説明

分散型の同期されたクロックアーキテクチャのためのジッタ低減方法およびジッタ低減装置

ローカルクロックと、リピータ回路とを有するUSBハブにアタッチされた、同期されたUSBデバイスのローカルクロックにおけるジッタを低減する方法であって、そのUSBハブを使用して、或るデータストリームビットレートを有するUSBデータストリームを観測すること、そのUSBハブがUSBデータストリームの中の周期信号構造を復号すること、そのUSBハブが、周期信号構造を復号したことに応答してイベント信号を生成すること、およびそのUSBハブが、そのUSBハブのローカルクロックの周波数を周期イベント信号にロックすることを備える方法。USBハブのローカルクロックは、データストリームビットレートの周波数の実質的に整数倍でUSBハブのリピータ回路のためのクロック制御源となるように適合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、出願されたとおりの内容の全体が参照により本明細書に組み込まれている、2009年5月20日に出願した米国特許出願第61/179904号に基づくとともに、第61/179904号の出願日の利益を主張する。
【0002】
本発明は、ローカル環境において、または分散スキームにおいて基本的に任意の度合いに同期される、試験−測定機器、計測インタフェース、およびプロセス制御機器のクロック、データ獲得、自動化、および制御を提供する際に特に使用されるが、そのような使用に専用ではない、USB(ユニバーサルシリアルバス)アーキテクチャの改訂版3(またはUSB3.0)に基づく接続性を、同期−タイミングシステムに提供するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0003】
改訂版2.0までを含むUSB規格は、オープンアーキテクチャにおける様々なベンダからのデバイスの相互運用性を円滑にすることを目的としていた。USB2.0は、差分シグナリング(つまり、2つの線が情報を転送する)を、それらの2つの線の信号レベルの差の形態で使用して、符号化される。USB2.0規格は、ポータブル環境、デスクトップ環境、およびホーム環境にわたる、PCアーキテクチャの拡張として意図されている。
【0004】
しかし、USBは、ユーザに焦点が合わされており、したがって、USB2.0規格は、任意の高い精度にデバイスを同期するための機構を欠いていた。いくつかの提案が、この欠点、およびその他の欠点に対処しようと試みた。例えば、米国特許第6,343,364号(Leydiers et al.)が、スマートカード読取り装置に向けられた、USBトラフィックに対する周波数ロッキングの例を開示する。この特許文献は、USB SYNCストリームおよびパケットIDストリームと比較されるローカルの自走クロックを教示する。その周期はこの周波数にマッチするように更新され、結果として、公称周波数1.5メガヘルツを有するローカルクロックがもたらされる。これは、スマートカード情報をホストPCに読み込むのに十分な度合いの同期をもたらすが、このアプローチは、スマートカード読取り装置に向けられ、デバイス間同期は、扱われない。
【0005】
WO2007/092997(Foster et al.)が、ホストPCにおけるクロックの精度にかかわらず、USBデバイス上で正確なクロック周波数の生成を許す、同期されたUSBデバイスを開示する。USB SOFパケットが、USBデバイスによって復号され、クロック基準の役割をする代わりに、クロック搬送信号として扱われる。
【0006】
搬送信号は、USBトラフィックから復号されると、倍率と組み合わされて、同期情報を生成し、したがって、ローカルクロック信号を、クロック周波数の正確な制御と合成する。このようにして、ローカルクロック信号の周波数は、搬送信号の多少、曖昧な周波数より正確であり得る。
【0007】
この構成は、数十メガヘルツのクロック周波数などの任意の高い周波数にローカルクロック信号を生成することができ、このため、所与のUSBに接続された各デバイスのローカルクロックが周波数に関して同期されることを確実にすると言われる。また、米国特許出願第10/620,769号も、ホストから各デバイスまでの信号伝搬時間の測定、およびUSBデバイスの各デバイス上でクロック位相補償を設けることによって、複数のローカルクロックを位相に関してさらに同期する方法および装置も教示する。
【0008】
米国特許出願第12/279,328号(Foster et al.)が、別のインタフェースから受信された時間基準に複数のUSBデバイスのローカルクロックを同期することを教示する。一実施形態において、USBデバイスが、IEEE−1588プロトコルを使用してイーサネットを介して外部から提供される時間シグネチャに同期されるローカルクロックを含む。さらに別の実施形態において、USBデバイスのクロックが、GPS(全地球測位システム)同期クロックから導き出された時間基準に同期される。
【0009】
前述のシステムのすべては、従来のUSB2.0の範囲内で機能し、このため、いくつかの領域において限られている。USB2.0は、デバイス応答タイムアウトによって範囲が限られている。これは、USBホストコントローラが、このUSBホストコントローラからの要求に応答した所与のUSBデバイスからの信号の受信に割り当てる時間の窓である。したがって、USB2.0の物理的到達距離は、約25メートルである。
【0010】
USB3.0規格が、2008年11月にリリースされ、やはり、消費者アプリケーションに焦点が合わされている。USB3.0規格は、USBのアーキテクチャに相当な変更を行う。詳細には、前述した背景技術の同期スキームが、新たな毎秒5Gbのプロトコル(「SuperSpeed USB」と呼ばれる)では、このプロトコルが、SOFパケットに関するブロードキャスト機構をなくすため、機能しない。
【0011】
USB3.0は、同一の接続ケーブル上で2つの並行の、独立したUSBバスを定義する。第1に、USB2.0バスが、変更されないままであり(後方互換性のために)、低速度(毎秒1.5Mb)プロトコル、フル速度(毎秒12Mb)プロトコル、および高速度(毎秒480Mb)プロトコルを提供する。毎秒5Gbトラフィックのための第2のバスが、SuperSpeed USBを提供する。これらのバスは、所与のUSBデバイスに対する、これらのバスの動作が相互排他的であること以外は、独立して動作する。つまり、SuperSpeed接続が可能である場合、USB2.0バスは、そのデバイスから接続を解除されている。
【0012】
USB3.0のデュアルバスアーキテクチャが、図1に10で概略で示される。USBホストコントローラ14を含むパーソナルコンピュータ12が、第1のUSB3.0準拠のケーブル18によってUSB3.0ハブ16に接続され、USB3.0デバイス20が、第2のUSB3.0準拠のケーブル24によってUSB3.0ハブ16の下流ポート22に接続される。
【0013】
USBホストコントローラ14は、USB2.0ホスト26とSuperSpeedホスト28をともに含む。これら2つのホスト26、28は、互いに独立であり、各ホスト26、28は、127個までのデバイス(ハブを含む)に接続されることが可能である。USB3.0準拠のケーブルは、USB2.0準拠のケーブルと、SuperSpeed信号を伝送することができる一連の遮蔽導線とを含む複合ケーブルである。このため、USB3.0準拠のケーブル18は、USB2.0準拠のケーブル30と、遮蔽導線32とを備える。
【0014】
USB3.0ハブ16は、複合ケーブル18によってそれぞれのホスト26、28にそれぞれ直接に接続された、USB2.0ハブ機能34とSuperSpeedハブ機能36をともに含む。USB3.0デバイス20は、複合ケーブル24によってUSB3.0ハブ16のそれぞれのハブ機能34、36にそれぞれ戻るように接続された、USB2.0デバイス機能38とSuperSpeedデバイス機能40をともに含む。
【0015】
USB3.0デバイス20を列挙する時点で、SuperSpeedホスト28は、SuperSpeedデバイス機能(40)が存在するか確認する。SuperSpeedデバイスが見つかった場合、接続が確立される。SuperSpeedデバイスが見つからなかった場合(USB2.0デバイスだけしかポート22に接続されていない場合のように)、USB2.0ホスト26が、デバイス20にUSB2.0デバイス機能(38)が存在するか確認する。ホストコントローラ14が、いずれのデバイス機能が接続されているかを特定すると、コントローラ14は、USB2.0デバイス機能38がアタッチされているか、SuperSpeedデバイス機能40がアタッチされているかに対応する下流ポート22に関する通信だけを使用可能にするようにUSB3.0ハブ16に告げる。このことは、その2つの並行のバスの1つだけが、USB3.0デバイス20などのエンドデバイスに対して、任意の一時点で動作していることを意味する。
【0016】
さらに、SuperSpeed USBは、USB2.0バスのアーキテクチャとは異なるアーキテクチャを有する。非常に高速の通信システムは、高いビットレートのために大量の電力を消費する。SuperSpeed USBの設計要件は、ユーザデバイスのバッテリ寿命を延ばすように、より低い電力消費であった。このことは、USB2.0の以前のブロードキャスト設計からの変化をもたらしており、すなわち、SuperSpeedは、ブロードキャストバスではなく、通信パケットをシステムにおける特定のノードに向け、アイドルリンク上の通信をシャットダウンする。
【0017】
このことは、例えば、デバイスを同期するための方法および装置が、バス上で各デバイスに配信されるブロードキャストクロック搬送信号に基づき、このことがSuperSpeed USBにおいては不適当である、米国特許出願第12/279,328号の同期スキームのいずれの拡張に相当に影響を及ぼす。
【0018】
SuperSpeedハブ機能は、ホスト(または上流ポート)に対してデバイスの役割をし、デバイス(または下流ポート)に対してホストの役割をする。このことは、SuperSpeedハブ機能が、単に中継器の役割をするのではなく、SuperSpeedハブ機能の下流ポート上のトランザクションをバッファリングし、スケジュールする役割をすることを意味する。同様に、SuperSpeedハブ機能は、上流ポート上の伝送をスケジュールすることに関しても、そのようにする。したがって、重い負荷のかかったハブ機能は、システムを通るパケット伝送に相当な非決定論的な遅延を加える可能性がある。また、このことは、米国特許出願第12/279,328号のスキームなどのUSB2.0同期スキームの使用がSuperSpeed USB上で機能することを排除する。
【0019】
USB2.0の粗雑なアイソクロナス同期は、USB3.0規格において相当に改良されている。ホストコントローラとUSBデバイスの間でアイソクロナス通信パイプを開くことが、その通信パイプに関する各サービス間隔における固定の帯域幅割当てを保証する。USB3.0のアイソクロナスプロトコルは、各アイソクロナスエンドポイントにいくらか規則的な間隔で送られ、さらにホストコントローラの時間領域におけるUSBホストPhy(物理層)によるITP(アイソクロナスタイムスタンプパケット)伝送の開始のタイムスタンプを含む、いわゆるITPを含む。このアイソクロナスタイムスタンプパケットは、約25ナノ秒まで正確である。SuperSpeed USBは、電力を節約するようにアイドルリンクをシャットダウンするが、リンクは、アイソクロナスタイムスタンプパケットを受信するために活性でなければならない。したがって、ホストコントローラは、アイソクロナスタイムスタンプパケットの伝送の前に、デバイスに対するすべてのリンクが完全な活性モード(電力状態U0と呼ばれる)になっていることを保証しなければならない。
【0020】
残念ながら、アイソクロナスタイムスタンプパケットは、USBネットワークを下る伝搬において遅延させられる可能性がある。また、USB3.0は、SuperSpeed USBにおけるパケットの伝搬時間を測定する方法を提供せず、このため、異なるUSBデバイス上の時間領域の間の位相関係を正確に知る方法が存在しない。数百ナノ秒の位相差が、SuperSpeed USBに関する最良ケースのシナリオであるものと予期され、USB3.0を計測要件、または他の精密タイミング要件に関して実用的でないものとしている。
【0021】
米国特許第5,566,180号(Eidson et al.)が、通信ネットワーク上の一連のデバイスが、デバイスのローカル時間を互いに送信し、ネットワーク伝搬時間が、メッセージの集合体によって測定される、クロックを同期する方法を開示する。Eidsonによるさらなる開示(米国特許第6,278,710号、米国特許第6,665,316号、米国特許第6,741,952号、および米国特許第7,251,199号)が、この概念を拡張するが、分散計器ネットワークのノードのそれぞれの間で同期メッセージの一定のストリームがイーサネットを介して転送される同期スキームに向けて取り組んでいるに過ぎない。この絶え間ないメッセージングは、帯域幅を消費し、可能な同期の精度を、ポイントツーポイント構成において数百ナノ秒に制限し、さらに従来の交換サブネットにおいて、実質的に、より低い精度(通常、マイクロ秒)に制限する。
【0022】
本開示における「クロック信号」および「同期」という用語は、クロック信号、トリガ信号、遅延補償情報、および伝搬時間測定メッセージを指すように使用されることを理解されたい。また、本開示における「時間の概念」は、基準時点または「リアルタイム」を表すのに使用され、さらにクロック信号と、関連する基準時点の組合せを指すのに使用されることも可能であることも理解されたい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明の全般的な目的は、USB3規格に準拠して、事前定義された最大限度まで、複数のUSBデバイスの精密同期を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
このため、第1の広い態様によれば、本発明は、USBハブにアタッチされた、同期されたUSBデバイスのローカルクロックにおけるジッタを低減する方法であって、
そのUSBハブを使用して、或るデータストリームビットレートを有するUSBデータストリーム(SuperSpeed USBデータストリームであるか、非SuperSpeed USBデータストリームであるかにかかわらず)を観測すること、
そのUSBハブがUSBデータストリームの中の周期信号構造を復号すること、
そのUSBハブが、周期信号構造を復号したことに応答してイベント信号を生成すること、および
そのUSBハブが、そのUSBハブのローカルクロックの周波数を周期イベント信号にロックすること(その結果、周期イベント信号が、USBハブの位相ロックループローカルクロックが、クロックの周波数を同期する基準をもたらす)を備え、
USBハブのクロックが、ビットレートの周波数の実質的に倍数でUSBハブの回路のためのクロック制御源となるように適合される方法を提供する。
【0025】
同期されたUSBデバイスは、通常、ローカルクロックをデータストリーム内に含まれる周期データ構造にロックすることによって動作する。通常、USB SOF(フレーム開始)パケットが、周期データ構造として使用され、高速USBの場合、1kHまたは8kHという周波数で出現する。この比較的低い周波数の信号は、USBデバイスによって、PLLアーキテクチャを使用するアタッチされたUSBデバイスのローカルクロックをロックするのに使用される。ローカルクロックの周波数は、通常、数十MHzの範囲内にある。
【0026】
複数のUSBデバイスの同期は、標準のUSBハブが上流ポートから下流ポートに向かうデータを処理し、再送する仕方によって損なわれる可能性がある。同期されたUSBデバイスのローカルクロックにおけるジッタを低減するための手段を提供することが、本発明の別の目的である。
【0027】
USBハブは、バスからのデータを復号し、その後、上流または下流の出力ポート上にデータを再クロック制御するのに使用されるUSBハブ自らの自走クロックを含む。その結果、SOF(フレーム開始)トークンなどの、ホストからすべてのデバイスに送信される周期クロック搬送信号は、通常、その信号がハブに着信した時点に有していたより、ハブを離れた時点で、より大きいタイミングジッタを有する。
【0028】
毎秒480Mbで動作するUSB高速ハブの場合、ローカルハブクロックとSOFパケットの間のランダムな位相関係は、使用される再クロック制御スキームに依存して、1ビット時間、つまり、約4ナノ秒までの出力SOFジッタをもたらす可能性がある。基準クロック信号上のそのような大きい不定のジッタは、位相ロックループ制御システムには問題があり、最終的なクロック安定性を大幅に増大させる。カスケードされたハブが、この問題を悪化させて、各層につき4ナノ秒のジッタを追加する可能性がある。
【0029】
さらに、ローカルハブクロックレートと、USBデータストリームのビットレート(またはホストクロックのレート(またはSOFレート))の間にうなり効果が存在する。この2つのクロックの周波数に大きい違いが存在する場合、ハブの出力SOFジッタは、多くのサイクルにわたって見られた場合、確率的な性質であり、この効果は、単純な電気フィルタまたは統計的技術を使用して除去され得る。ローカルハブクロックの周波数が、ホストクロックの周波数に近づくにつれ、または一方が、他方の整数倍に近づくにつれ、うなり効果が生じる。一方のクロックの周波数が、他方のクロックの周波数の倍数に非常に近くなると、ハブのクロックは、SOFトークンの立ち上り端と同相になったり、位相がずれたりするようにドリフトするように見える。その結果は、クロックが同相条件にある場合、最小の出力位相誤差しか存在しないが、信号の位相がほぼ完全にずれている場合、出力位相誤差は、最大化される。
【0030】
したがって、異なるUSBハブ上のUSBデバイスの同期されたクロックは、ホストクロックとそれぞれのハブクロックの間の周期位相関係に起因して、相当なうなり効果を示す。この効果は、その2つのクロックのうなり周波数と合致したUSBデバイス間ジッタの周期的増加として表れる。
【0031】
クロックジッタが最小化される2つの事例が存在することに留意されたい。第1の事例では、2つのクロックは、完全に同期され、一緒にロックされている、つまり、クロック間に一定の位相関係(整数倍関係)が存在する。これらの条件下で、時間依存の再クロック制御誤差は全く存在しない。第2の事例では、2つのクロック間の関係は、整数倍から遠く離れている。これらの条件下で、再クロック制御誤差は、確率的な性質であるが、ローパス電気フィルタ、または統計的手段を使用して、容易に除去され得る。可能な最悪の事例は、2つのクロックが、或る整数倍にほとんど同調されている(ほとんど同一の周波数)である場合である。この事例が、うなりが生じるとともに、顕著にうなり周波数を有してジッタが変化する場合である。クロックレートに1/2ヘルツの差が存在する場合を考慮されたい。このことは、同相になったり、位相がずれたりするクロックの2秒のうなり効果をもたらし、クロックジッタの2秒の周期的増加をもたらす。
【0032】
このため、方法は、同期されたUSBアーキテクチャにおいてクロック制御ジッタが低減されることを許す。このシステムは、ローカル発振器がホストコントローラの時間基準に同期されるハブリピータデバイスを使用する。ハブのローカル発振器の同期が、USBデータストリームと再クロック制御デバイスの間に一定の位相関係をもたらして、最小の再クロック制御位相誤差をもたらす。
【0033】
この態様は、SuperSpeed USBデータストリームに適用可能であるが、毎秒480Mbで動作する高速USBシステムに対して使用されることも可能である。
一実施形態において、USBデータストリームは、USBハブの上流ポートにおいて観測される。
【0034】
或る実施形態において、信号構造は、USBデータパケットの中の1つまたは複数のOUTトークン、INトークン、ACKトークン、NAKトークン、STALLトークン、PREトークン、SOFトークン、SETUPトークン、DATA0トークン、DATA1トークン、あるいはプログラマブルシーケンスビットパターンを備える。
【0035】
或る特定の実施形態において、周期信号構造は、1つまたは複数のフレーム開始パケットトークンを備える。
一実施形態において、周期信号構造は、1つまたは複数のSuperSpeed USBアイソクロナスタイムスタンプパケットを備える。
【0036】
一実施形態において、方法は、USBハブのローカルクロックが、統計的技術または電気フィルタを使用して、USBハブのローカルクロックのジッタを低減することを備える。
【0037】
或る特定の実施形態において、USBハブのクロックの周波数は、USBビットストリームデータレートの実質的に整数倍に同期される(USBデータストリームのサンプリングおよび再送をクロックアップするため、およびビットレートを追跡するため)。このようにして、USBデータストリームのビットレートと、USBデータストリームを再送するのに使用されるクロックの間に、USBハブによるUSBデータストリームの再送におけるジッタを最小限に抑える一定の位相関係が存在する。このことは、USBデバイスのローカルクロックをUSBデータストリームの中の周期信号構造に同期するように適合された、同期されたUSBデバイスが、USBデバイスのローカルの同期されたクロックのジッタを低減することを許す。
【0038】
或る実施形態において、USBハブのクロックは、ビットレートの実質的に半整数倍(例えば、1.5倍、2.5倍、3.5倍など)である周波数を有するとともに、ビットレートを追跡するように同期される。したがって、平均して、USBデータストリームのビットレートと、USBデータストリームを再送するのに使用されるクロックの間にランダムな位相関係が存在する。このことは、場合により、USBハブによるUSBデータストリームの最大のサイクル間再送ジッタをもたらす。しかし、USBデバイスのローカルクロックをUSBデータストリームの中の周期信号構造に同期するように適合された、同期されたUSBデバイスが、統計的技術(または単純な電気ローパスフィルタさえ)使用して、クロック制御ジッタを低減する場合、USBハブ再送ジッタのランダム化は、USBデバイスローカルクロックにおける最小のジッタをもたらす。
【0039】
第2の広い態様において、したがって、本発明は、同期されたUSBアーキテクチャにおいてクロック制御ジッタを低減するための装置を提供し、この装置は、
ローカルクロックと、上流ポートと、複数の下流ポートと、上流ポート経由でホストコントローラに向けて通信するため、および下流ポート経由でUSBデバイスに向けて通信するための回路とを有するUSBハブ回路と、
或るビットレートを有するUSBデータストリーム(SuperSpeed USBデータストリームであるか、非SuperSpeed USBデータストリームであるかにかかわらず)を観測するように適合されたモニタ(監視回路の形態などの)と、
USBデータストリームの中の周期データ構造を復号するように適合された復号器(復号回路の形態などの)と、
周期データ構造を復号したことに応答してイベント信号を生成するように適合された信号ジェネレータ(信号生成回路の形態などの)と、
イベント信号の周波数に対してUSBハブ回路のクロックの周波数をロックするように適合された回路(位相ロック回路の形態などの)とを備え、
USBハブ回路のクロックは、USBデータストリームのビットレートの周波数の実質的に倍数でUSBハブ回路のハブ回路のためのクロック制御源となるように適合される。
【0040】
このため、本発明は、同期されたUSBアーキテクチャにおいてクロック制御ジッタが低減されるようにするための装置も提供する。
一実施形態において、モニタは、上流ポートにおいてUSBデータストリームを観測するように適合される。
【0041】
或る実施形態において、周期信号構造は、USBデータパケットの中の1つまたは複数のOUTトークン、INトークン、ACKトークン、NAKトークン、STALLトークン、PREトークン、SOFトークン、SETUPトークン、DATA0トークン、DATA1トークン、またはプログラマブルシーケンスビットパターンを備える。
【0042】
一実施形態において、USBハブ回路のクロックは、USBビットストリームビットレートの実質的に整数倍であるように、さらにビットレートを追跡するように同期される(USBデータストリームのサンプリングおよび再送をクロックアップするために)。
【0043】
或る実施形態において、USBハブ回路のクロックは、ビットレートの実質的に半整数倍(例えば、1.5倍、2.5倍、3.5倍など)であるとともに、USBビットストリームデータレートを追跡するように同期される。この実施形態によれば、ビットレートのほぼ半整数倍である自走発振器も適切なソリューションである。
【0044】
第3の広い態様において、本発明は、ローカルクロックと、リピータ回路とを有するUSBハブにアタッチされた、同期されたUSBデバイスのローカルクロックにおけるジッタを低減する方法であって、
そのUSBハブのそのローカルクロックの周波数を制御することを備え、そのクロックは、ビットレートの周波数の実質的に倍数でUSBハブのそのリピータ回路のためのクロック制御源となるように適合される方法。
【0045】
方法は、そのUSBハブのそのローカルクロックのその周波数を、USBデータストリームビットレートの周波数である中心周波数の辺りに制御することを含むことが可能である。
【0046】
一実施形態において、その周波数を制御することは、正弦波形、鋸歯状波形、または三角波形の制御信号を利用する。
別の実施形態において、その周波数を制御することは、雑音を制御信号として利用する。
【0047】
第4の広い態様において、本発明は、同期されたUSBアーキテクチャにおいてクロック制御ジッタを低減するための装置、この装置は、
クロックと、
クロックコントローラまたはクロックコントローラ回路とを備え、
そのクロックコントローラまたはクロックコントローラ回路は、そのクロックの供給電圧を調整することによって、そのクロックを制御するように適合される。
【0048】
第5の広い態様において、本発明は、同期されたUSBアーキテクチャにおいてクロック制御ジッタを低減するための装置を提供し、この装置は、
或る周波数を有するクロックと、
フィードバック制御によってそのクロックの周波数を安定させるように適合されたフィードバック安定器と、
クロックコントローラまたはクロックコントローラ回路とを備え、
そのクロックコントローラまたはクロックコントローラ回路は、そのクロックのフィードバック安定器に外乱信号を導入することによって、そのクロックを制御するように適合される。
【0049】
第6の広い態様において、本発明は、USBネットワークにおいてUSBハブにアタッチされた、同期されたUSBデバイスのローカルクロックにおけるジッタを低減する方法を提供し、この方法は、
そのUSBネットワーク内のそのUSBハブの層を特定すること、
或る事前定義されたレベルの範囲内に、そのUSBハブにすぐ上流のUSBデータストリームのデータビットレートの周波数を整合させることを回避するように、そのUSBネットワーク内のそのUSBハブのその層に依存して、そのUSBハブのクロックの周波数を設定することを備える。
【0050】
一実施形態において、その事前定義されたレベルは、1kHzである。別の実施形態において、その事前定義されたレベルは、100kHzである。
或る特定の実施形態において、そのUSBハブのその層を特定することは、そのUSBハブのルーティング文字列アドレスのクエリを行うことを備える。
【0051】
別の実施形態において、そのUSBハブのその層を特定することは、そのUSBハブの物理接続層についての情報を求めて、そのUSBネットワークが接続されたUSBホストコントローラのオペレーティングシステムにソフトウェアを使用してクエリを行うことを備える。
【0052】
或る特定の実施形態において、そのUSBハブのその層を特定することは、そのUSBハブの上流ポートでそのUSBデータストリームの周波数を測定することを備える。
第7の広い態様において、本発明は、USBハブの上流ポートで受信されるUSBデータストリームのビットレートを算出するための装置を提供し、この装置は、
知られている、または算出可能な周波数のクロックと、
そのUSBハブのその上流ポートからのそのUSBデータストリームを観測する回路と、
そのクロックの周波数と、そのUSBデータストリームの周波数を比較して、その結果、そのビットレートを算出する回路とを備える。
【0053】
第8の広い態様において、本発明は、USBハブにアタッチされた、同期されたUSBデバイスのローカルクロックにおけるジッタを低減するためのシステムであって、
或るビットレートを有するUSBデータストリームを観測するように適合されたモニタと、
そのUSBデータストリームの中の周期データ構造を復号するように適合された復号器と、
その周期データ構造を復号したことに応答してイベント信号を生成するように適合された信号ジェネレータと、
クロックを有するUSBハブまたはUSBハブ回路と、
そのUSBハブまたはUSBハブ回路の周波数と、そのUSBデータストリームの周波数を比較して、その結果、そのビットレートを算出する回路と、
そのイベント信号の周波数に対してそのUSBハブまたはUSBハブ回路のそのクロックの周波数をロックするように適合された回路とを備え、
そのUSBハブまたはUSBハブ回路のそのクロックは、そのクロック制御源とそのUSBデータストリームの間の一定の位相関係が、そのUSBデバイスのそのローカルクロックにおけるジッタを低減するように、そのUSBデータストリームのそのビットレートの周波数の実質的に倍数で、そのUSBハブのためのクロック制御源となるように適合されるシステムを提供する。
【0054】
一実施形態において、そのUSBハブまたはUSBハブ回路の周波数は、そのビットレートの実質的に整数倍に同期され、そのUSBデータストリームと、そのUSBハブまたはUSBハブ回路のそのクロックの間に一定の位相関係が存在する。
【0055】
別の実施形態において、そのUSBハブまたはUSBハブ回路のそのクロックの周波数は、そのビットレートの実質的に半整数倍に同期され、その周期信号構造のそれぞれの後続の構造の受信時に、そのUSBデータストリームと、そのUSBハブまたはUSBハブ回路のそのクロックの間に急速に変化する位相関係が存在する。
【0056】
本発明の前述した態様の各態様のすべての様々な特徴は、適切なように、さらに所望に応じて、組み合わされることが可能であることに留意されたい。
さらに、本発明は、前述した本発明の方法のそれぞれを実行するように構成された装置およびシステムも提供することに留意されたい。
【0057】
さらに、本発明による装置は、様々な仕方で実現されることが可能である。例えば、そのようなデバイスは、プリント回路上、もしくはプリント配線基板上、またはセラミック基板上の複数の構成要素の形態で、あるいは半導体レベルで、つまり、単一のシリコン(または他の半導体材料)チップとして構築されることも可能である。
【0058】
本発明が、より明確に確認され得るように、次に、例として、添付の図面を参照して実施形態が説明される。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】背景技術によるUSB3のデュアルバスアーキテクチャを示す概略図である。
【図2】背景技術による、様々なクロック不整合を有するUSBハブによってUSBデータストリームがクロック制御された場合のデバイス間ジッタ変動に関するうなり周波数を表すグラフである。
【図3】本発明の或る実施形態によるジッタを最小限に抑えるUSBハブを示す概略図である。
【図4】USBハブの再クロック制御周波数を制御するための回路を組み込んだ、本発明の或る実施形態によるUSBハブを示す概略図である。
【図5】図4のUSBハブのクロックに適用された制御信号を示す概略図である。
【図6】本発明の或る実施形態によるUSBネットワークを示す概略図である。
【図7】図6における様々なハブ層の再クロック制御周波数を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
同期されたUSBデバイスが、USBデータストリーム内に見られる周期信号構造にローカルクロックをロックする。これらの周期信号構造のタイミングのジッタは、USBデバイスのローカルクロック位相精度を低下させる。異なるUSBハブ上のUSBデバイスの同期されたクロックは、ホストクロックとそれぞれのハブクロックの間の周期的位相関係に起因して、相当なうなり効果を示す。この効果は、その2つのクロックのうなり周波数と合致したUSBデバイス間ジッタの周期的変化として表れる。
【0061】
図2を参照すると、グラフ50が、同期されたUSBデバイスにおいて観測されるクロックジッタに対するUSBハブクロックレートの、この効果を示す。
グラフ50は、ホストコントローラクロック(またはUSBデータストリームのビット時間)とUSBハブクロックの間のクロックの不整合(δ)に対してうなり周波数(f)をプロットする。一方のクロックが、他方のクロック周波数の整数倍である場合(52におけるように)、クロック間に一定の位相関係が存在し、うなり効果は全く観測されない。不整合が、整数倍から離れて増加するにつれ(すなわち、完全に整合した52のいずれかの側に)、デバイス間ジッタの周期的増加は、非常に遅いうなり周波数を有して顕著になる。不整合がさらに増加するにつれ、うなり周波数は、レベル54(または「フィルタレベル」)まで増加して、うなり周波数は、この実施形態により実行されるとおり、ローパスフィルタが周期的ジッタを除去するのに十分なだけ速いうなりを生じる。
【0062】
図3は、本発明のさらなる実施形態によるUSBハブ60の概略図である。この実施形態によれば、データストリーム、特にUSBデータストリームの中に含まれる周期信号にロックされたクロックのジッタは、パス全体において、より具体的には、データを下流ポートに再クロック制御するUSBハブにおいて同期クロックを使用することによって、低減され得る。USBハブ60は、ホストコントローラ(図示せず)に向けて通信するための上流ポート62と、下流のハブおよびデバイス(図示せず)に通信するための複数の下流ポート64と、USBハブチップ66と、ローカルクロック70を含む同期装置68とを備える。
【0063】
USBハブチップ66は、SuperSpeedハブ機能72と、非SuperSpeedハブ機能74とを有する(ただし、この実施形態のいくつかの変種では、USBハブチップ66は、非SuperSpeedハブ機能だけしか含まないことが可能である)。使用の際、SuperSpeedハブ機能72は、上流ポート62からSuperSpeed通信76を受信して、それらの通信76を下流ポート64に送るとともに、下流ポート64からSuperSpeed通信76を受信して、それらの通信76を上流ポート62に送る。同様に、非SuperSpeedハブ機能74は、上流ポート332から非SuperSpeed通信78を受信して、それらの通信78を下流ポート334に送るとともに、下流ポート334から非SuperSpeed通信78を受信して、それらの通信78を上流ポート332に送る。
【0064】
同期装置68は、検出ポイント80で、SuperSpeedチャネル上のSuperSpeed通信76、非SuperSpeedチャネル上の非SuperSpeed通信78、またはチャネル76および78上のSuperSpeed通信76と非SuperSpeed通信の両方を監視して、任意の適切な技術によって同期装置68のローカルクロック70をホストコントローラのクロックにロックする。同期装置68のローカルクロック70は、チャネル76および78上のUSBデータストリームのデータレートに同調されたローカルクロック信号82を供給し、このローカルクロック信号82は、USBハブチップ336によって、USBデータストリームをクロック制御し、下流ポート64に再送するのに使用される。
【0065】
この実施形態において、ローカルクロック70は、USB通信のビットレートに同調され、このことは、それらの通信信号と、USBハブチップ66のサンプリング機能および再送機能との間に一定の位相関係をもたらす。このことは、最小のパケット間再クロック制御ジッタをもたらし、そのことが、アタッチされた、同期されたデバイスのより正確な位相ロックを許す。
【0066】
本発明の別の変種によれば、クロック信号82が、80で検出されたクロック搬送信号から小さい周波数オフセットを有するように調整されることが可能である。このようにして、ホストコントローラのクロックとローカルクロックの間の相対位相が時間的に変化する。したがって、USBデータストリームを介するハブ再クロック制御に関連する位相誤差は、時間的に変化する。しかし、位相誤差の、この周期的変動の周波数は、ホストによって設定され得る(わずかな周波数オフセットを設定することによって)。次に、このポートの下流にアタッチされた、同期されたUSBデバイスにおいてローパスフィルタが、フィルタのカットオフ周波数がクロック制御ジッタの時間変動を除去するように設定されて、使用されることが可能である(図2参照)。
【0067】
図4は、本発明の或る実施形態によるジッタ低減装置100の概略図である。装置100は、上流ポート104と、複数の下流ポート106と、USBハブチップ108(SuperSpeedハブ機能110および非SuperSpeedハブ機能112を含む)と、クロック114と、クロックコントローラ116とを有するUSBハブ102を備える。
【0068】
USBハブチップ108は、上流ポート104から、SuperSpeed USBデータストリーム118および非SuperSpeed USBデータストリーム120を受信し、ストリーム118および120は、SuperSpeedハブ機能110および非SuperSpeedハブ機能112によってそれぞれ、下流ポート106に再クロック制御される。クロック114が、USBハブチップ108のクロック入力ピン122にクロック制御信号を供給する。
【0069】
背景技術のUSBの従来のクロックは、12MHzまたは48MHzで通常、動作する単純な水晶発振器回路を備える(クロックコントローラ(クロックコントローラ166参照を伴わない)。従来のクロックは、自走発振器であり、通常、50ppm(百万分率)から100ppmまでのクロック周波数許容差を有する。
【0070】
これに対して、装置100は、クロック114が追従させられる制御信号124を生成するクロックコントローラ116を含み、したがって、クロック114の周波数および位相を制御するクロックコントローラ116のための機構を提供する。したがって、装置100は、周波数および/または位相が制御され得る、わずかにより高度なクロック114を有する。
【0071】
この実施形態において、制御信号824は、三角波関数、鋸歯状波関数、または正弦波関数などの(ただし、以上には限定されない)周期関数である。図5は、鋸歯状波関数132、三角波関数134、および正弦波関数136を含む、例示的な制御信号124の概略プロット130である。
【0072】
図4の実施形態によれば、使用の際、制御信号124が、クロック114の周波数に「チャープ」、つまり、周期的変化を生じさせる。周波数の、これらの周期的変動は、十分に急速である場合、上流ポート104において見られるUSBデータストリームに対するクロック114の相対位相をランダム化する効果を有する。
【0073】
この実施形態の変種において、制御信号124は、この信号が時間的にランダムであるという意味で「雑音」信号(図5の例示的な雑音信号138参照)である。この電気的雑音は、クロック114に導入されると、上流ポート104において見られるUSBデータストリームに対するクロック114の相対位相をランダム化する効果を有する周波数のランダムな変動を生じさせる。様々な形態の電気的雑音が存在し、最も一般的なのが、平坦な電力スペクトル密度を有する「ホワイトノイズ」である。異なるスペクトル密度を有する、「ピンクノイズ」、「ブラウニアンノイズ」などの雑音の他の多数の技術的定義が存在するが、一般に、任意の雑音信号がクロック114に導入されることが可能である。
【0074】
電気発振器の周波数安定性は、一般に、供給電圧の変動の影響を受けやすい。この実施形態では、制御信号124が、クロック114の供給電圧回路を制御する。この実施形態の別の変種では、制御信号124は、クロック114の周波数制御回路に導入される。一般に、制御信号124は、制御信号124がクロック114の周波数に直接に影響を与えるように、クロック114の回路の任意の部分に導入されるように適合される。
【0075】
この実施形態の別の変種において、クロック814が、固定の周波数で、ただし、毎秒480Mb(240MHz)という定格の高速USBレートから或る規定されたオフセットで制御される。オフセット周波数が十分に大きい場合、クロック114の周波数と、上流ポート104におけるUSBデータストリームビットレートの時間につれて変化する差は、アタッチされ、同期されたUSBデバイスのクロックから除去される(ろ波して除かれる)ことが可能な周波数にある。
【0076】
このアプローチは、USBホストコントローラにアタッチされた第1のUSBハブに関して有効であるが、その後にアタッチされた下流のハブについては有効ではない。このことは、例として説明される場合、図を参照して理解され得る。図6の140に概略で示されるUSBネットワークを考慮されたい。図6を参照すると、USBネットワーク140は、USBハブ144、144’、144”と、USBデバイス146とを備える多層スターUSBネットワークにアタッチされたUSBホストコントローラ142を含む。
【0077】
USBホストコントローラ142は、毎秒480Mbの定格の高速USBビットレート、FUSB(または毎秒5GbのSuperSpeedビットレート)でデータ148を送信する。第1の層のアタッチされたUSBハブ144は、USBハブ144のクロック(図4のUSBハブ102のクロック144を参照)を、定格ビットレートFUSBから、小さいが、一定のオフセット、FOffsetで動作させるように構成される。このポイント150におけるUSBデータストリームのビットレートは、FUSB+FOffsetである。この周波数オフセット、FOffsetは、このポイントにアタッチされたUSBデバイス146の同調されたクロックから高周波数成分を除去することを許すのに十分なだけ大きい。
【0078】
次のアタッチされた層において、USBハブ114’が、第1の層のUSBハブ144のポイント150におけるビットレート(すなわち、FUSB+FOffset)から少なくともFOffset離れた周波数でUSBハブ144’のそれぞれのクロック(USBハブ102のクロック114参照)を動作させる。したがって、この周波数は、例えば、FUSBまたは(FUSB+2×FOffset)であり得るが、実用的な理由で、USBハブ144’を、この例において、ポイント152でそうであるように、(FUSB−FOffset)で動作させることが好ましい可能性がある。次のアタッチされた層において、USBハブ144”が、便宜上、FUSB+FOffsetで動作する。
【0079】
このようにして、USBハブは、定格のUSBビットレートより高く、または低く、そのUSBハブのクロックオフセットを設定するために、多層スタートポロジ内でそのUSBハブの層を知っているだけでよい。このことは、周期的制御信号または雑音のある制御信号の複雑さなしに、各USBハブがそのUSBハブのそれぞれのクロックをわずかに速く、またはわずかに遅く設定する非常に単純な制御回路を許す。
【0080】
図7は、図6のUSBデータ送信の周波数空間160の概略図である。USBホストコントローラ142が、毎秒480Mbの定格USBデータレート、FUSBでデータ162を送信する。奇数番の層のハブ(すなわち、第1の層、第3の層、第5の層など)が、定格USBデータレートから正のオフセット164、FUSB+FOffsetで動作する。偶数番の層のハブ(すなわち、第2の層、第4の層など)が、定格USBデータレートから負のオフセット166、FUSB−FOffsetで動作する。しかし、奇数番の層のハブに負のオフセットを使用し、偶数番の層のバスに正のオフセットを使用することも完全に容認可能であることが、当業者には直ちに明白であろう。
【0081】
本発明の、この実施形態は、SuperSpeed USBの場合にさらに有利である。SuperSpeedハブに、各パケットのヘッダの中に含まれる「ルーティング文字列」によって擬似「アドレス」が割り当てられる。各ハブは、階層内のそのハブの位置を自動的に知り、したがって、そのハブの周波数オフセットを正となるように、または負となるように自動的に割り当てることができる。
【0082】
非SuperSpeed USBハブの場合、ハブの位置は、ソフトウェア層によって識別されなければならず、さらに多層ネットワークにおける非SuperSpeed USBハブの位置をそれらのハブに知らせるメッセージングをホストコントローラから受信する、さらなる回路が使用されなければならない。好ましい実施形態において、この回路は、完全にハブ内部に配置され、そのハブの下流ポートの1つに接続されたUSBデバイスの形態をとることも可能である。その場合、クロックコントローラ(図4のクロックコントローラ116などの)が、そのような内部USBデバイスに組み込まれることも可能である。
【0083】
別の実施形態において、USBハブ(図4のUSBハブ102を参照)が、USBハブのクロック114を使用して、USBデータストリームビットレートの定格周波数に初期設定される。次に、クロックコントローラ116が、クロック114のレートをUSBデータストリームのビットレートと比較する。オフセットが適切に(前述したとおり)選択された場合、USBハブ102の上流ポート104におけるデータストリームが、定格USBビットレートFUSBであるか(そのハブがレベル1にあることを暗示する)、あるいは、FUSB+FOffsetまたはFUSB−FOffsetであるか(選択されたスキームに応じて、そのハブが偶数ハブ層または奇数ハブ層であることを暗示する)を特定することが可能である。ハブ層1は、特別な事例である。上流ポート104において受信されるデータビットレートの、この簡単な試験で、クロックコントローラ116がクロック114の周波数をFUSB−FOffsetに設定すべきか、FUSB+FOffsetに設定すべきかを決定するのに十分である。
【0084】
さらに別の実施形態において、USBハブによって、上流ポートから下流ポートにデータを再クロック制御するのに適応型クロックが使用される。このアプローチでは、USBハブ(図4のUSBハブ102を参照)は、USBデータストリームをオーバサンプリングするクロック114を有する。クロック114は、通常、パケットの開始時の同期フィールド内で、非常に迅速にUSBデータストリームパケットの位相にロックされることが可能である。クロック114に対するパケットの位相が算出されると、この同期パターンと最もよく整合する位相が、その後、下流ポート106にパケットをクロック制御して通すのに使用される。
【0085】
本発明の範囲内の変形が、当業者には容易に実行されることが可能である。したがって、本発明は、以上に例として説明される特定の実施形態に限定されないこと、および本明細書で説明される様々な実施形態の組合せが当業者には直ちに明白であることを理解されたい。
【0086】
本発明の以上の説明、および添付の特許請求の範囲において、明示的な言葉、または必然的な暗示により、文脈がそうでないことを要求する場合を除き、「ホストコントローラ」という表現は、標準のUSBホストコントローラ、USB On−The−Goホストコントローラ、およびワイヤレスUSBホストコントローラを含め、すべての形態のUSBホストコントローラを包含する。
【0087】
本発明の以上の説明、および添付の特許請求の範囲において、明示的な言葉、または必然的な暗示により、文脈がそうでないことを要求する場合を除き、「備える」という語、または「備える」または「備えた」などの変種は、包含的な意味で、つまり、述べられる特徴の存在を指定するが、本発明の様々な実施形態におけるさらなる特徴の存在または追加を排除しないように使用される。
【0088】
さらに、本明細書における、背景技術へのいずれの言及も、そのような背景技術が、いずれの国においても共通の一般的な知識の一部を形成する、または形成していたことを暗示することは意図していない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローカルクロックと、リピータ回路とを有するUSBハブにアタッチされた(attached)、同期されたUSBデバイスのローカルクロックにおけるジッタを低減する方法であって、
前記USBハブを使用して、或るデータストリームビットレートを有するUSBデータストリームを観測する(observing)ステップと、
前記USBハブが前記USBデータストリームの中の周期信号構造(periodic signal structure)を復号する(decoding)ステップと、
前記USBハブが、前記周期信号構造を復号したことに応答してイベント信号を生成するステップと、
前記USBハブが、前記USBハブの前記ローカルクロックの周波数を前記周期イベント信号にロックするステップとを備え、
前記USBハブの前記ローカルクロックは、前記データストリームビットレートの周波数の実質的に整数倍(integer multiple)で前記USBハブの前記リピータ回路のためのクロック制御源(clocking source)となるように適合される(adapted to)方法。
【請求項2】
前記USBハブが前記USBハブの上流ポートにおいて前記USBデータストリームを観測する(observing)ステップを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記周期信号構造は、1つまたは複数のフレーム開始パケットトークンを備える請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記周期信号構造は、1つまたは複数のSuperSpeed USBアイソクロナス(Isochronous)タイムスタンプパケットを備える請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記USBハブの前記クロックの前記周波数は、前記USBビットストリームデータレートの実質的に整数倍に同期され、前記USBデータストリームと前記USBハブの前記クロックの間に一定の位相関係が存在する請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記USBハブの前記クロックの前記周波数は、前記USBビットストリームデータレートの実質的に半整数倍(half integer multiple)に同期され、前記周期信号構造のそれぞれの後続の(subsequent)構造(structure)の受信時に、前記USBデータストリームと前記USBハブの前記クロックの間に急速に(rapidly)変化する位相関係が存在する請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記USBハブの前記ローカルクロックが統計的技術(statistical techniques)または電気フィルタを使用して、前記USBハブの前記ローカルクロックの前記ジッタを低減するステップを備える請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
同期されたUSBアーキテクチャにおいてクロック制御ジッタを低減するための装置であって、
ローカルクロックと、上流ポートと、複数の下流ポートと、前記上流ポート経由でホストコントローラに向けて通信するため、および前記複数の下流ポート経由で複数のUSBデバイスに向けて通信するための回路とを有するUSBハブ回路と、
或るビットレートを有するUSBデータストリームを観測するように適合されたモニタと、
前記USBデータストリームの中の周期データ構造を復号するように適合された復号器と、
前記周期データ構造を復号したことに応答してイベント信号を生成するように適合された信号ジェネレータと、
前記イベント信号の周波数に対して前記USBハブ回路の前記ローカルクロックの周波数をロックするように適合された回路とを備え、
前記USBハブ回路の前記ローカルクロックは、前記USBデータストリームの前記ビットレートの周波数の実質的に倍数(multiple)で前記USBハブ回路のためのクロック制御源となるように適合される装置。
【請求項9】
前記モニタは、前記USBハブ回路の前記上流ポートで前記USBデータストリームを観測するように構成される請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記USBハブ回路の前記ローカルクロックの前記周波数は、前記USBビットストリームデータレートの実質的に整数倍に同期され、前記USBデータストリームと前記USBハブ回路の前記ローカルクロックの間に一定の位相関係が存在する請求項8または9に記載の装置。
【請求項11】
前記USBハブ回路の前記ローカルクロックの前記周波数は、前記USBビットストリームデータレートの実質的に半整数倍に同期され、前記周期信号構造のそれぞれの後続の構造の受信時に、前記USBデータストリームと前記USBハブ回路の前記ローカルクロックの間に急速に変化する位相関係が存在する請求項8または9に記載の装置。
【請求項12】
ローカルクロックと、リピータ回路とを有するUSBハブにアタッチされた、同期されたUSBデバイスのローカルクロックにおけるジッタを低減する方法であって、
前記USBハブの前記ローカルクロックの周波数を制御するステップを備え、前記クロックは、前記ビットレートの前記周波数の実質的に倍数で前記USBハブの前記リピータ回路のためのクロック制御源となるように適合される方法。
【請求項13】
前記USBハブの前記ローカルクロックの前記周波数を、USBデータストリームビットレートの周波数である中心周波数の辺りに制御するステップを含む請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記周波数を前記制御するステップは、正弦波形、鋸歯状波形、または三角波形の制御信号を利用する請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記周波数を前記制御するステップは、雑音を制御信号として利用する請求項12または13に記載の方法。
【請求項16】
同期されたUSBアーキテクチャにおいてクロック制御ジッタを低減するための装置であって、
クロックと、
クロックコントローラまたはクロックコントローラ回路とを備え、
前記クロックコントローラまたは前記クロックコントローラ回路は、前記クロックの供給電圧を調整することによって前記クロックを制御するように適合される装置。
【請求項17】
同期されたUSBアーキテクチャにおいてクロック制御ジッタを低減するための装置であって、
或る周波数を有するクロックと、
フィードバック制御によって前記クロックの前記周波数を安定させるように適合されたフィードバック安定器と、
クロックコントローラまたはクロックコントローラ回路とを備え、
前記クロックコントローラまたは前記クロックコントローラ回路は、前記クロックの前記フィードバック安定器に外乱(perturbation)信号を導入することによって前記クロックを制御するように適合される装置。
【請求項18】
USBネットワークにおいてUSBハブにアタッチされた、同期されたUSBデバイスのローカルクロックにおけるジッタを低減する方法であって、
前記USBネットワーク内の前記USBハブの層を特定するステップと、
或る事前定義されたレベルの範囲内に、前記USBハブにすぐ上流のUSBデータストリームのデータビットレートの周波数を整合させることを回避するように、前記USBネットワーク内の前記USBハブの前記層(layer)に依存して、前記USBハブのクロックの周波数を設定するステップとを備える方法。
【請求項19】
前記事前定義されたレベルは、1kHzである請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記事前定義されたレベルは、100kHzである請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記USBハブの前記層を前記特定するステップは、
i)前記USBハブのルーティング文字列アドレスのクエリ(querying)を行うステップと、
ii)前記USBハブの物理接続層についての情報を求めて、前記USBネットワークが接続されたUSBホストコントローラのオペレーティングシステムにソフトウェアを使用してクエリを行うステップと、
iii)前記USBハブの上流ポートで前記USBデータストリームの周波数を測定するステップとを備える請求項18から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
USBハブの上流ポートで受信されるUSBデータストリームのビットレートを算出するための装置であって、
知られている、または算出可能な(determinable)周波数のクロックと、
前記USBハブの前記上流ポートからの前記USBデータストリームを観測する回路と、
前記クロックの周波数と、前記USBデータストリームの周波数を比較して、その結果、前記ビットレートを算出する回路とを備える装置。
【請求項23】
USBハブにアタッチされた、同期されたUSBデバイスのローカルクロックにおけるジッタを低減するためのシステムであって、
或るビットレートを有するUSBデータストリームを観測するように適合されたモニタと、
前記USBデータストリームの中の周期データ構造を復号するように適合された復号器と、
前記周期データ構造を復号したことに応答してイベント信号を生成するように適合された信号ジェネレータと、
クロックを有するUSBハブまたはUSBハブ回路と、
前記USBハブまたは前記USBハブ回路の前記クロックの周波数と、前記USBデータストリームの周波数を比較して、その結果、前記ビットレートを算出する回路と、
前記イベント信号の周波数に対して前記USBハブまたは前記USBハブ回路の前記クロックの周波数をロックするように適合された回路とを備え、
前記USBハブまたは前記USBハブ回路の前記クロックは、前記クロック制御源と前記USBデータストリームの間の一定の位相関係が、前記USBデバイスの前記ローカルクロックにおけるジッタを低減するように、前記USBデータストリームの前記ビットレートの周波数の実質的に倍数で、前記USBハブのためのクロック制御源(clocking source)となるように適合されるシステム。
【請求項24】
前記USBハブまたは前記USBハブ回路の前記クロックの前記周波数は、前記ビットレートの実質的に整数倍に同期され、前記USBデータストリームと、前記USBハブまたは前記USBハブ回路の前記クロックの間に一定の位相関係が存在する請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記USBハブまたは前記USBハブ回路の前記クロックの前記周波数は、前記ビットレートの実質的に半整数倍に同期され、前記周期信号構造のそれぞれの後続の(subsequent)構造の受信時に、前記USBデータストリームと、前記USBハブまたは前記USBハブ回路の前記クロックの間に急速に(rapidly)変化する位相関係が存在する請求項23に記載のシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2012−527659(P2012−527659A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511096(P2012−511096)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際出願番号】PCT/AU2010/000604
【国際公開番号】WO2010/132943
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.イーサネット
【出願人】(509244363)クロノロジック プロプライエタリー リミテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】CHRONOLOGIC PTY LTD
【住所又は居所原語表記】227 Gouger Street, Adelaide, South Australia 5000 Australia
【Fターム(参考)】