説明

分化する胚性幹細胞を使用する三次元組織構造の設計

組織工学構築物を製造する方法。この方法は胚性幹細胞の集団を提供する工程と、細胞支持基質上に胚性幹細胞を播種する工程と、所定の細胞系列に沿って、あるいは特定の細胞型への幹細胞の分化を促進するために選択された少なくとも1つの薬剤にこの胚性幹細胞を暴露する工程とを含む。この曝露工程は、播種工程前後に行ってもよい。一局面において、本発明は、胚性幹細胞、幹細胞により生じた収縮力に抵抗性のある3次元細胞支持基質、および所定の細胞系列に沿って、あるいは特定の細胞型に幹細胞の分化を促進するために選択された少なくとも1つの成長因子を含む組織工学構築物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2002年12月10日に出願された仮特許出願第60/432,228号明細書、2003年1月31日に出願された仮特許出願第60/443,926号明細書、および2003年12月9日に出願された特許出願第(Dkt No.0492611−0530)号明細書の優先権を主張するものである。
【0002】
(発明の分野)
本発明は分化する胚性幹細胞を使用する3次元の組織構造の製造に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
ヒトES(hES)細胞をはじめとする胚性幹(ES)細胞は、これらの細胞を分化させると全ての体細胞系列を生じるそのユニークな能力により細胞移植のための有望な供給源である1−3、4。支持細胞層からこの細胞を除去し、懸濁液中で成長させることにより、その中で連続的分化工程が起こり、細胞性凝集および胚様体(EB)が形成され、ESの分化を誘発させることができる。いくつかの研究により、直接的には成長因子により、間接的には支持細胞により、特定の系列へのES細胞分化を誘発することができる化学的なきっかけが提供されることが分かった6−9。しかしながら、複合組織を形成するようにES細胞の分化を制御することに成功した研究は存在しない。ある細胞系列では、表面相互作用、剪断応力、および機械的応力を含む物理的なきっかけが分化を誘発した10−13
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、3次元の組織構造内へES細胞の分化を促進する方法を開発することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の概要)
一局面において、本発明は、胚性幹細胞、幹細胞により生じた収縮力に抵抗性のある3次元細胞支持基質、および所定の細胞系列に沿って、あるいは特定の細胞型に幹細胞の分化を促進するために選択された少なくとも1つの成長因子を含む組織工学構築物を提供する。この幹細胞は、例えばヒトの胚性幹細胞などの哺乳動物の胚性幹細胞でもよい。細胞支持基質は、例えば、ポリ(L−乳酸)およびポリ(乳酸−co−グリコール酸)の50/50混合物などのポリ(乳酸)−ポリ(乳酸−co−グリコール酸)混合物がある。
【0006】
基質の断面積は、胚性幹細胞によって生じた収縮力の下で50%以下、例えば、40%、30%、20%、10%、あるいは1%以下の割合に減少してもよい。細胞支持基質は、例えば、細胞接着を促進するフィブロネクチン、インテグリン、あるいはオリゴヌクレオチドなどの細胞接着を促進する薬剤をはじめとするコーティングをさらに含む。細胞支持基質は、生分解性でもあるいは非生物分解性でもよい。
【0007】
組織工学構築物は、細胞支持基質内に配置される1つ以上の生体分子、低分子、あるいは生理活性薬剤をさらに含んでもよい。組織工学構築物は細胞支持基質の内面および外面を被覆するゲルをさらに含んでいる。代表的なゲルは、コラーゲンゲル、アルギン酸塩、寒天、および成長因子低減MATRIGELTM)などがある。ゲルは、ラミニン、フィブリン、フィブロネクチン、プロテオグリカン、糖タンパク質、グリコサミノグリカン、走化性薬剤、または例えばサイトカイン、エイコサノイド、あるいは分化因子などの成長因子の1つ以上をさらに含む。
【0008】
別の局面では、本発明は組織工学構築物を製造する方法を提供する。この方法は、胚性幹細胞の集団を準備する工程と、細胞支持基質上に胚性幹細胞を播種する工程と、所定の系列に沿って、あるいは特定の細胞型への幹細胞の分化を促進するために選択された少なくとも1つの薬剤にこの胚性幹細胞を曝露させる工程とを含む。曝露する工程は、播種する工程の前後に行ってもよく、血清フリーの培地中で行ってもよい。細胞支持基質は3次元でもよく、細胞接着を促進する薬剤でコートされていてもよい。この胚性幹細胞は、ゲル内に配列していてもよく、細胞支持基質上に胚性幹細胞を播種する工程は、細胞支持基質の内面および外面にゲルを配置する工程を含んでもよい。
【0009】
薬剤は成長因子、機械力、電圧、生理活性薬剤、生体分子、低分子、あるいはこれらの組み合わせでもよい。機械力は、フープ応力、剪断応力、静水圧応力、圧縮応力、引張り応力、あるいはこれらの任意の組み合わせなどがある。胚性幹細胞は、準備する工程の一部として成長因子の存在下で培養してもよい。
【0010】
(定義)
「生体分子」:本明細書に使用される用語「生体分子」は、細胞または組織で一般に認められる天然あるいは人工の(例えば、合成、または組換え法によって)いずれかの分子類(例えば、タンパク質、アミノ酸、ペプチド、ポリヌクレオチド、ヌクレオチド、炭水化物、糖、脂質、核タンパク質、糖タンパク質、リポタンパク質、ステロイドなど)を指す。特定のクラスの生体分子としては、酵素、受容体、神経伝達物質、ホルモン、サイトカイン、成長因子および走化因子などの細胞応答修飾因子、抗体、ワクチン、ハプテン、毒素、インターフェロン、リボザイム、アンチセンス薬剤、プラスミド、DNA、およびRNAなどがあるがこれに限定されない。
【0011】
「生体適合性」:本明細書に使用される用語「生体適合性」は、インビボにおいて好ましくない有害な反応を誘発しない材料を記載するためのものである。
【0012】
「生分解性」:本明細書で使用される「生分解性」ポリマーは、生理的またはエンドソーム条件の下で、完全に(すなわちモノマー種まで)分解するポリマーである。好ましい実施形態では、ポリマーおよびポリマー生分解副産物は生体適合性である。生分解性ポリマーは、必ずしも加水分解的に分解する必要はなく、完全に分解するまで酵素の作用を必要とする場合がある。
【0013】
「成長因子」:本明細書で使用される「成長因子」は、細胞性代謝プロセスを制御する化学薬品であり、これらに限定されないが、識別、増殖、多様な細胞生成物の合成、および他の代謝活性が含まれる。成長因子は、これらに限定されないが、サイトカイン、エイコサノイド、および分化因子などの化学薬品のいくつかのファミリーを含んでもよい。
【0014】
「ポリヌクレオチド」、「核酸」または「オリゴヌクレオチド」:用語「ポリヌクレオチド」、「核酸」または「オリゴヌクレオチド」は、ヌクレオチドのポリマーを指す。用語「ポリヌクレオチド」、「核酸」および「オリゴヌクレオチド」は区別なく使用してもよい。一般に、ポリヌクレオチドは、少なくとも3つのヌクレオチドを有する。DNAおよびRNAはポリヌクレオチドである。ポリマーは、天然ヌクレオシド(すなわち、アデノシン、チミジン、グアノシン、シチジン、ウリジン、デオキシアデノシン、デオキシチミジン、デオキシグアノシン、およびデオキシシチジン)、ヌクレオシド類似体(例えば、2−アミノアデノシン、2−チオチミジン、イノシン、ピロロピリミジン、3−メチルアデノシン、C5−プロピルシチジン、C5−プロピニルウリジン、C5−ブロモウリジン、C5−フルオロウリジン、C5−ヨードウリジン、C5−メチルシチジン、7−デアザアデノシン、7−デアザグアノシン、8−オキソアデノシン、8−オキソグアノシン、О(6)―メチルグアニン、および2−チオシチジン)、化学修飾塩基、生物学修飾塩基(例えばメチル化塩基)、介在塩基、改質糖類(例えば2’−フルオロリボース、リボース、2’−デオキシリボース、アラビノース、およびヘキソース)、あるいは改質リン酸基(例えば、ホスホロチオネート、および5’−N−ホスホラミダイト結合)などがある。
【0015】
「ポリペプチド」、「ペプチド」または「タンパク質」:本発明によれば、「ポリペプチド」、「ペプチド」または「タンパク質」は、ペプチド結合によって互いに結合した一連の少なくとも3つのアミノ酸を有する。用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」は区別なく使用してもよい。ペプチドは個々のペプチドあるいはペプチドの集まりを指す場合がある。発明のペプチドは、当業者において公知の非天然のアミノ酸、および/またはアミノ酸類似体(天然には生じない化合物であるが、ポリペプチド鎖ないに取り込むことが可能なもの、例えば、官能性イオンチャネルに良好に取り込まれる非天然のアミノ酸の構造を示したhttp://www.cco.caltech.edu/〜dadgrp/Unnatstruct.gif参照)が代わりに使用されるが、天然のアミノ酸のみを含むことが好ましい。例えば、炭水化物基、リン酸基、ファルネシル基、イソファルネシル基、脂肪酸基、接合用のリンカー、官能基付与、あるいはその他の改質などの化学成分の添加により、発明のペプチドにおける1つ以上のアミノ酸を改質してもよい。好ましい実施形態において、ペプチドの改質はより安定なペプチドを導く(例えば、生体内でより大きな半減期)。これらの改質には、ペプチドの環化、D−アミノ酸などの取り込みなどがある。いずれの改質も本質的にペプチドの所望の生物活性を妨害してはならない。
【0016】
「多糖類」、「炭水化物」あるいは「オリゴ糖」:用語「多糖類」、「炭水化物」、あるいは「オリゴ糖」は、糖のポリマーを指す。用語「多糖類」、「炭水化物」および「オリゴ糖」は区別なく使用される。一般に、多糖類は少なくとも3つの糖を有する。このポリマーは、天然の糖(例えばグルコース、果糖、ガラクトース、マンノース、アラビノース、リボース、およびキシロース)、および/または改質された糖(例えば2’−フルオロリボース、2’−デオキシリボース、およびヘキソース)を含む。
【0017】
「低分子」:本明細書で使用される用語「低分子」は、比較的低分子量を有する天然または人工的に創成された(例えば化学合成によって)分子を指すために使用される。一般に、低分子はモノマーで、約1500g/mol未満の分子量を有する。低分子は、これにより動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトにおける局所または全身作用を生じる生物学的に活性な分子であることが好ましい。ある好ましい実施形態では、低分子は薬剤である。この薬剤は、必須ではないが、適切な政府機関または機構によって、使用に際し既に安全で有効であると判定されたものが好ましい。例えば、参照によって本明細書に引用されたFDAにより21C.F.R.§§330.5、331〜361、および440〜460にリストされたヒト使用のための薬剤、FDAにより21C.F.R.§§500〜589にリストされた獣医学的使用のための薬剤は、本発明による使用にすべて許容できる。
【0018】
「生理活性薬剤」:本明細書で使用される「生理活性薬剤」は、生物学的あるいは化学的事象を変化させ、抑制し、活性化し、あるいはそれに影響を及ぼす化合物あるいは単位を指すために使用される。例えば、生理活性薬剤は、抗−エイズ物質、抗癌物質、抗生物質、免疫抑制薬、抗ウイルス物質、酵素抑制因子、神経毒、オピオイド、催眠薬、抗−ヒスタミン、潤滑剤、精神安定薬、抗痙攣薬、筋弛緩薬、および抗パーキンソン物質、チャネル遮断薬、縮瞳および抗コリン作動薬などの抗痙性薬および筋肉収縮薬、抗緑内障化合物、抗寄生虫薬および/または抗原虫化合物、細胞増殖阻害剤および抗接着分子などの細胞−細胞外基質相互作用の修飾剤、血管拡張薬、DNA、RNAあるいはタンパク質合成の阻害薬、抗高血圧薬、鎮痛薬、抗発熱薬、ステロイドおよび非ステロイド系抗炎症薬、抗血管原性因子、抗分泌性因子、抗凝血薬および/または抗血栓薬薬剤、局所麻酔薬、眼科薬、プロスタグランジン、抗うつ薬、抗精神病物質、抗嘔吐薬および造影剤、などがあるが、これに限定されない。ある実施形態において、生理活性薬剤は薬剤である。
【0019】
本発明での使用に好ましい生理活性薬および特定薬剤のより完全なリストは、全て本明細書に参照によって引用されるAxel KleemannおよびJurgen Engelによる「Pharmaceutical Substances:Syntheses,Patents,Applications」、Thieme Medical Publishing,1999年;「Merck Index:An Encyclopedia of Chemicals, Drugs,and Biologicals」Susan Budavariら編集、CRC Press、1996年、および米国薬局方−25/国民医薬品集−20、米国薬局方協会(United States Pharmcopeial Convention, Inc)刊行、Rockville MD、2001年に掲載されている。
【0020】
「組織」:本明細書に使用されるように、用語「組織」は、特定の機能を実行するための1種類以上の細胞の集まり、および細胞を囲む任意の細胞外基質を指す。
【0021】
(詳細な説明)
一実施形態において、本発明は組織工学構築物を産生する方法である。所望の分化経路を刺激する薬剤にさらされる前後に、支持基質上にhES細胞の集団が播種される。支持基質は、細胞により作用する収縮力の下で崩壊しないように十分高い弾性率を有する。
【0022】
本発明者らは、適切な化学的および物理的なきっかけを併用すると、三次元(3D)組織構造内へのhES細胞の分化および組織化に向けた支持環境が構築されることを偶然に発見した。本発明者らは、基質ゲルおよび生分解性骨格を使用して、一連の3D培養条件を構築し、生物分解性骨格により提供された物理的きっかけが組織状構造の形成を促進することを見いだした。特に、hES細胞によって生じた圧縮応力下での収縮に抵抗するようにデザインされたポリマー骨格が、3D構造内へのhES細胞の増殖、分化、および組織化を促進した。更に、成長因子条件の変動は、軟骨、肝臓、および神経組織などのヒト組織状の構造の形成を誘発した。最終的に、ポリマー骨格上に培養されたhES細胞は、インビトロで組織を血管新生化する内皮血管ネットワーク内で組織化された。したがって、物理的環境は、3D組織中へのhES細胞分化に影響を及ぼすパラメータである。
【0023】
この細胞は、胚様体の形成を誘発するように、LIFおよびbFGFの存在しない条件で培養し、続いてトリプシン処理される。この細胞は、三次元基質上に直接播種されるか、あるいは播種用のゲルと結合される。代表的なゲルは、Becton−Dickinsonから入手可能な成長因子低減MATRIGELTM)(基質ゲル)である。未変性の基質ゲルは、EHSマウス腫瘍から抽出された可溶性基底膜基質である(Kieinman、H.K.ら、Biochem.25:312、1986年)。この基質の主成分は、ラミニン、コラーゲンI、エンタクチン、およびヘパラン硫酸プロテオグリカン(perlecan)である(Vukicevic、S.ら、Exp.Cell Res.202:1、1992年)。成長因子低減MATRIGELTM)は、この基質からほとんどの成長因子を除去することにより産生される(Taubら、Proc.Natl.Acad.Sci.米国(1990年)87(10):4002−6を参照)。あるいは、このゲルはコラーゲンIゲルでもよい。本発明と共に使用してもよい追加のゲルは、アルギン酸塩、フィブリン、寒天、およびコラーゲンIVなどがあるがこれに限定されない。
【0024】
ゲルが使用される場合、グリコサミノグリカン、フィブリン、フィブロネクチン、プロテオグリカン、および糖タンパク質などのその他の細胞外基質成分をさらに含んでもよい。このゲルは、コラーゲンN、およびラミニンなどの基底膜成分をさらに含んでもよい。一実施形態において、幹細胞と同じ種類の分化すべき細胞を含む組織で認められる細胞外基質成分をそのゲルに組み込んでもよい。タンパク質分解酵素およびコラゲナーゼなどの酵素を、成長因子、および走化性薬などの細胞応答修飾因子としてゲルに加えてもよい。
【0025】
ゲルは基質の内面および外表面上に吸収され、多孔性基質の細孔のいくつかを充填する。硬化するまでは、毛管力が基質上のゲルを保持するか、あるいはゲルが基質上で硬化し、それ自体で支持できるようになる。
【0026】
三次元の基質は、細胞の分化によって生じる収縮力の下で崩壊しないように十分に堅いことが好ましい。骨格剛性に無関係な線維芽細胞の場合、細胞当たりの平均値漸近力(F細胞)は、およそ3nNと計算された38。これはおおざっぱな仮定であるものの、平均細胞が作用する力(σ)を表すためにこの値を使用すると、以下の関係が成り立つ。
【0027】
σ=F細胞×細胞の数/細胞の面積
これが正しい場合、単細胞(A細胞)の断面積で上記断面積(細胞の面積)を割ることにより、断面積における細胞の数を評価することができる。上述の式は、以下のように書き直すことができる。
【0028】
σ=F細胞/A細胞
横断面内の細胞の直径がおよそ6μmであると仮定すると、Acellは約(環状横断面を想定して)28μmである。これらの既知の値を上式と代入すると、次の結果が得られる。すなわち、細胞は骨格におよそ110Paの応力を及ぼす。これは非常に概略的なおおざっぱな評価である。
【0029】
一実施形態において、胚性幹細胞は基質上に播種された後でも3次元構造を維持することができ、この細胞が多様な細胞機能(例えば代謝機能、増殖、分化)を行なう際に、基質の断面積の減少は50%以下、例えば未播種基質に対して40%未満である。いくつかの実施形態において、播種された細胞によって作用する機械力の下で、断面積の減少は30%未満、あるいはさらに少なく、例えば20%未満、10%未満、あるいは1%未満未満である。当業者は、どのポリマーを選択するのか、収縮量を最適化するために分子量および架橋密度をコントロールするなど、どのようにしてそれらの弾性率を調整するのかについて把握しているであろう。
【0030】
いくつかの実施形態において、置換されるべき細胞外基質に類似する微細構造とともに基質が形成されてもよい。基質の分子量、立体規則性、および架橋密度をさらに制御し、基質の機械的性質および分解率(分解性骨格における)の両方をコントロールする。移植部位における組織を模倣するため、機械的性質をさらに最適化する。最終移植片の形状およびサイズは、移植部位および組織の種類に適合させる必要がある。基質は、幹細胞のための伝達媒体として単純に寄与してもよく、構造または機械的な機能を提供してもよい。基質は、例えば、粒子、スポンジ、管、球、鎖、コイル鎖、毛細管ネットワーク、フィルム、線維、メッシュ、あるいはシートのように任意の形状に形成してもよい。
【0031】
基質の空隙率は、当業者に公知の種々の技術によってコントロールされる。最小細孔径および間隙率は、細胞、および基質を介して細胞へ濾過される栄養分にとって十分な場所を提供する必要性によって決まる。最大細孔径および空隙率は、播種後にその機械的安定性を維持するための基質の能力によって制限される。空隙率が増加する場合、より高い弾性率を有するポリマーを使用したり、コポリマーまたは混合物としてより堅いポリマーを添加したり、あるいはポリマーの架橋密度を増加したりするなど、いずれを使用しても、細胞性収縮に関する基質の安定性を向上させることができる。
【0032】
基質は、当業者に公知の任意の種々の技術により作製してもよい。塩浸出、ポロゲンporogens、固−液相分離(時に凍結乾燥と呼ぶ)、および位相反転産生物のいずれを使用しても、多孔性基質を産生することができる。線維引き出しおよびウィービングを使用して、より整列したポリマースレッドを有する基質を産生してもよい(例えばVacantiら、(1988年)Journal of Pediatric Surgery、23:3−9参照)。標準ポリマー加工技術を開発し、種々の空隙率および微細構造を有するポリマー基質を創造してもよいことを当業者は認識するであろう。
【0033】
ポリマー基質は生分解性であることが好ましい。本発明の実施において使用される好ましい生分解性ポリマーは、当業者において公知であり、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリ(グリコール酸)(PGA)およびPLA−PGAコポリマー(PLGA)などがある。生分解性材料は、さらに、PLA、ポリ(無水物)、ポリ(ヒドロキシ酸)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(プロピルfumerates)、ポリ(カプロラクトン)、ポリアミド、ポリアミノ酸、ポリアセタール、生分解性ポリシアノアクリレート、生分解性ポリウレタン、および多糖類などがある。非生物分解性のポリマーも同様に使用してもよい。他の非生物分解性であるが生体適合性のポリマーとしては、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリスチレン、ポリエステル、非生物分解性ポリウレタン、ポリ尿素、ポリ(エチレン酢酸ビニル)、ポリプロピレン、ポリメタクリレート、ポリエチレン、ポリカーボネート、およびポリ(エチレンオキシド)などがある。当業者には、これは細胞工学用途に適切なポリマーのリストとして例示的なものであり、包括的なものではないことが認識されるであろう。
【0034】
上記のポリマーのコポリマー、混合物、および付加物を、本発明の実施において使用してもよい。実際、コポリマーは基質の機械的および化学的性質を最適化するのに有用である。例えば、幹細胞に高い親和性を備えたポリマーはより堅いポリマーと結合し、崩壊しないようにするために必要な剛性を有する基質を生成する。例えば、PLAはポリ(カプロラクトン)またはPLGAと結合し混合物を形成する。ポリマーの選択、およびコポリマー中のポリマー比率の両者は、基質の剛性を最適化するために調整される。
【0035】
PLAおよびPLA/PGAコポリマーは、生物分解性の基質を形成するのに特に有用である。ポリエステル基質の侵食は、ポリマーの分子量および結晶化度と関係がある。より高い分子量、例えば重量平均分子量90,000以上のものは、ポリマー基質中の構造上の完全性を長期間保持するが、より低い分子量、例えば重量平均分子量30,000以下では、基質寿命が短くなる。分子量と結晶化度もポリマー基質の剛性に影響を及ぼす。ポリマーの立体規則性も弾性率に影響を及ぼす。ポリ(L−乳酸)(PLLA)はイソタクチックであり、このポリマーの結晶化度、およびそれを含む混合物の弾性率が高くなっている。当業者は、上述の任意のポリマーの分子量および結晶化度を最適化し、基質の剛性をコントロールしてもよいことを認識するであろう。同様に、コポリマーあるいは混合物中のポリマーの比率を調整し、所望の剛性を達成してもよい。
【0036】
代表的な実施形態では、成長因子あるいは走化性薬剤などの細胞応答修飾因子をポリマー基質に添加してもよい。このような修飾因子を使用し、所望の標的細胞内での胚性幹細胞の分化を促進してもよい。あるいは、またはさらに加えて、修飾因子を選択し、これによって基質に細胞を補充するか、あるいは基質に補充された細胞の特定の代謝活性を促進するまたは抑制してもよい。代表的な成長因子としては、アクチビン−A(ACT)、レチノイン酸(RA)、上皮細胞成長因子、骨形成因子(BMP)、TGF−β、肝細胞増殖因子、血小板由来成長因子、TGF−α、IGF−IおよびII、造血成長因子、ヘパリン結合性増殖因子、ペプチド成長因子、エリスロポエチン、インターロイキン、腫瘍壊死因子、インターフェロン、コロニー刺激因子、繊維芽細胞成長因子、神経成長因子(NGF)、および筋肉形態発生因子(MMF)などがあるがこれに限定されない。使用された特定の成長因子は、所望の細胞活性および分化経路に適している必要がある。成長因子の大規模なファミリーの調節効果は当業者において公知である。
【0037】
ポリマー基質上に播種される前に、胚性幹細胞を成長因子あるいは他の細胞応答修飾因子とともに培養してもよい。これらの細胞はポリマーと結合する前に既に分化を開始していると予想される。あるいは、異なる細胞応答修飾因子に曝露された細胞の種々の集団を三次元ポリマー骨格の異なる部分に播種してもよい。
【0038】
播種の前に、追加の生理活性薬剤、生体分子、および低分子を、ポリマー基質あるいは培地にさらに添加してもよい。例えば、フィブロネクチン、インテグリン、あるいはRGDなどの細胞接着を促進するオリゴヌクレオチドの添加をポリマー基質に加えてもよい。移植された基質を囲む組織中の細胞挙動に影響を及ぼすように、走化性薬または抗炎症薬を基質に添加してもよい。
【0039】
ゲルを含むかまたは含まず細胞が播種されたポリマー基質を、結合組織、筋肉組織、神経組織、および器官組織を含む任意の組織に移植してもよい。本発明の技術を使用し、外胚葉性、中胚葉性、および内胚葉性起源の組織を形成してもよい。好ましい実施形態では、ES細胞の分化および予定される組織タイプの形成を促進すると予想される成長因子が選択される。例えば、三次元の基質上に播種されたhES細胞へのTGF−βの添加は、軟骨組織の細胞外基質特性の形成を誘発する。アクチビンAおよびIGFの両者はES細胞を誘発し、肝臓を発生するタンパク質特性を生じる。RAはhES細胞を誘発し、ニューロン組織に類似する外胚葉性構造を組織化する。骨形態形成タンパク質、骨に特異的なコロニー刺激因子、および/またはPDGFへのES細胞の暴露により、コラーゲンおよび他の骨ECMタンパク質の形成を促進する。
【0040】
それらが分化するとともに、細胞は、周囲組織から移植された細胞播種基質に細胞を補充する走化性薬剤を産生する。この構成物とともに移植された幹細胞はこの基質からさらに移動する。細胞の移動は、周囲組織内へ移植された構成物の統合を助ける。内皮細胞は周囲の血管から移動し、移植された基質内で脈管構造を生じ、分化する細胞へ栄養を提供する。
【0041】
幹細胞は遺伝子を発現し、完全に分化する前に、標的細胞のタンパク質特性を十分に産生する。したがって、完全に肝細胞および肝臓内で認められるその他の細胞に分化する前に、アクチビンAまたはIGFに曝露された幹細胞は肝特異性遺伝子を発現する。実際には、特定の細胞応答修飾因子に曝露された幹細胞の集団において、全ての幹細胞が同様に分化するわけではない。例えば、アクチビンAかあるいはIGFに曝露された細胞のうちのいくつかは、ニューロンマーカーまたは内皮マーカーを発現する。これらの細胞は、肝臓組織の発育において神経ネットワークおよび脈管構造の発達を支援することができる。
【0042】
更に、細胞の機械的相互作用およびそれらの細胞外基質は細胞性プロセスに影響を及ぼす。所望の経路に沿った分化をさらに促進するために、細胞応答修飾因子として外来性機械力を使用し、組織によって作用する機械力を模倣してもよい。例えば、内皮細胞は、動脈および静脈を介した血流として剪断力に曝される。筋肉は少なくともその末端で骨に固定されているので、これは均一な、および不均一な引張り応力の両方に曝される。通常の歩行運動中に、骨は圧縮力および曲げ応力にさらされる。器官組織は静水圧応力および他の圧縮応力に曝される。インビトロでの細胞播種基質上の機械力の負荷は、播種された幹細胞によるアクチンの産生に影響を及ぼすと予想され、その結果、細胞の代謝活性の程度およびタイプ、およびそれらが産生する細胞外基質の微細構造に影響を及ぼす。
【0043】
同様に、電気刺激を使用して、細胞分化および代謝に影響を及ぼすこともある。例えば、骨は圧電性であり、筋肉は、神経を伝わる電気的信号に応じて収縮し、弛緩する。インビトロで所望の組織の電気活性を模倣する電気刺激は、三次元基質上に播種されたES細胞にその組織の電気的な特性を有する組織を産生させる。
【0044】
ポリマー基質の形状および微細構造、および播種されたポリマーに印加される外因性作用は、特定の組織において最適化される。例えば、摂取された管状其質を介して質媒質を拍動的な方法(すなわちフープ応力)で循環させ、動脈に印加される力をシミュレートしてもよく、あるいは媒質を使用し、血管の内側に整列する幹細胞に剪断応力を印加させてもよい(Nikiasonら、(1999)Science、284、489−93;Kaushallら、(2001)Nat.Med、7、1035−1040)。基質中のポリマー鎖を整列させ、筋肉、腱、あるいは靭帯の組織構造を模倣させてもよく、管状のネットワークを形成させ、脈管構造の形成を促進してもよい。
【0045】
播種されたES細胞が完全に分化する前でも、細胞は、細胞応答修飾因子にさらされた後は、ほとんど全ての動物組織の三次元構造の特徴を有するように基質自体を組織化することができる。幹細胞によって印加された機械力に対する生理学的反応を提供することができる基質上で播種をすると、この幹細胞は、2次元的なペトリ皿よりも生理学的環境により類似した条件の下で分化し、生育することができる。実際、ES細胞が最終的に分化する前に、組織部位内への移植体の統合がより迅速にあるいは効率的に進む可能性もある。
【実施例】
【0046】
(実験方法)
(細胞培養)
に記載されるように、ES細胞のために最適化されたDulbeco改質イーグル培地の修正版であるノックアウト培地(Gibco−BRL、Gaithersburg、MD)中のマウス胚性線維芽細胞(Cell Essential,ボストン,MA)上でhES細胞(H9クローン)を培養した。EBの形成を誘発するために、hES細胞群体を1mg/mlコラゲナーゼIV型で解離させ、ペトリ皿内のLIFおよびbFGFを含まない分化培地中に懸濁した
【0047】
(骨格調製)
骨格は、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)(Boeringer Ingelheim Resomer 503H、インゲルハイム、ドイツ、Mn〜25,000)およびポリ(L−乳酸)(Polysciences、Warrington、PA、Mn〜300,000)の50/50ブレンドで構成された。15に記載されるように、スポンジは塩浸出プロセスによって製作された。細胞分化実験では、このスポンジをおよそ5×4×1mmの複数の長方形片にカットした。細胞播種に先立って、これらを70%(vol/vol)エタノールで一晩滅菌し、PBS中で3回洗浄した。
【0048】
(機械的試験)
スポンジ単独の張力試験では、乾燥したスポンジを0.4mm×5mm×11mmにトリムし、Instron 5542装置を使用して、破損するまで0.05mm/秒のひずみ速度で試験を行った。Instron5542装置を使用して、平行なプレートロードセル内で、スポンジ単独および成長因子低減MATRIGELTM)とともに圧迫試験を行った。スポンジは、厚さ0.8mm、直径17mmの多孔質のディスクとした。0.1mm/mm/秒のひずみ速度で同じひずみ速度で試験する前に、5%ひずみまで試料をはじめに同じひずみ速度で1回プレサイクルさせた。
【0049】
(基質ゲルおよび骨格上の細胞分化)
基質ゲル中の播種では、8〜9日経過のEBをトリプシン処理し、0.8×10細胞を25μLの50%(vol/vol)培地および基質ゲル中に混合した(成長因子を減少させたもの、BD Biosciences、Bedford、MA)。EB培地は次の成長因子を補充した。TGF−b1(2ng/mL)、アクチビン−A(20ng/mL)およびIGF−I(10ng/mL)(R&D Systems、Minneapolis、MN)、およびRA(300ng/ml)(Sigma)。この混合物を37℃で6ウェルペトリ皿中で凝固させ、続いて滅菌済みブレードでペトリ皿から剥がした。それぞれを4mLのEB培地に加えた。骨格上の播種では、0.8×10細胞を、50%(vol/vol)の成長因子低減MATRIGELTM)およびそれぞれのEB培地を含む25μLの混合物を使用してそれぞれの骨格内に播種した。細胞を播種後、それぞれの培地中の6ウェルペトリ皿に骨格を懸濁させた。いくつかの実験では、骨格を50のμg/mLのフィブロネクチン(Sigma)の中に1時間浸漬し、25μLのEB培地での細胞播種(基質ゲルなし)を行う前に、PBSの中で洗浄した。
【0050】
(組織処理および免疫組織化学的染色)
組織構成物を10%中性緩衝ホルマリン中で6時間固定し、常法により処理し、パラフィン中に包埋した。5−μm厚の横断切片を免疫組織化学用のシラン処理されたスライド上に置き、ヘマトキシリン‐エオジン(H&E)、トリクローム、またはサフラニン0で染色した。ReVeal緩衝液(Biocare Medical)中で事前の90℃、20分間のエピトープ回復のための加熱処理と共に、Biocare Medical Universal HRP−DABキット(Biocare Medical,Walnut Creek,CA)を使用し、製造者の指示に従って免疫組織化学的染色を行った。主要抗体は、マウス抗ヒト:デスミン(1:150)、アルファ胎児性タンパク質(1:2500)、サイトケラチン7(1:25)、CD31(1:20)、アルブミン(1:100)、ビメンチン(1:50)、S100(1:100)(全てDakoより)、抗ヒトのβIII―チューブリン(Sigma、1:500)、ネスチン(Transduction Laboratories、サンディエゴ、カリフォルニア州、1:1000)、CD34(Labvision、フリーモント、カリフォルニア州、1:20)、SSEA4(Hybridoma Bank、アイオワ大学、エイムス、1:4)。およびTra1−60(Peter Andrewsより贈与、シェフィールド大学、シェフィールド、英国、1:10)であった。対照群としてヒトおよびマウス組織(Daks)を使用し、抗体特異性(図1)を確保した。増殖試験では、固定前に10μmの5’−ブロモ−2’−デオキシウリジン(BrdUrd)(Sigma)とともに、培地を3時間インキュベートした。マウス抗−BrdUrd抗体(1:1000)を使用して組織切片を染色した。
【0051】
(サイトケラチン陽性上皮によって整列された細管嚢胞状構造の管腔径の比較)
コントロール培地またはIGFまたはRAの存在下で2週間成長させた構成物を処理し、上述のように抗サイトケラチン抗体で染色させた。細管嚢胞状構造をカウントし、管腔直径を測定し、グループ化した(大>200μm、中>40μm、小<40μm、閉鎖および多層状管腔)。結果、すなわち2回行った2つの異なる実験で得られた試料の平均値(±SD)を各試料中の管腔の総数から各群中の管腔パーセントとして記録した。
【0052】
(逆転写(RT)−PCR分析)
全RNAをRNEasyミニ・キット(Qiagen、Chatsworth、カリフォルニア州)によって単離した。10単位のRNase阻害薬(ギブコ)および40ngRNA含むQiagen OneStep RT−PCRキットを使用してRT−PCRを行った。プライマーシーケンス、反応条件、およびサイクル数は記述されたように行った7、15。臭化エチジウム(B−Gel、Invitrogen、Gaithersburg、MA)を含む1.2%アガロースゲル上で増幅生成物を分離した。GADPHプライマーを使用して増幅されたRNAを含むいくつかのゲルについて、各バンドの平均画素強度の測定、およびGADPHバンドの平均画素強度に対する測定強度の規準化により半定量的分析を行った。
【0053】
(SCIDマウス中への移植)
4週齡SCUDマウス(CB.17.SCID、Taconic Farms)の背側領域の皮下に、インビトロで2週間骨格上で成長させた分化しつつあるhES細胞を移植した。細胞なしで移植された骨格を対照群として使用した。移植14日後に、移植片を回収し、4℃で10%の緩衝化ホルマリン中に一晩固定し、パラフィンに包埋し、組織学的検査のために切片を作成した。
【0054】
(結果)
(基質ゲルのみでは、3次元hES細胞分化のための十分なサポートを提供しない)
ES細胞分化別を誘発することが知られた代表的な成長因子補給物、すなわち、レチノイン酸(RA)、アクチビン−A、トランスフォーミング増殖因子β(TGF−b)、およびインシュリン成長因子(IGF)の存在下に、以前に細胞組織化をサポートすることが示された14、15基質ゲル中で、分化しているhES細胞(EB8日)を培養した。最初に、細胞−基質ゲル混合物をディスク状に成形するが、懸濁液中で2週間培養した後に、この構造を細胞による基質ゲルの収縮を示唆する「球」状に変形させた。アクチビン−AあるいはRA(さらにある程度TGF−bを含む)のいずれかで処理された試料では、小型の濃縮された球が形成されたが、一方、IGFまたは成長因子を含まないコントロール培地で処理された試料では、より大きく濃縮が少なかった(図2A)。
【0055】
IGFまたはコントロール培地中でインキュベートされたこの球状物の組織学的検査により、上皮に整列した管状または嚢胞性構造が存在する場合があることが明らかとなった。対照的に、TGF−β、アクチビン−AあるいはRAで処理された試料では、このような構造はまったく含まれず、個々の細胞はより小さく、おおむね全面的な細胞外基質の産生がより少なかった(図2A)。アクチビン−A処理試料において最も少ない細胞生存度を示し、後者の群における球は変質しているように見受けられた。IGFまたはコントロール培地で処理した場合、基質ゲルは、開いた管腔を有する管状または嚢胞性構造の形成をサポートしたが、細胞性変性、形の変形、および球サイズの変動は全て、基質ゲルのみではhES細胞増殖および3D組織化をサポートするには不十分であることが示唆された。
【0056】
(骨格は、hES細胞収縮に耐えるために機械的支持を提供する)
生分解性骨格を使用して、hES細胞の分化および組織化を組織様構造に割り当てるために3D支持的環境を構築した。50%ポリ(乳酸−co−グリコール酸)(PLGA)および50%ポリ(L−乳酸)(PLLA)のブレンドから骨格を製造した。細胞性内殖を促進するために、PLGAは急速(およそ3週間)に分解するように選択されたが、一方、PLLAは細胞の収縮力に抵抗するために機械的剛性を提供するように選択された。細胞の播種および内殖を促進するために250−500μmの細孔径が選択された。
【0057】
骨格が細胞により印加された機械力に耐えるかどうかを判定するために、圧縮および引張試験を行った。圧縮試験はPLLA/PLGA骨格単独上で、成長因子減少基質ゲル、成長因子低減MATRIGELTM)とともに行った。結果を図2B−Cにまとめる。続いて、これらのデータを基質ゲル単独おける公表された値16と比較した(図2D)。この骨格は、高分子量PLLA骨格における従前の報告と一致した引張特性を示した(図2B、D)17。圧縮では、ポリマー骨格はおよそ65kPaの圧縮弾性率を示した。ANOVAを使用した統計分析により判定したところ(図2C、D)、基質ゲル追加により、圧縮弾性率の変化はなかった。概要表(図2D)は、骨格および基質ゲル/骨格は、基質ゲル単独における値よりも3桁オーダー高い圧縮弾性率を有することを示す。この相違は、細胞を含む骨格の性能に影響を及ぼす。110Paの推定圧縮細胞応力では、骨格が0.2%収縮し、これは本質的に収縮に抵抗することを意味している。
【0058】
(骨格はhES細胞付着成長、分化および3D組織化をサポートする)
骨格がhES細胞分化および3D組織化に有効であるか否かを判定するため、フィブロネクチンをコートした骨格に対して、フィブロネクチンをコートしたシャーレで培養した分化しているhES細胞の2週間インキュベーション、ならびに骨格を含む基質ゲルに対する基質ゲルのみにおける分化を比較した。2次元的にフィブロネクチンをコートしたシャーレは、ある細胞分化をサポートしたが(図3)、3D構造形成をサポートすることができなかった。基質ゲル単独では3D環境を形成することができたが、hES細胞増殖および3D組織化(図2)のサポートは困難であった。1つの可能性は、基質ゲル単独および基質ゲルを含む骨格の間の相違が、細胞収縮力に抵抗するために必要である骨格の機械的剛性により部分的に引き起こされる場合があることである。
【0059】
骨格で成長した構成物対EBの分化および組織化を比較すると、本発明者らは骨格上のサイトケラチン、AFP、およびネスチンなどの分化関連タンパク質のより高い発現を見いだし、これは限定された上皮性管状構造および神経管状ロゼット(図4)内におけるより多くの組織化と相関があった。細胞外基質産生に関して、TGF−βにより条件づけされたEB内ではサフラニンO染色は観察されなかった。EB集団は構造およびタンパク質の発現レベルにおいて非常に不均一であった。従って、ポリマー骨格は細胞分化と均一性の促進においてEBよりも適切と考えられる。
【0060】
基質ゲル(図5E、G)およびフィブロネクチン(図5F、H)の両者は、骨格上への分化するhES(EB8日)細胞の固定、成長および細胞生存度を促進した。異なる深さ(図5E−H)で得られた組織切片の走査型電子顕微鏡(図5A−D)および通常の組織学によって示すように、この細胞は細孔を充填し、骨格の内面および外面の全体にわたって付着した。2週間後、BrdUrdとともにインキュベートされた構成物は、骨格全体にわたり高レベルの増殖および生存度を示した(図5IK)。未分化なhES細胞で播種された骨格が外面の明瞭な穿孔を示し、さらに分化しているhES細胞(EB8日)と比較すると、骨格の中央部では均一成長および生存がより少ないという知見に基づき、未分化のhES細胞の代わりに分化しているhES細胞を使用した(図6、図12Aも参照)。
【0061】
培養期間に続いて、試料を組織構造に類似させた3Dパターンに組織化した。これらの構造を評価するために、上皮および間葉構造、および細胞外基質の形成および組織化を分析した(図7)。成長因子補充のない対照群培地(65%±4>40μm)と比較すると(P<0.01)、IGFの添加により、サイトケラチン陽性の立方体から円柱状の上皮細胞に整列した比較的大きな細管嚢胞状構造(84%±6>40μm、10%±3>200μm)の形成を引き起こす。対照的に、RAは対照試料(25%±12>40μm)よりも小さな管腔を有する構造の形成を誘発した(P<0.01)、さらに時に環状多層状または閉鎖体を生成した(図7A、C)。RA処理により、組織内のサイトケラチン陽性領域の総割合が4倍に増加し(P<0.01)、試験を行った成体の上皮組織で認められるレベル近くに到達した(図7D)。コラーゲンのためのトリクローム染色により示されるように(図7B)、細胞構造はそれらの環境内へ細胞外基質成分を分泌した。基質中のコラーゲン形成、および細胞間の基質の組織化は、成長因子の添加に著しく影響された(図7B)。対照群培地中の新しく形成さ十分に組織化されていないコラーゲンは軽度に筋原繊維性で、弱い染色性を示す。この培地へのTGFβの添加により、厚く高密度の染色帯域を有する成熟コラーゲン形成を誘発した。一方、RAはコラーゲン形成を阻害した。条件にかかわらず、骨格でサポートされた培養系での細管嚢胞状構造および細胞外基質産生は、基質ゲルのみを含む同等に処理された試料中の構造よりも大きくかつより良好に分化した。
【0062】
(生分解性高分子骨格を使用する3D中胚葉性、外胚葉性、および内胚葉性組織構造の技術)
本発明者らは、特定の中胚葉性、外胚葉性、および内皮性由来の組織構造に分化することを促進する物理的手がかりと結合した化学的手がかりに関する役割をさらに検討した。EBモデルおよび単層におけるマウスおよびヒトES細胞の分化に関する研究に基づいて6−8、特定の(複数の)胚葉に分化を誘発することが知られた成長因子を選択した。
【0063】
中胚葉性組織形成を誘発するために、TGF−β、アクチビン−A、あるいはTGF−βおよびアクチビン−Aの組み合わせとともに2週間細胞をインキュベートした。軟骨細胞外基質に特徴づけられるグリコサミノグリカン(GAG)のための高レベルのサフラニンO染色18によって示唆されるように(図8)、この培地へのTGF−βの添加は、全構成物にわたる軟骨組織の形成を誘発した。対照的に、アクチビン−A(TGF−βとともに添加された場合でも)、IGF、およびRAなどの他の成長因子の添加は、サフラニン0陽性基質の形成を誘発しなかった(図8)。異なる構成物から抽出されたRNAのRT−PCR分析では、他の試料と比較すると、TGF−βで処理された試料中で高レベルの軟骨基質タンパク質(CMP)発現が示唆された(図9A)。本発明者の知る限りでは、これらの結果は、分化するhES細胞を使用して3D軟骨状組織が形成されたことを初めて示すものである。
【0064】
アクチビン−AあるいはIGFの添加は両者ともに、肝臓に成長する生化学的特徴を有する構造の形成を誘発した。対照群との比較では、アクチビン−Aは、試料の全体にわたり高レベルのα胎児性タンパク質(AFP)およびアルブミンを誘発した。IGFは、構成物内の限定された領域において高レベルのAFPおよびアルブミンを誘発した(図8)が、RAの添加により染色は観察されなかった。これらの結果は、骨格にサポートされたhES3D構成物内では、アクチビン−AおよびIGFは、肝臓が生育する場合と同様に血液生化学的プロフィールにより組織の内胚葉性分化および形成を誘発させることができる。遺伝子発現分析では、アクチビン−Aで処理された組織構成物中では、他の成長因子(図9B)よりも、より高レベルの膵臓遺伝子PDX−1発現が示唆され、ポリマー骨格上の内胚葉性派生組織へのhES細胞の分化を誘発する際のアクチビン−Aの役割をさらにサポートした。
【0065】
外胚葉性構造では、構成物培地7、8、19にRAを加えた。他の成長因子との比較において、RA補充により、上皮に整列した固く小管状の構造の優先的な生成が生じた(図7)。さらに、神経マーカーによる染色により、この細胞は、ネスチンおよびβIII−チューブリンに陽性である単層状または大きな多層状神経性管状ロゼット構造を組織化していることが分かった。ロゼットの特徴のない大面積は、ネスチンおよびβIII―チューブリン(図8)において陽性に染色された。グリア細胞、および他の神経外胚葉性細胞のためのマーカーであるS−100のために染色された細胞は、この管のうちのいくつかを包囲し、支持性または移動性表現型が示唆された。RAで処理された試料の遺伝子発現分析では、他の試料とは対照的に、高レベルのケラチンおよび神経フィラメントRNAを発現し、また中胚葉性および内胚葉性の遺伝子の発現は非常に低かった(図9)。これらの結果は、RAは、高次構造形態を生じ、さらに神経組織と生化学的に一致する傾向を有し、ポリマー骨格上で成長したhESの外胚葉性分化を誘発することを示している。
【0066】
基質ゲル単独で形成された組織構造の分析では、化学的要因は骨格で観察されたほど分化を誘発しなかったことが分かった。RAの存在下で小管状およびロゼット状構造を形成する代わりに、基質ゲル上の細胞は小さなクラスター中で組織化され、また(たとえ発現していても)ネスチンの発現は非常に低い。アクチビン−A処理された基質ゲル試料中では、AFP発現は観察されなかった。IGFおよび対照試料では、いくつかのAFP染色を観察することができた。TGF−β処理試料中では、軟骨派生GAGのSafanin−0染色は観察されなかった(図2)。これらの結果は、骨格はインビトロで3次元の軟骨、肝臓、および神経類似組織の形成を促進することに影響力があることを示している。
【0067】
(インビトロでの3次元組織構成物の血管新生)
血管が複合組織構造20−22の形成を促進するので、骨格に形成された組織構造内で血管内において、hES細胞が分化し組織化することができるかどうかを分析した。CD34およびCD31に対する抗体による染色では、骨格との2週間の培養期間の後、細胞は内皮細胞へ分化し、さらに組織の全体にわたり血管様の構造に組織化されることが分かった。細胞の3D培養株は、周囲の組織と密接に相互作用した大量の3D血管ネットワークの形成を促進した(図10)。基質ゲルの存在下および非存在下における骨格内の血管新生の比較では、フィブロネクチンコート骨格(基質ゲルなし)上に播種された試料は、高度の内皮性分化および血管新生を生じたので、基質ゲルは不要であることが分かった(図10)。興味深いことに、RNA分析で示されるように(図9および10)、RAで処理された試料は、(CD34およびCD31で免疫染色することにより示唆された)血管形成も、CD34またはCD31遺伝子の発現も認められなかった。伸長された平滑筋様細胞も検出された。これらは組織内のいくつかの管腔のまわりで組織化されたが、RAで処理された試料中では組織化されなかった(図10)。これらの結果は、ポリマー骨格上で成長した分化しているhES細胞は分化し、血管新生化された複合組織構造を形成することができることを示す。更に、骨格の物理的ガイダンスにより提供されたこのインビトロの血管新生プロセスは、培地へ成長因子を添加することによってコントロールすることができる。
【0068】
(インビボにおける2週間後の3次元組織構成物の評価)
hES派生ポリマー骨格構成物の治療可能性を分析するために、SCIDマウスの皮下組織に2週齡の構成物を外科的に移植した。移植片回収時(移植後14日)では、構成物内の細胞は生存可能であり、感染の徴候は検出されなかった。移植片は、緩い線維肉芽腫性の結合組織により不完全に被包化され、宿主血管が浸透していた。ヒト特異性CD31抗体を使用する免疫組織化学的染色により、構成物全体にわたり免疫反応性(構成物、図11、矢印)および非免疫反応性(宿主、図11、矢じり)血管の両方の存在が明らかとなった。さらに、構成物派生血管は腔内赤血球を含み、宿主血管性anastamosisが示唆された。サイトケラチン、βIII−チューブリン、およびAFP抗体による免疫染色では、移植された構成物は、骨格領域(図11)内の限定構造中のこれらのヒトタンパク質を発現し続けていることが示唆された(図11)。ある場合には、移植後の構成物の分化および組織化が継続していると考えられ、これは移植前の特定のサイトカイン処置によって影響された。
【0069】
インビボにおいて継続的な構成物成熟後、RAに条件付けされた構成物は、豊富なメラニン顆粒(H&Eセクション中の褐色/黒色、過マンガン酸カリウム染色によって確認された、データなし)を有する上衣細胞およびロゼットに類似する長い繊毛に被われた高い円柱上皮によって整列された小管状構造を含み、インビトロ(あるいはインビトロ、またはインビボにおけるコントロール培地)で観察されたものよりも大きく良好に組織化された神経構造を呈した。βIII−チューブリン抗体は、移植片内の神経外胚葉性構造、ならびに結合組織を包囲するマウスの末梢神経線維を染色した(図11、アステリスク)。SSEA−4およびTra1−60抗体による染色では、未分化の細胞は残ってないことが分かった(図12B)。
【0070】
(考察)
物理的環境および適切な成長因子補充の両者は、ヒト組織様3D構造の形成において重要である。本発明者らは、ポリマー骨格上で成長させたhES細胞を使用して、インビトロでヒト軟骨、肝臓、神経、および血管の発生と一致する形態学的および生化学的の特徴を有する組織の形成をインビトロで実証した。骨格は分化された組織の形成を促進することが分かった。線維芽細胞の収縮力を使用して、骨格上の細胞性挙動をモデル化すると、細胞性応力は110Paと見積もられた。この応力下では、基質ゲルは700パーセント収縮するが、一方骨格はわずか0.2パーセント収縮するのみと予想され、本質的に骨格は収縮しないことを意味している。しかしながら、細胞型に依存して、細胞は異なる収縮力を表示する場合がある。さらに、化学的環境は細胞の機械的挙動にも影響を及ぼす。成長因子が幹細胞などの細胞の機械的挙動に影響を及ぼすことが示された23−26。これは同じ成長因子条件(IGF、あるいはコントロール培地)下でなぜ基質ゲルが収縮しなかったのかを説明しているが、他の条件下では完全に崩壊した(アクチビン−A、RA)(図2)。同じ成長因子補充により細胞を骨格で成長させた場合、3D組織構造(血管ネットワーク、神経管状構造などの)への組織化とともに多様な特定の細胞系列(内皮、神経、肝細胞など)への一層の分化が誘発された(図8−10)。これらの所見は、化学的および物理的手がかり(例えば、骨格によって提供された機械的サポート)がES細胞の複合組織への分化に影響を及ぼすことを示唆している。
【0071】
成長因子の影響は、直接分化あるいは増殖の促進または抑制による、あるいは特定の細胞型のアポトーシスの誘発による細胞選択により生じる可能性がある。例えば、細胞を骨格上に播種した場合、RA処理は上皮および神経様構造への特定の分化を誘発し、および中胚葉および内胚葉性分化は抑制的に作用した(図8−10)。肝分化を特徴付ける2つの主要なタンパク質であるAPPおよびアルブミンによる免疫染色27,28、および膵遺伝子PDX−1の発現29により示されるように、骨格上で成長したhES細胞へのアクチビン−Aの添加は、有意な内胚葉性分化を誘発した(図8および9)。アクチビン−Aは主として中胚葉性因子として知られ6、30、hES単層細胞系では、試験された内胚葉(APPおよびアルブミンを含む)または外胚葉性遺伝子の発現なしに、主に中胚葉(主に筋肉)分化を誘発することが示された。しかしながら、アクチビン−Aが内胚葉の分化を誘発できることを示す報告書が存在する31−33。hES細胞分化に対するアクチビン−Aの効果に、適用のタイミング(EB8日対5日)あるいは3次元性が影響を及ぼしている可能性がある。2つのシステム間のアクチビン−Aにおけるこの相違に関する別の説明は、3D構造が組織血管新生(中胚葉性分化を可能とした状態で)をサポートしているという事実に起因する可能性が挙げられる。内皮細胞および新生血管(血管機能に先立つ)が肝臓および膵臓の発生にとって重要な誘発信号を提供することが最近示された34、35。したがって、骨格上の血管ネットワークの形成は、内胚葉分化へのアクチビン−Aの誘発効果をサポートすることができる。
【0072】
これらの結果は、インビトロで早期に分化しているhES細胞を使用することにより、多様な委任胚組織の特徴を有する複合構造を産生することができることを示しており、さらにPLLA/PLGAポリマー骨格などの支持的3D環境においてそれらの分化を誘発することを示唆している。インビボ結果により、骨格支持hES構成物は少なくとも2週間の生存可能が維持されており、構成物を補充し、宿主血管系によりanastamoseされ、さらにインビボでは完全性が維持され、あるいは試験を継続中であるが、インビトロにおいて分化パターンが誘発されていることが分かった。インビトロにおけるヒト組織の成長は、移植医学において重大な課題となっている器官不足および感染症リスクに対処するために有望である。可能性のある臨床応用に加えて、インビトロでの組織形成は古代人発生および器官形成を研究するための重要なツールを提供する可能性がある。
【0073】
【化1】

【0074】
【化2】

【0075】
【化3】

【0076】
【化4】

本発明の他の実施形態は、本明細書に開示された本発明の明細または実施例を考慮することにより当業者において明白である。本発明の明細および実施例は代表的なもののみを考慮するよう配慮されており、本発明の真の範囲および精神は以下の請求の範囲によって示される。
【図面の簡単な説明】
【0077】
本発明は、以下に示すいくつかの図の参照によって記述される。
【図1】図1は、特異性および最適な希釈を判定するためそれらに特徴的なタンパク質に対する抗体、組織学的染料により染色された対照群組織の光学顕微鏡写真を含む。(AおよびB)ネスチン、マウス性脳(胚齢17日)、(C)βIII−チューブリン、マウス皮下、(D)サイトケラチン−7、ヒト肺、(E)インシュリン、ヒト膵臓、(F)βIII−チューブリン、マウス脳、(G)ビメンチン、ヒトの扁桃腺、(H)平滑筋アクチン、ヒトの扁桃腺、(I)CD34、ヒトの扁桃腺、(J)CD31、ヒトの扁桃腺、(K)アルブミン、肝臓、(L)α−胎児性タンパク質(AFP)、成体肝臓、(M)サフラニンO、繊維軟骨。
【図2A】図2Aは、トランスフォーミング増殖因子β(TGF)、アクチビン−A(ACT)、レチノイン酸(RA)インシュリン成長因子(IGF)、あるいは成長因子なし(CON)の下で、基質ゲルと混合され、2週間成長させた分化しているhES細胞(EB8日)の光学顕微鏡写真を含む。左のパネル、形成された「球」の暗視野像(スケールバー=1mm)。中央および右パネル、H&Eで染色された試料の組織学的切片。下部、基質ゲル中でサフラニンO(SafO)、および抗−AFP、および抗ネスチン抗体により形成された「球」の断面の組織化学的および免疫染色(スケールバー=100μm)。
【図2B】図2B−Dは、基質ゲルの有無によるPLGA/PLA骨格の機械試験結果を示す。抗張力試験(B)および圧縮試験(C)結果を基質ゲル(D)と比較してまとめる。
【図2C】図2B−Dは、基質ゲルの有無によるPLGA/PLA骨格の機械試験結果を示す。抗張力試験(B)および圧縮試験(C)結果を基質ゲル(D)と比較してまとめる。
【図2D】図2B−Dは、基質ゲルの有無によるPLGA/PLA骨格の機械試験結果を示す。抗張力試験(B)および圧縮試験(C)結果を基質ゲル(D)と比較してまとめる。
【図3】図3は、トリプシン処理された8日齢胚様体(EB)より単離され、フィブロネクチンコートプレート上で播種され、トランスフォーミング増殖因β(TGF)、アクチビン−A(ACT)、レチノイン酸(RA)、インシュリン様成長因子(IGF)、血管内皮細胞増殖因子(VEOF)、あるいはコントロール培地(CON)の存在下で2週間成長させ、高濃度イオウケラチン(ケラチン)、神経フィラメントH鎖(NFH)、軟骨基質タンパク質(CMP)、α胎児性タンパク質(AFP)、PDX−1、およびRNAの上のGAPDHのためのプライマーを使用したRT−PCRの結果を示すゲル写真である。
【図4】図4は、コントロール培地(CON)、またはレチノイン酸(RA)、インシュリン様成長因子(IGF)を補充した培地でさらに2週間培養し、さらにヒトサイトケラチン、α−胎児性タンパク質、およびネスチンに対する抗体で染色したhEBs(8日)から得られた5μm厚切片の光学顕微鏡写真を含む(スケールバー=200μm)。
【図5】図5A−Dは、骨格への細胞付着を示す分化するhES細胞を含まない(A)、含む(B−D)PLLA/PLGA骨格の異なる倍率における走査型電子顕微鏡写真である(スケールバー:A、B=1mm、C=50μm、D=200μm)。図5E−Hは、ヘマトキシリン‐エオジン(H&E)で染色されたPLLA/PLGA骨格の光学顕微鏡写真を含む。基質ゲルを有する骨格上の細胞を播種する工程(E、G)により、あるいは骨格をフィブロネクチンでコートする工程(F、H)によりhES細胞は骨格上に播種された(スケールバー=50μm)。図5I−Kは、2週間の培養、BrdUrdによるインキュベーション、および抗−BrdUrd抗体(褐色)による染色後のPLLA/PLGA骨格上のhES細胞の増殖を示す[倍率(I)下(X100)、上(J−K)(X1000)](スケールバー=50μm)。
【図6】図6は、基質ゲルで混合し、PLLA/PLGA骨格上で播種し、2週間培養し、さらにH&Eまたはヒトα胎児性タンパク質(AFP)、ネスチン、あるいはβIII−チューブリンに対する抗体で染色した未分化の(undiff)、あるいは分化しているhES細胞[胚様体(EB)8日](diff)の顕微鏡写真を含む(x400以外はオリジナル倍率、x200)。
【図7】図7Aは、コントロール培地(CON)の中、あるいはインシュリン成長因子(IGF)またはレチノイン酸(RA)の存在下で2週間成長させ、切片を作成し、抗サイトケラチン抗体(赤色)、抗ビメンチン抗体(緑色)、核染色(青色)用のDAPIで染色されたhES細胞骨格構成物の光学顕微鏡写真を含む(スケールバー=100μm)。図7Bは、コントロール培地(CON)の中、あるいはトランスフォーミング増殖因子−β(TGFb)あるいはレチノイン酸(RA)の存在下で2週間成長させ、切片を作成し、コラーゲン用トリクローム(青色)で染色されたhES細胞骨格構成物の光学顕微鏡写真を含む(スケールバー=100μm)。図7Cは、コントロール培地中、あるいはIGFまたはRAの存在下で2週間成長させ、構成物中のサイトケラチン陽性上皮により整列させた細管嚢胞状の構造の管腔径を比較したグラフである。図7Dは、2回実施された2つの異なる実験で得られた試料からの組織切片、および正常なヒト肺組織(上皮)の切片の抗サイトケラチン抗体で陽染色された領域(陽染色の割合)の割合を示すグラフである(バーは平均値+/標準偏差を示す)。
【図8】図8Aは、コントロール培地(CON)、あるいはTGF−β(TGF)、アクチビン−A(ACT)、レチノイン酸(RA)、インシュリン成長因子(IGF)あるいはTGF−βおよびアクチビン−A(TGF/ACT)の組み合わせで補充された培地で2週間インキュベートされたhES構成物から得られ、サフラニン0(saf0)、またはヒトAFP、アルブミン、ネスチン、βIII−チューブリン、およびS−100に対する抗体で染色された組織切片の免疫染色を示す(スケールバー=50μm)。図8Bは、2回実施された3つの異なる実験で得られた試料からの組織切片の指示された染料または抗体で陽染色された領域(陽染色の割合)の割合を示すグラフである(バーは平均値+/標準偏差を示す)。
【図9】図9Aは、TGF−β(TGF)、アクチビン−A(ACT)、RA、IGF、あるいはコントロール培地(CON)の存在下で2週間成長させた組織構成物から単離された、高濃度イオウケラチン(ケラチン)、神経フィラメントH鎖(NFH)、軟骨基質タンパク質(CMP)、α胎児性タンパク質(AFP)、PDX−1、RNAの上のCD34およびGAPDHのためのプライマーを使用したRT−PCRの結果を示すゲル写真である。図9Bは、遺伝子発現の半定量的分析に基づいた3D構成物中の組織特異性遺伝子の発現における多様な成長因子の影響に関する概要図である(+=低い発現;++++=最も高い発現)。
【図10】図10Aは、基質ゲル(s+m)を有する、あるいは骨格をフィブロネクチン(s+fn)でコートした後のPLLA/PLGA骨格上に播種され、コントロール培地(CON)、またはTGF−β(TGF)、アクチビン−A(ACT)、RA、あるいはIGFで補充された培地中でインキュベートされ、続いて2週間インキュベーション、固定し、切片を作成し、抗−CD31、抗−CD34、あるいは抗平滑筋アクチン(SMA)抗体を使用して免疫染色された分化しているhES細胞(EB8日)の一連の光学顕微鏡写真である(スケールバー=50μm)。図10Bは、図10Aで述べた構成物における陽染色の割合(組織切片内の抗体陽性の細胞の面積)を示すグラフである(値は、5つの異なる試料切片の平均値(±SD)を反映する)。
【図11】図11は、SCIDマウスへ移植された2週間経過のhES−骨格構成物のH&EまたはヒトCD31、サイトケラチン、AFP、あるいはβIII−チューブリンに対する抗体で染色された光学顕微鏡写真を含む(スケールバー=50μm)。
【図12】図12Aは、分化するヒト胚性幹(hES)細胞[胚様体(EB)8日]および基質ゲルを播種されたPLLA/PGLA骨格のヒトデスミン、ミオゲニン、およびインシュリンに対する抗体で染色された試料切片(2週間後)の顕微鏡写真を含む。構成物中にいくつかの伸長された細胞と共にデスミン陽性細胞が認められた。構成物中にミオゲニン細胞は認められなかった。インシュリン陽性細胞は非常にまれであった。図12Bは、対照群として寄与する1日(ES1日)間骨格に播種された未分化のhES細胞と共に、重症複合免疫不全(SCID)マウスの背側領域の皮下に移植された2週間経過のインビボで14日後にTra1−60およびSSEA−4に対する抗体で染色した構成物の顕微鏡写真を含む。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織工学構築物であって、以下:
胚性幹細胞;
3次元細胞支持基質であって、該幹細胞によって生じた収縮力に抵抗性である其質;および
所定の細胞系列に沿って、または特定の細胞型への幹細胞分化を促進するために選択された、少なくとも1つの成長因子、
を含む、組織工学構築物。
【請求項2】
前記幹細胞が、哺乳動物胚性幹細胞である、請求項1に記載の組織工学構築物。
【請求項3】
前記細胞が、ヒト胚性幹細胞である、請求項2に記載の組織工学構築物。
【請求項4】
前記細胞支持基質が、ポリ(乳酸)−ポリ(乳酸−co−グリコール酸)混合物を含む、請求項1に記載の組織工学構築物。
【請求項5】
前記細胞支持基質が、ポリ(L−乳酸)およびポリ(乳酸−co−グリコール酸)の50/50混合物を含む、請求項4に記載の組織工学構築物。
【請求項6】
前記胚性幹細胞によって生じた収縮力の下で、前記基質の断面積が50%をこえて減少しない、請求項1に記載の組織工学構築物。
【請求項7】
前記胚性幹細胞によって生じた収縮力の下で、前記基質の断面積が40%をこえて減少しない、請求項6に記載の組織工学構築物。
【請求項8】
前記胚性幹細胞によって生じた収縮力の下で、前記基質の断面積が30%をこえて減少しない、請求項7に記載の組織工学構築物。
【請求項9】
前記胚性幹細胞によって生じた収縮力の下で、前記基質の断面積が20%をこえて減少しない、請求項8に記載の組織工学構築物。
【請求項10】
前記胚性幹細胞によって生じた収縮力の下で、前記基質の断面積が10%をこえて減少しない、請求項9に記載の組織工学構築物。
【請求項11】
前記胚性幹細胞によって生じた収縮力の下で、前記基質の断面積が1%をこえて減少しない、請求項10に記載の組織工学構築物。
【請求項12】
前記細胞支持基質が、細胞接着を促進する薬剤を含むコーティングをさらに有する、請求項1に記載の組織工学構築物。
【請求項13】
細胞接着を促進する前記薬剤が、細胞接着を促進するフィブロネクチン、インテグリン、およびオリゴヌクレオチドから選択される、請求項12に記載の組織工学構築物。
【請求項14】
前記細胞支持基質が生分解性、または非生物分解性である、請求項1に記載の組織工学構築物。
【請求項15】
前記細胞支持基質が、PLA、PGA、PLGA、ポリ(無水物)、ポリ(ヒドロキシ酸)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(プロピルフメレート)、ポリ(カプロラクトン)、ポリアミド、ポリアミノ酸、ポリアセタール、生分解性ポリシアノアクリレート、生分解性ポリウレタン、多糖類、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリスチレン、ポリエステル、非生物分解性ポリウレタン、ポリ尿素、ポリ(エチレン酢酸ビニル)、ポリプロピレン、ポリメタクリレート、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリ(エチレンオキシド)、上記のうちの任意のコポリマー、上記のうちの任意の付加物、および上記のうちの任意のポリマーの混合物、コポリマー、および相互の付加物から選択される、請求項14に記載の組織工学構築物。
【請求項16】
前記細胞支持基質内に配置された生体分子、低分子、または生理活性薬剤を1つ以上さらに含む、請求項1に記載の組織工学構築物。
【請求項17】
前記細胞支持基質の内面および外面をコートするゲルをさらに含む、請求項1に記載の組織工学構築物。
【請求項18】
前記ゲルが、コラーゲンゲル、アルギン酸塩、寒天、および成長因子低減MATRIGELTMから選択される、請求項17に記載の組織工学構築物。
【請求項19】
前記ゲルが、ラミニン、フィブリン、フィブロネクチン、プロテオグリカン、糖タンパク質、グリコサミノグリカン、走化性薬剤、または成長因子の1つ以上をさらに含む、請求項18に記載の組織工学構築物。
【請求項20】
前記成長因子が、サイトカイン、エイコサノイド、および分化因子から選択される、請求項1に記載の組織工学構築物。
【請求項21】
前記成長因子が、アクチビン−A(ACT)、レチノイン酸(RA)、上皮細胞成長因子、骨形態形成タンパク質、TGF−β、肝細胞増殖因子、血小板由来成長因子、TGF−α、IGF−IおよびIGF−II、造血成長因子、ヘパリン結合性増殖因子、ペプチド成長因子、エリスロポエチン、インターロイキン、腫瘍壊死因子、インターフェロン、コロニー刺激因子、繊維芽細胞成長因子、神経成長因子(NGF)、および筋肉形態発生因子(MMF)から選択される、請求項20に記載の組織工学構築物。
【請求項22】
前記細胞支持基質が、粒子、管、スポンジ、球、鎖、巻かれた鎖、毛細管網、フィルム、線維、メッシュ、およびシートから選択される形状を有する、請求項1に記載の組織工学構築物。
【請求項23】
組織工学構築物を製造する方法であって、該方法は、以下:
胚性幹細胞の集団を提供する工程;
細胞支持基質上に胚性幹細胞を播種する工程;および
所定の細胞系列に沿って、または特定の細胞型に幹細胞の分化を促進するために選択された少なくとも1つの薬剤に胚性幹細胞を暴露する工程を包含し、
ここで、該曝露工程を該播種工程の前もしくは後、またはその両方で行い得る、
方法。
【請求項24】
前記胚性幹細胞が、哺乳動物の胚性幹細胞である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記胚性幹細胞が、ヒト胚性幹細胞である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記細胞支持基質が、3次元である、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記胚性幹細胞によって生じた収縮力の下で、前記基質の断面積が50%をこえて減少しない、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記胚性幹細胞によって生じた収縮力の下で、前記基質の断面積が40%をこえて減少しない、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記胚性幹細胞によって生じた収縮力の下で、前記基質の断面積が30%をこえて減少しない、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記胚性幹細胞によって生じた収縮力の下で、前記基質の断面積が20%をこえて減少しない、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記胚性幹細胞によって生じた収縮力の下で、前記基質の断面積が10%をこえて減少しない、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記胚性幹細胞によって生じた収縮力の下で、前記基質の断面積が1%をこえて減少しない、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記細胞支持基質が、ポリ(乳酸)−ポリ(乳酸−co−グリコール酸)混合物を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項34】
前記細胞支持基質が、ポリ(L−乳酸)およびポリ(乳酸−co−グリコール酸)の50/50混合物を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
細胞接着を促進する薬剤で細胞支持基質をコーティングする工程をさらに包含する、請求項23に記載の方法。
【請求項36】
細胞接着を促進する前記薬剤は、細胞接着を促進するフィブロネクチン、インテグリン、およびオリゴヌクレオチドから選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記細胞支持基質が生分解性または非生物分解性である、請求項23に記載の方法。
【請求項38】
前記細胞支持基質が、PLA、PGA、PLGA、ポリ(無水物)、ポリ(ヒドロキシ酸)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(プロピルフメレート)、ポリ(カプロラクトン)、ポリアミド、ポリアミノ酸、ポリアセタール、生分解性ポリシアノアクリレート、生分解性ポリウレタン、多糖類、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリスチレン、ポリエステル、非生物分解性ポリウレタン、ポリ尿素、ポリ(エチレン酢酸ビニル)、ポリプロピレン、ポリメタクリレート、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリ(エチレンオキシド)、上記のうちの任意のコポリマー、上記のうちの任意の付加物、および上記のうちの任意のポリマーの混合物、コポリマー、および相互の付加物から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項39】
1つ以上の生体分子、低分子、および生理活性薬剤を前記細胞支持基質へ添加する工程をさらに包含する、請求項23に記載の方法。
【請求項40】
請求項23に記載の方法であって、該方法は、ゲル内に前記胚性幹細胞を配置する工程をさらに包含し、ここで、前記細胞支持基質上に該胚性幹細胞を播種する工程は、該ゲルを該細胞支持基質の内面および外面上に配置する工程を包含する、方法。
【請求項41】
前記ゲルが、コラーゲンゲル、アルギン酸塩、寒天、および成長因子低減MATRIGELTMから選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記ゲルが、1つ以上のラミニン、フィブリン、フィブロネクチン、プロテオグリカン、糖タンパク質、グリコサミノグリカン、走化性薬剤、および成長因子をさらに含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
培養工程が、無血清培地中で行なわれる、請求項23に記載の方法。
【請求項44】
前記薬剤が、成長因子、機械力、電圧、生理活性薬剤、生体分子、および低分子から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項45】
前記成長因子が、サイトカイン、エイコサノイド、および分化因子から選択される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記成長因子が、アクチビン−A(ACT)、レチノイン酸(RA)、上皮細胞成長因子、骨形態形成タンパク質、TGF−β、肝細胞増殖因子、血小板由来成長因子、TGF−α、IGF−IおよびIGF−II、造血成長因子、ヘパリン結合性増殖因子、ペプチド成長因子、エリスロポエチン、インターロイキン、腫瘍壊死因子、インターフェロン、コロニー刺激因子、繊維芽細胞成長因子、神経成長因子(NGF)、および筋肉形態発生因子(MMF)から選択される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記機械力が、フープ応力、剪断応力、静水圧応力、圧縮応力、引張り応力、および上記の組み合わせから選択される、請求項44に記載の方法。
【請求項48】
前記細胞支持基質が、粒子、管、スポンジ、球、鎖、巻かれた鎖、毛細管網、フィルム、線維、メッシュおよびシートからから選択される形状を有する、請求項23に記載の方法。
【請求項49】
提供する工程が、成長因子の存在下で胚性幹細胞を培養する工程を包含する、請求項23に記載の方法。
【請求項50】
培養する工程が、無血清培地中で行なわれる、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
組織工学構築物であって、以下:
胚性幹細胞;
ポリ(L−乳酸)およびポリ(乳酸−co−グリコール酸)の50/50混合物を含む3次元細胞支持基質;ならびに、
TGF−β、
を含む、組織工学構築物。
【請求項52】
組織工学構築物であって、以下:
胚性幹細胞;
ポリ(L−乳酸)およびポリ(乳酸−co−グリコール酸)の50/50混合物を含む3次元細胞支持基質;ならびに、
アクチビンA、IGF、および上記の任意の組み合わせのメンバー、
を含む、組織工学構築物。
【請求項53】
組織工学構築物であって、以下:
胚性幹細胞;
ポリ(L−乳酸)およびポリ(乳酸−co−グリコール酸)の50/50混合物を含む3次元細胞支持基質;ならびに、
レチノイン酸、
を含む、組織工学構築物。
【請求項54】
前記細胞支持基質が、フィブロネクチンまたは成長因子低減MATRIGELTMの1つ以上をさらに含む、請求項51、52、または53に記載の組織工学構築物。
【請求項55】
組織発生を促進する方法であって、以下;
胚性幹細胞の集団を提供する工程;
ポリ(L−乳酸)およびポリ(乳酸−co−グリコール酸)の50/50混合物を含む細胞支持基質上に胚性幹細胞を播種する工程;ならびに、
TGF−βに胚性幹細胞を曝露する工程を包含し、
ここで、該細胞は、軟骨組織を産生する、方法。
【請求項56】
組織発生を促進する方法であって、以下:
胚性幹細胞の集団を提供する工程;
ポリ(L−乳酸)およびポリ(乳酸−co−グリコール酸)の50/50混合物を含む細胞支持基質上に胚性幹細胞を播種する工程;ならびに、
該胚性幹細胞を1つ以上のアクチビンAおよびIGFに曝露する工程を包含し、、
ここで、該細胞は、α胎児性タンパク質およびアルブミンを産生する、方法。
【請求項57】
組織発生を促進する方法であって、以下:
胚性幹細胞の集団を提供する工程;
ポリ(L−乳酸)およびポリ(乳酸−co−グリコール酸)の50/50混合物を含む細胞支持基質上に胚性幹細胞を播種する工程;ならびに、
該胚性幹細胞をレチノイン酸に曝露する工程を包含し、
ここで、該細胞は、神経組織構造を発生する、方法。
【請求項58】
前記細胞支持基質が、1つ以上のフィブロネクチンまたは成長因子低減MATRIGELTMをさらに含む、請求項55、56または57に記載の方法。
【請求項59】
曝露工程は、2週間インビトロで播種された細胞支持基質を培養する工程を包含し、前記方法は、播種された細胞支持基質を、動物に移植する工程をさらに包含する、請求項55、56または57に記載の方法。
【請求項60】
組織発生を促進する方法であって、以下:
胚性幹細胞の集団を提供する工程;
細胞支持基質上に該胚性幹細胞を播種する工程;
所定時間の間、成長因子の存在下で、該播種された細胞支持基質を培養する工程、および
動物に前記培養細胞支持基質を移植する工程、
を包含する、方法。
【請求項61】
前記細胞支持基質が、PLA、PGA、PLGA、ポリ(無水物)、ポリ(ヒドロキシ酸)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(プロピルフメレート)、ポリ(カプロラクトン)、ポリアミド、ポリアミノ酸、ポリアセタール、生分解性ポリシアノアクリレート、生分解性ポリウレタン、多糖類、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリスチレン、ポリエステル、非生物分解性ポリウレタン、ポリ尿素、ポリ(エチレン酢酸ビニル)、ポリプロピレン、ポリメタクリレート、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリ(エチレンオキシド)、上記のうちの任意のコポリマー、上記のうちの任意の付加物、および上記のうちの任意のポリマーの混合物、コポリマー、および相互の付加物から選択される、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記3次元細胞支持基質が、ポリ(L−乳酸)およびポリ(乳酸−co−グリコール酸)の50/50混合物を含む、請求項60に記載の方法。
【請求項63】
細胞接着を促進する薬剤で前記細胞支持基質をコーティングする工程をさらに包含する、請求項60に記載の方法。
【請求項64】
細胞接着を促進する薬剤が、細胞接着を促進するフィブロネクチン、インテグリン、およびオリゴヌクレオチドから選択される、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
請求項60に記載の方法であって、ゲル内に前記胚性幹細胞を配置する工程をさらに包含し、前記細胞支持基質上に該胚性幹細胞を播種する工程が、該ゲルを該細胞支持基質の内面および外面上に配置する工程を包含する、方法。
【請求項66】
前記ゲルが、コラーゲンゲル、アルギン酸塩、寒天、および成長因子低減MATRIGELTMから選択される、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記ゲルが、1つ以上のラミニン、フィブリン、フィブロネクチン、プロテオグリカン、糖タンパク質、グリコサミノグリカン、走化性薬剤、および成長因子をさらに含む、請求項65に記載の方法。
【請求項68】
前記成長因子が、アクチビン−A(ACT)、レチノイン酸(RA)、上皮細胞成長因子、骨形態形成タンパク質、TGF−β、肝細胞増殖因子、血小板由来成長因子、TGF−α、IGF−IおよびIGF−II、造血成長因子、ヘパリン結合性増殖因子、ペプチド成長因子、エリスロポエチン、インターロイキン、腫瘍壊死因子、インターフェロン、コロニー刺激因子、繊維芽細胞成長因子、神経成長因子(NGF)、および筋肉形態発生因子(MMF)から選択される、請求項60に記載の方法。
【請求項69】
前記所定の期間が、2週間である、請求項60に記載の方法。
【請求項70】
培養が、無血清培地中で行なわれる、請求項60に記載の方法。

【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2006−518993(P2006−518993A)
【公表日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−511760(P2005−511760)
【出願日】平成15年12月10日(2003.12.10)
【国際出願番号】PCT/US2003/039301
【国際公開番号】WO2004/053096
【国際公開日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(504348998)マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー (10)
【出願人】(504350289)テックニオン リサーチ アンド デベロップメント ファウンデーション, リミテッド (1)
【Fターム(参考)】