説明

分版装置、分版方法、プログラム、記憶媒体

【課題】コストを低減させつつテクスチュアの表面の凹凸形状をより精密にエンボス版の表面に再現できるマスクデータを作成する分版装置等を提供する。
【解決手段】分版装置1は、ハイトフィールドデータ(目標形状)25を閾値により2値化し、マスクデータ26を生成するマスクデータ生成手段21と、ハイトフィールドデータ(エッチング対象)29について、マスクデータ26に基づくエッチングシミュレーションを行い、エッチング後のハイトフィールドデータ(エッチング対象)28を作成するエッチングシミュレーション手段23と、エッチング後のハイトフィールドデータ(エッチング対象)29の形状と、ハイトフィールドデータ(テクスチュア)30の形状の差分形状のハイトフィールドデータ31を算出する差分形状算出手段24と、を具備し、ハイトフィールドデータ(目標形状)25として、差分形状のハイトフィールドデータ31を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は分版装置、分版方法、プログラム、記憶媒体に関する。より詳しくは、エンボス版をエッチングの手法を用いて製造する際に用いるマスクデータを生成するための分版装置、分版方法、プログラム、記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、織物等のテクスチュアの質感を有する壁紙等のシートを製造するため、エンボス版が用いられる。エンボス版には、テクスチュアの表面の凹凸形状が深さ方向に再現され、これを利用して紙、樹脂、合成皮革、金属等からなる所望のシートに対してエンボス加工を行えば、テクスチュアの表面の凹凸形状を再現し、テクスチュアの質感を有するシートを得ることが可能となる。
【0003】
エンボス版の表面にテクスチュアの表面の凹凸形状を疑似的に再現する方法として、多段エッチングによるものがある。多段エッチングとは、最大10回程度、複数回のエッチングを行うことで、エンボス版の表面に多段形状を疑似的に形成する手法である。
【0004】
例えば、図14(a)に示すように、金属等のエンボス版の表面51にレジスト53をコーティングし、図14(b)に示すように、所定の位置(露光部55)にレーザビームを照射する。すると、図14(c)に示すように露光部55のレジスト53が硬化する。洗浄処理を行い硬化されなかったレジスト53を除去すると、硬化したレジスト53のパターンが形成される。その後、エンボス版の表面51に腐食液を作用させると、図14(d)に示すように、露出した金属面が腐食を受けて窪む。最後に洗浄処理により残ったレジスト53の除去を行い、図14(e)に示すように、エンボス版の表面51にレジスト53のパターンに応じた凹凸構造が形成される。
【0005】
これらレジストのコーティング、露光処理、洗浄処理(1回目)、腐食処理、洗浄処理(2回目)を、レーザにより露光する位置を変えながら目的とするエンボス版の表面51の形状に合わせて複数回繰り返すことにより、図15に示すように、エンボス版の表面51に深さの異なる凹凸が形成される。図15ではエンボス版の浅い位置から先にエッチングを行い、その内側を段階的に掘り下げるように複数回のエッチングが行われている。
【0006】
この際、エンボス版の所定の位置にレーザを照射し、レジストのパターンを形成するために、所定の位置における露光の有無を定めるマスクデータが用いられる。このマスクデータは、例えば、テクスチュアの高さ情報(表面の凹凸形状)を階調値で表すデータであるハイトフィールドデータを、閾値により多値化して複数の(階調)値のデータに変換し、これに基づき生成される。このようなテクスチュアの例として布地等のハイトフィールドデータからマスクデータを生成する例が、特許文献1、2、3に示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−58459号公報
【特許文献2】特開2001−179825号公報
【特許文献3】特開2001−113891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の方法で、マスクデータを2つ作成する例を図16に示す。図16(a)に示すように、テクスチュアのハイトフィールドデータ60を2つの閾値61(61−1、61−2)で多値化して、図16(b)に示すように2枚のマスクデータ63(63−1、63−2)を作成する。マスクデータ63について、63aは閾値61以上の領域である開口部、63bは閾値61より低い領域であるマスク部である。マスク部は、上記のレジストのパターンが形成される領域に対応する。
【0009】
マスクデータ63−1、63−2を用いたエッチングを順に行うと、図16(b)に示すように、3段の窪みがエンボス版の表面65に形成される。このように、従来の方法で作成したn枚のマスクデータ63を用いることにより、n+1段の窪みがエンボス版の表面に形成される。
なお、各マスクデータによるエッチング時の腐食深度は、最終的なエッチングの完了時にエンボス版の表面65に形成される最大深度(予め定めておく)と、各マスクデータ63の生成の際に用いた閾値61の値により定められる。例えば、テクスチュアのハイトフィールドデータ60の最大階調値である256を上記最大深度に対応させ、この階調値に対する上記の閾値61の比率に応じて、上記最大深度に対し、マスクデータ63を用いたエッチングの際の腐食深度を定めておく。
【0010】
エンボス版の製造の際には複数回にわたってエッチングを繰り返すが、テクスチュアの形状との誤差を低減しより精密にテクスチュアの形状を再現するためには、より多くの段数でテクスチュアの形状を再現することが好ましい。しかし、エッチングにおける工数が増えることもありエッチング回数は限られる。
従来の方法では、n個のマスクデータを用いてn回のエッチングを行うことによりn+1段の窪みを有するエンボス版が形成されるが、マスクデータ作成やエッチングの際のコストを低減しつつ、テクスチュアの表面の凹凸形状をエンボス版の表面により精密に再現するためには、より少ないマスクデータ(エッチング回数)でより多くの段数の窪みを有するエンボス版が形成できることが望ましい。
【0011】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、コストを低減させつつテクスチュアの表面の凹凸形状をより精密にエンボス版の表面に再現できるマスクデータを作成する分版装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述した目的を達するための第1の発明は、テクスチュアの形状を表面に再現したエンボス版をエッチングの手法を用いて製造する際のマスクデータを生成するための分版装置であって、エッチングの目標とする形状の高さ情報を階調値で示す目標形状のハイトフィールドデータを閾値により2値化し、開口部とマスク部を有するマスクデータを生成するマスクデータ生成手段と、エッチング対象の高さ情報を階調値で示すエッチング対象のハイトフィールドデータについて、マスクデータの開口部にあたる箇所で階調値から所定の腐食深度を減算するエッチングシミュレーションを行い、エッチング後のエッチング対象のハイトフィールドデータを生成するエッチングシミュレーション手段と、エッチング後のエッチング対象のハイトフィールドデータが示す形状と、テクスチュアの高さ情報を階調値で示すテクスチュアのハイトフィールドデータが示す形状との差分形状を示す、差分形状のハイトフィールドデータを算出する差分形状算出手段と、を具備し、前記目標形状のハイトフィールドデータとして、前記差分形状のハイトフィールドデータを用いることを特徴とする分版装置である。
【0013】
上記の構成により、マスクデータを、従来のようにテクスチュアのハイトフィールドデータを閾値で多値化し作成するのではなく、エッチングシミュレーション後のエッチング対象の形状と、テクスチュアの形状との差分形状に対し2値化を行って作成する。
従来のように全てのマスクデータをテクスチュアのハイトフィールドデータの多値化により作成する場合、n枚のマスクデータを用いてn+1段の窪みを有するエンボス版が作成されるのに対し、上記のように作成したn枚のマスクデータを用いてエッチングを行うと、最大2段まで段数を増やすことが可能になりテクスチュアの形状との誤差を低減できるので、少ないマスクデータでより精密なエンボス版を作成することができ、マスクデータ作成やエッチングの際のコストの削減にもつながる。
【0014】
前記エッチングシミュレーション手段は、マスクデータと、マスクデータの開口部とマスク部の境界からマスク部側に向かう距離と腐食深度との関係を表すエッチングプロファイルに基づき、エッチング対象のハイトフィールドデータについて、マスクデータの開口部に対応する箇所では所定の腐食深度を階調値から減算し、マスク部に対応する箇所ではエッチングプロファイルに基づく前記距離に応じた腐食深度を階調値から減算することにより、サイドエッチングの影響を反映したエッチング後のエッチング対象のハイトフィールドデータを生成する。
【0015】
これにより、エッチングシミュレーションの際に、実際のエッチングで起こるサイドエッチングの影響を反映させることができるので、より正確なシミュレーション結果に基づきマスクデータの作成を行うことができ、テクスチュアの形状をより正確に再現するマスクデータを作成することができる。
【0016】
また、第1の発明の分版装置は、前記エッチングシミュレーション手段が生成するエッチング後のエッチング対象のハイトフィールドデータが示す形状が、テクスチュアのハイトフィールドデータが示す形状内に収まるように、マスクデータの開口部の補正を行うマスクデータ補正手段を更に具備し、前記エッチングシミュレーション手段は、補正後のマスクデータを用いてエッチングシミュレーションを行う。
【0017】
これにより、マスクデータがサイドエッチングの影響を考慮して補正されるので、テクスチュアの形状をより正確に再現するマスクデータを作成することができる。
【0018】
加えて、前記差分形状算出手段は、算出した差分形状のハイトフィールドデータの最大値と最小値の差が所定値以下かどうかを判定し、所定値以下の場合にはマスクデータの作成処理を終了する。
【0019】
これにより、エッチング後の形状がテクスチュアの形状に十分近づいたかどうかを判定し、エッチング後の形状がテクスチュアの形状に十分近づいた場合には処理を終了するので、テクスチュアの形状をより正確に再現するためのマスクデータ群の作成が容易になる。
【0020】
前述した目的を達するための第2の発明は、テクスチュアの形状を表面に再現したエンボス版をエッチングの手法を用いて製造する際のマスクデータを生成するための分版装置における分版方法であって、分版装置が、エッチングの目標とする形状の高さ情報を階調値で示す目標形状のハイトフィールドデータを閾値により2値化し、開口部とマスク部を有するマスクデータを生成するマスクデータ生成ステップと、エッチング対象の高さ情報を階調値で示すエッチング対象のハイトフィールドデータについて、マスクデータの開口部にあたる箇所で階調値から所定の腐食深度を減算するエッチングシミュレーションを行い、エッチング後のエッチング対象のハイトフィールドデータを生成するエッチングシミュレーションステップと、エッチング後のエッチング対象のハイトフィールドデータが示す形状と、テクスチュアの高さ情報を階調値で示すテクスチュアのハイトフィールドデータが示す形状との差分形状を示す、差分形状のハイトフィールドデータを算出する差分形状算出ステップと、を実行し、前記目標形状のハイトフィールドデータとして、前記差分形状のハイトフィールドデータを用いることを特徴とする分版方法である。
【0021】
前記エッチングシミュレーションステップでは、マスクデータと、マスクデータの開口部とマスク部の境界からマスク部側に向かう距離と腐食深度との関係を表すエッチングプロファイルに基づき、エッチング対象のハイトフィールドデータについて、マスクデータの開口部に対応する箇所では所定の腐食深度を階調値から減算し、マスク部に対応する箇所ではエッチングプロファイルに基づく前記距離に応じた腐食深度を階調値から減算することにより、サイドエッチングの影響を反映したエッチング後のエッチング対象のハイトフィールドデータを生成する。
また、第2の発明の分版方法では、分版装置が、前記エッチングシミュレーションステップで生成するエッチング後のエッチング対象のハイトフィールドデータが示す形状が、テクスチュアのハイトフィールドデータが示す形状内に収まるように、マスクデータの開口部の補正を行うマスクデータ補正ステップを更に実行し、前記エッチングシミュレーションステップでは、補正後のマスクデータを用いてエッチングシミュレーションを行う。
加えて、前記差分形状算出ステップでは、算出した差分形状のハイトフィールドデータの最大値と最小値の差が所定値以下かどうかを判定し、所定値以下の場合にはマスクデータの作成処理を終了する。
【0022】
前述した目的を達するための第3の発明は、コンピュータを、第1の発明の分版装置として機能させるプログラムである。
【0023】
前述した目的を達するための第4の発明は、コンピュータを、第1の発明の分版装置として機能させるプログラムを記憶した記憶媒体である。
【発明の効果】
【0024】
本発明により、コストを低減させつつテクスチュアの表面の凹凸形状を精密にエンボス版の表面に再現できるマスクデータを作成するための分版装置等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】分版装置1のハードウェア構成を示す図
【図2】分版装置1の機能構成を示す図
【図3】分版装置1による分版処理を示すフローチャート
【図4】マスクデータ生成処理について示すフローチャート
【図5】マスクデータ26の生成について示す図
【図6】サイドエッチングについて示す図
【図7】エッチングシミュレーションについて示すフローチャート
【図8】エッチングプロファイルについて示す図
【図9】エッチングデータ46の算出について示す図
【図10】ハイトフィールドデータ(エッチング対象)29について示す図
【図11】マスクデータ26の生成について示す図
【図12】エッチングシミュレーションについて示す図
【図13】分版装置1による分版処理の別の例について示す図
【図14】エッチングについて示す図
【図15】エッチングによるエンボス版の形状の変化について示す図
【図16】従来のマスクデータ生成について示す図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら、本発明の分版装置等の実施形態について説明する。
まず、図1、図2を参照して、本実施形態の分版装置について説明する。
【0027】
図1は、分版装置1の構成を示す図である。図1に示すように、分版装置1は、制御部11、記憶部12、メディア入出力部13、周辺機器I/F部14、通信部15、入力部16、表示部17等がバス18を介して接続されて構成される。
【0028】
制御部11は、CPU、ROM、RAM等により構成される。CPUは、記憶部12、ROM、記録媒体等に格納されるプログラムをRAM上のワークメモリ領域に呼び出して実行し、バス18を介して接続された各部を駆動制御する。ROMは、コンピュータのブートプログラムやBIOS等のプログラム、データ等を恒久的に保持する。RAMは、ロードしたプログラムやデータを一時的に保持するとともに、制御部11が各種処理を行うため使用するワークエリアを備える。
【0029】
記憶部12は、例えばハードディスクドライブであり、後述する分版処理に際して制御部11が実行するプログラムや、プログラム実行に必要なデータ、OS(オペレーティング・システム)等が格納されている。これらのプログラムコードは、制御部11により必要に応じて読み出されてRAMに移され、CPUに読み出されて実行される。
【0030】
メディア入出力部13(ドライブ装置)は、例えば、フロッピー(登録商標)ディスクドライブ、CDドライブ、DVDドライブ、MOドライブ等のメディア入出力装置であり、データの入出力を行う。
周辺機器I/F(インタフェース)部14は、周辺機器を接続させるためのポートであり、周辺機器I/F部14を介して周辺機器とのデータの送受信を行う。周辺機器I/F部14は、USB等で構成されており、通常複数の周辺機器I/Fを有する。周辺機器との接続形態は有線、無線を問わない。
【0031】
通信部15は、通信制御装置、通信ポート等を有し、ネットワーク等との通信を媒介する通信インタフェースであり、通信制御を行う。
入力部16は、例えば、キーボード、マウス等のポインティング・デバイス、テンキー等の入力装置であり、入力されたデータを制御部11へ出力する。
【0032】
表示部17は、例えば液晶パネル、CRTモニタ等のディスプレイ装置と、ディスプレイ装置と連携して表示処理を実行するための論理回路(ビデオアダプタ等)で構成され、制御部11の制御により入力された表示情報をディスプレイ装置上に表示させる。
バス18は、各装置間の制御信号、データ信号等の授受を媒介する経路である。
【0033】
次に、分版装置1の機能構成について、図2を用いて説明する。図2に示すように、分版装置1は、マスクデータ生成手段21、マスクデータ補正手段22、エッチングシミュレーション手段23、差分形状算出手段24等を有し、記憶部12にハイトフィールドデータ(目標形状)25、マスクデータ26、エッチングプロファイル27、腐食深度データ28、ハイトフィールドデータ(エッチング対象)29、ハイトフィールドデータ(テクスチュア)30等を記憶する。
【0034】
マスクデータ生成手段21は、分版装置1の制御部11が、入力部16等を介してユーザにより入力された、マスクデータ生成等に用いるパラメータに応じて、ハイトフィールドデータ(目標形状)25よりマスクデータ26を生成し記憶部12に記憶するものである。入力されるパラメータは、ハイトフィールドデータ(目標形状)25を2値化する際の閾値等である。
【0035】
マスクデータ補正手段22は、分版装置1の制御部11が、実際のエッチングの際のサイドエッチングの影響を考慮した、マスクデータ26の補正を行うものである。サイドエッチングおよびこの補正については後述する。
【0036】
エッチングシミュレーション手段23は、分版装置1の制御部11が、マスクデータ26、エッチングプロファイル27、腐食深度データ28を用いて、ハイトフィールドデータ(エッチング対象)29に対しエッチングシミュレーションを行ない、エッチング後のハイトフィールドデータ(エッチング対象)29を作成し、記憶部12に記憶するものである。
【0037】
差分形状算出手段24は、分版装置1の制御部11が、エッチング後のハイトフィールドデータ(エッチング対象)29とハイトフィールドデータ(テクスチュア)30の差分形状を算出し、ハイトフィールドデータ(目標形状)25をこの差分形状で更新するものである。また、差分形状に基づく分版処理の終了判定も行われる。
【0038】
ハイトフィールドデータ(目標形状)25は、エッチングを行う際の目標となる凹凸形状(高さ)の情報を例えば256の階調値で表したグレースケールの画像データである。初期のハイトフィールドデータ(目標形状)25は、エッチング対象に再現するテクスチュアのハイトフィールドデータであるハイトフィールドデータ(テクスチュア)30であるが、分版処理の過程で、前述の差分形状により更新される。
【0039】
マスクデータ26は、エッチング対象に対しエッチングを行なう箇所(開口部)とエッチングを行なわない箇所(マスク部)を示すデータである。実際のエッチングでは、マスク部が該当する箇所で、コーティングしたレジストにレーザを照射して硬化させることにより、エッチング対象にレジスト膜が形成される。
【0040】
エッチングプロファイル27は、実際のエッチングの際のエッチング対象の形状の詳細な変化に関するデータであり、サイドエッチングの影響を表すものである。エッチングプロファイル27については後述する。
【0041】
腐食深度データ28は、マスクデータ生成の際の閾値に相当する所定の腐食深度を定めるものである。マスクデータ26の生成に用いる閾値と、マスクデータ26を用いた1回分のエッチングにおける所定の腐食深度が関連付けて定められる。
例えば、最終的なエッチングの完了時にエッチング対象に形成される最大深度を、別途予めユーザが入力することにより、各閾値の値に対応する腐食深度が算出されて腐食深度データ28として記憶される。例えば前述したように、ハイトフィールドデータ(テクスチュア)30の最大値である256を上記最大深度に対応させ、この最大階調値に対する閾値の比率に応じて、各閾値により生成されたマスクデータ26を用いる際の腐食深度が算出され記憶される。
【0042】
ハイトフィールドデータ(エッチング対象)29は、エンボス版などエッチング対象の表面の凹凸形状(高さ)の情報を階調値で表したグレースケールの画像データである。エッチングシミュレーションが繰り返されることにより初期のハイトフィールドデータ(エッチング対象)29の表面がマスクデータ26に応じて窪んだ形状となり、ハイトフィールドデータ(テクスチュア)30の(上下反転)形状に近づく。
【0043】
ハイトフィールドデータ(テクスチュア)30は、エッチング対象に再現するテクスチュアの表面の凹凸形状(高さ)の情報を階調値で表したグレースケールの画像データである。前述したように、ハイトフィールドデータ(テクスチュア)30は、初期のハイトフィールドデータ(目標形状)25でもある。ハイトフィールドデータ(テクスチュア)30は、予め、あるいは分版装置1での処理の開始に際して入力し、記憶部12等に記憶させておく。
なお、ハイトフィールドデータ(目標形状)25、マスクデータ26、ハイトフィールドデータ(エッチング対象)29、ハイトフィールドデータ(テクスチュア)30は同じ大きさの配列のデータであるとする。
【0044】
次に、分版装置1による分版処理の手順について、図3〜図12を用いて説明する。
【0045】
図3は、分版装置1による分版処理を示すフローチャートである。
分版処理の手順においては、まず、分版装置1の制御部11が、ハイトフィールドデータ(目標形状)25よりマスクデータ26の生成を行う(ステップS11)。
【0046】
図4はマスクデータ生成処理について示すフローチャートである。
マスクデータ生成処理においては、まず、ユーザが、2値化の際の閾値等の、マスクデータ26の生成に用いるパラメータを入力部16等を介して入力する(ステップS111)。
【0047】
分版装置1の制御部11は、ハイトフィールドデータ(目標形状)25について、入力されたパラメータに応じて、閾値による2値化を行い、マスクデータ26を生成する(ステップS112)。生成されたマスクデータ26は、分版装置1の記憶部12等に記憶される。また、メディア入出力部13を介して記録媒体に出力したりしてもよい。
なお、前述したように、初期のハイトフィールドデータ(目標形状)25は、テクスチュアの形状を示すハイトフィールドデータ(テクスチュア)30である。
【0048】
図5は、マスクデータ26の生成について示す図である。
図5(a)に示すように、マスクデータ26を生成する際は、ハイトフィールドデータ(目標形状)25について、閾値32−1(32)以上か否かによる2値化を行う。図5(b)は、このようにして生成されたマスクデータ26−1(26)の例である。26aは閾値32−1以上の領域である開口部、26bは閾値32−1より低い領域であるマスク部である。
【0049】
図3に戻り、次に、分版装置1の制御部11は、マスクデータ26、エッチングプロファイル27、腐食深度データ28を用いて、ハイトフィールドデータ(エッチング対象)29に対する、サイドエッチングの影響を考慮したエッチングシミュレーションを行なう(ステップS12)。
【0050】
ここで、サイドエッチングとは、マスク部26b(レジスト膜)より内側に意図しないエッチングが生じる現象を指す。例えば図6のように、マスク部26bのパターンによりエッチング対象45で一定の深さをエッチングした場合、マスク部26bより内側の部分45aもエッチングされ、意図しない形状が形成される。ステップS12では、このようなサイドエッチングの影響を反映したエッチングシミュレーションを行う。
【0051】
図7はエッチングシミュレーションについて示すフローチャートである。
エッチングシミュレーションにおいては、図7に示すように、まず、分版装置1の制御部11が、ステップS11で生成され記憶部12に記憶されたマスクデータ26を取得する(ステップS121)。初回には、前記したマスクデータ26−1を取得する。
【0052】
そして、分版装置1の制御部11は、マスクデータ26とエッチングプロファイル27、腐食深度データ28を用い、マスクデータ26を用いてエッチングを行った際の、サイドエッチングの影響を考慮したエッチングデータ46を算出する(ステップS122)。
【0053】
図8は、エッチングプロファイル27について説明する図である。エッチングプロファイル27は、前述したサイドエッチングの影響を表すもので、ある時間エッチングを行なった際の、マスク部26bと開口部26aの境界よりマスク部26b側でのエッチング対象45の形状を特に表すものである。
【0054】
本実施形態では、エッチングプロファイル27は、図8(a)に示す、エッチング対象45で、マスクデータ26の開口部26a(開口部26aとマスク部26bの境界)にあたる箇所の腐食深度hに対する、開口部26aとマスク部26bの境界からマスク部26b側に向かう水平距離aと腐食深度hの関係を例えば図8(b)のように表すものとする。エッチングプロファイル27は、予め定める所定の腐食深度hごとに定められる。
なお、エッチングプロファイル27はこれに限ることはなく、エッチングを行なった際の、マスク部26b側でのエッチング対象45の形状を表すものであればよいが、上記のようなデータとすることにより、正確にサイドエッチングの影響を反映させることができる。
【0055】
図9は、エッチングプロファイル27を用いた、エッチングデータ46の算出について示す図である。本実施形態では、前記のステップS111で入力され、マスクデータ26の生成に用いた閾値に応じて、腐食深度データ28に基づき、マスクデータ26を用いた1回分のエッチングにおける腐食深度hを取得し、1つのマスクデータ26を用いて1回分(1段分)のエッチングを行った場合のエッチングデータ46を算出する。エッチングデータ46は、マスクデータ26と同じ大きさの配列のデータである。
【0056】
エッチングデータ46の算出の際は、図9に示すように、開口部26aにあたる箇所のエッチングデータ46として、1回分の腐食深度h(例えば「30」)を書き込む。一方、マスク部26bにあたる箇所の腐食深度として、上記所定の腐食深度hに対応して予め定められているエッチングプロファイル27を用いて、開口部26aとマスク部26bの境界からの距離に応じた値(例えば「15」)を書き込む。
【0057】
以上のようにして、1回分のエッチングにおける、サイドエッチングの影響を考慮したエッチングデータ46が得られる。
【0058】
図7に戻り、分版装置1の制御部11は、次に、上記のエッチングデータ46を用いて、エッチングシミュレーションを行う(ステップS123)。
【0059】
ステップS123では、まず、分版装置1の制御部11が、ハイトフィールドデータ(エッチング対象)29を取得する。初回の処理で取得するハイトフィールドデータ(エッチング対象)29は、図10(a)に示すような、表面が平坦な形状を示すハイトフィールドデータ(エッチング対象)29である。
【0060】
続いて、分版装置1の制御部11は、ハイトフィールドデータ(エッチング対象)29の各画素の階調値から、エッチングデータ46で対応する位置の腐食深度を減算することにより、マスクデータ26を用いたエッチング後のハイトフィールドデータ(エッチング対象)29を作成する。
即ち、開口部26aに対応する箇所では前述した所定の腐食深度hを減算し、マスク部26bに対応する箇所では、腐食深度hに対応するエッチングプロファイル27に基づく、開口部26aとマスク部26bの境界からの水平距離に応じた腐食深度を減算する。
このようにして作成したエッチング後のハイトフィールドデータ(エッチング対象)29の例が、図10(b)に示すハイトフィールドデータ(エッチング対象)29である。なお、図10におけるハイトフィールドデータ(テクスチュア)30は、テクスチュアの(上下反転)形状を示す。
【0061】
次に、分版装置1の制御部11は、図10(b)のハイトフィールドデータ(エッチング対象)29で示すエッチング後のエッチング対象の形状が、ハイトフィールドデータ(テクスチュア)30で示すテクスチュアの(上下反転)形状内に収まるかどうかを判定する(ステップS124)。
【0062】
即ち、マスクデータ26をそのまま用いてエッチングした場合、前述のサイドエッチングにより、図10(b)の箇所Aで示すように、エッチング後の形状が、部分的にテクスチュアの形状より広がって形成される場合があり、テクスチュアの形状とのずれが生まれる。
【0063】
分版装置1の制御部11は、ステップS124において、例えば、ハイトフィールドデータ(エッチング対象)29の階調値と、ハイトフィールドデータ(テクスチュア)30(の上下反転形状)の階調値とを、位置の対応する画素同士で比較し、全ての画素で、(ハイトフィールドデータ(エッチング対象)29の階調値)≧(ハイトフィールドデータ(テクスチュア)30の階調値)であれば、エッチング後の形状が、テクスチュアの形状内に収まると判定する。
【0064】
エッチング後の形状が、テクスチュアの形状内に収まると判定される場合(ステップS124のYES)、作成したエッチング後のハイトフィールドデータ(エッチング対象)29およびマスクデータ26を記憶部12に記憶してステップS12におけるシミュレーションを終了する。
【0065】
一方、エッチング後の形状が、テクスチュアの形状内に収まると判定されない場合(ステップS124のNO)、前述の問題を回避するため、分版装置1の制御部11は、マスクデータ26を補正する(ステップS125)。
補正量は、エッチング後の形状がテクスチュアの形状内に収まりかつ誤差が最小になる条件を満たす値とする。
【0066】
例えば、分版装置1の制御部11は、ステップS125において、前記のマスクデータ26について、開口部26aの外側を所定量内側へずらして補正したマスクデータ26を作成する。
補正したマスクデータ26に基づき前記と同様にエッチング後のハイトフィールドデータ(エッチング対象)29を作成する処理(ステップS122、S123)を、ステップS124で、エッチング後の形状がテクスチュアの形状内に収まると判定されるまで繰り返し、ステップS124においてテクスチュアの形状内に収まると判定されれば(ステップS124のYES)、その時点で、補正されたマスクデータ26で作成されていたエッチング後のハイトフィールドデータ(エッチング対象)29および補正されたマスクデータ26を記憶部12に記憶して、ステップS12におけるシミュレーションを終了する。
このときのマスクデータ26の補正量は、エッチング後の形状がテクスチュアの形状内に収まりかつ誤差が最小となる値となっている。
このようにして補正を行った例が図10(c)であり、開口部26aの外側を補正量分内側にずらすことによりマスクデータ26が補正されている。
【0067】
図3に戻り、次に、分版装置1の制御部11は、エッチング後のハイトフィールドデータ(エッチング対象)29が示すエッチング対象の形状と、ハイトフィールドデータ(テクスチュア)30が示すテクスチュアの形状との差分形状を算出する(ステップS13)。
【0068】
ステップS13で、分版装置1の制御部11は、例えば、位置の対応する画素ごとに、
図10(c)に示す、ハイトフィールドデータ(エッチング対象)29の階調値と、ハイトフィールドデータ(テクスチュア)30の階調値との差分をとり、図10(d)に示す差分形状のハイトフィールドデータ31を算出する。
【0069】
次に、分版装置1の制御部11は、マスクデータ26の作成を終了するかどうかを所定の条件により判定する(ステップS14)。
本実施形態では、分版装置1の制御部11が、差分形状のハイトフィールドデータ31の最大値と最小値の差(図10(d)のDで示す)を算出し、この差が予め定めた所定の閾値以下となった場合、ハイトフィールドデータ(エッチング対象)29の形状がハイトフィールドデータ(テクスチュア)30の形状に十分近づいたことになるので、マスクデータ26の作成を終了する。
なお、終了条件はこれに限らず、例えばこれまで作成したマスクデータ26の枚数により判定してもよい。この場合、予め定めた所定枚数に達すれば、マスクデータ26の作成を終了する。
【0070】
上記の判定でマスクデータ26の作成を終了すると判定される(ステップS14のYES)場合、分版処理を終了する。
【0071】
一方、上記の判定でマスクデータ26の作成を終了しないと判定される(ステップS14のNO)場合、ステップS11に戻り、ステップS11〜S14の一連の処理を繰り返す。
【0072】
この際、ハイトフィールドデータ(目標形状)25を差分形状のハイトフィールドデータ31で更新し、前回作成したエッチング後のハイトフィールドデータ(エッチング対象)29を、次回のシミュレーションを行う(エッチング前の)ハイトフィールドデータ(エッチング対象)29とする。
【0073】
従って、上記のステップS11におけるマスクデータ26の作成では、図11(a)に示すように、閾値32−2を定め、ハイトフィールドデータ(目標形状)25(差分形状のハイトフィールドデータ31)を2値化する。これにより、図11(b)に示すような2つ目のマスクデータ26−2が得られる。
【0074】
ステップS12において、2つ目のマスクデータ26−2を用いてエッチングシミュレーションを行った結果の例が、図12である。
2つ目のマスクデータ26−2を用い、ステップS122、S123で同様のエッチングシミュレーションを行うことにより、4段の窪みを有するエッチング後のハイトフィールドデータ(エッチング対象)29が新たに作成される。このように、2枚のマスクデータ26を用いて4段の窪みを有するエッチング対象が形成できることがわかる。
【0075】
上記のステップS11とS12、および前記と同様のステップS13、S14の処理を、ステップS14でマスクデータ26の作成を終了すると判定されるまで繰り返すと、最大2段の窪みを有するエンボス版等のエッチング対象を作成することができる、n枚のマスクデータ群が得られる。
【0076】
以上説明したように、本実施形態では、マスクデータ26を、従来のようにテクスチュアのハイトフィールドデータを閾値で多値化し作成するのではなく、直前に生成したマスクデータ26を用いたエッチングシミュレーションの結果と、テクスチュアの形状との差分形状に対し2値化を行って作成する。
全てのマスクデータをテクスチュアのハイトフィールドデータの多値化により作成する場合、n枚のマスクデータを用いてエッチングを行った結果のエンボス版の段数はn+1段となるが、上記のように作成したn枚のマスクデータ26を用いてエッチングを行うと、最大2段まで段数を増やすことが可能になりテクスチュアの形状との誤差を低減できるので、少ないマスクデータ26でより精密なエンボス版を作成することができるとともに、マスクデータ作成やエッチングの際のコストの削減につながる。
これは、従来の作成方法では、図16(b)で示されるように複数のマスクデータの開口部の領域同士が包含関係になるが、本実施形態の作成方法では、マスクデータをエッチング時の目標形状に応じて定めつつ、図5(b)と図11(b)の比較で分かるように、開口部の領域同士が包含関係とならないためである。
【0077】
また、エッチングシミュレーションの際に、実際のエッチングで起こるサイドエッチングの影響を反映させ、マスクデータ26をサイドエッチングの影響を考慮して補正するので、より正確なシミュレーション結果に基づきマスクデータの作成と補正を行うことができ、実際のエッチングの際に、テクスチュアの形状をより正確に再現するマスクデータを作成することができる。エッチングシミュレーションの際に、エッチングプロファイルを用いてサイドエッチングの影響を反映させるか否かは必要に応じて定めればよいが、サイドエッチングの影響を考慮することで、上記の効果が得られる。
【0078】
なお、本発明の分版装置による分版方法は、上記した例以外に、従来のマスクデータ生成処理に続けて行うこともできる。例えば、図16(b)に示すように従来の手法で生成された2枚のマスクデータを用いたエッチングシミュレーションの結果のハイトフィールドデータ(エッチング対象)と、ハイトフィールドデータ(テクスチュア)30の差分形状を、ハイトフィールドデータ(目標形状)25として、上記の処理を同様に行い、3枚目以降のマスクデータ26を作成すればよい。このように従来の方法に引き継いで本発明の分版方法を用いるか否かは、求められる精度等の必要に応じて定めることができる。
【0079】
次に、本発明の別の実施形態として、エッチングシミュレーションの際に、理想的なエッチングが行われることを仮定し、サイドエッチングの影響を省略した場合の処理手順について説明する。分版装置1の構成および処理手順は上記説明したものとほぼ同様であるが、サイドエッチングの影響を省略する場合、図3のステップS12のエッチングシミュレーションにおける処理が異なることになる。
【0080】
即ち、図7のステップS122におけるエッチングデータ46の算出の際は、エッチングプロファイル27を使用せず、マスクデータ26の開口部26aに対応する位置で、マスクデータ26生成時の閾値に対応する腐食深度hを書き込み、マスク部26bに対応する位置の腐食深度は0とする。
従って、ステップS123のエッチングシミュレーションでは、ハイトフィールドデータ(エッチング対象)29の、マスクデータ26の開口部26aに対応する位置の階調値から腐食深度hが減算され、マスク部26bに対応する位置の階調値は変わらない。その結果の例を図13(a)のハイトフィールドデータ(エッチング対象)29で示す。
【0081】
図13(a)に示すように、サイドエッチングの影響を考慮しないので、ハイトフィールドデータ(エッチング対象)29で示すエッチング後のエッチング対象の形状は常にハイトフィールドデータ(テクスチュア)30で示すテクスチュアの(上下反転)形状内となる。従って、ステップS124における判定、およびステップS125におけるマスクデータ補正の処理が省略される。
【0082】
それ以外の処理は同様に行うことができ、例えば図3のステップS13における差分形状の算出も同様に、図13(a)のハイトフィールドデータ(エッチング対象)29の階調値と、ハイトフィールドデータ(テクスチュア)30の階調値との差分をとることにより、図13(b)に示すような差分形状のハイトフィールドデータ31が算出される。
【0083】
以下ステップS14でも同様に、差分形状のハイトフィールドデータ31の最大値と最小値の差(図13(b)のDで示す)等に基づく終了判定を行い、分版処理を続ける場合(ステップS14のNO)、ハイトフィールドデータ(目標形状)25を差分形状のハイトフィールドデータ31で更新し、ステップS12で作成したエッチング後のハイトフィールドデータ(エッチング対象)29を、次回のシミュレーションを行う(エッチング前の)ハイトフィールドデータ(エッチング対象)29とし、前記したステップS11のマスクデータ生成から始まる処理を同様に繰り返す。
【0084】
上記の方法によっても、最大2段まで段数を増やすことが可能なn枚のマスクデータ26が得られ、前述したものと同様の効果が得られる。
【0085】
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係る分版装置等の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0086】
1………分版装置
21………マスクデータ生成手段
22………マスクデータ補正手段
23………エッチングシミュレーション手段
24………差分形状算出手段
25………ハイトフィールドデータ(目標形状)
26………マスクデータ
27………エッチングプロファイル
28………腐食深度データ
29………ハイトフィールドデータ(エッチング対象)
30………ハイトフィールドデータ(テクスチュア)
31………差分形状のハイトフィールドデータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テクスチュアの形状を表面に再現したエンボス版をエッチングの手法を用いて製造する際のマスクデータを生成するための分版装置であって、
エッチングの目標とする形状の高さ情報を階調値で示す目標形状のハイトフィールドデータを閾値により2値化し、開口部とマスク部を有するマスクデータを生成するマスクデータ生成手段と、
エッチング対象の高さ情報を階調値で示すエッチング対象のハイトフィールドデータについて、マスクデータの開口部にあたる箇所で階調値から所定の腐食深度を減算するエッチングシミュレーションを行い、エッチング後のエッチング対象のハイトフィールドデータを生成するエッチングシミュレーション手段と、
エッチング後のエッチング対象のハイトフィールドデータが示す形状と、テクスチュアの高さ情報を階調値で示すテクスチュアのハイトフィールドデータが示す形状との差分形状を示す、差分形状のハイトフィールドデータを算出する差分形状算出手段と、
を具備し、
前記目標形状のハイトフィールドデータとして、前記差分形状のハイトフィールドデータを用いることを特徴とする分版装置。
【請求項2】
前記エッチングシミュレーション手段は、マスクデータと、マスクデータの開口部とマスク部の境界からマスク部側に向かう距離と腐食深度との関係を表すエッチングプロファイルに基づき、エッチング対象のハイトフィールドデータについて、マスクデータの開口部に対応する箇所では所定の腐食深度を階調値から減算し、マスク部に対応する箇所ではエッチングプロファイルに基づく前記距離に応じた腐食深度を階調値から減算することにより、サイドエッチングの影響を反映したエッチング後のエッチング対象のハイトフィールドデータを生成することを特徴とする請求項1記載の分版装置。
【請求項3】
前記エッチングシミュレーション手段が生成するエッチング後のエッチング対象のハイトフィールドデータが示す形状が、テクスチュアのハイトフィールドデータが示す形状内に収まるように、マスクデータの開口部の補正を行うマスクデータ補正手段を更に具備し、
前記エッチングシミュレーション手段は、補正後のマスクデータを用いてエッチングシミュレーションを行うことを特徴とする請求項2記載の分版装置。
【請求項4】
前記差分形状算出手段は、算出した差分形状のハイトフィールドデータの最大値と最小値の差が所定値以下かどうかを判定し、所定値以下の場合にはマスクデータの作成処理を終了することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の分版装置。
【請求項5】
テクスチュアの形状を表面に再現したエンボス版をエッチングの手法を用いて製造する際のマスクデータを生成するための分版装置における分版方法であって、
分版装置が、
エッチングの目標とする形状の高さ情報を階調値で示す目標形状のハイトフィールドデータを閾値により2値化し、開口部とマスク部を有するマスクデータを生成するマスクデータ生成ステップと、
エッチング対象の高さ情報を階調値で示すエッチング対象のハイトフィールドデータについて、マスクデータの開口部にあたる箇所で階調値から所定の腐食深度を減算するエッチングシミュレーションを行い、エッチング後のエッチング対象のハイトフィールドデータを生成するエッチングシミュレーションステップと、
エッチング後のエッチング対象のハイトフィールドデータが示す形状と、テクスチュアの高さ情報を階調値で示すテクスチュアのハイトフィールドデータが示す形状との差分形状を示す、差分形状のハイトフィールドデータを算出する差分形状算出ステップと、
を実行し、
前記目標形状のハイトフィールドデータとして、前記差分形状のハイトフィールドデータを用いることを特徴とする分版方法。
【請求項6】
前記エッチングシミュレーションステップでは、マスクデータと、マスクデータの開口部とマスク部の境界からマスク部側に向かう距離と腐食深度との関係を表すエッチングプロファイルに基づき、エッチング対象のハイトフィールドデータについて、マスクデータの開口部に対応する箇所では所定の腐食深度を階調値から減算し、マスク部に対応する箇所ではエッチングプロファイルに基づく前記距離に応じた腐食深度を階調値から減算することにより、サイドエッチングの影響を反映したエッチング後のエッチング対象のハイトフィールドデータを生成することを特徴とする請求項5記載の分版方法。
【請求項7】
分版装置が、前記エッチングシミュレーションステップで生成するエッチング後のエッチング対象のハイトフィールドデータが示す形状が、テクスチュアのハイトフィールドデータが示す形状内に収まるように、マスクデータの開口部の補正を行うマスクデータ補正ステップを更に実行し、
前記エッチングシミュレーションステップでは、補正後のマスクデータを用いてエッチングシミュレーションを行うことを特徴とする請求項6記載の分版方法。
【請求項8】
前記差分形状算出ステップでは、算出した差分形状のハイトフィールドデータの最大値と最小値の差が所定値以下かどうかを判定し、所定値以下の場合にはマスクデータの作成処理を終了することを特徴とする請求項5から請求項7のいずれかに記載の分版方法。
【請求項9】
コンピュータを、請求項1から請求項4のいずれかに記載の分版装置として機能させるプログラム。
【請求項10】
コンピュータを、請求項1から請求項4のいずれかに記載の分版装置として機能させるプログラムを記憶した記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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