説明

分繊用高配向未延伸糸及びモノフィラメント

【課題】織編物に対しストレッチ性と共に膨らみ感あるソフトな風合いを与えることのできるモノフィラメント、並びに当該モノフィラメントを生産性よく得るための分繊用高配向未延伸糸を提供する。
【解決手段】ポリエチレンテレフタレートを主とする粘度差サイドバイサイド複合糸であって、繊維横断面における両ポリエステルの接合面形状を特定の形状に湾曲させ、かつ単糸繊度のCV%、複屈折率などを特定の糸質とした分繊用高配向未延伸糸。また前記分繊用高配向未延伸糸を延伸後分繊してなるモノフィラメントであって、沸水で収縮処理したときの捲縮回復応力が0.0088〜0.0177cN/dtexであるモノフィラメント。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分繊用高配向未延伸糸と、これを延伸後分繊してなるモノフィラメントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ストレッチ性を有する織編物を得るために、極限粘度の異なる2種類のポリエステルをサイドバイサイド型に接合した潜在捲縮性の複合繊維を使用することはよく知られている。この潜在捲縮性複合繊維を糸や織編物の状態で捲縮発現処理して捲縮を発現させ、ストレッチ性を具備する織編物として利用する際には、糸条の3次元クリンプ形態や捲縮性能が、布帛にしたときのストレッチ性能に大きく影響する。
【0003】
従来から、このような潜在捲縮性ポリエステル複合繊維を得るために、両ポリエステル間の極限粘度差を可能な限り大きくし、繊維にしたときの収縮差を大きくしており、さらには、ストレッチ性能と紡糸操業性を向上させるために、単繊維横断面の両ポリエステルの接合面を直線的にする努力がなされており、これらの複合繊維については種々の提案がある。
【0004】
例えば、2種類のポリエステルの極限粘度差が大きい場合などは、溶融紡糸時に吐出糸条が屈曲を起こす。また、粘度差がさらに大きくなると、屈曲が過度に進み、糸条が紡糸口金に付着して切断するので、安定して紡糸できない。そこで、粘度の異なるポリエステルを1対の吐出孔から吐出させて、サイドバイサイド型の複合繊維を形成するようにした口金において、1対をなす吐出孔が口金面と直交する方向に対してなす各々の傾斜角度や、1対の吐出孔間の距離などを規制した溶融紡糸用口金が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
この溶融紡糸用口金を用いて紡糸すると、繊維横断面における2種類のポリエステルの接合面は直線的になる。この場合、2種類のポリエステルの粘度差が大きくても紡糸操業性は良好であるが、2種類のポリエステルの接合面が直線的であるため、発現する繊維の3次元クリンプ形態が小さく、さらには、単位長さ当たりに捲縮が非常に多く発現するため、単糸同士にはまり込みが発生し、織編物にしたときに膨らみ感に欠けたフラットな風合いになる。また、このような紡糸口金を使用し紡糸した繊維では、用途がストレッチ性を重視したものに限られる。
【0006】
また、前記の複合繊維から、ストレッチ性を余り重視せず、適度にストレッチ性を持たせた織編物を得ようとしても、両ポリエステル間の粘度差が大きいために捲縮性能が高くなりすぎ、得られる織編物は、高い捲縮性能によって粗剛感が強調されるため、ソフト感がない、あるいは、ふかつき感のある風合いになるという問題がある。
【0007】
他方、分繊用ポリエステルモノフィラメントについても、上記と同様、ストレッチ性ある織編物を得る試みがある。この点、ポリエステルモノフィラメントを仮撚し捲縮を付与することは、ストレッチ性ある織編物を得る上で有用である。例えば、特許文献2に、高配向未延伸糸を延伸仮撚加工した後、フィラメント毎に分繊する製造方法が開示されている(参照)。また、その際の仮撚加工条件については、特許文献3、4に詳細がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公昭61−60163号公報
【特許文献2】特開昭56−31011号公報
【特許文献3】特開昭55−98922号公報
【特許文献4】特開昭56−9434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、高配向未延伸糸として単糸繊度が太く、フィラメント数の少ないものを使用すると、仮撚加工が難しくなるばかりか、モノフィラメントの捲縮応力を高めようとするにつれ、分繊性は低下する。そうすると、品質のよいモノフィラメントは得られない。この点の解決方法については、有効な手段が未だ見出されていない。
【0010】
本発明は、上記の問題を解消し、織編物に対しストレッチ性と共に膨らみ感あるソフトな風合いを与えることのできるモノフィラメント、並びに当該モノフィラメントを生産性よく得るための分繊用高配向未延伸糸を提供することを技術的な課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究した結果、高配向未延伸糸において、繊維横断面における両ポリエステルの接合面形状を湾曲させ、単糸繊度のばらつきや複屈折率を特定範囲に規定すれば、当該高配向未延伸糸の単糸繊度が太くかつフィラメント数が少なくても、自身の分繊性を維持しつつ、得られるモノフィラメントの捲縮能を高めることができることを見出し、本発明なすに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、第一に、エチレンテレフタレートの繰り返し単位が85%以上のポリエチレンテレフタレートである2種類の極限粘度の異なるポリエステルが互いにサイドバイサイド型に複合され、繊維横断面の両ポリエステルの接合面形状が湾曲している単繊維から構成され、単糸繊度が20〜40dtex、フィラメント数が6〜16本、単繊維のCV%が3%以下、かつ、複屈折率Δnが20×10−3〜60×10−3であることを特徴とする分繊用高配向未延伸糸を要旨とするものであり、第二に、当該分繊用高配向未延伸糸を延伸後分繊してなるモノフィラメントであって、両ポリエステルの接合面と繊維外周との2つの接点a、bを結んだ線分abの中心を通り、線分abと直交した直線Xと高粘度側ポリエステルの繊維外周との交点をc、接合面との交点をd、線分cdと線分abとの交点をeとしたとき、線分deと線分cdとの長さの比de/cdが特定式を満足し、かつ沸水で収縮処理したときの捲縮回復応力が0.0088〜0.0177cN/dtexであることを特徴とするモノフィラメントを要旨とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、織編物に対しストレッチ性と共に膨らみ感あるソフトな風合いを与えることのできるモノフィラメントを提供することができる。また、このモノフィラメントを生産性よく得るための元糸となる分繊用高配向未延伸糸を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のモノフィラメントの一実施態様を示す横断面図である。
【図2】本発明における捲縮回復応力を算出するための測定値sを示す捲縮回復応力曲線図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0016】
本発明における第一の発明である高配向未延伸糸では、構成繊維たる単繊維において、エチレンテレフタレートの繰り返し単位が85%以上のポリエチレンテレフタレートである2種類極限粘度の異なるポリエステルが、互いにサイドバイサイド型に接合されている。ポリエステル中には、本発明の効果を損なわない限り、イソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、2,2−ビス{4−(β−ヒドロキシ)フェニル}プロパンなどの共重合成分を含有させてもよい。特に、高粘度側となるポリエステルに共重合成分を含有させることにより、モノフィラメントの捲縮回復応力を調整することができる。また、ポリエステル中には、酸化チタンなどの艶消し剤、ヒンダートフェノール系化合物などの酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、顔料、難燃剤、抗菌剤、導電性付与剤などが配合されてもよい。
【0017】
本発明では、上記単繊維において、繊維横断面における2種類のポリエステルの接合面形状が湾曲している必要がある。繊維横断面における2種類のポリエステルの接合面が直線的であると、後に得られるモノフィラメントにおいて、収縮処理によって発現する捲縮の3次元クリンプ形態が小さくなるため、織編物にしたときの風合いが硬くなり、膨らみ感のあるソフトな風合いが得られない。
【0018】
本発明の高配向未延伸糸では、単糸繊度が20〜40dtexであることが必要である。単糸繊度が20dtex未満では、最終的なモノフィラメントとしたとき、実用範囲を外れることになる。一方、40dtexを超えると、高配向未延伸糸を紡糸する際、冷却性不良により操業性が悪化したり、単繊維間で融着が発生したり、さらには後の延伸工程や分繊工程において糸切れが多発するようになる。
【0019】
さらに、本発明の高配向未延伸糸では、紡糸性及び後の延伸工程並びに分繊工程の取扱性や操業性の観点から、フィラメント数が6〜16本である必要があり、8〜12本であることが好ましい。フィラメント数が6本未満になると、後の分繊工程において生産効率が低下する。一方、16本を超えると、高配向未延伸糸を紡糸する際、冷却性が悪化し、後の分繊工程が煩雑となる。さらに、同様の理由から、高配向未延伸糸の総繊度を120〜500dtexとすることが好ましい。
【0020】
また、本発明の高配向未延伸糸を構成する単繊維のCV%は、3%以下にすることが必要である。単繊維のCV%とは、単繊維繊度のばらつきを示す指数である。CV%が3%を超えると、繊度のばらつきが大きくなり、結果、高配向未延伸糸の分繊性が低減する。また、それに伴い、分繊して得られるモノフィラメントの繊度差も大きくなる。
【0021】
そして、本発明の高配向未延伸糸の複屈折率Δnとしては、20×10−3〜60×10−3とする必要がある。複屈折率Δnを所定範囲とすることは、高配向未延伸糸を溶融紡糸する際、紡糸速度を3000〜4000m/分とすることにより可能である。Δnが20×10−3未満、すなわち高配向未延伸糸の配向度が低い場合には、高配向未延伸糸の経時変化が大きくなるので、高配向未延伸糸の分繊性が低下する。また、モノフィラメントの繊度斑も大きくなる。一方、Δnが60×10−3を超えると、後の延伸工程において、モノフィラメントに捲縮を付与できなくなり、かつ捲縮の経時変化が引き起こしやすくなる。その結果、高配向未延伸糸の分繊性も低下する。もっとも、Δnを60×10−3より大きくするには、高配向未延伸糸の紡糸速度を著しく速くする必要があり、結果、紡糸操業性が悪化する、紡糸口金の単孔吐出量が多くなる、紡糸段階でドラフト率が高くなるなど、操業性に悪影響を及ぼすことがある。
【0022】
さらに、高配向未延伸糸の複屈折率Δが20×10−3〜60×10−3を満足しない場合、最終的に得られる織編物の風合が大きく低下する。
【0023】
次に、第二の発明たるモノフィラメントについて説明する。
【0024】
本発明のモノフィラメントの実施形態様を示す単繊維横断面図の一例を図1に示す。ここで、両ポリエステルの接合面と繊維外周との2つの接点a、bを結んだ線分abの中心を通り、線分abと直交する直線Xと高粘度側ポリエステルの繊維外周との交点をc、接合面との交点をdとし、線分cdと線分abとの交点をeとする。
【0025】
本発明のモノフィラメントは、線分deと線分cdとの長さの比(以下、de/cd)を0.05〜0.80にする必要がある。この比が0.05以下になると、横断面において両ポリエステルの接合面が直線的になり、織編物において膨らみ感のあるソフトな風合いが得られない。一方、この比が0.80を超えると、織編物を収縮処理するなどにより発現する捲縮の3次元形態は大きくなるものの、この比が0.80を超えるようにするためには、両ポリエステルの極限粘度差を大きくする必要があるので、溶融紡糸時に吐出糸条が屈曲して口金面に付着し、高配向未延伸糸が切断しやすくなり、結果、安定した紡糸ができなくなる。
【0026】
また、本発明のモノフィラメントは、沸水で収縮処理したときの捲縮回復応力が0.0088〜0.0177cN/dtexである必要がある。捲縮回復応力が0.0088cN/dtexより低いと、得られる織編物のストレッチ性が乏しくなる。一方、0.0177cN/dtexを超えると、織編物のストレッチ性は良好となるが、風合いが硬くなり、ソフト感も失われる。
【0027】
ここで、本発明の高配向未延伸糸及びモノフィラメントの製法例について説明する。
【0028】
まず、複合紡糸装置を用いて、互いに異なる極限粘度の2種類のポリエステルを溶融して別々の計量孔にて計量し、口金背面でサイドバイサイド型になるように合流させ、紡糸温度280〜310℃で同一吐出孔から吐出させ、紡出糸条を冷却した後、油剤を付与して3000〜4000m/分の速度で引取り、複屈折率Δnが20×10−3〜60×10−3の高配向未延伸糸のパッケージとして捲取る。このとき、使用する口金装置としては、高配向未延伸糸の単繊維繊度のばらつきを抑える観点から、計量プレートとノズルプレートとを重ね合わせ、1つのノズル孔に対し、計量プレートには高粘度側、低粘度側それぞれ2つ以上、好ましくは3〜4のオリフィスを有する構成とするのが好ましい。
【0029】
次いで、得られた高配向未延伸糸を延伸し、延伸糸パッケージとして捲取り、さらにこの延伸糸を分繊することにより、本発明のモノフィラメントを得る。延伸は、通常の熱延伸の他、常温下で行う冷延伸、仮撚と同時に行う延伸仮撚など、目的に応じて様々な延伸態様が採用できる。
【0030】
本発明のモノフィラメントは、繊維横断面におけるde/cdが0.05〜0.80を満足し、かつ沸水で収縮処理したときの捲縮回復応力が0.0088〜0.0177cN/dtexを満足する。これらの数値限定を達成するには、高配向未延伸糸中の単繊維を構成する、2つのポリエステル間の極限粘度差を調整すればよい。具体的には、低粘度ポリエステルとして、極限粘度が0.35〜0.70のものを、高粘度ポリエステルとして、極限粘度が0.05〜0.80のものを用い、かつ、両ポリエステル間の極限粘度差が0.05〜0.30となるようにすればよい。
【実施例】
【0031】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例における測定方法と評価方法は次の通りである。
【0032】
(1)極限粘度
フェノールと四塩化エタンの等量混合物を溶媒とし、温度20℃で測定した。
【0033】
(2)de/cd
得られたモノフィラメントの断面写真を撮り、拡大コピー機で実質寸法の312倍まで拡大する。次いで、最小目盛り0.5mmの定規でdeとcdを小数点以下第1位まで測定し、単繊維のde/cdを算出する。12本のモノフィラメントについて測定・算出し、これらの平均を求めるべきde/cdとする。
【0034】
(3)捲縮回復応力
得られたモノフィラメントを外周1.125mの検尺機で5回かせ取りして2重にし、1/5296cN/dtexの荷重をかけて30分放置する。次いで、荷重をかけたままの状態で30分間沸水処理し、処理後の試料を30分間乾燥する。
次に、オリエンテック製万能引張試験機の引張速度を100mm/分、記録計のチャート速度を100mm/分に設定し、上記試料をセットする。次いで、(繊度×1.96)cNの応力が掛かる点まで試料を伸長させ、その後、同じ速度で回転させる。この時のチャートの最大応力点(α)から垂線を降ろし、応力0cNの線との交点(β)から45°の角度で応力曲線側に引いた線と回復応力曲線との交点(γ)での応力測定値sを読み取り(図2参照)、次式で算出する。
捲縮回復応力=s/繊度(d)×20
【0035】
(4)複屈折率Δn
偏光顕微鏡を用いて、ベレックコンペンセーター法により、得られた高配向未延伸糸をPOE測定した。
【0036】
(5)単糸繊度
高配向未延伸糸を10cm程度の長さに切断後、単繊維に分割し、サーチ社製「DENIIR COMPUTER DC−11(商品名)」を使用し、全ての単繊維につき繊度を測定した。なお、表1の単糸繊度は全ての単繊維の平均とした。
【0037】
(6)単糸繊度CV%
上記(5)で測定した各単繊維の繊度から、V、Xを算出し、次式に基づきCV%を求めた。
単糸繊度のCV%(%)=(V/X)×100
V:分繊用高配向未延伸糸を構成する全単繊維の繊度の不偏分散平行根
X:分繊用高配向未延伸糸を構成する全単繊維の繊度の平均値
【0038】
(7)紡糸性
16錘で24時間紡糸を行った時の切糸回数で評価し、○と△を合格基準とした。
0回:○, 1〜2回:△, 3回以上:×
【0039】
(8)ストレッチ性と風合いの評価
経糸に56dtex24fのポリエチレンテレフタレート(PET)延伸糸を用い、緯糸に得られたモノフィラメントを用いて平組織の生機を得、この生機を精練後、100℃で30分間沸騰水処理し、風乾して得た織編物につき、10人のパネラーで官能評価した。緯方向に引っ張ったときにストレッチ性を有し、かつ、膨らみ感があるソフトな風合いと判断した人数で評価を行い、○と△を合格とした。
9人以上:○ 7〜8人:△ 6人以下:×
【0040】
(9)分繊性
得られた高配向未延伸糸を仮撚機ST−5(仮撚条件:仮撚数2100T/M、仮撚温度170℃、延伸倍率1.70、糸速500m/分)にて延伸仮撚した後、得られた加工糸を一連分繊機で分繊した。それぞれ加工糸100本(100パッケージ)を用いて、分繊後のモノフィラメントの満捲き率にて下記のように評価した。
○:満捲き率85%以上 ×:満捲き率85%未満
【0041】
(実施例1)
高粘度PET(A)として極限粘度0.68のものを、低粘度PET(B)として極限粘度0.46のものを用い、各々50:50の体積比率で溶融し、高粘度側0.7mm、低粘度側0.4mmとした計量孔で孔径を計量した後(オリフィスの数は1吐出孔当り高粘度側、低粘度側3つずつ)、合流させ、孔径1.0mmの丸断面形状孔を12孔有する紡糸口金から290℃の紡糸温度で紡出した。このとき糸全体でのPET(A)、(B)の吐出比は50:50とした。
【0042】
この紡出糸条を空気流で冷却固化した後、0.7質量%の油剤を付加し、3250m/分の速度で引き取り、360dtex12fのサイドバイサイド型の高配向未延伸糸を得た。次いで、得られた高配向未延伸糸を85℃で1.7倍延伸し、170℃のホットプレート上で熱処理し、210dtex12fの延伸糸となした。
【0043】
そして、延伸糸パッケージから糸を捲取速度500m/分で引き出しつつ分繊し、18dtex/1fのモノフィラメントを得た。
【0044】
なお、高配向未延伸糸の複屈折率、単繊維のCV%、紡糸性及び分繊性並びにモノフィラメントのde/cd、捲縮応力、織物のストレッチ性を表1にまとめた。
【0045】
(実施例2、3、比較例1、2)
PET(B)の極限粘度を変更した以外は、実施例1と同様に行った。
【0046】
(実施例4、5、比較例3)
ノズルパックへ供給するポリマー量を変更して高配向未延伸糸の単糸繊度を変更した以外は、実施例1と同様に行った。
【0047】
(比較例4)
ノズルパックへ供給するポリマー量を変更し、さらにノズル孔数を18ホールのものに変更した以外は、実施例1と同様に行った。
【0048】
(比較例5、6)
高配向未延伸糸を得る際の紡糸速度を変更した以外は、実施例1と同様に行った。
【0049】
(比較例7)
計量プレートのオリフィス孔の数を高粘度側、低粘度側共に1つにした以外は、実施例1と同様に行った。
【0050】
【表1】

【0051】
表1から明らかなように、実施例1〜5で得られた高配向未延伸糸は、分繊時の切れ糸が少なく、得られたモノフィラメントを緯糸に配した熱処理後の織物は、ストレッチ性を有した膨らみ感のあるソフトな風合いであった。また、ストレッチ性の指標たる捲縮回復応力も所定範囲にあった。
【0052】
一方、比較例1は、両ポリエステルの極限粘度差が大きすぎるため、溶融紡糸時に吐出糸条が屈曲して口金面に付着し、紡糸不可能であった。また、比較例2では、両ポリエステルの極限粘度差が小さすぎたため、de/cdが所望のものとならず、捲縮の3次元クリンプ形態が小さくなり、膨らみ感ある風合いが得られず、かつ、捲縮回復応力も低い値であった。比較例3、4は、糸条の冷却不足のため、単糸間で融着が起こり、紡糸不可能となった。比較例5は高配向未延伸糸の複屈折率が高すぎたため、延伸工程における捲縮発現性が不良であり、織編物においてストレッチ性、膨らみ感あるソフトな風合いが得られなかった。比較例6は、高配向未延伸糸の複屈折率が低すぎたため、延伸工程で単繊維長手方向のばらつきが大きくなり、捲縮も不均一であり、分繊時の操業性が悪化した。比較例7は、高配向未延伸糸を構成する単繊維繊度のばらつきが大きく、分繊時の操業性が悪化した。
【符号の説明】
【0053】
a 両ポリエステル接合面と繊維外周との接点
b 両ポリエステル接合面と繊維外周との他端の接点
X 線分abの中心を通り、線分abに直交する直線
c 直線Xと高粘度側ポリエステルの繊維外周との交点
d 直線Xと両ポリエステル接合面との交点
e 線分abと直線Xとの交点
α 最大応力点
β αから垂線を降ろした応力0cNの線との交点
γ βから45°の角度で応力曲線側に引いた線との回復応力曲線との交点
s 応力測定値


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンテレフタレートの繰り返し単位が85%以上のポリエチレンテレフタレートである2種類の極限粘度の異なるポリエステルが互いにサイドバイサイド型に複合され、繊維横断面の両ポリエステルの接合面形状が湾曲している単繊維から構成され、単糸繊度が20〜40dtex、フィラメント数が6〜16本、単繊維のCV%が3%以下、かつ、複屈折率Δnが20×10−3〜60×10−3であることを特徴とする分繊用高配向未延伸糸。
ただし、単糸繊度のCV%(%)=(V/X)×100
V:分繊用高配向未延伸糸を構成する全単繊維の繊度の不偏分散平行根
X:分繊用高配向未延伸糸を構成する全単繊維の繊度の平均値
【請求項2】
請求項1記載の分繊用高配向未延伸糸を延伸後分繊してなるモノフィラメントであって、両ポリエステルの接合面と繊維外周との2つの接点a、bを結んだ線分abの中心を通り、線分abと直交した直線Xと高粘度側ポリエステルの繊維外周との交点をc、接合面との交点をd、線分cdと線分abとの交点をeとしたとき、線分deと線分cdとの長さの比de/cdが下記式(1)を満足し、かつ沸水で収縮処理したときの捲縮回復応力が0.0088〜0.0177cN/dtexであることを特徴とするモノフィラメント。
0.05≦de/cd≦0.80・・・(1)


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−195966(P2011−195966A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−60880(P2010−60880)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(000228073)日本エステル株式会社 (273)
【Fターム(参考)】