説明

分析装置、分析プログラム、分析方法

【課題】
操作者が容易に分画領域の設定を行うことが可能な分析装置を提供すること。
【解決手段】
本発明の分析装置は、分析物から第1および第2の測定データを取得する測定データ取得手段と、前記第1および第2の測定データを軸とし、分析物に含まれる有形成分の分布を示す2次元分布図を作成する2次元分布図作成手段と、前記2次元分布図上に分画領域を設定する領域設定手段と、前記領域設定手段によって設定された前記分画領域に属する有形成分について、前記第1の測定データを軸とする度数分布図を作成する度数分布図作成手段と、前記2次元分布図および前記度数分布図を出力する出力手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析装置、分析プログラム及び分析方法に関し、さらに詳しくは、分画領域を適切に設定することができる分析装置、分析プログラム及び分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
操作者がキーボードを使用して、サイトグラム(スキャッタグラム)上に分画領域を設定することが可能な細胞分析装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平5−60752号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記特許文献1の装置による分画領域の設定は、操作者がスキャッタグラムのみを見ながら行うものであり、散乱光強度I0や前方散乱光強度I90の頻度分布とスキャッタグラムとの関係が分からないため、分画領域の設定が難しいという問題点があった。
【0004】
本発明は、係る事情に鑑みてなされたものであり、操作者が容易に分画領域の設定を行うことが可能な分析装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の分析装置は、分析物から第1および第2の測定データを取得する測定データ取得手段と、前記第1および第2の測定データを軸とし、分析物に含まれる有形成分の分布を示す2次元分布図を作成する2次元分布図作成手段と、前記2次元分布図上に分画領域を設定する領域設定手段と、前記領域設定手段によって設定された前記分画領域に属する有形成分について、前記第1の測定データを軸とする度数分布図を作成する度数分布図作成手段と、前記2次元分布図および前記度数分布図を出力する出力手段とを備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、2次元分布図上に設定された分画領域に属する有形成分について一次元の度数分布図が作成され、この度数分布図の形状を参照することにより、分画領域が適切に設定されているかどうかを確認することができる。従って、本発明によれば、分画領域を従来よりも適切かつ容易に設定することができ、分析精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
【実施例1】
【0008】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
本発明の一実施例による試料分析装置は、血液を分析して白血球(WBC)、赤血球(RBC)および血小板(PLT)などの数を算出する血球計数装置である。この試料分析装置は、動物の血液分析に好適に用いられるものである。動物の血液分析では、通常行われる内蔵パラメータに基づく自動解析では適切に血球(有形成分)の種類を分類できない場合がある。この場合に、以下に示す手動解析を行うことにより、適切な分画領域を設定し、その分画領域に基づいて分析を行うことにより、高い精度で動物の血液分析を行うことが可能になる。また、薬効を確認するための動物実験において、種々の分画領域を設定し、その分画領域内に含まれる所定の血球の増減を把握したいという要望がある。
【0009】
1.全体構成
図1は、本発明の一実施例による試料分析装置およびその周辺機器の全体構成を示した斜視図である。
図1に示すように、本実施例の試料分析装置10は、装置本体1と、装置本体1に通信ケーブルを介して接続されるデータ処理端末2とを含む。
装置本体1は、装置本体1に陽圧や陰圧を供給する空圧源5にチューブを介して接続されている。また、装置本体1は、検体を収容した検体容器を自動で装置本体1に供給するサンプラ部6に接続されている。また、装置本体1は、図示しない試薬容器にチューブを介して接続され、空圧源5から供給される陰圧を使用して試薬容器から試薬を吸引する。
装置本体1は、血液の吸引を行う試料吸引部14a、14bなどを備えている。
試料吸引部14aは、使用者が検体容器を保持しながら血液を吸引させるマニュアルモードで使用される吸引部であり、試料吸引部14bは、サンプラ部6を使用して自動で血液を吸引するサンプラモードで使用される吸引部である。
データ処理端末2は、端末本体15、CRTディスプレイを含む端末側表示部16、および、キーボードや図示しないマウスを含む端末側入力部18を含む。
データ処理端末2は、分析結果のリストを印字するためのページプリンタ3、粒度分布図やスキャッタグラムを印字するカラーグラフィックプリンタ4、および、分析結果を検査伝票形式の用紙に印字するデータプリンタ7にそれぞれ通信ケーブルを介して接続されている。
【0010】
2.内部構成
図2は、装置本体1およびデータ処理端末2の内部構成を示すブロック図である。
図2に示すように、装置本体1は、試料吸引部14a,14b、試料調製部17、検出部19、本体側制御部26、および、出入力インターフェイス32aを含む。
試料調製部17は、試料吸引部14aおよび14bによって吸引された血液と図示しない試薬容器から吸引した試薬とを混合することによって、希釈、溶血、および染色などの処理をする。そして、これらの処理によって作成された測定用試料を検出部19に供給する。
検出部19は、光学系検出部20と、電気系検出部22と吸光度検出部24とを含む。
光学系検出部20については後述する。
【0011】
電気系検出部22は、RF/DC検出方式を採用した検出器と、シースフローDC検出方式を採用した検出器とを含む。なお、シースフローDC検出方式を採用した検出器としては、例えば、米国特許第6,525,807号明細書に第1測定部として記載された検出器が使用できる。
【0012】
吸光度検出部24としては、発光ダイオードと、受光素子と、それらの間に配置された透明なセルとを含む検出器が使用されている。吸光度検出部24は、希釈液のみの透過光強度とヘモグロビン測定用試料の透過光強度とを本体側制御部26に出力し、本体側制御部26は、これらの出力値を端末側制御部34に送り、端末側制御部34は、これらの透過光強度の差(吸光度)からヘモグロビン(HGB)濃度を算出する。
【0013】
本体側制御部26は、CPU、ROM、RAM、A/D変換回路などを含み、検出部19から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換し、それらのデータを出入力インターフェイス32aを介してデータ処理端末2に送信する。また、本体側制御部26は、試料吸引部14a,14b、試料調製部17、および検出部19などの動作を制御する。
【0014】
端末本体15は、出入力インターフェイス32bと、端末側制御部34とを含む。出入力インターフェイス32aと32bとは通信ケーブル33を介して接続されている。
【0015】
端末側制御部34は、CPU,ROM、RAM、およびハードディスクなどを含む。端末側制御部34は、出入力インターフェイス32bを介して装置本体1から送信されたデタから分析結果を算出し、それを端末側表示部16に表示させたり、各種プリンタ(図1参照)に印字させたりすることができる。
また、端末側制御部34は、端末側入力部18から入力された情報を装置本体1に送信することができる。
【0016】
図3は、光学系検出部20の構成を示した斜視図である。
図3に示すように、光学系検出部20は、ノズル36、レーザダイオード40、コリメータレンズ42、シースフローセル43、集光レンズ44、ピンホール板45、フォトダイオード46、集光レンズ47、ダイタロイックミラー48、フォトマルチプライヤチューブ(以下、「フォトマル」と呼ぶ。)49、フィルタ50、ピンホール板51、フォトマルチプライヤチューブ(以下、「フォトマル」と呼ぶ。)52、および、アンプ53〜55を含む。
試料調製部17(図2参照)から供給された測定用試料は、ノズル36を介してシースフローセル43のオリフィス部38を流れる。
レーザダイオード40から発せられた光は、シースフローセル40のオリフィス部38を流れる測定用試料をコリメータレンズ42を介して照射する。オリフィス部38を流れる測定用試料によって前方に散乱した光(前方散乱光)は、集光レンズ44とピンホール板45とを介してフォトダイオード46に入射する。
オリフィス部38を流れる測定用試料によって側方に散乱した光(側方散乱光)は、集光レンズ47とダイクロイックミラー48とを介してフォトマル49に入射する。
光が照射されることによって、オリフィス部38を流れる測定用試料から発せられた蛍光(側方蛍光)は、集光レンズ47とダイクロイックミラー48とフィルタ50とピンホール板51とを介してフォトマル52に入射する。
フォトダイオード46は、入射された前方散乱光をその強度に応じた電気的な情報に変換して前方散乱光強度として出力する。フォトマル49は、入射された側方散乱光をその強度に応じた電気的な情報に変換して側方散乱光強度として出力する。フォトマル52は、入射された側方蛍光をその強度に応じた電気的な情報に変換して側方蛍光強度として出力する。
フォトダイオード46から出力される前方散乱光強度と、フォトマル49から出力される側方散乱光強度と、フォトマル52から出力される側方蛍光強度とは、それぞれアンプ53,54,55によって増幅され、本体側制御部26に入力される。
【0017】
3.試料分析装置の動作
3−1.全体の流れ
図4を参照して、本実施例の試料分析装置の動作の全体の流れについて説明する。
【0018】
まず、S1では、端末側制御部34が、測定開始の指令を待ち、指令があるとS2に移動する。指令がない場合には、S6に移動し、手動解析開始の指令を待つ。
次に、S2では、端末側制御部34からの指令により、本体側制御部26が、測定動作制御を開始する。本体側制御部26の制御により、選択されているモードに応じて試料吸引部14aまたは14bが血液の吸引を行い、試料調製部17が、所定の測定用試料を作成し、検出部19の各検出部に供給する。
次に、S3では、光学系検出部20は、光学情報として前方散乱光強度、側方散乱光強度および側方蛍光強度を本体側制御部26に出力し、電気系検出部22は、電気情報を本体側制御部26に出力し、吸光度検出部24は、透過光強度を本体側制御部26に出力する。これにより、スキャッタグラムを作成するのに必要な測定データが得られる。これらの測定データは、通信ケーブル33を介して端末側制御部34に送られ、端末側制御部34内の記憶部に記憶される。
次に、S4では、分析物中に含まれる個々の有形成分を上記測定データ(側方散乱光強度および側方蛍光強度)の大きさに基づいて分布させることにより、スキャタグラムを作成する。具体的には、端末側制御部34内の記憶部に記憶された測定データを、図5で示す256×256個の要素からなる2次元配列(A1)のそれぞれの要素に分類する。この2次元配列の各要素に記載された数字は、その要素に属する有形成分の度数を示している。例えば、A1の要素Scatter[4][251]には、9個の有形成分が属している。
このようにして得られたスキャッタグラムについて、端末側制御部34に内蔵されたパラメータに基づいて有形成分を種類ごとに分類して計数する処理が行われ、有形成分の種類を区別する情報(例えば色情報)が与えられる。
次に、S5では、スキャッタグラムのデータや有形成分の計数値を含む上記分析結果が端末側制御部34内の記憶部に記憶される。
【0019】
次に、S6では、端末側制御部34が、手動解析開始の指令を待ち、指令があるとS7に移動する。指令がない場合には、S1に移動し、測定開始の指令を待つ。
次に、S7では、S5で記憶させたスキャッタグラムを読み出し、端末側表示部16に表示させる。
次に、S8では、端末側制御部34が、使用者によって設定された分画領域に基づいて手動解析を行う。この工程は、後で詳細に説明する。
次に、S9では、端末側制御部34が、手動解析終了の指令を待ち、指令があるとS1に移動する。指令がない場合には、S8に移動し、手動解析を続行する。
【0020】
3−2.手動解析
3−2−1.手動解析画面
次に、手動解析工程S8について、詳細に説明する。この工程では、手動で分画領域を設定し、その分画領域内に存在する有形成分についてヒストグラムを作成する。
【0021】
図6に手動解析モードの画面60を示す。この画面左には、スキャッタグラム61及びエリア情報62が描かれている。スキャッタグラム61には、手動で設定された分画領域(エリアA、B)が示されている。スキャッタグラム61に示された有形成分は、端末側制御部34に内蔵されたパラメータに基づいて自動分析された結果に基づいて色分けされている。分画領域を設定しても、この色分けは、変更されない。従って、1つの分画領域内に複数色の有形成分が含まれる場合がある。この場合であってもヒストグラムは、通常、1色で描かれる(なお、色分け情報をヒストグラムに反映させて、ヒストグラムを複数色で描いてもよい。)。分画領域は、端末側表示部16上に表示されたポインタを、マウスなどのポインティングデバイスを用いて移動させることにより、変更された分画領域の各頂点の座標情報を記憶させることにより、設定することができる。エリア情報62には、エリアBを区画する多角形の各頂点の座標情報62aが示されている。別のエリアを選択すると、選択したエリアを区画する多角形の各頂点の座標が示される。
【0022】
画面60中央には、X軸及びY軸のヒストグラム(度数分布)63,64が描かれている。各ヒストグラムの左上には、コンボボックス63a,64aが設けられている。このコンボボックス63a,64aでは、全領域、エリアA、エリアB又は全エリアの何れかを選択することができる。「全領域」が選択されると、スキャッタグラム61内の全ての有形成分についてヒストグラムが描画される。「エリアA」又は「エリアB」を選択すると、その選択されたエリア内に属する有形成分についてヒストグラムが描画される。「全エリア」を選択すると、エリアA及びBについて、ヒストグラムが描画される。このとき、エリアごとに色又は線種を変えて、互いに区別できるようにしている。なお、設定を変更して、複数のエリアを選択できるようにしてもよく、また、全エリアについてのヒストグラムが常に表示されるようにしてもよい。ヒストグラム63,64は、エリアBを選択した場合のヒストグラムである。
【0023】
画面60の右側には、X軸及びY軸に対するヒストグラム情報65,66が描かれている。ヒストグラム情報65,66は、ヒストグラム63,64に関する統計データであり、平均値、分散、半値幅などからなる。
【0024】
本実施例の装置の使用者は、スキャッタグラム61、ヒストグラム63,64の形状とヒストグラム情報65,66を見て、設定した分画領域が適切であるかどうかを判断する。例えば、ヒストグラム63,64の形状が正規分布になっていると、分画領域が適切である可能性が高いと判断する。また、例えば、ヒストグラム63,64中のピークの裾部分が不自然に途切れている場合には、分画領域が不適切である可能性が高いと判断する。分画領域が適切であると判断すると、分画領域の設定を終える。分画領域が不適切であると判断すると、分画領域の再設定を行う。再設定を行うと、再設定後の分画領域についてヒストグラムが描画される。
【0025】
3−2−2.ヒストグラム描画処理
ヒストグラム63,64は、スキャッタグラム61内に多角形エリア(分画領域)が設定されたとき、及びコンボボックス63a,64aの設定が変更されたときに、描画される。
【0026】
図7に示すように、スキャッタグラム61内に多角形エリアが設定されたとき(S11)、多角形エリアの頂点の座標情報及び頂点数が取得され(S12)、この情報に基づいてヒストグラム63,64が描画される(S13)。このとき、X軸、Y軸の両方のヒストグラム63,64が描画される。
【0027】
また、図8に示すように、コンボボックス63a,64aの設定が変更されたとき(S14)、ポインタの位置からコンボボックス63a,64aのどの要素が選択されたかについての情報(描画ID)が取得され(S15)、コンボボックス63aの設定が変更されればX軸ヒストグラムが、コンボボックス64aの設定が変更されればY軸ヒストグラムが描画される(S16)。以下、図8Aを参照して、このときの操作を具体的に説明する。コンボボックス63aを例にとると、コンボボックス63aは、図8A(a)のような外観を有し、その右端には、矢印部63bを備える。矢印部63bをマウスを使用して選択すると、図8A(b)のように、リストボックス63cにコンボボックス63aが備える各要素が表示される。ここに表示された各要素は、選択可能であり、何れかの要素を選択することにより、コンボボックス63aの設定を変更することができる(S14)。このとき、ポインタの位置からどの要素が選択されたかについての情報(描画ID)が取得され(S15)、変更されたコンボボックス63aの該当する軸のヒストグラム(X軸ヒストグラム)が描画される(S16)。
【0028】
次に、コンボボックス63aの設定が変更された場合のヒストグラム描画処理について、図5、図9〜13を用いて説明する。ここでは、便宜上、X軸のヒストグラム63を例にとって説明するが、Y軸のヒストグラム64についても同様の処理が行われる。なお、スキャッタグラム61内に多角形エリアが設定されたときには、同様の工程でX軸及びY軸のヒストグラムが描画される。以下の説明において、配列名により配列全体を参照し、配列名と添え字の組合せにより配列の各要素を参照する。例えば、「Hist_X」、「Scatter」によって配列全体を参照し、「Hist_X[Xi]」、「Scatter[Xi][Yi]」によって、それぞれ、配列Hist_X、Scatterの一要素を参照する。
【0029】
まず、図9のS21では、作成するヒストグラム及びループ用添え字の初期化を行う。具体的には、Hist_Xの全ての配列要素の値、及びループ用添え字Xi,Yiの値を0にする。ここで、「Hist_X」は、図5のテーブル(Scatter)A1の下側に配置されている一次元配列A2である。テーブルA1の縦列の合計が、この一次元配列A2に収納される。本実施例では、テーブルA1の、ある要素が、選択された分画領域に属する場合には、その要素の値を一次元配列A2に加算し、属さない場合には、加算しないことにより、分画領域に属する有形成分のみについてヒストグラフを描画することを可能にしている。
【0030】
次に、S22では、ループ用添え字Xiの値を確認し、Xiの値が256より小さい場合には、S23に移動する。Xiの値が256に達している場合には、ループを終了し、S24に移動する。また、S23では、ループ用添え字Yiの値を確認し、Yiの値が256より小さい場合には、S27に移動する。Yiの値が256に達している場合には、S26に移動する。XiおよびYiの値が256に達すると、256×256の配列要素を有するScatterの全ての配列要素が走査される。
S24では、256×256回のループを終えて、必要な値が格納されたHist_Xの各要素の値をたて軸とするヒストグラムが作成され、端末側表示部16に描画される。また、S25では、Hist_Xの各要素の値に基づいて各種の統計データが算出され、ヒストグラム情報として端末側表示部16に描画される。S25の工程を終えると、ヒストグラム描画処理が終了し、図4のS9に移動する。
S26では、ループ用添え字Xiの値を1つ大きくし、S22に戻る。
S27では、X軸用のコンボボックス63aの描画IDが取得される。この描画IDに従って、どの分画領域についてヒストグラムが描画されるか、又は全ての分画領域についてヒストグラムが描画されるかなどが決定される。その後、図10のS31に移動する。
【0031】
図10のS31では、描画IDが「全領域」であるかどうかが判断される。描画IDが「全領域」である場合には、S35に移動し、Scatter[Xi][Yi]の値をHist_X[Xi]に加える。S23及びS37によって規定されるループを用いてYiの値を1つずつ大きくしながら、S35の工程を繰り返すことにより、Scatter[Xi][0]〜Scatter[Xi][255]の各要素の値がHist_X[Xi]に加えられる。また、S22とS26で規定されるループを用いてXiの値を1つずつ大きくしながらS35の工程を繰り返すことにより、Hist_X[0]〜Hist_X[255]の全ての要素にScatter[Xi][Yi]の内容を反映させる。S36では、Hist_X[Xi]の内容に基づいてヒストグラム情報が算出される。S36を終えると、S37に移動し、ループ用添え字Yiの値を1つ大きくし、Bに戻る。
【0032】
S31では、描画IDが「全領域」でない場合には、S32に移動する。S32では、描画IDが「エリアAのみ」であるかどうかが判断される。描画IDが「エリアAのみ」である場合には、図11のS41に移動する。S41では、メモリに記憶されたエリアAについての座標情報(多角形の頂点の座標の情報)を読み出す。S42では、S41で読み出した座標情報に基づいてScatter[Xi][Yi]がエリアAに含まれているかどうかを判断する。Scatter[Xi][Yi]がエリアAに含まれている場合には、S43に移行し、Scatter[Xi][Yi]の値をHist_X[Xi]に加える。S43及びS44の詳細な説明は、S35及びS36について説明した通りである。S44を終えると、S37に移動し、ループ用添え字Yiの値を1つ大きくし、S23に戻る。S42において、Scatter[Xi][Yi]がエリアAに含まれていない場合には、Scatter[Xi][Yi]の値をHist_X[Xi]に反映させないで、S37に移動し、ループ用添え字Yiの値を1つ大きくし、Bに戻る。このような工程により、Scatterの各配列要素のうちエリアAに含まれているもののみの値をHist_Xに反映させることができる。
【0033】
図10を参照すると、S32では、描画IDが「エリアAのみ」でない場合には、S33に移動する。S33では、描画IDが「エリアBのみ」であるかどうかが判断される。描画IDが「エリアBのみ」である場合には、図12のS51に移動する。S51では、エリアBについての座標情報を読み出す。S52〜S54は、S42〜S44と同様である。
【0034】
図10を参照すると、S33では、描画IDが「エリアBのみ」でない場合には、S34に移動する。S34では、描画IDが「全エリア」であるかどうかが判断される。描画IDが「全エリア」である場合には、図13のS61に移動する。S61では、エリアA及びエリアBについての座標情報を読み出す。S62では、Scatter[Xi][Yi]がエリアA又はエリアBに含まれているかどうかを判断する。Scatter[Xi][Yi]がエリアA又はエリアBに含まれている場合には、S63に移行し、Scatter[Xi][Yi]の値をHist_X[Xi]に加える。S64は、S44と同様である。なお、別の一次元配列Hist1_X及びHist2_Xを準備し、Scatter[Xi][Yi]がエリアAに含まれている場合には、Scatter[Xi][Yi]の値をHist1_X[Xi]に加え、Scatter[Xi][Yi]がエリアBに含まれている場合には、Scatter[Xi][Yi]の値をHist2_X[Xi]に加えるようにしてもよい。このようにすることで、ヒストグラムを描画する際に、エリアごとに色分けすることが可能になる。
【0035】
描画IDが何れの場合でも、最終的に、図10のS37に移動し、S37で、Yiの値を1つ増加させて、その後、図9のS23に移動し、ループを繰り返す。
以上の工程により、選択された分画領域内に存在する有形成分について、ヒストグラムを描画することができる。
なお、本実施例では、S35,43,53及び63においてヒストグラムにスキャッタグラムの情報を反映させると、S36,44,54及び64においてヒストグラム情報を算出するようにしているが、S22において、Xiが256に到達した後に、ヒストグラム情報を算出するようにしてもよい。
【実施例2】
【0036】
図14は、実施例2に係る分析装置での手動解析モードの画面70を示す。実施例1では、2次元スキャッタグラムに手動で分画領域を設定し、分画領域内の有形成分について、ヒストグラムを作成していたが、実施例2では、3次元スキャッタグラムに分画領域を設定し、この分画領域内の有形成分について2次元スキャッタグラム及びヒストグラムを作成する。
【0037】
画面70の左上には、X1,X2及びYの3つのデータに基づいて3次元スキャッタグラム71が描画されている。X1,X2及びYは、それぞれ、前方散乱光強度、側方散乱光強度及び側方蛍光強度である。また、3次元スキャッタグラム71には、エリアAからエリアDで示す分画領域が設定されている。この分画領域の形状は、特に限定されない。分画領域は、例えば、X1−Y平面及びX2−Y平面のそれぞれにおいて、実施例1で行ったのと同様の方法で多角形の分画領域71a及び71bを設定し、分画領域71aを通りX2方向に延びる立体と、分画領域71bを通りX1方向に延びる立体の重なりによって形成される立体によって、設定することができる。
【0038】
符号72〜74は、それぞれ3次元スキャッタグラムの全領域をX1−Y平面、X2−Y平面、X1−X2平面に投影して得られる2次元スキャッタグラムを示し、符号72a〜74aは、選択された分画領域(エリアA)のみについて、X1−Y平面、X2−Y平面、X1−X2平面に投影して得られる2次元スキャッタグラムを示す。2次元スキャッタグラム73及び74などから明らかなように、全領域についてのスキャタグラムでは、複数エリアが互いに重なっていてエリアAの識別が困難であるが、エリアAのみについての2次元スキャッタグラム72a〜74aでは、エリアAの識別が容易である。従って、2次元スキャッタグラム72a〜74aを見て、エリアAに属する有形成分の分布が適切であるかを判断し、不適切であれば、3次元スキャッタグラム71での分画領域を変更することにより、適切な分画領域の設定が可能となる。
【0039】
また、符号75〜77は、それぞれ3次元スキャッタグラムの全領域をX1,Y,X2軸に投影して得られるヒストグラムを示し、符号75a〜77aは、選択された分画領域(エリアA)のみについて、X1,Y,X2に投影して得られるヒストグラムを示す。ヒストグラム75〜77から明らかなように、全領域についてのヒストグラムでは、複数エリアが互いに重なっていてエリアAの識別が困難であるが、エリアAのみについてのヒストグラム75a〜77aでは、エリアAの識別が容易である。従って、ヒストグラム75a〜77aを見て、エリアAに属する有形成分の分布が適切であるかを判断し、不適切であれば、3次元スキャッタグラム71での分画領域を変更することにより、適切な分画領域の設定が可能となる。
【0040】
ここでは、エリアAが選択されている場合を例にとって説明したが、別のエリアを選択すると、そのエリアに属する有形成分について、2次元スキャッタグラム、ヒストグラムが描画される。
【0041】
分画領域に属する有形成分のみについて2次元スキャッタグラム、ヒストグラムを描画する方法は、基本的に、実施例1の方法と同様である。実施例1では、Scatterの各要素のうち選択された分画領域に属するもののみをHist_Xに反映させることにより、選択された分画領域に属するもののみについてのヒストグラムを描画していたが、本実施例では、3次元配列Scatter3を準備し、この各要素のうち選択された分画領域に属するもののみを2次元配列Scatter2及び1次元配列Hist_Xに反映させることにより、選択された分画領域に属するもののみについての2次元スキャッタグラム及びヒストグラムを描画することができる。なお、1次元配列Hist_Xは、2次元配列Scatter2に基づいて作成してもよく、この場合、実施例1のS13及びS16と同じ方法で1次元配列Hist_Xを作成することができる。
【0042】
なお、上記実施例では、スキャッタグラムと度数分布図(ヒストグラム)とをディスプレイの同一画面(エリア設定画面)に表示させているが、別々の画面に表示させてもよい。また、これらの画面をプリンタによって印刷するようにしてもよい。
また、実施例1では、側方蛍光強度および側方散乱光強度を軸とするスキャッタグラムを用い、実施例2では、前方散乱光強度、側方散乱光強度および側方蛍光強度を軸とするスキャッタグラムを用いているが、スキャッタグラムの軸としては、前方散乱光強度、透過光強度など様々な測定データを用いることができる。
上記実施例では、血球計数装置を用いたが、トナーなどの粒子を分析する粒子分析装置、尿中の有形成分を分析する尿分析装置など、種々の分析装置に本発明を適用することができる。
上記実施例では、動物の血液を測定しているが、人の血液を測定してもよいし、血液以外の体液、例えば肺胞洗浄液などを測定してもよい。
上記実施例では、単一の分画領域に含まれる有形成分は、度数分布図上で単一の色を用いて表現しているが、スキャッタグラムで表示されている色に対応させて度数分布図上の有形成分の色を変更してもよい。
上記実施例では、ヒストグラムは、たて軸に度数が表されているが、横軸に度数を表してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施例1に係る分析装置及びその周辺機器の全体構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施例1に係る分析装置の内部構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施例1に係る光学系検出部20の構成を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施例1に係る分析装置の動作の全体の流れを示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施例1に係る、スキャッタグラムの内部データ構造を示す説明図である。
【図6】本発明の実施例1に係る分析装置の手動解析モードの画面である。
【図7】本発明の実施例1に係る分析装置の分画領域設定時の処理を示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施例1に係る分析装置のコンボボックス設定変更時の処理を示すフローチャートである。
【図8A】本発明の実施例1に係る分析装置のコンボボックス設定変更操作の説明図である。
【図9】本発明の実施例1に係る分析装置のヒストグラム描画処理を示すフローチャートである。
【図10】本発明の実施例1に係る分析装置のヒストグラム描画処理を示すフローチャートである。
【図11】本発明の実施例1に係る分析装置のヒストグラム描画処理を示すフローチャートである。
【図12】本発明の実施例1に係る分析装置のヒストグラム描画処理を示すフローチャートである。
【図13】本発明の実施例1に係る分析装置のヒストグラム描画処理を示すフローチャートである。
【図14】本発明の実施例2に係る分析装置の手動解析モードの画面である。
【符号の説明】
【0044】
1 装置本体
2 データ処理端末
3 ページプリンタ
4 カラーグラフィックプリンタ
5 空圧源
6 サンプラ部
7 データプリンタ
10 試料分析装置
14a、14b 試料吸引部
15 端末本体
16 端末側表示部
18 端末側入力部
19 検出部
20 光学系検出部
22 電気系検出部
24 吸光度検出部
26 本体側制御部
28 本体側入力部
30 本体側表示部
32a 出入力インターフェイス
32b 出入力インターフェイス
33 通信ケーブル
34 端末側制御部
61 スキャッタグラム
62 エリア情報
62a 座標情報
63,64 ヒストグラム
63a,64a コンボボックス
65,66 ヒストグラム情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析物から第1および第2の測定データを取得する測定データ取得手段と、
前記第1および第2の測定データを軸とし、分析物に含まれる有形成分の分布を示す2次元分布図を作成する2次元分布図作成手段と、
前記2次元分布図上に分画領域を設定する領域設定手段と、
前記領域設定手段によって設定された前記分画領域に属する有形成分について、前記第1の測定データを軸とする度数分布図を作成する度数分布図作成手段と、
前記2次元分布図および前記度数分布図を出力する出力手段と、
を備える分析装置。
【請求項2】
前記出力手段は、前記2次元分布図と前記度数分布図とを同一画面上に表示する請求項1記載の分析装置。
【請求項3】
前記領域設定手段によって複数の分画領域が設定された場合に、前記度数分布図を作成する前記分画領域領を前記複数の分画領域の中から選択する領域選択手段をさらに備える請求項1または2に記載の分析装置。
【請求項4】
前記領域選択手段は、複数の分画領域を選択可能である請求項3記載の分析装置。
【請求項5】
前記度数分布図作成手段は、前記2次元分布図に属する全ての有形成分の度数分布図をさらに作成する請求項1〜4のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項6】
前記2次元分布図は、前記有形成分の分布位置によって異なる色を使用して前記有形成分が表現される分布図であり、前記度数分布図は、前記分画領域に属する有形成分が単一の色を使用して表現される分布図である請求項1〜5のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項7】
前記領域設定手段によって設定された前記分画領域に属する有形成分の統計データを算出する統計データ算出手段をさらに備える請求項1〜6のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項8】
前記出力手段は、ディスプレイであり、
前記ディスプレイに表示されるポインタを移動させるためのポインティングデバイスをさらに備え、
前記分画領域は、前記ポインティングデバイスを用いて前記ポインタを前記ディスプレイ上で移動させることによって変更される請求項1〜7のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項9】
分析物から第1、第2および第3の測定データを取得する測定データ取得手段と、
前記第1、第2および第3の測定データを軸とし、分析物に含まれる有形成分の分布を示す3次元分布図を作成する3次元分布図作成手段と、
前記3次元分布図上に分画領域を変更可能に設定する領域設定手段と、
前記領域設定手段によって設定された前記分画領域に属する有形成分について、前記第1および第2の測定データを軸とする2次元分布図および前記第1の測定データを軸とする度数分布図の少なくとも一方を作成する参考用分布図作成手段と、を備える分析装置。
【請求項10】
分析物に含まれる有形成分の分布を示す2次元分布図上に設定された分画領域に属する有形成分について、一次元の度数分布図を作成する度数分布図作成手段を備える分析装置。
【請求項11】
分析物に含まれる有形成分の分布を示す2次元分布図上に設定された分画領域に属する有形成分について、一次元の度数分布図を作成する工程をコンピュータに実行させる分析プログラム。
【請求項12】
分析物に含まれる有形成分の分布を示す2次元分布図上に設定された分画領域に属する有形成分について、一次元の度数分布図を作成する工程を備える分画領域設定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図8A】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−17497(P2006−17497A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−193428(P2004−193428)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】