説明

分析装置制御システム及び分析装置制御プログラム

【課題】分析スケジュールファイルに登録された分析に従って分析を順次実行する分析装置の制御行う分析装置制御システムにおいて、各分析スケジュールファイルに対応してモニタ上に表示される分析スケジュールウィンドウが複数開かれているような場合には、各分析スケジュールファイルの状況が確認し難い。
【解決手段】モニタ上に表示される分析スケジュールウィンドウの一部の領域に、状況表示領域を設定しておく。状況表示手段はモニタ上に表示されている各分析スケジュールウィンドウの状況表示領域に、対応する分析スケジュールファイルに関する状況を表示する。とりわけこの状況を文字列、図形、色等を利用して表現することにより、視認性を向上させることが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析装置の制御を行うシステム及びそのプログラムに関する。なお、本発明では各種の分析装置や計測装置をまとめて「分析装置」と称する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ技術やネットワーク技術の発展に伴い、分析装置の制御は、その分析装置と接続されたコンピュータで所定のプログラムを実行させることにより実行することが多くなっている。(このようなプログラムの例として非特許文献1に記載のソフトウェアがある。)このように分析装置本体ではなく外部のコンピュータから分析装置の制御を行うシステム形態を採用することにより、複数の分析装置を集中的に管理することができるようになったり、オペレータが分析装置の設置箇所まで逐一足を運ぶ必要が無くなったりするというメリットがある。こうしたメリットは分析装置の台数が多くなればなるほど顕著となる。
【0003】
分析装置の種類によっては、また分析の形態によっては、分析を一つ一つ個別に実行するのではなく、関連のある分析をまとめて連続的に実行する場合がある。このような形態で分析が行われる場合、上記のような分析制御プログラムでは、予め複数の分析を分析スケジュールファイルに登録し、その分析スケジュールファイルに沿って一連の分析が実行されてゆく。
【0004】
【非特許文献1】「LabSolutionsシリーズ ワークステーション LCsolution」、[online]、株式会社島津製作所、[平成19年8月7日検索]、インターネット<URL: http://www.an.shimadzu.co.jp/products/data-net/lcsol1>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような、関連のある分析をまとめて連続的に実行する形態で分析を行う場合、その制御を行う分析制御プログラムでは、一又は複数の分析装置を制御するために分析スケジュールファイルを前もって複数準備しておき、それらを同時に或いは順次実行させるという処理が行われる。そこで、従来の分析制御プログラムでは、図4に示すようにこれらの分析スケジュールファイルに対応したウィンドウ(「分析スケジュールウィンドウ」と呼ぶ)をモニタ上に同時に表示(例えば並べて表示したり、重ねて表示したり)する。図4の例では分析管理ウィンドウ内に検体1、検体2、検体3のそれぞれに関する分析スケジュールウィンドウが表示されている。
【0006】
通常、各分析スケジュールファイルにはその分析の進行状況が表示されるが、図4に示すように従来の分析制御プログラムでは、各分析スケジュールファイルの状況は各分析スケジュールウィンドウ上において、実行中の分析の欄やオペレータによって選択された分析の欄の一部に表示されるのみであった。そのため、各分析スケジュールファイルの現在の状況をすぐに認識し難いという問題があった。また、図4に描かれているように、分析管理ウィンドウ内に複数の分析スケジュールウィンドウを開いている場合、モニタの表示領域が限られているため、これらの分析スケジュールウィンドウを重ねて表示させることがよくある。そうすると、重ね合わせの背面に位置する分析スケジュールウィンドウの文字は、それよりも前面に配置された他の分析スケジュールウィンドウの存在によって見えなくなってしまう。例えば図4の例では検体1に関する情報は、検体2に関する分析スケジュールウィンドウによって隠されてしまっており見ることができない。また、検体2に関する分析スケジュールウィンドウでは現在検体2−3について進行状況として「実行中」との文字列が表示されているが、時間経過とともに分析処理が進行すると、進行状況が検体3に関する分析スケジュールウィンドウの背面に隠れてしまい、見ることができなくなってしまう。こういった場合、オペレータはマウスやキーボードを用いて所望の分析スケジュールウィンドウをアクティブ(選択状態)とし、最前面に表示させるという操作を行わねばならず、非常に面倒であった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために成された本発明に係る分析装置制御システムは、
分析スケジュールファイルに登録された一又は複数の分析に従って分析を順次実行する分析装置の制御を行うためのシステムであって、
前記分析スケジュールファイルに対応した一又は複数の分析スケジュールウィンドウをモニタ上に表示するテーブル表示手段と、
モニタ上に表示されている各分析スケジュールウィンドウの一部領域に設定された状況表示領域に、対応する分析スケジュールファイルの実行情報を表示する状況表示手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0008】
更に、本発明に係る分析装置制御システムは、
前記状況表示手段が、分析スケジュールファイルの実行情報を、文字列、図形、色のいずれか、又はこれらの一部又は全ての組み合わせによって表示する構成とすることが好適である。
【0009】
また、本発明に係る分析装置制御プログラムは、
分析スケジュールファイルに登録された一又は複数の分析に従って分析を順次実行する分析装置の制御を行うためのコンピュータに使用されるプログラムであって、該コンピュータを、
前記分析スケジュールファイルに対応した一又は複数の分析スケジュールウィンドウをモニタ上に表示するテーブル表示手段と、
モニタ上に表示されている各分析スケジュールウィンドウの一部領域に設定された状況表示領域に、対応する分析スケジュールファイルの実行情報を表示する状況表示手段と、
して機能させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る分析装置制御システムによれば、状況表示手段によって、分析スケジュールウィンドウに設けられた一部の領域に設定された状況表示領域に、対応する分析スケジュールファイルに関する実行情報が表示される。従って、複数の分析スケジュールウィンドウの一部が互いに重ねて配置されていたとしても、その状況表示領域さえモニタに表示されているならば(即ちオペレータに見えているならば)、オペレータはマウスやキーボードを操作して分析スケジュールウィンドウをアクティブにすることなく、各分析の状況を知ることができる。
【0011】
また、状況表示手段が状況表示領域に分析スケジュールファイルに関する実行情報を、文字列、図形、色のいずれか、又はこれらの一部又は全ての組み合わせによって表示するようにすることにより、分析スケジュールファイルの状況を一層わかりやすく表示させることができる。特に、現在の状況が図形や色を利用して表示されている場合には、オペレータは直観的にその状況を認識することが可能となる。更にこの場合、オペレータは文字を読む必要がなく状況表示領域に表示されている図形や色のみを認識すればよいから、多数の分析スケジュールウィンドウが同時に開かれていて、それらの一部が互いに重なりあっているような場合であっても、オペレータは各分析スケジュールファイルの状況を直ちに知ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る分析装置制御システムの一実施例について、図面を参照しつつ説明を行う。
【0013】
図1に本発明の一実施例に係る分析装置制御システムのハードウェア構成を示す。中央演算処理装置であるCPU10にメモリ12、CRT(Cathode Ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)等から成るモニタ14、キーボードやマウスなどを含む入力部16、ハードディスクやフラッシュメモリ等から成る記憶部20が接続されている。記憶部20には、分析装置制御プログラム21、テーブル管理部22、オペレーティングシステム(OS)23等が記憶されている。
【0014】
また、この分析装置制御システムは外部の一又は複数の分析装置(非図示)に接続されており、分析装置との間で各種のデータを授受することが可能となっている。なお、分析装置との接続はLAN(Local Area Network)などを介して行ってもよいし、直接的に接続してもよい。すなわち両者はいかなる形態で接続されていても構わない。また、分析装置制御システムが分析装置の一部として組み込まれていても良い。
なお、本システムと接続される分析装置の種類は特に限定はされないものの、基本的には、複数の分析から成る一連の分析が連続的に実行される形態の分析を実行可能な分析装置とする。
【0015】
図1に描かれているように、分析装置制御プログラム21には、テーブル表示手段24および状況表示手段25が含まれているが、これらはいずれもCPU10が分析装置制御プログラム21を実行することによってソフトウェア的に具現化される構成である。
【0016】
テーブル管理部22には、一連の分析から成る分析スケジュールファイルが一又は複数保存されている。また、テーブル管理部22には各分析スケジュールファイルの実行情報(例えば分析の進行状況や、分析の結果取得された値など、分析スケジュールファイルに関する各種の情報)が含まれていてもよい。ただし、分析スケジュールファイルの実行情報は、テーブル管理部22とは別のデータ保存領域等において管理することもできる。
【0017】
以下、オペレータが本実施例に係る分析装置制御システムを用いて分析装置の制御を行う際の、本実施例に係る分析装置制御システムの動作(分析装置制御プログラム21の動作)の例について説明する。
【0018】
オペレータが入力部16を適宜に操作することにより分析装置制御プログラム21の実行命令を入力し、次いで特定の分析スケジュールファイルを開く命令を入力すると、CPU10(テーブル表示手段24)は、図2に示すようにモニタ14上における分析管理ウィンドウ30内に、指定された分析スケジュールファイルに対応する分析スケジュールウィンドウを開く。図2の例では、検体1、2、3のそれぞれに関する分析スケジュールファイルに対応した分析スケジュールウィンドウ41、42、43がモニタ上に表示されている。
【0019】
本発明に係る分析装置制御システムでは、分析スケジュールウィンドウの一部の領域に、従来より存在している分析リスト表示領域R2に加えて状況表示領域R1が設定されている。図2に示す実施例では、この状況表示領域R1は分析リスト表示領域R2の上部に設けられているが、本発明では状況表示領域R1を分析スケジュールウィンドウ内のどの領域に、またどのような形態(サイズや形状)で設定するかは特に限定されない。とはいえ、視認性を向上させるため、一般的なオペレータにとって見やすい程度の表示サイズを備えていることが望ましい。
ただし、分析スケジュールウィンドウの状況表示領域の少なくとも一部は、複数の分析スケジュールウィンドウがモニタ上で互いの一部が重なり合って表示されている場合であっても、オペレータに視認される必要がある。そこで、状況表示領域は分析スケジュールウィンドウの縦方向又は横方向の一部を横断するように設定しておくのが好適である。一般のオペレーティングシステムやアプリケーションソフトウェアでは、複数のウィンドウを連続的に開いた時には、例えば図2に示すように新たに開かれたウィンドウが直前に開かれたウィンドウの斜め前方に表示されてゆくから、状況表示領域が分析スケジュールウィンドウの縦方向や横方向の少なくともいずれかの方向を横断するように設定しておくことにより、分析スケジュールウィンドウを開いた時点で状況表示領域が見えないという状態が防止される。
【0020】
そして、テーブル表示手段24が処理を行うと同時に状況表示手段25はテーブル管理部22を参照し、モニタ14上に表示されている各分析スケジュールウィンドウの状況表示領域R1に分析スケジュールファイルの実行情報を表示する。
図2に示す例では状況表示手段25は、検体1についての分析スケジュールファイルに関し、現在検体1−3が分析実行中であることに基づき、分析スケジュールウィンドウ41の状況表示領域R1に「検体1−3(5検体中3検体目)」及び「分析中」という文字列に加え、分析中であることを示す三角形の図形を表示している。
また、状況表示手段25は、検体2についての分析スケジュールファイルに関し、現在検体2−2の分析が一時停止中であることに基づき、分析スケジュールウィンドウ42の状況表示領域R1に「検体2-2(5検体中2検体目)」及び「分析一時停止中」という文字列に加え、分析が一時停止していることを示すポーズマークの図形を表示している。
【0021】
また、検体3についての分析スケジュールファイルに関する分析は完了している。このことに基づき状況表示手段25は、分析スケジュールウィンドウ43内の状況表示領域R1に分析停止中である旨を示す正方形の図形を表示する。また、分析スケジュールウィンドウ43の分析リスト表示領域R2において、検体3−4の行が選択されていることに基づき、状況表示手段25は状況表示領域R1に「検体3−4」及びその検体3−4の分析結果である「TOC:35.6mg/L」を表示している。
【0022】
状況表示手段25は、分析が進行したり停止したりする度に、また適宜なタイミングで以て、分析スケジュールウィンドウの状況表示領域R1に表示する実行情報を更新する。例えば検体1について図2に示す状態から分析が進行し、検体1−4の分析が開始されると、新たに「検体1-4(5検体中4検体目)」との文字列を状況表示領域R1に更新表示させる。
また、オペレータが入力部16を操作して、分析リスト表示領域R2において現在実行中ではない検体の行を選択した場合には、その検体に関する実行情報(例えば分析結果の値など)を状況表示領域R1に表示する。
【0023】
図3は、状況表示手段25が、モニタ上に表示される分析スケジュールウィンドウの状況表示領域において、対応する分析スケジュールファイルに関する実行情報を更に色で以て識別表示している例である。(図3の例では模様で以て色の違いを表している。)このように色を用いることにより、分析中、分析一時停止中、分析停止中といった進行状況をオペレータがより一層認識しやすくなる。
【0024】
以上、本発明に係る分析装置制御システムについて実施例に沿って説明を行ったが、上記は一例に過ぎないことは明らかであり、本発明の精神内において適宜に改良や変更、追加を行ったとしても構わない。
【0025】
例えば上記実施例では分析スケジュールウィンドウがモニタ上における分析管理ウィンドウ内に表示されるとしたが、分析スケジュールウィンドウが表示される箇所は分析管理ウィンドウ内に限定されるものではなく、モニタ上の任意の箇所に表示されたとしても構わない。
【0026】
また、本発明に係る分析装置制御システムには、モニタ上に表示されている分析スケジュールウィンドウ同士の重なり工合を識別する重なり識別手段と、分析スケジュールウィンドウや状況表示領域のサイズ又は位置を変更するサイズ変更手段と、を更に設けることもできる。
この場合、重なり識別手段により、ある分析スケジュールウィンドウの状況表示領域が表示されていない(オペレータが視認することができない)ことが検出されたことに基づき、サイズ変更手段が、状況表示領域の少なくとも一部が(例えば少なくとも図形の全体や色が)表示される程度に当該分析スケジュールウィンドウの表示位置や表示サイズを変更したり、分析スケジュールウィンドウ内における状況表示領域の位置を変更したりすればよい。
この構成により、オペレータは一層確実に分析の状態を知ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の分析装置制御システムの一実施例のハードウェア構成を示す図。
【図2】分析条件登録画面30における分析スケジュールウィンドウの表示例。
【図3】分析スケジュールウィンドウの他の表示例。
【図4】従来の分析装置制御システムにおける分析スケジュールウィンドウの表示例。
【符号の説明】
【0028】
10…CPU
12…メモリ
14…モニタ
16…入力部
20…記憶部
21…分析装置制御プログラム
22…テーブル管理部
23…OS
24…テーブル表示手段
25…状況表示手段
30…分析管理ウィンドウ
41、42、43…分析スケジュールウィンドウ
R1…状況表示領域
R2…分析リスト表示領域
NW…ネットワークケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析スケジュールファイルに登録された一又は複数の分析に従って分析を順次実行する分析装置の制御を行うためのシステムであって、
前記分析スケジュールファイルに対応した一又は複数の分析スケジュールウィンドウをモニタ上に表示するテーブル表示手段と、
モニタ上に表示されている各分析スケジュールウィンドウの一部領域に設定された状況表示領域に、対応する分析スケジュールファイルの実行情報を表示する状況表示手段と、
を備えたことを特徴とする分析装置制御システム。
【請求項2】
前記状況表示手段が、分析スケジュールファイルの実行情報を、文字列、図形、色のいずれか、又はこれらの一部又は全ての組み合わせによって表示する
ことを特徴とする請求項1に記載の分析装置制御システム。
【請求項3】
分析スケジュールファイルに登録された一又は複数の分析に従って分析を順次実行する分析装置の制御を行うためのコンピュータに使用されるプログラムであって、該コンピュータを、
前記分析スケジュールファイルに対応した一又は複数の分析スケジュールウィンドウをモニタ上に表示するテーブル表示手段と、
モニタ上に表示されている各分析スケジュールウィンドウの一部領域に設定された状況表示領域に、対応する分析スケジュールファイルの実行情報を表示する状況表示手段と、
して機能させることを特徴とする分析装置制御プログラム。
【請求項4】
前記状況表示手段が、分析スケジュールファイルの実行情報を、文字列、図形、色のいずれか、又はこれらの一部又は全ての組み合わせによって表示する
ことを特徴とする請求項3に記載の分析装置制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−42150(P2009−42150A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−209240(P2007−209240)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】