説明

分光蛍光光度計

【課題】分光蛍光光度計において、3次元蛍光スペクトルの等高線グラフまたは蛍光スペクトル及び蛍光強度の2次元グラフ上の、サンプルの蛍光とは異質の光として観測される光が現れる波長領域を表示除外領域として自動的に描画して、サンプル自身の蛍光を瞬時に容易に識別する。
【解決手段】3次元蛍光スペクトルの等高線グラフまたは蛍光スペクトル及び蛍光強度による2次元グラフ上に、励起光の散乱光とn次光、1/n次光の波長領域、溶媒のラマン散乱光とn次光、1/n次光の波長領域、蛍光の存在しないアンチストークス領域を自動的に計算してグラフ上に描画する機能を備え、サンプル自身の蛍光ピークを瞬時に間違いなく識別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分光蛍光光度計に関するものである。特に、サンプルの蛍光測定時に、分光蛍光光度計に観測されてしまう蛍光とは異質の光の領域を分光蛍光光度計装置の表示画面に表示することによって、サンプルの蛍光を見誤らないためのガイド機能を持つ分光蛍光光度計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
蛍光測定時に、蛍光とは異質の光として観測される光は、励起波長と分光スリット幅の装置条件、または試料溶媒のラマンシフト情報から導き出せるが、表示画面の3次元蛍光スペクトルを表示する等高線グラフや、蛍光スペクトル及び蛍光強度を表示する2次元グラフ上では、蛍光とは異質の光をサンプルから抽出した蛍光と間違えて読み取ってしまうことが生じる。
【0003】
これら蛍光とは異質の光を除外する技術としては、従来から特許文献1、特許文献2が知られている。
【0004】
従来の分光蛍光光度計の基本構成では、図8に示す様に光源801から放射される光線を励起光側分光器802に入射して励起光を取り出す。励起光側分光器802の設定波長は、データ処理装置804からインターフェース805を介してパルスモータ803を制御して行う。取り出された単色励起光は、ビームスプリッタ813を介して試料セル807内の測定試料808を照射し、測定試料808から放射された蛍光が蛍光側分光器809に入射する。
【0005】
蛍光側分光器809は、データ処理装置804により制御されるパルスモータ810により選択された波長の蛍光を取り出し、これを光検知器811に入射して電気信号に変換する。電気信号はアナログ−デジタル変換器812によってデジタル信号に変換される。
【0006】
励起光側分光器802及び蛍光側分光器809の動作は、操作パネル806を介して分析者によって設定される。励起光側分光器802及び蛍光側分光器809は、各々光の入射位置及び出射位置に図示しない種々の幅を持つスリットを複数備えており、スリット幅は測定条件に応じて任意に変更される。
【0007】
励起光側分光器802から取り出された単色励起光の一部は、ビームスプリッタ813を介してモニタ検知器814に入射され電気信号に変換され光源光量をモニタする。モニタ検知器814の電気信号もアナログ−デジタル変換器812によってデジタル信号に変換される。
【0008】
検知器811のデジタル信号(S)とモニタ検知器814のデジタル信号(M)はデータ処理装置804に送られ、両者の比(S/M)が各波長における蛍光強度として算出され、データ処理装置804の内部メモリに記憶される。
【0009】
上記データ処理装置によって、励起光波長、蛍光波長、蛍光強度の3パラメータから成る3次元マトリクスデータが得られる。まず任意の励起光波長において蛍光側分光器809を所定のサンプリング間隔で駆動して蛍光波長を走査し、各波長の蛍光強度を検出して蛍光スペクトルを得る。次に励起光側分光器2をサンプリング間隔分だけ駆動して次の波長に設定し、同様に蛍光側分光器809を駆動して蛍光スペクトルを得、これを反復して2次元、3次元の測定データを得る。
【0010】
データ処理装置804では、各測定毎にその測定結果(3次元測定データ)及び測定条件(励起光側分光器、蛍光側分光器の各々のスリット幅、サンプリング間隔等)を記憶し、分析者の要求によって出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許公開2003−65956号公報
【特許文献2】特許公開2009−31176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
分光蛍光光度計に表示される3次元蛍光スペクトルの等高線グラフ、蛍光スペクトル及び蛍光強度の2次元グラフ上には、サンプルが放射する蛍光以外に、蛍光とは異質の光として観測される励起光のレーリー散乱光、励起光の2次、3次回折光、1/2次、1/3次回折光、溶媒のラマン散乱光及びその2次、3次回折光、1/2次、1/3次回折光などのピークが表示される。
【0013】
上記の蛍光と異質の光についての知識を基に、分析者がサンプルの蛍光のみを見い出すことは可能であるが、導き方を間違える場合もあり、また多くの除外すべきピークを瞬時に正確に判断することは非常に困難であった。
【0014】
従来の特許文献1、2においても等高線グラフ上でピーク表示が行われているが、領域を部分的に拡大表示する際に、画像表示が変形して読取りが困難になる等の問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、蛍光分光光度計において、サンプルの蛍光測定結果を表示する表示グラフ上に、蛍光表示がなされないことが明らかな表示除外領域を予め表示させる描画処理を行うことを特徴とする。
【0016】
また、表示グラフは、3次元蛍光スペクトルの等高線グラフまたは蛍光スペクトル及び蛍光強度による2次元グラフの少なくとも一つを含むことを特徴とする。
【0017】
また、表示除外領域は、前記表示グラフ上で、励起光のレーリー散乱光及びその回折光に対応する表示領域であることを特徴とする。
【0018】
また、表示除外領域は、前記表示グラフ上で、励起光のラマン散乱光及びその回折光に対応する表示領域であることを特徴とする。
【0019】
また、表示除外領域は、前記表示グラフ上で、アンチストークス領域に対応する表示領域であることを特徴とする。
【0020】
また、表示除外領域は、前記表示グラフ上で、励起光のレーリー散乱光及びその回折光に対応する表示領域、励起光のラマン散乱光及びその回折光に対応する表示領域またはアンチストークス領域に対応する表示領域の少なくとも一つを選択的に表示することを特徴とする。
【0021】
また、任意の測定条件を与えて所定の設定スケールで表示除外領域を含む表示グラフを表示させ、測定範囲が無駄のない適切な波長範囲で決定されたか否かを判断することを特徴とする。
【0022】
さらに、本体分析部と、操作・データ処理用GUI部を有し、前記本体分析部は光源と励起側分光器と蛍光側分光器とサンプルからの放出光を検出する光検出器を有する光学系と、測定試料を収納する試料室と、光度計条件設定部と、2次元スペクトルデータ測定部と、3次元スペクトルデータ測定部と、これら構成要素を制御する制御部とを備え、
前記操作・データ処理用GUI部は、前記本体分析部の分析手順を設定する分析手順設定部と、前記本体分析部の結果を取得する測定結果取得部と、測定結果を表示するスペクトル領域ガイド表示部を備えた蛍光分光光度計において、
前記制御部は、前記スペクトル領域ガイド表示部の蛍光測定結果を表示する表示グラフ上に、蛍光表示がなされないことが明らかな表示除外領域を予め表示させる描画手段を有することを特徴とする。
【0023】
さらに、表示グラフは、3次元蛍光スペクトルの等高線グラフまたは蛍光スペクトル及び蛍光強度による2次元グラフの少なくとも一つを含むことを特徴とする。
【0024】
さらに、制御部の描画手段は、前記表示グラフ上で、励起光のレーリー散乱光及びその回折光に対応する表示領域を表示除外領域として描画するレーリー散乱描画手段を有することを特徴とする。
さらに、制御部の描画処理手段は、前記表示グラフ上で、励起光のラマン散乱光及びその回折光に対応する表示領域を表示除外領域として描画するラマン散乱描画手段を有することを特徴とする。
さらに、制御部の描画処理手段は、前記表示グラフ上で、アンチストークス領域に対応する表示領域を表示除外領域として描画するアンチストークス描画手段を有することを特徴とする。
【0025】
制御部は、前記表示グラフ上で、励起光のレーリー散乱光及びその回折光に対応する表示領域、または励起光のラマン散乱光及びその回折光に対応する表示領域、またはアンチストークス領域に対応する表示領域の少なくとも一つを選択的に表示することを特徴とする。
【0026】
さらに、スペクトル領域ガイド表示部は、表示除外領域として、レーリー散乱に関する領域を表示する散乱光エリアボタンと、ラマン散乱に関する領域を表示するラマン散乱エリアボタンと、アンチストークス領域を表示するアンチストークスエリアボタンと、全ての表示除外領域を表示する全てのエリアボタンを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、3次元蛍光スペクトルの等高線グラフ、蛍光スペクトル及び蛍光強度の2次元グラフ上に、励起光の散乱光、溶媒のラマン散乱光、これらの2次、3次回折光、1/2次、1/3次回折光などが現れる波長領域、及び蛍光の現れないアンチストークス領域を予め表示することによって、除外すべき表示領域を瞬時に正確に把握させ、サンプルの蛍光ピークの誤判断を防ぐことができる。
【0028】
また、表示除外領域の大きさや、サンプルの蛍光ピークが表示除外領域に重なっている状況に基づき、適切な測定条件となっているか否かについても確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施例の分光蛍光光度計の一例を示すブロック図。
【図2】本発明の実施例の散乱光領域の描画について示す模式図。
【図3】本発明の実施例のラマン散乱光領域の描画について示す模式図。
【図4】本発明の実施例のアンチストークス領域の描画について示す模式図。
【図5】本発明の実施例の蛍光以外の全領域の描画について示す模式図。
【図6】本発明の実施例の3次元スペクトルの等高線における領域ガイド表示を行う画面例を示す説明図。
【図7】本発明の実施例の2次元スペクトルにおける領域ガイド表示を行う画面例を示す説明図。
【図8】従来例の分光蛍光光度計の概略構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、本発明の実施例を図面について説明する。
【実施例1】
【0031】
図1に、本発明の実施例1の分光蛍光光度計のシステム構成を示す。分光蛍光光度計システムは、本体分析部101と操作・データ処理用GUI部102から構成される。
【0032】
本体分析部101は、操作・データ処理用GUI部102から分析手順設定部103の設定に応じた命令を受け、命令内容に従って制御部105により制御を実行する。制御部105には各命令に対応するシーケンスがプログラミングされており、光度計条件設定部106で光度計条件を設定し、2次元スペクトルデータ測定部107、3次元スペクトルデータ測定部108で各スペクトルデータの測定を実行する。
【0033】
測定結果は、操作・データ処理用GUI部102の測定結果取得部109に取得され保存される。スペクトル領域ガイド表示部110は、操作・データ処理用GUI部102に組み込まれ、取得・保存された測定結果データに基づきスペクトル領域ガイド表示部110において、散乱光領域、溶媒のラマン散乱光領域、アンチストークス領域のエリア表示を行う。
【0034】
また、本体分析部101には、測定するサンプル1112を収納する試料セル1111を有する試料室111が装備され、角セルや固体セルホルダを使用した測定が可能である。また本体分析部101を構成している主な光学系112には、光源1121、光検知器1122、励起波長設定部1124及び励起側スリット1125を備えた励起側分光器1123、蛍光波長設定部1127及び蛍光側スリット1128を備えた蛍光側分光器1126を有する。
〔レーリー散乱の表示除外領域〕
初めに、図2において、レーリー散乱に起因する表示除外領域について説明する。サンプルの3次元蛍光スペクトルを取得すると、蛍光信号以外に、レーリー散乱光201、レーリー散乱光に起因する高次回折光202、203(k=2、3、4、・・・、もしくは1/2、1/3、1/4・・・)の信号が得られる。これらの信号は蛍光信号とは異なるので、この領域はサンプルの蛍光とは異質の表示除外領域となる。
【0035】
レーリー散乱光は通常の弾性的散乱光で本発明では単に散乱光とも呼び、励起波長と同じ波長の蛍光波長領域に出現する。このレーリー散乱光は波長分布を持ち、この波長分布は励起側スリット幅又は蛍光側スリット幅のうち、大きなスリット幅に依存する。このことから、レーリー散乱光に起因する表示除外領域は、式(1)によって決められる。
【0036】
ここで、kはレーリー散乱光とそれに起因する高次光を表示除外領域とするための係数、Aは現在の励起波長、Bは励起波長に対応する蛍光波長、Eは設定された励起側スリット幅Cと蛍光側スリット幅Dのうち、より大きなスリットの値となる。
【0037】
励起波長AをWex1〜Wexmまで変えて順にサンプルを照射し、これに対応する蛍光波長BをWems〜Wemeまで取得する。
【0038】
レーリー散乱光は、試料の状態によって半値幅が異なる。例えば、十分希薄な溶液であればシャープなレーリー散乱光が観測されるが、懸濁液や固体試料などはレーリー散乱が大きく、その半値幅も大きくブロードとなる場合がある。そこで、スリットの値Eに対して、感度係数αを掛けることで試料の散乱状態によって異なるレーリー散乱光の表示除外領域を精度良く設定することが可能となる。レーリー散乱の少ない十分希薄な溶液であれば、シャープなレーリー散乱光が観測されるので、感度係数αは2程度の値が適当である。これは、観測される散乱光はスリット幅が半値となるようにスリットが作用するので、レーリー散乱光は、設定されたスリット幅の±2倍の波長で裾が0付近となるためである。一方、レーリー散乱の大きな懸濁液や固体試料などは、感度係数αとして2以上の値を用いることが望ましい。
〈レーリー散乱の表示除外領域〉
k×A−α×E≦B≦k×A+α×E・・・・・・(1)
(→k=1、2、3、・・・もしくはk=1/2、1/3、・・・・)
A: 励起波長(nm)、 開始:Wex1〜終了:Wexm
B: 蛍光波長(nm)、 開始:Wems〜終了:Weme
C: 励起側スリット幅(nm)、 Sex(領域201の軸A方向幅)
D: 蛍光側スリット幅(nm)、 Sem(領域201の軸B方向幅)
E: CとDのいずれか大きい値
以上により表示除外領域201、202、203を求めて、等高線上に表示する。
〔ラマン散乱の表示除外領域〕
次に、図3において、ラマン散乱の表示除外領域について説明する。図3においてサンプルの3次元蛍光スペクトルを取得すると、蛍光信号以外にラマン散乱光301、ラマン散乱光に起因する高次光302、303(k=2、3、4、・・・、もしくは1/2、1/3、1/4・・・)が得られる。
【0039】
ラマン散乱は、試料の溶媒によって固有のラマンシフトを有する。従って溶媒の種類によりラマン散乱光領域が変化するので、溶媒の種類に応じて表示領域や表示方法を設定するのが有効である。使用される溶媒の例としては、水、エタノール、シクロヘキサン、四塩化炭素、クロロホルム等が挙げられる。
【0040】
一般に、ラマンシフトは波長の逆数である波数で表されるため、式(2)により波長に変換してラマン散乱光の表示除外領域を設定する。ここで、kは、ラマン散乱光とそれに起因する高次光の範囲を表示除外領域とするための係数、Aは現在の励起波長、Bは励起波長に対応する蛍光波長、Eは設定された励起側スリット幅Cと蛍光側スリット幅Dのうち、より大きなスリットの値となる。ラマン散乱光の表示除外領域においても、スリットの値Eに対して生じるラマン散乱光の半値幅が異なる。そこで、感度係数αを掛けることで試料の散乱状態によって異なるラマン散乱光の表示除外領域を精度良く設定することが可能となる。
〈ラマン散乱の表示除外領域〉
k×(1/(1/A−L))−α×E≦B≦k×(1/(1/A−L))+α×E
・・・・・・(2)
(→k=1、2、3、・・・もしくはk=1/2、1/3、・・・・)
A: 励起波長(nm)、 開始:Wex1〜終了:Wexn
B: 蛍光波長(nm)、 開始:Wems〜終了:Weme
C: 励起側スリット幅(nm)、 Sex
D: 蛍光側スリット幅(nm)、 Sem
E: CとDのいずれか大きい値
L: 溶媒情報(溶媒のラマンシフト)(cm−1
以上によりラマン散乱の表示除外領域301、302、303を求めて、等高線上に表示する。
〔アンチストークス領域の表示除外領域〕
次に、図4において、アンチストークス領域の表示除外領域について説明する。ストークスの定理により励起光よりも短い蛍光は生じることは無いので、この領域は蛍光波長の表示除外領域となり、式(3)によって定められる。
〈アンチストークス領域の表示除外領域〉
下記の式(3)を満足するB蛍光波長領域は除外される。
A−α×E≧B・・・・・・・(3)
A: 励起波長(nm)、 開始:Wex1〜終了:Wexn
B: 蛍光波長(nm)、 開始:Wems〜終了:Weme
C: 励起側スリット幅(nm)、 Sex
D: 蛍光側スリット幅(nm)、 Sem
E: CとDのいずれか大きい値
以上によりアンチストークス領域401を求めて、等高線上に表示する。
【0041】
以上のように求めた散乱光、ラマン散乱光、アンチストークス領域による表示除外領域を、図5のように3次元蛍光スペクトルの等高線グラフ上に全て表示することによって、異質の蛍光として観測されたピークかどうかを識別することができ、サンプルの蛍光と思われるピーク501を瞬時に、かつ容易に見つけることができる。
【0042】
図6に、3次元スペクトルの等高線における領域ガイド表示を行うスペクトル領域ガイド表示部110での表示画面例を示す。
【0043】
等高線グラフ601は、横軸を蛍光波長、縦軸を励起波長とし、測定データの蛍光強度を等高線表示したものである。(1)散乱光エリアボタン602、(2)ラマン散乱光エリアボタン603、(3)アンチストークスエリアボタン604は、それぞれのピークが測定されるエリアを表示するボタンである。
【0044】
これらのボタンを押下すると、等高線グラフ601上に、押したボタンの領域に該当するエリアの背景を灰色で表示する。全てのエリアボタン605を押下すれば、(1)〜(3)の全てのエリアを灰色で表示する。
【0045】
以上のようにサンプルの蛍光以外のエリアを描画することによって、サンプルとは異質のピークを除外して、サンプルのピークと思われるピーク606を瞬時に見つけ出すことが可能になる。
【0046】
また、これから測定しようとする任意の測定条件で等高線のスケールを表示し、サンプルの蛍光以外のエリアを描画すれば、設定した測定範囲が無駄のない適切な波長範囲で設定されているかを判断することも可能である。
【0047】
図7に、2次元蛍光スペクトルにおける領域ガイド表示を行う画面例を示す。スペクトル701は、横軸を蛍光波長、縦軸を蛍光強度としてスペクトルを表示したものである。(1)散乱光エリアボタン702、(2)ラマン散乱光エリアボタン703、(3)アンチストークスエリアボタン704は、それぞれのピークが測定されるエリアを表示するボタンである。
【0048】
これらのボタンを押下すると、スペクトル701上に、各エリアの背景を灰色で表示する。全てのエリアボタン705を押下すれば、(1)〜(3)の全てのエリアを灰色で表示する。
【0049】
以上のようにサンプルの蛍光以外のエリアを描画することによって、サンプルの蛍光である可能性のあるピーク706、707を容易に絞り込むことができる。
【符号の説明】
【0050】
101:本体分析部
102:操作・データ処理用GUI部
103:分析手順設定部
105:制御部
106:光度計条件設定部
107:2次元スペクトルデータ測定部
108:3次元スペクトルデータ測定部
109:測定結果取得部
110:スペクトル領域ガイド表示部
111:試料室
112:光学系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光分光光度計において、サンプルの蛍光測定結果を表示する表示グラフ上に、蛍光表示がなされないことが明らかな表示除外領域を予め表示させる描画処理を行うことを特徴とする蛍光分光光度計の表示方法。
【請求項2】
請求項1の蛍光分光光度計の表示方法において、前記表示グラフは、3次元蛍光スペクトルの等高線グラフまたは蛍光スペクトル及び蛍光強度による2次元グラフの少なくとも一つを含むことを特徴とする蛍光分光光度計の表示方法。
【請求項3】
請求項1または2の蛍光分光光度計の表示方法において、前記表示除外領域は、前記表示グラフ上で、励起光のレーリー散乱光及びその回折光に対応する表示領域であることを特徴とする蛍光分光光度計の表示方法。
【請求項4】
請求項1または2の蛍光分光光度計の表示方法において、前記表示除外領域は、前記表示グラフ上で、励起光のラマン散乱光及びその回折光に対応する表示領域であることを特徴とする蛍光分光光度計の表示方法。
【請求項5】
請求項1または2の蛍光分光光度計の表示方法において、前記表示除外領域は、前記表示グラフ上で、アンチストークス領域に対応する表示領域であることを特徴とする蛍光分光光度計の表示方法。
【請求項6】
請求項1または2の蛍光分光光度計の表示方法において、前記表示除外領域は、前記表示グラフ上で、励起光のレーリー散乱光及びその回折光に対応する表示領域、励起光のラマン散乱光及びその回折光に対応する表示領域またはアンチストークス領域に対応する表示領域の少なくとも一つを選択的に表示することを特徴とする蛍光分光光度計の表示方法。
【請求項7】
請求項1または2の蛍光分光光度計の表示方法において、任意の測定条件を与えて所定の設定スケールで表示除外領域を含む表示グラフを表示させ、測定範囲が無駄のない適切な波長範囲で決定されたか否かを判断することを特徴とする蛍光分光光度計の表示方法。
【請求項8】
本体分析部と、操作・データ処理用GUI部を有し、前記本体分析部は光源と励起側分光器と蛍光側分光器とサンプルからの放出光を検出する光検出器を有する光学系と、測定資料を収納する試料室と、光度計条件設定部と、2次元スペクトルデータ測定部と、3次元スペクトルデータ測定部と、これら構成要素を制御する制御部とを備え、
前記操作・データ処理用GUI部は、前記本体分析部の分析手順を設定する分析手順設定部と、前記本体分析部の結果を取得する測定結果取得部と、測定結果を表示するスペクトル領域ガイド表示部を備えた蛍光分光光度計において、
前記制御部は、前記スペクトル領域ガイド表示部の蛍光測定結果を表示する表示グラフ上に、蛍光表示がなされないことが明らかな表示除外領域を予め表示させる描画手段を有することを特徴とする蛍光分光光度計。
【請求項9】
請求項8の蛍光分光光度計において、前記表示グラフは、3次元蛍光スペクトルの等高線グラフまたは蛍光スペクトル及び蛍光強度による2次元グラフの少なくとも一つを含むことを特徴とする蛍光分光光度計。
【請求項10】
請求項8または9の蛍光分光光度計において、前記制御部の描画手段は、前記表示グラフ上で、励起光のレーリー散乱光及びその回折光に対応する表示領域を表示除外領域として描画するレーリー散乱描画手段を有することを特徴とする蛍光分光光度計。
【請求項11】
請求項8または9の蛍光分光光度計において、前記制御部の描画処理手段は、前記表示グラフ上で、励起光のラマン散乱光及びその回折光に対応する表示領域を表示除外領域として描画するラマン散乱描画手段を有することを特徴とする蛍光分光光度計。
【請求項12】
請求項8または9の蛍光分光光度計において、前記制御部の描画処理手段は、前記表示グラフ上で、アンチストークス領域に対応する表示領域を表示除外領域として描画するアンチストークス描画手段を有することを特徴とする蛍光分光光度計。
【請求項13】
請求項8または9の蛍光分光光度計において、前記制御部は、前記表示グラフ上で、励起光のレーリー散乱光及びその回折光に対応する表示領域、または励起光のラマン散乱光及びその回折光に対応する表示領域、またはアンチストークス領域に対応する表示領域の少なくとも一つを選択的に表示することを特徴とする蛍光分光光度計。
【請求項14】
請求項8または9の蛍光分光光度計において、スペクトル領域ガイド表示部は、表示除外領域として、レーリー散乱に関する領域を表示する散乱光エリアボタンと、ラマン散乱に関する領域を表示するラマン散乱エリアボタンと、アンチストークス領域を表示するアンチストークスエリアボタンと、全ての表示除外領域を表示する全てのエリアボタンを有することを特徴とする蛍光分光光度計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−58818(P2011−58818A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−205534(P2009−205534)
【出願日】平成21年9月7日(2009.9.7)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】