説明

分級デバイス、当該分級デバイスを用いた遠心エルトリエータ装置、磁気ビーズ、磁気ビーズの分級方法

【課題】エルトリエータを用いて磁気ビーズを分離する際、特に原料のうち中粒径ないし大粒径の粒子を分取する際に、分級性能、即ち産物粒子の粒径の均一性が低いという課題があった。
【解決手段】エルトリエータ用分離チャンバーと、当該分離チャンバー内部に磁界を印加する磁界発生手段とを備えている。ここで、上記磁界発生手段は、エルトリエータの遠心回転半径方向に配列した複数の独立制御可能な磁界発生部を備えることが好ましい。上記磁界発生手段としては電磁石を使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子の分級に用いる分級デバイス及びそれを用いた遠心エルトリエータ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
微粒子の分級法として、遠心エルトリエーション法が知られている。遠心エルトリエーション法(以下エルトリエーション法)は、粒子がその沈降速度に応じて遠心力と対向流の平衡位置に集まるという原理に基づいている。即ち粒子に働く遠心力とそれと反対方向に働く対向流により、粒子サイズに基づく粒子の勾配層を遠心機のロータに設置したチャンバー内に形成する。ロータの回転速度を下げてゆく、あるいは対向流の流速を上げていく、ことにより粒子の平衡位置を変化させてゆき、サイズの小さい粒子からチャンバー外に流出させていき、これをフラクションとして回収し、フラクション毎に粒径のそろった粒子を集める方法である(例えば、特許文献1)。
【0003】
一般に、チャンバーとしては回転中心の方向に向かうほどテーパー状に広がるものを使用する。これにより遠心力だけでなく、対向流の流速にも半径方向に勾配を設ける。これにより、チャンバー内の回転中心から半径の方向に、小さい粒子から大きい粒子という粒径分布の勾配の形成を促進する。
【0004】
【特許文献1】特開平7−265742号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エルトリエーション法は一般に、原料粒子の粒径分布のうち小粒径の粒子を分取する際は極めて高い分級性能を有する、即ち、小粒径の粒子を分級する際には、得られた産物粒子の粒径の均一性が高い。しかし、原料粒子の粒径分布のうち中粒径ないし大粒径の粒子を分取しようとすると分級性能が低い、即ち産物粒子の粒径の均一性が低い、という課題がある。
【0006】
エルトリエーション法は通常細胞などの比重が1に近い、また粒径が2〜50ミクロン程度の粒子を分級するために用いられる。同法を比重が2ないし5と大きく、粒径が約0.5〜3ミクロン程度と小さい粒子に適用した例は報告されていない。したがって、例えば、比重及び粒径の観点から後者の粒子に含まれる磁気微粒子(以下、磁気ビーズ)を、エルトリエーション法を適用して分級できるか不明である。
【0007】
そこで、本発明は、エルトリエーション法を磁気ビーズの分級に効果的に適用することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成した本発明に係る分級デバイスは、エルトリエータ用分離チャンバーと、当該分離チャンバー内部に磁界を印加する磁界発生手段とを備えている。ここで、上記磁界発生手段は、エルトリエータの遠心回転半径方向に配列した複数の独立制御可能な磁界発生部を備えることが好ましい。上記磁界発生手段としては電磁石を使用することができる。また、上記磁界発生部は、上記分離チャンバーの内壁に露出するようにしてもよい。一方、上記磁界発生部は複数の柱状磁芯から構成され、当該柱状磁芯の一端面が分離チャンバーの内壁に露出するようにしてもよい。さらに、上記磁界発生部としては、所定の間隔をもって分離チャンバーの空間部に対向するように配設してもよい。
【0009】
また、本発明に係る遠心エルトリエータ装置は、上述した本発明に係る分級デバイスと、当該分級デバイスの内壁により構成される空間部に溶液を供給する供給管路と、当該分級デバイスの空間部から溶液を排出する排出管路と、分級デバイスに遠心力を負荷する回転駆動機構とを備えている。
【0010】
さらに、本発明に係る磁気ビーズの分級方法は、上述した遠心エルトリエータ装置を用いて、回転駆動装置により分級デバイスを回転駆動して遠心力を負荷しながら、供給管路から排出管路に向かって磁気ビーズを含む溶液を供給することで、分離チャンバー内において磁気ビーズを分級し、磁界発生手段により分離チャンバー内部に磁界を発生させて、分級した状態を維持して、目的粒径の磁気ビーズを捕捉するものである。本方法において、上記磁界発生手段を制御して分離チャンバー内の磁界を解消して、排出管路より分級した磁気ビーズを回収することができる。
【0011】
本発明に係る分級デバイスは、エルトリエーション法によって分級された磁気ビーズを磁界発生手段から生じた磁力によって捕捉することができる。特に、磁界発生手段として、励磁とその解消を任意に制御可能な電磁石を使用することによって、分級状態を維持したまま、磁気ビーズの分離チャンバーへの捕捉及び脱離を容易に制御することができる。また、エルトリエータの遠心回転半径方向に配列した複数の独立制御可能な磁界発生部を備える磁界発生手段を使用することによって、目的とする粒子サイズを含む(好ましくは目的とする粒子サイズを下限とする)勾配層をチャンバー内に形成し、所望の粒子サイズの磁気ビーズを高精度に分級することができる。なお、本発明に係る分級デバイスは、上述のように勾配層をチャンバー内部に形成することで、目的粒径より小さい磁気ビーズが回転中心方向から流失し、目的粒径の磁気ビーズはチャンバーの回転中心方向の位置に分布し、また目的粒径より大きい磁気ビーズは半径方向の外側に分布する。
【0012】
また、本発明に係る分級デバイスにおいては、エルトリエータの遠心回転半径方向に配列した複数の独立制御可能な磁界発生部を備えることによって、所定の磁界発生部の位置に分級されたある粒径の磁気ビーズと他の磁界発生部の位置に分級された別の粒径の磁気ビーズとを分離して回収することができる。すなわち、複数の独立制御可能な磁界発生部を使用することによって、磁気ビーズをその分布状態を維持したまま、すなわち粒径に応じて捕集することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、粒径分布が広く、従来において所望の粒径範囲で分級することが困難であった磁気ビーズを、所望の粒径範囲で分級することができる。本発明に係る分級デバイス及びこれを用いた遠心エルトリエータ装置によれば、粒径分布が均一である磁気ビーズを回収することができる。このため、本発明に係る分級デバイス及びこれを用いた遠心エルトリエータ装置により分級された磁気ビーズを、例えば免疫計測に使用することで、反応や磁気分離が均一で、再現性が高く、信頼性が高い計測結果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明に係る分級デバイス、これを用いた遠心エルトリエータ装置、磁気ビーズの分級方法を詳細に説明する。
【0015】
本発明に係る分級デバイスは、遠心エルトリエーション法における分級デバイスとして使用される。すなわち、本発明に係る分級デバイスは、エルトリエータ用分離チャンバーと、当該分離チャンバー内部に磁界を印加する磁界発生手段とを備え、分離チャンバー内部に遠心力を生じせしめた状態で分級対象の磁気ビーズを含む溶液を遠心力に対する対向流として供給すると、チャンバー内部に粒径に応じた勾配層を形成する。チャンバー内部に形成された磁気ビーズの勾配層は、磁界発生手段から生じた磁力によって勾配を維持したまま捕捉することができる。
【0016】
本発明を適用した分級デバイスの一例を図1〜3に示す。図1は、本発明を適用した分級デバイスの断面を示す模式図である。図1に示す分級デバイス1は、一方端部に流入流路11、他方端部に流出流路13が形成された空隙(チャンバー)12を備えている。また、分級デバイス1は、図示しない遠心機に設置した場合における遠心機の回転軸2を軸として回転動作する。なお、図1の断面図は回転軸2と垂直な面における断面図である。図2は、図1に示した分級デバイス1の平面図であり、具体的には図1の断面と、それと平行な別の断面を重ね合わせた投影図である。図3は、分級デバイス1の別の断面、具体的には回転軸2を含む垂直断面を示す模式図である。図2及び3に示すように、分級デバイス1は、複数の独立制御可能な磁界発生部を備えている。すなわち、分級デバイス1は、独立制御可能な複数の電磁石30、31、32及び33と、これら電磁石30、31、32及び33にそれぞれ接続された磁芯20、21、22及び23とを備えている。すなわち、分級デバイス1は、電磁石30と磁芯20により構成される磁界発生部、電磁石31と磁芯21により構成される磁界発生部、電磁石32と磁芯22により構成される磁界発生部、電磁石33と磁芯23により構成される磁界発生部を有している。これら4つの磁界発生部は、分級デバイス1を回転軸2を中心に回転させたときに生ずる遠心力の方向(すなわち、遠心回転半径方向)に並列している。また、これら4つの磁界発生部は、図示しない制御機構に接続されており、この制御機構によりそれぞれ独立して制御される。すなわち、各電磁石30、31、32及び33には、図示しない電線を通して制御回路や電源などからなる制御機構に接続される。この制御機構により、各電磁石30、31、32及び33についてそれぞれ独立に、励磁とその解消が任意に制御可能となる。
【0017】
なお、磁芯20、21、22及び23としては、軟磁性材料で有れば良く、例えば、電磁鋼板(ケイ素鋼板)、アモルファス金属材料、ナノ結晶軟磁性材料、パーマロイ、Fe-Si-Al合金、ソフトフェライト等を使用することができる。
【0018】
また流入流路11や流出流路13はそれぞれ図示しない溶液流入用の配管、流出用の配管を通して試料容器、緩衝液容器、ポンプ、切替弁、廃液容器、回収容器などからなる図示しない送液機構に接続されている。すなわち、送液機構によって、流入流路11から流出流路13に向かって、磁気ビーズを含む溶液を供給することができる。換言すると、空隙12には、分級デバイス1を回転軸2を中心に回転させたときに生ずる遠心力の方向と対応する方向に、磁気ビーズを含む溶液が供給されることとなる。
【0019】
以下、図1〜3を用いて本発明による分級デバイス1の動作について説明する。分級デバイス1を遠心機に設置し、配管などを経由して送液機構に接続すると共に、電線などを経由して制御機構に接続する。この状態では、全ての電磁石30、31、32及び33に対する電力供給は停止されており、磁界は解消されている。
【0020】
この状態で、従来のエルトリエーション法と同様の手順により、広い粒径分布を有する原料磁気ビーズの分級を行う。すなわち、先ず、遠心機を後述の分離条件より高い回転数で回転し、送液機構を用いて一定量の原料磁気ビーズを緩衝液に懸濁した試料溶液を後述の分離条件より低い流量で分級デバイス1に送り込む。試料溶液は配管、流入流路11を通して空隙12に導入され、試料溶液中の磁気ビーズは空隙12内に保持される。次に、送液する液を磁気ビーズを含まない緩衝液に切り替え、遠心機の回転数と送液機構の流量を分離条件に設定する。この分離条件において、目的とする粒子サイズより小さい粒子は空隙12内における対向流による流れが遠心力に打ち勝ち、空隙12の回転中心方向に近い位置(流出流路13との接続部付近、例えば磁石の磁芯20の近傍)に移動し、さらに流出流路13を経て流出する。目的とする粒子サイズの粒子は空隙12内における対向流による流れと遠心力が均衡し、空隙12内、特に好ましくはその回転中心にやや近い位置、例えば磁石の磁芯21または22の近傍に留まる。目的とする粒子サイズより大きい粒子は空隙12内における対向流による流れに遠心力が打ち勝ち、空隙12内の回転軸から遠い(即ち半径方向の)位置、例えば磁石の磁芯23の近傍に留まる。
【0021】
以上により目的とする粒子を含む勾配層が空隙12内に形成され、特に好ましくは目的とする粒子サイズを下限とする勾配層が空隙12内の磁芯21ないし23の近傍に形成される。そして、この状態で各電磁石30、31、32及び33を励磁すると、空隙12内の磁気ビーズは、その分布状態を維持したまま、粒径に応じてセグメント状に分割した状態で、対応する近傍の各磁芯20、21、22及び23に捕集される。すなわち、目的とする粒径の磁気ビーズは磁芯21または22、目的より小さい磁気ビーズは磁芯20、目的より大きい磁気ビーズは磁芯23に捕集される。
【0022】
次に、洗浄を行う。具体的には、各電磁石30、31、32及び33を励磁したまま、緩衝液を上記分離条件より高い流量で分級デバイス1に送り込む。これにより、試料流入時に使用した配管、流入流路11の接続部や壁面に残留していた磁気ビーズなどの粒子は流入流路11から空隙12内へ移動する。磁気ビーズは、磁芯23に捕集され、磁性を持たない粒子などは空隙12内から流出流路13、流出用の配管を経て排出される。また流出流路13や配管の接続部や壁面に残留していた磁気ビーズなどの粒子も同様に排出される。洗浄を十分に行うことにより、流入流路11、流出流路13、配管などから磁気ビーズやその他不純物を排除し、磁気ビーズは空隙12内において粒径に応じて各磁芯20、21、22及び23に捕集された状態が得られる。
【0023】
次に、遠心機を停止した後、分別回収を行う。具体的には各電磁石30、31、32及び33を励磁したまま、第1に回収準備を行う。回収準備の具体的な工程は、分級デバイス1から配管などを取り外し、清浄な配管に交換することである。次に流出用の配管を小粒子回収容器(図示せず)に接続する。その後、磁芯20に対応する電磁石30の磁界を解消し、他の磁芯21、22及び23に対する電磁石31、32及び33は励磁したまま、上記洗浄と同様の操作を行う。これにより、磁芯20に捕集されていた、目的より小さい粒子が磁芯20から乖離し、空隙12内から流出流路13、流出用の配管を経て、小粒子回収容器に回収される。第2に、回収準備工程を再度実施する。すなわち、分級デバイス1から流出用の配管などを取り外し、清浄な配管に交換する。次に目的粒子回収容器(図示せず)に接続する。その後、磁芯21及び22に対応する電磁石31及び32の磁界を解消し、磁芯23に対する電磁石33は励磁したまま(磁芯20に対応する電磁石30の磁界も解消したまま)、上記洗浄と同様の操作を行う。これにより、磁芯21及び22に捕集されていた目的粒子は、磁芯21及び22から解離し、空隙12内から流出流路13、清浄な配管を経て目的粒子回収容器に回収される。この際、流入流路11から空隙12内に目的外の粒径の磁気ビーズが万一混入しても、それは磁芯23に捕集されるため、目的粒子回収容器に混入することはない。第3に、回収準備工程を再度実施する。すなわち、分級デバイス1から配管などを取り外し、清浄な配管に交換する。次に流入流路11に接続した配管を大粒子回収容器に接続する。その後、磁芯20、21及び22に対応する電磁石30、31及び32を励磁し、磁芯23に対応する電磁石33を解磁し、上記洗浄と反対の向きに緩衝液を流す。これにより、磁芯23に捕集されていた、目的より大きい粒子は、磁芯23から解離し、空隙12内から流入流路11、清浄な配管を経て大粒子回収容器に回収される。この際、流出流路13や空隙12内の回転中心方向の位置などに大粒子以外の磁気ビーズが万一残留していても、それは磁芯20、21及び22に捕集されるため、大粒子回収容器に混入しない。
【0024】
以上の通り、分級デバイス1を使用することによって、目的の粒径範囲に含まれる磁気ビーズを、目的範囲外の磁気ビーズから分別して、産物として回収することが可能となる。上述した例では、複数の磁界発生手段(磁芯と電磁石)を用いることで目的の粒径範囲に含まれる磁気ビーズを選択的に回収したが、単一の磁界発生手段を用いても目的の粒径範囲の磁気ビーズを選択的に回収できることは明らかである。単一の磁界発生手段を有する分離デバイスを使用する場合、当該磁界発生手段に目的の粒径範囲の磁気ビーズを捕集した状態を維持しつつ、目的範囲以外の磁気ビーズを排出し、その後、磁界発生手段に捕集された磁気ビーズを回収することとなる。また、上述した例では、4つの磁界発生手段を備える分級デバイス1を使用したが、磁界発生手段の数はこれに限定されない。磁界発生手段をエルトリエータの遠心回転半径方向に、より多くの磁界発生手段を配置することによって、より狭い粒径範囲の磁気ビーズを回収することができる。
【0025】
いずれにしても、磁界発生手段を有する分離デバイスを使用することによって、広い粒径分布を有する磁気ビーズを原料として用いる場合であっても、粒径分布が均一な磁気ビーズを産物として選択的に回収することができる。換言すれば、上述した分級デバイス及びこれを用いた遠心エルトリエータ装置は、分級性能が高いということができる。
【0026】
ところで、本発明を適用した分級デバイスは、図1〜3に示した構成に限定されず、例えば図4及び5に示すような構成であってもよい。図4及び5に示す分級デバイス101は、複数の柱状体が形成された磁芯120、121、122及び123を使用する以外は、図1〜3に示した分級デバイス1と類似した構成となっている。なお、図4及び5に示した分級デバイス101において、磁芯120、121、122及び123は、ぞれぞれ柱状体として円柱状の形状としたが、円柱の側面にねじ山を有する雄ねじ状であってもよいし、また断面が多角形の柱状体であっても良い。
【0027】
この磁芯120、121、122及び123は、予め円柱状に成形した部材を用意し、また分級デバイス101についても複数の孔または雌ねじ孔などを穿孔しておき、円柱状の部材を孔にはめ込みまたはねじ込み、その後背後の部材と接合することにより形成することができる。特にねじ込み状の場合、ねじのピッチを小さくすることにより、円柱状部材の分級デバイス101に対する挿入深度を高精度に調節可能であり、したがって、分級デバイス101における磁芯120、121、122及び123が空隙12に接する部分の形状を高精度に形成することが容易となる。したがって、空隙12の内面をなめらかとすることができるため、空隙12内部の乱流を防止でき、エルトリエーション分離を高精度に実施することが可能となる。
【0028】
また、本発明を適用した分級デバイスは、図1〜5に示した構成に限定されず、例えば図6に示すような構成であってもよい。図6に示す分級デバイス201は、所定の間隔をもって空隙12に対向するように配設された磁芯220、221、222及び223を使用する以外は、図1〜3に示した分級デバイス1と類似した構成となっている。これら磁芯220、221、222及び223は、空隙12に露出することなく、薄い壁をはさんで空隙12と対向している。この構造は、例えば分級デバイス201の外部から空隙12に向かって薄い壁を残して非貫通孔を形成しておき、その孔の底部に磁芯220、221、222及び223を埋め込むことにより形成することができる。この構造により、分級デバイス201における空隙12の内面を極めてなめらかとすることができるため、空隙12内部の乱流を防止でき、エルトリエーション分離を高精度に実施することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明による分級デバイスは、目的粒径の磁気ビーズだけを回収することができるため、高い分級性能が得られる。本分級デバイスを用いて分級した粒径の均一性が高い磁気ビーズは、例えば免疫計測に応用すると、反応や磁気分離が均一で、再現性が高く、信頼性が高い計測結果を提供できるため、高精度な免疫計測に好適に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明を適用した分級デバイスの一例の断面を示す模式図である。
【図2】図1に示した分級デバイスの平面を示す模式図である。
【図3】図1に示した分級デバイスの垂直断面を示す模式図である。
【図4】本発明を適用した分級デバイスの他の例の断面を示す模式図である。
【図5】図4に示した分級デバイスの垂直断面を示す模式図である。
【図6】本発明を適用した分級デバイスの他の例の断面を示す模式図である。
【符号の説明】
【0031】
1、101、201 分級デバイス
2 遠心機の回転軸
11 流入流路
12 空隙
13 流出流路
20、21、22、23 電磁石の磁芯
30、31、32、33 電磁石
120、121、122、123 電磁石の磁芯
220、221、222、223 電磁石の磁芯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エルトリエータ用分離チャンバーと、当該分離チャンバー内部に磁界を印加する磁界発生手段とを備える、分級デバイス。
【請求項2】
上記磁界発生手段は、エルトリエータの遠心回転半径方向に配列した複数の独立制御可能な磁界発生部を備えることを特徴とする請求項1記載の分級デバイス。
【請求項3】
上記磁界発生手段は電磁石であることを特徴とする請求項1記載の分級デバイス。
【請求項4】
上記磁界発生部は、上記分離チャンバーの内壁に露出していることを特徴とする請求項2記載の分級デバイス。
【請求項5】
上記磁界発生部は複数の柱状磁芯から構成され、当該柱状磁芯の一端面が分離チャンバーの内壁に露出していることを特徴とする請求項2記載の分級デバイス。
【請求項6】
上記磁界発生部は、所定の間隔をもって分離チャンバーの空間部に対向するように配設されたことを特徴とする請求項2記載の分級デバイス。
【請求項7】
請求項1乃至6いずれか一項記載の分級デバイスと、
当該分級デバイスの内壁により構成される空間部に溶液を供給する供給管路と、
当該分級デバイスの空間部から溶液を排出する排出管路と、
分級デバイスに遠心力を負荷する回転駆動機構とを備える、遠心エルトリエータ装置。
【請求項8】
請求項7記載の遠心エルトリエータ装置を用いて、回転駆動装置により分級デバイスを回転駆動して遠心力を負荷しながら、供給管路から排出管路に向かって磁気ビーズを含む溶液を供給することで、分離チャンバー内において磁気ビーズを分級し、
磁界発生手段により分離チャンバー内部に磁界を発生させて、分級した状態を維持して磁気ビーズを捕捉することを特徴とする磁気ビーズの分級方法。
【請求項9】
上記磁界発生手段を制御して分離チャンバー内の磁界を解消して、排出管路より分級した磁気ビーズを回収することを特徴とする請求項8記載の磁気ビーズの分級方法。
【請求項10】
請求項7記載の遠心エルトリエータ装置を用いて分級したことを特徴とする磁気ビーズ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−42364(P2010−42364A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−208718(P2008−208718)
【出願日】平成20年8月13日(2008.8.13)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【Fターム(参考)】