説明

分布巻き型回転電機

【課題】分布巻き型の回転電機においてコイルエンドを効果的に冷却する。
【解決手段】ステータが固定される外筒リング11と、外筒リング11と軸方向に隣接して配置されるコイルエンド20と、を含む分布巻き型モータ100において、外筒リング11の外周面12に設けられ、外筒リング11の円周方向からコイルエンド20の方向に向かって冷却油を流すガイドベーン13〜15を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分布巻き型回転電機のステータ冷却流路の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
モータ、発電機あるいは両方の機能を備えるモータジェネレータなどの回転電機は、コイルが巻回されたステータと、回転するロータとを備えている。ステータのコイルに電流が流れるとステータのコイルが発熱するので、これらの回転電機ではステータのコイルを冷却する必要がある。冷却には空冷方式も用いられるが、近年の自動車などに用いられる高出力の回転電機では、より冷却効率の良い油冷方式が用いられることが多い。
【0003】
ステータは円筒形状のケースに収納されることが多いので、ステータを収納する円筒形状のケースを中空の冷却ジャケットとし、冷却ジャケットの内面に冷却油を流す溝を設けてステータを冷却することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、分割ステータを締結リングで円筒形に組み合わせ、組み合わせたステータをケースに収めて組み立てられるモータのステータにおいて、締結リングの外面あるいはケースの内面に凸状や仕切り凸状によって冷却油の流れる流路を構成し、ステータを冷却する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−17777号公報
【特許文献2】特開2010−226918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ステータにコイルを巻回する方法は、分布巻きと集中巻きとがある。分布巻きの場合、複数のステータコアのティースに分割してコイルを巻回するので、ティースから次のティースまでの渡りワイヤがステータコアの軸方向端部に配置される。この複数本のワイヤは、ステータコアの軸方向端面に盛り上がり、コイルエンドを形成する。そして、回転電機を運転した場合にはコイルエンドも発熱しその温度も上昇する。しかし、特許文献1,2に記載された従来技術では、ステータの外面の冷却はできても、ステータコアを有効に冷却することができない場合が多い。また、ステータのケースの上側から冷却油を吹きかけてステータやコイルエンドを冷却することも考えられるが、冷却油がコイルエンドに行き渡らずに効果的にコイルエンドの冷却を行うことが難しいという問題があった。
【0006】
本発明は、分布巻き型の回転電機においてコイルエンドを効果的に冷却することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の回転電機は、ステータが固定される外筒リングと、外筒リングと軸方向に隣接して配置されるコイルエンドと、を含む分布巻き型回転電機であって、外筒リングの外周面に設けられ、外筒リングの円周方向からコイルエンドの方向に向かって冷却油を流す流路を備えること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、分布巻き型の回転電機においてコイルエンドを効果的に冷却することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態における分布巻き型モータの構成を示す横方向から見た説明図である。
【図2】本発明の実施形態における分布巻き型モータの構成を示す軸方向から見た説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1に本発明の実施形態の分布巻き型モータ100のステータ10と冷却油供給管30とを示す。ロータ等他の部品については図示を省略している。図1に示すように、分布巻き型モータ100のステータ10は内部にステータコアとコイルを格納する外筒リング11と、外筒リング11から回転の中心線101の方向の端面に隣接して配置されたコイルエンド20と、外筒リング11の天頂部分に中心線101の方向に延びるように配置された冷却油供給管30とを備えている。
【0011】
冷却油供給管30の下側には冷却油噴出口31が設けられている。図2に示すように、冷却油噴出口31は、外筒リング11の垂直軸103にまたがって円周角θの扇型の範囲に冷却油を噴射することができるように構成されている。
【0012】
外筒リング11の外面には左右に第1、第2、第3のガイドベーン13,14,15がそれぞれ取り付けられている。各ガイドベーン13,14,15は、冷却油供給管30に向う側の入口端13a,14a,15aが外筒リング11の円周方向に向って斜め上方に延び、反対側の出口端13b,14b,15bはコイルエンド20に向うように湾曲した板である。また、3つのガイドベーン13,14,15はコイルエンド20側から中心線101の方向に沿って第1のガイドベーン13,第2のガイドベーン14、第3のガイドベーン15の順に配置され、各ガイドベーン13,14,15の各入口端13a,14a,15aはそれぞれ中心線101の方向に沿って間隔があけられて配置されている。また、外筒リング11の下部と、コイルエンド20の下部とは、図示しないケーシングの中の冷却油溜り50の冷却油の液面51よりも下となるように配置されている。
【0013】
以上のように構成された分布巻き型モータ100の冷却動作について説明する。ケーシングの下部の冷却油たまり50に溜まった冷却油は図示しない冷却油ポンプによって加圧され、冷却油供給管30に流入する。冷却油供給管30に流入した冷却油は冷却油供給管30の冷却油噴出口31から外筒リング11の外周面12に向って噴射される。図2に示すように冷却油は冷却油噴出口31から円周角θの扇形の範囲で下方の外筒リング11の外周面12に吹き付けられる。また、軸方向にも扇形に広がり、一部の冷却油はコイルエンド20の表面に吹きつけられる。冷却油が直接吹き付けられている領域では外筒リング11、コイルエンド20ともに効率よく冷却が行われる。
【0014】
図2に示す円周角θの扇形の境界線が外周面12と接する線104より下の部分では、冷却油噴出口31から噴出した冷却油が直接外筒リング11あるいはコイルエンド20の表面に吹き付けられず、外筒リング11の外周面12に沿って冷却油が下方に向って流れてくる。図1に示すように、入口端13a,14aが中心線101よりも上側にあるガイドベーン13,14は、この外周面12に沿って流れてきた冷却油の流れの方向を外筒リング11の円周方向からコイルエンド20の方向に向かうように変更する。このため、冷却油は外筒リング11に沿って中心線101から下部の冷却油溜り50に落下せず、外筒リング11からコイルエンド20に流れ、発熱の大きいコイルエンド20を効果的に冷却することができる。また、入口端15aが中心線101よりも下側にあるガイドベーン15は、中心線101から下に向って落下した冷却油をキャッチしてコイルエンド20に向って流し、コイルエンド20の下部を効果的に冷却することができる。各部を冷却した冷却油は冷却油溜り50に落下し、再び図示しない冷却油ポンプによって冷却油供給管30に供給される。
【0015】
以上説明した実施形態は、上部から外筒リング11に吹きかけた冷却油を効果的にコイルエンド20に導いてコイルエンド20を冷却することができる。特に、ガイドベーン13〜15によって上部から外筒リング11に吹きかけた冷却油が中心線101,102の高さから直接冷却油溜り50に落下せず、コイルエンド20の表面を冷却するように冷却油の流路を形成するので、冷却油噴出口31から噴出した冷却油が直接かからず、冷却油溜り50の中に浸かっていない図1、図2に示すコイルエンド20の側面領域A,Bの温度を効果的に下げることができる。また、ガイドベーン13〜15は外筒リング11の表面に設けられた放熱フィンとしても作用するので、外筒リング11も効果的に冷却することができる。
【0016】
以上説明した実施形態では、ガイドベーン13〜15は板状のものとして説明したが、冷却油の流れの方向を円周方向からコイルエンド20の方向に変更することができる流路を構成するもので有ればどのような形状でもよく、例えば、半円筒形や1/4円筒形などの断面でも良いし、L字型の断面であってもよい。また、ガイドベーン13〜15の長さ、幅などは、各ガイドベーン13〜15に沿って流れる冷却油の流量が均一と成るように調整するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0017】
10 ステータ、11 外筒リング、12 外周面、13,14,15 ガイドベーン、13a,14a,15a 入口端、13b,14b,15b 出口端、20 コイルエンド、30 冷却油供給管、31 冷却油噴出口、50 冷却油溜り、51 液面、100 分布巻き型モータ、101,102 中心軸、103 垂直軸、104 線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータが固定される外筒リングと、
外筒リングと軸方向に隣接して配置されるコイルエンドと、を含む分布巻き型回転電機であって、
外筒リングの外周面に設けられ、外筒リングの円周方向からコイルエンドの方向に向かって冷却油を流す流路を備えること、
を特徴とする分布巻き型回転電機。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−222904(P2012−222904A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84619(P2011−84619)
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】