説明

分析装置

分析の結果を読み取るための分析結果読み取り機器であって、a)第1および第2の制御閾値と、b)検体の存在及び/又は量を示す検体測定信号を処理するとともに、分析が満足に行なわれたかどうかを示す制御信号を処理するためのデータ処理手段とを備えることにより、分析測定の開始後、時間tまで、制御信号と第1の制御閾値とを比較して、制御信号が第1の制御閾値を超え或いは第1の制御閾値に等しい場合には分析が満足に行なわれていたことを判定し、制御信号が第1の制御閾値よりも小さい場合には分析測定を続け、また、時間t>tにおいて、制御信号と第2の制御閾値とを比較して、制御信号が第2の制御閾値を超え或いは第2の制御閾値に等しい場合には分析結果を与える、分析結果読み取り機器が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体の存在または量を判定するための分析装置、キット、および、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
流体サンプル中の検体の検出のために簡単な側方流免疫学的分析装置が開発されて商品化されてきた(例えば、EP第291194号参照)。そのような装置は、一般に、対象の検体に結合できる乾燥した可動性標識結合試薬と、この標識結合試薬よりも下流側の検出域に設けられる検体にも結合できる固定化結合試薬とを備える多孔質担体を備える。検出域での固定化標識結合の検出は、サンプル中の検体の存在の表示を与える。分析装置は、検査が満足に行なわれていたことを示すための制御域を更に組み込む。制御域は、一般に、検出域よりも下流側に位置されており、標識結合試薬のための固定化結合試薬を備えることができる。
【0003】
EP第1484613号は、光学検出手段を備える、検体の判定のための電子分析装置を開示しており、前記分析は、検体測定域からの信号を1つ以上の閾値に対して経時的に測定するとともに、結果をユーザに対して提供する。
【0004】
サンドイッチ免疫測定法は、しばしば、検体を検出する際に一般に好まれる免疫測定法である。しかしながら、サンドイッチ分析は、例えば、2つの異なる結合パートナーの同時結合を可能にするには、十分大きくない可能性があるハプテンなどの小分子の場合には常に可能であるとは限らない。サンドイッチ免疫測定法を用いる典型的な側方流装置を使用して生成される用量反応曲線は、より高い検体レベルで曲線が水平状態に達するポイントまで、検体の増大に伴って信号レベルの増大を示す。更に高い検体レベルでは、標識試薬に未だ拘束されていなかった検体の検出域での優先的な捕捉に起因して、信号が減少し始める。この現象はフック効果として知られている。このように、サンドイッチ免疫測定法は、高い検体レベルで観察される信号量または信号強度が低い検体レベルで観察されるそれと同じ、或いは更にはそれを下回ることができるという事実に起因して、限られた分析範囲を示す。
【0005】
したがって、特に定性的態様以外で高濃度の検体を検出するためには、別の方法または分析装置を使用することが必要である。
【0006】
WO第2005052716号は、高濃度レベルの検体の検出のための分析装置を開示しており、該分析装置は、検体に結合できる捕捉試薬を含む掃気域を備える。これは、検体の一部が検出域で検出されるのを妨げるという効果を有するとともに、分析の感度を下げる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、改良された制御を有する検体の検出のための分析装置を提供することである。特に、広範な濃度範囲にわたる検体の検出のための改良された制御を有する分析装置を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様によれば、本発明は、分析の結果を判定するための分析読み取り機器であって、
a)第1および第2の制御閾値と、
b)検体の存在及び/又は量を示す検体測定信号を処理するとともに、分析が満足に行なわれたかどうかを示す制御信号を処理するためのデータ処理手段と、
を備えることにより、
分析測定の開始後、時間tまで、制御信号と第1の制御閾値とを比較して、制御信号が第1の制御閾値を超え或いは第1の制御閾値に等しい場合には分析が満足に行なわれていたことを判定し、制御信号が第1の制御閾値よりも小さい場合には分析測定を続け、また、時間t>tにおいて、制御信号と第2の制御閾値とを比較して、制御信号が第2の制御閾値を超え或いは第2の制御閾値に等しい場合には分析結果を与える、分析読み取り機器を提供する。
【0009】
第2の態様によれば、本発明は、液体サンプル中の検体の存在及び/又は量を与えるための分析装置であって、
a)本発明の第1の態様に係る分析結果読み取り機器と、
b)液体サンプルがそれに沿って流れることができる1つ以上の分析流路と、
を備え、前記1つ以上の流路は、
検体の存在及び/又は量を示す標識結合試薬を固定するための検出域と、
分析が満足に行なわれていたことを示すための制御域と、
を備える、分析装置を提供する。
第3の態様によれば、本発明は、分析の結果を判定する方法であって、
a)検体の存在及び/又は量を示す検体測定信号と、分析が満足に行なわれたかどうかを示す制御信号とを測定し、
b)分析測定の開始後、時間tまで、制御信号が第1の制御閾値を超え或いは第1の制御閾値に等しい場合には分析が正しく行なわれていたことを判定し、制御信号が第1の制御閾値よりも小さい場合には分析信号測定を続け、また、時間t>tにおいて、制御信号と第2の制御閾値とを比較して、制御信号が第2の制御閾値を超え或いは第2の制御閾値に等しい場合には分析結果を与える、
ことを含む方法を提供する。
【0010】
本発明の第1、第2、および、第3の態様に係る分析結果読み取り機器、装置、および、方法は第1の測定閾値を備えることができる、この場合、検体測定信号が測定閾値と比較され、検体測定信号が測定閾値に等しい或いは測定閾値よりも大きい場合には分析結果が与えられる。分析結果は時間t<tfdで与えられることができ、この場合、tfdは、分析の全開発時間、すなわち、分析が測定されている最大時間である。
【0011】
分析結果は、最小分析開発時間tmdが経過した後においてのみ与えられることができる。tmdはゼロであることができる。
【0012】
したがって、検体測定信号が測定閾値を超える或いは測定閾値に等しい場合、および、制御信号が第1の制御閾値を超える或いは第1の制御閾値に等しい場合、分析結果は、早期に、すなわち、分析の全開発時間よりも短い時間で与えられることができる。
【0013】
測定閾値は検体の特定の濃度またはレベルを示す。測定閾値が検体のゼロレベルを示すことができる。
【0014】
一実施形態によれば、tfdで制御信号が第2の制御閾値と比較され、また、任意の時間t<tfdで制御信号が第1の制御閾値と比較される。
【0015】
分析の過程にわたって、制御信号および検体測定信号が連続的に測定されてもよい。分析測定の開始後、時間tまで、制御信号が第1の制御閾値を超え或いは第1の制御閾値に等しい場合、読み取り機器または装置は、測定信号が測定閾値を超えたか或いは測定閾値に等しいかどうかを確かめ、この場合には、早期の分析結果が与えられる。制御信号が第1の制御閾値を超えない場合には、分析装置が制御信号を監視し続け、早期の結果は、測定信号が測定閾値よりも大きい場合であっても、制御信号が第1の制御閾値を超える或いは第1の制御閾値に等しくなるまで提供されない。分析時間t>tでは、制御信号が第2の制御閾値と比較され、制御信号が第2の制御閾値を超え或いは第2の制御閾値に等しい場合には分析結果が提供する。制御信号が第2の制御閾値よりも小さい場合には、分析装置は、分析が正しく行なわれていなかったという表示を提供する。
【0016】
第1および第2の制御閾値は互いに異なる。第1の制御閾値は第2の制御閾値より大きくあることができる。制御閾値のために選択される値は、変化することができ、また、特定の分析および判定されるべき検体に依存する。
【0017】
本発明の第1、第2、および、第3の態様に係る分析結果読み取り機器、装置、および、方法は、最小検体閾値を更に備えることができる。この場合、測定信号が最小検体閾値時間tmaまでに最小閾値より小さければ、測定信号が全分析開発時間までに決して測定閾値に達しないことが判定される。これは、非常に低い或いは存在しない検体濃度を有する液体サンプルのケースを表わす。このケースでは、早期の否定的表示、すなわち、検体の不存在または特定の最小レベルを上回る検体の不存在の表示が時間t<tfdにおいて提供されることができる。
【0018】
本発明の第1、第2、および、第3の態様に係る分析結果読み取り機器、装置、および、方法は、3つ以上の制御閾値を備えることができる。第1および第2の閾値を与える代わりとして、本発明の第1、第2、および、第3の態様に係る分析結果読み取り機器、装置、および、方法は、分析測定の過程中においてその値が変化する可変制御閾値を備えることができる。
【0019】
したがって、本発明の第4の態様によれば、分析の結果を読み取るための分析結果読み取り機器であって、
a)分析測定の時間にわたってその値が変化する可変制御閾値と、
b)検体の存在及び/又は量を示す検体測定信号を経時的に処理するとともに、分析が満足に行なわれたかどうかを示す制御信号を経時的に処理するためのデータ処理手段と、
を備えることにより、
分析の測定中の任意の特定の時間に、制御信号と可変制御閾値とを比較して、制御信号が可変制御閾値を超え或いは可変制御閾値に等しい場合には分析が満足に行なわれていたことを判定する、分析結果読み取り機器が提供される。
第5の態様によれば、液体サンプル中の検体の存在及び/又は量を与えるための分析装置であって、
a)第4の態様に係る分析結果読み取り機器と、
b)液体サンプルがそれに沿って流れることができる1つ以上の分析流路と、
を備え、前記1つ以上の流路が、
検体の存在及び/又は量を示す標識結合試薬を固定するための検出域と、
分析が満足に行なわれていたことを示すための制御域と、
を備える、分析装置が提供される。
【0020】
分析装置は、検出域で固定され得る可動性標識試薬を備えることができる。試薬は検出域よりも上流側で提供されることができる。標識結合試薬は乾燥状態で提供されることができる。
【0021】
検出域は、標識結合試薬を固定できる固定化結合試薬を備えることができる。
あるいは、分析装置は、可動性標識結合試薬および第2の結合試薬を備えることができ、この場合、可動性標識結合試薬−検体−第2の結合試薬複合体を結合できる試薬が検出域において固定化された形態で提供されることができ、第2の結合試薬は検体および固定化試薬の両方に結合できる。例えば、検出域で固定される試薬は、ストレプトアビジンまたは抗ビオチンなどの結合パートナーであることができ、それにより、固定化標識結合試薬−検体−第2の結合試薬複合体(例えば、ビオチン−ストレプトアビジン複合体)が検出域で形成される。
【0022】
あるいは、検出域は、可動性標識結合試薬−検体−第2の結合試薬複合体を固定できるフィルタを備えることができる。このフィルタは、標識結合試薬がフィルタを通過できるような寸法を有し、また、第2の結合試薬は、フィルタが存在する任意の標識結合試薬−検体−第2の結合試薬複合体を捕捉できるようにフィルタを通ることができない粒子で標識化されることができ、捕捉試薬に複合化されない任意の標識結合試薬はフィルタを通過できる。
【0023】
制御域での信号の測定は、分析試験が満足に行なわれていたかどうか、すなわち、試薬が検査装置内に存在したかどうかを示すとともに、検査の実行中に試薬が動けるようになって流路に沿って移送されたことを示す。制御域は、装置内の試薬が免疫化学的相互作用を成し得ることも示すことができ、それにより、装置の化学的完全性が確かめられる。これは、特定の温度範囲内における乾燥状態下での装置の保管および輸送を考慮するときに重要である。制御域は、一般に、検出域よりも下流側に位置される。制御域は、標識結合試薬のための固定化結合試薬を備えることができる。標識結合試薬は、検出域に結合する同じ結合試薬であることができ、あるいは、異なる結合試薬であることができる。制御域の固定化結合試薬は、例えば、同種中にもたらされる標識結合試薬に対する抗種抗体であることができ、例えば、標識抗体がマウスハイブリドーマを使用して得られた抗体である場合には“抗マウス”抗体であることができる。
【0024】
用語“結合試薬”とは、結合対、すなわち、2つの異なる分子の構成要素のことであり、分子のうちの一方は、特に化学的または物理的手段によって第2の分子と結合する。2つの分子は、これらの2つの分子が同様の特性を有する他の分析成分からそれらの結合パートナーを区別できるように互い結合されるという意味で関連する。特定の結合対の構成要素は、リガンドおよびレセプタ(アンチリガンド)や、結合対要素および結合対パートナーなどと称される。分子は、分子の凝集のための結合対要素であることもできる。例えば、第2の抗体とその対応する抗原との免疫複合体に抗してもたらされる抗体が、免疫複合体のための結合対要素となるように考慮されることができる。結合試薬は、抗原に結合できる抗体または抗体フラグメントを備えることができる。
【0025】
抗原および抗体結合対要素に加えて、他の結合対要素としては、限定を伴わない例として、ビオチンおよびアビジン、炭水化物およびレクチン、相補的なヌクレオチド配列、相補的なペプチド配列、エフェクターおよびレセプタ分子、酵素補助因子および酵素、酵素阻害薬および酵素、ペプチド配列および該配列に対して特異的な抗体またはタンパク質全体、ポリマー酸および塩基、色素およびタンパク質結合剤、ペプチドおよび特異タンパク質結合剤(例えば、リボヌクレアーゼ、S−ペプチド、および、リボヌクレアーゼS−タンパク質)などが挙げられる。また、特異結合対は、当初の特異結合要素の類似体である構成要素を含むことができる。
【0026】
標識結合試薬との関連で使用される際の“標識”とは、視覚手段または機器手段によって検出可能な信号を生成できる任意の物質のことである。本発明で用いるのに適する様々な標識としては、例えば光学的に検出できる信号を化学的または物理的な手段によって生成する標識が挙げられる。そのような標識としては、酵素および基質、色原体、触媒、蛍光化合物、化学発光化合物、電気活性種、色素分子、放射性標識、および、粒子標識が挙げられる。検体自体が検出可能な信号を本質的に生成できてもよい。標識が結合試薬に共有結合されてもよい。
【0027】
標識は、金、銀などの粒子、セレンまたはテルルなどのコロイド非金属粒子、色素または色素ゾルを組み入れる高分子粒子などの染色または着色粒子を備えることができる。色素は、任意の適した色、たとえば青色であることができる。色素が蛍光であることができる。色素ゾルは、Foron Blue SRP (Sandoz)およびResolin Blue BBLS (Bayer)などの市販の疎水性染料から生成されることができる。適した高分子標識は、ポリスチレン、ポリビニルトルエン、ポリスチレン−アクリル酸、および、ポリアクロレインなどの合成高分子の範囲から選択されることができる。使用されるモノマーは通常は不水溶性であって水溶性界面活性剤中で乳状化され、それにより、モノマーミセルが形成され、該モノマーミセルは、その後、エマルジョンへの開始剤の付加によって重合させるべく誘発される。略球状の高分子粒子が生成される。典型的な実施形態によれば、標識は青色高分子粒子である。
【0028】
用語“分析流路”とは、液体を第1の位置から第2の位置へと運ぶことができ且つ例えば毛細管チャンネル、ミクロ流体経路、または、側方流多孔質担体などの多孔質担体であることができる基体のことである。多孔質担体は、直線配置または積層配置で重なりあってもよい或いは流体的に接続される1つまたは複数の多孔質担体材料を備えることができる。多孔質担体は同じであることができ或いは異なることができる。第1および第2の流路が別個の基体に設けられることができ、あるいは、これらの流路が共通の基体に設けられることにより、第1の分析の流路に沿って運ばれている液体が第2の分析の流路へと乗り換えるようにすることができる。例えば、第1および第2の流路が互いから分離されるように第1および第2の分析が同じ多孔質担体において行なわれることができる。これは、例えば、多孔質担体の一部をレーザカットしてそれを無孔質にし、したがって、第1および第2の流路を分離することにより達成されることができる。更なる別の方法として、第1および第2の検出域が同じ流路に略並列配置で設けられ、それにより、いずれの検出域も他方より下流側に設けられないようにすることができる。
【0029】
特に、流路は側方流多孔質担体を備えることができる。分析の検出域および標識結合試薬は異なる担体材料にそれぞれ設けられてもよい。検出域を設けるために多孔質担体として使用されてもよい適切な材料としては、ニトロセルロース、アセテート繊維、セルロースまたはセルロース誘導体、ポリエステル、ポリオレフィン、または、ガラス繊維が挙げられる。多孔質担体がニトロセルロースを備えることができる。これは、事前の化学的処理を伴うことなく結合試薬を強固に固定できるという利点を有する。例えば多孔質固相材料が紙を備える場合には、例えばCNBr、カルボニルジイミダゾール、または、トレシルクロリドを使用する化学的な結合により第2の域での抗体の固定化を行なう必要がある。
分析流路が検査−ストリップの形態で設けられることができる。
【0030】
液体サンプルは、工業的供給源、環境的供給源、農業的供給源、または、生物学的供給源などの任意の供給源から得ることができる。サンプルは、血液、血清、血漿、間質液、唾液、痰、眼球レンズ液、汗、尿、乳汁、粘膜、滑液、腹液、経皮浸出液、咽頭浸出液、気管支肺胞洗浄液、気管吸引、脳脊髄液、精液、頸管粘液、膣分泌物または尿道分泌物、および、羊膜液を含む生理学的供給源から得られ或いはこの生理学的供給源から成ることができる。特に、供給源は人であり、特にサンプルは尿である。
【0031】
検体としては、毒素、有機化合物、タンパク質、ペプチド、微生物、バクテリア、ウィルス、アミノ酸、核酸、炭水化物、ホルモン、ステロイド、ビタミン、薬物(治療目的で投与される薬物、および、違法目的で投与される薬物を含む)、汚染物質、農薬、および、前記物質のうちのいずれかの代謝物または前記物質のうちのいずれかに対する抗体が挙げられるが、これらに限定されない。また、検体という用語は、抗原性物質、ハプテン、抗体、高分子、および、これらの組み合わせも含む。
【0032】
分析装置および分析結果読み取り機器は、以下のうちの1つ以上、すなわち、中央処理ユニット(CPU)またはマイクロコントローラ、1つ以上のLED、1つ以上の光検出器、電源、および、関連する電気回路のうちの1つ以上を備えることができる。電源は、バッテリまたは任意の他の適した電源(例えば、光電池)であることができる。CPUまたはマイクロコントローラは、光検出器の出力から信号蓄積の速度または量を判定してこれを制御閾値および測定閾値と比較するようにプログラムされるのが都合良い。
【0033】
分析装置および分析結果読み取り機器はタイミング手段を備え、該タイミング手段により、分析の時間を測定するとともに、分析の測定の開始時間を判定する。タイミング手段は、例えば、液体サンプルの存在を検出できる一対の電極など、液体サンプルが装置に加えられる時間を検出するためのサンプル存在表示手段を備えることができる。あるいは、タイミング手段が光検出手段の一部として構成されることができ、この場合、分析測定のタイミングは、光検出器により液体サンプルが特定の検出域または基準域に達したとして判定される時に開始される。
【0034】
分析装置およびディスプレイは、分析の結果を表示するための表示手段を更に備えることができる。表示手段は、エラーメッセージ、個人的な詳細、時間、日付、および、どのくらい長く分析が測定されていたかをユーザに知らせるためのタイマーなどの更なる情報を更に表示することができる。分析によって表示される情報は、言葉、数字、または、記号で、任意のフォント、アルファベット、または、言語で、例えば、“陽性”、“陰性”、“+”、“−”、“妊娠”、“非妊娠”、“あなたの医者に診てもらってください”、“検査を繰り返してください”によって表示されてもよい。
【0035】
分析装置は、検出域および制御域に存在する標識種の度合い及び/又は量を判定するための信号検出手段を備えることができる。信号検出手段は、存在する標識種の度合い及び/又は量を判定するための光検出器などの光検出手段を備えることができる。分析装置は、前記域を光学的に照明するように位置されるLEDなどの1つ以上の光源を備えることができる。光源からの光は、それぞれの域を照明して光検出器へと透過され或いは反射され、光検出器は、透過され或いは反射された光の量または強度を記録する。前記域での標識結合試薬の存在は、透過され或いは反射される光の量に影響を及ぼし、したがって、光検出器での光の測定値は、標識結合試薬の存在または量を示す。
【0036】
分析装置が基準域を更に備えることができる。基準域の目的は1つの信号値を与えることであり、この信号値に対して、検出域および制御域で得られた信号値が比較されることができる。基準域の測定は、流路からの反射光または透過光の背景レベルの測定を可能にする。背景レベルは、例えば、多孔質担体の光反射率、液体サンプルの存在、または、標識結合試薬などの分析の構成要素の存在に起因することができる。したがって、検出域で測定される光のレベルは、検出域に存在する標識結合試薬の量を示す補償信号を与えるために背景光のレベルに対して補正されることがdきる。基準域での測定は、分析装置に加えられる流体サンプル間の任意の変化を補償することもできる。例えば尿サンプルは色において大きく変化することができる。
【0037】
適した光源はLEDである。LEDの色は、標識結合試薬の色によって判定される。青色標識においては、LEDに適する色が赤である。LEDは、分析装置の特定の域を照明するために1つまたは複数の特定の周波数で照射されることができる。光は、域から、電気信号を記録する光検出器へと反射され或いは透過される。記録される電気信号の数はLEDの動作周波数に依存し、したがって、1つ以上の信号が経時的に記録されることができる。信号は、一般に、%吸光度(%A)として表わされる。
【0038】
各測定域は一般に単一のLEDによって照射されることができる。光検出器は、1つの測定域からの光を検出することができ、したがって、1つのLEDからの反射光を検出することができる。これは、どの域から光が光検出器へと反射されているのかを装置が知ることができるように照明プロセスを連続的に行なうことによって達成される。連続的な照明プロセスは、それぞれの域での経時的な信号のレベルを監視できるように、分析の継続期間中にわたって所定の或いは様々な周波数を用いて繰り返されることができる。
【0039】
装置は、分析装置に対する流れ付加時間を検出するための手段を備えることができる。例えば、1つ以上の域から検出される光のレベルの変化を監視して、流体サンプルが装置に何時加えられたかどうかを判定することができる。分析試験のタイミングは、例えば液体サンプルが特定の域に達したときに自動的に開始されることができる。
【0040】
装置は流量制御手段を備えることができ、この場合、1つ以上の域から検出される光のレベルの変化を使用して、流体サンプルが装置に対して何時加えられたかどうかを判定するとともに、1つ以上の測定域間での流れの測定によって装置に沿う液体サンプルの流量を判定することができる。流量の判定が更なる品質制御チェックとして使用されることができ、例えば、流量が設定レベルより大きい或いは小さい場合には分析が拒絶されることができる。計算回路は、担体に沿って流れる流体における流体を計算して、計算された流量を上限および下限と比較するとともに、計算された流量が上限および下限から外れている場合に分析結果を拒絶するために信号に応答することができる。
【0041】
典型的な光検出システムは、少なくとも1つの光源と、少なくとも1つの光検出器(フォトダイオードなど)とを備える。好ましい光源は発光ダイオードまたはLEDである。反射光及び/又は透過光が光検出器によって測定されることができる。この開示の目的のため、反射光は、光源からの光が多孔質担体または他の液体輸送担体から光検出器へと反射されることを意味するように解釈される。この状況では、一般に、検出器が光源と同じ担体の側に設けられる。透過光とは、担体を通過する光のことであり、また、一般に、検出器は、光源と反対の担体の側に設けられる。反射率測定の目的のため、担体には、白色反射MYLAR(登録商標)プラスチック層などの裏張りが設けられることができる。したがって、光源からの光が担体上に落下して、その一部が担体の表面から反射され、また、一部が担体を透過して任意の深さで反射され、その深さに至るまで反射層が設けられる。そのため、反射型測定は、実際には、多孔質担体の厚さの少なくとも一部を通じた光の透過を伴うことができる。
【0042】
分析装置は一般に1つ以上の開口または窓を備え、該窓を通じて光が1つ以上の照明源から分析または分析ストリップの特定の域へと輝くことができる。窓は、特定の域へと落下する光の面積を規定するとともに、分析または分析ストリップのどの部分が照明されるのかを規定する役目を果たす。照明されるべきそれぞれの域は対応する窓を有することができる。したがって、4つの測定域を有する装置は4つの窓を有する。窓から反射される光は、1つ以上の光検出器によって収集される。複数の域を有する流路を備える分析装置においては、液体サンプルが域間で移動するのに要する時間が測定されることができる。
【0043】
各窓から反射される光の測定値は周期的に取得されることができ(例えば、毎秒2回)、また、ローパスデジタルフィルタを使用することによりノイズを拒絶してデータを平滑化することができる。フィルタ処理された値は、流量を検出して分析結果を判定するために使用されてもよい。
【0044】
それぞれの窓ごとに、流路中の特定の測定域が乾燥している(「較正値」)ときの、すなわち、任意の液体サンプルが前記域に達する前の測定値を、測定域が湿ってラインが生み出されることができるときの測定値で割って成る比率が計算されてもよい。この比率は、液体サンプルが流路に沿って通る結果としての流路の反射特性の変化後に反射される光の割合に等しい。例えば、流路がニトロセルロースなどの多孔質担体を備えるときには、反射特性の変化を完全にマークできる。
【0045】
それぞれの窓において、基準窓、制御窓、および、検査窓における窓比率は、多孔質担体が乾燥しているt=0(サンプルの付加前)のときの測定値をサンプル付加後の時間tでの測定値で割った値に等しい。
【0046】
それぞれの時間点tごとに、それぞれの窓における窓比率が以下のように評価されることができる。
基準比率=フィルタ処理された基準窓値time=0
/フィルタ処理された基準窓値time=t
検査比率=フィルタ処理された検査窓値time=0
/フィルタ処理された検査窓値time=t
制御比率=フィルタ処理された制御窓値time=0
/フィルタ処理された制御窓値time=t
【0047】
フィルタ処理された%A値の計算
それぞれの時間点tごとに、これらの比率を使用して、ラインが生み出されなかった全ての窓で生じた背景のためのベースラインとしての基準比率を用いて、検査ラインおよび制御ラインに関して%A値が計算されることができる。
検査(%A)=(基準比率−検査比率)/基準比率×100%
制御(%A)=(基準比率−制御比率)/基準比率×100%
フィルタ処理された%A値は以下のように規定される。
(%A)=(基準比率−検査比率)/基準比率×100%
正規化百分率相対減衰(%A)は、基準窓比率と考慮される窓比率(制御窓または検査窓)との差を基準窓比率で割って100%を乗じることによって与えられる。
一般に、%A値は、全分析開発時間に得られる値である。
制御信号値および測定信号値は、%Aとして、すなわち、基準域で測定される信号に関する信号値として与えられることができる。
あるいは、信号値は、%Rとして、すなわち、絶対値として与えられることができる。
【0048】
流れ検出および検証
流れ検出
それぞれの窓における窓比率を使用して、窓を通り過ぎる流体の流れを検出してもよい。比率が流れ検出閾値パーセンテージ(FDT%)分だけ降下されたときには、流れが窓に達したとして分類される。これは、同じ割合だけその較正値を超えるフィルタ処理された値の増大に対応する。
時間tに関して、窓比率≧1/(1+FDT%)
または
フィルタ処理された値time=t/フィルタ処理された値time=0
≧1+FDT%
基準が最初に満たされる各窓における時間は、流れ検証のために記録される。
【0049】
流れ検証
流れに対応する様々なパラメータが、装置内に記憶されて、分析装置の多孔質担体に沿う液体サンプルの流れを分類するために使用されることができる。装置は、装置を使用する結果として、流れの何らかのエラーを表示することができる。
【0050】
装置は、記憶された最小流れ検出時間FDTmin、最大流れ検出時間FDTmax、最小窓通過時間MTTmin、および、流れ検出閾値FDTのうちの1つ以上を備えることができる。
【0051】
分析装置は、流路よりも下流側で流路と流体接続する多孔質サンプル受容体を備えることができる。分析装置は、それぞれが検出域を備える複数の分析流路を備えることができ、この場合、複数の分析流路に共通の単一の多孔質サンプル受容体が設けられることができる。したがって、装置の多孔質サンプル受容体に加えられる流体サンプルは、それぞれの分析の流路に沿ってそれぞれの検出域へと移動することができる。多孔質サンプル受容体は、ハウジング内に設けられることができ、あるいは、少なくとも一部が前記ハウジングから延びて例えば尿流れを収集する役目を果たすことができる。多孔質サンプル受容体が流体リザーバとしての機能を果たすことができる。多孔質サンプル受け部材は、液体を急速に吸収できる任意の吸収剤、多孔質材料、または、繊維材料から形成することができる。材料の多孔率は、一方向であることができ(すなわち、全体または大部分が部材の軸と平行に延びる孔または繊維を伴う)、あるいは、多方向であることができる(全方向性であり、そのため、部材が不定形のスポンジ状構造を有する)。ポリプロピレン、ポリエチレン(好ましくは、非常に高い分子量を有する)、フッ化ビニリデン樹脂、エチレンビニルアセテート、アクリロニトリル、および、ポリテトラフルオロエチレンなどの多孔質プラスチック材料を使用できる。他の適した材料はガラス繊維を含む。
【0052】
必要に応じて、担体材料の先端に吸収「シンク」を設けることができる。吸収シンクは、例えば、Whatman 3MMクロマトグラフィ紙から成ることができ、また、任意の非結合の標識結合試薬を検出域から洗い流すことができる十分な吸収能力を与えるべきである。そのようなシンクに代わる手段として、多孔質固相材料が検出域を越えて延びる長さを有すれば十分となり得る。
【0053】
検出域に対する結合試薬の適用後、残りの多孔質固相材料を処理して、任意の残りの結合部位をブロックすることができる。ブロッキングは、例えばタンパク質(例えば、ウシ血清アルブミンまたは乳タンパク質)を用いた、または、ポリビニルアルコールまたはエタノールアミンまたはその組み合わせを用いた処理によって達成することができる。多孔質担体がサンプルにより湿らされるときに標識結合試薬の自由な移動を助けるために、多孔質担体は、サッカロースまたはラクトース及び/又は他の物質、例えばポリビニルアルコール(PVA)またはポリビニルピロリドン(PVP)などの糖を更に備えることができる。そのような材料は、例えば、標識結合試薬が加えられるようになっていない領域に水溶液として堆積されることができる。そのような材料は、最初の適用として多孔質担体に対して加えた後に標識を適用でき、あるいは、そのような材料は、標識と混合させて多孔質担体に加えることができ、あるいは、これらの両方を組み合わせることができる。そのような材料は、標識結合試薬よりも上流側に或いは標識結合試薬において堆積されることができる。
【0054】
あるいは、多孔質担体が製造時点でブロックされずにあることができる。代わりに、多孔質担体をブロックするための手段が多孔質担体よりも上流側の材料中に含まれる。検査ストリップの湿潤時、多孔質担体をブロックするための手段が動かされ、ブロッキング手段が多孔質担体に流入して通過し、それにより、流れが進むにつれてブロックされる。ブロッキング手段は、BSAおよびカゼインなどのタンパク質と、PVP、PVA、糖、並びに、Triton−X100等の浄化剤などの高分子とを含む。ブロッキング手段はマクロ多孔質担体材料中に存在することができる。
【0055】
ニトロセルロース多孔質担体は、少なくとも約1ミクロンの孔径、例えば約5ミクロンよりも大きい孔径、例えば約8−12ミクロンの孔径を有することができる。
【0056】
ニトロセルロース多孔質担体は、その取り扱い強度を高めるために、例えばプラスチックシートで裏打ちされてもよい。これは、MylarTMなどの裏打ち材料のシート上にニトロセルロースの薄層を形成することによって容易に製造される。
【0057】
乾燥した結合試薬は、検出域を備える多孔質担体材料よりも上流側に設けられる多孔質担体材料に設けられることができる。上流側の多孔質担体材料がマクロ多孔質であることができる。マクロ多孔質体が液体サンプルによって湿らされた後に非特異的結合を最小に抑えて標識試薬の自由な動きを促進するために、マクロ多孔質担体材料は、低または非タンパク質結合でなければならず、あるいは、BSAまたはPVAなどの試薬によって容易にブロックできなければならない。マクロ多孔質担体材料は、必要に応じて表面活性剤または溶媒を用いて前処理することにより、それを更に親水性にすることができるとともに、液体サンプルの急速な取り込みを促進できる。マクロ多孔質担体に適した材料としては、ポリエチレンおよびポリプロピレンなどのプラスチック材料、あるいは、紙またはガラス繊維などの他の材料が挙げられる。標識結合試薬が検出可能な粒子を用いて標識化される場合、マクロ多孔質体は、粒子標識の最大粒径よりも少なくとも10倍大きい孔径を有することができる。大きい孔径は、標識試薬の更に良好な解放を与える。マクロ多孔質担体に代わる手段として、標識結合試薬が、検出域よりも上流側に設けられる無孔質基体に設けられることができ、前記無孔質基体は流路の一部を形成する。
【0058】
多孔質担体は、ニトロセルロース多孔質担体よりも上流側に設けられ且つその先端がニトロセルロース多孔質担体と重なり合うガラス繊維マクロ多孔質担体を備えることができる。
【0059】
分析装置は、一般に、分析試料を収容するハウジングを備える。ハウジングは、流体不浸透性であることができ、ABSなどの適したプラスチック材料から構成されることができる。分析は、流体サンプルを受けるためのサンプル受け部材を更に備えることができる。サンプル受け部材はハウジングから延びることができる。
【0060】
ハウジングが流体不浸透性材料から構成されることができる。ハウジングは、また周辺光を排除することが望ましい。ハウジングまたはケーシングは、装置の外面に入射する可視光の10%未満、好ましくは5%未満、最も好ましくは1%未満が装置の内部に侵入する場合には、周辺光をほぼ排除すると考えられる。適した遮光色素を含むポリカーボネート、ABS、ポリスチレン、ポリスチロール、高密度ポリエチレン、または、ポリプロピレンなどの光不透過合成プラスチック材料は、ハウジングの製造で用いるのに適した選択肢である。ハウジングの外面には、ハウジング内の内部空間内に設けられる分析試料と連通する開口が設けられることができる。あるいは、開口は、多孔質サンプル受容体がハウジングからハウジング外の位置へと延びることができるようにする役目を果たすことができる。
【0061】
分析装置は1つ以上の測定オーバーフローパラメータを更に備えることができ、測定値のうちのいずれかが予期されていた値よりも大きい或いはかなり小さい場合には、結果が拒絶される。これにより、分析装置は、例えば、回路基板の断線または短絡、電池切れ、光学窓遮断、LED破損などのハードウェア障害を拒絶できる。
【0062】
様々な検体および制御閾値が装置または分析結果読み取り機器に記憶されることができる。
【0063】
制御ライン信号は、分析測定の過程中で経時的に変化すると見られてきた。制御信号の経時的な変化は、信号開発が制御域で起こるのに要する時間、存在する標識結合試薬の量、および、検体濃度などの様々な因子に起因する可能性がある。分析装置は、一般に、検査の実行時に液体サンプルと標識試薬とが接触する際に多量の標識試薬が最初に解放されて多孔質担体に沿って検出域および制御域へと移動するように、過剰な標識結合試薬を備える。標識試薬の解放プロファイルは、時間とともに変化し、標識試薬の初期の高い解放後に大きさが減少する。制御域を通過する標識試薬および制御域に固定された標識試薬が測定され、したがって、制御域で検出される標識試薬の量が経時的に変化する。
【0064】
特定の範囲にわたる検体濃度を測定するためには、十分な標識結合試薬が存在するようにして、分析信号が飽和しないようにすることが重要である。多量の検体の測定は、しばしば、検体濃度の増大に伴う分析信号のいわゆる「フック効果」または飽和を回避するために標識結合試薬の量の対応する増大を必要とする。制御信号の変化は、広範な或いは高い濃度範囲にわたって検体のレベルを測定するために例えば分析装置内に増大した量の結合試薬が存在する場合に特に起こると見られてきた。
【0065】
分析装置の有利な特徴は、「早期の」結果(すなわち、分析のための全信号開発時間が経過する前)を与えることができることである。一例は、分析装置がゼロであってもよい閾値に対する検体の存在または不存在の表示を与える、妊娠または薬物乱用の分析検査である。
【0066】
単一の制御閾値が与えられるケースでは、分析測定の早い段階で制御信号が制御閾値よりも大きいが、分析測定の遅い段階で制御信号が制御閾値未満になる場合があることが想定し得る。これは、満足に行なわれていたと見なされる分析が分析測定のその早い段階で明らかにされる分析結果を有するが、満足に行なわれていたと見なされなかった分析が分析測定の遅い段階で明らかにされる分析結果を有した可能性を与える。したがって、単一の制御閾値を有する分析装置が満足に行なわれていたと不正確に見なされる場合がある可能性が存在する。複数の閾値を備える分析装置または分析結果読み取り機器は、このエラーが生じる可能性を低減する。
【0067】
その値が時間に対して変化した可変制御閾値を備える或いは3つ以上の制御閾値を備える分析装置または分析結果読み取り機器は、満足に行なわれてきたという分析判定のこのエラーの可能性を更にもっと低減する。しかしながら、閾値の数が多ければ多いほど、CPUまたはチップの記憶空間に必要な大きさも大きくなり、したがって、分析結果読み取り機器または分析装置のコストが高くなる。そのような装置は、一般に、単一使用となるように、したがって、使い捨てできるように形成される。そのため、許容レベルの精度を保ちつつ装置のコストを可能な限り低く維持することが有益である。
【0068】
また、制御域で観察される信号は、いくつかの分析装置の保管に伴って経時的に劣化すると見られてきた。また、制御域の信号が検体濃度に伴って変化する場合があることが分かってきた。例えば、hCG濃度の測定では、制御信号の減少が約50,000mIU/mlで観察された。50,000mIU/mlよりも高い濃度では、制御信号が増大するのが観察された。したがって、値が異なる2つの制御閾値を与えるのが有益である。
【0069】
一実施形態によれば、分析装置は、より高い検体範囲で検体を測定できる。そのような装置を提供する幾つかの方法がある。
【0070】
例えば、分析装置は、検体のための標識結合試薬と、検出域よりも上流側に設けられる検体のための第2の第2の結合試薬とを備えることができる。第2の結合試薬は、過剰な検体を除去して分析の感度を下げる役目を果たす。これは、分析のダイナミックレンジを増大させて高い検体レベルでの測定を可能にするという効果を有する。第2の結合試薬は、固定されることができ、移動することができ、あるいは、その両方であることができる。第2の結合試薬は、可動性標識結合試薬と同じ多孔質担体の領域、可動性標識結合試薬よりも上流側、または、可動性標識結合試薬よりも下流側に設けられることができる。第2の結合試薬は、可動性標識結合試薬と同じ検体の結合領域に、あるいは、標識結合試薬とは異なる検体の領域に結合することができる。第2の試薬は、第2の分析の可動性標識結合試薬とは異なる検体親和性を有することができる。典型的な実施形態において、第2の結合試薬は、第2の分析の可動性結合試薬よりも高い検体親和性を有する。第2の結合試薬の量は、検体濃度に対する分析の感度を変化させるために変えることができる。存在する第2の結合試薬の量を増大させると、分析の感度が下がる。これは、第2の結合試薬がより多くの検体を結合でき、それにより、検出域に結合できる標識結合試薬の割合を効果的に下げるという事実に起因する。
【0071】
分析のダイナミックレンジを増大させるため、分析装置は例えば複数の検出域を備えてもよく、その場合、各検出域は、異なる検体濃度レベルの検体を結合できる。例えば、それぞれの検出域は、異なる検体親和性を有する検体のための結合試薬を備えてもよい。
【0072】
分析のダイナミックレンジを増大させるための他の方法は、サンドイッチ結合分析と競合または阻害分析とを備える分析装置を提供することである。例えば、サンドイッチ分析は、高感度分析であってもよく、すなわち、低い濃度範囲の検体を測定することができ、また、競合または阻害分析は、低感度分析であってもよく、すなわち、高い濃度範囲の検体を測定することができる。更なる方法は、検出域の標識結合試薬または固定化試薬の親和性または量を変更することである。高親和性結合試薬は、低親和性結合試薬よりも高い検体感度を有する。同様に、低い濃度の結合試薬は、高い濃度の結合試薬よりも低い検体感度を有する。分析感度は、標識結合試薬の標識に対する結合試薬の比率を変えることにより変更できる。粒子が標識として使用される場合には、標識に加えられる結合試薬の量を変えて、分析感度を変えることができる。分析の感度を操作するための更なる方法は、分析で使用される標識の量を変えることである。例えば、分析の感度は、標識結合試薬のための標識種に対する結合試薬の比率を減少させることによって下げられることができる。
【0073】
分析の感度を操作するための更なる手段は、標識の吸光度を変えることである。分析感度は、低い吸光度を有する標識の使用により下げることができる。これは、例えば、低濃度の色素を有する高分子粒子標識を設けることによって、あるいは、光検出器に対して感度があまり良くない着色標識の使用によって達成されることができる。
【0074】
高い検体レベルを測定するために更なる他の方法は、非微粒子標識結合試薬を使用することである。高レベルの検体は、サンドイッチ結合分析により測定される際、高レベルの結合試薬を必要とする。標識が粒子標識である場合、多孔質担体内または多孔質担体上に高レベル検体を設けると、立体障害を生じる可能性があり、それにより、分析感度が低下する。逆に、低い検体レベルでは、非粒子標識結合試薬の使用が、低い吸光度に起因して低信号を生じる可能性がある。しかしながら、高い検体レベルでは、非粒子標識が容易に検出されるのに十分高いレベルで存在することができる。光学的に検出可能な非微粒子標識は色素であることができる。色素は蛍光性を有することができる。
【0075】
分析感度は、多孔質担体の流量によって影響される可能性がある。分析の感度を下げるための方法は、高い流量を有する多孔質担体(ニトロセルロースなど)を使用することである。
【0076】
分析の感度は、標識結合試薬がその発生源から解放される速度を変更することによって更に操作されることができる。検体感度を下げるための更なる方法は、標識結合試薬を液体サンプルとの接触中に多孔質担体から急速に解放することである。標識結合試薬の解放は、糖、タンパク質、または、メチルセルソースなどの他の高分子物質を装置内に設けることにより変えることができる。
【0077】
特定の実施形態によれば、分析装置は、検体のための可動性の第2の結合試薬と、検出域よりも上流側に設けられる検体のための可動性結合試薬とを備える。第2の結合試薬は、検出域よりも上流側における標識結合試薬と同じ或いは類似する位置に設けられることができる。
【0078】
特定の実施形態によれば、分析装置が2つの分析を備え、各分析が流路を備える。この場合、第1の分析は、低い検体濃度範囲の検体を測定することができ、また、第2の分析は、高い検体濃度範囲の検体を測定することができる。第1の分析が基準域を備えることができ、また、第2の分析が制御域を備えることができる。
【0079】
本発明の分析装置は、広範な濃度範囲にわたってhCGの量または存在を測定するために使用されることができる。濃度範囲は、約10mlU〜約250,000mIUの間で変化してもよい。
【0080】
第2の分析は、検体のための標識結合試薬と、検体のための第2の結合試薬とを備えることができる。第1の分析は、検出域よりも上流側に設けられる検体のための標識結合試薬を備えることができる。
【0081】
分析装置は、特定の検体範囲の検体のレベルを示すために1つ以上の更なる測定閾値を備えることができる。一実施形態では、分析装置が第1および第2の測定閾値を備え、第1の測定閾値未満の検体測定信号は、検体の不存在または特定のレベルを上回る検体の不存在を示し、第2の閾値よりも大きい検体測定信号は第2の濃度範囲の検体のレベルを示し、第2の閾値未満の測定信号は第1の濃度範囲の検体のレベルを示す。特定の実施形態によれば、分析装置が第3の測定閾値を更に備え、第3の閾値よりも大きい検体測定信号は第3の濃度範囲の検体のレベルを示す。
【0082】
特に、分析装置は、雌哺乳類被検体の液体サンプル中、特に尿中の検体hCG検体の存在および量を測定することができてもよい。分析装置が第1の測定閾値を備えることができ、閾値を下回るhCG検体信号レベルは妊娠していないことを示し、第1の測定閾値以上のhCG検体信号レベルは妊娠していることを示す。また、装置は、少なくとも1つの更なる測定閾値を備える。更に、分析装置は、妊娠の程度の表示を与えることができる。分析装置は、数日または数週間の単位の妊娠の程度などの時間ベースの表示をユーザに与えることができる。
【0083】
尿中のhCGの判定のための分析検査における典型的な全分析開発時間は3分である。
疑義が生じるのを避けるため、ここで明確に述べるように、「好ましい」、「有益である」、「都合良い」、または、「望ましい」などとして本明細書中に記載される任意の特徴は、本発明では、文脈が他のことを述べていない限り、孤立して、あるいは、本明細書中に記載される任意の1つ以上の他の特徴との任意の組み合わせで存在する。
以下の図を参照することにより本発明の態様について更に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1a】図1aは、経時的な制御信号の変化の一例を与えるグラフを示している。
【図1b】図1bは、以下の例1,2にしたがって生成される分析装置における経時的な制御信号の変化を示している。
【図1c】図1cは、以下の例1,2にしたがって生成される分析装置における経時的な制御信号の変化を示している。
【図2】分析の全開発時間(t=150s)におけるhCG濃度に応じた制御信号の観察される変化の一例を示している。
【図3】図3aおよび図3bは、本発明の分析装置の典型的な実施形態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0085】
図1aは、分析を実行している時間に対する制御信号の典型的な変化を示している。また、3つの閾値20%、30%、40%も示されている。単一の閾値だけ、例えば30%Aだけが使用された場合、制御信号は、t=40sでは閾値よりも大きいが、150sの全分析開発時間では閾値よりも小さい。この場合、t=40sで早期に結果が表われるため、分析装置は、制御が有効であると誤って解釈する。なぜなら、この場合において制御信号が有効かどうかの判定は、分析信号が全分析開発時間で30%Aよりも大きいことを必要とするからである。しかしながら、単一の制御域閾値が40%で使用された場合には、t=40sで40%Aの制御信号値を有し且つ150sの全分析開発時間で32%Aの制御信号値を有する制御が有効であった分析試験は、有効でないとして不必要に判定される。したがって、後者の場合には、分析が不必要に拒絶される。そのため、要約すると、制御信号値が時間に伴って変化することができ(特に、ピーク信号値が得られると、一定のままでなく、減少する可能性がある)、また、これを反映するために、本発明は、時間に伴って変化する場合がある制御信号閾値を伴う分析装置を提供する。例えば、本発明に係る分析装置の1つの実施形態では、2つの制御閾値、すなわち、第1の分析判定時間に対応する第1の閾値および第2の分析判定時間に対応する第2の閾値を使用する。t=40sでの標識試薬の立ち上がりに起因して、t=150sで第2の制御閾値よりも大きい第1の制御閾値が使用される。下側の制御閾値は、これらの分析が不必要に拒絶されないように、分析装置の経年劣化効果と、特定の検体濃度での制御信号の任意の想定し得る減少とを考慮に入れる必要がある。
【0086】
hCG測定の場合には、制御信号値の減少が約50,000mlU/mlで起こることが意外にも分かった。約50,000mlU/mlよりも大きい値では、制御信号の値がその後に増大する。制御域で観察される信号とt=150sの全開発時間でのhCG濃度が対比して図2に示されている。したがって、約50,000mlU/mlのhCGのレベルに関して制御域で得られる値が制御閾値を下回る場合があり、その結果、分析装置が有効でないと分類される。したがって、特定の検体濃度での制御ライン信号の任意の減少を考慮に入れ且つ装置の経年劣化に起因する分析制御信号の任意の減少を考慮に入れるために、十分に低い制御ライン閾値を使用する必要がある。
【0087】
図3aは、本発明の一実施形態に係る典型的な分析装置を示している。装置は、約14cmの長さと約25mmの幅とを有するとともに、ハウジング(50)と、多孔質サンプル受け部(51)と、分析の結果を表示するためのLCDディスプレイ(53)とを備える長尺なものである。また、分析装置内には、図示しない分析流路、光学手段、電源、および、関連する電子部品が設けられる。また、分析装置は、多孔質サンプル受け部を覆って取り付くための取り外し可能なキャップ(52)を有することができる。
図3bは、図3aに示される装置の分解図である。装置は、上側および下側ハウジング部品(510,512)と、装置内を低いレベルの湿度に維持するための乾燥タブレット(513)と、バッテリ(516)と、光学バッフル(514)と、コンピュータチップ(515)とを備える。
【0088】
実施例1
高感度分析装置の用意 高感度分析装置は、ニトロセルロース多孔質担体上に設けられる検出域および制御域よりも上流側でガラス繊維多孔質担体上に設けられるhCGのための可動性標識結合試薬を備えるhCG検体の判定のために用意された。検出域はhCGのための固定化結合試薬を備える。
【0089】
検出域は、PBSA緩衝液中における3mg/mlの濃度の抗β−hCG抗体(組織内クローン3468)のラインを、175ミクロンのバッキング層に積層された8ミクロンの孔径と90−100ミクロンの厚さとを有する寸法350mm長×40mm幅のニトロセルロースの帯(Whatman)へと1μl/cmの割合で分配することにより生成された。抗β−hCG抗体は、ニトロセルロースの長さに沿った10mmの位置で〜1.2mm幅および〜300mm長のラインとしてBiodot xyz3050分配プラットフォームを使用して適用された。
【0090】
制御域は、Biodot xyz3050分配プラットフォームを使用して、検出域の3mm下流側の13mmの位置で、PBSA緩衝液中における2mg/mlの濃度のヤギ−抗−ウサギ抗体(Lampire)を1μl/cmの割合でニトロセルロースへプロットして生成された。
【0091】
NCの帯は、55℃および速度5(単一パス)に設定されたHedinair乾燥炉シリアル番号17494を使用して乾燥された。その後、NCは、5%エタノール(BDH Analar 104766P)と、150mM塩化ナトリウム(BDH Analar 10241 AP)と、50mMトリズマ塩基(Sigma T1503)と、Tween 20(Sigma P1379)と、および、1%(w/v)ポリビニルアルコール(PVA, Sigma 360627)との混合物を含むブロッキング緩衝液を使用してブロックされた。ブロッキング緩衝液は、1.75μl/mmの割合で帯の基端に加えられた。ブロッキング溶液が膜中に浸ると、2%(w/v)サッカロース(脱イオン水中のSigma S8501)の溶液が、同じ装置を使用して1.6μl/mmの割合で加えられるとともに、〜5分間にわたってニトロセルロース膜中に浸ることができた。その後、NCの帯は、75℃および速度5(単一パス)に設定されたHedinair乾燥炉シリアル番号17494を使用して乾燥された。
【0092】
検体のための標識結合試薬の生成
以下のプロトコルにしたがって標識結合試薬が生成された。
【0093】
ラテックス粒子を抗αhCGでコーティングする
1.100mM二ナトリウムテトラホウ酸塩緩衝液pH8.5(BDH AnalaR 102676G)(DTB)を用いてDuke Scientificが提供する青色粒子(400nm直径、10%固形物(w/v)DB1040CB)を2%固形物まで希釈する。
【0094】
2.Heraeus Biofuge 17RS遠心分離機で(2ml)の量の希釈されたラテックスを2つのエッペンドルフ型遠心分離管内において17000rpm(15,848rcf)で10分間にわたって遠心分離することにより希釈されたラテックスを洗浄する。浮遊物を除去して廃棄するとともに、100mM DTB中でペレットを再懸濁して、総量1mlの4%固形物(w/v)を得る。
【0095】
3.エタノールと酢酸ナトリウムとの混合物(95%Ethanol BDH AnalaR 104766Pと5%w/v Sodium Acetate Sigma S−2889との混合物)を調整する。
【0096】
4.100μlのエタノール−酢酸ナトリウム溶液を、ステップ2の洗浄されたラテックス(これは10%体積のラテックスである)に加える。
【0097】
5.蓄積抗体(組織内クローン3299)を希釈して、DBT中で〜1200μg/ml抗体を得る。
【0098】
6.ステップ5から得られる1ml量の希釈抗体を、41.5℃に設定された水槽内で〜2分間にわたって加熱する。また、ステップ4から得られる洗浄されたラテックス+のエタノール−酢酸ナトリウムを同じ水槽中で2分間にわたって加熱する。
【0099】
7.希釈された抗体をラテックス+のエタノール−酢酸に対して加えて、うまく混合するとともに、混合物中に配置される磁気攪拌器および磁気フリア(flea)を使用して混合しつつ、41.5℃に設定された水槽内で1時間にわたってインキュベートする。
【0100】
8.40mg/mlウシ血清アルブミン(BAS)溶液(脱イオン水中のIntergen W22903)を調整する。等しい量の40mg/mlBSAをラテックス/抗体/エタノール−酢酸の混合物に加えることによりラテックスをブロックして、連続攪拌状態で30分にわたって41.5℃の水槽内でインキュベートする。
【0101】
9.ステップ2の場合と同様に、17000rpmで10分間にわたって混合物を遠心分離する(エッペンドルフ型管同士の間で量を1mlロットに分割する)。浮遊物を除去して廃棄するとともに、100mM DTB中でペレットを再懸濁する。ステップ2と同様の遠心分離を繰り返して、浮遊物を除去して廃棄するとともに、エアブラッシング緩衝液(20%(w/v)Sucrose Sigma S8501, 100mM Trizma Base Sigma T1503 pH〜9中の10%BSA(w/v))中でペレットを再懸濁する。エアブラッシング緩衝液を加えて、4%固形物(w/v)ラテックスを得る。
【0102】
共役ラテックスが、50g/hrおよび110mm/sの速度でBSAとサッカロースとの混合物中においてガラス繊維多孔質担体(F529−09, Whatman)に対して噴射されるとともに、65℃および速度5(単一パス)に設定されたHedinar Conveyor Oven製造番号17494を使用して乾燥された。
【0103】
制御域のための標識結合試薬も、以下のように検体のための標識結合試薬と同じ多孔質担体の領域上に堆積された。
【0104】
すなわち、ウサギIgG (Dako)が、0.7%固形物の最終%青色ラテックスを与えるためにBSA/サッカロース中で400nm青色ラテックスポリスチレンラテックス(Duke Scientific)に共役されるとともに、ガラス繊維に対して65g/hrで噴射された。
【0105】
噴射された標識結合試薬を伴うガラス繊維材料は、標識試薬が最上部となるように配置された透明な接着剤コーティングされた積層フィルム(Ferrisgate, 38mm幅)を使用してニトロセルロース膜に対して取り付けられ、また、ガラス繊維がニトロセルロース膜の帯の長さ(350mm)に沿って〜2mmだけニトロセルロースの表面に重ね合わされた。ガラス繊維は、それが検出域の上流側となるようにニトロセルロースの端部に取り付けられた。
その後、積層シートが6mm幅の検査ストリップに切断された。
【0106】
実施例2
hCGのための可動性標識結合試薬と検出域および制御域よりも上流側に設けられるhCGのための可動性非標識結合試薬とを備えるhCG検体の判定のための低感度スカベンジャー分析装置の用意
検出域および制御域が実施例1にしたがって調整された。
【0107】
可動性標識結合試薬および非標識結合試薬の生成
400nm青色ポリスチレンラテックス(Duke Scientific)に共役されるマウス抗ヒトα−hCGmAb(クローン3299)が、3mg/mlのスカベンジャー抗体mAbマウス抗ヒトβ−hCG(組織内クーロン3468)と混合され、3%の最終%青色ラテックス、0.075mg/mlの最終3468濃度、および、0.06mg/ml濃度の自由抗βhCG抗体が得られた。結果として得られる混合物は、F529−09ガラス繊維に対して2.02μg/cmで噴射される90g/hrのBIODOT XYZS(シリアル番号1673)を使用してWhatmanガラス繊維(F529 25mm幅リール)へ吹き付けられた。
【0108】
制御域のための標識結合試薬も、実施例1にしたがって検体のための標識結合試薬と同じ多孔質担体の領域に堆積された。
ガラス繊維は、65℃および速度5(単一パス)に設定されたHedinar Conveyor Ovenシリアル番号17494を使用して乾燥された。ラテックスの第2のパスは、前記したことを繰り返すことによりガラス繊維上に堆積されるが、スプレーの当初の位置から〜0.8mmオフセット(ガラス繊維の更に下流側)される。ガラス繊維が前述したように乾燥された。
【0109】
時間に伴う制御信号の変動の測定
実施例1にしたがって用意された分析装置が緩衝液中で0mIU/mlhCGを用いて検査され、また、制御信号が経時的に測定されるとともに、検出域よりも上流側に位置される域として選択された基準域で信号が測定された。値は、%Aに換算して、すなわち、基準域で測定される信号に対する制御域の信号として与えられる。
【0110】
実施例2にしたがって用意された分析装置が緩衝液中で100mIU/mlを用いて検査され、また、制御信号が経時的に測定された。値は、%Aに換算して、すなわち、制御域で測定される信号に対する制御域の信号として与えられる。制御信号が基準付けられた基準値は、緩衝液中で100mIU/mlを用いて例1にしたがって分析装置を検査することによって得られた。信号値の変動が図1bおよび図1cに示される。
【0111】
実施例1のそれに係る制御信号が実施例2のそれと比べて経時的な変動が少ないことが分かる。
【0112】
実施例2にしたがって用意された分析装置が検体を含む液体サンプルを用いて検査され、それらの検体測定信号および制御信号が経時的に測定された。30%Aの単一の制御閾値の使用と20%Aおよび40%Aの2つの制御閾値とを比較して2組の測定が行なわれた。制御信号の%A値は、較正から50秒〜60秒に対応する高感度検査窓で流れが検出された後に40秒だけ考慮された。分析の全開発時間tfdは180秒であった。時間t<tfdでは、制御信号が40%A制御閾値と比較され、時間t=tfdでは、制御信号が20%A制御閾値と比較された。また、検査された分析装置は、時間t=tfdで、30%Aの単一の制御閾値とも比較された。2つの制御閾値に関して測定される分析装置は、分析が満足に行なわれていたことを正確に分類する割合が単一の制御閾値に関して測定される分析装置よりも高いことが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析の結果を読み取るための分析結果読み取り機器であって、
a)第1および第2の制御閾値と、
b)検体の存在及び/又は量を示す検体測定信号を処理するとともに、前記分析が満足に行なわれたかどうかを示す制御信号を処理するためのデータ処理手段と、
を備えることにより、
前記分析測定の開始後、時間tまで、前記制御信号と前記第1の制御閾値とを比較して、前記制御信号が前記第1の制御閾値を超え或いは前記第1の制御閾値に等しい場合には前記分析が満足に行なわれていたことを判定し、前記制御信号が前記第1の制御閾値よりも小さい場合には前記分析測定を続け、また、時間t>tにおいて、前記制御信号と第2の制御閾値とを比較して、前記制御信号が前記第2の制御閾値を超え或いは前記第2の制御閾値に等しい場合には分析結果を与える、分析結果読み取り機器。
【請求項2】
液体サンプル中の検体の存在及び/又は量を与えるための分析装置であって、
a)請求項1に記載の分析結果読み取り機器と、
b)液体サンプルがそれに沿って流れることができる1つ以上の分析流路と、
を備え、前記1つ以上の流路は、
前記検体の存在及び/又は量を示す標識結合試薬を固定するための検出域と、
前記分析が満足に行なわれていたことを示すための制御域と、
を備える、分析装置。
【請求項3】
前記第1の制御閾値が前記第2の制御閾値よりも大きい、請求項1または請求項2に記載の分析装置または分析結果読み取り機器。
【請求項4】
前記分析の前記測定のタイミングを図るための分析タイミング手段を備える、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の分析装置または分析結果読み取り機器。
【請求項5】
前記検体を前記制御域で固定することができる可動性標識結合試薬を備える、請求項2〜請求項4のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項6】
前記検出域および制御域で標識結合試薬を照明して検出するための光学照明および検出手段を備える、請求項2〜請求項5のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項7】
前記1つ以上の流路が基準域を更に備える、請求項2〜請求項6のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項8】
前記制御信号は、時間t=tfdにおいて前記第2の制御閾値と比較されるとともに、時間t<tfdにおいて前記第1の制御閾値と比較される、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の分析装置または分析結果読み取り機器。
【請求項9】
最小分析開発時間tmd(t>=tmd)を更に備える、請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の分析装置または分析結果読み取り機器。
【請求項10】
前記検体のための可動性標識結合試薬と、前記検出域よりも上流側に設けられる前記検体のための第2の結合試薬とを備える、請求項2〜請求項9のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項11】
それぞれが前記検体のための検出域を備える2つの分析流路を備える、請求項2〜請求項9のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項12】
前記第1の分析流路が低い検体濃度範囲の検体を測定でき、前記第2の分析流路がさらに高い検体濃度範囲の前記検体を測定できる請求項11に記載の分析装置。
【請求項13】
前記第1の分析は、前記検出域よりも上流側に設けられる前記検体のための可動性標識結合試薬を備え、前記第2の分析は、前記検体のための可動性標識結合試薬と、前記検出域よりも上流側に設けられる前記検体のための第2の結合試薬とを備える、請求項12に記載の分析装置。
【請求項14】
前記第2の分析における標識結合試薬の前記量が前記第1の分析におけるよりも多い、請求項11〜請求項13のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項15】
前記第1の分析の流路が基準域を備え、前記第2の分析の前記流路が制御域を備える、請求項11〜請求項14のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項16】
前記検体のための前記第2の結合試薬が可動性を有する、請求項10又は請求項13に記載の分析装置。
【請求項17】
前記検体がhCGである、請求項1〜請求項16のいずれか1項に記載の分析装置または分析結果読み取り機器。
【請求項18】
前記液体サンプルが尿である、請求項1〜請求項17のいずれか1項に記載の分析装置または分析結果読み取り機器。
【請求項19】
妊娠状態または非妊娠状態を示す測定閾値を備え、前記測定閾値以上の検体測定信号は被検体が妊娠していることを示し、前記測定閾値未満の検体測定信号は被検体が妊娠していないことを示す、雌哺乳類被検体におけるhCGの測定のための請求項1〜請求項18のいずれか1項に記載の分析装置または分析結果読み取り機器。
【請求項20】
妊娠の度合いを示す第2の測定閾値を更に備え、前記第2の測定閾値よりも大きい信号測定値が第2の範囲の妊娠度合いを示し、前記第2の測定閾値よりも小さく且つ前記第1の測定閾値よりも大きい信号測定値が第1の範囲の妊娠度合いを示す、請求項18に記載の分析装置または分析結果読み取り機器。
【請求項21】
流路が多孔質担体を備える、請求項2〜請求項19のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項22】
多孔質担体は、互いに重なり合う第1および第2の多孔質担体材料を備える、請求項20に記載の分析装置。
【請求項23】
前記第1の多孔質担体が標識結合試薬を備え、前記第2の多孔質担体が前記検出域を備える、請求項21に記載の分析装置。
【請求項24】
分析の結果を判定する方法であって、
a)検体の存在及び/又は量を示す検体測定信号と、前記分析が満足に行なわれたかどうかを示す制御信号とを測定するステップと、
b)前記分析測定の開始後、時間tまで、前記制御信号が第1の制御閾値を超えあるいは前記第1の制御閾値に等しい場合には分析が正しく行なわれていたことを判定するステップと、前記制御信号が前記第1の制御閾値よりも小さい場合には前記分析信号測定を続け、また、時間t>tにおいて、前記制御信号と第2の制御閾値とを比較して、前記制御信号が前記第2の制御閾値を超えあるいは前記第2の制御閾値に等しい場合には分析結果を与えること、
を含む方法。
【請求項25】
分析の結果を読み取るための分析結果読み取り機器であって、
a)前記分析測定の時間にわたってその値が変化する可変制御閾値と、
b)検体の存在及び/又は量を示す検体測定信号を経時的に処理するとともに、前記分析が満足に行なわれたかどうかを示す制御信号を経時的に処理するためのデータ処理手段と、
を備えることにより、
前記分析の測定中の任意の時間に、前記制御信号と前記可変制御閾値とを比較して、前記制御信号が前記可変制御閾値を超えあるいは前記可変制御閾値に等しい場合には前記分析が満足に行なわれていたことを判定する、分析結果読み取り機器。
【請求項26】
液体サンプル中の検体の存在及び/又は量を与えるための分析装置であって、
a)請求項25に記載の分析結果読み取り機器と、
b)液体サンプルがそれに沿って流れることができる1つ以上の分析流路と、
を備え、前記1つ以上の流路は、
前記検体の存在及び/又は量を示す標識結合試薬を固定するための検出域と、
分析が満足に行なわれていたことを示すための制御域と、
を備える、分析装置。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−522242(P2011−522242A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−511096(P2011−511096)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【国際出願番号】PCT/GB2009/050590
【国際公開番号】WO2009/144507
【国際公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(510314068)エスピーディー スイス プレシジョン ダイアゴスチックス ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】