説明

分注装置

【課題】本発明は,微少量のサンプルがばらつきなく押し出され,高精度な分注作業が可能となる分注装置を提供する。
【解決手段】サンプルは,格子状に作製された容器2に注入され,容器2に取り付けられた圧電素子222のより脱泡処理され,冷凍後に一定の厚さになるように,固形化して容器からはみ出たサンプルが切除されることで,同じ大きさに作製される。次に容器2は搬送装置3で押し出し位置へ移動される。また,可動子421もXYステージ41により押し出し位置へ移動され,サンプルはボイスコイルモータ42が作動することにより可動子421で測定装置へ押し出される。この時,可動子421と押出し手段31に配置された圧電素子311,422が振動することにより,サンプルは可動子421および容器2に付着することはない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生化学的分析などに用いられる試薬分注装置であって,特に,液体容器内の液体が所定量吸引または分注される際に,微少量の液量が正確に吸引され,精度良く分注されるようにした分注装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の分注装置において,微小粉体を捕集および分析する方法として,次の二つが提案されている。第1は,粒子状のサンプルをアスピレータにより吸引するものである(例えば,特許文献1参照)。図3はその構造を示す模式図である。この装置は,粒子状吸着剤102を充填した吸着カラム101と,大気を送り込む吸引ポンプ103と,試料容器105と配置した試料導入部106と,粒子吸着剤108を吸引するアスピレータ107と,分析器109から構成されている。
次に動作について説明する。粒子状吸着剤102は吸着カラム101内に充填されている。大気は粒子状吸着剤102が充填された吸着カラム101を通じて,吸引ポンプ103により吸引される。この時大気中の微量不純物成分は,粒子状吸着剤102に吸着する。不純物成分を吸着した粒子状吸着剤102は,試料容器105に入れられ,試料導入部106に配設される。次にアスピレータ107は粒子状吸着剤104を吸引し,吸引された粒子状吸着剤108はキャリアガスとともに分析器109に運ばれて,組成分析される。
【0003】
第2は粒子状サンプルがフィルタを用いて取り出されるものである(例えば,特許文献2参照)。図4はその構造を示す断面図である。この装置は,複数のフィルタ216a〜216dを直列に収納するケース本体217と,このケース本体217に対して分離結合自在に設けられるカバー体218とから構成されている。ケース本体217およびカバー本体218の分離結合面側には,それぞれフランジ217a,218aが設けられている。さらに,ケース本体217とカバー体218は,対向するようにガス流通孔219,220が形成されている。
フィルタ216a〜216dは,粒径別のPM21が捕集されるように,ケース本体217内に設けられている。フィルタ216aが最も粗く,フィルタ216b,216Cの順に細かくなり,フィルタ216dが最も細かくなっている。フィルタ216aはケース本体217の最上流に配置され,フィルタ216dがケース本体217の最下流に配置されている。すなわち,PM21は粒径の大きいものから順に216a〜216dで捕集される。捕集後,フィルタ216a〜216dは取り出される。たとえば,216aは加熱され,粉体は,窒素ガス雰囲気中で酸化還元処理されて,分析計によりSOやCOの濃度が測定される。
【特許文献1】特許2964998公報(第5−6頁、図1)
【特許文献2】特開2003−35636公報(第3−4頁、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが,従来の微小粉体を捕集および分析する装置では,微小粉体は吸着カラムを通じて吸引ポンプで吸引されるため,吸引ポンプの流量は制御されるが,微小粉体の量はばらつきを生じるため,微小粉体の量は定量的に分析できないという問題が生じていた。
【0005】
また,従来のフィルタを直列に配置して微小粉体を捕集および分析する装置は,複数のフィルタが直列に配置され,段階的的に細かい粒径の粉体が捕集されていたが,フィルタの流通孔の孔径は数段階に設定されているので,フィルタ孔径より大きな粉体は全て捕集されてしまい,粉体粒径のばらつきが生じるために,同形状の粉体量は定量的に分析できないという問題が生じていた。
本発明はこのような問題点を鑑みてなされたものであり、微少量の粉体が粒径のばらつきなく取り出され,高精度な分注作業が可能な分注装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するため、本発明は、次のようにしたものである。
請求項1に記載の発明は、サンプルを容器に分注する注入器を具備した液滴を分注する分注装置において,前記サンプルを固体化する固体化槽と,前記容器を搬送する搬送装置と,前記容器からサンプルを押し出す突出し装置とからなるものである。
また,請求項2に記載の発明は,前記固体化槽が,前記容器に注入された前記サンプルを固体化する冷凍機と,固形化して前記容器からはみ出た前記サンプルが一定の厚さになるように切除するスライサとからなるものである。
また,請求項3に記載の発明は,前記冷凍機が,前記容器の上面および下面にペルチェ素子等の冷却素子を具備したものである。
また,請求項4に記載の発明は,前記搬送装置が,前記容器を位置決めする押出し手段と前記容器の受け皿とからなり,前記受け皿の一部に孔が設けられたものである。
また,請求項5に記載の発明は,前記押出し装置が,押し出しシャフトに圧電素子を具備したものである。
また,請求項6に記載の発明は,前記受け皿の下面に前記サンプル中の気泡を脱泡処理する圧電素子を具備したものである。
また,請求項7に記載の発明は,前記突出し装置が,電磁的な手段からなる駆動機構からなり,可動部に圧電素子を具備したものである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明によると,サンプルは,固定化槽で固体化され,搬送装置で移送され,突出し装置で測定装置へ押し出されるので,サンプルの大きさが均一になり,精度良い分注作業ができる。
請求項2および3に記載の発明によると,サンプルは容器に分注され,冷凍後に一定の厚みになるように,はみ出たサンプルが切除されることで,同じ大きさのサンプルが作製されることから,精度良い分注作業が可能である。
請求項4から6に記載の発明によると,サンプルは受け皿下面に配設された圧電素子の振動により分注後に,サンプルに混入した気泡が脱泡処理されるので,気泡がサンプルに残留することはない。このため,均一な大きさのサンプルが得られる。また,押し出しシャフトに具備した圧電素子が容器を振動させることにより,サンプルが受け皿に設けた孔を通じて押し出される際に,サンプルは容器に付着することはない。すなわち,均一な大きさのサンプルが得られるものである。
また,請求項7に記載の発明によると,サンプルは,可動子が圧電素子で加振されながら移動することにより押し出される。可動子の振動がサンプルに加えられることにより,サンプルは可動子に付着することはないために,均一な大きさのサンプルが得られるものである。
以上のように請求項1から7に記載した発明によると,本発明の分注装置は,ばらつきが少ないサンプルを作製できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の分注装置の具体的実施例について、図1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0009】
図1は,本発明の分注装置の構成を示す模式図である。図において,1は固体化槽,2は容器,3は搬送装置,4は突出し装置である。
分注装置は,サンプルを分注,冷凍,スライスする固定化槽1と,容器2を移送する搬送装置3と,容器2からサンプルを押し出す突出し装置4から構成されている。
固体化槽1は,冷凍機11と,スライサ12と,図示しない注入器から構成されている。サンプルは注入器により容器2に注入される。次に,サンプルは,容器2両面に配設されたペルチェ素子111からなる冷凍機11で冷凍され,固体化される。最後に,サンプルの厚さが均一になるように,固形化して容器2からはみ出たサンプルはスライサ12により切除される。
搬送装置3は,コンベア32と,容器2を載置する受け皿22と,該受け皿22を移動する押出し手段31から構成されており,搬送装置3は,容器2を固定化槽1から突出し装置4へ移送している。
受け皿22は,容器2の格子状の孔21と合致する孔221と下面に配設された圧電素子222から形成されている。孔221は,図2に示される容器2に形成された格子状の孔21と合致するように形成されている。圧電素子222はサンプルが固体化槽1で分注された後に振動し,サンプル中の気泡は脱泡処理されている。
押出し手段31は,図1に示すように図示しないボールねじ機構と,圧電素子311から構成されている。ボールねじ機構は,容器2の格子状の孔21と受け皿の孔221を一致させるように容器2を移動させる。サンプルが押し出される際に,圧電素子311が容器2を振動させることにより,サンプルは容器2に付着することはない。
突出し装置4は,XYステージ41と,電磁的手段であるボイスコイルモータ42と,ボイスコイルモータ42の可動子421に具備した圧電素子422から構成されている。XYステージ41は,サンプルの押し出し位置へ可動子421を移動させ,ボイスコイルモータ42が作動することにより,サンプルは容器2から図示しない測定容器に押し出される。この時,圧電素子422が可動子421を振動させることにより,サンプルは可動子421先端に付着することはない。
本発明が特許文献1および特許文献2と異なる部分は、サンプルは,固体化槽1で容器2に注入され,かつ冷凍固体化され,搬送装置4で押し出し位置へ移送され,突出し装置4で押し出されるようにした点である。
ここで,可動子421の移動手段はボイスコイルモータ42を用いて説明したが,リニアモータやボールねじ機構のように,可動子421が直動移動するものであれば良い。
【0010】
次に本発明の分注装置の動作について説明する。サンプルは,受け皿22上に載置された容器2の格子状の孔21に図示しない注入器により注入される。この際,容器2は,受け皿22下面に配置された圧電素子222により振動され,サンプル中に混入した気泡が脱泡処理される。また,サンプルは受け皿22を上下から挟み込むように配置されたペルチェ素子111で冷凍される。この時,固形化して容器2からはみ出たサンプルは,サンプルの厚さが一定になるようにスライサ12により切除される。
次に容器2は,コンベア32により押し出し位置へ移動され,押出し手段31により位置決めされ,容器2の孔21と受け皿22の孔221は合致する。
次に可動子421は,XYステージ41によりサンプルの突出し位置へ移動され,サンプルはボイスコイルモータ42が作動することにより図示しない測定装置へ突出される。この突出しの際に,押出し手段31に具備された圧電素子311と,可動子421に具備された圧電素子422が振動することにより,サンプルは容器2内面と可動子422先端に付着することはない。
このような構成にしたことで,大きさのばらつきが少なく,かつ液量精度が高い分注装置が提供される。
【産業上の利用可能性】
【0011】
液状のサンプルが固体化され,固体されたサンプルが押し出されるようにしたことにより,サンプルが精度良く押し出される。このため, 本分注装置はDNA解析等の生化学的分析用だけでなく,免疫学的分析用の微量液量が取り扱われる分注装置にも適用される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例を示す分注装置の模式図
【図2】本発明の実施例を示す容器の構成を示す平面図
【図3】従来の分注装置における微小粉体を捕集および分析する装置を示す模式図
【図4】従来の分注装置における微小粉体を捕集および分析を直列な状態で行う装置を示す側断面図
【符号の説明】
【0013】
1 固体化槽
11 冷凍機
111 ペルチェ素子
12 スライサ
2 容器
21 孔
22 受け皿
221 孔
222 圧電素子
3 搬送装置
31 押出し手段
32 コンベア
311 圧電素子
4 突出し装置
41 XYステージ
42 ボイスコイルモータ
421 可動子
101 吸引カラム
102 粒子状吸着剤
103 吸引ポンプ
104 粒子状吸着剤
105 試料容器
106 試料導入部
107 アスピレータ
108 粒子状吸着剤
109 分析器
215 フィルタケース
216a〜d フィルタ
217 ケース本体
217a,218a フランジ
218 カバー体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルを容器に分注する注入器を具備した液滴を分注する分注装置において,
前記サンプルを固体化する固体化槽と,前記容器を搬送する搬送装置と,前記容器からサンプルを押し出す突出し装置とからなることを特徴とする分注装置。
【請求項2】
前記固体化槽は,前記容器に注入された前記サンプルを固体化する冷凍機と,固形化して前記容器からはみ出た前記サンプルが一定の厚さになるように切除するスライサとからなることを特徴とする請求項1記載の分注装置。
【請求項3】
前記冷凍機は,前記容器の上面および下面の少なくとも一方にペルチェ素子等の冷却素子を具備したことを特徴とする請求項2記載の分注装置
【請求項4】
前記搬送装置は,前記容器を位置決めする押出し手段と前記容器の受け皿からなり,前記受け皿の一部に孔が設けられたことを特徴とする請求項1記載の分注装置。
【請求項5】
前記押出し手段は,押し出しシャフトに圧電素子を具備したことを特徴とする請求項4記載の分注装置。
【請求項6】
前記受け皿は,下面に前記サンプル中の気泡を脱泡処理する圧電素子を具備したことを特徴とする請求項4記載の分注装置。
【請求項7】
前記突出し装置は,電磁的な手段からなる駆動機構からなり,可動部に圧電素子を具備したことを特徴とする請求項1記載の分注装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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