説明

分散剤及びそれを用いた飲料

【課題】飲料の食感・味を損なうことなく、細胞壁成分含有物を安定に水に分散することができる分散剤を提供すること。
【解決手段】ゼリー強度が1.5%寒天濃度で1,200g/cm以上の高強度寒天からなる分散剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散剤及びそれを用いた飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ココア飲料等の不溶性成分含有物を含む飲料が数多く存在する。これらの飲料では、不溶性成分含有物が沈殿するのを防止して均質化することが望まれている。例えば、ココア飲料では、不溶性成分含有物の分散剤として、カラギーナンが用いられている(特許文献1)。また、ゼリー強度が1.5%寒天濃度で250g/cm以下の低強度寒天を分散剤に用いた飲料が開示されている(特許文献2)。
【0003】
果実のピューレや、果実の果肉等の固体物を配合した飲料等においては、果肉感を呈する飲料のニーズが高まっている。このような飲料の分散剤として、ペクチン、キサンタンガム、ローカストビンガム、タマリンド等の多糖類が知られている。例えば、分散剤としてジェランガムを用いたもの(特許文献3)や、ジェランガムと低メトキシル(LM)ペクチンを併用して用いたもの(特許文献4)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3126830号公報
【特許文献2】特許第3181428号公報
【特許文献3】特開昭59−88051号公報
【特許文献4】特許第3544274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
カラギーナンを分散剤としたココア飲料では、カゼインとカラギーナンの相互作用による増粘効果から、ココア粉末の均一な分散状態が保たれている。しかしながら、この増粘効果のため、糊状感があり喉越しが悪いという欠点がある。
【0006】
一方、特許文献2の低強度寒天を分散剤とした場合、カラギーナンを分散剤とした場合よりは糊状感が少ないココア飲料とすることができるものの、やはり糊状感があるという欠点や、粘度を調整するために多量に添加しなければならないという欠点がある。
【0007】
また、果実のピューレや、果実の果肉等の固体物を配合した飲料では、特許文献3及び4のようにガム系の多糖類を分散剤とした場合、安定に分散させるために必要な粘度を達成するために添加量が多くなり、これにより多糖類特有の糊状感によって喉越しが悪くなるという欠点や、多糖類特有の風味又は多糖類自体の味によって飲料の風味、清涼感を損なうという欠点がある。
【0008】
このように、ココア粉末等の不溶性成分含有物、果実のピューレや果実の果肉等の固体物等の細胞壁成分含有物を配合した飲料において、これらの細胞壁成分含有物を安定に分散させるとともに、市場で求められている喉越しや果実感を達成することのできる分散剤は得られていなかった。
【0009】
そこで、本発明は、飲料の食感・味を損なうことなく、細胞壁成分含有物を安定に水に分散することができる分散剤を提供することを目的とする。本発明はまた、その分散剤を含有する飲料を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ゼリー強度が1.5%寒天濃度で1,200g/cm以上の高強度寒天からなる分散剤を提供する。本発明の分散剤は、上記構成を有しているため、細胞壁成分含有物等の水不溶物を飲料等の水溶液に安定に分散させることができ、沈殿の形成を防止することができる。
【0011】
上記分散剤は、細胞壁成分含有物を安定に分散させることができるため、細胞壁成分含有物分散用として好ましく使用できる。
【0012】
本発明はまた、細胞壁成分含有物と上記分散剤とを含有し、上記分散剤の含有量が、全量に対して、0.025〜0.15質量%である、飲料を提供する。本発明の飲料は、上記分散剤を用いているため、上記分散剤の含有量が0.025〜0.15質量%と低い場合でも、細胞壁成分含有物の沈殿が防止される。また、分散剤の含有量が低いため、糊状感のない優れた食感・味を有する。例えば、果肉等を配合した飲料の場合、果肉感にあふれた糊状感のない優れた喉越しが得られる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の分散剤は、希薄濃度で用いても、細胞壁成分含有物を安定に水に分散することができる。また、飲料に用いた場合、食感・味に優れた飲料とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0015】
本明細書において、ゼリー強度とは、日寒水式に準ずる方法で測定したゼリー強度を意味する。具体的には、以下に記載する方法で測定した最大破断荷重(g/cm)である。粉末状寒天を1.5質量%(1.5%寒天濃度)となるように蒸留水に懸濁させ、オートクレーブ(120℃,10分間)により溶解させる。この溶解液を20℃で15時間放置し、直径22mm,高さ18mmの円柱形に凝固させた寒天ゲルを試験片とする。INSTRON 5942(INSTRON)装置を用い、20℃にて、この試験片に対して、円柱形(φ10mm)プランジャーにより30mm/分の速度で力を加え、試験片が破断する荷重(最大破断荷重)を測定する。なお、ここにいう最大破断荷重とは、三つの試験片について試験片が破断する荷重を測定し、その測定値を平均した値である。
【0016】
本明細書において、細胞壁成分とは、植物の細胞壁に由来する水に不溶の成分をいい、細胞壁成分含有物とは、細胞壁成分を含有する物をいう。植物の細胞壁はセルロース、リグニン、ペクチン等を主な成分として含む。このため、細胞壁成分含有物は水に溶解しにくく、飲料等に含まれる場合に沈殿を生じる原因となる。
【0017】
細胞壁成分含有物には、通常の飲食料品に用いられる植物の加工物が含まれる。植物の加工物には、例えば、植物の搾りかす、搾り汁、破砕物、切断物、磨砕物等が含まれる。また、植物には食用できるあらゆるものが含まれ、例えば、野菜類、きのこ類、果物、穀類、芋類、豆類、藻類が含まれる。細胞壁成分含有物の具体例としては、ココア粉末、きな粉、オカラ、果肉、果肉の破片、果実パルプ(果実の繊維分を含む果汁)、果実のピューレ、砂じょう、野菜のピューレ、南瓜磨砕物、マッシュポテト、餡子、米粉、微細藻類(クロレラ等)、並びに木材、竹及び海藻の粉末等が挙げられる。中でも、ココア粉末、果肉及びその破片、果実パルプが好ましい。
【0018】
寒天は、テングサ、オゴノリ等の紅藻類から抽出した粘液質を凍結又は乾燥して得られる高分子である。寒天の主な成分は多糖類(アガロース、アガロペクチン)である。寒天は、溶液の状態ではランダムコイルとして存在する(ゾル状態)。また、このゾル状態の溶液を冷却するとダブルヘリックス構造が会合した三次元ネットワークを形成する(ゲル状態)。このような性質を有することから、寒天はゲル化剤として食品、医薬品、寒天培地等、様々な用途に用いられている。通常、これらの用途に用いられる寒天のゼリー強度は、1.5%寒天濃度で400〜800g/cm程度である。
【0019】
本発明に係る高強度寒天は、1.5%寒天濃度で1,200g/cm以上との、高いゼリー強度を有する寒天である。このような高いゼリー強度を有していることから、細胞壁成分含有物等の水不溶物を水溶液中で安定に分散させることができる。
【0020】
本発明に係る高強度寒天のゼリー強度は、1.5%寒天濃度で1,500g/cm以上であることがより好ましい。ゼリー強度は高ければ高いほどよく、特に上限はない。しかしながら、取り扱いの容易さ、コスト等の観点から、1.5%寒天濃度で3,500g/cm以下とすることが好ましい。
【0021】
本発明に係る高強度寒天は、例えば、特許第4494517号公報に記載された方法で製造することができる。
【0022】
本発明の分散剤は、上述の高強度寒天からなるものである。分散剤の形態は、粉末状、フレーク状、糸状、角材状等の固形状のいずれであってもよい。また、予め加水した状態で提供されてもよい。
【0023】
寒天は、例えば、ところてん、こんにゃく、ゼリー等の食品に用いられており、食しても安全である。したがって、上述の高強度寒天からなる本発明の分散剤は、飲食品等において、細胞壁成分含有物を分散させる用途に好適である。
【0024】
本発明の飲料は、細胞壁成分含有物と、本発明の分散剤とを含有する。ここで、上記分散剤の含有量は、飲料全量に対して、0.025〜0.15質量%である。この含有量が0.025質量%より低い場合は、細胞壁成分含有物を安定に分散させる効果が得られにくくなる。一方、0.15質量%を超える場合は、部分的なゲル化が生じやすくなる傾向や、好ましい食感が得られにくくなる傾向がある。上記分散剤の含有量は、0.05〜0.1質量%であることがより好ましい。
【0025】
上記飲料のpHは、特に制限されるものではなく、一般的に食品で用いられるpHの範囲内であればよい。具体的には、pH2.8〜10.0の範囲内であることが好ましい。なお、低pH域では、飲料の製造工程において飲料を加温した場合に、寒天の酸分解が生じる可能性がある。このため、飲料に酸を添加する必要がある場合には、降温後に添加することが好ましい。
【0026】
上記飲料には、多糖類、蛋白質又はこれらの分画物の少なくとも1種を、上記分散剤と併用してもよい。多糖類としては、デンプン,デキストリン,セルロース,カラギーナン,ファーセラン,グアーガム,ローカストビンガム,タマリンド種子多糖類,タラガム,アラビアガム,トラガントガム,カラヤガム,ペクチン,キサンタンガム,プルラン,ジェランガムを例示できる。蛋白質としては、乳蛋白質,大豆蛋白質を例示できる。
【0027】
飲料としては、細胞壁成分含有物を含む飲料であればよく、具体的には、ココア飲料、果肉分散飲料、ネクター、甘酒、果肉配合清涼飲料水、野菜ジュース等が挙げられる。
【0028】
本発明の飲料は、例えば、細胞壁成分含有物を含む飲料の製造工程において、上記分散剤の含有量が、得られる飲料全量に対して、0.025〜0.15質量%となるように配合することで製造することができる。上記分散剤は、任意の工程において配合してよい。配合方法としては、加熱溶解した分散剤を、細胞壁成分含有物と混合した後、これを製造過程の飲料に配合する方法、又は加熱溶解した分散剤を製造過程の飲料に配合する方法を採ることができる。
【0029】
本発明の分散剤により細胞壁成分含有物等の水不溶物を水溶液中で安定に分散できる機構について、本発明者らは次のように考えている。本発明に係る高強度寒天は、ゼリー強度が高いため、ゲル状態に至らない低濃度溶液の状態でも弱い三次元ネットワークを形成する。この弱い三次元ネットワークが細胞壁成分含有物等の水不溶物の支持体として機能し、沈殿を生じることなく安定に分散させることができる。さらに、ゲル状態に至っていないことから、溶液の粘度が過度に上昇することが抑制され、糊状感が生じず喉越しや食感が損なわれることがない。
【実施例】
【0030】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0031】
[ココア飲料]
表1に示した配合割合で寒天、市販ココア粉末及び水を混合し、ココア飲料を製造した(実施例1〜3、比較例1及び参考例1)。ココア飲料の粘度、沈殿量及び食感・味を、以下に示す方法で評価した。
【0032】
(粘度[mPa・s])
BM型粘度計(VISCOMETER,TOKIMEC)を用い、No.2ローターにより60rpm,1分間測定を行い、得られた測定結果から粘度を算出した。
【0033】
(沈殿量)
ココア飲料を24時間静置した後、細胞壁成分含有物の沈殿量を目視により確認し、以下の基準に従って評価した。
◎:均一に分散している
○:ほとんど沈殿していない
△:大部分が沈殿している
×:ほぼ全てが沈殿している
【0034】
(食感・味)
ココア飲料を官能評価した。6名のパネリストが試飲し、寒天を添加していない参考例1のココア飲料との比較により、食感・味について以下の基準に従って評価した。パネリスト内で最も多数であった評価をそのココア飲料の評価とした。なお、ココア飲料は試飲直前に混合して沈殿を分散させた。
○:濃厚感があり、かつ食感も良い
△:わずかに濃厚感がある
−:変化なし
×:ゲルの食感がある、又はざらつきを感じる
参考例1のココア飲料と食感・味が同等の場合に変化なし(−)とした。○又は△は、参考例1のココア飲料よりも食感・味が優れていることを意味し、×は、参考例1のココア飲料よりも食感・味が劣ることを意味する。
【0035】
〔実施例1〕
ゼリー強度が1.5%寒天濃度で2,707g/cmの伊那寒天カリコリカン(伊那食品工業株式会社)に加水した後、加熱溶解させ、80℃で保温した。これに市販のココア粉末(森永乳業株式会社)を加えて混合し、ポリトロン(KINEMATICA,RECO)を用いて7,000rpmで10分間攪拌した。これを45℃まで冷却し、ホモゲナイザー(MINI−LAB 8.30H,APV Rannies)を用いて150kg/cmの圧力で均質化した。均質化後、20℃まで冷却し、1時間静置した後に振盪により混合してココア飲料を製造した。この飲料のpHは6.8であった。
【0036】
実施例1のココア飲料は、寒天の配合量に関わらず、細胞壁成分含有物の沈殿がなく(◎又は○)、優れた分散効果が確認された。
また、実施例1のココア飲料は、寒天の配合量が0.05質量%、0.1質量%のとき、糊状感のない優れた喉越しが得られ、適度な粘度が付加されて濃厚感が増大しており、寒天の添加により良好な食感・味となった。一方、寒天の配合量が0.2質量%のとき、部分的にゲル化が見られ、寒天を添加していない参考例1よりも食感・味に劣る結果となった。
【0037】
〔実施例2〕
テングサ原藻を、2質量%水酸化ナトリウム溶液により90℃で16時間アルカリ処理した後、pH7に調整して115℃で3時間抽出し、ゼリー強度が1.5%寒天濃度で1944g/cmである寒天を得た。この寒天を用いて、実施例1と同様の操作によりココア飲料を製造した。この飲料のpHは6.8であった。
【0038】
実施例2のココア飲料も実施例1と同様に、寒天の配合量に関わらず、細胞壁成分含有物の沈殿がなく(◎又は○)、優れた分散効果が確認された。
また、実施例2のココア飲料は、寒天の配合量が0.05質量%、0.1質量%のとき、糊状感のない優れた喉越しが得られ、適度な粘度が付加されて濃厚感が増大しており、寒天の添加により良好な食感・味となった。一方、寒天の配合量が0.2質量%のとき、部分的にゲル化が見られ、寒天を添加していない参考例1よりも食感・味に劣る結果となった。
【0039】
〔実施例3〕
テングサ原藻を、0.4質量%水酸化ナトリウム溶液により120℃で4時間抽出し、ゼリー強度が1.5%寒天濃度で1231g/cmである寒天を得た。この寒天を用いて、実施例1と同様の操作によりココア飲料を製造した。この飲料のpHは6.8であった。
【0040】
実施例3のココア飲料も実施例1、2と同様に、寒天の配合量に関わらず、細胞壁成分含有物の沈殿がなく(◎又は○)、優れた分散効果が確認された。
また、実施例3のココア飲料は、寒天の配合量が0.05質量%、0.1質量%のとき、糊状感のない優れた喉越しが得られ、適度な粘度が付加されて濃厚感が増大しており、寒天の添加により良好な食感・味となった。一方、寒天の配合量が0.2質量%のとき、部分的にゲル化が見られ、寒天を添加していない参考例1よりも食感・味に劣る結果となった。
【0041】
〔比較例1〕
ゼリー強度が1.5%寒天濃度で800g/cmの寒天(和光純薬工業株式会社)を用いて、実施例1と同様の操作によりココア飲料を製造した。この飲料のpHは6.8であった。
【0042】
比較例1のココア飲料は、寒天の配合量を0.2質量%と高くしても、細胞壁成分含有物の沈殿がほとんどなかった。一方、寒天の配合量が0.05質量%、0.1質量%のとき、細胞壁成分含有物のほとんどが沈殿し(△又は×)、分散効果が著しく劣っていた。
また、比較例1のココア飲料は、寒天の配合量を0.2質量%と高くしたとき、部分的にゲル化や凝集塊が見られ、食感・味に劣る結果となった。さらに、寒天の配合量が0.05質量%、0.1質量%のとき、細胞壁成分含有物の分散が不十分なことから飲料が分離を起こし、凝集塊のざらつきを感じて、食感・味に劣る結果となった。
【0043】
〔参考例1〕
寒天を用いなかったこと以外は実施例1と同様の操作によりココア飲料を製造した。この飲料のpHは6.8であった。
【0044】
実施例1〜3、比較例1及び参考例1で製造したココア飲料の配合及び評価結果を表1にまとめた。
【表1】

【0045】
[果肉分散飲料]
表2に示した配合割合で寒天、果糖ブドウ糖液糖、クエン酸、みかん果肉及び水を混合し、果肉分散飲料を製造した(実施例4〜6、比較例2及び参考例2)。果肉分散飲料の粘度及び分散安定性を、以下に示す方法で評価した。
【0046】
(粘度[mPa・s])
BM型粘度計(VISCOMETER,TOKIMEC)を用い、No.2ローターにより60rpm,1分間測定を行い、得られた測定結果から粘度を算出した。
【0047】
(分散安定性)
果肉分散飲料を24時間静置した後、果肉分散飲料中の果肉を目視により確認し、以下の基準に従って評価した。
◎:均一に分散している
○:わずかの果肉が水面に浮上しているか、又は沈殿している(ほとんど分散)
△:ほとんどの果肉が水面に浮上しているか、又は沈殿している(わずかに分散)
×:ほぼ全ての果肉が水面に浮上しているか、又は沈殿している
【0048】
〔実施例4〕
実施例1と同じ寒天に加水した後、加熱溶解させ、80℃で保温した。これに果糖ブドウ糖液糖(三井物産株式会社)、クエン酸(結晶、食品添加物、カメレオン試薬)を加えて混合し、DCスターラー(SSK−112,IWAKI)を用いて300rpmで5分間攪拌した。これを45℃まで冷却し、ホモゲナイザー(MINI−LAB 8.30H,APV Rannies)を用いて100kg/cmの圧力で均質化した。均質化した溶液を20℃に冷却した後、みかん果肉を加え、振盪により混合して果肉分散飲料を製造した。この飲料のpHは3.0であった。
【0049】
実施例4の果肉分散飲料は、寒天の配合量が0.05質量%、0.1質量%のとき、静置しても果肉が均一に分散し続けており、果肉感にあふれた糊状感のない優れた喉越しが得られた。また、寒天の配合量が0.025質量%のときでも、ペクチン、キサンタンガム、ローカストビンガム、タマリンド等の多糖類を分散剤として用いた従来の果肉分散飲料と同程度の分散安定性を示し、かつ糊状感のない優れた喉越しが得られた。
【0050】
〔実施例5〕
実施例2と同じ寒天を用いて、実施例4と同様の操作により果肉分散飲料を製造した。この飲料のpHは3.0であった。
【0051】
実施例5の果肉分散飲料も実施例4と同様に、寒天の配合量が0.05質量%、0.1質量%のとき、静置しても果肉が均一に分散し続けており、果肉感にあふれた糊状感のない優れた喉越しが得られた。また、寒天の配合量が0.025質量%のときでも、ペクチン、キサンタンガム、ローカストビンガム、タマリンド等の多糖類を分散剤として用いた従来の果肉分散飲料と同程度の分散安定性を示し、かつ糊状感のない優れた喉越しが得られた。
【0052】
〔実施例6〕
実施例3と同じ寒天を用いて、実施例4と同様の操作により果肉分散飲料を製造した。この飲料のpHは3.0であった。
【0053】
実施例6の果肉分散飲料も実施例4及び5と同様に、寒天の配合量が0.05質量%、0.1質量%のとき、静置しても果肉が均一に分散し続けており、果肉感にあふれた糊状感のない優れた喉越しが得られた。また、寒天の配合量が0.025質量%のときでも、ペクチン、キサンタンガム、ローカストビンガム、タマリンド等の多糖類を分散剤として用いた従来の果肉分散飲料と同程度の分散安定性を示し、かつ糊状感のない優れた喉越しが得られた。
【0054】
〔比較例2〕
比較例1と同じ寒天を用いて、実施例4と同様の操作により果肉分散飲料を製造した。この飲料のpHは3.0であった。
【0055】
比較例2の果肉分散飲料は、寒天の配合量が0.025質量%、0.05質量%のとき、静置すると果肉が均一に分散しなくなり、ほぼ全ての果肉が水面に浮上したか、又は沈殿した。寒天の配合量が0.2質量%のとき、ペクチン、キサンタンガム、ローカストビンガム、タマリンド等の多糖類を分散剤として用いた従来の果肉分散飲料と同程度の分散安定性を示したが、糊状感があり喉越しに劣るものであった。
【0056】
〔参考例2〕
寒天を用いなかったこと以外は実施例4と同様の操作により果肉分散飲料を製造した。この飲料のpHは3.0であった。
【0057】
実施例4〜実施例6、比較例2及び参考例2で製造した果肉分散飲料の配合及び評価結果を表2にまとめた。
【表2】

【0058】
従来、低強度(ゼリー強度が1.5%寒天濃度で250g/cm以下、特許文献2を参照)の寒天でなければ分散安定化能がないとされていたものの、本発明の分散剤は逆に高強度の寒天を用いることにより、優れた分散効果が得られることが確認された。また、本発明の分散剤を比較的低濃度で用いることにより、ココア粉末等の不溶性成分含有物、果肉等の固体物のいずれも安定に分散させることができ、かつ糊状感がなく喉越しの良い、食感・味に優れた飲料を提供できることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼリー強度が1.5%寒天濃度で1,200g/cm以上の高強度寒天からなる分散剤。
【請求項2】
細胞壁成分含有物分散用である、請求項1に記載の分散剤。
【請求項3】
細胞壁成分含有物と請求項1に記載の分散剤とを含有し、前記分散剤の含有量が、全量に対して、0.025〜0.15質量%である、飲料。