説明

分岐部保護シート及び分岐部保護方法

【課題】簡単な手順で結束作業が楽に行え、結束のばらつきもなく見栄えも良好となって作業性や信頼性に優れる分岐部保護シートを提供する。
【解決手段】分岐部保護シート1は、正方形のシート本体2に、中央部を残してシート本体2を上下ラップ部7,8に分離する左右一対の横スリット3,3を形成して、下ラップ部8の左右方向の側辺の中央に、電線分岐部の分岐部分の幅以下の間隔を有して横スリット3,3と直交する一対の縦スリット4,4を中央部を残して形成して、下ラップ部8における縦スリット4,4と直交する側辺と、上ラップ部7における横スリット3,3と直交する側辺とに沿って接着面5,6を設けてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用のワイヤハーネス等の電線束に設けられるT字状の電線分岐部を保護するための分岐部保護シートと、その分岐部保護シートを用いた分岐部保護方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤハーネス等の電線束においては、所定位置から一部の電線がT字状に分岐する電線分岐部が設けられる場合がある。この電線分岐部は、絶縁テープを巻回する等して結束保護する必要があるが、結束作業が面倒である上、作業にばらつきが生じる。そこで、特許文献1に開示の如く、表面に粘着剤が塗布されて柔軟性を有する長方形のシートに、各辺からそれぞれ直交状にスリットを形成してなる分岐シートが考案されている。これは、電線分岐部を分岐シートにより覆った後、スリット間に形成される折り返し面を他のスリットを通して電線分岐部の外周面に沿って順番に折り返すことにより、電線分岐部を結束可能としたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−117034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記分岐シートは、全面に接着剤が塗布される上、結束の際に折り返し面を他のスリットに通して接着する手順となるため、手順を間違えたり、結束の際に折り返し面同士が勝手に接着して剥がす作業が生じたりして手間が掛かる。
また、電線分岐部に対する位置決めが難しいため、各折り返し面の巻き付け量にムラが生じやすく、見栄えが悪くなるおそれもある。
【0005】
そこで、本発明は、簡単な手順で結束作業が楽に行え、結束のばらつきもなく見栄えも良好となって作業性や信頼性に優れる分岐部保護シート及び分岐部保護方法を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、本線部分と、その本線部分から直交状に分岐する分岐部分とからなるT字状の電線分岐部を結束保護するための分岐部保護シートであって、正方形又は四角形のシート本体に、中央部を残してシート本体を上下のラップ部に分離する左右一対の横スリットを形成して、上下何れか一方のラップ部の左右方向の側辺の中央に、分岐部分の幅以下の間隔を有して横スリットと直交する一対の縦スリットを中央部を残して形成して、一方のラップ部における縦スリットと直交する側辺と、シート本体の他方のラップ部における横スリットと直交する少なくとも一方の側辺とに沿って接着面をそれぞれ設けたことを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明は、請求項1の構成において、他方のラップ部における横スリットと直交する両側辺に沿って接着面を設けたことを特徴とするものである。
上記目的を達成するために、請求項3に記載の発明は、本線部分と、その本線部分から直交状に分岐する分岐部分とからなるT字状の電線分岐部を結束保護する方法であって、請求項1又は2に記載の分岐部保護シート上の一方のラップ部に横スリットに沿って本線部分をセットすると共に、縦スリットの延長上で横スリットの間を通るように分岐部分を他方のラップ部にセットして、他方のラップ部を分岐部分に左右方向から巻き付けて接着面を利用して固定する一方、一方のラップ部を本線部分に上下方向から巻き付けて接着面を利用して固定することを特徴とするものである。
なお、電線分岐部の「直交状」は、厳密な直交を含む他、本線部分に対して分岐部分が僅かに傾いて分岐する略直交も含む。
【発明の効果】
【0007】
請求項1及び3に記載の発明によれば、簡単な手順で電線分岐部の結束作業が楽に行え、結束のばらつきもなく見栄えも良好となる。従って、電線分岐部の結束に係る作業性や信頼性に優れたものとなる。
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加えて、一方の接着面を仮止めに利用でき、結束途中でずれたり緩んだりするおそれがなくなって作業性がより良好となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】分岐部保護シートの説明図である。
【図2】(A)〜(F)は分岐部保護方法の説明図である。
【図3】分岐部保護シートの変更例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に分岐部保護シートの一例を示す。この分岐部保護シート(以下単に「保護シート」という。)1は、エポキシフィルム、ポリイミドフィルム等で作製されて柔軟性を有する正方形のシート本体2を有し、シート本体2の上下方向の中間には、左右の側辺からそれぞれ直交状に一対の横スリット3,3が、シート本体2の中央部で終端間に所定間隔(例えば20〜25mm)を残して形成されている。
また、横スリット3,3によって上下に分離されるシート本体2の下側部分で下辺の中央には、後述する電線分岐部20の分岐部分22の幅以下となる間隔で下辺から直交状に一対の縦スリット4,4が、これもシート本体2の中央部を残して下側部分の略中間位置に達する長さで形成されている。
【0010】
さらに、シート本体2の上側部分で横スリット3と隣接する左側の側辺には、所定幅で上下方向に亘って両面テープからなる接着面5が形成される一方、シート本体2の下側部分の下辺にも、所定幅で縦スリット4を除く左右方向に亘って両面テープからなる接着面6が形成されている。
これにより、保護シート1には、横スリット3,3の上側部分に上ラップ部7が形成される一方、横スリット3,3の下側部分に下ラップ部8が形成されて、さらに下ラップ部8は、縦スリット4,4によって、左端の左下ラップ部9と、右端の右下ラップ部10と、中央の中下ラップ部10とに分離形成される。
【0011】
以上の如く構成された保護シート1を用いて、ワイヤハーネスにおけるT字状の電線分岐部を保護する方法を説明する。
まず、図2(A)に示すように、本線部分21と、その本線部分21から直交状に分岐する分岐部分22とからなるT字状の電線分岐部20を、分岐部分22が上向きとなる逆T字状の向きで、本線部分21が下ラップ部8上で横スリット3,3に沿って位置し、且つ分岐部分22が縦スリット4,4の延長上で横スリット3,3の間を通るように上ラップ部7上で位置するように保護シート1上にセットする。このとき、分岐部分22の下方に位置する縦スリット4,4によって分岐部分22の位置決めがしやすくなる。
【0012】
次に、同図(A)に矢印で示すように、分岐部分22に対して上ラップ部7の接着面5を有しない右側を巻き付けた後、上ラップ部7の左側をその上から巻き付けて接着面5によって固定する。すると、同図(B)に示すように、分岐部分22が上ラップ部7によってラップされる。
【0013】
続いて、左下ラップ部9を本線部分21の左側に下から巻き付けて接着面6で固定すると、同図(C)に示すように、本線部分21の左側が左下ラップ部9によってラップされる。その後、右下ラップ部10を本線部分21の右側に下から巻き付けて接着面6で固定すると、同図(D)に示すように、本線部分21の右側が右下ラップ部10によってラップされる。
【0014】
そして、残った中小ラップ部11を本線部分21から分岐部分22に掛けて下から巻き付けて接着面6で固定する。すると、同図(E)に示すように、電線分岐部20は保護シート1によって全体がラップされる。最後に絶縁テープ12で保護シート1の全体を巻回すれば、同図(F)のように電線分岐部20の結束は終了する。
なお、電線分岐部20からさらに一又は複数の電線を引き出す場合は、左右下ラップ部8,9の間から中小ラップ部11の巻き付け部分から引き出すことができる。
【0015】
このように、上記形態の保護シート1は、正方形のシート本体2に、中央部を残してシート本体2を上下ラップ部7,8に分離する左右一対の横スリット3,3を形成して、下ラップ部8の左右方向の側辺の中央に、分岐部分22の幅以下の間隔を有して横スリット3,3と直交する一対の縦スリット4,4を中央部を残して形成して、下ラップ部8における縦スリット4,4と直交する側辺と、上ラップ部7における横スリット3,3と直交する側辺とに沿って接着面5,6をそれぞれ設けてなる。
【0016】
そして、上記形態の分岐部保護方法は、保護シート1の下ラップ部8に横スリット3,3に沿って本線部分21をセットすると共に、縦スリット4,4の延長上で横スリット3,3の間を通るように分岐部分22を上ラップ部7にセットして、上ラップ部7によって分岐部分22を左右方向から巻き付けて接着面5を利用して固定する一方、下ラップ部8によって本線部分21を上下方向から巻き付けて接着面6を利用して固定するようにしている。
【0017】
従って、上記形態の保護シート1及び分岐部保護方法によれば、簡単な手順で電線分岐部20の結束作業が楽に行え、結束のばらつきもなく見栄えも良好となって、電線分岐部20の結束に係る作業性や信頼性に優れたものとなる。
特に、保護シート1において、分岐部分22の幅以下の間隔で縦スリット4,4を形成しているので、中下ラップ部11を電線分岐部20に巻き付けて接着する際に中下ラップ部11が分岐部分22の表面に合わせて変形し、見栄え良く接着される。
【0018】
なお、上記形態では、電線分岐部を逆T字状にセットして結束する手順を説明しているが、保護シートを上下逆にして電線分岐部をT字状にセットしても同様の手順となる。また、上ラップ部と下ラップ部との巻き付けの順番も適宜変更して差し支えない。
さらに、横スリットの間隔は、結束する分岐部分の径に設定すればよいが、分岐部分の径が異なるものでも結束できるように、想定される分岐部分の最小径に合わせて設定するのが望ましい。これは縦スリットの終端位置についても同様で、横スリットとの間隔は、結束する本線部分の径に設定すればよいが、想定される本線部分の最小径に合わせて設定するのが望ましい。
加えて、保護シートは正方形に限らず、四角形であっても同様に適用できる。
【0019】
一方、上記形態では、シート本体の上ラップ部の一方の側辺にのみ接着面を設けているが、図3に示すように上ラップ部7の両側辺に接着面5,5を設けてもよい。このように両側辺に設ければ、一方の接着面を仮止めに利用でき、結束途中で上ラップ部7がずれたり緩んだりするおそれがなくなって作業性がより良好となる。
また、接着面は両面テープを用いる以外に、面ファスナーを用いたり、結束の際に側辺に接着剤を塗布したりして形成しても差し支えない。
【符号の説明】
【0020】
1・・分岐部保護シート、2・・シート本体、3・・横スリット、4・・縦スリット、5,6・・接着面、7・・上ラップ部、8・・下ラップ部、9・・左下ラップ部、10・・右下ラップ部、11・・中下ラップ部、12・・絶縁テープ、20・・電線分岐部、21・・本線部分、22・・分岐部分。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本線部分と、その本線部分から直交状に分岐する分岐部分とからなるT字状の電線分岐部を結束保護するための分岐部保護シートであって、
正方形又は四角形のシート本体に、中央部を残して前記シート本体を上下のラップ部に分離する左右一対の横スリットを形成して、上下何れか一方のラップ部の左右方向の側辺の中央に、前記分岐部分の幅以下の間隔を有して前記横スリットと直交する一対の縦スリットを前記中央部を残して形成して、
前記一方のラップ部における前記縦スリットと直交する側辺と、前記シート本体の他方のラップ部における前記横スリットと直交する少なくとも一方の側辺とに沿って接着面をそれぞれ設けたことを特徴とする分岐部保護シート。
【請求項2】
前記他方のラップ部における前記横スリットと直交する両側辺に沿って前記接着面を設けたことを特徴とする請求項1に記載の分岐部保護シート。
【請求項3】
本線部分と、その本線部分から直交状に分岐する分岐部分とからなるT字状の電線分岐部を結束保護する方法であって、
請求項1又は2に記載の分岐部保護シート上の前記一方のラップ部に前記横スリットに沿って前記本線部分をセットすると共に、前記縦スリットの延長上で前記横スリットの間を通るように前記分岐部分を前記他方のラップ部にセットして、前記他方のラップ部を前記分岐部分に左右方向から巻き付けて前記接着面を利用して固定する一方、前記一方のラップ部を前記本線部分に上下方向から巻き付けて前記接着面を利用して固定することを特徴とする分岐部保護方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−199992(P2011−199992A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−62963(P2010−62963)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)
【Fターム(参考)】