説明

分注アーム、液体試料分注装置および液体試料分注システム

【課題】 必要量の液体試料を反応容器に精度良く分注する分注アームの干渉防止機能が装備された液体試料分注装置を提供する。
【解決手段】 本発明の液体試料分注装置は、分注用ノズルによって保持された液体試料を複数の反応容器に所定量ずつ分注するもので、分注用ノズルが備えられた分注アーム26、27の回転軸に回転角度を検出する回転角度検出部28を配置し、回転角度検出部から出力される信号を接続し、各分注アームの相互干渉を監視する状態判別部29を有し、分注アームに設けた回転角度検出部の検出と回転角度検出部の断線検出を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、分注アームの干渉監視機能を持ち必要量の液体試料を反応容器に精度良く安全に分注する液体試料分注装置に関する。
【背景技術】
【0002】
分注装置に設けられている分注アームの相互干渉を監視する類似の技術として、腕動作を伴うロボットのオーバーランを判定する技術が考えられる。このオーバーランの判定方法を二つの例について述べる。
第一の従来例のロボットのオーバーラン判定方法は、ロボット本体に配設された駆動軸の回転角が検出できる角度検出装置からの出力と、予め任意の回転角を設定した設定装置からの基準出力とを比較し、ロボットのオーバーランを判定するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このオーバーラン判定方法について図7を用いて説明する。
図7において、111は比較・判定回路、115は上腕駆動用モータ、116はロボット本体に配設されたポテンショメータ、117は設定用ポテンショメータ、118は比較器、119は判定処理器である。
設定用ポテンショメータ117は、117aと117bの二つから構成されており、いずれもポテンショメータ116と同種の、手動・ロック機構を具備している。117aは作業範囲の一方の限界角度θA1を設定し、117bは作業範囲の他方の限界角度θA2を設定する。比較器118は、118aと118bの二つから構成されており、118aは上腕駆動軸120の回転角θに応じたポテンショメータ116の出力と設定用ポテンショメータ117aの基準出力とを比較するものであり、118bは同じくポテンショメータ116からの出力と設定用ポテンショメータ117bの基準出力とを比較するものである。
119は、比較器118から、θ>θA1あるいはθ>θA2になったという信号が入力されたとき、上腕駆動用モータ115を停止させることができる判定処理器である。
つぎに、この比較・判定回路111のオーバーランを判定する方法を説明する。
まず、設定用ポテンショメータ117a、117bに、当該作業範囲の限界角度θA1、θA2を設定する。次に、ロボットは予め教え込まれた手順に従って所定の作業を行なう。この作業の遂行中、ロボットの上腕の回転角θは、ポテンショメータ116によって常時検出され、比較器118へ入力されている。そして、判定処理器119は、θ>θA1あるいはθ>θA2という信号が入力されたとき、上腕がオーバーランしたと判定し、上腕駆動用モータ115を停止させ、ロボットが作業範囲外へ暴走するのを防止する。
【0004】
第二の従来例は多関節ロボットの制御方法である。この方法は、アームの長さ、太さを入力する手段と、動作時、各関節の回転角を測定する手段と、アーム先端座標、及び、各関節中心座標を計算する手段と、それらから、隣り合わないアーム間の最小距離を計算し、アーム相互干渉の可能性を判定する手段と、判定結果より、ロボットへ停止信号を出す手段より構成され、隣り合うアーム同志の干渉は、構造上、相互干渉を起こさない様にし、隣り合わないアーム同志の相互干渉については、動作時に、アーム同士の干渉の可能性を自動判定し、干渉するおそれのある場合は、自動的に停止する手段を提供し、アーム同士が互いに干渉しないようにする(例えば、特許文献2参照)。
このように、従来例2の多関節ロボットの制御方法は、ティーチング時、ロボットアーム間、相互の干渉を気にせず動作プログラムが作成でき、外部系で、動作プログラムを作成しても、実際にロボットを動作させる場合、アーム相互干渉の危険性がないとしている。
【特許文献1】特開昭59−69295公報(第5頁、図3、4、5)
【特許文献2】特開昭59−73289公報(第4頁、図2、3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、第一の従来例においては、ポテンショメータ、比較・判定回路を用いて、作業範囲に対応してオーバーランの検出域(θA1〜θA2)を設定することにより、ロボットのオーバーランを防止する方法では、予めオーバーランの検出域を設定しオーバーランを防止するので、アームの任意の回転角度におけるアーム同士の相互干渉とポテンショメータの断線状態をフェールセーフに監視ができないという問題がある。
また、第二の従来例においては、アームの各関節に配置された回転検出器の信号を基に演算によりアーム同士の干渉を監視する方法では、ソフトウェアによりアーム同士の相互干渉を判断するので、アーム同士の相互干渉と各アームの回転検出器の断線状態をフェールセーフに監視ができないという問題がある。
したがって、いずれの従来例においても、各アームの相互干渉と各アームの回転検出器の断線状態をフェールセーフに監視できないという問題点があった。
【0006】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、各分注アームの相互干渉と各分注アームの回転検出器の断線状態をフェールセーフに監視する液体試料分注装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題を解決するため、本発明は、次のように構成したものである。
請求項1に記載の発明は、液体試料の分注用ノズルを含むアーム部と、前記アーム部が固定されこれを回転させる回転軸と、前記回転軸に回転および/または昇降の動作を与える駆動源と前記駆動源を制御するアーム制御部と、前記回転軸の回転角度を検出する回転角度検出部とを備え、前記分注用ノズルを任意の位置に移動させる分注アームにおいて、
前記アーム制御部に設けられ前記回転角度検出部の出力を基に前記分注アーム間の相互干渉を監視する状態判別部を設けたものである。
請求項2に記載の発明は、前記状態判別部が2入力AND発振回路が内蔵された2入力ANDゲートフェールセーフウィンドウを有するコンパレータと、前記コンパレータのしきい値を設定するしきい値設定手段と、前記コンパレータの出力値を正規化するフェールセーフ整流回路とからなるものである。
請求項3に記載の発明は、前記フェールセーフ整流回路が、コンデンサと、ダイオードとを接続した回路からなるものである。
請求項4に記載の発明は、請求項1から3記載の分注アームと、液体試料を供給する分注部とを有するものである。
請求項5に記載の発明は、アーム部とこれを回転させる回転軸と前記回転軸に回転および/または昇降の動作を与える駆動源と前記回転軸の回転角度を検出する回転角度検出部とを有する分注アームと、前記分注アームを制御するアーム制御部と、前記分注アームに固定された分注用ノズルと、フレキシブルチューブを介して前記分注用ノズルへ液体試料を供給する分注用アクチュエータと、前記分注用アクチュエータを駆動する分注用アクチュエータ駆動部と、前記分注用アクチュエータ駆動部を制御する分注用アクチュエータ制御部と前記アーム制御部と前記分注用アクチュエータ制御部および他の関係機器の制御部に指令を出す全体制御部とを備え、前記分注用ノズルから前記液体試料を複数の反応容器に所定量ずつ分注する液体試料分注装置において、前記アーム制御部に設けられ前記回転角度検出部の出力を基に前記分注アーム間の相互干渉を監視する状態判別部を設けたものである。
請求項6に記載の発明は、アーム部とこれを回転させる回転軸と前記回転軸に回転および/または昇降の動作を与える駆動源と前記回転軸の回転角度を検出する回転角度検出部とを有する分注アームと、前記分注アームを制御するアーム制御部と、前記分注アームに設けられた分注用ノズルと、フレキシブルチューブを介して前記分注用ノズルへ液体試料を供給する分注用アクチュエータと、前記分注用アクチュエータを駆動する分注用アクチュエータ駆動部と、前記分注用アクチュエータ駆動部を制御する分注用アクチュエータ制御部と前記アーム制御部と前記分注用アクチュエータ制御部および他の関係機器の制御部に指令を出す全体制御部とを備え、前記分注用ノズルから前記液体試料を複数の反応容器に所定量ずつ分注する液体試料分注装置において、前記分注アームのアーム部に前記液体試料を貯留する貯留部を設け、この一方端に分注用ノズルを設け他方端にフレキシブルチューブを接続するとともに、前記アーム制御部に前記回転角度検出部の出力を基に前記分注アーム間の相互干渉を監視する状態判別部を設けたものである。
請求項7に記載の発明は、前記状態判別部が2入力AND発振回路が内蔵された2入力ANDゲートフェールセーフウィンドウを有するコンパレータと、前記コンパレータのしきい値を設定するしきい値設定手段と、前記コンパレータの出力値を正規化するフェールセーフ整流回路とからなるものである。
請求項8に記載の発明は、前記フェールセーフ整流回路がコンデンサと、ダイオードとを接続した回路からなるものである。
請求項9に記載の発明は、前記状態判別部が、前記各分注アームの相互干渉を監視し各分注アームが相互干渉しそうな場合、もしくは前記回転角度検出部が断線した場合、前記分注アームの動作を停止させる停止手段を有したものである。
請求項10に記載の発明は、請求項4から9のいずれかに記載の液体試料分注装置と、検体トレイおよび/または試薬ターンテーブルとその制御部とを組み合わせ複数の異なる分注作業を行なう液体試料分注システムである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1から8および10に記載の発明によると、各分注アームの相互干渉と各分注アームの回転角度検出部の断線状態をフェールセーフに監視することができ、各分注アームをより近くに配置することが可能となり、液体試料分注装置の省スペース化を図ることができる。
請求項9に記載の発明によると、各分注アームの相互干渉と各分注アームの回転角度検出部の断線状態をフェールセーフに監視し、各分注アームが相互干渉しそうな場合、もしくは各分注アームの回転角度検出部が断線した場合、状態判別部の出力信号が、前記分注アームを制御することで分注アームを停止し、各分注アームの破損を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は、本発明の実施例1に用いた液体試料分注装置の構成図である。図において、1は液体試料分注装置、2は液体試料を吸引保持する分注用ノズル、3は液体試料を流すウレタンまたはフッ化樹脂等の材料からなるフレキシブルチューブ、4はシリンダとプランジャから構成されるシリンジ、5はシリンダ、6はシリンジ内にて液体試料を吐出・吸引するプランジャ、7は分注用アクチュエータ(例えばリニアモータ)、8は分注用アクチュエータを駆動する分注用アクチュエータ駆動部、9は分注用アクチュエータの動作(推力、速度など)を計測する分注用アクチュエータ動作計測部、10は分注用アクチュエータ駆動部を制御する分注用アクチュエータ制御部、11は分注用アクチュエータ制御部にあるCPU、12は分注用アクチュエータ制御部にあるシリンジ内におけるプランジャの摩擦力を関数パターンとして記憶する関数パターン記憶部、13は分注用アクチュエータ制御部にある分注用アクチュエータ動作判断部、14は液体試料を供給する液体試料容器、15は液体試料を吐出する反応容器、16は液体試料、17は分注用アクチュエータのシリンジ内におけるプランジャの摩擦力の運転状況を使用者に提示する運転状況提示手段である。
【0011】
本発明が特許文献1、特許文献2と異なる部分は、各分注アームの相互干渉と各分注アームの回転検出器の断線状態をフェールセーフに監視する液体試料分注装置を提供することである。
【0012】
分注用ノズル2は中空であり、先端に行くほど内径が小さくなるように成形されている。分注用ノズル2は液体試料16に対して垂直な姿勢に保持されており、液体試料容器14に内包された液体試料16を吸引し、反応容器15に液体試料16を吐出する。また、図示しないが、分注用ノズル2は洗浄水容器の洗浄水を吸引・吐出する。洗浄水の供給法や吸引・吐出法として、一般的な種々の方法を採用できる。
シリンダ5は、プランジャ6の移動に伴ってシリンジ4内の容積が変化する。シリンダ4はフレキシブルチューブ3を介して分注用ノズル2に接続されている。液体試料16を吸引しシリンジ4内の容積が増加するようにプランジャ6はシリンジ4の紙面上方に移動し、液体試料16を吐出しシリンジ4内の容積が減少するようにプランジャ6はシリンジ4の紙面下方に移動する。プランジャ6は分注用アクチュエータ7により駆動され、分注用アクチュエータ駆動部8によって制御される。分注用アクチュエータ駆動部8は、分注用アクチュエータ制御部10に接続され、動作指令に基づいて分注用アクチュエータ7を駆動する。分注用アクチュエータ制御部10は、CPU11と関数パターン記憶部12と分注用アクチュエータ動作判断部13からなり、所定の液体試料16を吐出するよう分注用アクチュエータ駆動部8に動作指令を指令している。CPU11は、予めオペレータにより入力されるか、或るいは、液体試料容器14等に表示された識別マークから読み取られた試料数と所望の分析項目に基づいて、所要の分注量及び分注順序に対応するように分注用アクチュエータ駆動部8に指令している。また、関数パターン記憶部12は吐出時における最大推力、最大速度、および最大加速度等を記憶し、分注用アクチュエータ動作判断部13は関数パターン記憶部12に記憶された吐出時における最大推力、最大速度、および最大加速度等を基に分注用アクチュエータ駆動部への動作指令を決定する。
【0013】
図2は、本発明の液体試料分注装置の使用例を示す図である。図において、18は希釈ターンテーブル、19は検体トレイ、20は第一の試薬ターンテーブル、21は第二の試薬ターンテーブル、22は希釈ピペット、23はサンプリングピペット、24は第一の試薬ピペット、25は第二の試薬ピペットである。分注アーム26、27を駆動して、検体トレイ19、希釈ターンテーブル18、第一の試薬ターンテーブル20、および第二の試薬ターンテーブル21からサンプル採取、希釈、試薬投入を高スループットで行なう。
図3は、図2に示す分注アームの拡大斜視図である。図において、26は第一の分注アーム、27は第二の分注アーム、28は回転検出部(ポテンショメータ)である。なお、40は制御部、41は分注アーム制御部、42は機器制御部である。
第一の分注アーム26は、アーム部26aを固定した回転駆動軸26bと駆動軸26bを回転・昇降させる駆動部26cからなる。第二の分注アーム27も同様にアーム部27a、回転駆動軸27b、駆動部27cからなる。分注用ノズル2は各ピペットとなる。回転駆動軸は、回転軸であるθ軸と昇降軸であるz軸より構成されている。
【0014】
図4は、本発明の実施例1を示すフェールセーフ整流回路を用いた駆動装置の主回路図である。図4において、29は状態判別部、30は2入力ANDゲートフェールセーフウィンドウを有するコンパレータ、31はコンパレータ30の上限値設定用抵抗、32は同じくコンパレータ30の下限値設定用抵抗、33はコンパレータ30の出力を正規化するフェールセーフ整流回路である。
コンパレータ30は、2入力AND回路を2回路実装したハイブリッドICで、演算発振器が内蔵されている。図5は、コンパレータ30の入出力特性を示す図である。コンパレータ30へ入力される2入力がともに式1の場合に出力が発振出力となることを示している。
【0015】
【数1】

(1)
【0016】
2入力は、それぞれに電源電圧(Vcc)より高い下限しきい値(V)と上限しきい値(V)の入力端子がある。このしきい値は上下限値設定抵抗31、32により任意に設定することができる。入力される電圧は直流でありその入力電圧(V)が、式2のとき論理値1になる。
【0017】
【数2】

(2)
【0018】
2入力が共に論理値1のとき発振し、交流(方形波)を出力する。交流出力は180度位相の異なった2出力がある。内部回路が故障しても、少なくとも入力の論理積が0のときには誤って発振することのないフェールセーフな特性を示す。回転角度検出部が断線したときには誤って発振することがないので、回転角度検出部の断線故障をフェールセーフに行なうことができる。
【0019】
つぎに、本実施例の動作について述べる。
ワールド座標系を基準とした、第一の分注アーム26の回転軸26bであるθ軸の回転角度をα、第二の分注アーム27の回転軸27bであるθ軸の回転角度をβとすると、第一の分注アーム26と第二の分注アーム27が干渉しそうな時にはα−β>γ(一定値)となる。そこで、α−βとγとの大小関係を監視するため、第一の分注アーム26と第二の分注アーム27の回転軸(θ軸)に装備された回転角度検出部28を、コンパレータ30の上限値設定用抵抗31と下限値設定用抵抗32に用いる。具体的には、第一の分注アーム26の回転角度検出部28のRαをコンパレータ30の下限値設定用抵抗32に用い、第二の分注アーム27の回転角度検出部28のRβを上限値設定用抵抗31に用いる。抵抗RH1とRL1は、それぞれ上限しきい値調整用抵抗31、下限値調整用抵抗32である。上限しきい値はRH(=Rβ+RH1)、下限しきい値はRL(=Rα+RL1)で設定される。第一の分注アーム26と第二の分注アーム27が相互干渉していない場合、上限値設定用抵抗31のRH(=Rβ+RH1)と下限値設定用抵抗32のRL(=Rα+RL1)との大小関係はRL<RHである。
ここで、入力電圧VIを式3の範囲内の12[v]に設定する。
【0020】
【数3】

【0021】
そして、端子I11,I12に接続し、コンパレータ30の出力をフェールセーフ整流回路33に接続すると、上限値設定用抵抗31のRH(=Rβ+RH1)と下限値設定用抵抗32のRL(=Rα+RL1)の大小関係がRL<RHの場合、出力端子O1、O2がHighレベル出力となり、第一の分注アーム26と第二の分注アーム27が相互干渉していないと判断できる。
コンパレータ30の上限値設定用抵抗RH(=Rβ+RH1)と下限値設定用抵抗RL(=Rα+RL1)の大小関係がRL>RHの場合、入力電圧VIがコンパレータ30のウィンドウから外れ、第一のフェールセーフ整流回路33aの出力端子O1、O2がLowレベル出力となり、第一の分注アーム26と第二の分注アーム27が相互干渉しそうであると判断できる。第二のフェールセーフ整流回路33bの出力端子O3、O4も出力端子O1、O2と同様に、第一の分注アーム26と第二の分注アーム27が相互干渉しそうか否かの判断に用いることができる。したがって、他の分注アーム例えば第二の分注アーム27と第三の分注アーム、第三の分注アームと第四の分注アーム等の干渉監視に用いてもよい。
【0022】
以上のように、実施例1では、分注用ノズルが備えられた各分注アームの回転軸であるθ軸に回転角度を検出する回転角度検出部を配置し、前記回転角度検出部から出力される信号を接続し、各分注アームの相互干渉を監視する状態判別部を有し、前記分注アームの回転軸であるθ軸の回転角度検出部の検出と前記回転角度検出部の断線検出を行なうことで、各分注アームの相互干渉と各分注アームの回転角度検出部の断線状態をフェールセーフに監視することができ、各分注アームをより近くに配置することが可能となり、液体試料分注装置の省スペース化を図ることができる。
【実施例2】
【0023】
図6は、本発明の実施例2を示すフェールセーフ整流回路を用いたアーム制御部の主回路図である。図において、34は駆動装置、35は制御電源用リレーである。それ以外の構成は第1の実施の形態と同様なので、説明は省略する。
2入力ANDゲートフェールセーフウィンドウを有するコンパレータ30を用いた、各分注アームの相互干渉の監視方法は実施例1と同様である。2入力ANDゲートフェールセーフウィンドウを有するコンパレータ30の出力を正規化するフェールセーフ整流回路33の出力端子O、Oを分注アームの駆動装置34内に備えられた制御電源用リレー35に接続すれば、第一の分注アーム26と第二の分注アーム27が干渉しそうになり入力端子O、Oの出力がLowレベルになった場合、もしくは各分注アームの回転角度検出部28が断線し入力端子O、Oの出力がLowレベルになった場合、制御電源用リレーを介して分注アームを即座に停止することができる。また、出力端子O、Oも出力端子O、Oと同様に、第一の分注アーム26と第二の分注アーム27が相互干渉しそうか否か、もしくは分注アームの回転角度検出部28が断線したか否かの判断に用いることができ、第一の分注アーム26と第二の分注アーム27が相互干渉しそうな場合、もしくは分注アームの回転角度検出部28が断線した場合、制御電源用リレー35を介して分注アームを即座に停止することができる。
【0024】
また、フェールセーフ整流回路33の出力端子O、Oを駆動装置34内に備えられた図示しないDIOボードのDIに入力し、入力端子O、Oの出力がLowレベルになったとき、第一の分注アーム26と第二の分注アーム27が相互干渉しそうである、もしくは分注アームの回転角度検出部28が断線したと判断して、制御電源用リレー35を駆動して分注アームを即座に停止してもよい。
【0025】
さらに、フェールセーフ整流回路33の出力端子O、Oを駆動装置34内に備えられた図示しないDIOボードのDIに入力し、入力端子O、Oの出力がLowレベルになったとき、第一の分注アーム26と第二の分注アーム27が相互干渉しそうである、もしくは分注アームの回転軸の回転角度検出部28が断線したと判断して、駆動装置34内に備えられた図示しないシステム電源用リレー35を駆動して分注アームを即座に停止してもよい。
【0026】
以上のように、実施例2では、分注用ノズルが備えられた各分注アームの回転軸であるθ軸に回転角度を検出する回転角度検出部を配置し、前記回転角度検出部から出力される信号を接続し、各分注アームの相互干渉を監視する状態判別部を有し、前記分注アームの回転軸であるθ軸の回転角度検出部の検出と前記回転角度検出部の断線検出を行ない、各分注アームが相互干渉しそうな場合、もしくは分注アームの回転角度検出部が断線した場合、制御電源用リレーを介して分注アームを即座に停止することができる。
【0027】
また、各分注アームが相互干渉しそうな場合、もしくは分注アームの回転角度検出部が断線した場合、図示しない運転状況提示部が液体試料分注装置の運転状況を使用者に提示すれば、部品の交換を早急に使用者に促し、修理のための装置停止時間を短縮することができる。
【0028】
さらに、各分注アームが相互干渉しそうな場合、もしくは分注アームの回転角度検出部が断線した場合、図示しない運転状況提示部が液体試料分注装置の運転状況を使用者に提示すれば、部品の交換を早急に使用者に促し、修理のための装置停止時間を短縮することができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
なお、各分注アームの相互干渉、もしくは分注アームの回転角度検出部の断線状態を検出できるので、バイオ関連および医療関連装置に関わらず、アームの相互干渉の監視に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施例1を示す液体試料分注装置の構成図である。
【図2】実施例1の液体試料分注装置の使用例を示す図である。
【図3】実施例1に用いた分注用ノズル固定する分注アームの斜視図である。
【図4】実施例1に用いた分注アームの駆動装置の主回路図である。
【図5】実施例1に用いたコンパレータの入出力特性を示す図である。
【図6】本発明の実施例2を示す液体試料分注装置の主回路図である。
【図7】第一の従来例を示すロボットのオーバーラン判定に用いる比較・判定回路のブロック図である。
【符号の説明】
【0031】
1 液体試料分注装置
2 分注用ノズル
3 フレキシブルチューブ
4 シリンジ
5 シリンダ
6 プランジャ
7 分注用アクチュエータ
8 分注用アクチュエータ駆動部
9 分注用アクチュエータ動作計測部
10 分注用アクチュエータ制御部
11 CPU
12 関数パターン記憶部
13 分注用アクチュエータ動作判断部
14 液体試料容器
15 反応容器
16 試料
17 運転状況提示部
18 希釈ターンテーブル
19 検体トレイ
20 第一の試薬ターンテーブル
21 第二の試薬ターンテーブル
22 希釈ターンテーブル
23 サンプリングピペット
24 第一の試薬ピペット
25 第二の試薬ピペット
26 第一の分注アーム
27 第二の分注アーム
28 回転角度検出部
29 状態判別部
30 コンパレータ
31 上限値設定用抵抗
32 下限値設定用抵抗
33 フェールセーフ整流回路
34 アーム駆動部
35 制御電源用リレー
40 全体制御部
41 分注アーム制御部
42 機器制御部
111 比較・判定回路
115 上腕駆動用モータ
116 ポテンショメータ
117 設定用ポテンショメータ
118 比較器
119 判定処理器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体試料の分注用ノズルを含むアーム部と、前記アーム部が固定されこれを回転させる回転軸と、前記回転軸に回転および/または昇降の動作を与える駆動源と前記駆動源を制御するアーム制御部と、前記回転軸の回転角度を検出する回転角度検出部とを備え、前記分注用ノズルを任意の位置に移動させる分注アームにおいて、
前記アーム制御部に設けられ前記回転角度検出部の出力を基に前記分注アーム間の相互干渉を監視する状態判別部を設けたことを特徴とする分注アーム。
【請求項2】
前記状態判別部は、2入力AND発振回路が内蔵された2入力ANDゲートフェールセーフウィンドウを有するコンパレータと、前記コンパレータのしきい値を設定するしきい値設定手段と、前記コンパレータの出力値を正規化するフェールセーフ整流回路とからなることを特徴とする請求項1記載の分注アーム。
【請求項3】
前記フェールセーフ整流回路は、コンデンサと、ダイオードとを接続した回路からなることを特徴とする請求項2記載の分注アーム。
【請求項4】
請求項1から3記載の分注アームと、液体試料を供給する分注部とを有することを特徴とする液体試料分注装置。
【請求項5】
アーム部とこれを回転させる回転軸と前記回転軸に回転および/または昇降の動作を与える駆動源と前記回転軸の回転角度を検出する回転角度検出部とを有する分注アームと、前記分注アームを制御するアーム制御部と、前記分注アームに固定された分注用ノズルと、フレキシブルチューブを介して前記分注用ノズルへ液体試料を供給する分注用アクチュエータと、前記分注用アクチュエータを駆動する分注用アクチュエータ駆動部と、前記分注用アクチュエータ駆動部を制御する分注用アクチュエータ制御部と前記アーム制御部と前記分注用アクチュエータ制御部および他の関係機器の制御部に指令を出す全体制御部とを備え、前記分注用ノズルから前記液体試料を複数の反応容器に所定量ずつ分注する液体試料分注装置において、
前記アーム制御部に設けられ前記回転角度検出部の出力を基に前記分注アーム間の相互干渉を監視する状態判別部を設けたことを特徴とする液体試料分注装置。
【請求項6】
アーム部とこれを回転させる回転軸と前記回転軸に回転および/または昇降の動作を与える駆動源と前記回転軸の回転角度を検出する回転角度検出部とを有する分注アームと、前記分注アームを制御するアーム制御部と、前記分注アームに設けられた分注用ノズルと、フレキシブルチューブを介して前記分注用ノズルへ液体試料を供給する分注用アクチュエータと、前記分注用アクチュエータを駆動する分注用アクチュエータ駆動部と、前記分注用アクチュエータ駆動部を制御する分注用アクチュエータ制御部と前記アーム制御部と前記分注用アクチュエータ制御部および他の関係機器の制御部に指令を出す全体制御部とを備え、前記分注用ノズルから前記液体試料を複数の反応容器に所定量ずつ分注する液体試料分注装置において、
前記分注アームのアーム部に前記液体試料を貯留する貯留部を設け、この一方端に分注用ノズルを設け他方端にフレキシブルチューブを接続するとともに、前記アーム制御部に前記回転角度検出部の出力を基に前記分注アーム間の相互干渉を監視する状態判別部を設けたことを特徴とする液体試料分注装置。
【請求項7】
前記状態判別部は、2入力AND発振回路が内蔵された2入力ANDゲートフェールセーフウィンドウを有するコンパレータと、
前記コンパレータのしきい値を設定するしきい値設定手段と、
前記コンパレータの出力値を正規化するフェールセーフ整流回路とからなることを特徴とする請求項5または6記載の液体試料分注装置。
【請求項8】
前記フェールセーフ整流回路は、コンデンサと、ダイオードとを接続した回路からなることを特徴とする請求項7記載の液体試料分注装置。
【請求項9】
前記状態判別部が、前記各分注アームの相互干渉を監視し各分注アームが相互干渉しそうな場合、もしくは前記回転角度検出部が断線した場合、前記分注アームの動作を停止させる停止手段を有したことを特徴とする請求項5または6記載の液体試料分注装置。
【請求項10】
請求項4から9のいずれかに記載の液体試料分注装置と、検体トレイおよび/または試薬ターンテーブルとその制御部とを組み合わせ複数の異なる分注作業を行なうことを特徴とする液体試料分注システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−215986(P2008−215986A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−52591(P2007−52591)
【出願日】平成19年3月2日(2007.3.2)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】