分析システムの在庫管理方法
【課題】人手を介することなく、消耗品の在庫を適正な量に管理できる分析システムの在庫管理方法を提供する。
【解決手段】分析装置2から、キャリブレータ、精度管理試料、試薬などの消耗品の個別認識データと入出庫日時および数量とを含む消耗品に関するデータを、ネットワーク接続装置4、ネットワーク3を経て受信して蓄積し、そのデータを分析装置2毎およびユーザ毎に集計し、その集計の結果、所定の在庫数量を下回った場合または消耗品の発送予想日が所定の日数を下回った場合は、配達物品の組み合わせ、運搬効率、手持ちの在庫数量、工場からの入庫日程などから最適な配送計画を作成して自動的に関連部門に配信して所定の確定作業を行なった後、関連部門からの配送計画をネットワーク3を介して対応するネットワーク接続装置4に提供して、必要な消耗品を必要な日程でユーザ先に発送する。
【解決手段】分析装置2から、キャリブレータ、精度管理試料、試薬などの消耗品の個別認識データと入出庫日時および数量とを含む消耗品に関するデータを、ネットワーク接続装置4、ネットワーク3を経て受信して蓄積し、そのデータを分析装置2毎およびユーザ毎に集計し、その集計の結果、所定の在庫数量を下回った場合または消耗品の発送予想日が所定の日数を下回った場合は、配達物品の組み合わせ、運搬効率、手持ちの在庫数量、工場からの入庫日程などから最適な配送計画を作成して自動的に関連部門に配信して所定の確定作業を行なった後、関連部門からの配送計画をネットワーク3を介して対応するネットワーク接続装置4に提供して、必要な消耗品を必要な日程でユーザ先に発送する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークを介して分析システムの在庫を管理する分析システムの在庫管理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
分析データを得る分析システムでは、
1)分析システムで用いる分析装置、キャリブレータ、精度管理試料、試薬などの構成要素の特性を、予め設定された管理域に入るようにする精度管理、
2)ユーザ先での分析システムの使用量を把握して、その料金をユーザに請求して回収する費用管理、
3)ユーザ先での消耗品の使用量を把握して、その在庫量を適正にする在庫管理、
4)ユーザ先の分析システムの運用効率{臨床に報告したテスト数/(全テスト数×k);ただし、k<1}を把握して、改善要請や使用料金の見直しをしながら、分析システムの運用効率を最大にする運用管理、
を行なう必要がある。
【0003】
上記4つの管理は、分析システムの構成要素の特性および消耗品の消費量を把握し、分析システムを常に安定して効率良く稼動させる上で関連性を有しており、従来は以下に説明するようにして各管理を行なうようにしている。
【0004】
<精度管理>
血液検査などの臨床検査では、血液や尿などを試料として様々な検査項目を分析装置によって測定している。近年の分析装置では、高速化、測定試料の微量化などが進み、精密で高度な機構を備えるようになってきている。したがって、操作者も高度な保守訓練を受けない限り、分析装置の状態を正確に把握することができなくなりつつある。
【0005】
分析装置は、検査結果の精度を維持するために各機構部の動作を監視し、何らかの障害が発生すれば、その内容を操作者にきめ細かく通知するようにしている。しかし、生体成分の検査結果を精度良く管理するためには、機構部の監視だけでは不十分で、その生体成分と同じ試料、もしくはそれに類似した試料を精度管理試料として測定し、その測定結果を監視する精度管理方法を取っている。
【0006】
この精度管理としては、同じ精度管理試料を毎日測定して安定した精度結果が得られるのかを監視する方法(内部精度管理)と、その施設以外で用いられている同種の分析装置で測定した結果と同じような測定結果が得られているのかを監視する方法(外部精度管理)とが用いられている。
【0007】
本来、分析システムの個々の要素を完全に管理できるのであれば、外部精度管理は必要ではなく、内部精度管理だけで必要十分である。しかし、益々複雑化してきた分析装置の詳細を管理し、精度管理試料の準備や保存などの操作詳細も管理したとしても、その完全性を常に確認することは現状では不可能である。外部精度管理は、こうした管理の不完全さを大きな母集団との比較から発見しようとするものである。
【0008】
しかし、この外部精度管理の頻度は、準備や集計に手間がかかることから日常的には実施できない。また、外部精度の確認結果が好ましくない場合、複雑化した分析装置を迅速且つ適切に処置できないといった問題がある。
【0009】
これらを解決する方法として、本出願人は、ITを利用し専用ネットワークなどを使って効率的に且つリアルタイムに外部精度管理を行なう手法を既に提案している(OLYMPUS Lab Supportsデータ管理サービス)。さらに、分析装置のエラー内容などもネットワークを介して収集し、その発生頻度や精度管理データの中央値からのずれの推移といった内容から分析装置の障害を把握し、必要ならば装置を遠隔操作することにより、操作者の負担軽減と迅速且つ適切な処置を実現する手法なども提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0010】
ところで、本来、精度管理とは患者データの測定精度を確保するためのものである。しかし、主には経済的な理由から、例えば患者検体100検体おきに精度管理試料を測定しているのが現状である。したがって、患者データの信頼性は、直近の精度管理データの安定性等から想定している。つまり、内部、外部の精度管理データが良好で、機構部に所定の障害が発生しない場合に限り、患者データには信頼性があると判断している。
【0011】
<費用管理>
今日、主に欧米においてコスト/テストあるいはプライス/テストという契約方法が浸透している。その契約内容は、例えば、分析項目毎に一年間のテスト数を取り決め、その数量に応じて1テスト当りの単価を設定した上で分析システム一式を貸し出すというものである。一式という場合に、分析装置や試薬などの消耗品に保守サービス費用まで盛りんだもの、さらには、精度管理やキャリブレーション、再検など臨床への報告には寄与しなかったテストには課金しないものなど、幾つかのバリエーションがある。
【0012】
こうした契約の場合、その請求費用の根拠はテスト数となるため、これを正確に把握する必要がある。そのため、毎月ユーザからテスト数をFAXしてもらう、あるいはシステム提供側がユーザ先を訪問して分析装置のテスト数カウンタやユーザの報告書を見せてもらうと、いう作業を実施している。また、把握したテスト数をシステム提供側の経理端末に正確に入力し、ユーザ毎の請求書を作成して郵送やFAXしている。
【0013】
<在庫管理>
分析システムで測定を進めるに伴い、試薬やディスポチップなどの消耗品は減少してゆく。分析装置で消耗品が不足すると人手による補充が必要であり、消耗品によっては、その間測定を停止しなければならない場合もある。このため、測定に先立って、必要な量の消耗品を装置にセットする必要があることから、ユーザは消耗品の在庫量を把握し、在庫量がある程度以下になった場合はシステム供給側に注文することになる。
【0014】
ところが、上述したコスト/テスト契約の場合は、ユーザからの注文は不要で、ユーザ先で不足しないようにシステム供給側から消耗品を供給するようにしている。そのため、システム供給側では、消耗品の発送時期および数量を、ユーザ毎のこれまでの消費量から予測したり、ユーザに電話をしてもらったりするなどの工夫をしている。
【0015】
<運用管理>
分析システムをコスト/テスト契約する場合、システム供給側にとっては、高価な試薬やキャリブレータ、精度管理試料をいかに少ない量で精度の良い測定をしてもらうかが重要である。ここで、臨床に報告できる分析結果を得るのに試薬やキャリブレータ、精度管理試料などの使用量等の総コストが少なければ少ない程、分析システムの運用効率が高いことになる。そのため、ユーザ先にて再検の理由を調査したり、一日当りの精度管理の回数を調査したりしている。また、これとは別に、テスト数データと試薬などの使用量とを、例えば毎月調査し、その結果から分析システムの運用効率レポートをユーザに提出している。そのレポートの中で、測定に要したコストの内訳が分析され、当初目標とした効率に達しない場合には、ユーザに改善のためのアドバイスがされる。当初の目標をクリアした場合は、契約金額の見直しなどを行なう。こうした作業の殆どは、従来手作業で行なわれている。
【特許文献1】特開2001−229291号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、従来の在庫管理方法では、コスト/テスト契約の場合、試薬などの消耗品を発送するタイミングおよびその量を経験則で決定しているため、ユーザ先に不足が発生しないように多少多めに送付する傾向にある。
【0017】
このため、ユーザ先で余剰在庫を抱えてしまうという問題があると共に、在庫が多すぎて試薬の有効期限が切れてしまうといった問題もある。こうした問題を解決するには、ユーザ先に電話で確認したり、ユーザ先から確認の電話を入れてもらったりするなどの連絡をとるようにすればよいが、このようにすると手間がかかるという問題がある。
【0018】
したがって、かかる点に鑑みてなされた本発明の目的は、人手を介することなく、消耗品の在庫を適正な量に管理できる分析システムの在庫管理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成する請求項1に係る分析システムの在庫管理方法の発明は、分析装置を含む分析システムをネットワーク接続装置およびネットワークを介して情報端末に接続して、上記分析システムで使用される消耗品の在庫を管理するにあたり、
上記分析装置から、キャリブレータ、精度管理試料、試薬などの消耗品の個別認識データと入出庫日時および数量とを含む消耗品に関するデータを、上記ネットワーク接続装置およびネットワークを介して受信して蓄積し、
その蓄積された消耗品に関するデータを分析装置毎およびユーザ毎に集計し、
その集計の結果、所定の在庫数量を下回った場合または消耗品の発送予想日が所定の日数を下回った場合は、配達物品の組み合わせ、運搬効率、手持ちの在庫数量、工場からの入庫日程などから最適な配送計画を作成し、その結果を自動的に関連部門に配信して所定の確定作業を行なった後、上記関連部門から上記の配送計画を上記ネットワークを介して当該分析装置に対応する上記ネットワーク接続装置に提供して、必要な消耗品を必要な日程でユーザ先に発送することにより、ユーザ先の在庫数量を適正範囲に保つようにしたことを特徴とするものである。
【0020】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の分析システムの在庫管理方法において、上記分析装置では、消耗品に貼付されているバーコードをバーコードリーダで読み取って、上記消耗品に関するデータを管理することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明による分析システムの在庫管理方法では、例えば分析装置の試薬保冷ユニット部にバーコードリーダを設けて、各消耗品に貼付された物品認識番号、製造番号、内容量、有効期限などが記されたバーコードを読み取ることにより、物品の認識と入出庫日時および数量の管理を行なって在庫数量を把握し、こうして自動的に認識した物品の入出庫日時および数量をネットワーク接続装置に送信する。また、試薬保冷ユニット部には、分析部の試薬などが不足した場合に、試薬などを分析部へ自動的に装填するロボットアームを設けることもできる。なお、ロボットアームは一般に高価で大きいので、設計を工夫して簡易な機構で装填するようにしたり、あるいは人手を介して装填したりするようにしても何ら問題はない。
【0022】
ネットワーク接続装置は、ネットワークを介して上記の入出庫日時や数量などを情報端末に送信し、情報端末は、各品目の在庫数が予め設定した値を下回った場合あるいは、出庫データから計算される発送予想日が、当日を基点として所定の日数を下回った場合に、配達物品の組み合わせや運搬効率ならびに手持ちの在庫や工場からの入庫日程データなどを検索し、各ユーザへの最適な配送計画を作成し、その結果をデリバリー情報として配送部門、製造部門と営業部門に逐次提供する。各部門では、配送、製造計画ならびに顧客情報を元に、営業部門の指示で手配を開始すると同時に、ユーザのネットワーク接続装置に当該デリバリー情報を提供する。
【0023】
これにより、手間のかかる消耗品の分析装置への補充や在庫管理作業の自動化が可能になると共に、余剰在庫や試薬の廃棄量の削減が可能となる。
【0024】
したがって、本発明による分析システムの在庫管理方法によれば、ユーザは、試薬交換などのために分析装置を止める必要が無くなり、消耗品のセットも不要になる。また、試薬などの消耗品の在庫管理のための工数が不要となるとともに、消耗品発注や在庫切れなども無くすことができる。さらに、消耗品供給側では、人手による残量の確認が不要になると共に、ユーザ先も含めた在庫数量の最小化と製造、配送を一元管理することによる納期の短縮等から、在庫費用の圧縮を実現することができる。また、在庫が多すぎたために発生していた試薬の有効期限切れによる損失も最小限に食い止めることが期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0026】
図1は、本発明を実施する管理システムの一例の全体構成図である。この管理システムは、管理装置(情報端末)1をインターネット3に接続し、各分析装置2を対応するネットワーク接続装置4を介してインターネット3に接続して、各分析装置2の精度管理、費用管理、在庫管理および運用管理を、管理装置1によりインターネット3および対応するネットワーク接続装置4を介して行なうものである。
【0027】
ここで、分析装置2としては、例えば血液分析装置などを挙げることができる。また、管理装置1としては、PC(Personal Computer)やWS(Work Station)などを用いることができ、インターネット3としては、例えば専用ネットワークやイントラネット、LANなど各種ネットワークを用いることができ、ネットワーク接続装置4としては、PCなどを用いることができる。なお、本実施の形態のようにインターネット3と接続する場合には、好適には情報の暗号化や厳しい認証システムなどセキュリティーを高めるための方策を施しておく。
【0028】
本実施の形態では、上述したように各分析装置2の精度管理、費用管理、在庫管理および運用管理を行なうため、各分析装置2は、以下に示すデータを所定のタイミングで対応するネットワーク接続装置4およびインターネット3を介して管理装置1に送信する。
【0029】
[精度管理に使用するデータ]
1)精度管理データと、その検体No.および分析項目、並びにそれを測定した時の装置の状態監視データ。
2)患者データに1対1に対応する検体No.および分析項目と、それを測定した時の装置の状態監視データ。
【0030】
ここで、装置の状態監視データとは、以下の情報から成る。
a)精度管理試料や患者検体の吸引・吐出モニタデータ
b)試薬の吸引・吐出モニタデータ
c)攪拌モータ電流値モニタデータ
d)反応温度モニタデータ
e)反応過程モニタデータ
f)測光光源モニタデータ
g)廃液吸引モニタデータ
h)各部動作回数モニタデータ
i)ホスト通信ログ、アラームログ
j)保守管理データ
【0031】
[費用管理に使用するデータ]
1)検体毎、項目毎のテスト数(ルーチン、緊急、STAT、再検、精度管理試料、キャリブレータ、試薬ブランク)
2)すべての検体種について、項目毎の全テスト数
3)個々の検体種について、すべての項目を含んだ全テスト数
【0032】
[在庫管理に使用するデータ]
1)キャリブレータ、精度管理試料、試薬、ディスポチップなどの消耗品の在庫数と入出庫カウント値
【0033】
[運用管理に使用するデータ]
1)検体毎、項目毎のテスト数(ルーチン、緊急、STAT、再検、精度管理試料、キャリブレータ、試薬ブランク)
2)すべての検体種について、項目毎の全テスト数
3)個々の検体種について、すべての項目を含んだ全テスト数
4)キャリブレータ、精度管理試料、試薬、ディスポチップなどの消耗品の在庫数と入出庫カウント値
【0034】
図2は、図1に示す管理装置1、ネットワーク接続装置4及び分析装置2の機能構成を示すブロック図である。管理装置1は、通信インターフェイス(I/F)11、処理部12、ユーザ管理データベース(DB)13、WWWサーバ14を有している。ネットワーク接続装置4は、通信I/F21、処理部22、WWWブラウザ23、通信I/F24、動作データなどの状態監視データDB25を有している。分析装置2は、通信I/F31、制御部32、履歴情報DB33、分析部34、ユーザ端末35ならびに試薬保冷ユニット36を有している。
【0035】
以下、管理装置1、ネットワーク接続装置4及び分析装置2の各部の動作について説明する。
【0036】
管理装置1
管理装置1は、各分析装置2から送信される上記のデータを、通信I/F11を介してユーザ管理DB13に収集して分析装置毎に蓄積し、このユーザ管理DB13に蓄積されたデータを、処理部12により管理内容に応じて所定のタイミングで集計して解析および編集し、その管理内容に対応する結果データを処理部12が作成するウェブページに表示して、そのウェブページをWWWサーバ14によりインターネット3を介してネットワーク接続装置4のWWWブラウザ23に提供する。
【0037】
図3は、管理装置1で処理する分析装置2の状態監視データの一例を説明するための図である。分析装置2では、例えば図3(a)に示すように、患者検体や精度管理試料の吸引・吐出時に発生するサンプルプローブ内の圧力データを吸引・吐出量に応じた管理幅で監視し、その管理幅の中央値からのずれ量を正規化したデジタル値として管理装置1へ送信する。なお、図3(a)において、α1,α2、β1,β2およびγ1,γ2は、あるテスト項目における吸引時、吸引終了時、および吐出時の管理限界を示している。この場合、α1−α2,β1−β2,γ1−γ2が、そのテスト項目の各管理幅となるので、その各管理幅の中央値からのずれ量を正規化して管理装置1へ送信する。
【0038】
管理装置1では、分析装置2から送信される上記のデータを、管理限界内にあるか否かを監視しながら管理し、必要に応じて図3(b)に示すように任意の状態監視データのトレンドを表示したり、図3(c)に示すようにテスト項目毎に所要の状態監視データを判定結果とともに表示したりする。なお、図3(b)は、吸引・吐出モニタデータ(管理幅の中央値からのずれ量を正規化したデータ)のトレンドを表示したもので、ηおよびθはその管理限界を示している。
【0039】
図3(b)において、吸引・吐出モニタデータは、吸引・吐出の度にある幅の中でばらつくのが通常である。そのばらつきが、装置としてエラーとはならないまでも注意を要する値(管理限界)を超えた場合、あるいはデータの時間的な変化率が所定の値を超えた場合、あるいはこれら2つの条件の両方が成立した場合に異常と判定したり、あるいは予め決められたモニタデータ間の論理演算や数値演算によって異常と判定したりするなどの判定条件を予め準備して、その判定結果を図3(c)に示すようにテスト項目毎の判定結果欄に表示する。
【0040】
図4〜図6は、外部精度管理結果の表示例を示すもので、図4は状態監視データに異常がない場合を示しており、図5は状態監視データに異常の兆候が検出された場合を示しており、図6は一日の中での外部精度のトレンドを示している。表示形式は、散布図などを用いても良い。本実施の形態では、図5に示すように、状態監視データに異常が検知された場合には、その異常の内容と対処方法とを表示してユーザに提供する。
【0041】
このように、外部精度管理結果を表示することで、ユーザは内部精度のみならず外部精度もリアルタイムに確認することができ、分析システムの安定性をリアルタイムに把握することができる。また、装置の異常が予見される場合は、具体的にその内容と対処方法を手に入れることができる。
【0042】
図7および図8は、在庫管理の表示例を示すもので、図7はある一つのテスト項目についての試薬の在庫数とテスト数とのトレンド表示例であり、図8は消耗品のデリバリー状況を確認するための表示例である。図7に示すトレンド表示から、分析装置2は、在庫量が管理在庫値を下回る、あるいは管理在庫値までの日数が所定の日数を下回ると予測される場合に、システム供給側に当該試薬を自動発注する。また、図8に示す表示例から、ユーザは在庫が少なくなった消耗品の発注が済んでいて、それがいつ頃到着するかを確認でき、安心して分析システムを運用することができる。また、幾つかの品物を同時に発送するなど、運搬効率などを考慮して自動的に配送計画が立てられる。
【0043】
図9および図10は、分析システムの運用効率の表示例で、図9はトレンド表示例を示しており、図10は計算表の表示例を示している。このように運用効率を表示することで、例えば図9に示すトレンド表示をユーザが毎日見ることにより、その日の内にユーザ自ら運用効率を確認でき、迅速な対策処置が可能となる。また、システム提供側と当初立てた目標値をクリアすれば料金が安くなるといった特典をつけることにより、より一層ユーザ独自の改善が期待される。このように、ユーザ側およびシステム提供側の両者が、同じ指標で分析システムの運用状況を確認できるので、その波及効果は大きい。
【0044】
このように、管理装置1では、ウェブページに分析装置2の状態監視データの履歴を表示して、分析装置2の動作状態を把握すると共に、異常が発生した場合の原因究明を行ない、さらにテストの実施状況や消耗品の在庫数、各分析システムの運用効率のトレンドなどを表示し、このウェブページをネットワーク接続装置4のWWWブラウザ23に提供する。
【0045】
ネットワーク接続装置4
ネットワーク接続装置4では、通信I/F21により管理装置1の通信I/F11と同様に、コネクションを確立する処理を行なう。WWWブラウザ23は、ユーザからの指示に基づいて管理装置1上のウェブページを取得する。処理部22は、ネットワーク接続装置4の各構成要素の制御と状態監視データなどの計算処理を行なう。通信I/F24は、分析装置2とのコネクションを確立する処理を行なう。状態監視データDB25は、分析装置2から送信された患者検体測定時の状態監視データなどを検体No.と分析項目とを関連づけて一時保管する。
【0046】
分析装置2
分析装置2では、通信I/F31によりネットワーク接続装置4とのコネクションを確立する処理を行なう。制御部32は、履歴情報DB33、分析部34、ユーザ端末35ならびに試薬保冷ユニット36の各構成要素を制御する。履歴情報DB33は、分析装置の通信ログやアラームログ、各種設定値、保守管理データ(装置、プログラムのバージョンや修理情報など)を蓄積している。
【0047】
試薬保冷ユニット36には、試薬などの消耗品が所定の量格納されており、入出庫の際、試薬保冷庫内のバーコードリーダを使って各消耗品に貼付されたバーコードを読み取ることにより物品の認識を行ない、自動的に入出庫日時や数量を管理する。また、分析部34で試薬などが不足した場合は、自動的に必要な消耗品を出庫し分析部34にセットすることができる。なお、試薬保冷ユニット36への入庫は、手作業で行ない、出庫と分析部34へのセット操作は、ロボットハンドを用いて行なうこともできるが、ロボットハンドは一般に大きく高価であるため、ロボットハンドに代え簡易な機構で実現したり、あるいは人手を介して行なうようにしたりすることもできる。
【0048】
以下、本実施の形態において、管理装置1、ネットワーク接続装置4および分析装置2が行なう処理の流れについて説明する。なお、ここでは精度管理システムについて説明し、費用管理、在庫管理、運用管理については、精度管理システムの説明から容易に理解されるので、その説明を省略する。
【0049】
システム全体の処理の流れ
図11は、精度管理システム全体の処理の一例の流れ示す説明図である。
分析装置2は、患者検体や精度管理試料を測定すると、その測定に係わる一連の状態監視データと共に、患者検体については検体No.および分析項目を、精度管理試料については検体No.および分析項目とその測定値とを、ネットワーク接続装置4にリアルタイムに送信する(ステップS1)。なお、分析装置2は、検体容器の種類やSTATテーブル上の位置から、患者検体と精度管理試料とを識別できるようになっている。ネットワーク接続装置4は、分析装置2から送信されたデータを管理装置1に送信する(ステップS2)。
【0050】
管理装置1は、ネットワーク接続装置4から送信されたデータを分析装置毎に蓄積し(ステップS3)、新たな精度管理データを元に精度管理データを精度管理試料毎に集計し(ステップS4)、精度管理データと状態監視データとについて、予め準備した判定条件に基づいて分析装置2の異常を検出する(ステップS5)。例えば、精度管理データや廃液ポンプの圧力値などの状態監視データが中央値から離れていく傾向にある場合である。こうした推移が所定の範囲を超えると、分析装置2から警報が発せられるので、ユーザも気付くことができるが、その時は既に障害が発生してしまった後である。これに対し、本実施の形態による精度管理システムは、障害が発生する前にその芽を摘むことが主眼である。
【0051】
管理装置1は、障害が予測される場合は、その原因と推奨される対策処置方法を所定のデータベースから検索して抽出する(ステップS6)。管理装置1は、上記の異常検出結果と共に新しい外部精度管理結果を、各分析装置用のウェブページに提供する(ステップS7)。
【0052】
ユーザがネットワーク接続装置4からウェブページにアクセスし、アクセスが認証されると、最新の集計結果が精度管理データ並びに先の異常検出結果と必要なら推奨される対策処置方法とともに提供される(ステップS8)。なお、分析装置2が患者データを分析する都度、患者データに対する異常検出結果を、管理装置1から返信することは運用的に見ても現実的ではないので、精度管理データと精度管理データとの間の分について、後者の精度管理データに関する集計結果の更新時にウェブページに提供する。
【0053】
患者検体の測定の最後に精度管理試料を測定しない場合は、分析装置2のエンド処理指示のタイミング等、分析装置2の操作者の指示で結果を確認できるようになっている。このように患者検体についての異常検出結果の確認は、リアルタイムではなく測定から時間が経過しているが、前述したように万が一障害が発生すれば直ちに装置から警報が発生されるため、現実的には問題になることはない。なお、必要に応じて、操作者の指示により任意のタイミングで検出結果を得ることは可能である。また、リアルタイムに確認できるようにしても本実施の形態の管理システムの意図するところは変わらない。
【0054】
このようにして、ユーザは内部精度管理結果だけでなく、外部精度管理結果もすぐに確認することができ、仮に異常が検出されれば未然に対処することができる(ステップS9)。このようにして、患者データに対する精度管理を実施することができる(ステップS10)。
【0055】
管理装置1における処理の流れ
次に、管理装置1が行なう精度管理システムにおける処理の流れについて、具体的に説明する。
図12は、管理装置1が行なうメイン処理の一例の流れを示すフローチャートである。メイン処理では、管理装置1は分析装置2から精度管理データと、検体No.および分析項目と、装置の状態監視データとを収集し、状態監視データは精度管理データや検体No.および分析項目と関連づけて蓄積し、精度管理データは集計を行なう。
【0056】
分析装置2からダイアルアップにより、次の処理が開始される。ステップS11では、通信I/F11はネットワーク接続装置4とのコネクションを確立する接続処理を行なう。ステップS12では、処理部12は所定の認証処理を行なう。すなわち、ネットワーク接続装置4から送信される認証情報と、ユーザ管理DB13内のユーザ情報とが一致するか否かを判断する。ステップS13では、処理部12は認証結果に応じた処理を行なう。すなわち、認証情報が一致すると判断された場合は、ステップS14に移行する。
【0057】
ステップS14では、処理部12は、ネットワーク接続装置4からのデータを受信して、その受信データが所望のデータであるか否かを判断する。Yesと判断するとステップS15に移行し、Noと判断するとステップS19に移行する。ステップS15では、処理部12は受信したデータをユーザ管理DB13内に分析装置毎に蓄積する。ステップS19では、通信I/F11によりネットワーク接続装置4とのコネクションを切断するなどの処理を行なう。
【0058】
ステップS16では、処理部12はユーザ管理DB13内に蓄積された精度管理データの集計を行なう。ここで、集計とは、全精度管理データを精度管理試料毎に分類し、平均値や標準偏差を求めるなどの統計処理を意味する。ステップS17では、処理部12は、精度管理データの集計結果と、患者検体と精度管理試料を測定した時の状態監視データとに対して予め準備した判定条件に基づいて異常検出処理を行なう。ステップS18では、処理部12は異常検出処理結果を精度管理集計結果に付加して、各ネットワーク接続装置用ウェブページを更新する。
【0059】
ステップS16では、処理部12は、精度管理データについて以下の処理も行なう。すなわち、精度管理試料や試薬が生体成分によるものの場合は、通常製造ロット毎に性能が異なると考えてよい。このため、これらを補正して結果を集計する必要があることから、分析装置2から精度管理データを送信する場合には、精度管理試料の種類毎の製造ロット番号、並びに測定に使用した試薬も項目毎に製造ロット番号を付加する。
【0060】
なお、集計結果を更新するタイミングは、精度管理データの受信時に限定するものではなく、ネットワーク接続装置4からウェブページにアクセスし、更新要求があった時に更新することも考えられる。これは、患者データの分析終了時に必ず精度管理試料を測定するという保証がないためである。また、管理装置1の負担を考慮し、所定時間間隔、例えば10分間隔で集計結果を更新するようにしても実用的には意味がある。
【0061】
ネットワーク接続装置4における処理の流れ
図13は、ネットワーク接続装置4が行なうメイン処理の一例の流れを示すフローチャートである。ネットワーク接続装置4では、先ず、ステップS21で、分析装置2から精度管理データ、検体No.、分析項目、状態監視データを受信する。ステップS22では、処理部22は、そのデータが精度管理データと関連する状態監視データかどうかを判断する。判断結果が患者データに関する場合は、ステップS23で状態監視データDB25にそのデータを保管する。ステップS24では、ユーザが患者データに関するデータを送信要求しているかどうか判断し、要求していない場合はステップS21に戻リ、要求している場合はステップS26で同データの送信を行なう。
【0062】
一方、ステップS22で分析装置2から受信したデータが精度管理データに関するものであった場合は、ステップS25で同データを管理装置1に送信し、更にステップS26で患者データに関するデータを送信する。こうして、ステップS24で患者データに関連するデータの送信要求がない場合は、精度管理データの関連データと患者データの関連データは同時に管理装置1に送信される。
【0063】
また、精度管理データの関連データは、測定後リアルタイムに送信される。ステップS27では、送信してしまった患者データに関連する状態監視データなどを消去する。ステップS28では、ユーザが外部精度管理結果の提供を指示した場合は、ステップS29でネットワーク管理装置4上のWWWブラウザ23でウェブページにアクセスすることにより、外部精度管理結果や異常検出結果とその対策処置方法等を入手することができる。外部精度管理結果の提供を指示しない場合は、上記各ステップを繰り返す。
【0064】
このようにして、分析装置2で測定した精度管理試料の外部精度と測定時の分析プロセスの異常有無をリアルタイムに確認することができる。患者検体についても、これに同期して分析プロセスの異常有無を確認することもできるし、任意のタイミングでの確認も可能である。
【0065】
なお、上記フローチャートの中で、外部精度管理結果の表示にはユーザの指示が必要であったが、10分間隔で定期的に表示したり、あるいは精度管理データなどを管理装置1に送信した返信として、自動的に結果表示したりするようにしても良い。
【0066】
分析装置1における処理の流れ
図14は、分析装置2が行なうメイン処理の一例の流れを示すフローチャートである。分析装置2は、精度管理データ、検体No.、分析項目、状態監視データをネットワーク接続装置4に送信する。ステップS41およびステップS42では、制御部32は、分析装置2の状態監視データを精度管理データ、または患者データと1対1に対応する検体No.および分析項目をセットにして送信する。この時、精度管理データの場合は、精度管理試料の種類とロット番号、試薬の種類とロット番号、装置ID、測定日時、検体No.および分析項目、精度管理データ、状態監視データなどをセットとする。
【0067】
ここで、装置IDは分析装置2を特定するための識別情報であり、分析装置2のデータを識別するために用いる。患者データに対応する検体No.および分析項目の場合は、上記データセットの中で精度管理試料に関するものが付加されない。ステップS43では、制御部32は、分析装置2の操作者から終了が指示されると、ステップS44において処理を終了する。
【0068】
以上の説明から明らかなように、本実施の形態によれば、これまで人手でしか対応できなかった種々の管理作業を自動化し、分析システムを常に安定で信頼性があり且つ低コストで運用することができる。
【0069】
例えば、図15に精度管理の具体例を示すように、外部精度管理データをチェックすることで(ステップS51)、OKの場合は装置状態が正常と判定でき、NGの場合には、さらに装置の状態監視データをチェックすることで(ステップS52)、そのチェック結果がNGの場合には装置状態に劣化があると推定でき、またOKの場合には試薬劣化の疑いが考えられるので、次に、同一ロット試薬での外部精度管理データを評価することで(ステップS53)、NGの場合には試薬が劣化しているものと判定でき、OKの場合には試薬の劣化ではなく、同一ロット内での精度管理試料が劣化しているものと推測できるので、精度管理を自動的に行なうことができ、分析システムの信頼性の向上、運用コストの低減に寄与することができる。
【0070】
なお、本発明は上記実施の形態にのみ限定されるものではなく、幾多の変更または変形が可能である。例えば、ネットワーク接続装置と管理装置とを結ぶネットワークは、必ずしもインターネットである必要はなく、専用ネットワークやLANなどであってもよい。また、異なる専用セットワーク同士を、インターネット及びルーターやゲートウェイと接続し、専用ネットワーク毎に管理装置を設けても良い。さらに、管理装置は、専用ネットワーク外の分析装置、例えば専用ネットワークとルーターを介して繋がれているインターネット上の分析装置や、このインターネットからファイアウォールを介してLANに接続されている分析装置から所定の情報を収集することも可能である。また、上記実施の形態で説明したネットワーク接続装置の機能を分析装置に組み込むことによりネットワーク接続装置としてのPCを省略することもできる。この場合には、分析装置が、患者検体に関する検体No.および分析項目、その関連する状態監視データや管理装置上のデータをWWWブラウザで取得することになる。
【0071】
さらに、分析システムの精度管理や運用管理については、必ずしもネットワークを介して実行する場合に限らず、分析システムに情報端末を直接接続して実行することもできる。
【0072】
図16は、かかる変形例の一例の構成を示すもので、その詳細な説明は省略する。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明を実施する管理システムの一例の全体構成図である。
【図2】図1に示す管理システムの各部の機能構成を示すブロック図である。
【図3】管理装置で処理する分析装置の状態監視データの一例を説明するための図である。
【図4】状態監視データに異常がない場合の外部精度管理結果の表示例を示す図である。
【図5】状態監視データに障害の兆候が検出された場合の外部精度管理結果の表示例を示す図である。
【図6】一日の中での外部精度の一例のトレンド表示例を示す図である。
【図7】一つのテスト項目についての試薬の在庫数とテスト数とのトレンド表示例を示す図である。
【図8】消耗品のデリバリー状況を確認するための表示例を示す図である。
【図9】分析システムの運用効率のトレンド表示例を示す図である。
【図10】同じく、運用効率の計算表の表示例を示す図である。
【図11】精度管理システム全体の処理の一例の流れを示す説明図である。
【図12】管理装置が行なう精度管理システムのメイン処理の一例の流れを示すフローチャートである。
【図13】ネットワーク接続装置が行なう精度管理システムのメイン処理の一例の流れを示すフローチャートである。
【図14】分析装置が行なう精度管理システムのメイン処理の一例の流れを示すフローチャートである。
【図15】精度管理の具体例を示すフローチャートである。
【図16】本発明を実施する管理システムの変形例を示す全体構成図である。
【符号の説明】
【0074】
1 管理装置(情報端末)
2 分析装置
3 インターネット
4 ネットワーク接続装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークを介して分析システムの在庫を管理する分析システムの在庫管理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
分析データを得る分析システムでは、
1)分析システムで用いる分析装置、キャリブレータ、精度管理試料、試薬などの構成要素の特性を、予め設定された管理域に入るようにする精度管理、
2)ユーザ先での分析システムの使用量を把握して、その料金をユーザに請求して回収する費用管理、
3)ユーザ先での消耗品の使用量を把握して、その在庫量を適正にする在庫管理、
4)ユーザ先の分析システムの運用効率{臨床に報告したテスト数/(全テスト数×k);ただし、k<1}を把握して、改善要請や使用料金の見直しをしながら、分析システムの運用効率を最大にする運用管理、
を行なう必要がある。
【0003】
上記4つの管理は、分析システムの構成要素の特性および消耗品の消費量を把握し、分析システムを常に安定して効率良く稼動させる上で関連性を有しており、従来は以下に説明するようにして各管理を行なうようにしている。
【0004】
<精度管理>
血液検査などの臨床検査では、血液や尿などを試料として様々な検査項目を分析装置によって測定している。近年の分析装置では、高速化、測定試料の微量化などが進み、精密で高度な機構を備えるようになってきている。したがって、操作者も高度な保守訓練を受けない限り、分析装置の状態を正確に把握することができなくなりつつある。
【0005】
分析装置は、検査結果の精度を維持するために各機構部の動作を監視し、何らかの障害が発生すれば、その内容を操作者にきめ細かく通知するようにしている。しかし、生体成分の検査結果を精度良く管理するためには、機構部の監視だけでは不十分で、その生体成分と同じ試料、もしくはそれに類似した試料を精度管理試料として測定し、その測定結果を監視する精度管理方法を取っている。
【0006】
この精度管理としては、同じ精度管理試料を毎日測定して安定した精度結果が得られるのかを監視する方法(内部精度管理)と、その施設以外で用いられている同種の分析装置で測定した結果と同じような測定結果が得られているのかを監視する方法(外部精度管理)とが用いられている。
【0007】
本来、分析システムの個々の要素を完全に管理できるのであれば、外部精度管理は必要ではなく、内部精度管理だけで必要十分である。しかし、益々複雑化してきた分析装置の詳細を管理し、精度管理試料の準備や保存などの操作詳細も管理したとしても、その完全性を常に確認することは現状では不可能である。外部精度管理は、こうした管理の不完全さを大きな母集団との比較から発見しようとするものである。
【0008】
しかし、この外部精度管理の頻度は、準備や集計に手間がかかることから日常的には実施できない。また、外部精度の確認結果が好ましくない場合、複雑化した分析装置を迅速且つ適切に処置できないといった問題がある。
【0009】
これらを解決する方法として、本出願人は、ITを利用し専用ネットワークなどを使って効率的に且つリアルタイムに外部精度管理を行なう手法を既に提案している(OLYMPUS Lab Supportsデータ管理サービス)。さらに、分析装置のエラー内容などもネットワークを介して収集し、その発生頻度や精度管理データの中央値からのずれの推移といった内容から分析装置の障害を把握し、必要ならば装置を遠隔操作することにより、操作者の負担軽減と迅速且つ適切な処置を実現する手法なども提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0010】
ところで、本来、精度管理とは患者データの測定精度を確保するためのものである。しかし、主には経済的な理由から、例えば患者検体100検体おきに精度管理試料を測定しているのが現状である。したがって、患者データの信頼性は、直近の精度管理データの安定性等から想定している。つまり、内部、外部の精度管理データが良好で、機構部に所定の障害が発生しない場合に限り、患者データには信頼性があると判断している。
【0011】
<費用管理>
今日、主に欧米においてコスト/テストあるいはプライス/テストという契約方法が浸透している。その契約内容は、例えば、分析項目毎に一年間のテスト数を取り決め、その数量に応じて1テスト当りの単価を設定した上で分析システム一式を貸し出すというものである。一式という場合に、分析装置や試薬などの消耗品に保守サービス費用まで盛りんだもの、さらには、精度管理やキャリブレーション、再検など臨床への報告には寄与しなかったテストには課金しないものなど、幾つかのバリエーションがある。
【0012】
こうした契約の場合、その請求費用の根拠はテスト数となるため、これを正確に把握する必要がある。そのため、毎月ユーザからテスト数をFAXしてもらう、あるいはシステム提供側がユーザ先を訪問して分析装置のテスト数カウンタやユーザの報告書を見せてもらうと、いう作業を実施している。また、把握したテスト数をシステム提供側の経理端末に正確に入力し、ユーザ毎の請求書を作成して郵送やFAXしている。
【0013】
<在庫管理>
分析システムで測定を進めるに伴い、試薬やディスポチップなどの消耗品は減少してゆく。分析装置で消耗品が不足すると人手による補充が必要であり、消耗品によっては、その間測定を停止しなければならない場合もある。このため、測定に先立って、必要な量の消耗品を装置にセットする必要があることから、ユーザは消耗品の在庫量を把握し、在庫量がある程度以下になった場合はシステム供給側に注文することになる。
【0014】
ところが、上述したコスト/テスト契約の場合は、ユーザからの注文は不要で、ユーザ先で不足しないようにシステム供給側から消耗品を供給するようにしている。そのため、システム供給側では、消耗品の発送時期および数量を、ユーザ毎のこれまでの消費量から予測したり、ユーザに電話をしてもらったりするなどの工夫をしている。
【0015】
<運用管理>
分析システムをコスト/テスト契約する場合、システム供給側にとっては、高価な試薬やキャリブレータ、精度管理試料をいかに少ない量で精度の良い測定をしてもらうかが重要である。ここで、臨床に報告できる分析結果を得るのに試薬やキャリブレータ、精度管理試料などの使用量等の総コストが少なければ少ない程、分析システムの運用効率が高いことになる。そのため、ユーザ先にて再検の理由を調査したり、一日当りの精度管理の回数を調査したりしている。また、これとは別に、テスト数データと試薬などの使用量とを、例えば毎月調査し、その結果から分析システムの運用効率レポートをユーザに提出している。そのレポートの中で、測定に要したコストの内訳が分析され、当初目標とした効率に達しない場合には、ユーザに改善のためのアドバイスがされる。当初の目標をクリアした場合は、契約金額の見直しなどを行なう。こうした作業の殆どは、従来手作業で行なわれている。
【特許文献1】特開2001−229291号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、従来の在庫管理方法では、コスト/テスト契約の場合、試薬などの消耗品を発送するタイミングおよびその量を経験則で決定しているため、ユーザ先に不足が発生しないように多少多めに送付する傾向にある。
【0017】
このため、ユーザ先で余剰在庫を抱えてしまうという問題があると共に、在庫が多すぎて試薬の有効期限が切れてしまうといった問題もある。こうした問題を解決するには、ユーザ先に電話で確認したり、ユーザ先から確認の電話を入れてもらったりするなどの連絡をとるようにすればよいが、このようにすると手間がかかるという問題がある。
【0018】
したがって、かかる点に鑑みてなされた本発明の目的は、人手を介することなく、消耗品の在庫を適正な量に管理できる分析システムの在庫管理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成する請求項1に係る分析システムの在庫管理方法の発明は、分析装置を含む分析システムをネットワーク接続装置およびネットワークを介して情報端末に接続して、上記分析システムで使用される消耗品の在庫を管理するにあたり、
上記分析装置から、キャリブレータ、精度管理試料、試薬などの消耗品の個別認識データと入出庫日時および数量とを含む消耗品に関するデータを、上記ネットワーク接続装置およびネットワークを介して受信して蓄積し、
その蓄積された消耗品に関するデータを分析装置毎およびユーザ毎に集計し、
その集計の結果、所定の在庫数量を下回った場合または消耗品の発送予想日が所定の日数を下回った場合は、配達物品の組み合わせ、運搬効率、手持ちの在庫数量、工場からの入庫日程などから最適な配送計画を作成し、その結果を自動的に関連部門に配信して所定の確定作業を行なった後、上記関連部門から上記の配送計画を上記ネットワークを介して当該分析装置に対応する上記ネットワーク接続装置に提供して、必要な消耗品を必要な日程でユーザ先に発送することにより、ユーザ先の在庫数量を適正範囲に保つようにしたことを特徴とするものである。
【0020】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の分析システムの在庫管理方法において、上記分析装置では、消耗品に貼付されているバーコードをバーコードリーダで読み取って、上記消耗品に関するデータを管理することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明による分析システムの在庫管理方法では、例えば分析装置の試薬保冷ユニット部にバーコードリーダを設けて、各消耗品に貼付された物品認識番号、製造番号、内容量、有効期限などが記されたバーコードを読み取ることにより、物品の認識と入出庫日時および数量の管理を行なって在庫数量を把握し、こうして自動的に認識した物品の入出庫日時および数量をネットワーク接続装置に送信する。また、試薬保冷ユニット部には、分析部の試薬などが不足した場合に、試薬などを分析部へ自動的に装填するロボットアームを設けることもできる。なお、ロボットアームは一般に高価で大きいので、設計を工夫して簡易な機構で装填するようにしたり、あるいは人手を介して装填したりするようにしても何ら問題はない。
【0022】
ネットワーク接続装置は、ネットワークを介して上記の入出庫日時や数量などを情報端末に送信し、情報端末は、各品目の在庫数が予め設定した値を下回った場合あるいは、出庫データから計算される発送予想日が、当日を基点として所定の日数を下回った場合に、配達物品の組み合わせや運搬効率ならびに手持ちの在庫や工場からの入庫日程データなどを検索し、各ユーザへの最適な配送計画を作成し、その結果をデリバリー情報として配送部門、製造部門と営業部門に逐次提供する。各部門では、配送、製造計画ならびに顧客情報を元に、営業部門の指示で手配を開始すると同時に、ユーザのネットワーク接続装置に当該デリバリー情報を提供する。
【0023】
これにより、手間のかかる消耗品の分析装置への補充や在庫管理作業の自動化が可能になると共に、余剰在庫や試薬の廃棄量の削減が可能となる。
【0024】
したがって、本発明による分析システムの在庫管理方法によれば、ユーザは、試薬交換などのために分析装置を止める必要が無くなり、消耗品のセットも不要になる。また、試薬などの消耗品の在庫管理のための工数が不要となるとともに、消耗品発注や在庫切れなども無くすことができる。さらに、消耗品供給側では、人手による残量の確認が不要になると共に、ユーザ先も含めた在庫数量の最小化と製造、配送を一元管理することによる納期の短縮等から、在庫費用の圧縮を実現することができる。また、在庫が多すぎたために発生していた試薬の有効期限切れによる損失も最小限に食い止めることが期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0026】
図1は、本発明を実施する管理システムの一例の全体構成図である。この管理システムは、管理装置(情報端末)1をインターネット3に接続し、各分析装置2を対応するネットワーク接続装置4を介してインターネット3に接続して、各分析装置2の精度管理、費用管理、在庫管理および運用管理を、管理装置1によりインターネット3および対応するネットワーク接続装置4を介して行なうものである。
【0027】
ここで、分析装置2としては、例えば血液分析装置などを挙げることができる。また、管理装置1としては、PC(Personal Computer)やWS(Work Station)などを用いることができ、インターネット3としては、例えば専用ネットワークやイントラネット、LANなど各種ネットワークを用いることができ、ネットワーク接続装置4としては、PCなどを用いることができる。なお、本実施の形態のようにインターネット3と接続する場合には、好適には情報の暗号化や厳しい認証システムなどセキュリティーを高めるための方策を施しておく。
【0028】
本実施の形態では、上述したように各分析装置2の精度管理、費用管理、在庫管理および運用管理を行なうため、各分析装置2は、以下に示すデータを所定のタイミングで対応するネットワーク接続装置4およびインターネット3を介して管理装置1に送信する。
【0029】
[精度管理に使用するデータ]
1)精度管理データと、その検体No.および分析項目、並びにそれを測定した時の装置の状態監視データ。
2)患者データに1対1に対応する検体No.および分析項目と、それを測定した時の装置の状態監視データ。
【0030】
ここで、装置の状態監視データとは、以下の情報から成る。
a)精度管理試料や患者検体の吸引・吐出モニタデータ
b)試薬の吸引・吐出モニタデータ
c)攪拌モータ電流値モニタデータ
d)反応温度モニタデータ
e)反応過程モニタデータ
f)測光光源モニタデータ
g)廃液吸引モニタデータ
h)各部動作回数モニタデータ
i)ホスト通信ログ、アラームログ
j)保守管理データ
【0031】
[費用管理に使用するデータ]
1)検体毎、項目毎のテスト数(ルーチン、緊急、STAT、再検、精度管理試料、キャリブレータ、試薬ブランク)
2)すべての検体種について、項目毎の全テスト数
3)個々の検体種について、すべての項目を含んだ全テスト数
【0032】
[在庫管理に使用するデータ]
1)キャリブレータ、精度管理試料、試薬、ディスポチップなどの消耗品の在庫数と入出庫カウント値
【0033】
[運用管理に使用するデータ]
1)検体毎、項目毎のテスト数(ルーチン、緊急、STAT、再検、精度管理試料、キャリブレータ、試薬ブランク)
2)すべての検体種について、項目毎の全テスト数
3)個々の検体種について、すべての項目を含んだ全テスト数
4)キャリブレータ、精度管理試料、試薬、ディスポチップなどの消耗品の在庫数と入出庫カウント値
【0034】
図2は、図1に示す管理装置1、ネットワーク接続装置4及び分析装置2の機能構成を示すブロック図である。管理装置1は、通信インターフェイス(I/F)11、処理部12、ユーザ管理データベース(DB)13、WWWサーバ14を有している。ネットワーク接続装置4は、通信I/F21、処理部22、WWWブラウザ23、通信I/F24、動作データなどの状態監視データDB25を有している。分析装置2は、通信I/F31、制御部32、履歴情報DB33、分析部34、ユーザ端末35ならびに試薬保冷ユニット36を有している。
【0035】
以下、管理装置1、ネットワーク接続装置4及び分析装置2の各部の動作について説明する。
【0036】
管理装置1
管理装置1は、各分析装置2から送信される上記のデータを、通信I/F11を介してユーザ管理DB13に収集して分析装置毎に蓄積し、このユーザ管理DB13に蓄積されたデータを、処理部12により管理内容に応じて所定のタイミングで集計して解析および編集し、その管理内容に対応する結果データを処理部12が作成するウェブページに表示して、そのウェブページをWWWサーバ14によりインターネット3を介してネットワーク接続装置4のWWWブラウザ23に提供する。
【0037】
図3は、管理装置1で処理する分析装置2の状態監視データの一例を説明するための図である。分析装置2では、例えば図3(a)に示すように、患者検体や精度管理試料の吸引・吐出時に発生するサンプルプローブ内の圧力データを吸引・吐出量に応じた管理幅で監視し、その管理幅の中央値からのずれ量を正規化したデジタル値として管理装置1へ送信する。なお、図3(a)において、α1,α2、β1,β2およびγ1,γ2は、あるテスト項目における吸引時、吸引終了時、および吐出時の管理限界を示している。この場合、α1−α2,β1−β2,γ1−γ2が、そのテスト項目の各管理幅となるので、その各管理幅の中央値からのずれ量を正規化して管理装置1へ送信する。
【0038】
管理装置1では、分析装置2から送信される上記のデータを、管理限界内にあるか否かを監視しながら管理し、必要に応じて図3(b)に示すように任意の状態監視データのトレンドを表示したり、図3(c)に示すようにテスト項目毎に所要の状態監視データを判定結果とともに表示したりする。なお、図3(b)は、吸引・吐出モニタデータ(管理幅の中央値からのずれ量を正規化したデータ)のトレンドを表示したもので、ηおよびθはその管理限界を示している。
【0039】
図3(b)において、吸引・吐出モニタデータは、吸引・吐出の度にある幅の中でばらつくのが通常である。そのばらつきが、装置としてエラーとはならないまでも注意を要する値(管理限界)を超えた場合、あるいはデータの時間的な変化率が所定の値を超えた場合、あるいはこれら2つの条件の両方が成立した場合に異常と判定したり、あるいは予め決められたモニタデータ間の論理演算や数値演算によって異常と判定したりするなどの判定条件を予め準備して、その判定結果を図3(c)に示すようにテスト項目毎の判定結果欄に表示する。
【0040】
図4〜図6は、外部精度管理結果の表示例を示すもので、図4は状態監視データに異常がない場合を示しており、図5は状態監視データに異常の兆候が検出された場合を示しており、図6は一日の中での外部精度のトレンドを示している。表示形式は、散布図などを用いても良い。本実施の形態では、図5に示すように、状態監視データに異常が検知された場合には、その異常の内容と対処方法とを表示してユーザに提供する。
【0041】
このように、外部精度管理結果を表示することで、ユーザは内部精度のみならず外部精度もリアルタイムに確認することができ、分析システムの安定性をリアルタイムに把握することができる。また、装置の異常が予見される場合は、具体的にその内容と対処方法を手に入れることができる。
【0042】
図7および図8は、在庫管理の表示例を示すもので、図7はある一つのテスト項目についての試薬の在庫数とテスト数とのトレンド表示例であり、図8は消耗品のデリバリー状況を確認するための表示例である。図7に示すトレンド表示から、分析装置2は、在庫量が管理在庫値を下回る、あるいは管理在庫値までの日数が所定の日数を下回ると予測される場合に、システム供給側に当該試薬を自動発注する。また、図8に示す表示例から、ユーザは在庫が少なくなった消耗品の発注が済んでいて、それがいつ頃到着するかを確認でき、安心して分析システムを運用することができる。また、幾つかの品物を同時に発送するなど、運搬効率などを考慮して自動的に配送計画が立てられる。
【0043】
図9および図10は、分析システムの運用効率の表示例で、図9はトレンド表示例を示しており、図10は計算表の表示例を示している。このように運用効率を表示することで、例えば図9に示すトレンド表示をユーザが毎日見ることにより、その日の内にユーザ自ら運用効率を確認でき、迅速な対策処置が可能となる。また、システム提供側と当初立てた目標値をクリアすれば料金が安くなるといった特典をつけることにより、より一層ユーザ独自の改善が期待される。このように、ユーザ側およびシステム提供側の両者が、同じ指標で分析システムの運用状況を確認できるので、その波及効果は大きい。
【0044】
このように、管理装置1では、ウェブページに分析装置2の状態監視データの履歴を表示して、分析装置2の動作状態を把握すると共に、異常が発生した場合の原因究明を行ない、さらにテストの実施状況や消耗品の在庫数、各分析システムの運用効率のトレンドなどを表示し、このウェブページをネットワーク接続装置4のWWWブラウザ23に提供する。
【0045】
ネットワーク接続装置4
ネットワーク接続装置4では、通信I/F21により管理装置1の通信I/F11と同様に、コネクションを確立する処理を行なう。WWWブラウザ23は、ユーザからの指示に基づいて管理装置1上のウェブページを取得する。処理部22は、ネットワーク接続装置4の各構成要素の制御と状態監視データなどの計算処理を行なう。通信I/F24は、分析装置2とのコネクションを確立する処理を行なう。状態監視データDB25は、分析装置2から送信された患者検体測定時の状態監視データなどを検体No.と分析項目とを関連づけて一時保管する。
【0046】
分析装置2
分析装置2では、通信I/F31によりネットワーク接続装置4とのコネクションを確立する処理を行なう。制御部32は、履歴情報DB33、分析部34、ユーザ端末35ならびに試薬保冷ユニット36の各構成要素を制御する。履歴情報DB33は、分析装置の通信ログやアラームログ、各種設定値、保守管理データ(装置、プログラムのバージョンや修理情報など)を蓄積している。
【0047】
試薬保冷ユニット36には、試薬などの消耗品が所定の量格納されており、入出庫の際、試薬保冷庫内のバーコードリーダを使って各消耗品に貼付されたバーコードを読み取ることにより物品の認識を行ない、自動的に入出庫日時や数量を管理する。また、分析部34で試薬などが不足した場合は、自動的に必要な消耗品を出庫し分析部34にセットすることができる。なお、試薬保冷ユニット36への入庫は、手作業で行ない、出庫と分析部34へのセット操作は、ロボットハンドを用いて行なうこともできるが、ロボットハンドは一般に大きく高価であるため、ロボットハンドに代え簡易な機構で実現したり、あるいは人手を介して行なうようにしたりすることもできる。
【0048】
以下、本実施の形態において、管理装置1、ネットワーク接続装置4および分析装置2が行なう処理の流れについて説明する。なお、ここでは精度管理システムについて説明し、費用管理、在庫管理、運用管理については、精度管理システムの説明から容易に理解されるので、その説明を省略する。
【0049】
システム全体の処理の流れ
図11は、精度管理システム全体の処理の一例の流れ示す説明図である。
分析装置2は、患者検体や精度管理試料を測定すると、その測定に係わる一連の状態監視データと共に、患者検体については検体No.および分析項目を、精度管理試料については検体No.および分析項目とその測定値とを、ネットワーク接続装置4にリアルタイムに送信する(ステップS1)。なお、分析装置2は、検体容器の種類やSTATテーブル上の位置から、患者検体と精度管理試料とを識別できるようになっている。ネットワーク接続装置4は、分析装置2から送信されたデータを管理装置1に送信する(ステップS2)。
【0050】
管理装置1は、ネットワーク接続装置4から送信されたデータを分析装置毎に蓄積し(ステップS3)、新たな精度管理データを元に精度管理データを精度管理試料毎に集計し(ステップS4)、精度管理データと状態監視データとについて、予め準備した判定条件に基づいて分析装置2の異常を検出する(ステップS5)。例えば、精度管理データや廃液ポンプの圧力値などの状態監視データが中央値から離れていく傾向にある場合である。こうした推移が所定の範囲を超えると、分析装置2から警報が発せられるので、ユーザも気付くことができるが、その時は既に障害が発生してしまった後である。これに対し、本実施の形態による精度管理システムは、障害が発生する前にその芽を摘むことが主眼である。
【0051】
管理装置1は、障害が予測される場合は、その原因と推奨される対策処置方法を所定のデータベースから検索して抽出する(ステップS6)。管理装置1は、上記の異常検出結果と共に新しい外部精度管理結果を、各分析装置用のウェブページに提供する(ステップS7)。
【0052】
ユーザがネットワーク接続装置4からウェブページにアクセスし、アクセスが認証されると、最新の集計結果が精度管理データ並びに先の異常検出結果と必要なら推奨される対策処置方法とともに提供される(ステップS8)。なお、分析装置2が患者データを分析する都度、患者データに対する異常検出結果を、管理装置1から返信することは運用的に見ても現実的ではないので、精度管理データと精度管理データとの間の分について、後者の精度管理データに関する集計結果の更新時にウェブページに提供する。
【0053】
患者検体の測定の最後に精度管理試料を測定しない場合は、分析装置2のエンド処理指示のタイミング等、分析装置2の操作者の指示で結果を確認できるようになっている。このように患者検体についての異常検出結果の確認は、リアルタイムではなく測定から時間が経過しているが、前述したように万が一障害が発生すれば直ちに装置から警報が発生されるため、現実的には問題になることはない。なお、必要に応じて、操作者の指示により任意のタイミングで検出結果を得ることは可能である。また、リアルタイムに確認できるようにしても本実施の形態の管理システムの意図するところは変わらない。
【0054】
このようにして、ユーザは内部精度管理結果だけでなく、外部精度管理結果もすぐに確認することができ、仮に異常が検出されれば未然に対処することができる(ステップS9)。このようにして、患者データに対する精度管理を実施することができる(ステップS10)。
【0055】
管理装置1における処理の流れ
次に、管理装置1が行なう精度管理システムにおける処理の流れについて、具体的に説明する。
図12は、管理装置1が行なうメイン処理の一例の流れを示すフローチャートである。メイン処理では、管理装置1は分析装置2から精度管理データと、検体No.および分析項目と、装置の状態監視データとを収集し、状態監視データは精度管理データや検体No.および分析項目と関連づけて蓄積し、精度管理データは集計を行なう。
【0056】
分析装置2からダイアルアップにより、次の処理が開始される。ステップS11では、通信I/F11はネットワーク接続装置4とのコネクションを確立する接続処理を行なう。ステップS12では、処理部12は所定の認証処理を行なう。すなわち、ネットワーク接続装置4から送信される認証情報と、ユーザ管理DB13内のユーザ情報とが一致するか否かを判断する。ステップS13では、処理部12は認証結果に応じた処理を行なう。すなわち、認証情報が一致すると判断された場合は、ステップS14に移行する。
【0057】
ステップS14では、処理部12は、ネットワーク接続装置4からのデータを受信して、その受信データが所望のデータであるか否かを判断する。Yesと判断するとステップS15に移行し、Noと判断するとステップS19に移行する。ステップS15では、処理部12は受信したデータをユーザ管理DB13内に分析装置毎に蓄積する。ステップS19では、通信I/F11によりネットワーク接続装置4とのコネクションを切断するなどの処理を行なう。
【0058】
ステップS16では、処理部12はユーザ管理DB13内に蓄積された精度管理データの集計を行なう。ここで、集計とは、全精度管理データを精度管理試料毎に分類し、平均値や標準偏差を求めるなどの統計処理を意味する。ステップS17では、処理部12は、精度管理データの集計結果と、患者検体と精度管理試料を測定した時の状態監視データとに対して予め準備した判定条件に基づいて異常検出処理を行なう。ステップS18では、処理部12は異常検出処理結果を精度管理集計結果に付加して、各ネットワーク接続装置用ウェブページを更新する。
【0059】
ステップS16では、処理部12は、精度管理データについて以下の処理も行なう。すなわち、精度管理試料や試薬が生体成分によるものの場合は、通常製造ロット毎に性能が異なると考えてよい。このため、これらを補正して結果を集計する必要があることから、分析装置2から精度管理データを送信する場合には、精度管理試料の種類毎の製造ロット番号、並びに測定に使用した試薬も項目毎に製造ロット番号を付加する。
【0060】
なお、集計結果を更新するタイミングは、精度管理データの受信時に限定するものではなく、ネットワーク接続装置4からウェブページにアクセスし、更新要求があった時に更新することも考えられる。これは、患者データの分析終了時に必ず精度管理試料を測定するという保証がないためである。また、管理装置1の負担を考慮し、所定時間間隔、例えば10分間隔で集計結果を更新するようにしても実用的には意味がある。
【0061】
ネットワーク接続装置4における処理の流れ
図13は、ネットワーク接続装置4が行なうメイン処理の一例の流れを示すフローチャートである。ネットワーク接続装置4では、先ず、ステップS21で、分析装置2から精度管理データ、検体No.、分析項目、状態監視データを受信する。ステップS22では、処理部22は、そのデータが精度管理データと関連する状態監視データかどうかを判断する。判断結果が患者データに関する場合は、ステップS23で状態監視データDB25にそのデータを保管する。ステップS24では、ユーザが患者データに関するデータを送信要求しているかどうか判断し、要求していない場合はステップS21に戻リ、要求している場合はステップS26で同データの送信を行なう。
【0062】
一方、ステップS22で分析装置2から受信したデータが精度管理データに関するものであった場合は、ステップS25で同データを管理装置1に送信し、更にステップS26で患者データに関するデータを送信する。こうして、ステップS24で患者データに関連するデータの送信要求がない場合は、精度管理データの関連データと患者データの関連データは同時に管理装置1に送信される。
【0063】
また、精度管理データの関連データは、測定後リアルタイムに送信される。ステップS27では、送信してしまった患者データに関連する状態監視データなどを消去する。ステップS28では、ユーザが外部精度管理結果の提供を指示した場合は、ステップS29でネットワーク管理装置4上のWWWブラウザ23でウェブページにアクセスすることにより、外部精度管理結果や異常検出結果とその対策処置方法等を入手することができる。外部精度管理結果の提供を指示しない場合は、上記各ステップを繰り返す。
【0064】
このようにして、分析装置2で測定した精度管理試料の外部精度と測定時の分析プロセスの異常有無をリアルタイムに確認することができる。患者検体についても、これに同期して分析プロセスの異常有無を確認することもできるし、任意のタイミングでの確認も可能である。
【0065】
なお、上記フローチャートの中で、外部精度管理結果の表示にはユーザの指示が必要であったが、10分間隔で定期的に表示したり、あるいは精度管理データなどを管理装置1に送信した返信として、自動的に結果表示したりするようにしても良い。
【0066】
分析装置1における処理の流れ
図14は、分析装置2が行なうメイン処理の一例の流れを示すフローチャートである。分析装置2は、精度管理データ、検体No.、分析項目、状態監視データをネットワーク接続装置4に送信する。ステップS41およびステップS42では、制御部32は、分析装置2の状態監視データを精度管理データ、または患者データと1対1に対応する検体No.および分析項目をセットにして送信する。この時、精度管理データの場合は、精度管理試料の種類とロット番号、試薬の種類とロット番号、装置ID、測定日時、検体No.および分析項目、精度管理データ、状態監視データなどをセットとする。
【0067】
ここで、装置IDは分析装置2を特定するための識別情報であり、分析装置2のデータを識別するために用いる。患者データに対応する検体No.および分析項目の場合は、上記データセットの中で精度管理試料に関するものが付加されない。ステップS43では、制御部32は、分析装置2の操作者から終了が指示されると、ステップS44において処理を終了する。
【0068】
以上の説明から明らかなように、本実施の形態によれば、これまで人手でしか対応できなかった種々の管理作業を自動化し、分析システムを常に安定で信頼性があり且つ低コストで運用することができる。
【0069】
例えば、図15に精度管理の具体例を示すように、外部精度管理データをチェックすることで(ステップS51)、OKの場合は装置状態が正常と判定でき、NGの場合には、さらに装置の状態監視データをチェックすることで(ステップS52)、そのチェック結果がNGの場合には装置状態に劣化があると推定でき、またOKの場合には試薬劣化の疑いが考えられるので、次に、同一ロット試薬での外部精度管理データを評価することで(ステップS53)、NGの場合には試薬が劣化しているものと判定でき、OKの場合には試薬の劣化ではなく、同一ロット内での精度管理試料が劣化しているものと推測できるので、精度管理を自動的に行なうことができ、分析システムの信頼性の向上、運用コストの低減に寄与することができる。
【0070】
なお、本発明は上記実施の形態にのみ限定されるものではなく、幾多の変更または変形が可能である。例えば、ネットワーク接続装置と管理装置とを結ぶネットワークは、必ずしもインターネットである必要はなく、専用ネットワークやLANなどであってもよい。また、異なる専用セットワーク同士を、インターネット及びルーターやゲートウェイと接続し、専用ネットワーク毎に管理装置を設けても良い。さらに、管理装置は、専用ネットワーク外の分析装置、例えば専用ネットワークとルーターを介して繋がれているインターネット上の分析装置や、このインターネットからファイアウォールを介してLANに接続されている分析装置から所定の情報を収集することも可能である。また、上記実施の形態で説明したネットワーク接続装置の機能を分析装置に組み込むことによりネットワーク接続装置としてのPCを省略することもできる。この場合には、分析装置が、患者検体に関する検体No.および分析項目、その関連する状態監視データや管理装置上のデータをWWWブラウザで取得することになる。
【0071】
さらに、分析システムの精度管理や運用管理については、必ずしもネットワークを介して実行する場合に限らず、分析システムに情報端末を直接接続して実行することもできる。
【0072】
図16は、かかる変形例の一例の構成を示すもので、その詳細な説明は省略する。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明を実施する管理システムの一例の全体構成図である。
【図2】図1に示す管理システムの各部の機能構成を示すブロック図である。
【図3】管理装置で処理する分析装置の状態監視データの一例を説明するための図である。
【図4】状態監視データに異常がない場合の外部精度管理結果の表示例を示す図である。
【図5】状態監視データに障害の兆候が検出された場合の外部精度管理結果の表示例を示す図である。
【図6】一日の中での外部精度の一例のトレンド表示例を示す図である。
【図7】一つのテスト項目についての試薬の在庫数とテスト数とのトレンド表示例を示す図である。
【図8】消耗品のデリバリー状況を確認するための表示例を示す図である。
【図9】分析システムの運用効率のトレンド表示例を示す図である。
【図10】同じく、運用効率の計算表の表示例を示す図である。
【図11】精度管理システム全体の処理の一例の流れを示す説明図である。
【図12】管理装置が行なう精度管理システムのメイン処理の一例の流れを示すフローチャートである。
【図13】ネットワーク接続装置が行なう精度管理システムのメイン処理の一例の流れを示すフローチャートである。
【図14】分析装置が行なう精度管理システムのメイン処理の一例の流れを示すフローチャートである。
【図15】精度管理の具体例を示すフローチャートである。
【図16】本発明を実施する管理システムの変形例を示す全体構成図である。
【符号の説明】
【0074】
1 管理装置(情報端末)
2 分析装置
3 インターネット
4 ネットワーク接続装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析装置を含む分析システムをネットワーク接続装置およびネットワークを介して情報端末に接続して、上記分析システムで使用される消耗品の在庫を管理するにあたり、
上記分析装置から、キャリブレータ、精度管理試料、試薬などの消耗品の個別認識データと入出庫日時および数量とを含む消耗品に関するデータを、上記ネットワーク接続装置およびネットワークを介して受信して蓄積し、
その蓄積された消耗品に関するデータを分析装置毎およびユーザ毎に集計し、
その集計の結果、所定の在庫数量を下回った場合または消耗品の発送予想日が所定の日数を下回った場合は、配達物品の組み合わせ、運搬効率、手持ちの在庫数量、工場からの入庫日程などから最適な配送計画を作成し、その結果を自動的に関連部門に配信して所定の確定作業を行なった後、上記関連部門から上記の配送計画を上記ネットワークを介して当該分析装置に対応する上記ネットワーク接続装置に提供して、必要な消耗品を必要な日程でユーザ先に発送することにより、ユーザ先の在庫数量を適正範囲に保つようにしたことを特徴とする分析システムの在庫管理方法。
【請求項2】
上記分析装置では、消耗品に貼付されているバーコードをバーコードリーダで読み取って、上記消耗品に関するデータを管理することを特徴とする請求項1に記載の分析システムの在庫管理方法。
【請求項1】
分析装置を含む分析システムをネットワーク接続装置およびネットワークを介して情報端末に接続して、上記分析システムで使用される消耗品の在庫を管理するにあたり、
上記分析装置から、キャリブレータ、精度管理試料、試薬などの消耗品の個別認識データと入出庫日時および数量とを含む消耗品に関するデータを、上記ネットワーク接続装置およびネットワークを介して受信して蓄積し、
その蓄積された消耗品に関するデータを分析装置毎およびユーザ毎に集計し、
その集計の結果、所定の在庫数量を下回った場合または消耗品の発送予想日が所定の日数を下回った場合は、配達物品の組み合わせ、運搬効率、手持ちの在庫数量、工場からの入庫日程などから最適な配送計画を作成し、その結果を自動的に関連部門に配信して所定の確定作業を行なった後、上記関連部門から上記の配送計画を上記ネットワークを介して当該分析装置に対応する上記ネットワーク接続装置に提供して、必要な消耗品を必要な日程でユーザ先に発送することにより、ユーザ先の在庫数量を適正範囲に保つようにしたことを特徴とする分析システムの在庫管理方法。
【請求項2】
上記分析装置では、消耗品に貼付されているバーコードをバーコードリーダで読み取って、上記消耗品に関するデータを管理することを特徴とする請求項1に記載の分析システムの在庫管理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2006−98415(P2006−98415A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−372383(P2005−372383)
【出願日】平成17年12月26日(2005.12.26)
【分割の表示】特願2002−78849(P2002−78849)の分割
【原出願日】平成14年3月20日(2002.3.20)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月26日(2005.12.26)
【分割の表示】特願2002−78849(P2002−78849)の分割
【原出願日】平成14年3月20日(2002.3.20)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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