説明

分析試料研磨装置

【課題】 作業者の熟練度による差がなく、安定した状態で試料を研磨することが可能であり、試料を研磨ベルトの走行方向に対して直角方向に移動させても試料面を平らに研磨することのできる分析試料研磨装置を提供する。
【解決手段】 駆動ロ−ラ1と従動ロ−ラ2との間にエンドレスに巻装した研磨ベルト3の下側に、固定リンク6aと上下移動する移動リンク6bとを、その両端部を枢着した平行な回転リンク6c,6dにより平行状態となるよう連結し、この平行な固定リンク6aと移動リンク6bとの間に緩衝作用をするコイルばね7を配置する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、例えば転炉や電炉等で製造される鉄鋼或いは非鉄金属類の試料をX線を照射して分析する蛍光X線分析用試料、あるいは発光分光分析用試料を研磨するための分析試料研磨装置に関する。
【0002】
【従来の技術】転炉や電炉等で製造される鉄鋼、その他非鉄金属を製造する工程では鋼類に混入している異物の混入状態を検査するため素材の成分分析を行う。即ち、鉄中に含まれる炭素(C)、或いはイオウ(S)、リン(P)、シリコン(Si)、銅(Cu)等がどの程度混入しているかについて成分分析を行う。分析に際しては、試料片を作り、表面を研磨してその表面にX線を照射し、特定の混入成分がX線を吸収して発する蛍光X線を検出して分析する。このような分析用試料の作製に際しては、その試料表面を研磨機によりなるべく平らに且つ試料素材の成分がそのまま表れるように滑らかに研磨する必要がある。
【0003】従来の鉄鋼用試験片試料の研磨機としては、図4に示すように、駆動ロ−ラ11と従動ロ−ラ12に研磨用ベルト13を巻装し、該研磨用ベルト13の下側に試料台14を設置固定し、把持ア−ム15に試料Mを把持し、該把持ア−ム15側にばね17,17のような弾性緩衝機構を設け前記研磨ベルト13に試料Mを押しつけ緩衝性を持たせて研磨するものが多い。或いは、図5に示すように、駆動ロ−ラ21と従動ロ−ラ22とに巻装した研磨ベルト23の下側に試料台24を設置すると共に、該研磨ベルト23の上側には、ア−ム25に装着した試料装着具26に試料Mを取り付け、下方向へ移動する移動機構28とエアシリンダ27により下方向に移動させ、同様に緩衝性を持たせて試料Mを研磨ベルト23に押しつけるようにしたものも知られている。尚、作業者が試料片を手でもって研磨ベルトに押しつけて研磨することも多いが、この場合作業者の手が同時に弾性体として機能している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記するように、試料を研磨する際には研磨ベルトの上側から弾性機構を有する把持具で押しつけ研磨する。この場合、作業者が手作業で研磨していては作業者の熟練度により差が生じることがあり、また危険でもある。試料の研磨を自動的に行う場合、例えば試料の把持ア−ムが油圧式バイス機構であって把持した試料を研磨ベルトに自動的に押しつけるように構成する場合、この試料把持ア−ム側には緩衝機構を組み込むことが困難である。更に、従来の研磨装置では、研磨ベルトを万遍なく使用するため、研磨途中でベルトの走行方向に対して直角方向にベルト幅の範囲内で移動させながら研磨することが多い。このため試料を把持した把持具では軸に負担がかかるという問題がある。そして試料を研磨ベルトの走行方向に対して直角方向に移動させつつ研磨すれば研磨面が平らにならないおそれもある。
【0005】この発明は上記する課題に着目してなされたものであり、作業者の熟練度による差がなく、また、自動化しても安定した状態で試料を研磨することが可能であり、試料を研磨ベルトの走行方向に対して直角方向に移動させても試料面を平らに研磨することのできる分析試料研磨装置を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】即ち、この発明は上記する課題を解決するために、駆動ロ−ラと従動ロ−ラとの間に研磨ベルトをエンドレスに巻装して試料を研磨する分析試料研磨装置において、前記研磨ベルトの下側に、上下のリンク間に弾性体を配置した平行移動機構を備えた試料台を設けたことを特徴とする。即ち、図1で説明すると、駆動ロ−ラ1と従動ロ−ラ2との間に巻装した研磨ベルト3の下側に、固定リンク6aと移動リンク6bとを、平行な回転リンク6c,6dにより平行状態となるように連結し、これら固定リンク6aと移動リンク6bとの間に弾性体の一種であるコイルばね7,7,・・を配置して成る平行移動機構6を備えた試料台4を配置することを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、この発明の具体的な実施の形態について図面を参照して説明する。図1はこの発明の分析試料研磨装置の主要部を示す正面図、図2は図1のA−A矢視断面図である。この分析試料研磨装置において、1は駆動ロ−ラ、2は従動ロ−ラであって、これらのロ−ラには研磨ベルト3がエンドレスに巻装されている。尚、研磨ベルト3の表面には目的とする研磨面の粗さに応じた砥粒面が形成されている。
【0008】前記研磨ベルト3の下側には、試料台4が配置される。該試料台4は、研磨ベルト3と接するベルト接触板5と、フレ−ム等の固定部に固定されるリンク6aと移動リンク6bとこれら二つのリンク6a,6bを二つの平行な回転リンク6c,6dで平行に連結した4節回転リンク機構の一種である平行移動機構6と、で構成される。即ち、固定リンク6aと移動リンク6bとは平行状態に、また、回転リンク6cと回転リンク6dとは平行状態に、且つこれら回転リンク6c,6dの両端部はO1 ,O2 及びO3 ,O4 回りに回動自在に枢着されている。
【0009】前記固定側のリンク6aと移動リンク6bとの間には、弾性体のコイルばね7,7,・・が配置されている。このコイルばね7,7,・・は試料を押しつける力に応じて適当なばね定数のものを選択し、交換することができるようにしてある。尚、前記固定リンク6aと移動リンク6bとを連結する二つの回転リンク6c,6dは、図に示すように、研磨ベルト3が走行する方向に傾斜させて連結してある。
【0010】前記移動リンク6bの上側に設置されるベルト接触板5は、研磨ベルト3と直接接触することになるので摩耗しやすい。そこで該ベルト接触板5は耐磨耗性の高い例えばセラミックスやタングステンカ−バイトで製作され、移動リンク6bに取り替え可能に載置されている。
【0011】前記研磨ベルト3の上側には試料Mを把持する試料把持具8が配置してある。該試料把持具8は、図示しないが油圧機構によって試料Mを把持し、且つ上下移動機構により上下移動させる。従って、該試料把持具8は緩衝機構はないが決まったストロ−クだけ上下移動する。また、該試料把持具8は、研磨ベルト3を均等に利用するため研磨ベルト3の走行方向に対して直角方向にも移動できるように構成してある。
【0012】この発明の分析試料研磨装置は以上のような構成からなり、試料Mを研磨する際には、回転走行している研磨ベルト3に油圧式の試料把持具8に把持させた試料Mを押しつける。すると、前記平行移動機構6の移動リンク6b及びベルト接触板5は、コイルばね7,7,・・の弾性による緩衝作用で2〜3mm程度沈み込み試料Mは適度に研磨ベルトに接触し研磨される。この場合、移動リンク6bは、平行移動機構6の一部を構成しているから該移動リンク6b自身が全体的に均等に2〜3mm沈むことになる。そして試料Mは、平行移動機構6とコイルばね7の緩衝によって適度の圧力で研磨ベルト3に 接触させ研磨することができる。
【0013】次に、図3に示すように、油圧式の把持具8で把持された試料Mを、研磨ベルト3の走行方向に対して直角方向に該研磨ベルト3に押しつけながら移動させても移動リンク6b及びベルト接触板5は必ず全体が均等に沈み込む。即ち、試料Mを研磨ベルト3の走行方向に対して直角方向或いは斜め方向に押しつけながら移動させても該移動リンク6b及びベルト接触板5が研磨中傾斜することはなく必ず均等に沈む。従って、試料Mの研磨面は必ず平らな面に研磨することができる。
【0014】この分析試料研磨装置の構成は以上のようであるが、前記回転リンク6c,6dは片側に2本づつ回動自在に枢着したが、2本に限る必要はなく3本或いはそれ以上であってもよい。また、コイルばね7は他のばね、例えばエアシリンダ、弾性ゴム、板ばね等の弾性体に代えてもよい。
【0015】
【発明の効果】以上詳述したように、この発明の分析試料研磨装置によれば、作業者が手作業で研磨する必要がなく、また、作業者の熟練度による差のない安定した試料の研磨面を得ることができ且つ作業中の危険性もなくすることができる。この装置によれば、試料を把持する上側を固定とし研磨ベルト下側を緩衝機構として適度の研磨接触圧で研磨することができる。更に、研磨途中でベルトの走行方向に対して直角方向に移動させながら研磨しても試料の研磨面は必ず平らな面に研磨することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の分析試料研磨装置の主要部を示す正面図である。
【図2】図1のA−A矢視断面図である。
【図3】図1のA−A矢視断面図であって試料を研磨ベルトに押しつけベルトの走行方向に対して直角方向に移動させて研磨する状態を示す図である。
【図4】従来の分析試料研磨装置の主要部を示す正面図である。
【図5】従来の分析試料研磨装置の主要部を示す正面図である。
【符号の説明】
1 駆動ロ−ラ
2 従動ロ−ラ
3 研磨ベルト
4 試料台
5 ベルト接触板
6 平行移動機構
7 コイルばね
8 試料把持具

【特許請求の範囲】
【請求項1】 駆動ロ−ラと従動ロ−ラとの間に研磨ベルトをエンドレスに巻装して試料を研磨する分析試料研磨装置において、前記研磨ベルトの下側に、上下のリンク間に弾性体を配置した平行移動機構を備えた試料台を設けたことを特徴とする分析試料研磨装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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