掛けて予測値1として予測値1の値を大きくしてもよい。そうすれば、結果的に光電子増倍管11への印加電圧の調節の基準が低くなり、過大電流が光電子増倍管11を流れることをより確実に防止できる。このような制御を行なうことにより、光電子増倍管11を過大電流が流れる可能性の高いときのみ印加電圧の調節の基準が低くなるので、光電子増倍管11の感度を最大限に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0042】
2 光源
4 励起側光学系
6 試料セル
8 蛍光側光学系
10 光検出部
11 光電子増倍管
12 ADコンバータ
14 中央処理装置(CPU)
16 信号予測部
18 比較・算出部
20 印加電圧制御部
22 表示部
24 操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
試料セルと、
前記光源からの光から励起光成分を取り出して前記試料セルへ導く励起側光学系と、
前記試料セルからの光から蛍光成分を取り出す蛍光側光学系と、
前記蛍光側光学系で取り出された蛍光成分を検出する光電子増倍管を備えて、光電子増倍管における光検出量に応じた信号を一定周期で出力する光検出部と、
前記光検出部の出力信号に基づいて以降の複数の周期の光検出部からの出力信号強度を1周期ずつ順次予測する信号予測部と、
以降の周期の前記光検出部からの出力信号強度を、前記光電子増倍管を流れる電流の限界を規定する前記光検出部の出力信号強度の基準値を越えないように、前記信号予測部による予測値に基づいて前記光電子増倍管への印加電圧値を調整する制御部と、を備えた分光光度計。
【請求項2】
前記制御部は、予測値が基準値を超えている場合、予測値がちょうど基準値となるように光電子増倍管への印加電圧値を第1の電圧だけ下げるように前記光電子増倍管への印加電圧値を決定するものである請求項1に記載の分光光度計。
【請求項3】
前記制御部は、予測値が基準値を超えている場合、予測値がちょうど基準値となるように第1の電圧だけ下げた光電子増倍管への印加電圧値からさらに予め定めた第2の電圧だけ下げるように前記光電子増倍管への印加電圧値を決定するものである請求項1に記載の分光光度計。
【請求項4】
第2の電圧は大きさの異なる複数種類のものが前記制御部に設定されており、いずれかを選択できるようになっている請求項3に記載の分光光度計。
【請求項5】
前記信号予測部は、前記予測値を第1の予測値としてその第1の予測値が印加電圧を所定電圧よりも低くなるように調整した後の状態での出力信号強度を予測したものであるときは、前記光電子増倍管への印加電圧を前記所定電圧に戻したものと仮定した状態での同じ周期の信号強度も第2の予測値として予測するものであり、
前記制御部は、その第2の予測値が基準値以下である場合には、該周期に対応するタイミングで前記光電子増倍管への印加電圧を所定電圧に戻すものである請求項1に記載の分光光度計。
【請求項6】
前記信号予測部は、前記光検出部の最新周期の出力信号強度と前周期の出力信号強度との差分に基づいて以降の複数の周期の信号強度を1周期ずつ順次予測するものである請求項1又は2に記載の分光光度計。
【請求項7】
前記信号予測部は、前記光検出部の複数の周期の出力信号強度に基づいた近似式を用いて以降の複数の周期の信号強度を1周期ずつ順次予測するものである請求項1又は2に記載の分光光度計

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−25921(P2010−25921A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−128891(P2009−128891)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】