説明

分解処理剤

【課題】 高い分解処理能力を従来よりも長時間にわたって維持することができるフッ素含有ガスの分解処理剤を提供する。
【解決手段】 主成分として水酸化カルシウムとおよび水酸化アルミニウムを含み、前記主成分100質量%に対して、COの含有量が0.1質量%以上2質量%以下である分解処理剤である。この分解処理剤を用いれば、分解処理剤とフッ素含有ガスとの反応速度の適正化が図られ、フッ素含有ガスの高い分解処理能力を長時間にわたって維持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境に有害な影響を与えるフッ素含有ガスの分解処理剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化学的に極めて安定しているフロンは、爆発引火などの危険がないこと、人体にも無害であることなどの優れた性質を有することから様々な分野で広範囲に使用されてきた。しかしながら、フロンによるオゾン層破壊が問題となり、フロンに代わる代替フロンとしてカーエアコン等の冷媒用としてハイドロフルオロカーボン(HFC)類、半導体製造プロセスでのエッチングおよびクリーニングガスとしてCF,C等のパーフルオロカーボン(PFC)類やフッ化硫黄(SF)等が用いられてきた。
【0003】
しかしながら、これらの代替フロンは、オゾン層は破壊しないものの、そのまま大気中に放出されると化学的に安定しており長時間にわたって温室効果を及ぼすことから、地球温暖化への影響が懸念される物質である。さらに、代替フロンに代わって用いられているパーフルオロエーテル(PFE)類やハイドロフルオロエーテル(HFE)類についても、代替フロンより温室効果が低いものの地球温暖化へ影響を与えるため、HFC,PFC等の代替フロンや代替フロンに代わるPFE,HFE等のフッ素含有ガスは、地球環境に影響を与えない無害な物質に分解して排出する必要がある。
【0004】
また、半導体製造プロセスに使用された後で排出されるフッ素含有ガスには、毒性の強いHF,SiF,COF等のフッ素含有ガスも含まれるため、その分解処理には耐食性のある材料を選定して、安全に処理しなければならず、本出願人は、このようなフッ素含有ガスに接触させて、地球環境に影響を与えない無害な物質に分解して排出する分解処理剤として以下の提案を行なっている。
【0005】
特許文献1では、フッ素含有ガス(フッ素化合物)を加熱下で分解するための分解処理剤であって、水酸化アルミニウムと水酸化マグネシウムまたは水酸化カルシウムとを用いて成るとともに、ランタノイド化合物を含まず、上記水酸化アルミニウムが、加熱下で水蒸気を供給して主として非晶質の酸化アルミニウムとなり、水酸化マグネシウムまたは水酸化カルシウムが、加熱下で水蒸気を供給して酸化マグネシウムまたは酸化カルシウムとなるフッ素含有ガスの分解処理剤を提案している。
【0006】
また、特許文献2では、フッ素含有ガスを加熱下で分解する分解処理剤であって、水酸化アルミニウムと水酸化カルシウムと炭酸カルシウムとからなる分解処理剤を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4454275号公報
【特許文献2】特開2009−226398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本出願人が提案しているフッ素含有ガスの分解処理剤は、高い分解処理能力を有しているものの、高い分解処理能力を有するとともにこの分解処理能力を長時間にわたって維持できるフッ素含有ガスの分解処理剤が求められている。
【0009】
本発明は、上記課題を解決すべく案出されたものであり、高い分解処理能力を従来よりも長時間にわたって維持することができるフッ素含有ガスの分解処理剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の分解処理剤は、主成分として水酸化カルシウムおよび水酸化アルミニウムを含み、主成分100質量%に対して、COの含有量が0.1質量%以上2質量%以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の分解処理剤によれば、主成分として水酸化カルシウムおよび水酸化アルミニウムを含み、主成分100質量%に対して、COの含有量が0.1質量%以上2質量%以下であることにより、分解処理剤とフッ素含有ガスとの反応速度の適正化が図られ、フッ素含有ガスの高い分解処理能力を長時間にわたって維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態の分解処理剤を用いたフッ素含有ガスの分解処理装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本実施形態の分解処理剤の一例について説明する。
【0014】
図1は、本実施形態の分解処理剤を用いたフッ素含有ガスの分解処理装置の一例を示す概略図である。
【0015】
この分解処理装置1は、フッ素含有ガス供給ライン3を流れるフッ素含有ガスと、窒素ガス供給ライン4を流れる窒素ガスとを混合してガス導入管6を通して、650〜750℃に加熱された分解処理剤2が充填された反応容器7内に導入し、フッ素含有ガスを分解して生じた分解生成ガスがガス排出管11を通って外部へ排出される構成としてある。なお、分解処理剤2の分解処理効果を確認するために、ガス導入管6にサンプリングポート5aが、またガス排出管11にサンプリングポート5bがそれぞれ設けてある。そして、反応容器7内の分解処理剤2を加熱する手段には、反応容器7の外側に設けたヒーター12を用いている。このヒーター12は断熱材9により覆われており、ヒーター12の制御は、分解処理剤2の温度を感知する温度センサー8の感知信号を受けた温度制御装置10によりコントロールされている。
【0016】
そして、このフッ素含有ガスの分解処理に用いる分解処理剤2は、主成分として水酸化カルシウムおよび水酸化アルミニウムを含み、この主成分100質量%に対して、CO
含有量が0.1質量%以上2質量%以下であることを特徴とする。なお、ここでいう主成分
とは、分解処理剤2を構成する全成分100質量%のうち、95%以上を占めるものである。
【0017】
ここで、本実施形態の分解処理剤2とフッ素含有ガスとの反応例について、フッ素含有ガスがCFの場合を例に挙げて説明する。
【0018】
(1)加熱して行なわれる分解処理の際に、分解処理剤2の成分である水酸化カルシウム(Ca(OH))および水酸化アルミニウム(Al(OH))は、それぞれ脱水反応によって表面が酸化カルシウム(CaO)および酸化アルミニウム(Al)となると考えられる。
【0019】
【化1】

【0020】
(2)(1)の脱水反応により、水酸化カルシウムおよび水酸化アルミニウムは、表面がそれぞれ酸化カルシウムおよび酸化アルミニウムとなり、この酸化カルシウム、酸化アルミニウム、脱水反応により生じた水(水蒸気)がフッ素含有ガス(この例ではCF)と反応すると考えられる。特に、酸化カルシウムと炭酸カルシウムについては、この反応によって無害なフッ化カルシウム(CaF)とすることができる。
【0021】
また、水酸化カルシウムおよび水酸化アルミニウムは、脱水反応によって表面がそれぞれ酸化カルシウムおよび酸化アルミニウムとなり、表面がこれらに覆われることによって、水酸化カルシウムおよび水酸化アルミニウムの内部の脱水反応を抑制していると考えられる。
【0022】
【化2】

【0023】
(3)(2)において、酸化アルミニウムとフッ素含有ガスとの反応によって酸化アルミニウムは分解処理能力の活性が失われるフッ化アルミニウム(AlF)となるが、このフッ化アルミニウムは酸化カルシウムまたは水(水蒸気)との反応によって表面が酸化アルミニウムに再生していると考えられる。
【0024】
【化3】

【0025】
(4)また、(2)における水(水蒸気)とフッ素含有ガスとの反応によって、および(3)における水(水蒸気)とフッ化アルミニウムとの反応によって有害であるフッ化水素を生じるが、このフッ化水素についても酸化カルシウムとの反応によって無害であるフッ化カルシウムとすることができると考えられる。
【0026】
【化4】

【0027】
そして、本実施形態の分解処理剤2は、有害ガスを排出することなく、フッ素含有ガスの高い分解処理能力を長時間にわたって維持することができる。このように、分解処理剤2がフッ素含有ガスの高い分解処理能力を有しているのは、脱水反応によって生じる水、酸化カルシウム、酸化アルミニウムで、フッ素含有ガスを分解処理しているからである。また、長時間にわたって分解処理能力を維持することができるのは、生成したフッ化アルミニウムを酸化アルミニウムに再生することに加えて、どの過程での反応を抑制しているかは明らかではないものの、主成分である水酸化カルシウムおよび水酸化アルミニウムの
合計100質量%に対し、COを0.1質量%以上2質量%以下含有していることによって、分解処理剤2とフッ素含有ガスとの反応速度の適正化が図られているからであると考えられる。
【0028】
分解処理剤2に含まれるCOが0.1質量%未満では、分解処理剤2の活性が高いため
短時間でフッ素含有ガスの分解処理能力が低下する。これは、おそらく、分解処理開始段階で、分解処理剤2の表面にフッ化カルシウムの膜が形成されて、脱水反応や再生反応が進まなくなっているからではないかと考えられる。また、分解処理剤2に含まれるCOが2質量%を越えると、分解処理剤2の活性が低いため反応しきれなかったフッ素含有ガスが分解処理装置1のガス排出管11から排出されてしまうおそれがある。
【0029】
本実施形態の分解処理剤2を用いれば、分解処理剤2の交換頻度が減少し、分解処理装置1の稼働効率を向上させることができる。
【0030】
なお、分解処理剤2のCOの含有量については、分解処理剤を粉砕して得た試料を、水中で攪拌しながら塩酸を添加し、塩酸との反応によって発生するCOの体積をガラス管からなるビューレットで測定し、これを質量換算することによって求めることができる。
【0031】
そして、分解処理能力を長時間わたって維持できることにより、また、従来と同様の分解処理能力であれば、分解処理剤2の量を少なくできるので分解処理装置1のコンパクト化を図ることができる。また、本発明の分解処理剤2を用いてフッ素含有ガスを分解処理して生じたフッ化カルシウムは、純度が高く再利用に適した形態で回収することができるので、酸処理することによってフッ素ガスを再利用することができる。
【0032】
また、本実施形態の分解処理剤2は、水酸化カルシウムと水酸化アルミニウムとのモル比が8:2〜5:5であることが好ましい。この範囲内であれば、水酸化アルミニウムおよび水酸化カルシウムが脱水反応により生じる水(水蒸気)となる適度な水酸基を有しているので、高い分解処理能力を得ることができる。また、水酸化アルミニウムの脱水反応により生成される表面の酸化アルミニウムとフッ素含有ガスとの反応によって、表面が分解処理能力の活性が失われるフッ化アルミニウムとなっても、このフッ化アルミニウムの量に対して、脱水反応によって表面が酸化カルシウムとなった水酸化カルシウムおよび炭酸カルシウムがそのフッ化アルミニウムと速やかに反応して表面を酸化アルミニウムに再生可能とすることができる量で確保されているので、高い分解処理能力を長時間にわたって維持することができる。
【0033】
また、本実施形態の分解処理剤2は、NaおよびKの含有量が、主成分100質量%に対
して、それぞれNaOおよびKOに換算した合計で0.005質量%以上0.05質量%以下
であることが好ましい。NaおよびKは、分解処理剤2とフッ素含有ガスとの反応を阻害して分解処理能力を低下させるものであるが、NaおよびKの含有量が、主成分100質量
%に対して、それぞれNaOおよびKOに換算した合計で0.005質量%以上0.05質量
%以下であるときには、分解処理剤2とフッ素含有ガスとの反応において、確実に分解処理ができる程度に反応を抑制することで、分解処理剤2の長寿命化を図ることができる。
【0034】
なお、NaおよびKの含有量は、ICP(Inductively Coupled Plasma)発光分光分析装置(島津製作所製 ICPS−8100)により、分解処理剤2中のNa元素、K元素の定量分析を実施し、求められた定量値をそれぞれNaOおよびKOに換算して合計することにより求めることができる。
【0035】
また、本実施形態の分解処理剤2は、形状が柱状であり、長さと外径との比が2以上6
以下であることが好ましい。形状が柱状であれば、図1に示す反応容器7内に充填した際に、隣り合う分解処理剤2の間に、分解する処理ガスが通過する流路を形成し易く、さらに外径と長さとの比が2以上6以下の範囲内であれば、反応容器7内に充填した際に分解処理剤が破損しにくい強度を有するために良い。
【0036】
次に、本実施形態の分解処理剤2の製造方法の詳細について説明する。
【0037】
まず、1次原料として、純度が99%以上で平均粒径が1μm以上10μm以下の水酸化カルシウム粉末と、純度が99%以上で平均粒径が50μm以上100μm以下の水酸化アルミニ
ウムとを準備する。そして、これらの1次原料を所定量秤量し、予め所定量秤量した溶媒(水)とともに混合攪拌機にて混合攪拌する。
【0038】
次に、混合撹拌後の原料をディスクペレッター(ダルトン(株)社製)に入れて、外径がφ0.5mm以上2mm以下、長さが1mm以上10mm以下であり、含水率が10%以上30
%以下の柱状の成形体を得る。なお、成形体の含水率については、成形後の成形体の質量を測定し、この成形体を1時間以上乾燥させた後の乾燥体(分解処理剤2)の質量を測定して、成形体の質量から乾燥体の質量を引き、この値を成形体の質量で除して百分率で表すことによって求められる。
【0039】
次に、成形体を所定のメッシュ状の容器内に入れ、10分以上2時間以下、乾燥機内温度が100〜150℃となる熱風を当てて乾燥させることにより本実施形態の分解処理剤2を得ることができる。ここで、分解処理剤2中のCOの含有量を0.1質量%以上2質量%以下
とするには、成形体の含水率を10%以上30%以下にするとともに、乾燥時時間を10分以上2時間以下の範囲内で行なう。含水率が10%未満では、成形体表面の乾燥が早く、COを取り込むことができず、COの含有量を0.1質量%以上とすることができない。含水
率が30%を越えると乾燥に時間がかかるため乾燥時間が長くなり、分解処理剤2が長時間熱せられた空気に曝されてCOを取り込みやすくなり、COの含有量が2質量%を超えてしまう。
【0040】
また、乾燥時間が10分未満では、乾燥時間が短すぎて分解処理剤2の内部の水分が蒸発しにくく密度が低下して強度が低くなり分解処理剤2に破損を生じる。また、2時間を越えると分解処理剤2が熱せられた空気に長時間曝されCOを取り込みやすくなり、COの含有量が2質量%を超えてしまう。含水率を10%以上30%以下、乾燥時間を10分以上2時間以下とすれば、分解処理剤中のCOの含有量が0.1質量%以上2質量%以下であ
り、密度の高い良好な分解処理剤2を得ることができる。
【0041】
なお、より分解処理剤2のフッ素含有ガスの分解処理能力を高めるには、水酸化カルシウムと水酸化アルミニウムをモル比で8:2〜5:5の範囲内で秤量し、混合することが好ましい。
【0042】
また、分解処理剤2中のNaおよびKの含有量が、主成分100質量%に対してそれぞれ
NaOおよびKOに換算した合計で0.005質量%以上0.05質量%以下とするには、例
えば、水酸化カルシウムと水酸化アルミニウムとのモル比が8:2〜5:5であるときには、1次原料として用いる水酸化アルミニウム中のNaおよびKをそれぞれNaOおよびKOに換算した合計で0.01質量%を超えて0.1質量%以下のものを用いればよい。
【0043】
上述した製造方法により作製された本実施形態の分解処理剤2は、図1に示す例の反応容器7に0.5〜2g/cmの密度で充填され、分解処理装置1にセットして用いられる
。そして、本実施形態の分解処理剤2が、主成分として水酸化カルシウムおよび水酸化アルミニウムを含み、この主成分100質量%に対して、COの含有量が0.1質量%以上2質
量%以下であることにより、高い分解処理能力を長時間にわたって維持することが可能となり、分解処理剤2の交換頻度が減少し、分解処理装置1の稼働効率を向上させることができる。
【0044】
以上、本実施形態の例について説明したが、本実施形態の分解処理剤2は、前述の内容に限定されるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲内であれば種々変更してもよいことは言うまでもない。例えば、フッ素含有ガスとその他のガスとを分解するために、本実施形態の分解処理剤2とその他のガスとを分解可能な分解処理剤とを混合して用いることもできる。
【実施例1】
【0045】
以下、本実施形態の実施例の詳細を説明する。
【0046】
分解処理剤を作製し、分解処理性能を比較する試験を実施した。まず、1次原料となる水酸化カルシウム(純度99%、平均粒径5μm)と、水酸化アルミニウム(純度99%、平均粒径70μm)をモル比で6.5:3.5となるよう秤量し、さらに溶媒として所定量の水を秤量して、混合攪拌機に入れて30分混合攪拌した。そして、混合攪拌後の原料をディスクペレッター(ダルトン(株)社製)に入れて、外径がφ0.5mm、長さが3mmの成形体を
成形し、成形後の成形体の質量を測定した。
【0047】
その後、成形体をメッシュ状の容器内に入れて乾燥機に入れ、表1に示す時間で乾燥機内温度が120となる熱風を当てることにより乾燥させて分解処理剤を得た。そして、得ら
れた分解処理剤の質量を測定し、成形体の質量からの得られた分解処理剤の質量を引き、この値を成形体の質量で除して百分率で表すことによって含水率を求め表1に示した。
【0048】
また、得られた分解処理剤について、100gを粉砕して得た試料を、水中で攪拌しなが
ら塩酸を添加し、塩酸との反応によって発生するCOの体積をガラス管からなるビューレットで測定し、これを質量換算した値を表1に示した。
【0049】
そして、図1に示す例の分解処理装置1を用いてCFガスの分解処理を行なった。まず、分解処理剤の試料を内径が30mmのステンレス製(SUS)の反応容器7に60ml充填し、分解処理装置1にセットした。次に、分解処理剤の試料を加熱し、700℃に温度制
御した後、CFガスと窒素ガスとの混合ガスを20ml/minの流量で流してCFガスの分解処理を継続して実施し、分解率が95%未満となる時間を測定した。なお、分解率は、サンプリングポート5aから分解処理前のガスを、サンプリングポート5bから分解処理後のガスをそれぞれ採取し、ガスクロマトグラフ分析を行なってCF濃度を測定し、分解処理前のCF濃度の測定値から分解処理後のCF濃度の測定値を差し引いた値を分解処理前のCF濃度の測定値で除して百分率で表したもので算出した。結果を表1に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
表1から、分解処理剤に含まれるCOの含有量が0.1質量%未満または2質量%を超
える試料No.1,8,9,14は、分解率95%以下となる時間が800時間を下回る結果と
なった。
【0052】
これらの試料と比較して、分解処理剤に含まれるCOの含有量が0.1質量%以上2質
量%以下である試料No.2〜7および10〜13は、分解率95%を800時間以上維持できる
ことがわかった。
【実施例2】
【0053】
次に、水酸化カルシウムと水酸化アルミニウムとのモル比を異ならせた分解処理剤を作製し、分解処理性能を比較する試験を実施した。製造方法は、実施例1と同様とし、成形体の含水率は20%、乾燥時間は60分とした。また、分解処理性能を比較する試験についても、実施例1と同様の方法で行なった。結果を表2に示す。
【0054】
【表2】

【0055】
表2から、水酸化カルシウムと水酸化アルミニウムとのモル比が8:2〜5:5であれば、分解処理性能をさらに高められることがわかった。
【実施例3】
【0056】
次に、NaおよびKの含有量の異なる分解処理剤を作製し、分解処理性能を比較する試験を実施した。水酸化カルシウムと水酸化アルミニウムとのモル比、1次原料である水酸化アルミニウム中に含まれるNaおよびKをそれぞれNaOおよびKOに換算した合計量、分解処理剤中のNaおよびKをそれぞれNaOおよびKOに換算した合計量、分解率が95%以下となる時間を表3に示す。表3に示す事項以外の製造方法は、実施例1と同様とし、成形体の含水率は20%、乾燥時間は60分とした。
【0057】
なお、1次原料として用いる水酸化アルミニウム中および製造した分解処理剤中のNa
およびKをそれぞれNaOおよびKOに換算した合計量については、ICP(Inductively Coupled Plasma)発光分光分析装置(島津製作所製 ICPS−8100)によりNa元素、K元素の定量分析をそれぞれNaOおよびKOに換算して合計することにより求めた。結果を表3に示す。
【0058】
【表3】

【0059】
表3から、分解処理剤中のNaおよびKの含有量がそれぞれNaOおよびKOに換算した合計で0.005質量%以上0.05質量%以下あれば、分解処理性能をさらに高められる
ことがわかった。また、表2および表3の結果から、水酸化カルシウムと水酸化アルミニウムとのモル比は6〜8:2〜4であることがさらに好ましく、7:3が最も好ましいことがわかった。
【0060】
以上の結果から、本実施形態の分解処理剤を用いれば、高い分解処理能力を長時間維持できることがわかり、分解処理剤の交換頻度が減少し、分解処理装置の稼働効率を向上できることがわかった。
【符号の説明】
【0061】
1:分解処理装置
2:分解処理剤
3:フッ素含有ガス供給ライン
4:窒素ガス供給ライン
5a,5b:サンプリングポート
6:ガス導入管
7:反応容器
8:温度センサー
9:断熱材
10:温度制御装置
11:ガス排出管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主成分として水酸化カルシウムおよび水酸化アルミニウムを含み、前記主成分100質量%に対して、COの含有量が0.1質量%以上2質量%以下であることを特徴とする分解処理剤。
【請求項2】
前記水酸化カルシウムと前記水酸化アルミニウムとのモル比が8:2〜5:5であることを特徴とする請求項1に記載の分解処理剤。
【請求項3】
NaおよびKの含有量が、前記主成分100質量%に対して、それぞれNaOおよびKOに換算した合計で0.005質量%以上0.05質量%以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の分解処理剤。
【請求項4】
形状が柱状であり、長さと外径との比が2以上6以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の分解処理剤。

【図1】
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【公開番号】特開2012−206075(P2012−206075A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75556(P2011−75556)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】