説明

分枝鎖炭化水素の製造方法

本発明はメタノールおよび/またはジメチルエーテルから分枝鎖炭化水素を製造する方法に関し、この方法はメタノールおよび/またはジメチルエーテルをハロゲン化インジウムからなる触媒と反応器にて接触させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は分枝鎖炭化水素の製造方法に関し、特にトリプタンからなる分枝鎖炭化水素生成物の製造方法に関するものである。
【0002】
分枝鎖炭化水素は多くのルートにより合成することができる。特に分枝鎖炭化水素の混合物は、ハロゲン化亜鉛触媒の存在下におけるメタノールおよび/またはジメチルエーテルのホモロゲーションにより生成させることができ、これはたとえば英国特許出願公開第1,547,955号明細書、米国特許第2,492,984号明細書、米国特許第3,969,427号明細書、米国特許第4,059,646号明細書、米国特許第4,059,647号明細書、米国特許第4,249,031号明細書、並びに国際公開第02/70440号パンフレットに記載されている。
【0003】
米国特許第4,249,031号明細書はたとえば、1種もしくはそれ以上の酸素含有の有機化合物(たとえばメタノール)を1種もしくはそれ以上のハロゲン化亜鉛と接触させることよる炭化水素混合物の製造方法を記載している。
【0004】
米国特許第4,059,647号明細書はたとえば、メタノール、ジメチルエーテルもしくはその混合物を沃化亜鉛と接触させることからなるトリプタン(2,2,3−トリメチルブタン)の製造方法を記載している。
【0005】
トリプタンは高オクタン価の分枝鎖炭化水素であって、無鉛航空ガソリンおよび無鉛モータガソリンに使用することができる(たとえば国際公開第98/22556号パンフレットおよび国際公開第99/49003号パンフレット参照)。
【0006】
今回、メタノールおよび/またはジメチルエーテルからの分枝鎖炭化水素の代案および/または改善された製造方法が突き止められた。
【0007】
第1面によれば本発明はメタノールおよび/またはジメチルエーテルからの分枝鎖炭化水素の製造方法を提供し、この方法はメタノールおよび/またはジメチルエーテルをハロゲン化インジウムを含む触媒と反応器中で接触させることを特徴とする。
【0008】
本発明において、メタノールおよび/またはジメチルエーテルの反応は分枝鎖炭化水素を含む反応生成物を生成する。
【0009】
好ましくはハロゲン化インジウムはInXおよび/またはInX[ここでXはCl、BrおよびI並びにその組合せから選択されるハライドである]の1種もしくはそれ以上である。より好ましくはハロゲン化インジウムはInXであり、特に好ましくはInIであるが、他のインジウム化合物も反応器中に存在させることができる。
【0010】
ハロゲン化インジウムは、インジウムと少なくとも1種のハロゲン原子との両者からなる化合物の形態で反応器に導入することができる。好ましくはハロゲン化インジウムをInXおよび/またはInX、好ましくはInX[ここでXはCl、BrおよびI、並びにその組合せから選択されるハライドである]として反応器に導入する。特に好ましくは、ハロゲン化インジウムはInIとして反応器に導入される。ハロゲン化インジウムは無水塩の形態で反応器に導入することができ、或いは固体ハイドレートの形態で添加することもできる。
【0011】
代案として或いは追加的に、ハロゲン化インジウムは反応器内にて現場で、たとえば反応器における適するインジウム源とハライド源との反応により形成させることもできる。適するインジウム源はたとえば酸化物、水酸化物、酢酸塩、アルコキシド、硝酸塩および硫酸塩のようなインジウム化合物を包含する。適するハライド源はハロゲン化水素およびアルキルハライド、たとえばハロゲン化メチルを包含する。
【0012】
ハロゲン化インジウムの他に、反応器は更にハロゲン化亜鉛、たとえば沃化亜鉛をも含有することができる。しかしながら好ましくは、亜鉛化合物は反応器中に存在させない。
【0013】
メタノールおよび/またはジメチルエーテル反応体の他に、反応器には追加供給原料成分をも導入することができる。適する追加供給原料成分は炭化水素、ハロゲン化炭化水素および酸素化炭化水素、特にオレフィン類、ジエン類、アルコール類およびエーテル類を包含する。追加供給原料成分は直鎖、分枝鎖もしくは環式の化合物(複素環式化合物および芳香族化合物を包含する)とすることができる。一般に、反応器における追加供給原料成分は反応の生成物に混入することができる。
【0014】
有利には、或る種の追加供給原料成分は、分枝鎖炭化水素を生成させる反応のための開始剤および/または促進剤として作用することができる。
【0015】
すなわち、1つの好適具体例において反応器は、分枝鎖炭化水素を生成する反応のための開始剤として作用しうる1種もしくはそれ以上の化合物をも含有する。適する開始剤は好ましくはアルコール、エーテル、オレフィンおよびジエンから選択される1種もしくはそれ以上の化合物(少なくとも2個の炭素原子を有する)である。
【0016】
好適な開始剤化合物はオレフィン、アルコールおよびエーテルであって、好ましくは2〜8個の炭素原子を有する。特に好適な化合物は2−メチル−2−ブテン、エタノールおよびMTBEである。
【0017】
更なる好適具体例においては、反応器中にハロゲン化水素および1〜8個の炭素原子のハロゲン化アルキルの1種もしくはそれ以上から選択された1種もしくはそれ以上の促進剤も存在させる。ハロゲン化メチルおよび/またはハロゲン化水素が好適である。好ましくは促進剤のハライドは、ハロゲン化インジウム触媒のハライドと同じ要素である。
【0018】
開始剤および/または促進剤として作用しうる化合物を含め追加供給原料成分は(新鮮)化合物または化合物の混合物として反応器に導入しうるが、更に分枝鎖炭化水素を生成させる反応に際し反応器内にてその場で生成させることもできる。たとえば、反応にて生成させうるオレフィンおよびジエンを開始剤として作用させうる。更なる例として、たとえば沃化メチルのような生成されうるハロゲン化アルキルは促進剤として作用しうる。すなわち1好適具体例において、反応器に導入される「新鮮」追加供給原料成分の代わりに或いはそれに加え追加供給原料成分(特に開始剤および/または促進剤)を反応器中へ適する循環流の成分として導入することができる。適する循環流は、たとえば反応器からの生成物流の1部を循環させることにより、好ましくは所望の分枝鎖炭化水素(たとえばトリプタン)を分離した後に生成される副生流の少なくとも1部、並びに前記反応器生成物流からの他の有用な生成物を循環させて得ることができる。
【0019】
一般に追加供給原料成分と同様に、反応器に導入される開始剤および/または促進剤は反応生成物に混入することができる。
【0020】
分枝鎖炭化水素を生成させるメタノールおよび/またはジメチルエーテルの反応に際し水が生成される。必要に応じ、追加の水も反応器に導入することもできる。
【0021】
ハロゲン化インジウムからなる触媒はメタノールから分枝鎖炭化水素を生成しうることが判明した。このプロセスは気相もしくは液相プロセスのいずれかとすることができる。しかしながら有利には、このプロセスは実質的に液相で操作される。
【0022】
従って第2面において、本発明はメタノールおよび/またはジメチルエーテルからの分枝鎖炭化水素の製造方法を提供し、この方法は反応器における液相反応組成物にてメタノールおよび/またはジメチルエーテルをハロゲン化インジウムからなる触媒と接触させることを特徴とする。
【0023】
本発明の第2面の好適具体例において、液体反応組成物は更に少なくとも1種の追加供給原料成分をも含み、特に好ましくは少なくとも1種の開始剤および/または少なくとも1種の促進剤を含み、ここで前記追加供給原料成分、開始剤および促進剤は前記した通りである。
【0024】
本発明の第2面のプロセスは、液相反応にて分枝鎖炭化水素を比較的低温度(たとえば100〜300℃)にて生成させることを可能にする。
【0025】
第3面において、本発明は更にメタノールおよび/またはジメチルエーテルからの分枝鎖炭化水素の連続もしくは半連続製造方法をも提供し、この方法は反応器における液相反応組成物にてメタノールおよび/またはジメチルエーテルをハロゲン化インジウムからなる触媒と少なくとも100℃の温度にて接触させることにより、(i)メタノールおよび/またはジメチルエーテルと(ii)分枝鎖炭化水素からなる炭化水素反応生成物とからなる生成混合物を生成させると共に、この方法では触媒を反応器中内で活性型かつ有効濃度に維持することを特徴とする。
【0026】
ハロゲン化インジウムからなる触媒は、前記したような1種もしくはそれ以上の促進剤(たとえば沃化水素および/または下流生成物回収段階からの沃化メチルのような1種もしくはそれ以上の促進剤化合物)を反応器に循環させることにより、反応器内に活性型かつ有効濃度で維持することができる。
【0027】
本発明の第3面による好適具体例において、液体反応組成物は更に少なくとも1種の更なる追加供給原料成分をも含み、より好ましくは少なくとも1種の開始剤を含み、ここで前記追加供給原料成分および開始剤は前記した通りである。前記した更なる追加供給原料成分は好ましくは下流生成物回収段階から循環されたものである。
【0028】
好ましくは本発明の方法は、実質的に液相で行って第1液相におけるメタノールおよび/またはジメチルエーテルからなる生成混合物と、第2液相における分枝鎖炭化水素からなる炭化水素反応生成物とからなる生成混合物を生成させる。しかしながら、生成混合物を冷却して第1および第2液相を生成させることが必要である。次いで炭化水素反応生成物を一般に混合物から分離する。
【0029】
第1液相は典型的には水、メタノールおよびジメチルエーテルの少なくとも1種からなる親水相である。第1液相は更にハロゲン化インジウムからなる触媒をも含むことができる。触媒は完全に溶解することができ、或いは更に固相を存在させることもできると共に触媒を部分的に第1液相に溶解させることもできる。第1液相および任意の固相は反応器に保持することができる。代案として、これを除去および処理して、循環前に水を回収することもできる。代案として或いは追加的に、触媒を第1相から回収し、必要に応じ再使用のため再生することもできる。
【0030】
反応に際し未溶解触媒成分からなる固相の沈殿は、連続プロセスの操作に関し問題を生じうる。一般に、たとえば濾過により、この種の沈殿固体を除去するのが好適である。固体の沈殿は、たとえば沃化亜鉛のようなハロゲン化亜鉛の触媒としての使用に伴う格別の問題である。この種の沈殿物の形成は、本発明のハロゲン化インジウム触媒を用いて回避し、或いは少なくとも顕著に減少することが判明した。
【0031】
存在する場合、第2固相は典型的には分枝鎖炭化水素生成物からなる疎水相である。他の副生物、すなわち炭化水素化合物も第2相に存在することがある。可能な副生炭化水素化合物の例は非分枝鎖パラフィン系およびオレフィン系炭化水素、並びに芳香族炭化水素を包含する。疎水相は一般に親水相よりも密度が低い。疎水相は更に、そこに溶解させてメタノール、ジメチルエーテル、ハロゲン化メチル(たとえば沃化物)および水の1種もしくはそれ以上をも含むことができる。
【0032】
好ましくはメタノールとジメチルエーテルとの混合物が本発明にて使用される。これは、ジメチルエーテルとメタノールとの反応がメタノール単独の反応から生成されるよりも少ない水を生成するという利点を有する。メタノールを分枝鎖炭化水素の全体的製造方法の下流段階にて(たとえばガス流出物を洗浄し或いは分離を助ける際)に使用すれば、メタノールおよび/またはジメチルエーテルを下流プロセスから反応器まで循環させる際にプロセスにおけるジメチルエーテルにより置換しうるメタノールの量に制限が存在しうる。
【0033】
本発明による分枝鎖炭化水素の製造方法は、更に同様なハロゲン化亜鉛反応の場合よりも有利な生成物分布を有することが判明した。特に、著量のトリプタンが生成されうること、並びに生成されるトリプタンの量に比べ一層少ない「重質」生成物(典型的にはCより大)および相応により多量の「軽質」生成物(たとえばC〜C化合物)がハロゲン化インジウム触媒との反応に際し、ハロゲン化亜鉛触媒を用いる反応と比べて、生成されることが判明した。
【0034】
従って分枝鎖炭化水素反応生成物は好ましくは少なくとも10重量%、たとえば10〜60重量%、好ましくは20〜50重量%のトリプタンを含む。
【0035】
本発明の方法においては、一般にメタノールおよび/またはジメチルエーテルを少なくとも100℃の温度にてハロゲン化インジウム触媒と接触させる。好ましくはメタノールおよび/またはジメチルエーテルを100〜300℃、好ましくは100〜250℃、より好ましくは150〜250℃の温度にてハロゲン化インジウムと接触させる。本発明の方法の反応時間は一般に0.1〜6時間、たとえば0.3〜3時間である。より低い温度はより長い反応時間を必要とする傾向がある。反応時間もしくは温度は一般にメタノールの場合よりもジメチルエーテルにつき低い。時間は半連続反応における反応時間または連続プロセスにつき滞留時間(平均滞留時間を含む)とすることができる。本発明の方法の反応は、反応(半連続もしくは連続プロセス)における定期的試料採取により或いは連続プロセスにつき反応流出液にてメタノールもしくはジメチルエーテルの変換および/次いで適当な技術(たとえば気液クロマトグラフィーまたはマススペクトロスコピー)による分析にて監視することができる。
【0036】
本発明の方法の反応は周囲圧力にて行いうるが、一般にたとえば1〜100barg、好ましくは5〜100barg、たとえば50〜100bargのような高められた圧力にて行われる。圧力は自生圧力とすることができ、或いは添加不活性ガス(たとえば窒素もしくはアルゴン)の存在、好ましくは追加水素の存在(これについては更に下記する)にて得ることもできる。
【0037】
メタノールおよび/またはジメチルエーテルおよび水の相互の比および反応に用いられるハロゲン化インジウム触媒との比は広範囲に変化することができる。メタノール、ジメチルエーテルおよび水は反応器内の1つもしくはそれ以上の液相および蒸気相に存在することができ、ハロゲン化インジウムは液相もしくは固相に存在しうるので、メタノール、ジメチルエーテル、水および触媒成分の濃度を炭化水素成分もしくは炭化水素相を排除する反応器における相対的重量部分として現すのが便利である。たとえば全部で(炭化水素成分もしくは相を除く)で100重量部のメタノール、ジメチルエーテル、水および触媒につき、好ましくは触媒は50部より大かつ99部より小、より好ましくは70部より大かつ95部より小、特に好ましくは80部より大かつ90部より小である。水は好ましくは50部より小かつ0より大、より好ましくは25部より小、特に好ましくは10部より小である。メタノールおよびジメチルエーテルのバランスは100重量部となるようにする。炭化水素成分/相はこれに対する追加である。メタノールとジメチルエーテルとの比は、全部がジメチルエーテルから全部がメタノールまでの範囲で変化することができる。好ましくは組成物は反応温度における液相に対する触媒の溶解度を最大化させるよう選択しうるが、本発明の操作は固相が存在しない反応器組成物のみに限定されない。
【0038】
好ましくは、この方法は添加水の実質的不存在下に特に反応体としてメタノールを用いて行われる。水はプロセスの副生物であるため、これは反応が進行する際に反応器から除去して、好適にはプロセスにおける定常状態の濃度を維持することができる。
【0039】
更に珪酸マグネシウムもしくはモレキュラシーブ[たとえば一般に非酸性型における、たとえば金属をアルカリ金属(たとえばNaもしくはK)としうる際の金属型における3Aもしくは13Xのようなゼオライト]などの乾燥剤を用いるような技術により、水を反応器から除去することも可能である。
【0040】
第2液相に溶解した触媒を洗浄除去するための水流として、分離した水生成物の幾分かを循環させるのが有用である。
【0041】
本発明の反応は水素の存在下に行うことができる。水素は反応器中へ新鮮供給物として、および/または循環流における成分として導入することができる。すなわち、水素は反応器に別途の供給流として或いは触媒および/または他の反応体の1種と一緒に導入することができる。代案として或いは追加的に、反応は更に水素化触媒(可溶性もしくは不溶性とすることができる)の存在下に行うこともできる。触媒は一般に第VIII族金属(CAS名称、アドバンスト・インオーガニック・ケミストリー、第5版、コットンおよびウィルキンソン編の周期律表に規定)、たとえばNi、Rh、Pd、Os、Ir、PtおよびRuを含む。好適例は実質的にルテニウム、ニッケルおよび/またはパラジウムよりなる或いはそれらを含む触媒を包含する。好ましくは、必要に応じReの存在下にRu触媒を用いる。第VIII族金属は好ましくは不活性支持体(たとえば活性炭、たとえばチャーコール)またはアルミナ、シリカもしくはシリカ/アルミナ)に支持される。支持触媒における第VIII族金属の量は0.01〜30重量%(金属として現す)とすることができ、たとえば支持Ni触媒は0.01〜10%もしくは10〜30重量%のNiを含むことができる。
【0042】
好適触媒は炭素上のRu、NiもしくはPd、アルミナ上のRuおよびC上のRuおよびRe(2〜6:1の相対重量)を包含する。最も好適な触媒はRu/Cであり、たとえば触媒におけるRuの量は0.01〜10重量%である。
【0043】
本発明の反応は一酸化炭素の存在下に行うこともできる。一酸化炭素を反応器中へ新鮮供給物として、および/または循環流における成分として導入することもできる。すなわち一酸化炭素は反応器に、別途の供給流として或いは触媒および/または他の反応体の1種と一緒に導入することができる。水素と一酸化炭素との両者を反応器に導入する場合、両者の原料として合成ガスを使用することが特に望ましい。反応器における一酸化炭素の存在は、たとえば米国特許第4,166,189号明細書(その内容を参考のためここに引用する)に記載されたように、分枝鎖エステルの生成をもたらす。分枝鎖エステルを製造するには、一酸化炭素を好ましくは反応器に一酸化炭素とメタノールとの少なくとも0.25:1、より好ましくは少なくとも10:1のモル比にて存在させる。
【0044】
反応器に一酸化炭素を含ませることによる分枝鎖エステルの生成は更に、上記したように1種もしくはそれ以上の開始剤および/または1種もしくはそれ以上の促進剤を含ませることにより、特に反応器に1種もしくはそれ以上のオレフィンを導入することにより増大させることができる。
【0045】
上記と対比して、水素を反応器に導入するが分枝鎖エステルの生成を回避もしくは減少させることが望ましい場合、極く低い一酸化炭素含有量を有する水素含有供給物流、たとえば少なくとも5:1の水素と存在する一酸化炭素とのモル比を有するが、好ましくは実質的に一酸化炭素の不存在下に水素を含む供給流を使用することが望ましい。
【0046】
所望の分枝鎖炭化水素反応生成物としてトリプタンを製造する方法に関し本発明を更に説明し、ここで本発明により他の分枝鎖炭化水素も生成しうることが了解されよう。
【0047】
トリプタンの連続もしくは半連続的製造方法において、反応器に供給されるメタノールおよび/またはジメチルエーテルは連続的または半連続的に好ましくは連続的に導入することができる。
【0048】
1具体例において、存在すれば第2液相は第1液相から分離されると共に反応器から回収される。存在すれば第2液相は一般に所望のトリプタン生成物を含む。第2液相は更にトリプテンを含むこともあり、これは所望のトリプタン生成物まで変換することができる。トリプタンはモータガソリンおよび航空ガソリン、特に無鉛モータガソリンおよび無鉛航空ガソリンの製造に有用である。第2相は更に、たとえば他の分枝鎖炭化水素のような他の炭化水素化合物をも含み、その幾分か或いは全部もモータガソリンおよび航空ガソリンの製造に有用である。更に、他の炭化水素化合物、特に副生化合物の幾分かはモータガソリンおよび航空ガソリンの製造以外にも有用である。
【0049】
典型的な有用化合物は、たとえばC〜C分枝鎖アルカン(トリプタン以外)およびC〜C分枝鎖アルケン、たとえばイソブテン、イソペンテンおよび2,3−ジメチルブテンを包含する。更なる有用な化合物は、たとえば芳香族化合物(たとえばメチル置換ベンゼン化合物、特にテトラメチルベンゼンおよびペンタメチルベンゼン)を包含し、これらはたとえば分離し次いでキシレン、特にp−スチレンを製造すべく使用され、これらはPTAの製造につき供給原料として有用である。
【0050】
すなわち本発明の方法は更に、反応器から第2液相を回収すると共にそこからトリプタン含有炭化水素生成物を回収する工程を含む。回収されたトリプタン含有生成物はモータガソリンもしくは航空ガソリン(好ましくは無鉛モータもしくは航空ガソリン)として或いはその添加剤として使用することができる。好ましくは第2液相をたとえば蒸留により精製して、そのトリプタン濃度を増大させることができる。必要に応じ少なくとも1種のモータもしくは航空ガソリン添加剤を、回収第2液相から回収された炭化水素に添加することもできる。
【0051】
本発明の方法においては、更に反応器に蒸気相をも存在させる。蒸気相は水素、水蒸気、炭化水素(トリプタンを含む)、メタノールおよび/またはジメチルエーテルの少なくとも1種を含むことができる。1具体例においては、蒸気相の少なくとも幾分かを反応器から抜き取ることにより水をプロセスから分離する。蒸気を凝縮させると共に、たとえば蒸留により精製してそのトリプタン濃度を増大させることもできる。蒸気相を凝縮および蒸留により精製して、排気するため充分綺麗な生成水流とトリプタンを含有する炭化水素生成物と未反応供給物成分を含有する循環流とを与えることができる。
【0052】
好適具体例において、本発明の方法は断熱反応器または熱除去冷却コイルを備えた反応器にて行うことができ、このコイルは反応熱の20%までを除去することができる。連続法の好適具体例において、反応器には供給物入口を設け、これを通して使用に際し合体循環ガスと新鮮メタノールおよび/またはジメチルエーテルと循環メタノールとを通過させる。使用に際し、メタノールおよび/またはジメチルエーテルは反応器内でハロゲン化インジウムからなる触媒の存在下に反応して、水と炭化水素(トリプタンを含む)と未反応メタノールとからなる混合物を生成する。好ましくは反応器はハロゲン化インジウム触媒からなる親水性液相と、炭化水素を含む第2の疎水性液相と、水およびトリプタンからなる蒸気相とを含有する。水を、反応器からの蒸気相の除去により反応器から除去する。トリプタン生成物は反応器から蒸気相より回収しおよび/または反応器から除去された液相より回収することができる。生成物回収につき除去されたプロセス流にて反応器から除去された触媒成分(ハライドおよび必要に応じインジウム)を反応器に循環させて、反応器内にハロゲン化インジウムからなる触媒の有効濃度を維持することができる。
【0053】
回収蒸気相に存在するメタノールおよび/またはジメチルエーテルは反応器に循環させることができる。
【0054】
適する反応器およびプロセスについては、たとえば国際公開第02/070440号パンフレット(その内容を参考のためここに引用する)に記載されている。
【0055】
トリプタンを含む炭化水素反応生成物をガソリン用の配合成分として使用する場合、好ましくは最初にこれを蒸留してトリプタンフラクションおよびトリプテンフラクションを濃縮する。好ましくは、ガソリン用の配合成分として使用するに先立ち、炭化水素反応生成物を水素化してトリプテンおよび/または他のアルケンをトリプタンおよび/または他のアルカンまで変換させる。
【0056】
本発明の方法を使用する多くの好適方法が存在し、その幾つかを以下説明する。
【0057】
(A)本発明の方法はメタノールおよび/またはジメチルエーテルとハロゲン化インジウムとを反応させて、メタノールおよび/またはジメチルエーテルとトリプタンを含む炭化水素反応生成物との混合物を生成させる段階を含む。次いで炭化水素反応生成物をメタノールおよび/またはジメチルエーテルから、ハロゲン化インジウムまたはその両者から、たとえば異なる液相としての分離により或いは蒸留により分離することができる。炭化水素反応生成物を次いで別々に水素で上記水素化触媒上にて、たとえば1〜10バールの圧力および10〜100℃、好ましくは10〜50℃の温度で水素化させることができる。水素化はトリプテン(および他のアルケン類)をトリプタン(および他のアルカン類)まで変換する。
【0058】
(B)代案として、生成物を水素化する前に炭化水素反応生成物を分離する代わりに、水素化を分離に先立って行うこともできる。水素化の後、トリプタンおよび他のアルカンを蒸留によりメタノールもしくはジメチルエーテルから分離し、これを再使用のため循環させることができる。
【0059】
(C)他の代案として、メタノールおよび/またはジメチルエーテルとハロゲン化インジウムとの反応は水素の存在下に水素化触媒の存在下もしくは不存在下のいずれかで、少なくとも部分的に行うことができる。所望の変換点にて炭化水素反応生成物をハロゲン化インジウムから分離することができ、必要に応じメタノールおよび/またはジメチルエーテルから分離し、好ましくは次いで特に水素化触媒をハロゲン化インジウム反応工程で使用しない場合は触媒上で水素化させる。所望ならば水素化触媒を両工程で使用することができる。炭化水素反応生成物がトリプテンを含有しなければ、炭化水素反応生成物を好ましくはハロゲン化インジウムから分離し、必要に応じメタノールおよび/またはジメチルエーテルから更なる水素化なしに分離する。
【0060】
これら3種の代案(A)〜(C)の全てにおいて、共生成物の水を液相もしくは固相に保持されるハロゲン化インジウム触媒から蒸気相にて分離する。
【0061】
以下、実施例を参照して本発明を更に説明する。
【0062】
比較例A
ZnI(9.35g)とメタノール(1.88g)とエタノール(0.17g)とを15mlのACETMガラス圧力チューブに秤量して入れた。次いで内容物をスパチュラで攪拌すると共に振とうして、ZnIの殆どを溶解させた。若干の熱が発生した。
【0063】
チューブおよび内容物を冷却した後、沃化メチル(0.07g)を添加し、チューブを密封した。このチューブをスチールメッシュに包封すると共に、200℃のオーブンに2時間にわたり入れた。
【0064】
冷却に際し、チューブは2つの液相プラス+多量のオフホワイト色沈殿物を含有した。頂部有機層は透明であり、1部をガスクロマトグラフィー(GC)分析のため除去した。この部分を、GC分析に先立ちCDClで希釈した。底部の液相は暗褐色/赤色であった。
【0065】
GC分析は、有機層がイソブタン、イソペンタン、2−メチル−2−ブテン、2,3−ジメチルブタン、トリプタンおよびトリプテンを含め広範囲の分枝鎖炭化水素を含有することを示した。存在する炭化水素(すなわちメタノール、CDCl、ジメチルエーテルおよび沃化メチルを除く)に関し、有機層は20.1重量%のトリプタンと1.1重量%の2−メチル−2−ブテンと2.8重量%のトリプテンと4.9重量%のヘキサメチルベンゼンとを含有した。
【0066】
実施例1
比較実験Aの方法を反復したが、ただし等モル量のInIをZnIの代わりに使用した。
【0067】
InI(14.38g)とメタノール(1.87g)とエタノール(0.17g)とを15mlのACETMガラス圧力チューブに秤量して入れた。内容物を次いでスパチュラで攪拌すると共に振とうしてInIを溶解させ、その全部が溶解した。若干の熱が発生した。
【0068】
チューブおよび内容物を冷却した後、沃化メチル(0.08g)を添加し、チューブを密封した。チューブをスチールメッシュに包封すると共に200℃のオープン内に2時間にわたり入れた。
【0069】
冷却に際し、チューブは2つの液層および無視しうる沈殿物を含有した。
【0070】
頂部有機層は透明であり、その1部をGC分析のため除去した。この部分を、GC分析に先立ちCDClで希釈した。
【0071】
GC分析は、有機層が著量のイソブタン、イソペンタン、2,3−ジメチルブタンおよびトリプタンを含め広範囲の分枝鎖炭化水素を含有することを示した。
【0072】
炭化水素生成物分布に関し、実施例1で生成された分枝鎖炭化水素生成物は主としてアルカンであることが観察された。比較により、比較実験Aは顕著に多量のアルケン生成物を示した。より詳細には、存在する炭化水素(すなわちメタノール、CDCl、ジメチルエーテルおよび沃化メチルを除く)に関し、有機層は26.4重量%のトリプタンと0.4重量%のヘキサメチルベンゼンとを含有した。有機層は無視しうる量の2−メチル−2−ブテンおよびトリプテンしか含有しなかった。
【0073】
実施例1は更に、比較実験Aと対比して増加したイソペンタンおよび2,3−ジメチルブタン生成物を示した[トリプタンおよび全「重質物」(ここで「重質物」は8個もしくはそれ以上の炭素原子を有する化合物、たとえばテトラメチルベンゼン、ペンタメチルベンゼンおよびヘキサメチルベンゼンである)の両者に関する]。
【0074】
実施例1は比較実験Aと対比して増加したペンタメチルベンゼンおよびテトラメチルベンゼンを示したが、生成されたトリプタンの量に対し全「重質物」生成も低かった。
【0075】
従って実施例1は、沃化亜鉛の代わりに触媒として沃化インジウムを使用すればトリプタンの顕著な生成を顕著な沈殿なしにもたらすことを示す。更に、比較実験Aと対比して生成物分布は、分枝鎖オレフィンと比較して増加した分枝鎖アルカンの方向に指向すると共に、「軽質物」生成(「軽質物」とは一般に6個もしくはそれ以下の炭素原子を有する化合物である)と比較して「重質物」生成は減少した。
【0076】
実施例2
実施例1の方法を反復したが、ただしエタノールの代わりに反応にはMTBEを使用した。
【0077】
InI(14.80g)とメタノール(1.92g)とMTBE(0.20g)とを15mlのACETMガラス圧力チューブに秤量して入れた。次いで内容物をスパチュラで攪拌すると共に振とうしてInIを溶解させ、その全部が溶解した。若干の熱が発生した。
【0078】
チューブおよび内容物が冷却された後、沃化メチル(0.09g)を添加し、チューブを密封した。このチューブをスチールメッシュに包封すると共に、200℃のオープン内に2時間にわたり入れた。
【0079】
冷却に際しチューブは2つの液層および無視しうる沈殿物を含有した。
【0080】
頂部有機層は透明であり、1部をGC分析のため除去した。この部分をCDCl中にGC分析に先立ち希釈した。
【0081】
GC分析は、有機層が著量のイソブタン、イソペンタン、2,3−ジメチルブタンおよびトリプタンを含め広範囲の分枝鎖炭化水素を含有することを示した。
【0082】
炭化水素生成物分布に関し、実施例2で生成された分枝鎖炭化水素生成物は主としてアルカンであることが観察された。比較により比較実験Aは顕著に多いアルケン生成物を示した。
【0083】
より詳細には、存在する炭化水素(すなわちメタノール、CDCl、ジメチルエーテルおよび沃化メチルを除く)に関し、有機層は25.3重量%のトリプタンおよび0.1重量%のヘキサメチルベンゼンを含有した。有機層は無視しうる量の2−メチル−2−ブテンおよびトリプテンしか含有しなかった。
【0084】
実施例2は、比較実験Aに対比し、増加したイソペンタンおよび2,3−ジメチルブタン生成物を示した(トリプタンおよび全「重質物」の両者に関し)。
【0085】
実施例2は比較実験Aに対比し増加したペンタメチルベンゼンおよびテトラメチルベンゼンを示したが、生成したトリプタン量の量に対し全「重質物」生成も低かった。
【0086】
すなわち実施例2は、沃化亜鉛の代わりに触媒として沃化インジウムを使用すればトリプタンの顕著な生成を顕著な沈殿なしにもたらすことを示す。更に、比較実験Aと比較して生成物分布は分枝鎖オレフィンと比較して増加した分枝鎖アルカンの方向に指向すると共に、「軽質物」生成と比較して「重質物」生成は減少した。
【0087】
比較実験B
ZnI(2.33g)とメタノール(1.87g)とエタノール(0.17g)とを15mlのACETMガラス圧力チューブに秤量して入れた。次いで内容物をスパチュラで攪拌すると共に振とうしてZnIを溶解させ、その全部が溶解した。若干の熱が発生した。チューブおよび内容物が冷却した後、沃化メチル(0.40g)と2−メチル−2−ブテン(0.005g)とを添加し、チューブを密封した。チューブをスチールメッシュに包封すると共に、200℃のオーブン内に2時間にわたり入れた。
【0088】
冷却に際しチューブは1つのみの液層を含有し、これは赤色/褐色であった。有機層は存在しなかった。
【0089】
従って、この濃度にて沃化亜鉛触媒は全くまたは僅かに無視しうる活性しか持たない。
【0090】
実施例3
比較実験Bの方法を反復したが、ただしZnIに加えてInIを反応に付加した。
【0091】
InI(3.63g)とZnI(2.33g)とメタノール(1.87g)とエタノール(0.17g)とを15mlのACETMガラス圧力チューブに秤量して入れた。次いで内容物をスパチュラで攪拌すると共に振とうしてInIをおよびZnIを溶解させ、その全てが溶解した。若干の熱が発生した。
【0092】
チューブおよび内容物が冷却した後、沃化メチル(0.40g)と2−メチル−2−ブテン(0.005g)とを添加し、チューブを密封した。チューブをスチールメッシュに包封すると共に、200℃のオープン内に2時間にわたり入れた。
【0093】
冷却に際しチューブは2つの液層および少量のオフホワイト色沈殿物を含有した。頂部有機層は透明であり、1部をGC分析のため除去した。この部分をCDClでGC分析に先立ち希釈した。
【0094】
GC分析は有機層がイソブタン、2−メチル−2−ブテン、イソペンタン、2,3−ジメチルブタン、トリプタンおよびトリプテンを含め広範囲の分枝鎖炭化水素を含有することを示した。
【0095】
炭化水素生成物分布に関し、実施例3で生成された分枝鎖炭化水素生成物は主としてアルカンであることが観察された。
【0096】
より詳細には、存在する炭化水素(すなわちメタノール、CDCl、ジメチルエーテルおよび沃化メチルを除く)に関し、有機層は26.4重量%のトリプタンおよび8.7重量%のヘキサメチルベンゼンを含有した。有機層は極く少量の2−メチル−2−ブテン(0.1重量%)および無視しうる量のトリプテンしか含有しなかった。更に、極く少量のペンタメチルベンゼンおよびテトラメチルベンゼンが存在した。
【0097】
この実施例は、ハロゲン化インジウムとハロゲン化亜鉛との触媒の混合物を使用しうることを示す。
【0098】
比較実験C
ZnI(9.30g)とメタノール(2.01g)とを15mlのACETMガラス圧力チューブに秤量して入れた。次いで内容物をスパチュラで攪拌すると共に振とうしてZnIを溶解させ、その殆どが溶解した。若干の熱が発生した。チューブおよび内容物が冷却された後、沃化メチル(0.40g)と2−メチル−2−ブテン(0.005g)とを添加すると共にチューブを密封した。このチューブをスチールメッシュに包封すると共に、200℃のオーブン内に2時間にわたり入れた。冷却に際しチューブは2つの液層および多量のオフホワイト色沈殿物を含有した。下部層は赤色/暗褐色であった。このチューブを氷水で冷却すると共に、シクロヘキサンを頂部有機層に内部標準として添加し、チューブの内容物を振とうし、次いで沈降させた。頂部有機層の1部(50μl)をガスクロマトグラフィ(GC)分析のため除去した。この部分を、GC分析に先立ちCDCl(250μl)で希釈した。
【0099】
GC分析は、有機層が相当量のトリプタンおよびトリプテンを含む広範囲の分枝鎖炭化水素を含有することを示した。存在する炭化水素(すなわちメタノール、CDCl、ジメチルエーテルおよび沃化メチルを除く)の詳細な生成物分布を表2に示す。
【0100】
実施例4
比較実験Cの方法を反復したが、ただしZnIの代わりに反応にはInIを使用した。
【0101】
InI(14.47g)とメタノール(2.00g)とを15mlのACETMガラス圧力チューブに秤量して入れた。次いで内容物をスパチュラで攪拌すると共に振とうしてInIを溶解させ、その殆どが溶解した。若干の熱が発生した。
【0102】
チューブおよび内容物が冷却した後、沃化メチル(0.40g)と2−メチル−2−ブテン(0.005g)とを添加し、チューブを密封した。このチューブをスチールメッシュに包封すると共に、200℃のオーブン内に2時間にわたり入れた。
【0103】
冷却に際しチューブは2つの液層および無視しうる沈殿物を含有した。幾らかの小無色結晶も液層より上方のチューブの側面に観察された。下層は赤色/暗褐色であった。このチューブを氷水で冷却すると共に、シクロヘキサンを頂部有機層に内部標準として添加し、チューブの内容物を振とうし、次いで沈降させた。 頂部有機層の1部(50μl)をガスクロマトグラフィー(GC)分析のため除去した。この部分をGC分析に先立ちCDCl(250μl)で希釈した。
【0104】
GC分析は、有機層が相当量のトリプタンを含め広範囲の分枝鎖炭化水素を含有することを示した。存在する炭化水素(すなわちメタノール、ジメチルエーテル、CDCl、シクロヘキサンおよび沃化メチルを除く)の詳細な生成物分布を表2に示す。
【0105】
実施例4における有機層の総容積は比較実験Cの場合よりも約50%低いことが観察された(同じくシクロヘキサン内部標準の相対的GCピーク寸法により支持される)。
【0106】
炭化水素生成物分布に関し、実施例4で生成された分枝鎖炭化水素生成物は主としてアルカンであることが観察されたのに対し、比較実験Cは著量のトリプテンおよび2−メチル−2−ブテンを生成した。
【0107】
より詳細には、比較実験Cにおける有機層は18.87重量%のトリプタンと3.79重量%のトリプテンと56.21重量%の「重質物」(ヘキサメチルベンゼン以外)と6.51%のヘキサメチルベンゼンとを含有した。これに対し、実施例4における有機層は29.95重量%のトリプタンとヘキサメチルベンゼン以外の僅か27.77重量%の「重質物」と6.10%のヘキサメチルベンゼンとを含有した。実施例4は、比較実験Cと比べトリプタンおよび全「重質物」の両者に関し、増加したイソペンタンおよび2,3−ジメチルブタン生成物を示した。
【0108】
更に実施例4は比較実験Cと比べ増加したペンタメチルベンゼンおよびテトラメチルベンゼンを示したが、生成されたトリプタンの量は全「重質物」生成に関し実施例4につき顕著に低かった。
【0109】
すなわち実施例4は、沃化亜鉛の代わりに触媒としての沃化インジウムを使用すればトリプタンの顕著な生成を顕著な沈殿なしにもたらすことを示す。更に、比較実験Cに比べ生成物分布は分枝鎖オレフィンと比較して増加した分枝鎖アルカンの方向に指向すると共に、「軽質物」生成に比べ「重質物」生成は低かった。
【0110】
各種の実験の充填組成を表1に要約する。
【0111】
【表1】

【0112】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタノールおよび/またはジメチルエーテルから分枝鎖炭化水素を製造する方法において、メタノールおよび/またはジメチルエーテルをハロゲン化インジウムからなる触媒と反応器にて接触させることを特徴とする分枝鎖炭化水素の製造方法。
【請求項2】
ハロゲン化インジウムがInXおよび/またはInX[ここでXはCl、Brおよび/またはI並びにその混合物から選択されるハライドである]の1種もしくはそれ以上である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ハロゲン化インジウムの他に反応器は更にハロゲン化亜鉛をも含有する請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
メタノールおよび/またはジメチルエーテルの各反応体に加え、更に炭化水素、ハロゲン化炭化水素および酸素化炭化水素から選択される追加供給原料成分をも反応器に導入しうる請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
追加供給原料成分をオレフィン、ジエン、アルコールおよびエーテルから選択する請求項4に記載の方法。
【請求項6】
追加供給原料成分が、分枝鎖炭化水素を生成する反応のための開始剤および/または促進剤として作用する請求項4に記載の方法。
【請求項7】
反応器が、アルコール、エーテル、オレフィンおよびジエンから選択されると共に少なくとも2個の炭素原子を有する反応のための開始剤として作用する1種もしくはそれ以上の化合物を含有する請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ハロゲン化水素および1〜8個の炭素原子のハロゲン化アルキルの1種もしくはそれ以上から選択される1種もしくはそれ以上の促進剤が反応器中に存在する請求項6に記載の方法。
【請求項9】
実質的に液相にて操作する請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
メタノールおよび/またはジメチルエーテルをハロゲン化インジウムと100〜300℃の温度にて接触させる請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
反応を1〜100bargの範囲の圧力にて行う請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
反応を水素の存在下に行う請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
反応を水素化触媒の存在下に行う請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
反応を一酸化炭素の存在下に行う請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
メタノールおよび/またはジメチルエーテルから分枝鎖炭化水素を製造するための連続もしくは半連続方法であって、反応器における液相反応組成物にてメタノールおよび/またはジメチルエーテルをハロゲン化インジウムからなる触媒と少なくとも100℃の温度で接触させて、(i)メタノールおよび/またはジメチルエーテルと(ii)分枝鎖炭化水素からなる炭化水素反応生成物とからなる生成混合物を生成させ、更に触媒を反応器中で活性型かつ有効濃度に維持する請求項1に記載の方法。
【請求項16】
下流生成物回収段階からの1種もしくはそれ以上の促進剤化合物を反応器に循環させることにより、ハロゲン化インジウムからなる触媒を反応器に活性型かつ有効濃度に維持する請求項15に記載の方法。
【請求項17】
液体反応組成物が更に少なくとも1種の追加供給原料成分をも含み、前記更なる追加供給原料成分が好ましくは下流生成物回収段階から循環されたものである請求項16に記載の方法。

【公表番号】特表2007−504206(P2007−504206A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525173(P2006−525173)
【出願日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【国際出願番号】PCT/GB2004/003578
【国際公開番号】WO2005/023733
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(597142701)ビーピー オイル インターナショナル リミテッド (16)
【氏名又は名称原語表記】BP OIL INTERNATIONAL LIMITED
【Fターム(参考)】