説明

分析装置、試薬容器、および試薬保管装置

【課題】試薬を分注するときだけ試薬容器の開口部を開放できる分析装置を提供すること。
【解決手段】試料と試薬を反応させて前記試料を分析する分析装置において、前記試薬を格納するとともに、前記試薬を出し入れするための開口部を備えた試薬容器と、前記開口部に対し移動可能に設けられ、前記開口部を開閉するための内蓋83と、前記試薬容器を移動させる容器棚と、前記試薬容器の動きを利用して前記内蓋83を移動させることにより、前記開口部を開閉させる開閉機構92とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料等を検査するための分析装置、試薬容器、および試薬保管装置に関する。
【背景技術】
【0002】
分析装置は、血液、尿、髄液等の体液や組織等の試料に試薬を混ぜ、反応状態を光で調べることにより、試料の成分分析や調査を自動で行う装置である。この分析装置は、同時に大量の成分分析や調査を行えるため、病院や検査機関等において広く利用されている。
【0003】
図39は従来の分析装置の斜視図である。図39に示すサンプラ200は、その軸線を中心として回転し、分析対象の試料が入った試料容器201を試料分注機構202の位置に移動させる。
【0004】
試料分注機構202は、プローブ203で試料容器201内の試料を吸引し、反応容器204内に吐出する。反応ディスク55は、その軸線を中心として回転し、反応容器204を試薬分注機構205a、205bの位置に移動させる。
【0005】
試薬分注機構205a、205bは、プローブ206a、206bで試料の測定に用いられる試薬を試薬庫208内の試薬容器209から吸引し、反応ディスク55の反応容器204内に吐出する。
【0006】
その後、反応ディスク55は、その軸線を中心として回転し、反応容器204を攪拌ユニット210の位置に移動させる。そして、攪拌ユニット210は、反応容器204内の試料と試薬の混合液を攪拌子で攪拌する。反応容器204内の混合液は、光度計211などにより成分分析される。分析終了後の反応液は廃棄され、反応容器204は洗浄機構212により洗浄される。
【0007】
ところで、前記試薬庫208内には、揮発性の試薬や温度変化により変性する試薬なども保管される。そのため、従来の分析装置では、各試薬容器209に蓋をし、且つ試薬庫全体を冷却することで、揮発による試薬の濃縮、温度変化による試薬の劣化、および揮発した試薬の他の試薬への溶け込みが防止されていた(例えば、特許文献1〜特許文献3、及び非特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−48803号公報
【特許文献2】特開平8−160050号公報
【特許文献3】特開平7−20132号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】“試薬蒸散に起因する他検査試薬への影響とその対策” 佐藤俊実、田仁健二、芳村一、櫻林郁之介
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、この分析装置では、使用前後に蓋の付け外し作業が必要となる。この作業は、使用者にとって大きな負担である。しかも、試薬容器に蓋をし忘れると、試薬容器の中の試薬が劣化あるいは濃縮し、その後、良好な分析が行えなくなることもある。
【0011】
さらに、24時間などの長時間使用では、その間ずっと試薬容器の開口部を開放しておく必要があり、試薬の劣化や濃縮による分析への影響が懸念される。また、揮発した試薬が他の試薬容器内の試薬に溶け込み、試薬の性質を変化させることもある。
【0012】
本発明は、前記事情を鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、試薬を分注するときだけ試薬容器の開口部を開放できる分析装置、試薬容器、および試薬保管装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決し目的を達成するために、本発明の分析装置、試薬容器、および試薬保管装置は次のように構成されている。
【0014】
(1)試料と試薬を反応させて前記試料を分析する分析装置において、前記試薬を格納するとともに、前記試薬を出し入れするための開口部を備えた試薬容器と、前記開口部に対し移動可能に設けられ、前記開口部を開閉するための蓋体と、前記試薬容器を移動させる棚と、前記試薬容器の動きを利用して前記蓋体を移動させることにより、前記開口部を開閉させる開閉手段とを具備し、前記蓋体は穴部を備え、前記開閉手段は、分注位置に設けられ且つガイド面が形成された案内部材を有し、前記試薬容器が分注位置に接近するのに伴い、前記蓋体は前記ガイド面により前記穴部が前記開口部と対向する開放位置に押されることで、前記開口部を開放し、前記試薬容器が分注位置から遠ざかるのに伴い、前記蓋体は前記ガイド面により前記穴部が前記開口部とずれる閉塞位置に押されることで、前記開口部を閉塞する。
【0015】
(2)(1)に記載された分析装置において、前記試薬容器の動きは、回転運動である。
【0016】
(3)(1)に記載された分析装置において、前記試薬容器の動きは、直線運動である。
【0017】
(4)(1)に記載された分析装置において、前記開閉装置は、前記蓋体が閉塞位置に位置するときに前記蓋体を押圧するための押圧部材と、前記蓋体が開放位置に移動したときに前記押圧部材の蓋体に対する押圧を解除するための解除部材を有する。
【0018】
(5)試料と試薬を反応させて前記試料を分析する分析装置に設置される試薬容器において、前記試薬容器の開口部に対し移動可能に設けられ、穴部を有する蓋体を備え、前記試薬容器が分注位置に接近するのに伴い、前記分注位置に設けられた案内部材が有するガイド面により、前記穴部が前記開口部と対向する開放位置に押されることで、前記開口部を開放し、前記試薬容器が分注位置から遠ざかるのに伴い、前記蓋体は前記ガイド面により前記穴部が前記開口部とずれる閉塞位置に押されることで、前記開口部を閉塞する。
【0019】
(6)試料を分析する分析装置にて前記試料と反応させるための試薬を含む試薬容器を保管する試薬保管装置において、前記試薬の分注位置に設けられ、ガイド面を有する案内部材を備え、前記試薬容器が分注位置に接近するのに伴い、前記ガイド面により、前記試薬容器の開口部に対し移動可能に設けられた蓋体が有する穴部が、前記開口部と対向する開放位置に押されることで、前記開口部を開放し、前記試薬容器が分注位置から遠ざかるのに伴い、前記蓋体は前記ガイド面により前記穴部が前記開口部とずれる閉塞位置に押されることで、前記開口部を閉塞することを特徴とする試薬保管装置。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、試薬を分注するときだけ試薬容器の開口部が開放されるから、試薬の劣化や濃縮、あるいは他の試薬への溶け込み等が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態に係る分析装置の概略的な斜視図。
【図2】同実施形態に係る試薬庫の概略的な斜視図。
【図3】同実施形態に係る蓋部材と開閉ブロックの概略的な平面図。
【図4】同実施形態に係る内蓋が閉塞位置にあるときの蓋部材と開閉ブロックの横断面図。
【図5】同実施形態に係る内蓋が開放位置にあるときの蓋部材と開閉ブロックの横断面図。
【図6】同実施形態に係る揺動アームと内蓋の斜視図。
【図7】同実施形態に係る開閉ブロックの正面図。
【図8】本発明の第2実施形態に係る蓋部材と開閉ブロックの概略的な平面図。
【図9】同実施形態に係る内蓋が閉塞位置にあるときの蓋部材と開閉ブロックの横断面図。
【図10】同実施形態に係る内蓋が開放位置にあるときの蓋部材と開閉ブロックの横断面図。
【図11】同実施形態に係る揺動アームと内蓋の概略的な斜視図。
【図12】本発明の第3実施形態に係る蓋部材と開閉ブロックの概略的な平面図。
【図13】同実施形態に係る内蓋が閉塞位置にあるときの蓋部材と開閉ブロックの横断面図。
【図14】同実施形態に係る内蓋が開放位置にあるときの蓋部材と開閉ブロックの横断面図。
【図15】本発明の第4実施形態に係る蓋部材とアクチュエータの概略的な平面図。
【図16】同実施形態に係る蓋部材とアクチュエータの横断面図。
【図17】本発明の第5実施形態に係る蓋部材とアクチュエータの概略的な平面図。
【図18】同実施形態に係る蓋部材とアクチュエータの横断面図。
【図19】同実施形態に係る押圧部材と解除部材の側面図。
【図20】本発明の第6実施形態に係る案内部材と蓋部材の概略的な平面図。
【図21】同実施形態に係る案内部材の図20のA−A線における断面図。
【図22】同実施形態に係る案内部材の図20のB−B線における断面図。
【図23】同実施形態に係る内蓋が閉塞位置にあるときの案内部材と蓋部材の横断面図。
【図24】同実施形態に係る内蓋が開放位置にあるときの案内部材と蓋部材の横断面図。
【図25】同実施形態に係る内蓋が閉塞位置にあるときの内蓋と開口部との関係図。
【図26】同実施形態に係る内蓋が開放位置にあるときの内蓋と開口部との関係図。
【図27】本発明の第7実施形態に係る案内部材と蓋部材の概略的な平面図。
【図28】同実施形態に係る内蓋が閉塞位置にあるときの案内部材と蓋部材の横断面図。
【図29】同実施形態に係る内蓋が開放位置にあるときの案内部材と蓋部材の横断面図。
【図30】本発明の第8実施形態に係る案内部材と蓋部材の概略的な平面図。
【図31】本発明の第9実施形態に係る案内部材と蓋部材の概略的な平面図。
【図32】本発明の第10実施形態に係る案内部材と蓋部材の概略的な平面図。
【図33】同実施形態に係る内蓋が閉塞位置にあるときの内蓋と開口部との関係図。
【図34】同実施形態に係る内蓋が開放位置にあるときの内蓋と開口部との関係図。
【図35】本発明の第11実施形態に係る案内部材と蓋部材の概略的な平面図。
【図36】同実施形態に係る内蓋が閉塞位置にあるときの内蓋と開口部との関係図。
【図37】同実施形態に係る内蓋が閉塞位置にあるときの内蓋と開口部との関係図。
【図38】本発明の第12実施形態に係る案内部材と蓋部材の概略的な平面図。
【図39】従来の分析装置の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら本発明の第1実施形態〜第12実施形態について説明する。
(第1実施形態)
図1〜図7を用いて本発明の第1実施形態を説明する。
(分析装置の構成)
図1は本発明の第1実施形態に係る分析装置の概略的な斜視図、図2は同実施形態に係る試薬庫の概略的な斜視図である。
【0023】
図1と図2に示すように、この分析装置は、装置本体10、試料容器21、架台22、試料分注アーム23、試薬容器51、試薬庫52、容器棚53、試薬分注アーム28、反応ディスク29、反応管30、電極ユニット31、洗浄ユニット32、測定ユニット33、攪拌ユニット40、試料容器41、制御部44、記憶部45、開閉ブロック61、および蓋部材71を具備している。
【0024】
以下、前記構成要素について説明する。
試料容器21は、人体の血清等の試料を格納する。
【0025】
架台22は、複数の試料容器21を支持するとともに、分析対象となる試料を格納した試料容器21を所定のシーケンスに従って試料分注プローブ230の位置まで移動させる。
【0026】
なお、本実施形態では、試料容器21を直線的に移動させる架台22を使用しているが、これに限定されるものではなく、試料容器21を例えば環状に並べて支持するディスクサンプラを使用してもよい。
【0027】
試料分注アーム23は、試料分注プローブ230を有している。この試料分注プローブ230は、試料分注アーム23の支柱を中心に回転し、且つ支柱に沿って上下動する。分注動作において、この試料分注アーム23は、試料分注プローブ230を用いて試料容器21から所定の試料を吸引し、反応管30内に吐出する。
【0028】
試薬容器51は、試料と反応させる試薬を格納するものであり、その上面には口部51aが設けられている。この口部51aは、その中心部に試薬の出し入れを行うための開口部51bを備え、外周部にネジ溝51cを備えている。この口部51aには、蓋部材71が着脱可能に設けられている。なお、蓋部材71は、本発明の重要な構成であるため、後で詳細に説明する。
【0029】
試薬庫52は円筒状をしており、その軸線が垂直方向を向く姿勢で装置本体10に固定されている。試薬庫52の上端の試薬分注アーム28と対向する位置(以下、「分注位置」と称する。)には、開閉ブロック61が設けられている。この開閉ブロック61は、前記蓋部材71と共に、開口部51bを開閉するための開閉機構92を構成している。なお、開閉ブロック61は、本発明の重要な構成であるため、後で詳細に説明する。
【0030】
容器棚53は、試薬庫52内において、試薬庫52の軸線を中心として回転可能に支持されている。容器棚53の外周部には、複数の試薬容器51が着脱可能に保持されている。容器棚53には、駆動装置(図示しない)が接続されている。この駆動装置は、制御部44からの指示に従い、分析項目に応じたタイミングで容器棚53を回転させ、所定の試薬が格納された試薬容器51を分注位置に移動させる。
【0031】
反応ディスク29は、その外周部に複数の反応管30を備えており、所定のシーケンスに従い、所定の反応管30を試料分注アーム23、試薬分注アーム28、あるいは攪拌ユニット40の位置に移動させる。
【0032】
反応管30は、試料と試薬を反応させる高質ガラス製、又はプラスチック等の透明な容器であり、試料の種類に応じた温度に調整される。たとえば試料が血清である場合、反応管30の温度は、人体温度(約37℃)程度に調整される。また、反応管30内では、攪拌ユニット40の攪拌子等が所定の洗剤により洗浄される。
【0033】
電極ユニット31は、試料と試薬との混合液の特定電解質の成分量を測定する。
【0034】
洗浄ユニット32は、測定後の反応管30を洗浄する。洗浄液としては、水や洗剤等が用いられる。
【0035】
測定ユニット33は、試料の吸光度を測定して、試薬が添加された試料の発色状態等の反応過程を検査する。データ制御部(図示しない)では、この測定結果に基づいて、キャリブレーション等による分析成分の濃度演算等が行われる。なお、吸光度の測定法としては、例えば比色法と呼ばれる方法が用いられる。
【0036】
攪拌ユニット40は、攪拌子で反応管30内の試料と試薬を攪拌し、これらを十分に反応させる。なお、試料と試薬を攪拌したら、次の試料と試薬を攪拌する前に、攪拌ユニット40の攪拌子が水または所定の洗剤により洗浄される。
【0037】
試料容器41は、試料分注プローブ230に付着した試料などを洗浄するための洗剤を格納する。
【0038】
制御部44は、この分析装置の動作に関する総括的な制御を行う。すなわち、この制御部44は、試料容器21、架台22、試料分注アーム23、試薬分注アーム28、反応ディスク29、電極ユニット31、測定ユニット33、攪拌ユニット40、試薬容器51、および容器棚53等の動作に関する制御を行う。
【0039】
記憶部45は、試料と測定項目とを対応づける対応テーブルや、測定項目と洗剤とを対応づける対応テーブル等を記憶している。試薬の分注や攪拌子の洗浄等は、これらの対応テーブルに基づいて行われる。
【0040】
次に、図3〜図6を参照しながら蓋部材71および開閉ブロック61の構成について詳細に説明する。
【0041】
図3は同実施形態に係る蓋部材71と開閉ブロック61の概略的な平面図、図4は同実施形態に係る内蓋83が閉塞位置にあるときの蓋部材71と開閉ブロック61の横断面図、図5は同実施形態に係る内蓋83が開放位置にあるときの蓋部材71と開閉ブロック61の横断面図、図6は同実施形態に係る揺動アーム87と内蓋83の斜視図である。
【0042】
図3〜図6に示すように、この蓋部材71は、試薬容器51の口部51aに被嵌される外蓋72を備えている。この外蓋72は略円柱状をしており、その下面には試薬容器51の口部51aを収納する収納部73が形成されている。
【0043】
なお、収納部73の内周面と口部51aの外周面との間には、シール材74が設けられている。シール材74としては、ラバーなどの柔軟な素材が用いられる。これにより、口部51aに蓋部材71を取付けた後であっても、口部51aに対して蓋部材71が回転可能となる。
【0044】
外蓋72の上壁部72aには、上壁開口部75が設けられている。この上壁開口部75は収納部73と連通しており、その内周面の下側部には環状の突出部76が設けられている。突出部76の上面には、シール材77(例えばOリングなど、以下「シール材77」と表記する)が配設されている。
【0045】
外蓋72の周壁部72bには、試薬庫52の壁部と対向する位置に、周壁開口部79が設けられている。この周壁開口部79は上壁開口部75と連通しており、その内側には支持ピン80が水平に設けられている。また、周壁開口部79と対向する位置には、丸棒状の支柱82が垂直に設けられている。この支柱82は、ブラケット81を介して外蓋72の周壁部72bに固定されている。
【0046】
上壁開口部75内には、試薬容器51の開口部51bを開閉する帯板状の内蓋83が略水平に設けられている。内蓋83の支持部84は、周壁開口部79から外蓋72の径方向外側に突出し、その先端部は支柱82により回動可能、且つ上下移動可能に支持されている。
【0047】
これにより、内蓋83は支柱82を中心に回転することで、試薬容器51の口部51aの直上から退避した退避位置(図3中に点線で示す位置。)、および試薬容器51の口部51aの直上位置(図3中に実線で示す位置。)に移動できるようになっている。
【0048】
内蓋83が前記退避位置に移動すると、口部51aの上方に形成された空間部Sは、上壁開口部75を介して蓋部材71の外部と連通する。このことは、試薬容器51の開口部51bが開放したことを意味する。
【0049】
また、内蓋83が前記直上位置に移動すると、内蓋83とシール材77とが密着し、口部51aの上方に形成された空間部Sが密閉される。このことは、試薬容器51の開口部51bが閉塞されたことを意味する。そこで、前記退避位置を「開放位置」と称し、前記直上位置を「閉塞位置」と称する。
【0050】
支柱82には第1のバネ93が被嵌されている。この第1のバネ93は、下端部と上端部がそれぞれブラケット81と内蓋83に固定されており、その弾性力で内蓋83を上方および矢印B方向に付勢している。
【0051】
上壁開口部75内には、環状の押圧部材85が略水平に設けられている。この押圧部材85は内蓋83の上側に位置しており、更にその上側には第2のバネ86が設けられている。この第2のバネ86は上壁開口部75内に収納されており、押圧部材85を介して内蓋83を下方に押圧している。
【0052】
押圧部材85の外周面の所定位置には、揺動アーム87の一端部が回転可能に連結されている。この揺動アーム87は、内蓋83の側方に位置しており、その中途部は前記支持ピン80により回動可能に支持されている。揺動アーム87の他端部は、周壁開口部79から外蓋72の外側に突出しており、その先端部には被案内ブロック88が設けられている。
【0053】
被案内ブロック88が下降すると、この動きに連動して押圧部材85が上昇し、第1のバネ93により上方に付勢されている内蓋83は、押圧部材85の上昇分だけ上昇することになる。また、被案内ブロック88が上昇すると、この動きに連動して押圧部材85が下降し、内蓋83を第1のバネ93の付勢力に抗して押し下げることになる。
【0054】
揺動アーム87には、略三角錐状の開放用爪部89が内蓋83と対向して設けられている。この開放用爪部89は、支持ピン80と支柱82との間に位置しており、1つの稜線91を内蓋83に向けている。この稜線91は、上方に行くにつれて内蓋83に向かって迫り出すように傾斜しており、その中途部には内蓋83が接触している。
【0055】
従って、被案内ブロック88が下降すると、この動きに連動して開放用爪部89が下降し、開放用爪部89の稜線91が内蓋83に向かって移動する。その結果、内蓋83は、稜線91に押されて矢印A方向に回転し、開放位置に移動する。
【0056】
また、被案内ブロック88が上昇すると、この動きに連動して開放用爪部89が上昇し、開放用爪部89の稜線91が内蓋83から離れる方向に移動する。その結果、第1のバネ93により付勢されている内蓋83は、稜線91が移動した分だけ矢印B方向に回転し、閉塞位置に移動する。
【0057】
図7は同実施形態に係る開閉ブロック61の正面図である。
【0058】
図7に示すように、この開閉ブロック61は、試薬庫52の内側に突出しており、その下面には案内面62が形成されている。この案内面62は、被案内ブロック88の動きを案内するためのものであり、水平案内面62aと、水平案内面62aの両側に連なる2つの傾斜案内面62bとから構成されている。
【0059】
(分析装置の動作)
制御部44が試料と反応させる試薬を認識したら、駆動装置により容器棚53が回転され、対象の試薬を格納した試薬容器51が分注位置に移動される。そして、対象の試薬容器51が分注位置に接近していくと、揺動アーム87の被案内ブロック88が開閉ブロック61の傾斜案内面63bに接触し、この傾斜案内面63bに沿って下降する。
【0060】
被案内ブロック88が下降すると、その動きに連動して押圧部材85が上昇する。これにより、押圧部材85の内蓋83に対する押圧が解除され、第1のバネ93の弾性力により内蓋83が押圧部材85の上昇分だけ上昇する。
【0061】
また、被案内ブロック88が下降すると、押圧部材85が上昇するのと同時に、開放用爪部89が下降する。これにより、開放用爪部89の稜線91は、内蓋83を矢印A方向に押し進め、開放位置に移動させる。その結果、試薬容器51の口部51aの上方に形成された空間部Sが蓋部材71の外部と連通した状態となり、試薬容器51の開口部51bが開放される。
【0062】
なお、被案内ブロック88が開閉ブロック61の傾斜案内面63bから水平案内面63aに移行すると、被案内ブロック88は一定の高さに維持される。そのため、被案内ブロック88が水平案内面62aと接触している間、内蓋83は開放位置に留まっている。
【0063】
内蓋83が開放位置に移動したら、容器棚53の回転が停止する。そして、上壁開口部75から試薬容器51内に試薬分注プローブ280が挿入され、試薬の吸引、分注が行われる。
【0064】
試薬の分注が終了したら、容器棚53が再び回転され、次に使用する試薬を格納する試薬容器51が分注位置に移動される。このときも、押圧部材85は、第2のバネ86により下方に付勢されている。そのため、試薬容器51が分注位置から遠ざかるのに伴い、被案内ブロック88が水平案内面62aから傾斜案内面62bに移行すると、内蓋83が押圧部材85により押し下げられ、被案内ブロック88が開閉ブロック61の傾斜案内面61bに沿って上昇する。
【0065】
被案内ブロック88が上昇すると、その動きに連動して開放用爪部89が上昇し、開放用爪部89の稜線91が内蓋83から離れる方向に移動する。これにより、第1のバネ93により付勢されている内蓋83は、稜線91が移動した分だけ矢印B方向に移動し、閉塞位置に移動する。これにより、試薬容器51の口部51aの上方に形成された空間部Sは再び密閉された状態となり、試薬容器51の開口部51bが閉塞される。
【0066】
閉塞位置に戻された内蓋83は、下降してきた押圧部材85によりシール材77に対して所定圧力で密着する。これにより、試薬容器51の口部51aの上部に形成された空間部Sは、高い密閉状態となる。
【0067】
(蓋部材71の取付け方法)
使用者は、蓋部材71の外蓋72に形成された収納部73に、試薬容器51の口部51aを挿入し、蓋部材71を口部51aに対して回転させて、内蓋83の長手方向を試薬容器51の回転方向と直交する方向に設定する。これにより、蓋部材71は、試薬容器51の口部51aに正確に取付けられる。
【0068】
(本実施形態による作用)
本実施形態に係るの分析装置によれば、試薬容器51が分注位置に接近するときの試薬容器51の回転運動を利用して、試薬容器51の開口部51bの開放動作が行われている。また、試薬容器51が分注位置から離間するときの試薬容器51の回転運動を利用して、試薬容器51の開口部51bの閉塞動作が行われている。
【0069】
したがって、試薬容器51の開口部51bは、分注時のみ開放されることになるから、オペレータの作業が軽減されて作業効率が向上する。しかも、アクチュエータ等の装置が不要であるから、構成が複雑化することがない。
【0070】
また、本実施形態に係る分析装置によれば、内蓋83が閉塞位置にあるときには、押圧部材85が内蓋83をシール材77に押圧している。そのため、非分注時には、試薬容器51の口部51aの上方に形成された空間部Sが高い密閉状態になるから、試薬の揮発、変質などが一層防止される。
【0071】
さらに使用者は、試薬庫52の上端部に開閉ブロック61を取付けるとともに、試薬容器51の口部51aに蓋部材71を取付けるだけで、本発明の分析装置を得ることができる。
【0072】
しかも、収納部73の内周面と口部51aの外周面との間には、柔軟性のあるシール材74が設けられている。このため、口部51aに蓋部材71を取付けた後であっても、蓋部材71が口部51aに対して回転可能となるから、内蓋83の向きが容易に調整される。
【0073】
(第2実施形態)
次に、図8〜図11を用いて本発明の第2実施形態を説明する。なお、ここでは前記実施形態と同じ構成については、同じ符号を付してその説明を省略する。
【0074】
図8は本発明の第2実施形態に係る蓋部材71aと開閉ブロック61の概略的な平面図、図9は同実施形態に係る内蓋83aが閉塞位置にあるときの蓋部材71aと開閉ブロック61の横断面図、図10は同実施形態に係る内蓋83aが開放位置にあるときの蓋部材71aと開閉ブロック61の横断面図、図11は同実施形態に係る揺動アーム87と内蓋83aの概略的な斜視図である。
【0075】
図8〜図11に示すように、本実施形態に係る蓋部材71aは、揺動アーム87の内蓋83aと対向する面に、内蓋83aを閉塞位置に移動させるための、略三角錐状の閉塞用爪部95を備えている。
【0076】
この閉塞用爪部95は、支柱82よりも被案内ブロック88側に位置しており、1つの稜線96を内蓋83aの支持部84a側に向けている。この稜線96は、上方に行くにつれて内蓋83aから離れるように傾斜しており、その中途部には内蓋83aが接触している。
【0077】
ここで重要なのは、閉塞用爪部95が支柱82を挟んで開放用爪部89の反対側に位置していることと、開放用爪部89の稜線91と閉塞用爪部95の稜線96が逆方向に傾斜していることである。
【0078】
前記構成の分析装置では、内蓋83aが開放位置にあるときに、揺動アーム87の被案内ブロック88が上昇すると、この動きに連動して閉塞用爪部95が上昇する。これにより、閉塞用爪部95の稜線96が支持部84aを矢印B方向に押し進め、内蓋83aが閉塞位置に移動する。
【0079】
このような構成にしても、試薬容器51の開口部51bは、分注時だけ開放されるから、試薬の劣化や変性が防止される。
【0080】
(第3実施形態)
次に、図12〜図14を用いて本発明の第3実施形態を説明する。なお、ここでは前記実施形態と同じ構成については、同じ符号を付してその説明を省略する。
【0081】
図12は本発明の第3実施形態に係る蓋部材71bと開閉ブロック61の概略的な平面図、図13は同実施形態に係る内蓋83bが閉塞位置にあるときの蓋部材71bと開閉ブロック61の横断面図、図14は同実施形態に係る内蓋83bが開放位置にあるときの蓋部材71bと開閉ブロック61の横断面図である。
【0082】
図12〜図14に示すように、本実施形態に係る蓋部材71bは、外蓋72の周壁部72bの周壁開口部79と反対側の位置に挿入開口部99を備えている。内蓋83bの支持部84bは、この挿入開口部99から外蓋72の径方向外方に突出している。支持部84bの中途部は、挿入開口部99と対向するように配置された支柱100を中心に回動可能、かつ上下移動可能に支持されている。
【0083】
この支柱100は、ブラケット81aを介して外蓋72の周壁部72bに固定されており、その外周部には第3のバネ101が設けられている。この第3のバネ101は、下端部と上端部が、それぞれブラケット81aと内蓋83bに固定されており、その弾力性で内蓋83bを上方および矢印B方向に付勢している。
【0084】
また、試薬庫52の上面開口部には、カバー部材102が設けられている。カバー部材102の下面には、内蓋83bを開放位置に移動させるための開放ピン103が開閉ブロック61と対向するように設けられている。
【0085】
この開放ピン103は、試薬庫52の径方向において、内蓋83bの支持部84bの先端部と略同じ位置に配置されている。これにより、試薬容器51が矢印X方向に移動しながら分注位置に接近してくると、支持部84bの先端部と開放ピン103とが衝突することになる。
【0086】
支持部84bの先端部と開放ピン103とが衝突すると、内蓋83bは矢印A方向に回転して開放位置に移動する。内蓋83bが開放位置に移動したら、上壁開口部75から試薬容器51内に試薬分注プローブ280が挿入され、試薬の吸引、分注が行われる。
【0087】
なお、支持部84bの先端部と開放ピン103が衝突するときには、揺動アーム87の動作により押圧部材85が上昇している。そのため、内蓋83bはシール材77に押圧されていないから、内蓋83bの移動が妨害されることはない。
【0088】
試薬の分注が終了したら、容器棚53が回転され、次に使用する試薬を格納する試薬容器51が分注位置に移動される。これにより、支持部84bの先端部が開放ピン103から離れ、第3のバネ101の付勢により内蓋83bが矢印B方向に回転する。その結果、内蓋83bは、閉塞位置に移動することになる。
【0089】
このような構成にしても、分注時だけ試薬容器51の開口部51bが開放されるから、試薬の劣化や変性が防止される。
【0090】
(第4実施形態)
次に、図15と図16を用いて本発明の第4実施形態を説明する。なお、ここでは前記実施形態と同様の構成については、同様の符号を付してその説明を省略する。
【0091】
図15は本発明の第4実施形態に係る蓋部材71cとアクチュエータ104の概略的な平面図、図16は同実施形態に係る蓋部材71cとアクチュエータ104の横断面図である。
【0092】
図15と図16に示すように、本実施形態に係る分析装置は、試薬庫52の上端部に、前記開閉ブロック61の代わりに、内蓋83cを移動させるためのアクチュエータ104を備えている。すなわち、本実施形態では、アクチュエータ104と蓋部材71cにより、開口部51bの開閉を行うための開閉機構92aが構成されている
アクチュエータ104は、水平面内で往復移動する移動アーム104aを備えている。この移動アーム104aは、内蓋83cの一端部の設けられた係合部116と係合し、この係合部116wを矢印C方向あるいは矢印D方向に押圧する。これにより、内蓋83cは、開放位置および閉塞位置に移動されることになる。従って、本実施形態では、内蓋83cの係合部116が周壁開口部79から外蓋72の外方に突出している。
【0093】
アクチュエータ104には認識部46が接続されている。この認識部46は、対象の試薬容器51が分注位置に到達したこと、および試薬の分注が完了したことを認識する。
【0094】
内蓋83cの支持部84cは、外蓋72を挟んでアクチュエータ104と反対側に配置された支柱105により回転可能に支持されている。ただし、本実施形態では、内蓋83cは上下方向に対して移動不可能となっている。このため、試薬容器51の口部51aの上方に形成される空間部Sの密閉性を高めるために、内蓋83cの上面側にもシール材106(例えばOリングなど)が設けられている。すなわち、この内蓋83cは、2つのシール材77、106で上下から挟み込まれている。
【0095】
認識部46により試薬容器51が分注位置に到達したことが認識されたら、移動アーム104aが矢印C方向に駆動される。これにより、内蓋83cは、移動アーム104aにより矢印A方向に回転され、開放位置(図15中に点線で示す位置。)に移動する。
【0096】
そして、試薬容器51の開口部51bが開放したら、上壁開口部75から試薬容器51内に試薬分注プローブ280が挿入され、試薬の吸引、分注が行われる。
【0097】
認識部46により試薬の分注が終了したことが認識されたら、移動アーム104aが矢印D方向に駆動される。これにより、内蓋83cは、移動アーム104aにより矢印B方向に回転され、閉塞位置(図15中に実線で示す位置。)に移動する。
【0098】
このようにしても、分注時だけ試薬容器51の開口部51bが開放されるから、試薬の劣化や変性が防止される。
【0099】
(第5実施形態)
次に、図17〜図19を用いて本発明の第5実施形態を説明する。
【0100】
図17は本発明の第5実施形態に係る蓋部材71dとアクチュエータ104の概略的な平面図、図18は同実施形態に係る蓋部材71dとアクチュエータ104の横断面図、図19は同実施形態に係る押圧部材85と解除部材108の側面図である。
【0101】
図17〜図19に示すように、本実施形態に係る蓋部材71dは、第4実施形態に係る蓋部材71cに、内蓋83cをシール材77側に押圧するための押圧部材85と、内蓋83cを開放位置に移動させるときに、押圧部材85による押圧を解除するための解除部材108とが付加されたものである。
【0102】
押圧部材85は、第1実施形態と殆んど同様のものであるが、その外周面には2つの解除用突起107aが設けられている。これら解除用突起107aは、押圧部材85の周方向に対して略180度ずれた位置に配置されている。
【0103】
また、解除部材108は、支柱により回転可能に支持されており、その所定位置には2本の解除片109が所定間隔で設けられている。これら解除片109は、先端部に傾斜面109aを有している。解除部材108は、これらの傾斜面109aを解除用突起107aの下の滑り込ませ、押圧部材85を持ち上げることで、押圧部材85の内蓋83cに対する押圧を解除する。
【0104】
すなわち、容器棚53の回転により試薬容器51が分注位置に到達したら、認識部46からの駆動信号により移動アーム104aが矢印C方向に駆動され、その先端部を解除部材108に係合させる。
【0105】
移動アーム104aと解除部材108が係合したら、移動アーム104aは更に矢印C方向に駆動され、解除片109を押圧部材85の解除用突起107aの下に滑り込ませる。これにより、押圧部材85は、解除片109の厚さ分だけ持ち上げられ、押圧部材85の内蓋83cに対する押圧が解除される。
【0106】
押圧部材85による押圧が解除されたら、移動アーム104aは更に矢印C方向に駆動される。そして、移動アーム104aと内蓋83cの係合部116が係合したら、移動アーム104aが更に矢印C方向に駆動される。これにより、内蓋83cは、矢印A方向に回転され、開放位置(図17中に点線で示す位置。)に移動する。そして、試薬容器51の開口部51bが開放したら、上壁開口部75から試薬容器51内に試薬分注プローブ280が挿入され、試薬の吸引、分注が行われる。
【0107】
試薬の分注が終了したら、認識部46からの駆動信号により移動アーム104aが矢印B方向に移動させる。これにより、内蓋83cが閉塞位置に戻され、これと同時に内蓋83cが押圧部材85によりシール材77に押圧される。
【0108】
このような構成すれば、試薬容器51の口部51aの上方に設けられる空間部Sの密閉性が高まり、試薬の劣化や変性が更に防止される。
【0109】
(第6実施形態)
次に、図20〜図26を用いて本発明の第6実施形態を説明する。
【0110】
図20は本発明の第6実施形態に係る案内部材110と蓋部材71eの概略的な平面図、図21は同実施形態に係る案内部材110の図20のA−A線における断面図、図22は同実施形態に係る案内部材110の図20のB−B線における断面図、図23は同実施形態に係る内蓋83eが閉塞位置にあるときの案内部材110と蓋部材71eの横断面図、図24は同実施形態に係る内蓋83eが開放位置にあるときの案内部材110と蓋部材71eの横断面図、図25は同実施形態に係る内蓋83eが閉塞位置にあるときの内蓋83eと開口部51bとの関係図、図26は同実施形態に係る内蓋83eが開放位置にあるときの内蓋83eと開口部51bとの関係図である。
【0111】
図20〜図26に示すように、本実施形態に係る分析装置は、試薬庫52の分注位置に案内部材110を備えている。案内部材110の下面には、溝部111が形成されている。溝部111の側面には、2つのガイド面112が対向して形成されている。これらガイド面112は、試薬庫52の周方向の真中に近づくにつれて試薬庫52の軸線に接近するような滑らかな波型形状をしている。
【0112】
また、本実施形態に係る外蓋72の周壁部72bは、挿通穴113a、113bを備えている。挿通穴113a、113bは、それぞれ試薬庫52の軸線と壁部に対向しており、その中には帯板状の内蓋83eが試薬庫52の径方向に対して移動可能に挿入されている。内蓋83eの両端部は、前記各挿通穴113a、113bから外蓋72の外に突出している。内蓋83eの所定位置には、円形の穴部115が形成されている。
【0113】
例えば、内蓋83eの移動により、図25に示すように穴部115が試薬容器51の開口部51bと対向すると、口部51aの上方に形成された空間部Sが蓋部材71eの外部と連通し、試薬容器51の開口部51bが開放される。従って、このときの内蓋83eの位置を「開放位置」とする。
【0114】
又、内蓋83eの移動により、図26に示すように穴部115が試薬容器51の開口部51bと対向すると、口部51aの上方に形成された空間部Sが密閉された状態となる。これにより、試薬容器51の開口部51bは閉塞される。従って、このときの内蓋83eの位置を「開放位置」とする。
【0115】
制御部44が試料と反応させる試薬を認識したら、容器棚53が回転され、分析に使用する試薬容器51が分注位置に向かって移動する。そして、蓋部材71eの内蓋83eが案内部材110の溝部111内に進入する。
【0116】
内蓋83eは、試薬容器51の分注位置への接近に伴い、案内部材110のガイド面112により試薬庫52の軸線側に押し出される。これにより、内蓋83eが開放位置に移動して、試薬容器51の開口部51bが開放される。そして、上壁開口部75から試薬容器51内に試薬分注プローブ280が挿入され、試薬の吸引、分注が行われる。
【0117】
試薬の分注が終了したら、容器棚53の回転により次に使用する試薬を格納する試薬容器51が分注位置に向けて移動される。このとき内蓋83eは、分注が終了した試薬容器51が分注位置から遠ざかるのに伴い、案内部材110のガイド面112により試薬庫52の壁側に押し出される。これにより、内蓋83eが閉塞位置に移動して、試薬容器51の開口部51bが閉塞される。このような構成にしても、分注時のみ試薬容器51の開口部51bが開放されるから、試薬の変性や劣化が防止される。
【0118】
(第7実施形態)
次に、図27〜図29を用いて本発明の第7実施形態を説明する。
【0119】
図27は本発明の第7実施形態に係る案内部材110と蓋部材71fの概略的な平面図、図28は同実施形態に係る内蓋83eが閉塞位置にあるときの案内部材110と蓋部材71fの横断面図、図29は同実施形態に係る内蓋83eが開放位置にあるときの案内部材110と蓋部材71fの横断面図である。
【0120】
図27〜図29に示すように、本実施形態に係る蓋部材71fは、第6実施形態に係る蓋部材71eに対して、内蓋83eをシール材77に押圧するための押圧部材85と、内蓋83eを開放位置に移動させるときに、押圧部材85の内蓋83eに対する押圧を解除するための解除用部材121とが付加されたものである。
【0121】
押圧部材85は、第6実施形態と殆んど同様のものであるが、外周面に2つの解除用突起107aを備えている。これら解除用突起107aは、押圧部材85の周方向に対して略180度ずれた位置に配置されている。
【0122】
解除用部材121は、それぞれ内蓋83eの上面に、内蓋83eの長手方向に沿って設けられており、内蓋83eと一体的に試薬庫52の径方向に移動するようになっている。これらの解除用部材121は、先端部の上面に試薬庫52の軸線に近づくにつれて低くなる傾斜面121aを備えている。
【0123】
この解除用部材121は、内蓋83eが試薬庫52の軸線に向かう力を利用して、傾斜面121aを解除用突起120aの下に滑り込ませることで、押圧部材85を持ち上げ、押圧部材85の内蓋83eに対する押圧を解除するものである。
【0124】
このような構成であっても、試薬容器51の口部51aの上方に形成された空間部Sの密閉性が高まるから、試薬容器51内の試薬の劣化・変性が更に抑制される。
【0125】
(第8実施形態)
次に、図30を用いて本発明の第8実施形態を説明する。
【0126】
図30は本発明の第8実施形態に係る案内部材110と蓋部材71eの概略的な平面図である。
【0127】
図30に示すように、本実施形態に係る分析装置は、直方体状の試薬庫52aを備え、その内部には直動式の容器棚53aが設けられている。この容器棚53aは、複数の試薬容器51を保持しており、制御部44からの指示に従って、これらの試薬容器51を試薬庫52aの矢印m方向に往復搬送する。
【0128】
内蓋83eの移動は、第6実施形態と同じ要領で行われる。ただし、第6実施形態では、内蓋83eを移動させるために試薬容器51の回転運動が利用されているが、本実施形態では試薬容器51の直線運動が利用されている。なお、容器棚53a、及び試薬容器51の運動形態以外の構成は、第6実施形態と殆んど同様である。このような形態にしても、第6実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0129】
(第9実施形態)
次、図31を用いて本発明の第9実施形態を説明する。
【0130】
図31は本発明の第9実施形態に係る案内部材110と蓋部材71eの概略的な平面図である。
【0131】
図31に示すように、本実施形態に係る分析装置は、第8実施形態に係る試薬庫52aに対して、試薬保管庫52bが追加されたものである。試薬保管庫52b内には、直動式の保管容器棚(図示しない)が設けられている。この試薬容器棚は、複数の試薬容器51を保持しており、制御部44からの指示に従い、これらの試薬容器51を矢印n方向に往復搬送する。
【0132】
例えば、試薬保管庫52b内の試薬容器51に格納された試薬が分析対象の試薬となると、試薬庫52a内の試薬容器51が容器棚53aにより試薬保管庫52bに受け渡される。そして、複数の試薬容器51が保管容器棚により試薬庫52aと対向する位置に搬送され、容器棚53aに受け渡される。
【0133】
すなわち、本実施形態は、第8実施形態の試薬庫52aに試薬保管庫52bが追加されたものであり、第8と同様の効果が得られる。
【0134】
(第10実施形態)
次に、図32〜図34を用いて本発明の第10実施形態を説明する。
【0135】
図32は本発明の第10実施形態に係る案内部材110と蓋部材71eの概略的な平面図、図33は同実施形態に係る内蓋83eが閉塞位置にあるときの内蓋83eと開口部51bとの関係図、図34は同実施形態に係る内蓋83eが開放位置にあるときの内蓋83eと開口部51bとの関係図である。
【0136】
図32に示すように、本実施形態に係る分析装置は、直方体状の試薬庫52aを備えている。試薬庫52aは、第8実施形態と殆んど同じものであるが、その分注位置には突出部135が設けられている。そのため、突出部135には、内蓋83eを移動させるための案内部材110aが設けられている。
【0137】
試薬庫52aの内部には、直動式の容器棚53aと、往復容器棚(図示しない)とが設けられている。この往復容器棚は、容器棚53aにより突出部135と対向する位置に位置決めされた試薬容器51を矢印g方向に往復搬送する。
【0138】
試薬容器51が試薬庫52a内から突出部135に移動すると、内蓋83eがガイド面112aにより押圧され、開放位置に移動される。これにより、内蓋83eの穴部115と試薬容器51の開口部51bとが対向して、図33に示すように、試薬容器51の開口部51bが開放される。
【0139】
一方、試薬容器51が突出部135内から試薬庫52aに移動すると、内蓋83eがガイド面112aにより押圧されて、開放位置に移動される。これにより、内蓋83eの穴部115と試薬容器51の開口部51bとがずれ、図34に示すように、試薬容器51の開口部1bが閉塞される。
【0140】
すなわち、試薬容器51が突出部135内において往復搬送されると、その往路と復路で内蓋83eが移動し、試薬容器51の開口部51bが開閉される。従って、このような構成であっても、第6実施形態と同様の効果が得られる。なお、本実施形態では、試薬容器51の往復運動を利用しているため、案内部材110aのガイド面112aの形状は、第6実施形態に係るガイド面112の半分で足りる。
【0141】
(第11実施形態)
次に、図35〜図37を用いて本発明の第11実施形態を説明する。
【0142】
図35は本発明の第11実施形態に係る案内部材110bと蓋部材71eの概略的な平面図、図36は同実施形態に係る内蓋83eが閉塞位置にあるときの内蓋83eと開口部51bとの関係図、図37は同実施形態に係る内蓋83eが開放位置にあるときの内蓋83eと開口部51bとの関係図である。
【0143】
本実施形態に係る分析装置では、試薬容器51の開口部51bを閉塞するときに試薬容器51の回転運動が利用され、試薬容器の開口部51bを開放するときには開放装置138が使用される。
【0144】
すなわち、図35に示すように、本実施形態に係る案内部材110bは、試薬庫52の軸線側に内蓋83eを閉塞位置に移動させる1つのガイド面112aを備え、試薬庫52の壁部側に内蓋83eを開放位置に移動させる開放装置138を備えている。
【0145】
開放装置138は、試薬容器51が分注位置に位置決めされると、試薬庫52の内側に突出し、その先端部で内蓋83eを試薬庫52の中心側に移動させる。これにより、内蓋83eが開放位置に移動して、図37に示すように試薬容器51の開口部51bが開放される。このような構成であっても、第6実施形態と同様の効果が得られる。
【0146】
(第12実施形態)
次に、図38を用いて本発明の第12実施形態を説明する。
【0147】
図38は本発明の第12実施形態に係る案内部材110bと蓋部材71eの概略的な平面図である。
【0148】
図38に示すように、本実施形態に係る分析装置は、第11実施形態に係る円筒状の試薬庫52の代わりに、直方体状の試薬庫52aを備えている。この試薬庫52aは、第8実施形態と同じものであるが、その内部には直動式の容器棚53aが設けられている。
【0149】
この容器棚53aは、複数の試薬容器51を保持し、これらの試薬容器51を矢印m方向に往復搬送する。内蓋83eの移動は、この試薬容器51の直線運動を利用して、第11実施形態と同じ要領で行われる。このような構成であっても、第11実施形態と同じ効果が得られる。
【0150】
なお、前記各実施形態では、シール材74に柔軟なラバー製の素材が使用されている。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、シール材74に硬い素材が使用されることもある。その場合、シール材74の内周面には、蓋部材が口部51aに完全に装着されたときに内蓋の向きが所望の向きとなるようにネジ溝が形成される。このようにすれば、蓋部材が完全に装着されれば、内蓋の方向も正しく設定されるから、蓋部材の装着作業が簡単化する。
【0151】
本発明は、前記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、前記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0152】
51…試薬容器、51b…開口部、53…容器棚、53a…容器棚、71…蓋部材、71a…蓋部材、71b…蓋部材、71c…蓋部材、71d…蓋部材、71e…蓋部材、71f…蓋部材、83…内蓋、83a…内蓋、83b…内蓋、83c…内蓋、83e…内蓋、85…押圧部材、92…開閉機構、92a…開閉機構、110…案内部材、110a…案内部材、110b…案内部材、115…穴部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料と試薬を反応させて前記試料を分析する分析装置において、
前記試薬を格納するとともに、前記試薬を出し入れするための開口部を備えた試薬容器と、
前記試薬容器の開口部に対し移動可能に設けられ、前記開口部を開閉するための蓋体と、
前記試薬容器を移動させる棚と、
前記試薬容器の動きを利用して前記開口部に設けられる前記蓋体を移動させることにより、前記開口部を開閉させる開閉手段と、
を具備し、
前記蓋体は穴部を備え、
前記開閉手段は、分注位置に設けられ且つガイド面が形成された案内部材を有し、前記試薬容器が分注位置に接近するのに伴い、前記蓋体は前記ガイド面により前記穴部が前記開口部と対向する開放位置に押されることで、前記開口部を開放し、前記試薬容器が分注位置から遠ざかるのに伴い、前記蓋体は前記ガイド面により前記穴部が前記開口部とずれる閉塞位置に押されることで、前記開口部を閉塞することを特徴とする分析装置。
【請求項2】
前記試薬容器の動きは、回転運動であることを特徴とする請求項1記載の分析装置。
【請求項3】
前記試薬容器の動きは、直線運動であることを特徴とする請求項1記載の分析装置。
【請求項4】
前記開閉装置は、前記蓋体が閉塞位置に位置するときに前記蓋体を押圧するための押圧部材と、前記蓋体が開放位置に移動したときに前記押圧部材の蓋体に対する押圧を解除するための解除部材を有することを特徴とする請求項2記載の分析装置。
【請求項5】
試料と試薬を反応させて前記試料を分析する分析装置に設置される試薬容器において、
前記試薬容器の開口部に対し移動可能に設けられ、穴部を有する蓋体を備え、
前記試薬容器が分注位置に接近するのに伴い、前記分注位置に設けられた案内部材が有するガイド面により、前記穴部が前記開口部と対向する開放位置に押されることで、前記開口部を開放し、前記試薬容器が分注位置から遠ざかるのに伴い、前記蓋体は前記ガイド面により前記穴部が前記開口部とずれる閉塞位置に押されることで、前記開口部を閉塞することを特徴とする試薬容器。
【請求項6】
試料を分析する分析装置にて前記試料と反応させるための試薬を含む試薬容器を保管する試薬保管装置において、
前記試薬の分注位置に設けられ、ガイド面を有する案内部材を備え、
前記試薬容器が分注位置に接近するのに伴い、前記ガイド面により、前記試薬容器の開口部に対し移動可能に設けられた蓋体が有する穴部が、前記開口部と対向する開放位置に押されることで、前記開口部を開放し、前記試薬容器が分注位置から遠ざかるのに伴い、前記蓋体は前記ガイド面により前記穴部が前記開口部とずれる閉塞位置に押されることで、前記開口部を閉塞することを特徴とする試薬保管装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【公開番号】特開2011−13235(P2011−13235A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−233888(P2010−233888)
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【分割の表示】特願2005−168381(P2005−168381)の分割
【原出願日】平成17年6月8日(2005.6.8)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】