説明

分析チップ及び分析チップの使用方法

【課題】被検液に含まれて分析に用いられる分析対象物を効率よく捕集することができる分析チップ及びこの分析チップの使用方法を提供する。
【解決手段】分析チップ1では、被検液を吸収した状態で吸収体31が、本体部10における凹部11の吸収体収容領域11Aに収容されて、分析チップ1の外部から吸収体31を押圧することで被検液に含まれる分析対象物よりも孔径が小さいフィルタ部材33を被検液が通過し、この分析対象物がフィルタ部材33により捕集される。したがって、被検液が少量であって分析対象物の濃度が低い場合であっても、分析対象物がフィルタ部材33により効率よく捕集できる。また、このように分析対象物を効率よく捕集した後にこの分析対象物に係る分析を行うことができるため、高い精度で分析をすることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析チップ及びこの分析チップの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、血液、唾液、尿等の体液を被検液として用いて感染症等の病状の診断が行われている。この感染症等の病状の診断の際には、微生物をはじめとして被検液に含まれる微生物の数を測定する方法が用いられており、その測定に用いられる器具についても種々の検討が行われている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4262616号公報
【特許文献2】特開平08−322594号公報
【特許文献3】特開平09−065893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、唾液を被検液とし、唾液に含まれて分析対象となる微生物の数や種類を測定することで口腔内の健康状態を評価する場合、口腔内から採取できる唾液の量は微量であることから、その唾液に含まれる微生物の数も非常に少なく、微生物の数や種類を正確に評価できない。また、被検液が唾液ではなく、分析対象物が微生物ではない場合にも、分析に用いることができる被検液の量が少ない場合や被検液に含まれる分析対象物の濃度が低い場合には、被検液に含まれて分析に用いることができる分析対象物の量が少なく、高精度で分析を行うことが困難となる。
【0005】
本発明は上記を鑑みてなされたものであり、被検液に含まれて分析に用いられる分析対象物を効率よく捕集することができる分析チップ及びこの分析チップの使用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る分析チップは、凹部及び当該凹部を取り囲む縁部を有する本体部と、凹部及び縁部を覆う蓋部と、凹部内に収容されて、被検液を吸収可能な吸収体と、凹部内に吸収体と接続して設けられ、被検液に含まれる分析対象物よりもその孔径が小さいフィルタ部材と、を備え、凹部の吸収体が収容される部分及び吸収体が対向する蓋部の少なくとも一方は柔軟性を有することを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る分析チップの使用方法は、凹部及び当該凹部を取り囲む縁部を有する本体部と、凹部及び縁部を覆う蓋部と、凹部内に収容されて、被検液を吸収可能な吸収体と、凹部内に吸収体と接続して設けられ、被検液に含まれる分析対象物よりもその孔径が小さいフィルタ部材と、を備える分析チップの使用方法であって、凹部内に収容された吸収体を蓋部及び/又は本体部の外側から押圧して、フィルタ部材に被検液を通過させることを特徴とする。
【0008】
上記の分析チップ及び分析チップの使用方法によれば、分析チップの外部から吸収体を押圧することで、被検液に含まれる分析対象物よりも孔径が小さいフィルタ部材を被検液が通過し、分析対象物がフィルタ部材により捕集される。したがって、被検液が少量であって分析対象物の濃度が低い場合であっても、分析対象物がフィルタ部材により効率よく捕集できる。また、このように分析対象物を効率よく捕集した後にこの分析対象物に係る分析を行うことができるため、高い精度で分析をすることが可能となる。
【0009】
ここで、凹部内の吸収体が収容される部分と、フィルタ部材との間にプレフィルタ部材をさらに備えた態様とすることが好ましい。
【0010】
上記のように、吸収体が収容される部分とフィルタ部材との間にプレフィルタ部材を設けることで、被検液内の夾雑物がこのプレフィルタ部材によって捕集することができるため、フィルタ部材での夾雑物を減らすことができ、分析対象物をより効率よく濃縮することができる。
【0011】
ここで、フィルタ部材には、特定の分析対象物と特異的に結合可能な分子認識素子が固定されている態様とすることができ、また、凹部内及び/又は凹部と対向する蓋部に付着され、特定の分析対象物と特異的に結合可能であり、且つ標識済分子認識素子を備える態様とすることもできる。そして、標識済分子認識素子が結合可能な特定の分析対象物は、分子認識素子が結合可能な特定の分析対象物と同じである態様であることが好ましい。
【0012】
このように、特定の分析対象物と結合可能であり、且つ標識済分子認識素子が吸収体を収容する凹部内及び/又は凹部と対向する蓋部に付着され、さらに、フィルタ部材にその特定の分析対象物と結合可能な分子認識素子が固定された態様とすることで、分析対象物の量に応じてこの分析対象物と結合する標識済分子認識素子の量が変化し、標識済分子認識素子が結合した分析対象物がフィルタ部材によって捕集される。したがって、フィルタ部材において分析対象物の捕集が効果的に行われると共に、この分析対象物のみを対象とした分析を行うために必要な前処理を必要としないため、操作性が高く且つ迅速に分析を行うことができる。
【0013】
また、縁部と蓋部とを接着可能な接着層をさらに有する態様とすることができる。
【0014】
上記のように、縁部と蓋部とを接着可能な接着層を有することで、吸収体に吸収された被検液は、フィルタ部材へ向かって移動しやすくなり、フィルタ部材における分析対象物の捕集効率がさらに高められる。
【0015】
ここで、蓋部のうちフィルタ部材と対向する部分及び/又は凹部のうちフィルタ部材と対向する部分は光透過性を有する態様とすることができる。
【0016】
このように、蓋部及び/又は凹部のうちフィルタ部材と対向する部分が光透過性を有することで、分析チップのフィルタ部材において濃縮された分析対象物に対する分析を効率よく行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、被検液に含まれて分析に用いられる分析対象物を効率よく濃縮することができる分析チップ及びこの分析チップの使用方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態に係る分析チップの斜視図である。
【図2】図1の分析チップの上面図である。
【図3】図2のIII−III矢視図である。
【図4】図1の分析チップの分解斜視図である。
【図5】分析チップの使用方法を説明するフローチャートである。
【図6】分析チップの使用方法を模式的に示す図である。
【図7】被検液分析装置による分析の原理を説明する図である。
【図8】被検液分析装置の外観を説明する図である。
【図9】被検液分析装置の内部構成について説明する図である。
【図10】第2実施形態に係る分析チップの斜視図である。
【図11】第3実施形態に係る分析チップの斜視図である。
【図12】(A)は、図11のXII−XII矢視図であり、(B)は、分析チップ3の使用方法を模式的に説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0020】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る分析チップ1の斜視図、図2は、図1の分析チップ1の上面図、図3は、図2のIII−III矢視図、図4は、分析チップ1の分解斜視図である。まず、これらの図面を用いて、本実施形態に係る分析チップ1について説明する。
【0021】
本実施形態に係る分析チップ1は、図1〜4に示すように、矩形のシート状であって、凹部11と凹部10の周囲に設けられた縁部12とを有する本体部10と、本体部10の凹部11及び縁部12を覆う蓋部20と、凹部11内に収容された吸収体31、プレフィルタ部材32及びフィルタ部材33と、を備える。吸収体31、プレフィルタ部材32及びフィルタ部材33は、この順序で凹部内11に分析チップ1の長手方向に沿って配置され、隣接する部材同士が互いに接続している。また、凹部11は外部と連通する開口部15を有する。なお、保存性等の観点から、分析チップ1の使用前は開口部15はシール等により閉じられていて使用時に開封される態様とすることもできる。
【0022】
本実施形態に係る分析チップ1は、分析対象物が含まれる被検液を付着させた吸収体31を凹部11に収容し、分析チップ1の外側から吸収体31を押圧して変形させることで、吸収体31に付着した被検液を吸収体31から分離させ、プレフィルタ部材32及びフィルタ部材33をこの順に通過させて、フィルタ部材33を通過した被検液を開口部15から分析チップ1の外部に排出する。ここで、被検液に含まれる分析対象物をフィルタ部材33で捕集し、この分析対象物が保持されたフィルタ部材33に対して後述の被検液分析装置を用いて測定光を照射することで、分析対象物の数の測定等の分析を行う。この分析チップ1を用いて分析を行う被検液としては、臨床サンプル、唾液、血液、尿、便、鼻孔・鼻腔・咽頭・鼻咽頭由来の鼻汁液や鼻汁吸引液、痰或、脳髄液、尿道−性器スワブ、咽喉スワブ等の各種分泌液や、組織抽出物、細胞抽出物、微生物培養液、環境サンプル等が挙げられる。また、被検液が、例えば唾液である場合には、口腔内の健康状態を評価するための分析対象物としては、虫歯原因菌であるストレプトコッカスミュータンス菌(Sm菌)、ストレプトコッカスソブリヌス菌(Ss菌)及びラクトバチルスアシドフィラス菌(La菌)等が挙げられる。また、分析対象物は微生物に限られず、被検液に含まれる任意のタンパク質、抗体、抗原、ホルモン、ペプチド、糖タンパク質、核酸、糖類、ビタミン、天然化合物、合成化合物、細胞、細胞組織、ウィルス、色素、蛍光分子、金属、金属イオン等が挙げられる。なお、以下の実施形態では、被検液が唾液であって、分析対象物が特定の微生物である場合を中心に説明する。
【0023】
本実施形態に係る分析チップ1は、取扱い性、少量の被検液であっても分析できること、精度よく分析することなどを考慮して矩形のシート状とされている。また、分析チップ1の大きさは特に限定されないが、取扱い性の面から、例えば、厚み:0.05mm〜5.0mm、長辺長さ:5mm〜150mm、短辺長さ:3mm〜100mmとすることが好ましい。
【0024】
次に、上記の構成を有する分析チップ1に含まれる各部位について説明する。
【0025】
本体部10は矩形の板状の光透過性を有する部材からなり、凹部11と、この凹部11を取り囲む縁部12とを有する。この本体部10としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ナイロン(登録商標)などのラミネートフィルムから形成されるものや、ガラスが挙げられる。
【0026】
上記の本体部10では、長手方向に延びる凹部11に対して、縁部12はコの字状に設けられている。そして、長手方向に延びる凹部11のうちの一端側が外部と接続する溝16となっている。そして、図4に示す溝16の上面が蓋部20により覆われることで、分析チップ1の開口部15が形成される。なお、縁部12の表面には接着層17が設けられている。この接着層17は、本体部10に対して蓋部20を取り付けた際に本体部10と蓋部20とが接する領域に設けられる。
【0027】
なお、本実施形態では、凹部11と縁部12とが一体成型された本体部10について説明するが、本体部10は複数の材料から形成されていてもよく、例えば、凹部11の底面を形成する平板状の部材と、平板状の部材の上に積層されて、凹部11の側壁を形成すると共に縁部12として機能する枠材とを組み合わせることで本体部10が構成されていてもよい。
【0028】
蓋部20は、本体部10の凹部11と縁部12とを覆う部材であり、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ナイロン(登録商標)等から形成され、光透過性を有し且つ柔軟性のあるラミネートフィルムであることが好ましい。この蓋部20は、接着層17を介して本体部10の縁部12と接着される。すなわち、本体部10の縁部12の表面に設けられる接着層17は、縁部12と蓋部20とを接着可能な材料からなることが好ましく、縁部12及び蓋部20を構成する材料に基づいて適宜選択することができる。接着層17の選択例としては、例えば、縁部12がポリエチレンからなり、蓋部20がポリエチレンからなる場合には、接着層17としてはSBR系接着剤が好適に用いられる。
【0029】
吸収体31は、被検液を吸収した状態で分析チップ1の凹部11に収容することで、被検液を凹部11の内部に導入するための部材である。したがって、吸収体31としては、被検液を効率的に吸収することが可能な材料からなるものが好ましく、ろ紙、不織布、高吸収性ポリマー等が好適に使用できる。また、ガラス繊維、シリカ繊維、カーボン繊維、ボロン繊維、綿、麻、コットン、セルロース、ニトロセルロース、セルロースアセテート、ロックウール、ポリアミド、アラミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、レーヨン、ポリエステル、ナイロン(登録商標)、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリル酸ナトリウム、高吸収性ケルセチン配糖体、及びポリオレフィン等からなる多孔メッシュ等を吸収体31として用いることができる。
【0030】
また、図4に示すように、吸収体31の被検液吸収時の厚さtは、本体部10の凹部11の深さtよりも大きいことが好ましい。吸収体31の厚さtが凹部11の深さtよりも大きいことで、吸収体31を凹部11に収容した後に蓋部20を本体部10に対して取り付けた際に、吸収体31が蓋部20によって押圧されることで、吸収体31が変形し、吸収体31に吸収されていた被検液が凹部11の内部に流出する。
【0031】
ここで、本体部10の凹部11のうち吸収体31が収容される領域に対応する部分(図4の吸収体収容領域11A)には、標識済分子認識素子が付着されている。この標識済分子認識素子とは、本実施形態の分析チップ1による分析の対象となる特定の分析対象物のみに特異的に結合可能な分子認識素子を標識物質により標識したものである。具体的には、分子認識素子としては、DNAアプタマー、RNAアプタマー、ペプチドアプタマー、抗体(モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体)、分子鋳型、酵素等が挙げられ、分析対象物に応じて適宜選択される。また、上記の分子認識素子を標識する物質は、分析対象物の数や濃度等を光学測定する際に用いられる物質であり、特定の波長の光に対して吸収ピークを有するか、或いは蛍光を発する機能等を有する物質である。この標識物質としては、貴金属コロイド(金コロイド粒子、銀コロイド粒子、白金コロイド粒子など)、ラテックス粒子、着色ラテックス粒子、磁気微粒子、蛍光物質、酵素、ビオチン、色素、放射性同位元素、酸化還元物質等が挙げられる。
【0032】
この標識済分子認識素子を本体部10の凹部11に付着させる方法としては、例えば、標識済分子認識素子を超純水、純水、トリスバッファー、ホウ酸バッファー、りん酸バッファー、グリシンバッファー、クエン酸バッファー、酢酸バッファー、コハク酸バッファー、MOPSバッファー、HEPESバッファー、MESバッファー、トリシンバッファー、マレイン酸バッファーなどなどに混合させた後、本体部10の凹部11に対して塗布し、これを乾燥させる方法等が挙げられる。
【0033】
上記のように標識済分子認識素子が付着した吸収体収容領域11Aに対して、被検液を吸収した吸収体31が接触することで、標識済分子認識素子が吸収体収容領域11Aから凹部11内に溶け出して、被検液に含まれる分析対象物と結合する。
【0034】
次に、プレフィルタ部材32は、被検液に含まれる夾雑物を取り除くために、凹部11内の吸収体31とフィルタ部材33との間に設けられる。プレフィルタ部材32を構成する材料としては、例えば、ガラス繊維、シリカ繊維、カーボン繊維、ボロン繊維、綿、麻、コットンニトロセルロース、セルロース、セルロース混合エステル、セルロースアセテート、ポリカーボネート等からなる多孔メッシュ等が挙げられる。このプレフィルタ部材32の孔径は、分析対象物の大きさに応じて適宜選択することができるが、分析対象物が、例えばストレプトコッカスミュータンス菌(Sm菌)等の虫歯原因菌である場合には、10〜200μm程度のものが好ましい。孔径が10μmよりも小さい場合には、標識済分子認識素子と結合した分析対象物がプレフィルタ部材32によって捕捉されてしまう可能性があり、孔径が200μmよりも大きい場合には、被検液に含まれる夾雑物を好適に除去できない可能性がある。
【0035】
フィルタ部材33は、分析対象物を濃縮して捕捉するために設けられる。このフィルタ部材33には分析対象物を捕捉するための分子認識素子が固定されていて、標識済分子認識素子が結合した分析対象物が、フィルタ部材33に固定された分子認識素子と結合することで、フィルタ部材33において分析対象物を捕捉することができる。フィルタ部材33を構成する材料としては、例えば、ガラス繊維、シリカ繊維、カーボン繊維、ボロン繊維、綿、麻、コットンニトロセルロース、セルロース、セルロース混合エステル、セルロースアセテート、ポリカーボネート等が挙げられる。このフィルタ部材33の孔径は、分析対象物の大きさに応じて適宜選択することができるが、分析対象物が、例えばストレプトコッカスミュータンス菌(Sm菌)等の虫歯原因菌である場合には、孔径が0.2〜10μm程度のものが好ましい。孔径が0.2μmよりも小さい場合には、分析対象物の微生物(虫歯原因菌)とは異なる物質がフィルタ部材33によって捕捉されてしまう可能性があり、孔径が10μmよりも大きい場合には、標識済分子認識素子と結合した分析対象物の微生物を好適に捕捉できない可能性がある。また、フィルタ部材33に固定される分子認識素子としては、DNAアプタマー、RNAアプタマー、ペプチドアプタマー、抗体(モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体)、酵素等が挙げられ、分析対象物に応じて適宜選択される。
【0036】
なお、標識済分子認識素子として凹部11に付着させる分子認識素子及びフィルタ部材33に固定する分子認識素子が結合可能な分析対象物は互いに同種である必要があるが、凹部11に付着させる分子認識素子とフィルタ部材33に固定する分子認識素子とは、分析対象物となる分析対象物に対する結合部位が互いに異なることが好ましい。
【0037】
上記の構成によってフィルタ部材33の分子認識素子に結合した分析対象物には、凹部11に付着した標識済分子認識素子が結合している。そして、この分析対象物に結合した分子認識素子を標識する物質の発色を後述の分析装置によって分析することで、分析対象物の量を分析することが可能となる。
【0038】
ここで、上記の分析チップ1の使用方法について、図5及び図6を用いて説明する。図5は、分析チップ1の使用方法を説明するフローチャートであり、図6は、分析チップ1の使用方法を模式的に示す図である。
【0039】
まず、図5のフローチャートに示すように、吸収体31に被検液を吸収させる(S01)。これは、被検液が貯められた容器等の内部に吸収体31を浸す等の方法により行われる。次に、被検液を吸収した吸収体31を分析チップ1に収容する(S02)。このとき、分析チップ1の凹部11には、図6(A)に示すように、プレフィルタ部材32及びフィルタ部材33が予め取り付けられており、さらに吸収体31を収容する凹部11の吸収体収容領域11Aには標識済分子認識素子が付着されている。このような分析チップ1の凹部11に対して、被検液を吸収した吸収体31が収容される。
【0040】
次に、被検液を吸収した吸収体31を押圧する(S03)。具体的には、吸収体31を凹部11に収容した本体部10の凹部11及び縁部12を覆うように蓋部20を取付け、縁部12の表面に設けられた接着層17を介して本体部10と縁部12とを接着させる。次いで、図6(B)に示すように、分析チップ1の厚さ方向に沿った上下方向から、吸収体31に対応する位置を押圧する。これによって、吸収体31が変形し、吸収体31により吸収されていた被検液が吸収体31の外部へ流出する。そして、この被検液が凹部の吸収体収容領域11Aに付着した標識済分子認識素子と接することで、標識済分子認識素子が特定の分析対象物と結合する。さらに、図6(B)に示すように、分析チップ1を長手方向に扱くように、分析チップ1の外部からの吸収体31に対する押圧を、分析チップ1の長手方向に沿って開口部15の方向へ移動させることで、標識済分子認識素子と結合した分析対象物を含む被検液がプレフィルタ部材32及びフィルタ部材33を経由して開口部15から外部に排出される。このとき、被検液に含まれる夾雑物はプレフィルタ部材32により捕捉される。そして、標識済分子認識素子と結合した分析対象物は、フィルタ部材33に固定された分子認識素子と結合することで、フィルタ部材33に捕捉される。次に、分析装置を用いてフィルタ部材33に捕捉された分析対象物を分析する(S04)。これにより、分析チップ1によりフィルタ部材33で濃縮された分析対象物の分析が行われ、被検液の特性等が評価される。
【0041】
ここで、分析チップ1によりフィルタ部材33で濃縮された分析対象物を分析するために用いる被検液分析装置100について、図7〜図9を用いて説明する。図7は、被検液分析装置100の外観を説明する図であり、図8は、被検液分析装置100による分析の原理を説明する図であり、図9は、被検液分析装置100の内部構成について説明する図である。
【0042】
図7に示すように、被検液分析装置100は、分析チップ1を収容するための挿入口103を備え、分析チップ1を収容すると共に分析チップ1の分析時に外部からの光を遮断するために分析チップ1を覆う筺体104により構成される。また、被検液分析装置100の筺体104には、分析開始を指示する分析開始ボタン105及び、分析結果を表示するインジケータ106を備える。そして、被検液分析装置100の内部には、図8に示すように、所定の波長の光を含む光E1を出射する光源101A及び光E2を出射する光源101Bとを備える。これらの光源101A,101Bは、分析チップ1を挿入口103から挿入し所定の位置に収容した際に、フィルタ部材33が設けられる位置に対応して取り付けられる。
【0043】
そして、分析チップ1のフィルタ部材33を介して光源101Aに対向する位置に配置され、光源101Aから出射された光E1に対して感度を有する受光部102Aと、光源101Bに対向する位置に配置され、光源101Bから出射された光E2に対して感度を有する受光部102Bと、をさらに備える。これらの光源101A,101B及び受光部102A、102Bが、測定部として機能する。なお、光源101Aから出射される光E1の波長と光源101Bから出射される光E2の波長とは同一であってもよいし、異なる波長であってもよい。また、分析対象物が標識済分子認識素子と結合している場合、これらの光E1,E2の波長は、標識物質の特性によって決められる。なお、光源は1個であってもよいし、2以上の複数個とすることもできる。
【0044】
また、被検液分析装置100は、図9に示すように、内部に光源101A,101B及び受光部102A,102Bが電気的に接続される制御部108を備える。制御部108は、CPU(Central Processing Unit)及び外部記憶装置から構成され、CPUは、所定の演算処理を行う演算プログラムが記憶されたROM(Read Only Memory)と演算処理の際に各種データを記憶するRAM(Random Access Memory)とを有している。このCPUは、分析開始ボタン105の押下げを検知して、光源101A,101Bからの測定光の出射を開始すると共に、受光部102A,102Bで検出された光強度に係る情報を受光部102A,102Bから受け取り、光源101A,101Bから出力された測定光の波長及び強度と、受光部102A,102Bで検出された光強度とに基づいて算出された標識物質の光透過率から、外部記憶装置に記憶させた予め得られている標識物質についての光透過率と標識物質の指標(原因菌濃度等)との相関(検量線)に基づいて被検液の指標値(例えば原因菌濃度に基づいた口腔内の環境評価)を算出し、得られた結果に基づいた評価をインジケータ106に表示させる機能を備える。
【0045】
さらに、図9に示すように、被検液分析装置100は、内部に収容された分析チップ1の吸収体31に対応する位置を、分析チップ1の外側から蓋部20を介して押圧する押圧部109を備える。そして、被検液分析装置100に分析チップ1を収容し、上述の分析を行う際に押圧部109による押圧をすることで、分析チップ1内に残留した被検液が逆流して吸収体31に再度吸収されることを防止する。
【0046】
このように、分析チップ1のフィルタ部材33に捕集された分析対象物を上記に示す被検液分析装置100を用いて分析することで、分析対象物の量を算出することができる。具体的には、例えば、分子認識素子を標識する物質として金コロイド粒子を用いる場合には、金コロイド粒子は波長520nmの光に対して吸収特性を有するので、波長520nmの光をフィルタ部材33に対して照射することでフィルタ部材33を通過する光の強度を測定することで、フィルタ部材33に捕集された金コロイド粒子の量を測定することができ、この結果から被検液に含まれる分析対象物の量を分析することができる。
【0047】
以上のように、本実施形態に係る分析チップ1によれば、被検液を吸収した状態で吸収体31が凹部11の吸収体収容領域11Aに収容されて、分析チップ1の外部から吸収体31を押圧することで、被検液に含まれる分析対象物よりも孔径が小さいフィルタ部材33を被検液が通過し、分析対象物がフィルタ部材33により捕集される。したがって、被検液が少量であって分析対象物の濃度が低い場合であっても、分析対象物がフィルタ部材33により効率よく捕集できる。また、このように分析対象物を効率よく捕集した後にこの分析対象物に係る分析を行うことができるため、高い精度で分析をすることが可能となる。
【0048】
また、上記実施形態に係る分析チップ1では、蓋部20が柔軟性を有するために、吸収体31を容易に押圧することができ、フィルタ部材33に対して被検液を容易に通過させることができる。
【0049】
また、上記実施形態に係る分析チップ1では、吸収体31を収容する凹部11の吸収体収容領域11Aに特定の分析対象物と結合可能であり、且つ、標識済分子認識素子が付着され、さらに、フィルタ部材33にその特定の分析対象物と結合可能な分子認識素子が固定されている。したがって、標識済分子認識素子を用いた分析の場合には、分析対象物の量に応じてこの分析対象物と結合する標識済分子認識素子の数が変化することで、フィルタ部材33によって捕集される分析対象物に結合してフィルタ部材33において捕集される標識済分子認識素子の数が変化する。したがって、フィルタ部材33において分析対象物の捕集が効果的に行われる上に、この分析対象物について分析を行うために必要な前処理を必要としないため、操作性が高く且つ迅速に分析を行うことができる。
【0050】
また、上記の分析チップ1では、分析チップ1の本体部10の縁部12の表面に接着層17が設けられているため、吸収体31に吸収された被検液がフィルタ部材33へ向かって移動しやすくなり、フィルタ部材33における分析対象物の捕集効率がさらに高められる。
【0051】
さらに、本体部10及び蓋部20が光透過性を有することで、分析チップ1のフィルタ部材33において補修された分析対象物に対する測定を効率よく行うことができる。
【0052】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る分析チップ2について図10を用いて説明する。図10は、本発明の第2実施形態に係る分析チップ2の斜視図である。本実施形態に係る分析チップ2が第1実施形態に係る分析チップ1と異なる点は次の2点である。すなわち、凹部11のフィルタ部材33の下流側(図示上部側)が開口部ではなく閉じている点と、このフィルタ部材33の下流側に第2の吸収体34が設けられている点である。
【0053】
このフィルタ部材33の下流側の第2の吸収体34は、吸収体31を押圧することで吸収体31から流出し、プレフィルタ部材32及びフィルタ部材33を通過した被検液を吸収するためのものである。すなわち、分析チップ1ではプレフィルタ部材32及びフィルタ部材33を通過した被検液を開口部15から外部に排出していたが、本実施形態の分析チップ2では、このフィルタ部材33を通過した被検液を第2の吸収体34において吸収する機能を有する。
【0054】
また、第2の吸収体34としては、ろ紙、不織布、高吸収性ポリマー等が好適に使用できる。また、ガラス繊維、シリカ繊維、カーボン繊維、ボロン繊維、綿、麻、コットン、セルロース、ニトロセルロース、セルロースアセテート、ロックウール、ポリアミド、アラミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、レーヨン、ポリエステル、ナイロン(登録商標)、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリル酸ナトリウム、高吸収性ケルセチン配糖体、及びポリオレフィン等からなる多孔メッシュ等を第2の吸収体34として用いることができる。この第2の吸収体34が吸収できる液体の量(保水量)は、吸収体31の保水量の10分の1〜吸収体31の保水量の範囲であることが好ましい。
【0055】
また、第2の吸収体34が被検液を吸収することで状態が変わる機能を有していることが好ましい。具体的には、例えば、第2の吸収体34に対して予め水性インク等による印字を施しておき、第2の吸収体34が被検液を吸収することによってこの水性インクによる印字が消失する構成とすることができる。また、分析チップ2が標識済分子認識素子と結合した分析対象物をフィルタ部材33で捕集する構成を有する場合には、分析対象物と結合しなかった未反応の標識済分子認識素子が第2の吸収体34に到達して第2の吸収体34に捕集されることで、標識物質により第2の吸収体34が発色する構成となる。このように、第2の吸収体34に被検液が到達したことを確認する構成とすることで、被検液がフィルタ部材33を通過したこと、すなわち、被検液に含まれる分析対象物がフィルタ部材33に捕集されたことを確認することができる。
【0056】
なお、この分析チップ2の使用方法は、分析チップ1と同様である。すなわち、被検液を吸収した吸収体31を凹部11に収容し、蓋部20で覆った後に吸収体31を外部から押圧することで、被検液が吸収体31から流出する。そしてこの被検液がプレフィルタ部材32及びフィルタ部材33を通過することで、被検液中の分析対象物がフィルタ部材33に捕集される。そして、このフィルタ部材33に対して測定光を照射することで、フィルタ部材33に捕集された分析対象物に係る分析が行われる。
【0057】
このように、本実施形態に係る分析チップ2であっても、被検液を吸収した状態で吸収体31が凹部11の吸収体収容領域11Aに収容されて、分析チップ1の外部から吸収体31を押圧することで、被検液に含まれる分析対象物よりも孔径が小さいフィルタ部材33を被検液が通過し、分析対象物がフィルタ部材33により捕集される。したがって、被検液が少量であって分析対象物の濃度が低い場合であっても、分析対象物がフィルタ部材33により効率よく捕集できる。
【0058】
また、分析チップ2では、開口部が設けられておらず、フィルタ部材33を通過した被検液が第2の吸収体34に吸収されるため、分析チップ2の外部への被検液の流出を防止することができる。
【0059】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る分析チップ3について図11及び図12を用いて説明する。図11は、本発明の第3実施形態に係る分析チップ3の斜視図であり、図12(A)は、図11のXII−XII矢視図であり、図12(B)は、分析チップ3の使用方法を模式的に説明する図である。
【0060】
本実施形態に係る分析チップ3が第2実施形態に係る分析チップ2と異なる点は次の点である。すなわち、本体部40が柔軟性のある材料からなり、本体部40の裏面側から吸収体31の押圧を行うことができる点である。具体的には、図11及び図12に示すように、本実施形態に係る分析チップ3の本体部40は、凹部41が縁部42に対して下方に突出した構成とされている。また、分析チップ3の内部の吸収体31、プレフィルタ部材32、フィルタ部材33、及び第2の吸収体34がこの順となるように分析チップ3の長手方向に沿って凹部41内に配置される構成は第2実施形態に係る分析チップ2と同様である。
【0061】
このような構成を有する分析チップ3の使用方法は、以下の通りである。すなわち、被検液を吸収した吸収体31を凹部41に収容し、蓋部20で覆った後に吸収体31を外部から押圧する。ここで、分析チップ3では、凹部41を構成する本体部40が柔軟性のある材料からなるため、吸収体31を外部から押圧する場合には、図12(B)に示すように、本体部40の凹部41の裏面側であって吸収体31に対応する位置から吸収体31を押圧する。これにより、凹部41が変形することで、吸収体31を変形させ、被検液が吸収体31から流出する。そしてこの被検液がプレフィルタ部材32及びフィルタ部材33を通過することで、被検液中の分析対象物がフィルタ部材33に捕集される。そして、このフィルタ部材33に対して測定光を照射することで、フィルタ部材33に捕集された分析対象物に係る分析が行われる。
【0062】
このように、本実施形態に係る分析チップ3であっても、被検液を吸収した状態で吸収体31が凹部41に収容されて、凹部41の裏面側であって吸収体31に対応する位置から吸収体31を押圧することで、被検液に含まれる分析対象物よりも孔径が小さいフィルタ部材33を被検液が通過し、分析対象物がフィルタ部材33により捕集される。したがって、被検液が少量であって分析対象物の濃度が低い場合であっても、分析対象物がフィルタ部材33により効率よく捕集できる。
【0063】
なお、上記の分析チップ3の分析に用いられる場合、被検液分析装置では、図9に示す被検液分析装置100の内部に設けられる各構成のうち、押圧部109の配置を本体部40のうち凹部41の裏面側を押圧するように変更することで、好適に測定を行うことができる。また、分析チップ3を収容するための挿入口及び分析チップ3を収容する領域の大きさ等は適宜変更される。
【0064】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明に係る分析チップ及びこの分析チップの使用方法は種々の変更が可能である。
【0065】
例えば、第1,第2実施形態、では蓋部20全体が柔軟性を有する場合について、また、第3実施形態では、本体部40全体が柔軟性を有する場合について説明したが、本体部や蓋部全体が柔軟性を有する必要はなく、吸収体31に対応する位置のみが柔軟性を有する態様であってもよく、例えば、蓋部20のうち吸収体31と対向する位置(図4の領域20A)のみが柔軟性を有する態様であっても、第1,第2実施形態と同様に吸収体31に対して蓋部20を介して外部からの押圧を容易に行うことができる。また、第3実施形態の分析チップ3の本体部40のうち吸収体31が収容される凹部41の特定の領域のみが柔軟性を有している構成とすることもできる。また、分析チップを構成する蓋部と本体部の両方が柔軟性を有する材料から形成されていてもよい。
【0066】
また、本体部10及び蓋部20の全体が光透過性を有する必要はない。すなわち、上記実施形態のように、フィルタ部材33に捕集された物質の光透過性に係る測定を行う場合には、本体部10(又は本体部40)における凹部11(41)の底面のうちフィルタ部材33に対向する領域(図4の領域11B)と、蓋部20のうちフィルタ部材33に対向する領域(図4の領域20B)とが光透過性を有していればよい。また、フィルタ部材33を透過した光を測定することに代えて、フィルタ部材33で反射した光を測定する場合には、領域11Bと領域20Bのいずれか一方のみが光透過性を有する態様とすることもできる。
【0067】
また、上記実施形態では、凹部11に標識済分子認識素子が付着されている構成について説明したが、標識分子素子が付着されている領域は凹部11、すなわち本体部10側である必要はなく、蓋部20側であってもよい。この場合、蓋部20のうち、凹部11に収容された吸収体31が対向する領域(図4の領域20A)に標識済分子認識素子を付着させることで、被検液を吸収した吸収体31が凹部11内に収容された際に被検液が標識済分子認識素子と接することで、被検液と標識済分子認識素子とが混合されて、被検液に含まれる分析対象の分析対象物と標識済分子認識素子とが結合可能となる。
【0068】
また、上記実施形態では、凹部11に標識済分子認識素子が付着され、さらにフィルタ部材33に分子認識素子が固定された態様について説明するが、これら標識済分子認識素子及び分子認識素子は必須ではない。すなわち、フィルタ部材33の孔径が分析対象物よりも小さければよく、このような構成とすることで、分析対象物は孔径が小さいフィルタ部材33を通過することができずフィルタ部材33により捕集されるため、分析対象物を効率的よく捕集し、その濃度を高めることができる。
【0069】
上記と同様に、標識済分子認識素子が凹部11等の吸収体31に接する領域に付着されておらず、フィルタ部材33に分子認識素子が固定されている場合であっても、フィルタ部材33の分子認識素子に対して特定の分析対象物のみが結合することで、分析対象物を捕集することができる。ただし、微生物に限られず補集された分析対象物を光学的手法により分析する場合には、分子認識素子と標識物質を用いて微生物を標識する必要がある。したがって、フィルタ部材33によって微生物を捕捉した後に、標識済分子認識素子とフィルタ部材33により捕捉された微生物とを結合させる処理が行われる。また、標識済分子認識素子を凹部11に付着させることに代えて、被検液と標識済分子認識素子とを混合した後に、この混合物を吸収体31に吸収させる態様とすることもできる。
【0070】
また、上記実施形態では、分析対象物に対して標識済分子認識素子を結合させることで、特定の分析対象物のみを検出し、高精度の分析を実現する方法について説明したが、フィルタ部材33の孔径と分析対象物の大きさとの関係を用いて分析対象物をフィルタ部材33で回収する方法と、他の公知の方法を組み合わせることによって特定の分析対象物のみについての分析を行う方法を用いることもできる。具体的には、フィルタ部材33の孔径と分析対象物の大きさとの関係を利用してフィルタ部材33の孔径よりも大きな物質(分析対象物が含まれる)を捕集した後、分析対象物に対してのみ特異的に結合する試薬(例えばDNAプローブ、RNAプローブ等)を用いて分析対象物のみを反応させて、その反応結果を測定する態様とすることもできる。
【符号の説明】
【0071】
1,2,3…分析チップ、10,40…本体部、11,41…凹部、12,42…縁部、20…蓋部、31…吸収体、32…プレフィルタ部材、33…フィルタ部材、34…第2の吸収体、100…被検液分析装置。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部及び当該凹部を取り囲む縁部を有する本体部と、
前記凹部及び縁部を覆う蓋部と、
前記凹部内に収容されて、被検液を吸収可能な吸収体と、
前記凹部内に前記吸収体と接続して設けられ、前記被検液に含まれる分析対象物よりもその孔径が小さいフィルタ部材と、
を備え、前記凹部の前記吸収体が収容される部分及び前記吸収体が対向する前記蓋部の少なくとも一方は柔軟性を有する分析チップ。
【請求項2】
前記凹部内の前記吸収体が収容される部分と、前記フィルタ部材との間にプレフィルタ部材をさらに備えた請求項1記載の分析チップ。
【請求項3】
前記フィルタ部材には、特定の分析対象物と特異的に結合可能な分子認識素子が固定されている請求項1又は2記載の分析チップ。
【請求項4】
前記凹部内及び/又は前記凹部と対向する前記蓋部に付着され、特定の分析対象物と特異的に結合可能であり且つ標識済分子認識素子を備える請求項1〜3のいずれか一項に記載の分析チップ。
【請求項5】
前記標識済分子認識素子が結合可能な特定の分析対象物は、前記分子認識素子が結合可能な特定の分析対象物と同じである請求項4記載の分析チップ。
【請求項6】
前記縁部と前記蓋部とを接着可能な接着層をさらに有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の分析チップ。
【請求項7】
前記蓋部のうち前記フィルタ部材と対向する部分及び/又は前記凹部のうち前記フィルタ部材と対向する部分は光透過性を有する請求項1〜6のいずれか一項に記載の分析チップ。
【請求項8】
凹部及び当該凹部を取り囲む縁部を有する本体部と、
前記凹部及び縁部を覆う蓋部と、
前記凹部内に収容されて、被検液を吸収可能な吸収体と、
前記凹部内に前記吸収体と接続して設けられ、前記被検液に含まれる分析対象物よりもその孔径が小さいフィルタ部材と、
を備える分析チップの使用方法であって、
前記凹部内に収容された前記吸収体を前記蓋部及び/又は前記本体部の外側から押圧して、前記フィルタ部材に前記被検液を通過させる使用方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−95164(P2011−95164A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−250852(P2009−250852)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】