説明

分水器

【課題】樋の寸法にかかわらず上側縦樋および下側縦樋をそれぞれ取り付けることができる汎用性のある分水器を提供する。
【解決手段】分水器1において、分水器本体の連通口には、雨水供給用ホースHの掛止め部30が設けられており、さらに、前記掛止め部30は、雨水タンクの内部洗浄用のホースhが取り付けられるホース取付部14を備えている一方、上カバー6は、分水器本体の排出口7の上方に位置するよう上側縦樋2の下流端部3aに挿通可能な大きさに形成された上下方向の高さを有する円筒部分10と、分水器本体の前記連通口8の上方に位置するよう前記円筒部分10の周面下端部分10aから水平方向に連設された舌片部分11とよりなり、また、分水器本体の前記係止部20の外周側には、異なる口径を有する下側縦樋3にそれぞれ対応可能となるように異なる口径用の係止部材40が装着可能に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、分水器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
雨水を園芸用などの水に利用するため建築物に設置された上側縦樋と下側縦樋間に分水器を設け、この分水器を介して分水器の下流に位置する雨水タンクに雨水を貯留する技術が下記特許文献1に提案されている。
【0003】
前記分水器は、上側縦樋によって形成される雨水流路を、下側縦樋によって形成される雨水排出流路と、前記雨水タンクとに分流するための器具である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−127371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一般住宅や集合住宅あるいは公共施設といった建築物に設置された既設の樋の断面形状は、一般に丸型、角型をはじめ種々のものが存在する。例えば、丸型のものであれぱ種々の異なる径を有する寸法(大きさ)のものが存在し、また、角型のものでも種々の異なる辺(線分の長さ)を有する寸法(大きさ)のものが存在する。しかし、前記特許文献1の分水器は、新築住宅を建てる際に一括してこれらを使用する目的で設けたことから、上側縦樋と下側縦樋は専属の大きさのものに限られており、また、決まった容量の雨水タンク専属の雨水供給用ホースを具備しており、そのために既設の住宅に設置されている縦樋を利用して分水器を設置する場合、縦樋が前記特許文献1で用いる寸法のものと異なっていれば、当然のことながら前記特許文献1の分水器を適用することはできなかった。また、既設の一般住宅では通常各種の小口径の形状寸法の縦樋が用いられているが、その一般住宅に設置されている縦樋を取り替えても必ずしも前記特許文献1で用いる寸法の縦樋を使うわけではない。また、集合住宅や公共施設用の縦樋は一般住宅用の縦樋よりも大口径の形状寸法のものである。したがって、建築物の施工にあたり一般住宅のみならず集合住宅や公共施設といった幅広い施工現場での縦樋の取り付けを、施工現場での部材の再調達を必要とすることなく行える分水器が望まれている。
【0006】
この発明は、上述の事柄に留意してなされたもので、その目的は、一般住宅や集合住宅あるいは公共施設といった建築物に設置された既設の樋は種々の異なる径を有する寸法のもの(小口径の樋から大口径の樋まで)が存在するが、樋の寸法にかかわらず上側縦樋および下側縦樋をそれぞれ取り付けることができる汎用性のある分水器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の分水器は、建築物に設置された上側縦樋と下側縦樋間に設けられ、上側縦樋によって形成される雨水流路を、下側縦樋によって形成される雨水排出流路と、雨水供給用ホースを介して雨水を貯留する雨水タンクとに分流するための分水器において、
上方開口を有する分水器本体と、この分水器本体に着脱自在に装着される上カバーとを備え、
分水器本体は、雨水排出流路の入口に連通する排出口と、雨水タンクの入口に連通する連通口とを有するとともに、
下側縦樋の上流端部を前記排出口に接続するため分水器本体は、異なる口径を有する下側縦樋にそれぞれ対応可能となるように設けた複数の係止部を有する一方、
分水器本体の前記連通口には、前記雨水供給用ホースの掛止め部が設けられており、
さらに、前記掛止め部は、前記雨水タンクの内部洗浄用のホースが取り付けられるホース取付部分を備えている一方、
前記上カバーは、分水器本体の前記排出口の上方に位置するよう上側縦樋の下流端部に挿通可能な大きさに形成された上下方向の高さを有する円筒部分と、分水器本体の前記連通口の上方に位置するよう前記円筒部分の周面下端部分から水平方向に連設された舌片部分とよりなり、
また、分水器本体の前記係止部の外周側には、異なる口径を有する下側縦樋にそれぞれ対応可能となるように異なる口径用の係止部材が装着可能に設けられることを特徴としている(請求項1)。
【0008】
この発明では、前記円筒部分と前記排出口は同一軸線上に位置するように構成されており、
また、前記分水器本体は、前記雨水流路を流れてきた雨水が前記排出口の側と前記連通口の側へと通過可能な網状体を前記排出口に連通させた状態で前記排出口と前記円筒部分間に有するとともに、前記排出口と前記連通口とを同一平面に有する底部を有し、
さらに、前記底部は、前記網状体を通過して前記連通口の側に流れる雨水を整流化し、整流化した雨水を前記連通口に流しうるリブを前記排出口のまわりに有する一方、
前記係止部材は、分水器本体の前記底部における前記係止部の外周側に着脱自在に装着可能に構成されたリング体であるのが好ましい(請求項2)。
【0009】
上述したように、一般住宅や集合住宅あるいは公共施設といった建築物に設置された既設の樋(上側縦樋と下側縦樋)の断面形状は、一般に丸型、角型をはじめ種々のものが存在する。そこで、この発明において、異なる径を有する上側縦樋、異なる径を有する下側縦樋とは、断面形状が丸型だけの縦樋だけではなく、少なくとも断面形状が角型(三つ以上の線分で囲まれた平面図形;たとえば正方形、長方形を含む)の縦樋をも含む。そして、前記丸型の縦樋であれば、異なる径の径とは内径あるいは外径を意味し、また、前記角型の縦樋であれば、異なる径の径とは、線分(辺)の長さを意味する。
【発明の効果】
【0010】
建築物に設置された既設の樋は種々の異なる径を有するものが存在するが、本願の請求項1に係る発明では、分水器本体は、雨水排出流路の入口に連通する排出口と、雨水供給用ホースを介して雨水を貯留する雨水タンクの入口に連通する連通口とを有するとともに、分水器本体に装着される上カバーが、分水器本体の排出口の上方に位置するよう大口径の上側縦樋の下流端部に挿通可能な大きさに形成された上下方向の高さを有する円筒部分を含むので、上カバーの円筒部分内に小口径から大口径までの異なる径を有する上側縦樋の下流端部を挿通することができ、この発明の分水器は、小口径から大口径までの異なる径を有する上側縦樋に適用できる。また、分水器本体に設けた複数の小口径用の係止部のうち該当する下側縦樋の径に対応する係止部に下側縦樋の上流端部を係合させることで下側縦樋を分水器本体の排出口に直接接続することができる。さらに、分水器本体の前記小口径用の係止部の外周側には、異なる径を有する大口径の下側縦樋にそれぞれ対応可能となるように大口径用の係止部材が装着可能に設けられるので、この発明の分水器は、小口径から大口径までの異なる径を有する下側縦樋に適用できる。その結果、この発明は、小口径から大口径までのおおよそ全ての樋に取り付けが可能な分水器を提供することができる。さらに、本願の請求項1に係る発明では、上カバーは、分水器本体に着脱自在に装着されるよう構成されているので、分水器本体に装着されている上カバーを常時分水器本体から、上側縦樋の下流端部に沿って上方側に取り外すことができる一方、分水器本体の連通口に設けられた、前記雨水供給用ホースの掛止め部は、雨水タンクの内部洗浄用のホースが取り付けられるホース取付部分を備えているので、上カバーを分水器本体から取り外した後、内部洗浄用のホースの下流端を掛止め部の前記ホース取付部分に取り付けることにより、内部洗浄用のホース内に流した洗浄水を雨水供給用ホースを介して雨水タンク内へ供給するとともに、雨水タンクに設けられている吐水口を開放することにより、雨水タンクの内部洗浄を常時行うことができ、衛生上の問題を解決することができる。
【0011】
また、上カバーは、分水器本体の連通口の上方に位置するよう前記円筒部分の周面下端部分から水平方向に連設された舌片部分を含んでおり、さらに、本願の請求項2に係る発明では、円筒部分と前記排出口は同一軸線上に位置するように構成されているので、雨水流路を流れてきた雨水を連通口の側よりも排出口の側により多く流し易くでき、そのために雨水と共に流れている泥等の異物が分水器本体の底部を流れて連通口の側、ひいては雨水タンクに異物が流入する可能性を小さくできる。また、上側縦樋を介して雨水が分水器本体に流入した際、雨水は乱流となっている。すなわち、上側縦樋によって形成される雨水流路を流れてきた雨水は乱流となっている。そのため、本願の請求項2に係る発明では、分水器本体の底部で雨水排出流路の入口に連通する排出口のまわりにリブを設けることにより、網状体を通って、雨水タンクの入口に連通する連通口の側に流れる雨水(底部を流れる雨水)を整流化することができ、その結果、前記異物の底部への偏析を防止することができる。
【0012】
つまり、雨水流路から渦をなして網状体に流れてきた乱流状態の雨水は、分水器本体の底部を流れる雨水と排出口を流れる雨水に分水されるが、そのうち前記連通口の側に流れてきた雨水は、前記リブを設けていない分水器本体の場合は、雨水が前記排出口のまわりを乱流状態で前記連通口に向かって流れることから、乱流の雨水と共に流れてきた異物の一部が雨水が流れ去ったあとに底部に偏析し、これが積もり積もって雨水の流れを阻害するおそれがあり、その結果、雨水タンクに異物が流入し、雨水タンク内の雨水の水質を悪化させ、衛生上の問題が発生するおそれがある、という不都合がある。また、偏析した異物は流れを阻害するから、つまり、偏析した異物は流れの抵抗ともなり、乱流を発生し、上カバーと分水器本体の当接部からの漏水事故に繋がるおそれがある。しかし、本願の請求項2に係る発明では、網状体を通って前記連通口の側に流れてきた乱流状態の雨水が前記リブにより、整流化することができる。そのため異物は整流化した雨水と共に前記連通口に向かって流れることから、雨水が流れ去ったあとの底部に異物が偏析するのを防止することができるとともに、上カバーと分水器本体の当接面部からの漏水事故をも未然に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の一実施形態における使用状態を示す全体構成説明図である。
【図2】上記実施形態における使用状態を示す構成説明図である。
【図3】上記実施形態を示す斜視図である。
【図4】(A)は、上記実施形態で用いた上カバーを示す平面図である。(B)は、図4(A)におけるA−A線断面図である。(C)は、図4(A)におけるB−B線断面図である。(D)は、上記実施形態で用いた前記上カバーを示す底面図である。(E)は、上記実施形態で用いた前記上カバーを斜め上方からみた斜視図である。(F)は、上記実施形態で用いた前記上カバーを斜め下方からみた斜視図である。
【図5】(A)は、大口径の縦樋における下側縦樋の上流端部が装着可能な上記実施形態で用いたリング体(大口径用の係止部材の一例)を示す平面図である。(B)は、図5(A)におけるA−A線断面図である。(C)は、上記実施形態で用いた前記リング体(大口径用の係止部材の一例)に設けた係止ピンを示す縦断面図である。(D)は、上記実施形態で用いた前記リング体(大口径用の係止部材の一例)を示す側面図である。(E)は、上記実施形態で用いた前記リング体(大口径用の係止部材の一例)を斜め上方からみた斜視図である。(F)は、上記実施形態で用いた前記リング体(大口径用の係止部材の一例)を斜め下方からみた斜視図である。
【図6】図1に対応する簡略化した透視斜視図を示し、上側縦樋と前記上カバーと分水器本体と分水器本体内に設置されている補強用のリブ付き網状体(補強用のリブ付きストレーナ)と掛止め部と分水器本体の底部に装着されている前記リング体(大口径用の係止部材の一例)と下側縦樋とを示している。
【図7】上記実施形態における使用状態を示す要部構成説明図である。
【図8】上記実施形態における前記リング体(大口径用の係止部材の一例)装着前の分水器本体と前記上カバーを示す斜視図である。
【図9】上記実施形態で用いた補強用のリブ付き網状体(補強用のリブ付きストレーナ)を示す斜視図である。
【図10】(A)は、上記実施形態で用いた補強用のリブ付き網状体(補強用のリブ付きストレーナ)を示す平面図である。(B)は、図10(A)におけるA−A線断面図である。(C)は、図10(A)におけるB−B線断面図である。(D)は、上記実施形態で用いた補強用のリブ付き網状体(補強用のリブ付きストレーナ)を示す側面図である。(E)は、図10(C)におけるc部を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1〜図10は、この発明の一実施形態を示す。図1〜図10において、分水器1は、例えば一般住宅や集合住宅あるいは公共施設といった建築物のうち、集合住宅や公共施設に設置された大口径の上側縦樋2とこれと同口径の下側縦樋3間、または、一般住宅に設置された小口径の上側縦樋2’とこれと同口径の下側縦樋3’間に設けられ、上側縦樋2,2’によって形成される雨水流路iを、下側縦樋3,3’によって形成される雨水排出流路jと、雨水を貯留する雨水タンクWに至る貯留流路kとに分流するためのものである。W’は、雨水タンクWの吐水口である。図2は、分水器1を、大口径の上側縦樋2と、これと同口径の下側縦樋3との間に設けた状態を示しているが、図2において二点鎖線で示すように、この発明では、分水器1を、小口径の上側縦樋2’とこれと同口径の下側縦樋3’間にも設けることができる。この実施形態で用いる上側縦樋2は外径φが例えば89mmであり、これに対応する下側縦樋3も外径φが89mmである。なお、大口径用の係止部材40(後述する)への下側縦樋3の装着状態を説明するため便宜上図2には、外径φが89mmの下側縦樋3以外に、2種類の外径φ(87mm,83mm)を有する下側縦樋を同時に記載している。
【0015】
分水器1は、上方開口4を有する分水器本体5と、この分水器本体5に装着される上カバー(外装カバー)6とを備え、分水器本体5は、雨水排出流路jの入口(下側縦樋3の上流側開口)3aに連通する平面視円形の排出口7と、雨水タンクWの入口uに連通する平面視円形の連通口8とを有する。また、下側縦樋3’の上流端部3b’を前記排出口7に接続するため分水器本体5は、異なる小口径を有する下側縦樋3’にそれぞれ対応可能となるように設けた複数の小口径用の係止部20(図2、図8参照)を有している。一方、前記連通口8には、雨水供給用ホースHに接続可能な掛止め部30が設けられている。さらに、前記上カバー6は、前記排出口7の上方に位置するようこの実施形態では大口径の上側縦樋3のうち最も大きな口径(外径φが89mm)を有する上側縦樋3の下流端部3aに挿通可能な大きさに形成された上下方向(両矢印aで示す方向)の高さを有する円筒部分10と、前記連通口8の上方に位置するよう前記円筒部分10の周面下端部分10aからa方向とは直角な方向である水平方向(b方向)に連設された平面視舌片状の舌片部分11とよりなる。また、前記小口径用の係止部20の外周側には、外径φが例えば89mm,87mm,83mmといった異なる大口径を有する下側縦樋3にそれぞれ対応可能となるように大口径用の係止部材40(図2、図5参照)が装着可能に設けられている。
【0016】
さらに、前記円筒部分10と前記排出口7は図2において一点鎖線Pで示す同一軸線上に位置するように構成されており、また、分水器本体5は、雨水流路iを流れてきた雨水が前記排出口7の側と前記連通口8の側へと通過可能な逆円錐台形状の網状体(ストレイナー)Sを前記排出口7に連通させた状態で前記排出口7と前記円筒部分10間に有するとともに、前記排出口7と前記連通口8とを同一平面に有する底部12を有している。その底部12は、前記網状体Sの外周部分fを通過して底部12の上面12aに至り、前記連通口7の側に流れる雨水を整流化し、整流化した雨水を前記連通口8に流しうる整流化用リブ19を前記排出口7のまわりで前記排出口7を中心とする放射状に有する。また、前記上カバー6は、分水器本体5に着脱自在に装着されるよう構成され、前記大口径用の係止部材40は、分水器本体5の前記底部12における前記小口径用の係止部20の外周側に着脱自在に装着可能に構成されたリング体で構成されている。また、雨水タンクWの内部洗浄を行う洗浄水を前記雨水供給用ホースHを介して雨水タンクW内へ供給するため前記掛止め部30は、内部洗浄用のホースh(図2参照)が取り付けられるホース取付部分14を備えている。
【0017】
図8において、複数の前記小口径用の係止部20は、分水器本体5の前記底部12の下面に設けられている。その係止部20のうち、例えば円弧状係止部分20aと環状係止部分20bは、排出口7を通る前記軸線Pを中心線とする同心円上に環状係止部分20bが円弧状係止部分20aよりも内側(排出口7側)に位置する状態で、例えば3つの異なる径を有する小口径の下側縦樋3’に対応可能となるように設けられている。すなわち、前記円弧状係止部分20aは前記軸線Pを中心線とする同一円上に適宜間隔をおいて、かつ、外周にそれぞれ同じ曲率の円弧面を有する状態で複数配置されており、前記各円弧面の外周面側に小口径の下側縦樋3’が嵌め込まれる一方、前記環状係止部分20bの外周面と内周面の2箇所に小口径の下側縦樋3’が嵌め込まれる。また、前記係止部20のうち、例えば係止部分20cは排出口7のまわりに排出口7を挟む形で1つずつ線対称になるよう対向配置されている。前記係止部分20cは90°の円周角をおいて排出口7の接線方向に沿う方向に矩形面を有する状態で配置されている。そして、この係止部分20cに内嵌する形で角型の下側縦樋3’が係止部20に取り付けられるとともに、これよりも小さな角型の下側縦樋3’が前記環状係止部分20bを内接させた状態で係止部20に取り付けられる。
【0018】
また、前記掛止め部30は図2に示すように、内部洗浄用のホースhが取り付けられるホース取付部分14が形成されている。そのため上カバー6を分水器本体5から取り外した後、さらに排出口7に排出口上方から着脱自在に装着されている網状体Sを排出口7から取り外し、続いて、内部洗浄用のホースhの下流端xを掛止め部30の前記ホース取付部分14に取り付けることにより、内部洗浄用のホースh内に流した洗浄水を雨水供給用ホースHを介して雨水タンクW内へ供給するとともに、雨水タンクWに設けられている吐水口W’を開放することにより、雨水タンクWの内部洗浄を常時行うことができ、衛生上の問題を解決することができる。
【0019】
また、図5に示す大口径用の係止部材40である前記リング体を分水器本体5の前記底部12の下面に位置決めするため前記底部12の下面における小口径用の係止部20(20a〜20c)の外周縁Rには図8に示すように、例えば90°の円周角をおいて複数の位置決め用円形穴27が設けられている。一方、前記リング体40は、図2、図5に示すように、上から順に、外径φが89mmの下側縦樋3が外嵌可能な大径部40aと、外径φが87mmの下側縦樋3が外嵌可能な中間径部40bと、外径φが83mmの下側縦樋3が外嵌可能な小径部40cとを有する状態で構成されている。そして、前記リング体40は、前記リング体40を前記底部12の下面に位置決めするため前記各位置決め用円形穴27に対向するよう90°の円周角をおいて前記リング体40の内周面に、前記各位置決め用円形穴27へ嵌込可能に構成された複数の筒状の位置決めピン28(図5〜図7参照)を有する。この筒状の位置決めピン28は、位置決め用円形穴27へ嵌込んだときに前記大径部40aの上面mが前記底部12の下面の外周縁Rに当接可能なように所定長さだけ前記大径部40aの上面から突出した状態で設けられている。そして、この位置決めピン28は、位置決め用円形穴27よりも大径に形成されている一方、位置決め用円形穴27に嵌込可能なように縮径可能に構成されており、位置決め用円形穴27へ嵌込んだ後には拡径可能にするため位置決めピン28は縦溝Kを有している。このように前記リング体40を位置決めすることにより、前記リング体40を分水器本体5の前記底部12の下面に位置させることができる。さらに、図8に示すように、上述した矩形面を有する係止部分20cの両端からそれぞれ外側内向きに折れ曲がる状態で上述した円弧状係止部分20aが連設されている。
【0020】
また、逆円錐台形をなす前記網状体(ストレイナー)Sは、網状体Sを形成する格子状の多数の網部分Eよりなる環状部分50と、網状体(ストレイナー)Sの下方開口Lの中心xから放射状に適宜の間隔を有して上向き傾斜した状態で延びるとともに、前記環状部分50を周方向の複数の領域に区画する形で補強用のリブGを有する。そして、補強用のリブGは多数の網部分Eによって形成される傾斜上面よりも上方に突出して設けられる。さらに、網状体(ストレイナー)Sの下方開口Lを形成する二重構造の同心円状の環状部28d,28e間に排出口7の上端部7aが嵌め込まれる。
【0021】
なお、泥を含む雨水が仮に雨水供給用ホースHの掛止め部30に勢い良く流れ込んできても、泥を含む雨水の大半は、内部洗浄用のホースhが取り付けられる筒状のホース取付部分14の外周に形成される環状空間60に一旦貯留してから環状空間60から溢れ出る。この際、環状空間60に比重の大きな泥を溜め易くでき、これにより、ろ過された雨水を雨水供給用ホースHの掛止め部30から雨水供給用ホースHを介して雨水タンクW内へ供給することができる。
【符号の説明】
【0022】
1 分水器
2 大口径の上側縦樋
2’ 小口径の上側縦樋
3 大口径の下側縦樋
3’ 小口径の下側縦樋
4 上方開口
5 分水器本体
6 上カバー
7 排出口
8 連通口
10 円筒部分
11 舌片部分
14 内部洗浄用のホースが取り付けられるホース取付部分
20 複数の小口径用の係止部
30 雨水供給用ホースの掛止め部
40 大口径用の係止部材
i 雨水流路
j 雨水排出流路
W 雨水タンク
H 雨水供給用ホース
h 内部洗浄用のホース
u 雨水タンクの入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物に設置された上側縦樋と下側縦樋間に設けられ、上側縦樋によって形成される雨水流路を、下側縦樋によって形成される雨水排出流路と、雨水供給用ホースを介して雨水を貯留する雨水タンクとに分流するための分水器において、
上方開口を有する分水器本体と、この分水器本体に着脱自在に装着される上カバーとを備え、
分水器本体は、雨水排出流路の入口に連通する排出口と、雨水タンクの入口に連通する連通口とを有するとともに、
下側縦樋の上流端部を前記排出口に接続するため分水器本体は、異なる口径を有する下側縦樋にそれぞれ対応可能となるように設けた複数の係止部を有する一方、
分水器本体の前記連通口には、前記雨水供給用ホースの掛止め部が設けられており、
さらに、前記掛止め部は、前記雨水タンクの内部洗浄用のホースが取り付けられるホース取付部分を備えている一方、
前記上カバーは、分水器本体の前記排出口の上方に位置するよう上側縦樋の下流端部に挿通可能な大きさに形成された上下方向の高さを有する円筒部分と、分水器本体の前記連通口の上方に位置するよう前記円筒部分の周面下端部分から水平方向に連設された舌片部分とよりなり、
また、分水器本体の前記係止部の外周側には、異なる口径を有する下側縦樋にそれぞれ対応可能となるように異なる口径用の係止部材が装着可能に設けられることを特徴とする分水器。
【請求項2】
前記円筒部分と前記排出口は同一軸線上に位置するように構成されており、
また、前記分水器本体は、前記雨水流路を流れてきた雨水が前記排出口の側と前記連通口の側へと通過可能な網状体を前記排出口に連通させた状態で前記排出口と前記円筒部分間に有するとともに、前記排出口と前記連通口とを同一平面に有する底部を有し、
さらに、前記底部は、前記網状体を通過して前記連通口の側に流れる雨水を整流化し、整流化した雨水を前記連通口に流しうるリブを前記排出口のまわりに有する一方、
前記係止部材は、分水器本体の前記底部における前記係止部の外周側に着脱自在に装着可能に構成されたリング体である請求項1に記載の分水器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−172369(P2012−172369A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34637(P2011−34637)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000144072)株式会社三栄水栓製作所 (111)