説明

分岐型ヘテロポリエチレングリコールおよび中間体

【課題】さまざまな生体機能物質と反応可能な2種の官能基を有しており、かつ一方の官能基を複数持った分岐型ヘテロポリエチレングリコール化合物を提供することである。
【解決手段】 式[1]で示される分岐型ヘテロポリエチレングリコール。
【化1】
(X、Yは,それぞれ、生体機能性分子に存在する官能基と反応して共有結合を形成する官能基を少なくとも含む原子団であり、原子団Xが含む前記官能基と原子団Yが含む前記官能基とは互いに異なっている。 sは、ポリエチレングリコール鎖の本数を表す2〜8の整数である。 nは、ポリエチレングリコール鎖の平均付加モル数であり、20≦n≦2000である。Eは、ポリエチレングリコール鎖に対してs価の結合価数を有し、官能基Yに対して1価の結合価数を有する分岐リンカー部位である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分岐型ヘテロポリエチレングリコールに関する。更に詳しくは、本発明は、生体機能性分子、ドラッグデリバリーシステムにおける薬物または薬物キャリア、または診断用材料やデバイスなどの修飾に用いられる分岐型ヘテロポリエチレングリコール化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレングリコールは、それ自体の毒性や抗原性が低く、また水や多くの有機溶媒に対して優れた溶解性を持つ。よって、その末端に反応性の官能基を導入した末端活性化ポリエチレングリコール化合物は、ドラッグデリバリーシステムにおける薬物や薬物キャリアの体内でのステルス性の付与や可溶化、材料表面の生体適合性の向上など、さまざまな機能付与のために広く使用されている。この中で、直鎖状のポリエチレングリコールの二つの末端にそれぞれ異なる反応性を持った官能基を有する、いわゆるヘテロ二官能性ポリエチレングリコールは、それぞれの末端に異なる分子、例えば薬物、生理活性物質、標的指向物質などの生体機能性分子を導入することが可能である。よって、これらの生体機能性分子同士や、生体機能性分子と各種薬物キャリア又はデバイスを架橋するヘテロクロスリンカーとして用いられている。
【0003】
このようなヘテロクロスリンカーとしてヘテロ二官能性ポリエチレングリコールを用いることによって得られる特徴的な利点は、まず上記のようなポリエチレングリコールの特性である(A)低抗原性、優れた溶解性をこの結合体に付与できることである。次の利点は、ポリエチレングリコールは繰り返しユニットを持つポリマーであることから、相当の分子量、モノマーユニット数を有しており、その末端間距離も通常の低分子へテロクロスリンカーと比較して長く、よって(B)立体障害により直接結合させることの難しいもの同士、または直接結合させることによって薬理活性などその分子の本来持つ機能を損なう恐れのある分子または物質同士、あるいは分子や物質と各種薬物キャリア又はデバイスなど異なる性質を持ったもの同士を結合させることが出来るということである。
【0004】
DDSの分野においては、このヘテロ二官能性ポリエチレングリコールを用いたコンジュゲートに関する研究例は多くある。
【0005】
Jiangら(非特許文献1)は、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル基とマレイミド基を持つヘテロ二官能性ポリエチレングリコールを用いてトランスフェリンとβ-ラクトグロブリンを結合している。Zhangら(非特許文献2)は、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル基とマレイミド基を持つヘテロ二官能性ポリエチレングリコールを用いてペプチド10量体であるNLS(nuclear
localization signal;核局在シグナル)とアクリジンのデンドリマー結合体を結合している。Kimら(非特許文献3)は、アミノ基または2-ピリジルジスルフィド基とカルボン酸を持つヘテロ二官能性ポリエチレングリコールを用いて、siRNAとLHRH(luteinizing
hormone releasing hormon;黄体形成ホルモン放出ホルモン)を結合している。Anhornら(非特許文献4)は、N-ヒドロキシスクシンイミドエステルとマレイミド基を持つヘテロ二官能性ポリエチレングリコールを用いて、IgG抗体と抗がん剤を内包したナノパーティクルを結合している。
【0006】
また、診断デバイスへの応用としては、Otsukaら(非特許文献5)が、アセタール基と水酸基を持つヘテロ二官能性ポリエチレングリコールを用いてラクトースとポリ乳酸を結合させ、更にラクトースとレクチンの相互作用、ポリ乳酸と無機物表面との相互作用を利用して、結果的としてレクチンと無機物表面を架橋させ、レクチンなどの生体機能性分子をモニターするバイオセンサーとしての利用なども示している。
【0007】
このように、ヘテロ二官能性ポリエチレングリコールは、生体機能性分子の修飾など医薬関連用途、特にDDS分野では広く使用されるヘテロクロスリンカーである。一方で、このヘテロ二官能性ポリエチレングリコールとさまざまな生体機能性分子やキャリアなどを反応させたポリエチレングリコール結合体の機能を、より高くすることを考えた場合、どちらか一方の生体機能性分子を複数修飾することが望まれる場合がある。例えば、片末端に薬物、もう片末端に標的指向性分子を結合させたポリエチレングリコール結合体を考えた場合、薬物を複数結合させることができれば、運搬効率を向上することが可能となる。また、標的指向性分子を複数結合させることができれば、リガンドとのターゲティング性能を向上することが可能となる。
【0008】
このような生体機能性分子を複数修飾することを念頭に置いたポリエチレングリコール化合物として、US6362254(特許文献1)における、いわゆるForked-PEGの記述がある。この特許においては、ヘテロポリエチレングリコール誘導体への応用例はないが、メトキシ-ポリエチレングリコールの片末端に分岐点を持たせ、生体機能性分子を修飾するために、二つの官能基を一つのポリエチレングリコール末端に導入したForked-PEGを合成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第6362254号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Journalof Drug Targeting, 2007, 15(10), 672-683
【非特許文献2】BioconjugateChem., 2009, 20, 120-128
【非特許文献3】BioconjugateChem., 2008, 19, 2156-2162
【非特許文献4】BioconjugateChem., 2008, 19, 2321-2331
【非特許文献5】Langmuir,2004, 20(26), 11285-11287
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1において分岐点と複数の官能基の間の長さは明確に規定されておらず、記載の例は二つの官能基同士の距離が非常に近いものに限定されている。これは、この二つの官能基への同一の生体機能性分子、特にタンパク質や抗体などの分子量の非常に大きな物質の導入を仮定した場合、ヘテロポリエチレングリコール誘導体の大きな特徴である、“(B)立体障害により直接結合させることの難しい、または直接結合させることによって薬理活性などその分子の本来持つ機能を損なう恐れのある分子同士を結合させることが出来る”という利点を大きく損なってしまうことを意味している。よって、主たる目的とするところの、同一の生体機能性分子を二つ以上有し、また、これとは異なる生体機能性分子を他末端に一つ有するヘテロポリエチレングリコール結合体への応用としては、利用が制限される。
【0012】
また、このようにヘテロポリエチレングリコール誘導体に二つ以上の同一の生体機能性分子の導入を仮定した場合、通常の一官能活性化ポリエチレングリコールやヘテロ二官能性ポリエチレングリコールへの生体機能性分子の導入と大きく異なる点は、同種の2つの官能基に高い転化率で生体機能性分子を導入するために生体機能性分子に対して過剰のポリエチレングリコール誘導体を用いることは、多くの不純物種を生じてしまうため不可能であり、むしろコストの高い生体機能性分子を過剰に反応させなくてはならない点にある。よって、コストの面からも、分岐点と複数の官能基の間の長さが短い構造は適用が難しい。
【0013】
以上より、性能、コストの両面の観点より、このような新規へテロポリエチレングリコール誘導体に生体機能性分子を修飾するためには、異種官能基同士のみならず、同種官能基同士もその距離を十分に保ったヘテロ二官能性ポリエチレングリコールを使用しなくてはならないことがわかる。
【0014】
しかしながら、このような生体機能性分子の修飾など医薬関連用途に用いることを前提とした、2種の官能基のうち一方を複数持ったヘテロポリエチレングリコール誘導体の報告はない。特に、タンパク薬剤や抗体など分子量の比較的大きい生体機能性分子を修飾することも目的に設計されたものに関しては、今までその例はない。
【0015】
本発明の課題は、さまざまな生体機能性分子と反応可能な2種の官能基を有しており、かつ一方の官能基を複数持った分岐型ヘテロポリエチレングリコール化合物を提供することである。
【0016】
このような生体機能性分子としては、タンパク薬剤、ポリペプチド、酵素、抗体、抗体医薬、遺伝子、オリゴ核酸などを含む核酸化合物、核酸医薬、抗がん剤、低分子薬物などの生体機能性分子が主なものとして挙げられる。また、これら生体機能性分子以外にも、リポソーム、ポリマーミセルなどのドラッグデリバリーシステムにおけるキャリアや、その他診断用材料やデバイスを反応させることもできる。この中でも、特にタンパク薬剤、ポリペプチド、酵素、抗体、抗体医薬などを含む生体機能性分子を修飾することに最適な、分岐型ヘテロポリエチレングリコール化合物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、生体機能性分子やドラッグキャリア、診断用基材の物質表面を含む医薬関連用途、特にタンパク薬剤、ポリペプチド、酵素、抗体、抗体医薬を含む分子量の大きな生体機能性分子の修飾に用いることに適した、2種の官能基のうち一方の官能基を複数持った分岐型ヘテロポリエチレングリコール化合物を開発した。
【0018】
この発明の最も顕著な特徴は、特に2種の官能基のうちの一方の複数存在する官能基が、一定範囲の繰り返しユニット数を有する各ポリエチレングリコール鎖の末端に存在することにある。この特徴により、この分岐型ヘテロポリエチレングリコール化合物に2種の異なる生体機能性分子を修飾することを考慮した場合、複数の官能基に結合される生体機能性分子同士は最大で上記ポリエチレングリコール鎖2本分の距離を持ち、互いの立体障害が減少した状況で修飾される。また、その分子構造の複雑さから、立体障害により反応性を減少させる分岐点や、もう1種の官能基に修飾されるもう1種の生体機能性分子からも、最大で上記ポリエチレングリコール鎖1本分の距離を持つこととなる。
【0019】
このように、2種の異なる生体機能性分子を修飾することを考慮した場合、本発明の分岐型ヘテロポリエチレングリコール化合物の構造的特徴により、複数存在する1種の官能基に修飾される生体機能性分子は、同一分子内に存在する(1)同種の生体機能性分子、(2)分岐点、(3)他種の生体機能性分子の3つのいずれからも十分な距離を保つ。このことから、立体障害による弊害を抑えてより高い効率で修飾することが可能であり、また、生理活性の減少を抑制することが出来る。
【0020】
すなわち、本発明は以下のものである。
(1) 式[1]で示される分岐型ヘテロポリエチレングリコール。
【化1】


(X、Yは,それぞれ、生体機能性分子に存在する官能基と反応して共有結合を形成する官能基を少なくとも含む原子団であり、原子団Xが含む官能基と原子団Yが含む官能基とは互いに異なっている。
sは、ポリエチレングリコール鎖の本数を表す2〜8の整数である。
nは、ポリエチレングリコール鎖の平均付加モル数であり、20≦n≦2000である。
Eは、ポリエチレングリコール鎖に対してs価の結合価数を有し、官能基Yに対して1価の結合価数を有する分岐リンカー部位である。)
【0021】
(2) 分岐リンカー部位Eが式[2]で表される分岐型ヘテロポリエチレングリコール。
【化2】


(CHは官能基Yに対して結合している。L1は、p本のポリエチレングリコール鎖に対して結合している結合部位であり、L2は、q本のポリエチレングリコール鎖に対して結合している結合部位であり、互いに同一でも異なっていても良く、それぞれ、エーテル結合、エステル結合、ウレタン結合、アミド結合、カーボネート結合、2級アミノ基、もしくはこれらを含む飽和炭化水素基、単結合または飽和炭化水素基である。
p、qはそれぞれ1〜7の整数であり、p≧qであり、p+q=sである。)
【0022】
(3) L1、L2が、それぞれ、エーテル結合、ウレタン結合、アミド結合もしくはこれらを含む飽和炭化水素基基、単結合または飽和炭化水素基である分岐型ヘテロポリエチレングリコール。
【0023】
(4) L1、L2が、ともにエーテル結合を含む飽和炭化水素基、単結合または飽和炭化水素基である分岐型ヘテロポリエチレングリコール。
【0024】
(5) 式[3]または[4]で表される、分岐型ヘテロポリエチレングリコール。
【化3】


(v=0または2であり、w=0または1である。)
【0025】
(6) 原子団Xの官能基および原子団Yの官能基が、それぞれ、アセタール基、アルデヒド基、マレイミド基、ビニルスルホン基、活性エステル基、活性カーボネート基、カルボキシル基、アミノ基、アミノオキシ基、チオール基、アリル基、ビニル基、アセチレン基およびアジド基からなる群より選ばれる、分岐型ヘテロポリエチレングリコール。
【0026】
(7) 原子団Xの官能基と原子団Yの官能基との少なくとも一方が、カルボキシル基、アミノ基、アミノオキシ基およびチオール基からなる群より選ばれる、分岐型ヘテロポリエチレングリコール。
【0027】
(8) 分岐型ヘテロポリエチレングリコールの中間体であって、原子団Xの官能基および原子団Yの官能基のうち少なくとも一つが保護基によって保護されていることを特徴とする、中間体。
【0028】
(9) 分岐型ヘテロポリエチレングリコールの末端に生体機能性分子が結合されている、ポリエチレングリコール結合体。
【発明の効果】
【0029】
本発明は、タンパク薬剤、ポリペプチド、酵素、抗体、抗体医薬、遺伝子、オリゴ核酸などを含む核酸化合物、核酸医薬や抗がん剤、低分子薬物などのその他薬剤の化学修飾を主とし、その他リポソーム、ポリマーミセルなどのドラッグデリバリーシステムにおける薬物キャリアや、その他診断用材料やデバイスの機能化において使用される、2種の官能基のうち一方の官能基を複数持った分岐型ヘテロポリエチレングリコール化合物を提供する。この分岐型ヘテロポリエチレングリコール化合物を用いることにより、2種の生体機能性分子のうち一方を複数持ったポリエチレングリコール結合体を、修飾時の立体反発による反応阻害や、修飾後の薬理活性などその分子の本来持つ機能の減退を抑制した状態で、効率的に合成することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
ヘテロ二官能性ポリエチレングリコールとは、直線状のポリエチレングリコール鎖の両末端それぞれに異なる反応性を示す官能基を持つ末端活性化ポリエチレングリコール化合物であり、両方の末端に異なる生体機能性分子または表面などを導入することができる。
【0031】
本発明における分岐型ヘテロポリエチレングリコールとは、ヘテロ二官能性ポリエチレングリコールと同様に末端に2種の官能基を持ち、それぞれの末端に異なる生体機能性分子などを導入することを主な目的とするが、この2種の官能基のうち一方を複数持っており、導入する生体機能性分子のうち一方を複数修飾することができる。この分岐型ヘテロポリエチレングリコールは式[1]で表される。
【0032】
【化4】


(CH2CH2O)nで表されるポリエチレングリコール鎖は、下記別途定義する繰り返しユニット数nを有する直線状のポリマー部位である。
【0033】
原子団Xは、式[1]で示される分岐型ヘテロポリエチレングリコールの各ポリエチレングリコール鎖末端に位置する、結合部位を含有しても良い原子団である。原子団Xは、官能基X’と、官能基X’に結合する結合部位Wにて式[5]のように表される。ただし、結合部位Wは単結合であってもよい。この場合には、原子団Xと官能基X’とは一致する。
【0034】
【化5】

【0035】
結合部位Wは、ポリエチレングリコール鎖との結合を担うリンカーであり、共有結合によって構成される部位であれば特に制限は無いが、好ましくはエステル結合、ウレタン結合、アミド結合、エーテル結合、カーボネート結合、2級アミノ基を含んだ飽和炭化水素基、単結合または飽和炭化水素基が挙げられる。上記飽和炭化水素基は炭素数12以下であり、飽和炭化水素基として好ましいものとしては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、テトラメチレン基、ブチレン基、イソブチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等が挙げられる。
【0036】
官能基X’は、修飾の対象とするタンパク薬剤、ポリペプチド、酵素、抗体、抗体医薬、遺伝子、オリゴ核酸などを含む核酸化合物、核酸医薬や抗がん剤、低分子薬物などのその他薬剤を含む生体機能性分子に存在する官能基と反応して共有結合を形成する官能基であれば特に制限されない。実施形態においては、X’としてはタンパク質を代表とする天然の生体機能性分子に存在するアミノ基、チオール基、アルデヒド基、カルボキシル基、または人工的に導入可能なマレイミド基、ケトン基、アジド基、アセチレン基などに温和な条件で高い反応収率下で反応可能な官能基、具体的にはアセタール基、アルデヒド基、マレイミド基、ビニルスルホン基、ヨードアセトアミド基、活性エステル基、活性カーボネート基、カルボキシル基、アミノ基、アミノオキシ基、チオール基、アリル基、ビニル基、アセチレン基、アジド基から選ばれる基が好ましい。更に反応の効率などを考慮し、より好ましくは、X’はアセタール基、アルデヒド基、マレイミド基、活性エステル基、活性カーボネート基、アミノ基、アミノオキシ基、アセチレン基、アジド基から選ばれる基である。対象とする生体機能性分子のアミノ基と反応させる場合は、アセタール基、アルデヒド基、活性カルボン酸、活性カーボネート基、カルボキシル基が好ましく、対象とする生体機能性分子のチオール基と反応させる場合は、マレイミド基、ビニルスルホン基、ヨードアセトアミド基、アリル基、ビニル基が好ましく、対象とする生体機能性分子のアルデヒド基、ケトン基と反応させる場合はアミノ基、アミノオキシ基が好ましく、対象とする生体機能性分子のカルボキシル基と反応させる場合はアミノ基、アミノオキシ基、チオール基が好ましく、対象とする生体機能性分子のマレイミド基と反応させる場合はチオール基が好ましく、対象とする生体機能性分子のアジド基と反応させる場合はアセチレン基が好ましく、対象とする生体機能性分子のアセチレン基と反応させる場合はアジド基が好ましい。
【0037】
原子団Yは、分岐結合部位Eと結合する結合部位を含有していても良い原子団であり、官能基Y’と原子団Yに含有され得る結合部位W’にて、式[6]のように表される。なお、結合部位W’は単結合であってよい。この場合には、原子団Yと官能基Y’とは一致する。

Y- = Y’- W’- …[6]

【0038】
結合部位W’は、前記Xに含有され得る結合部位Wと同様の定義である。官能基Y’は、修飾の対象とするタンパク薬剤、ポリペプチド、酵素、抗体、抗体医薬、遺伝子、オリゴ核酸などを含む核酸化合物、核酸医薬や抗がん剤、低分子薬物などのその他薬剤を含む生体機能性分子に存在する官能基と反応して共有結合を形成する官能基であれば特に制限されない。好適な実施形態において、Y’は、タンパク質を代表とする天然の生体機能性分子に存在するアミノ基、チオール基、アルデヒド基、カルボキシル基、または人工的に導入可能なマレイミド基、ケトン基、アジド基、アセチレン基などに温和な条件で高い反応収率下で反応可能な官能基、具体的にはアセタール基、アルデヒド基、マレイミド基、ビニルスルホン基、ヨードアセトアミド基、活性エステル基、活性カーボネート基、カルボキシル基、アミノ基、アミノオキシ基、チオール基、アリル基、ビニル基、アセチレン基、アジド基から選ばれる基が好ましい。更に反応の効率などを考慮し、より好ましくは、Y’はアセタール基、アルデヒド基、マレイミド基、活性エステル基、活性カーボネート基、アミノ基、アミノオキシ基、アセチレン基、アジド基から選ばれる基である。
【0039】
ここで本発明におけるアセタール基は、結合部位も含めて式[7]で表され、Rは炭素数8以下の飽和炭化水素基である。好ましくはRは炭素数4以下の飽和炭化水素基であり、最も好ましくはエチル基である。一般的にこのような構造のアセタール基はアルデヒド基の保護基であるが、アセタール基の脱保護は、弱酸性で簡便に行なうことができるため、生体機能性分子との反応に使用する際の性質はその他の官能基に非常に近くほぼ同様に扱いことが可能である。よって本発明ではアセタール基もアルデヒドと同様に求電子性の反応性を持つ官能基と定義する。
【化6】

【0040】
本発明におけるマレイミド基とは、結合部位も含めて式[8]で示される基であり、チオール基などの求核性基と反応する。R1としては水素またはメチル基が好ましく、より好ましくは水素である。
【化7】

【0041】
本発明における活性エステル基とは、結合部位も含めて式[9]で示される基であり、アミノ基などの求核性基と反応する。R2としてはフェニル基、3−ピリジル基、スクシンイミド基、2−ベンゾチアゾール基、及び1−ベンゾトリアゾール基が好ましく、より好ましくはスクシンイミド基または1−ベンゾトリアゾール基であり、最も好ましくはスクシンイミド基である。
【化8】

【0042】
本発明における活性カーボネート基とは、結合部位も含めて式[10]で示される基であり、アミノ基などの求核性基と反応する。R3としては4−ニトロフェニル基、スクシンイミド基、及び1−ベンゾトリアゾール基が好ましく、より好ましくは4−ニトロフェニル基またはスクシンイミド基であり、最も好ましくはスクシンイミド基である。
【化9】

【0043】
本発明におけるアセチレン基とは、結合部位も含めて式[11]で示される基であり、アジド基などと反応する。R4としては炭素数8以下の飽和炭化水素基または水素が好ましく、より好ましくは水素である。
【化10】

【0044】
原子団Xが含む前記官能基と、原子団Yが含む前記官能基とは互いに異なっていることが必要である。ただし、原子団Xが含む前記結合部位Wは原子団Yが含む前記結合部位W’とは、互いに同一であってよく、互いに異なっていても良い。
官能基X’と官能基Y’の組み合わせとして、X’がアセタール基のときはY’はマレイミド基、ビニルスルホン基、ヨードアセトアミド基、活性エステル基、活性カーボネート基、アミノ基、アミノオキシ基から選ばれる基であり、X’がアルデヒド基のときは、Y’はマレイミド基、ビニルスルホン基、アセチレン基、アジド基から選ばれる基であり、X’がマレイミド基、ビニルスルホン基、もしくはヨードアセトアミド基のときはY’はアセタール基、活性エステル基、活性カーボネート基、アセチレン基、アジド基から選ばれる基であり、X’が活性エステル基もしくは活性カーボネート基のときはY’はアセタール基、マレイミド基、ビニルスルホン基、ヨードアセトアミド基、アセチレン基、アジド基から選ばれる基であり、X’ がアミノ基もしくはアミノオキシ基のときはY’はアセタール基、アセチレン基、アジド基から選ばれる基であり、X’がアセチレン基、アジド基のときはY’ はアセタール基、アルデヒド基、マレイミド基、ビニルスルホン基、ヨードアセトアミド基、活性エステル基、活性カーボネート基、アミノ基、アミノオキシ基から選ばれる基である。最も好ましくは、X’がアセタール基のときはY’はマレイミド基、活性エステル基、活性カーボネート基、アミノ基、アミノオキシ基から選ばれる基であり、X’がマレイミド基のときはY’はアセタール基、活性エステル基、活性カーボネート基、アセチレン基、アジド基から選ばれる基であり、X’が活性エステル基もしくは活性カーボネート基のときはY’はアセタール基、マレイミド基、アセチレン基、アジド基から選ばれる基であり、X’ がアミノ基もしくはアミノオキシ基のときはY’はアセタール基、アセチレン基、アジド基から選ばれる基であり、X’がアセチレン基、アジド基のときはY’ はアセタール基、マレイミド基、活性エステル基、活性カーボネート基、アミノ基、アミノオキシ基から選ばれる基である。
【0045】
Eは、原子団Xを末端に有するポリエチレングリコール鎖に対してs価の結合と、原子団Yに対しての1価の結合を持つ分岐リンカー部位であり、共有結合であれば特に制限は無いが、好ましくは式[2]で表される構造を有する。
【化11】

【0046】
ここでCH(メチン基)は、原子団Yと直接結合している。L1、L2は、それぞれ、p本、q本の上記ポリエチレングリコール鎖{X-(CH2CH2O)n-}と結合する結合部位であり、互いに同一でもよく、異なっていても良く、エーテル結合、エステル結合、ウレタン結合、アミド結合、カーボネート結合、もしくは2級アミノ基もしくはこれらを含む飽和炭化水素基、単結合または飽和炭化水素基から選択される。L1、L2は好ましくは、エーテル結合、ウレタン結合、アミド結合もしくはこれらを含む飽和炭化水素基、単結合または飽和炭化水素基であり、より好ましくは飽和炭化水素基または単結合である。p、qは、それぞれL1、L2に結合するポリエチレングリコール鎖{X-(CH2CH2O)n-}の本数を示す。このp、qはp≧qである1〜7の整数でありp+q=sの関係を持つ。好ましくはp=q=1またはp=3、q=1またはp=q=2であり、最も好ましくはp=q=1である。より具体的には、好ましくはEは式[12]、または式[13]で表される。ここでvは0または1から6の整数であり、wは0または1から3の整数である。好ましくはv、wはそれぞれv=0または2であり、w=0または1である。
【0047】
【化12】

【0048】
上記Eが式[12]、または式[13]で表される本発明の分岐型ヘテロポリエチレングリコールは、それぞれ式[3]、式[4]で表される。
【0049】
【化13】

【0050】
sは片末端で原子団Xに結合し、他方末端で分岐リンカー部位Eに結合するポリエチレングリコール鎖のポリマー本数を表す整数で、2〜8であり、好ましくは2または4である。
【0051】
nは末端に原子団Xを有するポリエチレングリコール鎖1本あたりの繰り返しユニット数であり、本発明においては化合物の数平均分子量(Mn)に基づいて各種理論的な計算をすることにより算出することと定義する。このnについて、生体機能性分子を効率的に修飾し、その機能を十分に発揮させるためには最適な設定が必要である。具体的には、原子団Xにタンパク質薬剤や抗体などを含む生体機能性分子を修飾し、原子団Yにその他の生体機能性分子や表面などを修飾する場合、(1)原子団Xに修飾される同種の複数の生体機能性分子同士、(2)原子団Xに修飾される生体機能性分子と分岐点、(3)原子団Xに修飾される生体機能性分子と、原子団Yに修飾される生体機能性分子や表面など、の3つのいずれについても十分な距離を保つことが必要である。このような観点から、nの下限は好ましくは20であり、より好ましくは50であり、更に好ましくは80であり、最も好ましくは120である。また、溶液の粘度の上昇による操作の困難さや、エチレンオキシド付加反応の不均一さによる分子量分布の増加などから、本用途に使用される分岐型ヘテロポリエチレングリコールにおける分子量については一定以下に抑える必要がある。このような観点から、nの上限は好ましくは2,000であり、より好ましくは1,500であり、更に好ましくは1,000であり、最も好ましくは500である。このようなnの適切な範囲の選択により、官能基Xまたは官能基Yに修飾する複数の生体機能性分子同士の立体反発による反応阻害や、立体的に込み合った分岐リンカー部位Eの影響、さらには、修飾後の薬理活性などその分子の本来持つ機能の減退を抑制し、さらには反応や結合体の使用における粘度向上や分子量分布の増加による操作性や品質への悪影響も抑制した状態で、結合体を効率的に合成、使用することが可能である。
【0052】
本発明の分岐型ヘテロポリエチレングリコールは、そのポリエチレングリコール鎖を導入する方法として、ポリエチレングリコール鎖のカップリング反応、またはエチレンオキシドの重合反応を選択することが出来る。
【0053】
カップリング反応によるポリエチレングリコール鎖の導入としては、リジンなどの2
つのアミノ基を有する基質に対し、このアミノ基に対する反応性がある、例えば活
性カーボネート基を末端に有するメトキシポリエチレングリコールを反応させる手
法が典型的な例として挙げられる。
【0054】
本発明の分岐型ヘテロポリエチレングリコールを合成するためには、ポリエチレングリコールとしてメトキシポリエチレングリコール誘導体ではなく、ヘテロ二官能性ポリエチレングリコールを使用することが必要であり、この後に、必要に応じてこの2本の導入されたヘテロ二官能性ポリエチレングリコールの余った末端基やリジンのカルボン酸を官能基変換する。この官能基変換に用いられる反応は、従来より公知の方法を用いることが出来るが、カップリング反応により生じた結合を分解しない条件を適切に選択しなければならない。このカップリングによって生じる結合は、反応に使用される官能基の組み合わせによって決定されるものであり、ここではエステル結合、ウレタン結合、アミド結合、カーボネート結合、もしくは2級アミノ基などである。
【0055】
エチレンオキシドの重合反応によってポリエチレングリコール鎖を導入し、その後各末端に官能基を導入する典型的な例としては以下のような工程があげられる。
【0056】
(A)エチレンオキシドの重合
【化14】

【0057】
グリセリンの3位の水酸基の水素がベンジル基で置換された、式[14]の化合物の残り2つの水酸基へ、トルエンもしくは無溶媒中で、金属ナトリウムや金属カリウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、ナトリウムメトキシド、カリウム−t−ブトキシド等のアルカリ条件下エチレンオキシドを、式[14]の化合物に対して40〜4,000モル当量重合させ、式[15]の分岐型ポリエチレングリコール化合物を得る。
【0058】
【化15】

【0059】
ここで、式[1]のEに相当する分岐部位は、式[2]で定義されるものと同一であるが、このエチレンオキシドの重合工程に使用される分岐部位はこのようなアルカリ条件下で安定な基が好ましく、より好ましくは飽和炭化水素基、またはエーテル結合を含む飽和炭化水素基である。この分岐部位の骨格としては最も好ましくはグリセリン部位やキシリトール部位などが挙げられる。また、上記アルカリ条件下で安定な基であれば、ベンジル基の代わりに、他の保護基も用いることが出来る。例えば水酸基の保護基の場合テトラヒドロピラニル基やt-ブチル基など、アルデヒド基の保護基の場合ジエチルアセタール基などのアセタール基を用いることが出来る。
【0060】
(B)ポリエチレングリコール鎖末端水酸基の官能基変換
続いて、式[15]の分岐型ポリエチレングリコール化合物に対して、トルエンを加え、常圧にて還流脱水した後、トリエチルアミンなど塩基の存在下に過剰量のメタンスルホニルクロリドを添加し、メシレート体とする。これに3,3−ジエトキシ−1−プロパノールのナトリウムアルコラート化物を反応させ、ジエトキシアセタール基を導入し、式[16]の化合物を得る。
【0061】
【化16】

【0062】
ここではアセタール基以外にもさまざまな保護基、官能基をポリエチレングリコール鎖末端に導入することが可能である。しかし、注意しなくてはならないのは、式[16]においては、この場合ベンジル基である分岐部位近傍の保護基が安定に存在し得る条件下で水酸基の官能基変換をする必要があるということである。例えば保護基としてベンジル基を用いる場合には、特に還元条件とならないような反応条件を選択し、テトラヒドロピラニル基、ジエチルアセタール基などを用いる場合には酸性条件とならないように反応条件を選択することが必要である。
【0063】
(C)分岐部位近傍の保護基の脱保護
次に、式[16]の化合物をPd/Cなどの還元触媒と、水素ガスやシクロヘキセンなどの水素供与体の存在下に接触還元を行い、脱ベンジル反応を行い、式[17]の化合物を得る。
【0064】
【化17】

【0065】
このとき、ポリエチレングリコール鎖末端に導入されている官能基・保護基は上記工程(B)のような1回、または複数回の官能基変換の結果として、分岐部位近傍の保護基の脱保護の脱保護条件で安定な基としておかなければならない。
【0066】
例えば、分岐部位近傍の水酸基の保護基としてベンジル基を用いた場合には、脱保護条件である水素還元に対して安定な保護基・官能基、例えばアセタール基、テトラヒドロピラニル基、フタルイミド基、オキシフタルイミド基、チオール基などを、水酸基の保護基としてテトラヒドロピラニル基やアルデヒドの保護基としてアセタール基などを用いた場合には、脱保護条件である弱酸性条件に対して安定な保護基・官能基、例えばマレイミド基、カルボキシル基、アミノ基、アミノオキシ基、チオール基などを、t-ブトキシ基などを用いた場合には、脱保護条件である強酸性条件に対して安定な保護基・官能基、例えばカルボキシル基、アミノ基、アミノオキシ基、チオール基などを、ポリエチレングリコール鎖に導入する基として選択することが必要となる。しかし、官能基変換としては非常に多くの反応があり、この後の更なる官能基変換が可能であるので、これは最終的に得られる末端の官能基種を限定するものではない。
【0067】
なお、分岐部位近傍の保護基として、アルデヒドの保護基であるジエチルアセタール基などのアセタール基を用いた場合、前述のようにこのまま反応系内で脱保護、反応に用いることが可能なため、必ずしもこの段階での脱保護は必要ではない。
【0068】
(D)分岐部位近傍の官能基変換
次に、式[17]の化合物を官能基変換して以下のように様々な官能基を導入する。トルエンを加え、常圧にて還流脱水した後、トリエチルアミン存在下に過剰量のメタンスルホニルクロリドを添加し、メシレート体とした後、これにアンモニアを反応させ、アミノ基を導入し、式[18]の化合物を得る。
【0069】
【化18】

【0070】
更に、式[18]の化合物に対し、N-メチルモルホリンなど塩基の存在下にN-スクシンイミジルマレイミドプロピオン酸を反応させ、マレイミド基を導入し、式[19]の化合物を得る。
【0071】
【化19】

【0072】
この式[18]、式[19]のように、複数のポリエチレングリコール鎖末端の官能基、分岐部位近傍の官能基が導入された分岐型ヘテロポリエチレングリコールは、生体機能性分子との反応に用いることが可能である。
【0073】
(E)ポリエチレングリコール鎖末端の官能基変換・脱保護
式[18]、式[19]で示される分岐型ヘテロポリエチレングリコールはこの状態で生体機能性分子との反応に用いることが可能であるが、例えば式[19]の化合物に関しては、適切な酸性条件を選択することによりマレイミド基を残存させたまま脱保護を行い、アセタール基をアルデヒド基へと変換することも可能である。
【0074】
【化20】

【0075】
上記(D)、(E)のような官能基変換の工程はそれぞれ任意の官能基の導入を目的として数回にわたり繰り返すことも可能であり、前述の条件の中で官能基変換を行なうことにより、様々な種類の官能基を導入することが可能である。
【0076】
本発明の分岐型ヘテロポリエチレングリコールに対して結合される対象物は、タンパク薬剤、ポリペプチド、酵素、抗体、抗体医薬、遺伝子、オリゴ核酸などを含む核酸化合物、核酸医薬や抗がん剤、低分子薬物などのその他薬剤を含む生体機能性分子またはその他の分子、または、リポソーム、ポリマーミセルなどのドラッグデリバリーシステムにおけるキャリアや、その他診断用材料やデバイスなどである。典型的な例としては、まず、原子団Xに対して抗体やペプチドリガンドなどのターゲティング分子を導入し、もう一方の原子団Yに抗がん剤やタンパク薬剤といった薬剤や、リポソームやポリマーミセルといった薬物を封入したキャリアを結合する例が挙げられる。この場合、一つのターゲティング分子を結合させる従来のヘテロ二官能性ポリエチレングリコールを用いた場合と比較し、薬剤やキャリアの目的組織への移行性を顕著に向上させることが期待される。もう一つの例としては、原子団Xに対して薬物を導入し、もう一方の原子団Yに対しターゲティング分子を導入する例が挙げられる。この場合は、ヘテロ二官能性ポリエチレングリコールを用いた場合と比較し、多くの量の薬剤を導入することが可能で薬物の輸送量を向上させることが期待される。原子団Xと、原子団Yに反応させ、導入する生体機能性分子としては、特に制限はないが、原子団Xを有するポリエチレングリコール鎖1本あたりの繰り返しユニット数nと、本発明の分岐型ヘテロポリエチレングリコールの構造的特徴を考慮すると、原子団Xに対しては分子量2,000以上、更に好ましくは3,000以上の生体機能性分子を用いることでより大きな利点を得ることが出来る。また、これも特に制限はないが、同様の観点から、原子団Yに対しては分子量3,000以下、更に好ましくは2,000以下の生体機能性分子を用いることで、より大きな利点を得ることが出来る。
【実施例】
【0077】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
【0078】
分岐型ヘテロポリエチレングリコールまたはその中間体を含むポリエチレングリコール化合物の分子量、並びに分子量分布は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)による分析によって決定した。本発明においては、GPCシステムとしてSHODEX GPC SYSTEM-11、検出器である示唆屈折計としてSHODEX
RIX8、GPCカラムとしてはSHODEX KF801L、KF803L、KF804L(φ8mm×300mm)を3本直列に繋ぎ、カラムオーブンの温度を40℃とし、溶離液としてはテトラヒドロフランを用い、流速は1ml/分とし、試料の濃度は0.1質量%とし、抽入容量は0.1mlとして測定を行った。検量線は関東化学(株)製のエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ならびにPolymer Laboratory製の分子量600〜70000のポリエチレングリコールまたはポリエチレンオキシドのGPC用Polymer Standardsを用いて作成したものを用いた。データの解析はBORWIN GPC計算プログラムを使用した。Mnは数平均分子量、Mwは重量平均分子量、Mpはピークトップ分子量を表す。分子量分布はMw/Mnとしてその計算値を示した。
【0079】
1H-NMR分析では、日本電子データム(株)製JNM-ECP400、またはJNM-ECA600を用いた。重溶媒としてはCDCl3を用い、φ5mmチューブを用い、内部標準物質としてTMSを用いて測定を行なった。
【0080】
(実施例1)
温度計、窒素吹き込み管、攪拌機を装備した300ml4つ口フラスコへ3−ベンジルオキシー1,2−プロパンジオール18.2g(0.1mol)、脱水トルエン150g、金属ナトリウム0.9g(39mmol:26mol%)を加え、窒素を吹き込みながら金属ナトリウムが溶解するまで室温で攪拌した。この溶液を5Lオートクレーブへ仕込み、系内を窒素置換後、100℃に昇温し、100〜130℃、1MPa以下の圧力でエチレンオキシド1,982g(45mol)を加えた後、更に2時間反応を続けた。減圧にて未反応のエチレンオキシドガスを除去後、60℃に冷却して85%リン酸水溶液にてpHを7.5に調整し、下記化合物(a1)を得た。
1H−NMR; δ(ppm):
3.40-3.90(1785H、m、HO(CH2CH2O)n-CH2、HO(CH2CH2O)n-CHCH2O-CH2Ph)、 4.54(2H、s、-CH2Ph)、 7.27-7.38(5H、m、-CH2Ph)
GPC分析;
数平均分子量(Mn):19,654、重量平均分子量(Mw):20,285、多分散度(Mw/Mn):1.032
【0081】
【化21】

【0082】
(実施例2)
温度計、窒素吹き込み管、攪拌機、Dean-stark管、及び冷却管を付した3L4つ口フラスコへ上記化合物(a1)を372g(18.6mmol)、トルエン1,860gを仕込み、加熱還流させ、水分を共沸除去した。室温へ冷却後、トリエチルアミン6.02g(59.5mmol)、メタンスルホン酸クロリド5.54g(48.4mmol)を加え、40℃にて3時間反応させた。続いて、ナトリウムを2.58g(112mmol)溶解させた3,3-ジエトキシ-1-プロパノール85.6g(465mmol)のトルエン(256.8g)溶液を加え、70℃で5時間反応させた。反応液をろ過後、濾液を10Lステンレスポットへ移し、酢酸エチル1,488g、エタノール1,488g、ヘキサン2,976gを加えて晶析を行った。析出した結晶をろ過して溶剤を除去した後、結晶を10Lステンレスポットへ移し、酢酸エチル1,488g、エタノール1,488gを加えて40℃にて加温溶解後、20℃に冷却してヘキサン2,976gを加えて晶析を行った。以後同様の晶析を3回繰り返し、ヘキサンで洗浄した後、結晶を濾取、乾燥し、下記化合物(a2)を得た。
1H−NMR; δ(ppm):
1.16-1.24(12H、t、(CH3CH2O)2-CHCH2CH2-)、 1.85-1.95(4H、q、(CH3CH2O)2-CHCH2CH2-)、3.40-3.90 (1725H、m, -(CH2CH2O)n-CH2、-(CH2CH2O)n-CHCH2O-CH2Ph、(CH3CH2O)2-CHCH2CH2-)、 4.54(2H、s、-CH2Ph)、 4.60-4.68(2H、t、(CH3CH2O)2-CHCH2CH2-)、 7.27-7.38(5H、m、-CH2Ph)
GPC分析;
数平均分子量(Mn):19,190、重量平均分子量(Mw):19,496、多分散度(Mw/Mn):1.016
【0083】
【化22】

【0084】
(実施例3)
温度計、窒素吹き込み管、攪拌機、及び冷却管を付した1L4つ口フラスコへ上記化合物(a2)を50g、5%パラジウムカーボン(50%含水品)25gを仕込み、窒素置換後、メタノール400g、シクロヘキセン67gを加えて昇温し、52〜55℃で緩やかに還流させ、2時間反応させた。反応液を室温まで冷却後、パラジウムカーボンを濾別し、濾液を濃縮した。濃縮液にトルエン400g、ヘキサン200gを加えて晶析した。得られた結晶を濾取、乾燥し、下記化合物(a3)を得た。
1H−NMR; δ(ppm):
1.16-1.24(12H、t、(CH3CH2O)2-CHCH2CH2-)、 1.85-1.95(4H、q、(CH3CH2O)2-CHCH2CH2-)、3.40-3.90 (1673H、m, -(CH2CH2O)n-CH2、-(CH2CH2O)n-CHCH2OH、(CH3CH2O)2-CHCH2CH2-)、 4.60-4.68(2H、t、(CH3CH2O)2-CHCH2CH2-)
GPC分析;
数平均分子量(Mn):18,573、重量平均分子量(Mw):19,123、多分散度(Mw/Mn):1.030
【0085】
【化23】

【0086】
(実施例4)
温度計、窒素吹き込み管、攪拌機、Dean-stark管、及び冷却管を付した200mL3つ口フラスコへ上記化合物(a3)を13.1g(0.66mmol)、トルエン79gを仕込み、加熱還流させ、水分を共沸除去した。室温へ冷却後、トリエチルアミン0.33g(3.3mmol)、メタンスルホン酸クロリド0.30g(2.6mmol)を加え、40℃にて3時間反応させた。反応液をろ過後、濾液を300mLビーカーへ移し、酢酸エチル100g、ヘキサン50gを加えて晶析を行った。析出した結晶をろ過して溶剤を除去した後、結晶を10Lステンレスポットへ移し、酢酸エチル1,488g、エタノール1,488gを加えて40℃にて加温溶解後、20℃に冷却してヘキサン2,976gを加えて晶析を行った。以後同様の晶析を3回繰り返し、ヘキサンで洗浄した後、結晶を濾取、乾燥し、下記化合物(a4)を得た。
1H−NMR; δ(ppm):
1.16-1.24(12H、t、(CH3CH2O)2-CHCH2CH2-)、1.85-1.95(4H、q、(CH3CH2O)2-CHCH2CH2-)、3.08(3H、s、-OSO2CH3)、 3.40-3.90 (1732H、m, -(CH2CH2O)n-CH2、-(CH2CH2O)n-CHCH2OH、(CH3CH2O)2-CHCH2CH2-)、 4.24-4.44(2H, m, -CH2O-OSO2CH3
)、 4.60-4.68(2H、t、(CH3CH2O)2-CHCH2CH2-)
GPC分析;
数平均分子量(Mn):19,274、重量平均分子量(Mw):20,046、多分散度(Mw/Mn):1.040
【0087】
【化24】

【0088】
(実施例5)
温度計、窒素吹き込み管、攪拌機、Dean-stark管、及び冷却管を付した100mL3つ口フラスコへ上記化合物(a4)を10.0g(0.50mmol)、アンモニア水80g、イオン交換水20gを仕込み、55℃にて8時間反応させた。55℃で10時間微減圧としてアンモニアを除去し、クロロホルム100gを加えて抽出した。このクロロホルム溶液を濃縮した後、トルエン52gを加えて40℃で溶解しろ過した後、200mLビーカーで室温においてヘキサン30gを加えて晶析を行った。析出した結晶をろ過して溶剤を除去した後、ヘキサンで洗浄、結晶を濾取、乾燥し、下記化合物(a5)を得た。
1H−NMR; δ(ppm):
1.16-1.24(12H、t、(CH3CH2O)2-CHCH2CH2-)、1.85-1.95(4H、q、(CH3CH2O)2-CHCH2CH2-)、2.70-2.95(2H、m、-CH2NH2
)、 3.40-3.90 (1730H、m, -(CH2CH2O)n-CH2、-(CH2CH2O)n-CHCH2OH、(CH3CH2O)2-CHCH2CH2-)、 4.60-4.68(2H、t、(CH3CH2O)2-CHCH2CH2-)
GPC分析;
数平均分子量(Mn):19,217、重量平均分子量(Mw):20,362、多分散度(Mw/Mn):1.060
【0089】
【化25】

【0090】
(実施例6)
温度計、窒素吹き込み管、攪拌機、Dean-stark管、及び冷却管を付した100mL3つ口フラスコへ上記化合物(a5)を5.0g(0.25mmol)、トルエン26g、アセトニトリル4.0g、N-メチルモルホリン(1.25mmol)、N-Succinimidyl
3-maleimidopropionate(0.375mmol)を仕込み、室温にて4時間反応させた。この溶液をろ過した後、室温において300mLビーカーで酢酸エチル100g、ヘキサン50gを添加して晶析を行った。次に酢酸エチルを100gを添加し40℃で結晶を溶解させた後、室温に冷却してヘキサンを100g添加し析出した。この晶析をあと2回繰り返した後、ヘキサンで洗浄、結晶を濾取、乾燥し、下記化合物(a6)を得た。
1H−NMR; δ(ppm):
1.16-1.24(12H、t、(CH3CH2O)2-CHCH2CH2-)、1.85-1.95(4H、q、(CH3CH2O)2-CHCH2CH2-)、2.51(2H、t、NHCOCH2CH2)、 3.40-3.90 (1736H、m, -(CH2CH2O)n-CH2、-(CH2CH2O)n-CHCH2OH、(CH3CH2O)2-CHCH2CH2-、CH2NHCOCH2CH2)、 4.60-4.68(2H、t、(CH3CH2O)2-CHCH2CH2-)、 6.70(2H, s, CH=CH )
GPC分析;
数平均分子量(Mn):19,395、重量平均分子量(Mw):20,600、多分散度(Mw/Mn):1.062
【0091】
【化26】

【0092】
(実施例7)
温度計、窒素吹き込み管、及び攪拌子を付した200mLビーカーへ上記化合物(a5)を2.0g(0.10mmol)、イオン交換水40gを仕込み溶解させた。塩酸でpH2に調製し、室温で2時間攪拌した後、水酸化ナトリウム水溶液でpH6に中和し、クロロホルム100gを加えて抽出した。このクロロホルム溶液を濃縮した後、トルエン40gを加えて40℃で溶解しろ過した後、200mLビーカーで室温においてヘキサン20gを加えて晶析を行った。析出した結晶をろ過して溶剤を除去した後、ヘキサンで洗浄、結晶を濾取、乾燥し、下記化合物(a7)を得た。
1H−NMR; δ(ppm):
2.51(2H、t、NHCOCH2CH2)、2.63-2.73(4H、HCO-CH2CH2-)、 3.40-3.90 (1735H、m, -(CH2CH2O)n-CH2、-(CH2CH2O)n-CH、HCO-CH2CH2-、CH2NHCOCH2CH2)、 6.70(2H,
s, CH=CH )、 9.80(2H、HCO-CH2CH2-)
GPC分析;
数平均分子量(Mn):19,319、重量平均分子量(Mw):20,634、多分散度(Mw/Mn):1.068
【0093】
【化27】

【0094】
(実施例8)
温度計、窒素吹き込み管、攪拌機、Dean-stark管、及び冷却管を付した1L4つ口フラスコへ上記化合物(a1)を200g(10.0mmol)、トルエン600gを仕込み、加熱還流させ、水分を共沸除去した。40℃へ冷却後、脱水クロロホルム1,000g、フタルイミド8.83g(60.0mmol)、トリフェニホスフィン15.7g(60.0mmol)を加え攪拌溶解し、室温に冷却後ジイソプロピルアゾジカルボキシレート12.1g(60.0mmol)40度にて3時間反応させた。続いて、ナトリウムを2.58g(112mmol)溶解させた3,3-ジエトキシ-1-プロパノール85.6g(465mmol)のトルエン(256.8g)溶液を加え、70℃で5時間反応させた。反応液をろ過後、濾液を10Lステンレスポットへ移し、酢酸エチル1,488g、エタノール1,488g、ヘキサン2,976gを加えて晶析を行った。析出した結晶をろ過して溶剤を除去した後、結晶を10Lステンレスポットへ移し、酢酸エチル1,488g、エタノール1,488gを加えて40℃にて加温溶解後、20℃に冷却してヘキサン2,976gを加えて晶析を行った。以後同様の晶析を3回繰り返し、ヘキサンで洗浄した後、結晶を濾取、乾燥し、下記化合物(a8)を得た。
1H−NMR; δ(ppm):
3.40-3.90(1728H、m、 (CH2CH2O)n-CH2、 (CH2CH2O)n-CHCH2O-CH2Ph)、 4.54(2H、s、-CH2Ph)、7.27-7.38(5H、m、-CH2Ph)、 7.65-7.95(4H、m、Ph(CO)2N-)
GPC分析;
数平均分子量(Mn):19,398、重量平均分子量(Mw):19,824、多分散度(Mw/Mn):1.022
【0095】
【化28】

【0096】
(実施例9)
温度計、窒素吹き込み管、攪拌機、及び冷却管を付した1L4つ口フラスコへ上記化合物(a8)を50g、5%パラジウムカーボン(50%含水品)25gを仕込み、窒素置換後、メタノール500g、シクロヘキセン68gを加えて昇温し、52〜55℃で緩やかに還流させ、5時間反応させた。反応液を室温まで冷却後、パラジウムカーボンを濾別し、濾液を濃縮した。濃縮液にトルエン400g、ヘキサン200gを加えて晶析した。得られた結晶を濾取、乾燥し、下記化合物(a9)を得た。
1H−NMR; δ(ppm):
3.40-3.90 (1684H、m、-(CH2CH2O)n-CH2、-(CH2CH2O)n-CHCH2OH)、
7.65-7.95(4H、m、Ph(CO)2N-)
GPC分析;
数平均分子量(Mn):18,817、重量平均分子量(Mw):19,171、多分散度(Mw/Mn):1.019
【0097】
【化29】

【0098】
(実施例10)
温度計、窒素吹き込み管、攪拌機、Dean-stark管、及び冷却管を付した1L4つ口フラスコへ上記化合物(a1)を200g(10.0mmol)、トルエン600gを仕込み、加熱還流させ、水分を共沸除去した。40℃へ冷却後、脱水クロロホルム1,000g、フタルイミド8.83g(60.0mmol)、トリフェニホスフィン15.7g(60.0mmol)を加え攪拌溶解し、室温に冷却後ジイソプロピルアゾジカルボキシレート12.1g(60.0mmol)40度にて3時間反応させた。続いて、ナトリウムを2.58g(112mmol)溶解させた3,3-ジエトキシ-1-プロパノール85.6g(465mmol)のトルエン(256.8g)溶液を加え、70℃で5時間反応させた。反応液をろ過後、濾液を10Lステンレスポットへ移し、酢酸エチル1,488g、エタノール1,488g、ヘキサン2,976gを加えて晶析を行った。析出した結晶をろ過して溶剤を除去した後、結晶を10Lステンレスポットへ移し、酢酸エチル1,488g、エタノール1,488gを加えて40℃にて加温溶解後、20℃に冷却してヘキサン2,976gを加えて晶析を行った。以後同様の晶析を3回繰り返し、ヘキサンで洗浄した後、結晶を濾取、乾燥し、下記化合物(a10)を得た。
1H−NMR;
δ(ppm):2.83-2.89(4H、t、NH2-CH2CH2-)、
3.40-3.90 (1676H、m、-(CH2CH2O)n-CH2、-(CH2CH2O)n-CHCH2OH)
GPC分析;
数平均分子量(Mn):18,559、重量平均分子量(Mw):19,264、多分散度(Mw/Mn):1.038
【0099】
【化30】

【0100】
(実施例11)
温度計、窒素吹き込み管、攪拌機、Dean-stark管、及び冷却管を付した100mL3つ口フラスコへ上記化合物(a5)を5.0g(0.25mmol)、トルエン26g、アセトニトリル4.0g、N-メチルモルホリン(2.50mmol)、N-Succinimidyl
3-maleimidopropionate(0.75mmol)を仕込み、室温にて4時間反応させた。この溶液をろ過した後、室温において300mLビーカーで酢酸エチル100g、ヘキサン50gを添加して晶析を行った。次に酢酸エチルを100gを添加し40℃で結晶を溶解させた後、室温に冷却してヘキサンを100g添加し析出した。この晶析をあと2回繰り返した後、ヘキサンで洗浄、結晶を濾取、乾燥し、下記化合物(a11)を得た。
1H−NMR; δ(ppm):
2.51(2H、t、CH2CH2CONH)、3.40-3.90 (1767H、m, -(CH2CH2O)n-CH2、-(CH2CH2O)n-CHCH2OH、CH2CH2CONH)、 6.50(1H、s、CH2CH2CONH)、 6.70(2H, s, CH=CH)
GPC分析;
数平均分子量(Mn):19,734、重量平均分子量(Mw):21,336、多分散度(Mw/Mn):1.081
【0101】
【化31】

【0102】
(実施例12)
温度計、窒素吹き込み管、攪拌機、Dean-stark管、及び冷却管を付した100mL3つ口フラスコへ上記化合物(a5)を4.0g(0.20mmol)、ジクロロメタン20g、トリエチルアミン(2.50mmol)、N,N-Disuccinimidyl carbonate(0.75mmol)を仕込み、室温にて4時間反応させた。この溶液をろ過、濃縮した後、300mLビーカーで酢酸エチル100g、ヘキサン50gを添加して晶析を行った。次に酢酸エチルを100gを添加し40℃で結晶を溶解させた後、室温に冷却してヘキサンを100g添加し析出した。この晶析をあと3回繰り返した後、ヘキサンで洗浄、結晶を濾取、乾燥し、下記化合物(a12)を得た。
1H−NMR; δ(ppm):
2.51(2H、t、CH2CH2CONH)、 2.84(4H、s、-CH2O-COO-succinimide)、 3.40-3.90 (1751H、m, -(CH2CH2O)n-CH2、-(CH2CH2O)n-CH、-CH2O-COO-succinimide、CH2CH2CONH)、 4.36-4.52(2H, m, -CH2O-COO-succinimide)、 6.37(1H、s、CH2CH2CONH)、 6.70(2H, s, CH=CH)
GPC分析;
数平均分子量(Mn):19,659、重量平均分子量(Mw):21,450、多分散度(Mw/Mn):1.091
【0103】
【化32】

【0104】
(実施例13)
10mMリン酸バッファー(pH=6.4)1mlに対してGRGDS(Gly -Arg -Gly -Asp -Ser、分子量:490.5)を2.5mg(5.1μmol)溶解させた。この溶液200μlに化合物(a12)を10mg(0.5μmol)を加え、室温にて1時間反応させ、化合物中の1つの活性カーボネート基にGRGDSを修飾した。続いて Humanin (Met -Ala -Pro -Arg -Gly -Phe -Ser -Cys -Leu -Leu -Leu -Leu -Thr -Ser -Glu -Ile - Asp -Leu -Pro -Val -Lys -Arg -Arg -Ala、分子量:2,687.2)20mg(7.4μmol)をこの溶液に加え、室温にて10時間反応させ、化合物中の2つのマレイミド基にHumaninを修飾した。反応液200μlを、SP-Sepharose FF(アマシャム社製)カラムにチャージし、20mM Tris-HClバッファー(pH8.2)で平衡化した。平衡化後、1Nとなる様NaClを加えたバッファーをカラムに通し、UVにて溶出液をモニターしながら、1つのGRGDSと、2つのHumaninが修飾されたPEG化合物の分画を得た。この分画20μlとトリスSDSサンプル処理液20μlを混合後、沸騰水浴中で2分30秒加温し、この溶液20μlを、ドデシル硫酸ナトリウムーポリアクリルアミドゲル電気泳動で分析した。染色はCBB染色で行った。この結果、各標準サンプルと比較を行なうことにより、1つのGRGDS、2つのHumaninが化合物(a12)に修飾されたものが得られたことが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式[1]で示される分岐型ヘテロポリエチレングリコール。
【化33】


(X、Yは,それぞれ、生体機能性分子に存在する官能基と反応して共有結合を形成する官能基を少なくとも含む原子団であり、原子団Xが含む前記官能基と原子団Yが含む前記官能基とは互いに異なっている。
sは、ポリエチレングリコール鎖の本数を表す2〜8の整数である。
nは、ポリエチレングリコール鎖の平均付加モル数であり、20≦n≦2000である。
Eは、ポリエチレングリコール鎖に対してs価の結合価数を有し、官能基Yに対して1価の結合価数を有する分岐リンカー部位である。)
【請求項2】
前記分岐リンカー部位Eが式[2]で表されることを特徴とする、請求項1記載の分岐型ヘテロポリエチレングリコール。
【化34】


(CHは原子団Yに対して結合している。
L1は、p本のポリエチレングリコール鎖に対して結合している結合部位であり、L2は、q本のポリエチレングリコール鎖に対して結合している結合部位であり、互いに同一でも異なっていても良く、それぞれ、エーテル結合、エステル結合、ウレタン結合、アミド結合、カーボネート結合、2級アミノ基もしくはこれらを含む飽和炭化水素基、単結合または飽和炭化水素基である。
p、qはそれぞれ1〜7の整数であり、p≧qであり、p+q=sである。)
【請求項3】
L1、L2が、それぞれ、エーテル結合、ウレタン結合、アミド結合もしくはこれらを含む飽和炭化水素基、単結合または飽和炭化水素基である、請求項2記載の分岐型ヘテロポリエチレングリコール。
【請求項4】
L1、L2が、ともに、エーテル結合を含む飽和炭化水素基、単結合または飽和炭化水素基である、請求項3記載の分岐型ヘテロポリエチレングリコール。
【請求項5】
式[3]または[4]で表される、請求項4記載の分岐型ヘテロポリエチレングリコール。
【化35】


(v=0または2であり、w=0または1である。)
【請求項6】
前記原子団Xの前記官能基および前記原子団Yの前記官能基が、それぞれ、アセタール基、アルデヒド基、マレイミド基、ビニルスルホン基、活性エステル基、活性カーボネート基、カルボキシル基、アミノ基、アミノオキシ基、チオール基、アリル基、ビニル基、アセチレン基およびアジド基からなる群より選ばれる、請求項1〜5のいずれか一つの請求項に記載の分岐型ヘテロポリエチレングリコール。
【請求項7】
前記原子団Xの前記官能基と前記原子団Yの前記官能基との少なくとも一方が、カルボキシル基、アミノ基、アミノオキシ基およびチオール基からなる群より選ばれる、請求項6記載の分岐型ヘテロポリエチレングリコール。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一つの請求項に記載の分岐型ヘテロポリエチレングリコールの中間体であって、前記原子団Xの前記官能基および前記原子団Yの前記官能基のうち少なくとも一つが保護基によって保護されていることを特徴とする、中間体。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか一つの請求項に記載の分岐型ヘテロポリエチレングリコールの末端に生体機能性分子が結合されている、ポリエチレングリコール結合体。

【公開番号】特開2012−25932(P2012−25932A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70735(P2011−70735)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)
【Fターム(参考)】